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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1303889
審判番号 不服2014-13262  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-08 
確定日 2015-08-06 
事件の表示 特願2010-176141「太陽電池電極用ペーストおよび太陽電池セル」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日出願公開、特開2012- 38846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月5日の出願であって、平成25年10月1日付けで拒絶理由が通知され、同年12月9日付けで意見書が提出され、平成26年1月7日付けで拒絶理由が通知され、同年3月12日付けで意見書が提出され、同年4月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年7月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年7月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、下記アを、下記イと補正するものである(下線は、補正箇所。)。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「銀粉(A)と、脂肪酸銀塩(B)と、樹脂(C)と、溶媒(D)とを含有する太陽電池電極用ペーストであって、
前記銀粉(A)の50質量%以上が、平均粒子径が0.8?2.6μmの球状で、かつ、タップ密度が5.0g/cm^(3)以上の銀粉末である太陽電池電極用ペースト。」
イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「銀粉(A)と、脂肪酸銀塩(B)と、樹脂(C)と、溶媒(D)とを含有する太陽電池電極用ペーストであって、
前記銀粉(A)の50質量%以上が、平均粒子径が0.8?2.6μmの球状で、かつ、タップ密度が5.0g/cm^(3)以上7.0g/cm^(3)以下の銀粉末である太陽電池電極用ペースト。」

2.新規事項の有無及び補正の目的要件
本件補正は、「銀粉(A)」の「タップ密度」の範囲の上限を「7.0g/cm^(3)」と限定するものであって、これは、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の【0030】等の記載からみて、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

3.本件補正発明の進歩性について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、平成26年7月8日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記1.ア参照)。

(2)引用文献の記載(下線は当審が付与した。以下、同じ。)
ア 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-92684号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「導電性組成物、導電性被膜の形成方法および導電性被膜」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引1ア)「【0001】
本発明は、導電性組成物、導電性被膜の形成方法および導電性被膜に関する。」
(引1イ)「【0024】
以下に示すように、本発明によれば、低温かつ短時間で比抵抗の小さい導電性被膜を形成することができ、耐熱性の低い基材にも良好に導電性被膜を形成することができる導電性組成物および該導電性組成物を用いた導電性被膜の形成方法ならびに導電性被膜を提供することができる。
本発明の導電性組成物を用いれば、耐熱性の低い基材上にも電子回路、アンテナ等の回路を容易かつ短時間で作製することができるため非常に有用である。」
(引1ウ)「【0025】
本発明の導電性組成物は、電気抵抗率が20×10^(-6)Ω・cm以下の金属材料(A)と、水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)と、沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(C)と、を含有する導電性組成物である。
また、本発明の導電性組成物は、比抵抗をより小さい導電性被膜を形成する観点から、更に酸化銀(D)を含有しているのが好ましい。
以下に、金属材料(A)、脂肪酸銀塩(B)、2級脂肪酸銀塩(C)および酸化銀(D)について詳述する。」
(引1エ)「【0061】
本発明の導電性組成物は、必要に応じて、更に、造膜性樹脂を含有するのが好ましい態様の1つである。
造膜性樹脂としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
これらのうち、少ない配合量で基材に対して高い密着性を有する導電性被膜を形成することができ、その結果、本発明の導電性組成物の小さい比抵抗も維持しやすいという理由から、ポリエステルウレタン樹脂であるのが好ましい。」
(引1オ)「【0065】
<塗膜形成工程>
上記塗膜形成工程は、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程である。
ここで、基材としては、上記で例示した耐熱性の低い基材以外に、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどのフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ、紙などの基板;等が挙げられる。
本発明の導電性組成物は、必要に応じて上記で例示したα-テルピネオール等の溶剤を用いて溶液化された後、以下に例示する塗布方法により基材上に塗布され、塗膜を形成する。
塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。」
(引1カ)「【実施例】
【0069】
以下、実施例を用いて、本発明の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1?9、比較例1?3)
ボールミルに、下記表1に示す成分を下記表1中に示すグラム数で添加し、これらを混合することにより導電性組成物を調製した。
次いで、調製した導電性組成物を基材である厚さ100μmのPETフイルム(ルミラーS56、東レ社製)上に、スクリーン印刷で塗布して塗膜を形成した後、オーブンにて150℃で30分間乾燥し、導電性被膜を作製した。
【0071】
ここで、金属材料(A)として用いる銀粉末としては、電気抵抗率が2.0×10^(-6)Ω・cmで平均粒径1μmのものを用いた。
【0072】
また、脂肪酸銀塩(B)として用いた2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-酪酸銀塩は、脂肪酸である2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-酪酸と酸化銀との反応により得られるものである。同様に、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸銀塩は、脂肪酸である2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸と酸化銀との反応により得られるものである。
また、脂肪酸銀塩(C)として用いた2-メチルプロパン酸銀塩(イソ酪酸銀塩)は、脂肪酸である2-メチルプロパン酸(イソ酪酸)と酸化銀との反応により得られるものである。同様に、2-メチルブタン酸銀塩(2-メチル酪酸銀塩)は、2-メチルブタン酸(2-メチル酪酸)と酸化銀との反応により得られるものである。同様に、2-エチルブタン酸銀塩(2-エチル酪酸銀塩)は、2-エチルブタン酸(2-エチル酪酸)と酸化銀との反応により得られるものである。下記表1中に、これらの脂肪酸銀塩(C)の反応に用いたイソ酪酸の級数と沸点を記載する。
また、脂肪酸銀塩(B)のモル数Bと、2級脂肪酸銀塩(C)のモル数Cとのモル比(B/C)も下記表1中に示す。」
(引1キ)表1


イ 引用文献2について
原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-339554号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「導電性粉末および導電ペ?ストならびにプラズマディスプレイおよびその基板」(発明の名称)について、次の記載がある。
(引2ア)「【0015】
【発明の実施の形態】導電性粉末は、通常、有機成分や基板との接着成分等とともに混合され、導電ペーストの形で回路パターンの形成に使われる。そのため、導電性粉末の最適化は使用される導電ペーストの設計とともに行われる。」
(引2イ)「【0018】しかし、本発明者らは2μm以下の導電性粉末でもその分散性を確保することにより、有機成分量を減らした感光性導電ペーストを作製、使用することによって、上記問題点は解決できるとの結論を得た。そこで、本発明においては、導電性粉末の良好な分散性を示すパラメーターとして、平均粒径とタップ密度、さらには比表面積を選択し、それらによる導電性粉末の最適化規定を行った。」
(引2ウ)【0022】また、本発明の導電性粉末のタップ密度は3?7g/cm^(3)であることが必要であり、好ましくは3?5g/cm^(3)、さらに好ましくは4?5g/cm^(3)である。タップ密度が小さくなるほど、形成される回路パターンの導電性粉末の密度が下がり、高抵抗化やピンホール等の欠陥が生じやすくなる。ここで、3g/cm^(3)より小さくなると、形成される回路パターンにピンホールや断線が発生し、回路パターン形成の歩留まりが低下する。
【0023】また、タップ密度が大きくなるほど、低抵抗化が図れるが、フォトリソグラフィ技術を用いる場合には、感光に用いる紫外線のペースト下部への透過性が悪くなっていく。このため、タップ密度が7g/cm^(3)より大きくなると、フォトリソグラフィ技術を用いる場合に、回路パターンの形成が困難となる。」
(引2エ)「【0025】導電性粉末の形状は特に限定されないが、より緻密な導体膜を形成した方が抵抗が低くなるので、粒状または球状の粒子が好ましい。」
(引2オ)「【0061】実施例3
導電性粉末として、平均粒径が1.4μm、比表面積1.4m^(2)/g、タップ密度5.5g/cm^(3)の銀粒子を用いた以外は実施例1と同様に回路パターンを形成した。
【0062】どれもピンホールや断線のない、ピッチ140μm、線幅50μmの良好な回路パターンが得られた。厚みはそれぞれ1.8μmおよび3μmであり、導体の断面はほぼ矩形状、わずかに逆テーパー形状であった。また、比抵抗値は、3μΩ・cmであった。」

(3)引用文献に記載された事項
ア 引用文献1記載の発明
引用文献1には、「本発明の導電性組成物は、必要に応じて、更に、造膜性樹脂を含有するのが好ましい態様の1つである。」(引1エ)という記載があり、引用発明において、「造膜性樹脂」を含有させることが、「好ましい態様の1つ」であると記載されている。
そうすると、上記「(2)ア」から、引用文献1の実施例1には、
「電気抵抗率が2.0×10^(-6)Ω・cmの金属材料(A)として、平均粒径1μmの銀粉末からなる金属材料(A)を20グラム、
水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)として、水酸基を1個以上有する脂肪酸銀塩(B)2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-酪酸銀塩からなる脂肪酸銀塩(B)を50グラム、
沸点が200℃以下の2級脂肪酸を用いて得られる2級脂肪酸銀塩(C)として、2-メチルプロパン酸銀塩(2級、沸点155℃)からなる脂肪酸銀塩(C)を50グラム、
造膜性樹脂、及び、
α-テルピネオールからなる溶媒を30グラムを、
ボールミルに添加し、これらを混合することにより調製された導電性組成物を、スクリーン印刷で塗布しオーブンにて150℃で30分間乾燥して、導電性被膜を作製するために用いられる導電性被膜用導電性組成物。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、回路パターンの形成に使われる導電ペーストには、導電性粉末が有機成分や基板との接着成分等とともに混合されていて、導電性粉末の良好な分散性を示すためには、導電性粉末の平均粒径、タップ密度、比表面積等を最適化する必要があり、低抵抗化を図るためには、導電性粉末の形状を粒状又は球状とすることが好ましく、しかも、導電性粉末のタップ密度は3?7g/cm^(3)であることが必要であるところ、タップ密度を大きくするほど低抵抗化が図れるものの、フォトリソグラフィ技術を用いる場合には回路パターンの形成が困難となることから、7g/cm^(3)より大きくならないものとすることが必要であることが記載され、良好な回路パターンが得られた実施例として、実施例3には、「導電性粉末として、平均粒径が1.4μm、比表面積1.4m^(2)/g、タップ密度5.5g/cm^(3)の銀粒子を用いた」ことが記載されていると認められる。

(4)対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 本件補正発明の「銀粉」と、引用発明の「電気抵抗率が2.0×10^(-6)Ω・cmで、平均粒径1μmの銀粉末からなる金属材料(A)」とは、「銀粉末」である点で一致し、しかも、引用発明の「銀粉末」の粒径は、全「銀粉末」の粒径であると解されるから、本件補正発明の「銀粉(A)の50質量%以上」の粒径の範囲に包含される。

イ 引用発明の「2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-n-酪酸銀塩からなる脂肪酸銀塩(B)」、「造膜性樹脂」及び「α-テルピネオールからなる溶媒」は、本件補正発明の「脂肪酸銀塩(B)」、「樹脂(C)」及び「溶媒(D)」に、それぞれ相当する。

ウ 引用発明の「導電性組成物」は、上記の「金属材料(A)」、「脂肪酸銀塩(B)」、「脂肪酸銀塩(C)」及び「溶媒」を「ボールミルに添加し、これらを混合することにより調製され」「スクリーン印刷で塗布」されるものであるから、ペーストであることは明らかである。

エ 引用発明の「導電性組成物」は「導電性被膜」を形成するために用いられるものであり、本件補正発明の「太陽電池電極用ペースト」は「太陽電池電極」を形成するために用いられるものであって、該「太陽電池電極」は「導電性被膜」であることは明らかであるから、本件補正発明の「太陽電池電極用ペースト」と、引用発明の「導電性組成物」とは、「導電性被膜用」である点で共通する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「銀粉(A)と、脂肪酸銀塩(B)と、樹脂(C)と、溶媒(D)とを含有する導電性被膜用ペーストであって、
前記銀粉(A)の50質量%以上が、平均粒子径が0.8?2.6μmの銀粉末である導電性被膜用ペースト。」である点で一致し、次の相違点1及び2で相違する。

(相違点1)
本件補正発明の「銀粉」は、「球状」であり、「タップ密度が5.0g/cm^(3)以上7.0g/cm^(3)以下」であるのに対し、引用発明の銀粉末の形状及びタップ密度は不明な点。

(相違点2)
本件補正発明の「ペースト」は、「太陽電池電極用」であるのに対し、引用発明の「導電性組成物」は、「導電性被膜用」であって、「太陽電池電極用」であるかどうかは不明な点。

相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明の「導電性組成物」は、スクリーン印刷に用いられるものであることから、引用発明の「銀粉末」の分散性は良好であることが必要であることは当業者にとって明らかである。
また、引用文献1には、「本発明の導電性組成物は、比抵抗をより小さい導電性被膜を形成する」(引1ウ)という記載があり、引用発明の「導電性組成物」によって作製される「導電性被膜」は、低抵抗であることが必要であることも明らかである。
そして、タップ密度とは、「定められた条件下で容器をタップして得られる粉末の密度」(JIS Z 2512:2012)という意味であり、「密度」とは、「物質の単位体積の質量。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)という意味であるから、導電性被膜に含まれる「銀粉末」に関して、そのタップ密度が大くなればなるほど、導電性被膜に含まれる「銀粉末」の質量が大きいものとなり、これは、導電性の良好な銀の含有量が増えることを意味するので、タップ密度が小さい銀粉末によって得られた導電性組成物に比べて、タップ密度が大きい銀粉末によって得られた導電性被膜は、より低抵抗のものとなることがわかる。
そうすると、引用発明及び引用文献2に接した当業者は、分散性及び低抵抗化のために、引用発明の「銀粉末」の平均粒径、タップ密度、比表面積等は最適化される必要があって、「銀粉末」の形状は、「粒状又は球状」であって、しかも、タップ密度は、7g/cm^(3)を超えない範囲で、できる限り大きい値が望ましいことが望ましいことを理解するということができる。
さらに、引用文献2には、良好な回路パターンが得られた具体例として、「導電性粉末として、平均粒径が1.4μm、比表面積1.4m^(2)/g、タップ密度5.5g/cm^(3)の銀粒子を用いた」ものが記載されているのであるから、引用発明の「銀粉末」を「球状」とし、「タップ密度」を「5.0g/cm^(3)以上7.0g/cm^(3)以下」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3について)
引用発明の「導電性組成物」によって作成される「導電性被膜」の用途は、引用文献に例示された「電子回路、アンテナ等の回路」といった特定の回路に限定されるものではないことは当業者にとって明らかである。
そして、スクリーン印刷によって、太陽電池の電極を作成することは周知であり、そのように作製された太陽電池の電極が、引用文献1に例示されたスクリーン印刷によって形成された「電子回路、アンテナ等の回路」とは異なる特有の構成を備えるものとは認めることができない。
そうすると、引用発明のスクリーン印刷に用いられる「導電性組成物」を「太陽電池電極用」として用いることは、当業者が容易になし得たことである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成26年7月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「銀粉(A)と、脂肪酸銀塩(B)と、樹脂(C)と、溶媒(D)とを含有する太陽電池電極用ペーストであって、
前記銀粉(A)の50質量%以上が、平均粒子径が0.8?2.6μmの球状で、かつ、タップ密度が5.0g/cm^(3)以上の銀粉末である太陽電池電極用ペースト。」

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2 3.(2)ア、イ、(3)ア、イ」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明において、「銀粉(A)」の「タップ密度」の範囲の上限を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、「銀粉(A)」の「タップ密度」の範囲を拡張した本件補正発明が、前記「第2 3.」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-01 
結審通知日 2015-06-02 
審決日 2015-06-24 
出願番号 特願2010-176141(P2010-176141)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 川端 修
山口 剛
発明の名称 太陽電池電極用ペーストおよび太陽電池セル  
代理人 伊東 秀明  
代理人 三和 晴子  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三橋 史生  

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