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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1303959
審判番号 不服2014-11375  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-17 
確定日 2015-08-07 
事件の表示 特願2009-169921号「売上データ処理装置、プログラム及び情報配信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月 3日出願公開、特開2011- 22966号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明

本願は、平成21年7月21日の出願であって、平成25年12月18日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成26年2月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年3月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成26年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項1?9に係る発明は、平成26年2月21日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「店舗評価情報を書込み可能な店舗毎のウェブサイトを公開するウェブサーバに通信接続される売上データ処理装置であって、
前記ウェブサイトが公開されている予め指定された他の店舗のうち何れの店舗に関する店舗評価情報を配信対象とするかを示す情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている情報に基づいて、前記配信対象の他の店舗のウェブサイトにおける新規の店舗評価情報を前記ウェブサーバから取得し、取得した店舗評価情報を出力部に出力させる制御部と、
を備える売上データ処理装置。」

第2 引用例の記載事項・認定事項

原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-58672号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の1?6の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。

1 「【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、実際に店舗を使用した顧客の評価情報を集計して、他の顧客に広く提供可能にすると共に、店舗にとっては、収集した評価情報を有効に活用することが可能な店舗の評価情報提供システムを提供ことを課題とする。」

2 「【0012】
なお、各端末としては、パソコンの他に、他のネットワークへの接続端末、例えば携帯電話、PHS等が使用できることは言うまでもない。」

3 「【0030】
このシステムは、インターネット1に接続されているサーバー2を中心として成り立っており、このインターネットには、顧客のパソコン3、4、5が接続されている。図では、これらのパソコン3?5の機能を、ユーザー登録、評価書込、検索と、分けて書いてあるが、それぞれのパソコンがこれらすべての機能を有する。また、図1においては、店舗としてレストラン6が図示されているが、ここにもパソコンがあり、インターネットに接続されている。」

4 「【0046】
(C)評価データの入力
評価データの入力を行う場合は、まず、パソコンから、サーバー2のホームページを呼び出し、WEB上の入力エリアにユーザー名(アカウント)とパスワードを入力する。すると、サーバー2が、これが正しいかどうかを確認し、正しい場合には、入力用のWEBページを表示する。最初のページには、店舗のカテゴリーを選択入力することができるような情報が表示されるので、ユーザーはこのうち一つを選択入力する。すると、そのカテゴリーに属する店舗名の選択入力画面が表示されるので、ユーザーは目的とする店舗名を選択入力する。
【0047】
すると、その店舗のカテゴリー、サブカテゴリーに対応して、前記評価入力情報データベースに記憶される情報のうち、(3)総合評価、(4)個別評価(複数項目)、(5)コメント、(6)来店日、(7)来店人数、(8)来店者属性を入力する画面が表示される。カテゴリーがレストランである場合の、入力画面の例を図2に示す。
【0048】
このうち、満足度・不満足度を入力する欄は、プルダウンメニューになっており、「大変満足」、「満足」、「どちらかといえば満足」、「平均的なレベル」、「どちらかといえば不満」、「かなり不満」、「非常に不満」というようなメニューが表示され、それから選択するようになっている。また、ご来店形態を入力する欄もプルダウンメニューとなっており、「ファミリー」、「カップル」、「会社同僚」、「友人」、「その他のグループ」、「個人」、「その他」というようなメニューが表示され、それから選択するようになっている。
【0049】
このような入力画面に入力が行われ、それがサーバー2に伝送されると、サーバー2は、この情報を評価入力情報データベースに書き込む。その際、入力IDは、入力順に連番で起番し、店舗ID、ユーザーIDは、それぞれ入力された店舗、入力者のユーザー名(アカウント)に対応するものを書き込む。また、評価については、「大変満足」は100、「満足」は80、「どちらかといえば満足」は70、「平均的なレベル」は60、「どちらかといえば不満」は40、「かなり不満」は20、「非常に不満」は0というように、点数に変換して記憶する。」

5 「【0054】
(E)検索データ出力
ユーザーがパソコンからサーバーにアクセスし、そのホームページから検索入力画面を選択することにより、欲しい情報の検索を行う。この操作は、登録されたユーザーのみでなく、一般の使用者が自由に行って情報を引き出すことができる。最初の検索画面では、プルダウンメニューにより店舗のカテゴリーの入力を要求される。例えば、カテゴリーとしてレストランを指定して入力すると、図3に示すような検索入力画面が表示される。この図3に示す画面に、そのカテゴリーにおいて総合評価が高い店舗の名前を所定数同時に表示し、その店舗名をクリックすることにより、直接その店舗の営業情報と評価を表示する画面を表示するようにしてもよい。」

6 「【0063】
(F)店舗からの問い合わせに対する評価の出力
店舗から、自店の評価の問い合わせがあった場合に、入力されたままのデータの一覧表(評価入力情報データベースのうち、IDを除いたデータ、指定された期間内のもの)を出力する。この一覧データはWEB形式で表示すると共に、CSV形式でログとして作成し、ダウンロード可能として、店舗側で独自に管理ソフトにより利用可能とするようにすることが好ましい。
【0064】
さらに、要求により、各ランクの評価をした顧客の年齢別構成グラフ、属性別構成グラフを表示し、その店舗がどの層の顧客から高い評価を得ているのかが分かるようにすることもできる。このように、データを整理した形で端末に表示するようにすれば、各店舗が独自の解析を行わなくても、詳細な解析データを入手でき、自店の改善必要項目の把握やターゲットの選定などに役立てることができる。
【0065】
また、新規評価の書き込みがあったとき、そのことをE-メールで知らせ、問い合わせを促すようにすれば、特にコメントが書き込まれているときに早期に対応することが可能となる。
なお、店舗からも、前記(E)検索データ出力の処理を行うことができることはいうまでもない。」

7 上記6の記載事項から見て、サーバーから店舗の端末への配信対象として、評価入力情報データベースに書き込まれた入力されたままの情報に対して予め期間の指定を行えることや、付加的に詳細な解析データを予め指定できるものと認められる。

8 上記6の記載事項から見て、新規評価の書き込みがあったとき、サーバーから店舗に対して問い合わせを促すように制御されるものであるから、この際に店舗が取得する評価データは、新規の評価データであると認められる。
また、上記7の認定事項に照らしてみれば、新規の評価データとして取得されるデータは、予め指定された評価データに基づく内容のものであると認められる。

上記1?6の記載事項、及び、図1、図2、図3の図示内容、並びに、上記7?8の認定事項から見て、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「評価データを店舗毎に評価入力情報データベースに書込み可能であって、ユーザーがサーバーにアクセスして検索を行う場合に店舗毎の営業情報と評価を表示するホームページを公開するサーバーに通信接続されるネットワークへの接続端末であって、
ホームページが公開されている予め指定された自店に関する評価データを配信対象とし、
新規評価の書き込みがあったときに、サーバーが店舗に対して問い合わせを促すことで、指定された評価データに基づいて、新規の評価データをサーバから取得し、取得した評価データを画面に表示させる等の出力を行うよう制御する
ネットワークへの接続端末。」

第3 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「評価データを店舗毎に評価入力情報データベースに書込み可能であって、ユーザーがサーバーにアクセスして検索を行う場合に店舗毎の営業情報と評価を表示するホームページを公開するサーバー」は、その機能及び構成からみて、前者の「店舗評価情報を書込み可能な店舗毎のウェブサイトを公開するウェブサーバ」に相当する。

また、前者の「売上データ処理装置」は、ウェブサーバに通信接続を行う装置についてより具体的な態様に限定したものであるから、後者の「ネットワークへの接続端末」と前者の「売上データ処理装置」とは、「ウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置」である点で共通するものである。

また、後者の「ホームページが公開されている予め指定された自店に関する評価データを配信対象とし」は、前者の「ウェブサイトが公開されている予め指定された他の店舗のうち何れの店舗に関する店舗評価情報を配信対象とするかを示す情報を記憶する記憶部と、」について、対象とするウェブサイトが公開されている店舗のどの店舗評価情報を予め配信対象とするかを設定している点で共通する。

また、後者の「取得した評価データを画面に表示させる等の出力を行うよう制御」する点と、前者の「取得した店舗評価情報を出力部に出力させる制御部」とは、「取得した店舗評価情報を出力部に出力させる制御」を行う点で共通する。

してみると、両者は次の点で一致している。

(一致点)

「店舗評価情報を書込み可能な店舗毎のウェブサイトを公開するウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置であって、
前記ウェブサイトが公開されている予め指定された店舗に関する店舗評価情報を配信対象とするか設定し、
前記配信対象の店舗のウェブサイトにおける新規の店舗評価情報を前記ウェブサーバから取得し、取得した店舗評価情報を出力部に出力させる制御を行う、
ウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置。」

そして、両者は次の点で相違している。

(相違点1)

本願発明は、「ウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置」について、「売上データ処理装置」にさらに限定しているのに対し、引用発明は、「ウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置」について、売上データを処理することについて特段の限定をしていない点。

(相違点2)

本願発明は、「売上データ処理装置」が、「ウェブサイトが公開されている予め指定された他の店舗のうち何れの店舗に関する店舗評価情報を配信対象とするかを示す情報を記憶する記憶部」を備え、この「記憶部」に記憶されている情報に基づいて、店舗評価情報をウェブサーバから取得しているのに対して、引用発明では、「ウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置」について、配信対象を記憶する記憶部を備えるものか明らかでないものの、指定された評価データに基づいて、新規の評価データをサーバから取得している点。

(相違点3)

本願発明は、配信対象として「ウェブサイトが公開されている予め指定された他の店舗のうち何れの店舗に関する店舗評価情報」を設定し、「配信対象の他の店舗のウェブサイトにおける新規の店舗評価情報」をウェブサーバから取得しているのに対して、引用発明では、配信対象としてホームページが公開されている予め指定された自店に関する評価データを設定し、新規評価の書き込みがあったときに、サーバーが店舗に対して問い合わせを促すことで、指定された評価データに基づいて、新規の評価データをサーバから取得している点。

(相違点4)

本願発明は、「売上データ処理装置」が、「取得した店舗評価情報を出力部に出力させる制御部」を備えているのに対して、引用発明では、「ウェブサーバに通信接続を行う機能を有する装置」について、制御部を備えるものか明らかでない点。

第4 相違点の検討

1 (相違点1)について

POS端末等の「売上データ処理装置」を用いてウェブサーバに通信接続を行うことは、従来周知の技術である(必要であれば、特開平10-312413号公報の【0005】-【0006】、【0019】-【0020】、図1や、特開2007-11539号公報の【0003】、【0011】、図1や、特開2007-156762号公報の【0015】-【0018】、【0049】等を参照。)。
また、引用例1の(イ)の記載事項から、ネットワークへの接続端末が店舗に置かれたパソコンに限定されることなく、種々のものが選択可能であることが示唆されている。
そうすると、引用発明の「ウェブサーバに通信接続を行う機能を奏する装置」として、従来周知の技術に照らして、「売上データ処理装置」を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。

2 (相違点2)について

クライアント端末が、サーバから情報データを取得するにあたって、クライアント端末が、サーバからどのような情報データを取得するかを記憶しておく記憶部を備えるようにすることは、例示するまでもなく従来周知の技術である。
そして、引用発明における「ウェブサーバに通信接続を行う装置」において、上記従来周知の技術を適用することにより、配信対象に関する情報を記憶しておく記憶部を備え、記憶部に記憶されている情報に基づいて、評価データをサーバから取得するようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

3 (相違点3)について

営業戦略において、他店舗の店舗評価情報を参考にすることは慣用的に行われており、従来周知の技術である(必要であれば、特開平10-312413号公報の【0002】-【0003】、【0020】、【0022】や、特開2007-11539号公報の【0031】-【0032】や、特開2007-156762号公報の【0056】等を参照。)。
また、引用例1の(ア)の記載事項から、引用発明が、店舗の評価情報を営業戦略として活用することを意図したものであることがうかがえる。
そうすると、引用発明における「予め指定された店舗に関する店舗評価情報」として、営業戦略上、自店舗との比較の対象となる「他の店舗のうち何れの店舗に関する店舗評価情報」を配信対象に含めることは、当業者であれば容易になし得たことである。

4 (相違点4)について

「ウェブサーバに通信接続を行う装置」であれば当然に通信技術において一般に必要とされる「制御部」に相当する構成を備えるものと考えられる。
そして、引用発明における「ウェブサーバに通信接続を行う装置」において、取得した店舗評価情報を出力部に出力させる制御を行う制御部を備えることは、実質的な相違点ではないと考えられる。

5 小括

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、引用例1に記載された事項、及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものと認められる。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?9に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2015-05-11 
結審通知日 2015-05-21 
審決日 2015-06-02 
出願番号 特願2009-169921(P2009-169921)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平田 慎二  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 平瀬 知明
竹下 和志
発明の名称 売上データ処理装置、プログラム及び情報配信システム  

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