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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1303992
審判番号 不服2014-2278  
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-06 
確定日 2015-08-05 
事件の表示 特願2011-553965「多重アンテナ無線通信システムにおいて基地局がリレーノードに制御信号を送信する方法及びそのための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日国際公開、WO2011/093671、平成24年 8月30日国内公表、特表2012-520048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2011年 1月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年 1月14日、(KR)韓国、2010年10月13日、(US)米国、2010年 6月17日、(US)米国、2010年 6月 9日、(US)米国、2010年 6月 7日、(US)米国、2010年 5月28日、(US)米国、2010年 2月 2日、(US)米国、2010年 1月28日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年 2月 6日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成26年 2月 6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成26年 2月 6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成25年 7月 5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「多重入出力(MIMO)無線通信システムにおいて、基地局がリレーノードにリレー物理ダウンリンク制御チャネル(R-PDCCH)を送信する方法であって、
直交周波数分割多重(OFDM)シンボルのそれぞれにおいて、4個の連続した利用可能リソース要素からなる前記R-PDCCHに対する少なくとも1個のリソース要素グループを形成するステップと、
前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループを単位として前記R-PDCCHを送信リソースにマッピングするステップと、
前記送信リソースを用いて前記R-PDCCHを前記リレーノードに送信するステップと、
を有し、
前記4個の連続した利用可能リソース要素は、副搬送波インデックスの昇順にカウントされ、
チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)は、最大8個のアンテナポートを通して送信され、
前記最大8個のアンテナポートに対応する任意のリソース要素において、電力が0のCSI-RSまたは電力が0でないCSI-RSが生じた場合、前記最大8個のアンテナポートに対応する全てのリソース要素は、前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループの形成に利用不可である、R-PDCCH送信方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を
「多重入出力(MIMO)無線通信システムにおいて、基地局がリレーノードにリレー物理ダウンリンク制御チャネル(R-PDCCH)を送信する方法であって、
直交周波数分割多重(OFDM)シンボルのそれぞれにおいて、4個の連続した利用可能リソース要素からなる前記R-PDCCHに対する少なくとも1個のリソース要素グループを形成するステップと、
前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループを単位として前記R-PDCCHを送信リソースにマッピングするステップと、
前記送信リソースを用いて前記R-PDCCHを前記リレーノードに送信するステップと、
を有し、
前記4個の連続した利用可能リソース要素は、副搬送波インデックスの昇順にカウントされ、
チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)は、最大8個のアンテナポートを通して送信され、
前記最大8個のアンテナポートに対応する任意のリソース要素において、電力が0のCSI-RSまたは電力が0でないCSI-RSが生じた場合、前記最大8個のアンテナポートに対応する全てのリソース要素は、前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループの形成に利用不可であり、
前記方法は、前記リレーノードに前記CSI-RSのためのリソース要素パターン情報を伝送するステップをさらに有する、R-PDCCH送信方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。(当審注:アンダーラインは補正箇所を示す。)

3.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件等
上記補正は、本願発明の「基地局がリレーノードにリレー物理ダウンリンク制御チャネル(R-PDCCH)を送信する方法」または「R-PDCCH送信方法」が、「前記リレーノードに前記CSI-RSのためのリソース要素パターン情報を伝送するステップをさらに有する」ことをさらに限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に適合している。
また、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものでもない。

(2)本願の優先権主張について
上記本願発明及び補正後の発明は、本願が優先権を主張する2010年 6月17日、2010年 6月 9日、2010年 6月 7日、2010年 5月28日、2010年 2月 2日及び2010年 1月28日の米国出願明細書には記載されておらず、2010年 10月13日の米国出願明細書に記載されたものと認められる。
したがって、本願発明及び補正後の発明に関する優先権主張は、2010年10月13日(以下、「本願優先日」という。)の米国出願に基づくものと認める。

(3)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、以下検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

[引用発明]
(A)原査定の拒絶理由に引用された、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった(会合の開始日である2010年10月11日には、利用可能となったものと認められる。)LG Electronics Inc., R-PDCCH RE mapping, TSG-RAN WG1 Meeting #62bis, R1-105349(URL, http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62b/Docs/R1-105349.zip)(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「3. Interleaving R-PDCCH
For interleaving R-PDCCH mode, we propose that CSI-RS transmission in Un link is restricted to only in the 2nd slot. The same Rel-8 REG design is agreed for interleaving R-PDCCH case [1] and an example of REG configuration in CRS based R-PDCCH is depicted in Figure 1. As shown in Figure 1, the position of CSI-RS REs can be restricted to the 9th and 10th symbol. Accordingly, the REs in those symbols containing CSI-RS are not used for R-PDCCH.
Such restriction can keep the number of available REs for R-PDCCH in the 2nd slot constant regardless of the CSI-RS port configuration, and also balance the number of available REs for R-PDCCH in each slot as much as possible. Otherwise the available resource for R-PDCCH in the 1st slot will be further decreased compared to that in the 2nd slot.


Figure 1: R-PDCCH REG placement

Proposal#2:
For interleaving R-PDCCH case, CSI-RS transmission in Un link is restricted to only in the 2nd slot, i.e., OFDM symbol #9 and #10. OFDM symbol #9 and #10 are skipped in mapping R-PDCCH REG.」(2頁)
(当審仮訳(以下も同様。):3.インターリービングR-PDCCH インターリービングR-PDCCHモードに対して、我々は、UnリンクにおけるCSI-RSの伝送は、第2スロットにのみ制限することを提案する。同じRel-8のREGデザインが、インターリービングR-PDCCHのケースについて合意され、CRSに基づくR-PDCCHにおけるREGの構成例が図1に示される。図1に示されるように、CSI-RSのREの位置は、第9及び10シンボルに制限することができる。したがって、CSI-RSを含むこれらのシンボルのREは、R-PDCCHに使用されない。
このような制限は、CSI-RSのポートの構成に係わらず、第2スロットにおけるR-PDCCHに利用可能なREの数を一定にすること、及び、また、できる限り、各スロットにおけるR-PDCCHに利用可能なREの数を平均することができる。そうでなければ、第1スロットにおけるR-PDCCHに利用可能なリソースを、第2スロットにおけるものと比べて、さら少なくするこことになる。
(図1は、省略)
図1:R-PDCCHのREG配置
提案#2:
・インターリービングR-PDCCHのケースに対して、UnリンクにおけるCSI-RS伝送は、第2スロット、つまり、OFDMシンボル#9及び#10にのみ制限される。OFDMシンボル#9及び#10は、R-PDCCHのREGのマッピングにおいてスキップされる。)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
a)上記イ.に記載された「R-PDCCH」が、移動無線通信システムの基地局からリレーノードに送信するPhisical Downlink Control Channel(物理ダウンリンク制御チャネル)であることは自明であり、同イ.のFigure 1に記載された「R0」?「R3」が4つのアンテナポートに対応したCommon Reference Signal(セル共通の参照信号)であることも自明であるから、前記移動無線通信システムが、複数のアンテナを使用するMIMOによる無線通信システムであることは明らかである。
したがって、上記引用例1には、MIMO無線通信システムの基地局からリレーノードにR-PDCCHを送信する方法が記載されていると認められる。
b)上記イ.の記載及びFigure 1において、「RE」及び「REG」が、それぞれリソース要素及びリソース要素グループを意味することは自明であり、上記引用例1の方法は、R-PDCCHに割り当て可能な1つのリソース要素グループを4個の連続したリソース要素で構成するものといえる。
また、上記イ.の「OFDM symbol #9 and #10」という記載及びFigure 1から、Figure 1の横軸(l=0?13)がOFDMシンボルのインデックスであり、縦軸(k=0?11)がOFDMの副搬送波のインデックスであることは自明である。
したがって、上記引用例1の方法は、OFDMのシンボルにおいて、4個の連続したリソース要素からなるR-PDCCHに割り当て可能なリソース要素グループを構成するものといえる。
そして、上記引用例1の方法が、R-PDCCHに割り当て可能なリソース要素グループを単位としてR-PDCCHをリソース要素に割り当てること、及び、前記リソース要素を用いてR-PDCCHをリレーノードに送信することは自明である。
また、前記4個の連続したリソース要素は、連続した副搬送波インデックスと対応することも自明である。
c)上記イ.の「As shown in Figure 1, the position of CSI-RS REs can be restricted to the 9th and 10th symbol. Accordingly, the REs in those symbols containing CSI-RS are not used for R-PDCCH.」という記載において、「CSI-RS」がChannel State Information Reference(チャネル状態情報参照信号)であることは自明であるから、上記引用例1の方法では、チャネル状態情報参照信号が送信され、チャネル状態情報参照信号に対応するリソース要素は、R-PDCCHに対するリソース要素として利用されないことが明らかであり、当該リソース要素として利用されないことは、リソース要素グループを構成することに利用されないといえる。

したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「MIMO無線通信システムの基地局からリレーノードにR-PDCCHを送信する方法であって、
OFDMシンボルにおいて、4個の連続したリソース要素からなるR-PDCCHに割り当て可能なリソース要素グループを構成することと、
前記R-PDCCHに割り当て可能なリソース要素グループを単位として前記R-PDCCHをリソース要素に割り当てることと、
前記リソース要素を用いてR-PDCCHをリレーノードに送信することと、
を有し、
前記4個の連続したリソース要素は、連続した副搬送波インデックスと対応し、
チャネル状態情報参照信号が送信され、チャネル状態情報参照信号に対応するリソース要素は、R-PDCCHに対するリソース要素グループを構成することに利用されない、
方法。」

(B)原査定の拒絶理由に引用された、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった(会合の開始日である2010年 8月23日には、利用可能となったものと認められる。)LG Electronics, RE muting design and considerations, TSG-RAN WG1 Meeting #62, R1-104649(URL, http://3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62/Docs/R1-104649.zip)(2010年 8月17日)(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「1. Introduction
CSI-RS design is an important aspect of the system in which effects not only transmission schemes of current standardized release (i.e. Release 10) but transmission schemes for the next releases (e.g. Release 11,12,etc). Thus it is important to consider measurement enhancements for the serving cell and intercell measurement to future-proof the LTE Advanced system for potential multi-antenna transmission techniques such as CoMP. In this contribution, we discuss RE muting design and consideration aspects.」(1頁)
(1.はじめに
CSI-RSの設計は、システムの重要な一面であり、現在の標準化されたリリース(つまり、リリース10)の伝送方式に限らず、次のリリース(例えば、リリース11、12など)の伝送方式にも影響する。したがって、サービングセル及びインターセルの尺度を、CoMPのような潜在的なマルチアンテナ伝送技術に対する将来的に補償されたLTEアドバンストシステムへ尺度を拡張することを検討することは重要である。このため、我々は、REミューティングの設計及び検討すべき面について議論する。)

ロ.「3. RE muting patterns and supported muted RE sets
In the last meeting RAN1 agreed on CSI-RS transmission patterns for Normal and Extended CP, which are shown in Figure 1, 2, and 3.



Figure 1. CSI-RS pattern for FS1/2 in Normal CP

・・・(中略)・・・
The most useful usage case for RE muting is to increase channel measurement for serving and also non-serving cells. This means that allowing RE muting being identical to CSI-RS RE patterns is to most attractive design, which allows fully orthogonal CSI-RS measurement for interested coordinated cells.」(2?3頁)
(3.REのミューティングパターン及びサポートされ、ミュートされたREのセット
前回の会合で、RAN1は、図1、2及び3に示される、標準及び拡張CPに対するCSI-RSの伝送パターンについて合意した。
(図1は、省略)
図1:標準CPのFS1/2に対するCSI-RSパターン
・・・(中略)・・・
REミューティングの最も役立つ利用ケースは、サービングそしてまたノンサービングセルに対するチャネルの領域を増やすことである。このことは、REミューティングをCSI-RSのREパターンと同じにすることは、最も魅力あるデザインであり、関係する調整されたセルに対する完全に直交するCSI-RSの領域を許容する。)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
a)上記イ.及びロ.の記載から、上記引用例2には、MIMO無線通信システムの「CSI-RS」の伝送方法が記載されているものと認められ、「CSI-RS」、「RE」が、それぞれチャネル状態情報参照信号、リソース要素を指すことは自明である。
b)上記Figure 1には、CSI-RSに関して「2 CSI-RS ports」、「4 CSI-RS ports」及び「8 CSI-RS ports」と記載されていることから、上記引用例2の伝送方法では、チャネル状態情報参照信号が、最大8個のアンテナポートを通して送信されることが明らかである。
c)上記イ.及びロ.の記載から、上記引用例2の伝送方法では、チャネル状態情報参照信号のリソース要素が「muting」されることがあることが明らかである。
ここで、当該「muting」されたリソース要素に信号がないので、電力がゼロとなることは技術常識である。

したがって、上記引用例2には、以下の事項(以下、「公知技術」という。)が記載されている。
「MIMO無線通信システムにおいて、チャネル状態情報信号が、最大8個のアンテナポートを通して送信され、
前記最大8個のアンテナポートに対応するチャネル状態情報参照信号のリソース要素を電力がゼロとすること。」

[対比・判断]
補正後の発明と引用発明とを対比すると、
イ.引用発明の「MIMO無線通信システムの基地局からリレーノードにR-PDCCHを送信する方法」と補正後の発明の「多重入出力(MIMO)無線通信システムにおいて、基地局がリレーノードにリレー物理ダウンリンク制御チャネル(R-PDCCH)を送信する方法」との間に差異はなく、引用発明の「・・・構成すること」、「・・・割り当てること」、「・・・送信すること」は、「・・・構成するステップ」、「・・・割り当てるステップ」、「・・・送信するステップ」ということができる。
ロ.引用発明の「OFDMシンボルにおいて、4個の連続したリソース要素からなるR-PDCCHに割り当て可能なリソース要素グループを構成すること」は、補正後の発明の「直交周波数分割多重(OFDM)シンボルのそれぞれにおいて、4個の連続した利用可能リソース要素からなる前記R-PDCCHに対する少なくとも1個のリソース要素グループを形成するステップ」に含まれ、実質的な差異はない。
ハ.引用発明において、「リソース要素」、「リソース要素グループ」は、信号を送信するためのリソースといえることは自明であるから、引用発明の「前記R-PDCCHに割り当て可能なリソース要素グループを単位として前記R-PDCCHをリソース要素に割り当てること」は、補正後の発明の「前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループを単位として前記R-PDCCHを送信リソースにマッピングするステップ」に含まれ、実質的な差異はない。
ニ.引用発明の「前記リソース要素を用いてR-PDCCHをリレーノードに送信すること」は、補正後の発明の「前記送信リソースを用いて前記R-PDCCHを前記リレーノードに送信するステップ」に相当する。
ホ.上記ロ.の検討を踏まえると、引用発明において、「前記4個の連続したリソース要素」は、「利用可能」といえるので、引用発明の「前記4個の連続したリソース要素は、連続した副搬送波インデックスと対応し」と、補正後の発明の「前記4個の連続した利用可能リソース要素は、副搬送波インデックスの昇順にカウントされ」ることとは、いずれも「前記4個の連続した利用可能リソース要素は、連続した副搬送波インデックスと対応し」という点で一致する。
ヘ.引用発明の「チャネル状態情報参照信号が送信され」と、補正後の発明の「チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)は、最大8個のアンテナポートを通して送信され」とは、いずれも「チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)」が「送信され」る点で一致する。
ト.引用発明の「チャネル状態情報参照信号に対応するリソース要素は、R-PDCCHに対するリソース要素グループを構成することに利用されない」と、補正後の発明の「前記最大8個のアンテナポートに対応する任意のリソース要素において、電力が0のCSI-RSまたは電力が0でないCSI-RSが生じた場合、前記最大8個のアンテナポートに対応する全てのリソース要素は、前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループの形成に利用不可であり」とは、いずれも「チャネル状態情報参照信号に対応する」「リソース要素は、前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループの形成に利用不可であ」る点で一致する。

したがって、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「多重入出力(MIMO)無線通信システムにおいて、基地局がリレーノードにリレー物理ダウンリンク制御チャネル(R-PDCCH)を送信する方法であって、
直交周波数分割多重(OFDM)シンボルのそれぞれにおいて、4個の連続した利用可能リソース要素からなる前記R-PDCCHに対する少なくとも1個のリソース要素グループを形成するステップと、
前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループを単位として前記R-PDCCHを送信リソースにマッピングするステップと、
前記送信リソースを用いて前記R-PDCCHを前記リレーノードに送信するステップと、
を有し、
前記4個の連続した利用可能リソース要素は、連続した副搬送波インデックスと対応し、
チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)が送信され、
前記チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)に対応するリソース要素は、前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループの形成に利用不可である、
R-PDCCH送信方法。」

<相違点>
a)上記「前記4個の連続した利用可能リソース要素は、連続した副搬送波インデックスと対応し」に関し、補正後の発明は、「副搬送波インデックスの昇順にカウントされ」るのに対し、引用発明は、当該構成を明示していない点。
b)上記「チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)が送信され」ることに関し、補正後の発明は、「最大8個のアンテナポートを通して送信され」るのに対し、引用発明は、当該構成を明示していない点。
c)上記「前記チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)に対応するリソース要素」に関し、補正後の発明は、「前記最大8個のアンテナポートに対応する全てのリソース要素」であって、「前記最大8個のアンテナポートに対応する任意のリソース要素において、電力が0のCSI-RSまたは電力が0でないCSI-RSが生じた場合」があるのに対し、引用発明は、当該構成を明示していない点。
d)上記「送信方法」において、補正後の発明は、「前記リレーノードに前記CSI-RSのためのリソース要素パターン情報を伝送するステップをさらに有する」のに対し、引用発明は、当該構成を有していない点。

まず、上記相違点a)について検討する。
引用発明においても、リソース要素グループを構成する際に、4個の連続したリソース要素の各々特定しなければならないことは自明である。
すると、引用発明のリソース要素の各々は、副搬送波インデックスと対応することから、4個の連続するリソース要素の各々を特定するために、副搬送波インデックスを用いて所定の順序でカウントすることは必然的に行われることであって、所定の順序を副搬送波インデックスの昇順とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

次に、上記相違点b)及びc)について検討する。
MIMO無線通信システムにおいて、チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)が、最大8個のアンテナポートを通して送信されることは、上記公知技術である。
また、CSI-RSのリソース要素が電力ゼロとなる場合ができることも、上記公知技術であり、引用発明においても、CSI-RSが送信されれば、CSI-RSのリソース要素が電力ゼロでない場合となることは自明である。
すると、上記相違点b)及びc)に係る構成は、引用発明において、CSI-RSの送信方法として、上記公知技術を適用したものであって、その際、引用発明では、CSI-RSのリソース要素をR-PDCCHに対するリソースグループを構成することに利用しないのであるから、CSI-RSのリソース要素が電力ゼロとなった場合でも、当該電力がゼロとなったリソース要素をR-PDCCHに対するリソースグループを構成することに利用せず、CSI-RSに対応する全てのリソース要素(最大8個のアンテナポートに対応する全てのリソース要素)をR-PDCCHに対するリソースグループを構成することに利用しないようにすることは普通に想到し得ることである。
よって、上記相違点b)及びc)に係る構成は、引用発明においても、CSI-RSの送信方法として、公知技術を適用することにより容易に想到し得ることであり、格別困難な点はない。

最後に、上記相違点d)について検討する。
リレーノード等へCSI-RSのためのパターン情報を伝送することは、周知技術(例えば、国際公開2010/107267号(請求項1、4頁[38]?[40]、11頁[93]?[95]参照。)、国際公開2010/056035号(請求項1、3、8、10、3頁[16]?[18]他参照。))である。
引用発明においても、CSI-RSは、リレーノードにとっても必要な情報であり、リレーノードがCSI-RSを受信するためには、CSI-RSのパターン情報を予め伝える必要があることは自明であるから、上記相違点d)に係る構成は、引用発明において、周知技術を採用することにより適宜なし得ることである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明から想到される構成から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、審判請求書において、「本願請求項1(「補正後の発明」に相当。)に係る発明では、2アンテナポートにより定義されるCSI-RSがサービングセルに設定される場合、最大8アンテナポートに対応する全リソース要素は、R-PDCCHに対するリソース要素グループの設定に利用不可となります。即ち、CSI-RSに対するリソース要素は、特定のCSI-RS構成に対応する2アンテナポートにより定義されますが、全リソース要素は、特定のCSI-RS構成に対応する8アンテナポートにより定義されるものです。このため、CSI-RSに対するリソース要素を有するシンボル内に含まれるその他のリソース要素は、データ伝送に対しては制限されません。」と主張し、本願請求項1に係る発明(補正後の発明)の構成と引用例1の図1に示される構成は、異なるものであって、いずれの引用文献にも、補正後の発明の「前記最大8個のアンテナポートに対応する任意のリソース要素において、電力が0のCSI-RSまたは電力が0でないCSI-RSが生じた場合、前記最大8個のアンテナポートに対応する全てのリソース要素は、前記R-PDCCHに対する前記少なくとも1個のリソース要素グループの形成に利用不可であり」という構成は記載されておらず、いずれの引用文献を組み合わせても、補正後の発明とすることはできない旨主張している。
しかしながら、上記請求人の主張の「本願請求項1(「補正後の発明」に相当。)に係る発明では、2アンテナポートにより定義されるCSI-RSがサービングセルに設定される場合、」及び「CSI-RSに対するリソース要素は、特定のCSI-RS構成に対応する2アンテナポートにより定義されます」という点は、補正後の発明である請求項1の記載に基づくものとは認められないので、請求人の主張を採用することはできない。

したがって、上記補正後の発明は、上記引用例1に記載された発明、同引用例2に記載された公知技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成26年 2月 6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、「第2.1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から、当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記相違点a)?c)でのみ相違するので、上記「第2.2.(2)独立特許要件」の項の検討と同様に、本願発明は、上記引用例1に記載された発明及び同引用例2に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び同引用例2に記載された公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-04 
結審通知日 2015-03-10 
審決日 2015-03-23 
出願番号 特願2011-553965(P2011-553965)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
P 1 8・ 575- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 智彦  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 田中 庸介
山澤 宏
発明の名称 多重アンテナ無線通信システムにおいて基地局がリレーノードに制御信号を送信する方法及びそのための装置  
代理人 河合 章  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 中村 健一  
代理人 鶴田 準一  

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