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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21C
管理番号 1303892
審判番号 不服2014-17130  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-28 
確定日 2015-08-06 
事件の表示 特願2010-545736「押出ダイス」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月15日国際公開、WO2010/079722〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成21年12月28日(優先権主張、平成21年1月6日)を国際出願日とする出願であって、
平成23年4月13日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面、及び、同日付けで条約19条補正の写しが提出され、
平成24年9月4日付けで審査請求がなされ、
平成25年8月12日付けで拒絶理由通知(平成25年8月20日発送)がなされ、
これに対して平成25年9月19日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ、
平成26年5月30日付けで、平成25年8月12日付けの拒絶理由通知書に記載した理由2(特許法第29条第2項)によって拒絶査定(平成26年6月3日謄本発送・送達)がなされたものである。

これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年8月28日付けで審判請求がなされたものである。


2.本願発明について

本願の請求項1に係る発明は、平成25年9月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(以下、「本願発明」という。)

「押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され、
前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、常温時に両者間に隙間があり、押出時のダイス温度時に、マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定され、
常温(T_(1))時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T_(2))における心棒とマンドレルリングとの締め代(X_(T2))が下記式で表されるとき、常温(T_(1))時における前記心棒の外径(A_(T1))およびマンドレルリングの内径(B_(T1))が前記締め代(X_(T2))が0?0.3%となるように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
X_(T2)={〔A_(T1)×(T_(2)-T_(1))×α_(1)+A_(T1)〕/〔B_(T1)×(T_(2)-T1)×α_(2)+B_(T1)〕-1}×100
ただし、α_(1):心棒を構成する材料の熱膨張係数
α_(2):マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α_(1)>α_(2))
T_(1):常温
T_(2):押出時のダイス温度(>T_(1))
A_(T1):常温(T_(1))時の心棒の外径
B_(T1):常温(T_(1))時のマンドレルリングの内径(>A_(T1))」

3.引用文献及び引用発明

3-1 引用文献1、引用発明、およびその技術的事項
本願の最先の優先日前に頒布され、平成25年8月12日付けの原審の拒絶理由において引用された、実願平4-46786号(実開平6-512号)のCD-ROM(以下、「引用文献1」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。

(1)「 【0002】
【従来の技術】
中空製品の連続熱間押出加工機において、ダイと共に用いられ中空製品の内面形状を規定するマンドレルは、長時間高温、高圧下に晒されるため、耐熱性および耐摩耗性が要求される。そのため、従来は熱間工具鋼、例えばJIS G4404(1983)SKD61等で図4に示すように一体に製作されていた。なお、図中1はマンドレル、1Aは中空製品の内面形状を規定するベアリング部、1Bは不図示の保持部材に螺合される雄螺子部である。」

(2)「 【0010】
マンドレル13は、二点鎖線で示す保持部材16に取付けられたマンドレル本体13Aと、マンドレル本体13Aの先端に取付けられベアリング部を構成するリング13Bと、このリング13Bをマンドレル本体13Aの先端面に締結固定する締結部材としてのボルト17とからなり、リング13Bが前記ダイ12の貫通孔15に同軸にかつ所定の隙間を保って嵌挿されている。マンドレル本体13Aの基部側外周面には保持部材16のねじ孔に螺合される雄螺子部18が形成され、先端部にはテーパ部19が形成されており、これによってビレット11の貫通孔15内への流入を容易にしている。前記ボルト17は、リング13Bを貫通してマンドレル本体13Aのねじ孔20にねじ込まれる雄螺子部17Aと、六角形の頭部17Bと、これら両者間に設けられた円板状の鍔部17Cとで構成されている。
【0011】
マンドレル本体13Aの材質としては、熱間工具鋼、例えばJIS G4404(1983)SKD61等が用いられ、リング13Aの材質としては超硬合金(例:JIS B4101 V20)、そしてボルト17の材質としてはマンドレル本体13Aと同様、熱間工具鋼が用いられる。」

(3)「 【0013】
また、リング13Bの内径とボルト17の雄螺子部外径とは熱膨張係数を考慮した寸法に設定される。すなわち、超硬合金の熱膨張係数は熱間工具鋼の熱膨張係数より小さいため、リング13Bの内径と、ボルト17との間の隙間dが小さいと、押出加工時にリング13Bに割れが発生し、反対に隙間dが大き過ぎると、リング13Bの中心がマンドレル本体13Aの中心からずれて中空製品14の肉厚が周方向において不均一になるという問題を生じる。そこで、隙間dとしては、0.111mm程度に設定することが望ましい。
【0014】
かくしてこのような構成からなるマンドレル13にあっては、ベアリング部を超硬合金製リング13Bで構成しているので、高温、高圧の雰囲気において長時間使用しても、リング13Bの硬度低下が小さく、マンドレルの寿命を向上させることができる。また、ボルト17の鍔部17Cはリング13Bを確実に固定すると共に、リング13Bのダイ側端面を略全面にわたって覆っているので、マンドレル13をコンテナ10内のビレット11中に押し込んでピアシングする際、リング13Bの端面が大きな圧力を受けず、リング13Bの端面割れ、リングの外周縁部の欠け等を確実に防止することができる。したがって、マンドレル13の寿命が増大し、また鍔部外径はリング外径より小さいので押出加工時に中空製品14の内面が肌荒れせず、製品品質を向上させる。さらに、リング内径とボルト17との隙間dをこれら両部材の熱膨張係数を考慮して設定しているので、押出加工時にリング13Bが割れたりすることもない。」

上記(1)には、マンドレルが中空製品の連続熱間押出加工機に、ダイと共に用いられるものであって、中空製品の内面形状を規定する機能を有するものであることが記載されている。
上記(2)には、マンドレル13が、先端に設けられたボルト17と、当該ボルトに所定の隙間を保って嵌挿されるベアリング部を構成するリング13Bとを有し、ボルトは熱間工具鋼で作成され、リングは超硬合金で作成されている旨が記載されている。
上記(3)には、リングがボルトより熱膨張係数の小さい材料となっていること、および、高温、高圧の雰囲気とされる押出加工時に、隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう、また、隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、リング内径とボルトとの隙間を両部材の熱膨張係数を考慮して設定していること、が記載されている。

以上のことから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「押出加工された中空製品の内面形状を規定するマンドレルであって、先端に設けられたボルトと、該ボルトに嵌挿されるリングとを有し、
前記リングは、前記ボルトよりも熱膨張係数の小さい材料で作成され、
前記ボルトと前記リングの内径とが、隙間を保って嵌挿され、該隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう、また、該隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される
マンドレル。」

3-2 引用文献2およびその技術的事項
同じく、本願の最先の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成25年8月12日付けの原審の拒絶理由において引用された、特開昭61-209719号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の技術的事項が記載されている。

(1)「第1図および第2図にはこの発明によるボートホールダイス雄型を用いたアルミニウム押出型材製造用のボートホールダイスが示されている。ボートホールダイス(1)はダイス鋼製のボートホールダイス雄型(10)と、同じくダイス鋼製のボートホールダイス雌型(20)とよりなる。
ボートホールダイス雄型(10)の前面中央部には前方突出部(17)が一体内に設けられており、その周囲に円周方向に所定間隔をおいて複数のボート(12)が形成されている。前方突出部(17)の前面には、これよりも小径のマンドレル部(13)が前方突出状に一体的に設けられている。」(第2ページ右上欄第8行?同ページ左下欄第5行)


4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「押出加工された中空製品」は、本願発明の「押出材」に相当するため、
引用発明の「押出加工された中空製品の内面形状を規定するマンドレル」は、本願発明の「押出材の内面を成形するマンドレル」に相当する。

また、引用発明の「ボルト」、「該ボルトに嵌挿されるリング」は、各々、本願発明の「心棒」、「該心棒に外嵌めされるマンドレルリング」に相当する。

さらに、引用発明の「前記リングは、前記ボルトよりも熱膨張係数の小さい材料で作成され」は、本願発明の「前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され」に相当する。

次いで、引用発明の「前記ボルトと前記リングの内径とが、隙間を保って嵌挿され」るように「設定される」様は、本願発明の「前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、」「両者間に隙間があ」るように「設定されている」点で共通する。

加えて、本件の明細書を参酌すると、本件の図面ではポートホールダイスの雄型に対して当該「押出ダイス」の呼称を当てており、その雄型の一部に「マンドレル」が設けられている関係にあることが見てとれる。よって、引用発明の「マンドレル」と、本願発明の「押出ダイス」とは、マンドレルを含む点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)
「押出材の内面を成形するマンドレルが、心棒と、該心棒に外嵌めされるマンドレルリングとを有し、
前記マンドレルリングは、基材が心棒よりも熱膨張係数の小さい材料からなる材料で構成され、
前記心棒の外周面およびマンドレルリングの内周面が、マンドレルリングを心棒に外嵌めした状態において、両者間に隙間があるように設定されている
マンドレル。」


(相違点1)
本願発明は、マンドレルを含む押出ダイスであるのに対して、引用発明のマンドレルが押出ダイスに含まれるものであるか明らかではない点。

(相違点2)
マンドレルの心棒とマンドレルリングとの間に設定される「隙間」に関し、本願発明では「常温時」には当該「隙間」を持たせつつ、「押出時のダイス温度時に」は「マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触するように設定」とされ、かつ、「常温(T_(1))時の隙間が最小となる部分において、押出時のダイス温度(T_(2))における心棒とマンドレルリングとの締め代(X_(T2))が下記式で表されるとき、常温(T_(1))時における前記心棒の外径(A_(T1))およびマンドレルリングの内径(B_(T1))が前記締め代(X_(T2))が0?0.3%となるように設定されていることを特徴とする押出ダイス。
X_(T2)={〔A_(T1)×(T_(2)-T_(1))×α_(1)+A_(T1)〕/〔B_(T1)×(T_(2)-T1)×α2+B_(T1)〕-1}×100
ただし、α_(1):心棒を構成する材料の熱膨張係数
α_(2):マンドレルリングの基材を構成する材料の熱膨張係数(α_(1)>α_(2))
T_(1):常温
T_(2):押出時のダイス温度(>T_(1))
A_(T1):常温(T_(1))時の心棒の外径
B_(T1):常温(T_(1))時のマンドレルリングの内径(>A_(T1))」とされるとしているのに対して、引用発明の「隙間」の「設定」は、「該隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう、また、該隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される」としている点。


5.当審の判断

上記相違点1、2について検討する。

(相違点1について)
押出成形に用いられるダイスが、ポートホールダイスの雄型とされるものであって、その押出方向先端にマンドレルを一体的に設けるとした構造は、引用文献2の上記技術的事項(1)として見られるとおり、公知である。
とすれば、引用発明とされたマンドレルを、係る公知の引用文献2を参考とすることで、ポートホールダイスの雄型の先端に設け、リングを隙間をもって嵌挿した押出ダイスを得る程度のことは、当業者が容易に想致できたものと言うことができ、係る相違点1は格別のものではない。

(相違点2について)
当該相違点2を整理すると、以下の3点の検討事項を含んで構成されていることとなる。
1)隙間があるとされた状態を、本願発明では「常温時」であるとしているのに対し、引用発明では特段の特定が直接的にはなされていない点
2)押出時に生じる、マンドレルの心棒とマンドレルリングとの接触状態について、本願発明では「マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触する」状態になるとされ、引用発明では「該隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう、また、該隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される」としている点
3)本願発明では、別途「締め代」に関し、温度(T1およびT2)と心棒外径(AT1)とマンドレルリング内径(BT1)によって数式で表され、かつ、その数値を0?0.3%となるとしている点
そこで、上記1)ないし3)について、まず1)および2)の検討を行い、その後、3)の検討を以下に行うこととする。

まず、相違点2にかかる本願発明の特定事項にある、
-常温時に隙間があり
-押出時のダイス温度時に当該隙間が「マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触する」状態になる
点、すなわち、前記1)および2)について検討・考察する。

本願発明における上記2点の特定事項は、本件明細書の【0059】および【0060】に、各々対応する記載があり、それによると、
“常温時に隙間がある”とは、常温においてマンドレルリングの内径を心棒の外径よりも大きい寸法で製作し、両者に寸法差を持たせたことによるもの(【0059】から要点を抜粋)であり、
“押出時のダイス温度時に当該隙間が「マンドレルの軸線方向の少なくとも一部においてその隙間が無くなって両者が接触する」状態になる”とは、ダイス温度が常温よりも高い温度(=「上昇」と記載)であり、その結果心棒の外径拡大量がマンドレルリングの内径拡大量を上回る現象が発生する。隙間が無くなって両者が接触した状態とは、マンドレルリングが心棒に固定される様を指す(【0060】から要点を抜粋)、
と、各々理解される。
他方、引用発明における「隙間」は、「押出時」に際して「高温」であるとされていることから見て、常温下で「隙間」があるように設定されていると見てよく、加えて、引用発明での「隙間」の「設定」に関する、「該隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう、また、該隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される」との特定は、特に「隙間が大きすぎて・・・ずれないよう」の事項が、リングとマンドレル本体とが押出加工時である予定温度で隙間無く密着固定される状況を指すと見られることから、本願発明の特定事項である、「隙間が無くなって両者が接触する」状態と、密着固定がマンドレルリング/リングと、心棒/ボルトとの間で生じる点でなんら変わりは無い。
なお、本願発明の「隙間が無くなって両者が接触する」事項には、別途「マンドレルの軸線方向の少なくとも一部において」とする条件が付加されているが、当該付加事項が意図する内容は、本件明細書の【0048】に記されているとおり、マンドレル(心棒)とマンドレルリングとの嵌め合いにおける面形状が、軸線に平行な態様だけでなく、テーパー面で形成されている関係上、各々がなす隙間が軸線方向で変化しえる態様をも想定した意図での条件付けであると理解でき、引用発明のボルトとリングとの嵌め合いは、軸線方向に対して平行である態様に該当するので、かかる付加条件が意図する態様に該当し、両者に実質的な相違を形成するものではない。
してみると、相違点2に係る、「隙間」が設定される温度域の特定、押出時における両者の状態描写の特定、いずれの点についても、両者が格別相違する結果を形成するものではなく、顕著な相違とは認められない。

次に、本願発明が、「締め代」に関し、「下記式」を示しつつ、当該締め代の設定を、「0?0.3%となるよう設定されている」とした点、すなわち、前記3)について、検討・考察する。
本願発明で特定される上記式を見てみると、「締め代」は、右辺の最初に登場する項(“{”、と、“}”、とでくくられた箇所を指す)が、心棒の外径の変化量に初期外径寸法を加えた値を意味し、右辺第2項がマンドレルリングの内径の変化量に初期内径寸法を加えた値を意味していることが窺える。
そして、第1項と第2項との比をとりつつ、1を減算し、100を乗じているので、加熱時の心棒とマンドレルリングのサイズ比率をパーセント表示した式になっている。
このような締め代で、「0?0.3%」が示す内容を分析する。
下限値0とは、心棒寸法とマンドレルリング寸法が等しい状態で接触していることを指す。
また、上限0.3%とは、この比率のみでは、どの程度の締め付け応力が心棒に働くこととなるか、ないし、マンドレルリングに割れを誘発させる反対の応力がかかることとなるかは、本件明細書でも説明されておらず、また、技術常識から見ても、本願発明とされる請求項1の段階では、いかなる素材とされているかは未だ特定されず、かつ、現実の厚み等の寸法も特定されていないことから見て、技術的には不知と言える、ある一定の比率としか言いようが無い。
ただし、本願発明が目的とするところ、および、明細書中【実施例】として、【表3】に示すとおり試験された条件および結果から考えると、少なくとも当該締め代が与える上限値は、数点のサイズ例で行った試験の範囲内で、マンドレルリングが熱膨張の結果破損に至らないことが確認できる比率から選んだもの、ということができる。
一方で、引用発明は特段締め代に関する数式の提示も伴っておらず、隙間の設定範囲として、押出時の環境下で当該隙間が原因となりもたらされる結果としての状況のうち、好ましい状況を示す形で、「該隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう、また、該隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される」とした関係になる。
とすれば、本願発明の「締め代」を用いた数値範囲としての特定は、下限値0%が示す技術上の意味は、前述のとおり、心棒寸法とマンドレルリング寸法が等しい状態で接触していることを指すのであるから、引用発明の「該隙間が大きすぎてリングがマンドレル本体の中心からずれないよう、押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される」ことと等価であるといえるし、また、上限値も、技術上の意味として不知とはいうものの、マンドレルリングが熱膨張の結果破損に至らないことが確認できる比率から選んだとされる値なのであるから、求める作用効果上は、引用発明の「該隙間が小さすぎてリングとボルトの熱膨張差でリングが割れないよう」に「押出時の高温雰囲気での熱膨張差を考慮して設定される」ことと、やはり等価な関係にあると認められる。
以上まとめると、相違点2のうち前記3)に関する事項による相違は、通常の技術常識に沿って見比べると、引用発明においても当業者から見て相応の内容が示されているというべきであって、係る相違は格別なものではない。

上記で検討したごとく、各相違点はいずれも格別のものではなく、そして、相違点1ないし2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。


6.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-02 
結審通知日 2015-06-09 
審決日 2015-06-22 
出願番号 特願2010-545736(P2010-545736)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池ノ谷 秀行坂巻 佳世  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 西村 泰英
渡邊 真
発明の名称 押出ダイス  
代理人 清水 久義  
代理人 清水 義仁  
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