ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
---|---|
管理番号 | 1303986 |
審判番号 | 不服2013-22081 |
総通号数 | 189 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-11-11 |
確定日 | 2015-08-05 |
事件の表示 | 特願2008-518364「短波長LEDとダウンコンバージョン物質で白色光を生成するパッケージ設計」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月 4日国際公開、WO2007/002234、平成20年12月 4日国内公表、特表2008-544553〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2006年6月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年6月23日、2005年7月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年4月4日に手続補正がなされ、同年9月10日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、平成25年3月18日に手続補正がなされたが、同年7月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成26年11月12日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成27年2月18日に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年2月18日付けの手続補正により補正された請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「黒体軌跡に近い色度値を有しかつ演色評価数が約80より大きい可視光を生成する方法であって、該方法は: a) 短波長固体発光デバイス、蛍光体物質及び量子ドット物質を提供するステップ; b) 該短波長固体発光デバイスを用いて第一のピーク波長を含む第一のスペクトルを有する短波長光を発生するステップ、該第一のピーク波長は約500nmよりも短く、かつ該短波長固体発光デバイスは該量子ドット物質から間隔を空けて配置される; c) 該量子ドット物質を該短波長光の少なくとも一部分によって照射し、該短波長光の第一の分画が、該量子ドット物質によって吸収され、第二のピーク波長を含む第二のスペクトルを有する更に長い波長光として再放出されるようにするステップ、該第二のピーク波長は該第一のピーク波長よりも長い; d) 該蛍光体物質を該短波長光の少なくとも別の部分によって照射し、該短波長光の第二の分画が、該蛍光体物質によって吸収され、第三のピーク波長を含む第三のスペクトルを有する光として再放出されるようにするステップ、該第三のピーク波長は、該第一のピーク波長と該第二のピーク波長の間にある;及び e) 該短波長光の第三の分画を放出し、該短波長光の第三の分画に該第二の波長光の少なくとも一部分及び該第三の波長光の少なくとも一部分を可視光として結合するステップ; を含む方法。」 第3 刊行物の記載 (1)当審拒絶理由に引用し、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-19981号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「【請求項11】 白色発光を生じる半導体発光素子であって、 青色又は紫外発光が可能な発光ダイオードチップと、 前記発光ダイオードチップからの発光が透過可能な位置に配置された可視光を透過し得る基板及び該基板上に形成された半導体層よりなる蛍光体とを備え、 前記発光ダイオードチップと前記蛍光体とは、1つのパッケージに実装されていることを特徴とする半導体発光素子。 【請求項12】 前記蛍光体は、前記基板における前記半導体層が形成されている面とは反対側の面又は前記半導体層における前記基板が形成されている面とは反対側の面の上に形成された蛍光材料よりなる蛍光層をさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の半導体発光素子。」 イ 「【0033】 本発明に係る第1の半導体発光素子において、蛍光体は、基板における半導体層が形成されている面とは反対側の面又は半導体層における基板が形成されている面とは反対側の面の上に形成された蛍光材料よりなる蛍光層をさらに備えていることが好ましい。 【0034】 このようにすると、蛍光層を組み合わせることにより、例えば発光ダイオードチップから青色発光が生じる場合には、半導体層から高輝度の赤色発光が可能であると共に蛍光層から黄色発光が可能であるので、演色性に優れた白色発光ダイオード構造を特殊なパッケージを用いることなく実現することが可能となる。また、例えば、発光ダイオードチップから紫外発光が生じる場合には、半導体層から高輝度の赤色発光が可能であると共に蛍光層から緑色発光が可能であるので、演色性に優れた白色発光ダイオード構造を特殊なパッケージを用いることなく実現することが可能となる。」 ウ 「【0101】 (第1の実施形態) 以下に、本発明の第1の実施形態に係る発光体について、図1、図2、及び図3(a)?(e)を参照しながら説明する。 【0102】 第1に、本発明の第1の実施形態に係る発光体の構造について、図1及び図2を参照しながら説明する。 【0103】 図1は、本発明の第1の実施形態に係る発光体と該発光体を励起するために用いる青色 発光ダイオードとが示された断面図である。 【0104】ないし【0108】は、省略。 【0109】 第2に、図1に示した本発明の第1の実施形態に係る蛍光体の製造方法と該蛍光体を集積化した半導体発光素子の製造方法とについて、図3(a)?(e)を参照しながら説明する。 【0110】 図3(a)?(e)は、本発明の第1の実施形態に係る蛍光体の製造方法と該蛍光体を集積化した半導体発光素子の製造方法とを示す要部工程断面図である。なお、図3(a)?(e)において、図1に示した構成要素と同様の部分には同一の符号を付している。 【0111】 まず、図3(a)に示すように、例えGaAs基板5の上に、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition: MOCVD)により、アンドープのInGaAlP層1を形成する。GaAs基板5として、(100)面にて(011)方向に約10°オフされた面方位を有する基板を用いている。また、InGaAlP層1はGaAs基板5に格子整合する組成を有しており、ここでは、InGaAlP層1は、約1μmの膜厚を有するIn_(0.49)Ga_(0.51)P層よりなる。このようにすると、InGaAlP層1は低欠陥密度を実現できるので、InGaAlP層1から高い発光効率を有する発光を期待できる。 【0112】 次に、図3(b)に示すように、InGaAlP層1上に接着するように、石英基板2をInGaAlP層1を有するGaAs基板5に貼り合わせる。ここで、石英基板2とInGaAlP層1とを貼り合わせる方法は、水溶液中で接着させる方法でもよいし、加熱又は加圧によって接着させる方法でもよい。例えばエポキシのような接着剤を用いて貼り合わせてもよい。また、例えばガラスフリットを用いて接着させてもよい。 【0113】 次に、図3(c)に示すように、例えばH_(2)SO_(4)とH_(2)O_(2)との混合液中に、GaAs基板5を浸すことにより、GaAs基板5をウエット・エッチングにより除去する。これにより、InGaAlP層1が石英基板2に接着した構造を得る。 【0114】 次に、図3(d)に示すように、石英基板2におけるInGaAlP層1が形成されていない側の面上に、YAG蛍光体3を塗布する。ここでは、石英基板2の膜厚が例えば100μm以下になるように、YAG蛍光体3を塗布する前に、石英基板2を研磨して膜化しておいてもよい。このようにして、図1に示した蛍光体の構造を実現できる。 【0115】 さらに、図3(e)に示すように、図3(e)に示した構造を有する蛍光体を例えば1mm角程度にダイシングした後、このダイシングされた蛍光体を例えば接着剤8などを用いてパッケージ7に接着すると共に、青色発光ダイオードチップ6をパッケージ7内に集積化する。これにより、図1における青色発光ダイオード4と同様に、青色発光ダイオードチップ6から例えば470nmの波長を有する青色発光による励起によって、InGaAlP層1から赤色発光を得ることができるので、演色性に優れた白色発光を行なう白色発光ダイオードを得ることができる。」 エ 「【0118】 (第2の実施形態) 以下に、本発明の第2の実施形態に係る蛍光体について、前述した図3(a)?(e)、図4及び図5を参照しながら説明する。 【0119】 第1に、本発明の第2の実施形態に係る蛍光体の構造について、図4を参照しながら説明する。 【0120】 図4は、本発明の第2の実施形態に係る蛍光体と該蛍光体を励起するために用いる紫外発光ダイオードとが示された断面図である。 【0121】 図4に示すように、石英基板2の主面の一方には、紫外発光ダイオード11による励起によって赤色発光するアンドープのInGaAlP層1が貼り合わせられており、石英基板2の主面の他方には、紫外発光ダイオード11による励起によって緑色発光する緑色発光蛍光体9及び紫外発光ダイオード11による励起によって青色発光する青色発光蛍光体10が順に形成されている。 【0122】ないし【0128】は、省略。 【0129】 図4に示した本発明の第2の実施形態に係る蛍光体の製造方法と該蛍光体を集積化した半導体発光素子の製造方法とは、本発明の第1の実施形態に係る蛍光体の製造方法と該蛍光体を集積化した半導体発光素子の製造方法と共通する部分が多いので、前述の図3(a)?(e)を再度参照しながら説明する。 【0130】 まず、前述した図3(a)?(c)を用いた説明と同様にして、InGaAlP層1と石英基板2とが接着された構造を得る。 【0131】 次に、前述した図3(d)に示すように、石英基板2におけるInGaAlP層1が形成されていない側の面上に、緑色発光蛍光体9及び青色発光蛍光体10を順に形成する。これにより、図4に示した蛍光体の構造を得ることができる。 【0132】 さらに、前述した図3(e)に示すように、同図を用いた説明と同様に、本発明の第2の実施形態に係る蛍光体をダイシングした後、このダイシングされた蛍光体を例えば接着剤8などを用いてパッケージ7に接着すると共に、紫外発光ダイオードチップをパッケージ7内に集積化する。これにより、図4における紫外発光ダイオード11と同様に、紫外発光ダイオードチップから例えば340nmの波長を有する紫外発光による励起によって、InGaAlP層1から赤色発光を得ることができるので、演色性に優れた白色発光を行なう白色発光ダイオードを得ることができる。」 オ 第1の実施形態に関する図1は、以下のものである。 ![]() カ 第1の実施形態における発光スペクトルを示す図2は、以下のものである。 ![]() キ 第2の実施形態に関する図4は、以下のものである。 ![]() ク 第2の実施形態における発光スペクトルを示す図5は、以下のものである。 ![]() ケ 第1及び第2の実施形態のパッケージは、以下のものである。 ![]() (2)引用文献に記載された発明 ア 上記(1)アの記載によれば、 引用文献には、 「白色発光を生じる半導体発光素子であって、 青色又は紫外発光が可能な発光ダイオードチップと、 前記発光ダイオードチップからの発光が透過可能な位置に配置された可視光を透過し得る基板及び該基板上に形成された半導体層よりなる蛍光体と、 前記基板における前記半導体層が形成されている面とは反対側の面の上に形成された蛍光材料よりなる蛍光層と、を備え、 前記発光ダイオードチップ、前記蛍光体及び蛍光層は、1つのパッケージに実装されている、半導体発光素子。」 が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)イの記載に照らせば、以下のことが理解できる。 (ア)発光ダイオードチップから青色発光が生じる場合には、半導体層から高輝度の赤色発光が、蛍光層から黄色発光が可能であり、演色性に優れた白色発光を生じること。 (イ)発光ダイオードチップから紫外発光が生じる場合には、半導体層から高輝度の赤色発光が、蛍光層から緑色発光が可能であり、演色性に優れた白色発光を生じること。 ウ 上記(1)ウ及びエの記載に照らせば(第1及び第2の実施形態)、以下のことが理解できる。 (ア)上記アの「基板」は、石英基板であってもよいものと認められる。 (イ)上記アの「青色又は紫外発光が可能な発光ダイオードチップ」は、 470nmの波長を有する青色光又は340nmの波長を有する紫外光を発光可能なものであってもよいものと認められる。 エ また、上記(1)ウ及びエの記載を踏まえて、図3(e)を見ると、 上記アの「基板」は、発光ダイオードチップから間隔を空けて配置されることが理解できる。 オ 上記アないしオより、 引用文献には、 「白色発光を生じる半導体発光素子であって、 470nmの波長を有する青色光を発光可能な発光ダイオードチップと、 発光ダイオードチップから間隔を空けて配置され、発光ダイオードチップからの発光が透過可能な位置に配置された可視光を透過し得る石英基板と、 石英基板上に形成された高輝度の赤色発光が可能な半導体層と、 石英基板における半導体層が形成されている面とは反対側の面の上に形成された黄色発光が可能な蛍光層と、を備え、 発光ダイオードチップ、半導体層及び蛍光層は、1つのパッケージに実装されている、半導体発光素子。」 が記載されているものと認められる。 カ また、引用文献には、 上記オの「半導体発光素子」を用いた「演色性に優れた白色発光を生じる方法」が記載されているものと認められる。 キ 上記アないしカより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体発光素子を用いた演色性に優れた白色発光を生じる方法であって、 半導体発光素子は、 470nmの波長を有する青色光を発光可能な発光ダイオードチップと、 発光ダイオードチップから間隔を空けて配置され、発光ダイオードチップからの発光が透過可能な位置に配置された可視光を透過し得る石英基板と、 石英基板上に形成された高輝度の赤色発光が可能な半導体層と、 石英基板における半導体層が形成されている面とは反対側の面の上に形成された黄色発光が可能な蛍光層と、を備え、 発光ダイオードチップ、半導体層及び蛍光層は、1つのパッケージに実装されたものである、 演色性に優れた白色発光を生じる方法。」 第4 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明は、「演色性に優れた白色発光を生じる方法」であることに照らせば、 引用発明と本願発明とは「黒体軌跡に近い色度値を有しかつ演色評価数が大きい可視光を生成する方法。」 である点で一致する。 (2)引用発明の「470nmの波長を有する青色光を発光可能な発光ダイオードチップ」及び「黄色発光が可能な蛍光層」は、それぞれ、本願発明の「短波長固体発光デバイス」及び「蛍光体物質」に、相当する。 (3)また、本願明細書の「量子ドット(QD’s)は、あるスペクトル範囲でエネルギーを吸収して別のスペクトル範囲でエネルギーを放出するナノメートル・サイズの半導体である。」(【0009】)との記載に照らせば、 引用発明の「赤色発光が可能な半導体層」と本願発明の「量子ドット物質」とは、 「半導体材料」 である点で一致する。 (4)引用発明は、「発光ダイオードチップ」、「赤色発光が可能な半導体層」及び「黄色発光が可能な蛍光層」を備えた半導体発光素子を用いるものであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは、 「a) 短波長固体発光デバイス、蛍光体物質及び半導体材料を提供するステップ;」 を含む点で一致する。 (5)引用発明の「石英基板」は、発光ダイオードチップから間隔を空けて配置されていることに照らせば、 引用発明と本願発明とは、 「b) 該短波長固体発光デバイスを用いて第一のピーク波長を含む第一のスペクトルを有する短波長光を発生するステップ、該第一のピーク波長は約500nmよりも短く、かつ該短波長固体発光デバイスは該半導体材料から間隔を空けて配置される;」 点で一致する。 (6)引用発明の「赤色発光が可能な半導体層」は、「470nmの波長を有する青色光を発光可能な発光ダイオードチップ」からの光により励起されるものであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは、 「c) 該半導体材料を該短波長光の少なくとも一部分によって照射し、該短波長光の第一の分画が、該半導体材料によって吸収され、第二のピーク波長を含む第二のスペクトルを有する更に長い波長光として再放出されるようにするステップ、該第二のピーク波長は該第一のピーク波長よりも長い;」 点で一致する。 (7)引用発明の「黄色発光が可能な蛍光層」は、「470nmの波長を有する青色光を発光可能な発光ダイオードチップ」からの光により励起されるものであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは、 「d) 該蛍光体物質を該短波長光の少なくとも別の部分によって照射し、該短波長光の第二の分画が、該蛍光体物質によって吸収され、第三のピーク波長を含む第三のスペクトルを有する光として再放出されるようにするステップ、該第三のピーク波長は、該第一のピーク波長と該第二のピーク波長の間にある;」 点で一致する。 (8)引用発明は、発光ダイオードチップ、半導体層及び蛍光層からの光を混合することで、演色性に優れた白色発光を生じるものであることが、当業者にとって明らかであることに照らせば、 引用発明と本願発明とは、 「e) 該短波長光の第三の分画を放出し、該短波長光の第三の分画に該第二の波長光の少なくとも一部分及び該第三の波長光の少なくとも一部分を可視光として結合するステップ;」 を含む点で一致する。 (9)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「黒体軌跡に近い色度値を有しかつ演色評価数が大きい可視光を生成する方法であって、該方法は: a) 短波長固体発光デバイス、蛍光体物質及び半導体材料を提供するステップ; b) 該短波長固体発光デバイスを用いて第一のピーク波長を含む第一のスペクトルを有する短波長光を発生するステップ、該第一のピーク波長は約500nmよりも短く、かつ該短波長固体発光デバイスは該半導体材料から間隔を空けて配置される; c) 該半導体材料を該短波長光の少なくとも一部分によって照射し、該短波長光の第一の分画が、該半導体材料によって吸収され、第二のピーク波長を含む第二のスペクトルを有する更に長い波長光として再放出されるようにするステップ、該第二のピーク波長は該第一のピーク波長よりも長い; d) 該蛍光体物質を該短波長光の少なくとも別の部分によって照射し、該短波長光の第二の分画が、該蛍光体物質によって吸収され、第三のピーク波長を含む第三のスペクトルを有する光として再放出されるようにするステップ、該第三のピーク波長は、該第一のピーク波長と該第二のピーク波長の間にある;及び e) 該短波長光の第三の分画を放出し、該短波長光の第三の分画に該第二の波長光の少なくとも一部分及び該第三の波長光の少なくとも一部分を可視光として結合するステップ; を含む方法。」 (10)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 演色評価数に関し、 本願発明は、「約80より大きい」のに対して、 引用発明は、その数値が不明である点。 <相違点2> 半導体材料に関して、 本願発明は、「量子ドット物質」であるのに対して、 引用発明は、「量子ドット物質」ではない点。 2 判断 (1)上記<相違点1>について検討する。 ア 演色評価数の数値が大きいほど、演色性が良好であることが当業者にとって明らかであるところ(例えば、特開平10-144126号公報(【0004】)及び特開平10-69884号公報(【0014】)を参照。)、 演色評価指数をどの程度にするかは、当業者が引用発明を実施する際に、その目的や用途を勘案して適宜定めるべき事項であって、例えば、演色性が良好であることが求められる美術館などにおいて、演色評価指数を80より大きくすることは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 以上のことから、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。 (2)上記<相違点2>について検討する。 ア 発光ダイオード等からの500nm以下の光により「半導体材料からなる量子ドット」を励起して赤色を発光させることが、当審拒絶理由で引用した特開2004-83653号公報(【0013】、【0024】、【0027】、【0032】を参照。)、特表2002-510866号公報(【0005】、【0024】、【0041】を参照。)及び特開平11-340516号公報(【0031】、【0034】を参照。)に記載されているように、本願の最先の優先日時点で周知であることに照らせば(以下「周知技術」という。)、 引用発明の「赤色発光が可能な半導体層」を「半導体材料からなる量子ドット」とし、該量子ドットを「470nmの波長を有する青色光を発光可能な発光ダイオードチップ」からの光により励起して赤色を発光させることは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。 イ 以上のことから、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明及び上記周知技術から予測し得る範囲内のものである。 3 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-03-06 |
結審通知日 | 2015-03-10 |
審決日 | 2015-03-24 |
出願番号 | 特願2008-518364(P2008-518364) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 肇 星野 浩一 |
発明の名称 | 短波長LEDとダウンコンバージョン物質で白色光を生成するパッケージ設計 |
代理人 | 胡田 尚則 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 出野 知 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 石田 敬 |