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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H04W
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H04W
管理番号 1304249
審判番号 訂正2015-390059  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2015-06-12 
確定日 2015-07-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5390036号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5390036号に係る特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5390036号は、平成23年7月13日(国内優先権主張 平成22年7月13日)を国際出願日とする特願2012-502377号の一部を平成25年6月3日に新たな特許出願としたものであって、平成25年10月18日に設定登録され、平成27年6月12日に本件訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の主旨は、本件特許の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求める、というものである。

第3 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「・・・車載器。 復号し」とあるのを、「・・・車載器。」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正の目的の適否について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1末尾の「復号し」が、不要な記載を誤記したものであることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、請求項1の誤記である上記「復号し」を削除する訂正であるから、特許法第126条第1項ただし書第2号の誤記の訂正を目的とするものである。

2 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、誤記を削除する訂正であり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 独立特許要件について
(1)訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)について
本件訂正発明1は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
路側機からの路車間通信および車載器からの車車間通信を実行する車載器であって、
前記路側機は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定し、前記複数のサブフレームのいずれかの先頭期間に路車送信期間を設定し、その路車送信期間にパケット信号を送信する路側機であって、
プロトコルのバージョンを示すプロトコルバージョンと、
平文データ、署名付きデータ、または暗号化データを設定可能なメッセージタイプと、
発信元として路側機、緊急車両に搭載された車載器、または一般車両に搭載された車載器を設定可能な発信元種別と、
路側機に固有の公開鍵証明書と、
他の装置に通知すべきデータと、
前記他の装置に通知すべきデータを含む署名対象に対して生成された署名と、
暗号化に使用された共通鍵を特定する鍵IDと、
を含む通信データを生成し、
生成された通信データを、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式のパケット信号としてブロードキャストし、
前記路側機は、前記他の装置に通知すべきデータ及び前記署名を含む暗号化対象を、前記鍵IDで特定される共通鍵を用いて暗号化する路側機であり、
本車載器は、
前記路側機からブロードキャストされたパケット信号を受信する通信部と、
前記路側機と本車載器間で共有される共通鍵を用いて、前記パケット信号に含まれる通信データの暗号化部分を復号し、前記公開鍵証明書に含まれる公開鍵を用いて、復号された署名を検証する処理部と、
を備えることを特徴とする車載器。」

以下、本件訂正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。
本件特許の特許公報には、参考文献として次の文献が記載されている。
参考文献1:特開2003-114877号公報
参考文献2:特開2004-289815号公報
参考文献3:特開2007-318353号公報
参考文献4:特開2006-295836号公報
参考文献5:特開2003-101530号公報
参考文献6:特開2001-320315号公報
参考文献7:中岡 謙 他,車車間・路車間共用通信のための時分割アクセス
制御方式,電子情報通信学会2009年基礎・境界ソサイエティ大会講演論文集,2009年9月1日,p.S-25?S-26,AS-2-3

参考文献1には、送信機が受信機にメッセージを送信する際に、メッセージに含まれるペイロードを暗号化し、署名を付して送信することが記載されている(段落【0052】-【0069】及び【0100】-【0109】、並びに、図2、3、8及び9参照)。
参考文献2には、新規にネットワークに参入しようとする端末Bが、既にネットワーク参入している端末Aに対して、端末Bの公開鍵証明書が含まれた登録要求メッセージを送信し、端末Aが、登録要求メッセージを受信すると、その登録要求メッセージに含まれる端末Bの公開鍵証明書を検証することが記載されている(段落【0058】-【0072】及び図8参照)。
参考文献3には、路車間通信及び車両間通信によって車両外部から情報を取得する車載通信装置において、発信者種別(「車両」、「送信基地局」、「店舗」など)が含まれた内容通知(情報送信元に関する情報)を各情報送信元から受信することが記載されている(段落【0027】、【0034】、【0035】及び【0037】参照)。
参考文献4には、車車間通信によりデータを受信する車両用通信装置において、受信フレームに、データフォーマットのバージョン、発信元の車両を特定するためのID及び車両種別、発信元車両の車両状況などの情報が含まれることが記載されている(段落【0037】-【0042】及び【0061】、並びに、図4及び10参照)。
参考文献5には、路車間通信において、Challenge&Responseによる認証処理の処理時間を短縮する技術が記載されている(段落【0005】-【0007】及び【0050】参照)。
参考文献6には、路車間通信において、路側機の待受けエージェントが行う車載器の認証処理において、待受けエージェントは、公開鍵証明書と待受けエージェントに固有のIDとを車載器に送信し、車載器は、公開鍵証明書を検証し、公開鍵証明書に含まれた公開鍵で共通鍵(生成した乱数)を暗号化し、暗号化した共通鍵と、待受けエージェントのIDとを待受けエージェントに送信し、待受けエージェントは、暗号化された共通鍵を秘密鍵で復号することにより、待受けエージェントLAと車載器で、共通鍵を共有することが記載されている(段落【0046】参照)。
参考文献7には、車車間・路車間共用通信において用いるスーパーフレームの構成に関して、スーパーフレーム内に制御情報期間、路車期間、優先車車期間、及び、一般車車期間を順に設け、路側機は、制御情報期間において制御情報をブロードキャスト送信し、路車期間においてパケットを送信し、車載器は、制御情報期間及び路車期間においてパケット送信を制限し、優先車車期間又は一般車車期間でパケットを送信することが記載されている(第2節、第2.1節及び図1参照)。

しかし、上記参考文献1乃至7のいずれにも、本件訂正発明1の「プロトコルのバージョンを示すプロトコルバージョンと、平文データ、署名付きデータ、または暗号化データを設定可能なメッセージタイプと、発信元として路側機、緊急車両に搭載された車載器、または一般車両に搭載された車載器を設定可能な発信元種別と、路側機に固有の公開鍵証明書と、他の装置に通知すべきデータと、前記他の装置に通知すべきデータを含む署名対象に対して生成された署名と、暗号化に使用された共通鍵を特定する鍵IDと、を含む通信データを生成」してパケット信号として送信する路側機が、「前記他の装置に通知すべきデータ及び前記署名を含む暗号化対象を、前記鍵IDで特定される共通鍵を用いて暗号化する」ものであって、車載器が、「前記路側機と本車載器間で共有される共通鍵を用いて、前記パケット信号に含まれる通信データの暗号化部分を復号し、前記公開鍵証明書に含まれる公開鍵を用いて、復号された署名を検証する処理部」を備えるという構成については、記載も示唆もされていない。
そして、本件訂正発明1は、その発明特定事項により明細書に記載された効果を奏するものである。
したがって、本件訂正発明1は、参考文献1乃至7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
加えて、本件訂正発明1が独立して特許を受けることができないとするその他の根拠も見いだすことはできない。

(2)訂正後の特許請求の範囲の請求項2乃至4に係る発明(以下、「本件訂正発明2乃至4」という。)について
訂正発明2乃至4は、訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正発明1について検討したのと同様の理由で、参考文献1乃至7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
加えて、訂正発明2乃至4が独立して特許を受けることができないとするその他の根拠も見いだすことはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、請求項1乃至4からなる一群の請求項に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第5 むすび
以上のとおり、本件審判請求における請求項1乃至4からなる一群の請求項に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項乃至第7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機からの路車間通信および車載器からの車車間通信を実行する車載器であって、
前記路側機は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定し、前記複数のサブフレームのいずれかの先頭期間に路車送信期間を設定し、その路車送信期間にパケット信号を送信する路側機であって、
プロトコルのバージョンを示すプロトコルバージョンと、
平文データ、署名付きデータ、または暗号化データを設定可能なメッセージタイプと、
発信元として路側機、緊急車両に搭載された車載器、または一般車両に搭載された車載器を設定可能な発信元種別と、
路側機に固有の公開鍵証明書と、
他の装置に通知すべきデータと、
前記他の装置に通知すべきデータを含む署名対象に対して生成された署名と、
暗号化に使用された共通鍵を特定する鍵IDと、
を含む通信データを生成し、
生成された通信データを、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式のパケット信号としてブロードキャストし、
前記路側機は、前記他の装置に通知すべきデータ及び前記署名を含む暗号化対象を、前記鍵IDで特定される共通鍵を用いて暗号化する路側機であり、
本車載器は、
前記路側機からブロードキャストされたパケット信号を受信する通信部と、
前記路側機と本車載器間で共有される共通鍵を用いて、前記パケット信号に含まれる通信データの暗号化部分を復号し、前記公開鍵証明書に含まれる公開鍵を用いて、復号された署名を検証する処理部と、
を備えることを特徴とする車載器。
【請求項2】
前記通信部は、前記路車送信期間以外の車車送信期間において他の車載器からパケット信号を受信するとともに、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式でパケット信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
本車載器の処理部は、
プロトコルのバージョンを示すプロトコルバージョンと、
平文データ、署名付きデータ、または暗号化データを設定可能なメッセージタイプと、
発信元として路側機、緊急車両に搭載された車載器、または一般車両に搭載された車載器を設定可能な発信元種別と、
他の装置に通知すべきデータと、
前記他の装置に通知すべきデータを含む署名対象に対して生成されたMAC(Message Authentication Code)と、
MAC生成、またはMAC生成および暗号化に使用される共通鍵を特定する鍵IDと、
を含む通信データを生成し、
前記通信部は、生成された通信データを、OFDM変調方式のパケット信号としてブロードキャストし、
前記処理部は、前記他の装置に通知すべきデータ及び前記MACを含む暗号化対象を、前記鍵IDで特定される共通鍵を用いて暗号化することを特徴とする請求項1または2に記載の車載器。
【請求項4】
前記路側機、本車載器、他の車載器が属する通信システムでは、複数の共通鍵を含む共通鍵テーブルが複数規定され、共通鍵テーブルが定期的に更新されることを特徴とする請求項3に記載の車載器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2015-07-14 
出願番号 特願2013-116771(P2013-116771)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H04W)
P 1 41・ 856- Y (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 浩兵  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 吉田 隆之
久松 和之
登録日 2013-10-18 
登録番号 特許第5390036号(P5390036)
発明の名称 車載器  
代理人 森下 賢樹  
代理人 森下 賢樹  
代理人 宗田 悟志  
代理人 宗田 悟志  

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