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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1304317
審判番号 不服2014-21881  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-29 
確定日 2015-08-12 
事件の表示 特願2012-280946「渦電流センサ及び検出物判別回路」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日出願公開、特開2013-101129〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成24年12月25日
(平成20年3月4日出願の特願2008-053258号の分割出願)
拒絶査定: 平成26年8月1日付け(送達日:同年同月5日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成26年10月29日
手続補正: 平成26年10月29日(以下、「本件補正」という。)


第2 補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。なお、下線は請求人が付したものであり、補正箇所を示す。

(補正前)
「交流磁界の印加により導電体である検出物に渦電流を発生させる交流磁界発生用コイルと、前記渦電流による磁界を検出する一定方向に感度を持った磁気センサとを有し、磁気センサの感磁方向と同一方向に磁界が通過するように前記交流磁界発生用コイルと磁気センサを配置し、前記交流磁界発生用コイルと磁気センサとの間の磁束線を横切るように検出物が通過するようにして、前記交流磁界発生用コイルからの磁界が検出物の渦電流に変化することによる磁界の損失分を検出するようにしたことを特徴とする渦電流センサ。」

(補正後)
「交流磁界の印加により導電体である検出物に渦電流を発生させる交流磁界発生用コイルと、前記渦電流による磁界を検出する一定方向に感度を持った異方性磁気抵抗素子又はホール素子からなる磁気センサとを有し、磁気センサの感磁方向と同一方向に磁界が通過するように前記交流磁界発生用コイルと磁気センサを配置し、前記交流磁界発生用コイルと磁気センサとの間の磁束線を横切るように検出物が通過するようにして、前記交流磁界発生用コイルからの磁界が検出物の渦電流に変化することによる磁界の損失分を検出するようにしたことを特徴とする渦電流センサ。」

上記補正は、補正後の請求項1において、「磁気センサ」を「異方性磁気抵抗素子又はホール素子からなる磁気センサ」に限定するものである。
よって、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本分割出願の原出願である特願2008-053258号の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭52-152298号公報(以下「引用例」という。)には、「硬貨選別装置」(発明の名称)の発明に関し、次の事項(a)ないし(b)が図面と共に記載されている。

(a)
「本発明は少くとも二通りの周波数をもつ電磁界内に硬貨を置いて夫々の磁界変化を例えば電圧、位相、電流等を測定することで検出し、後段の判定装置で各々の場合の磁界変化に基いて硬貨の真贋及び金種を判定する硬貨選別装置の改良に関するものである。」(第1ページ左欄第16行目?同右欄第1行目)

(b)
「第2図に於いてdは・・・硬貨に印加する交番磁界波形である。eは検出装置に硬貨が存在したときの該検出装置の出力であり、硬貨による影響を受けた交番磁界の波形である。・・・
第3図は本発明の装置の実際を示すものである。・・・即ち励磁コイル(3)は方形波の交番磁界を出力している。硬貨通路(4)を挟んで励磁コイル(3)に対抗して配設される検出装置である検出コイル(5)(又はホール素子等の検出素子)は検査硬貨Cの投入による励磁コイル(3)より誘起される磁界の変化を逐次電圧で捉えて増巾器(10)を介してゲート回路であるアナログスイッチ(6)(7)に出力している。」(第2ページ右下欄第6行目?第3ページ左上欄第13行目)

上記記載(a)ないし(b)、及び第2図ないし第3図の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「交番磁界を硬貨に印加する励磁コイルと、ホール素子からなる検出装置とを有し、硬貨通路を挟んで励磁コイルと検出装置を配設して、硬貨の投入による励磁コイルより誘起される磁界の変化を捉えて出力するようにした硬貨選別装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明において磁界を用いた選別の対象とされる硬貨は「導電体」であるから、引用発明の「交番磁界を硬貨に印加する励磁コイル」と、本願補正発明における「交流磁界の印加により導電体である検出物に渦電流を発生させる交流磁界発生用コイル」とは、共に「交流磁界を導電体である検出物に印加する交流磁界発生用コイル」である点で共通する。
また、ホール素子は通常「一定方向に感度を持った」磁気センサであるから、引用発明の「ホール素子からなる検出装置」と、本願補正発明における「前記渦電流による磁界を検出する一定方向に感度を持った異方性磁気抵抗素子又はホール素子からなる磁気センサ」とは、共に「一定方向に感度を持ったホール素子からなる磁気センサ」である点で共通する。
さらに、引用発明において「硬貨通路を挟んで励磁コイルと検出装置を配設」した構成は、本願補正発明において「前記交流磁界発生用コイルと磁気センサとの間の磁束線を横切るように検出物が通過するように」した構成に相当する。
次に、引用発明において「硬貨の投入による励磁コイルより誘起される磁界の変化を捉えて出力するようにした」点と、本願補正発明における「前記交流磁界発生用コイルからの磁界が検出物の渦電流に変化することによる磁界の損失分を検出するようにした」点とは、共に「前記交流磁界発生用コイルからの磁界の損失分を検出するようにした」点で共通する。
また、引用発明における「硬貨選別装置」と、本願補正発明における「渦電流センサ」とは、共に「センサ」である点で共通する。
してみると、両者の一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「交流磁界を導電体である検出物に印加する交流磁界発生用コイルと、一定方向に感度を持ったホール素子からなる磁気センサとを有し、前記交流磁界発生用コイルと磁気センサとの間の磁束線を横切るように検出物が通過するようにして、前記交流磁界発生用コイルからの磁界の損失分を検出するようにしたセンサ。」

(相違点)
相違点1:本願補正発明においては、「交流磁界の印加により導電体である検出物に渦電流を発生させる」とされ、磁気センサが「前記渦電流による磁界を検出する」ものであり、また検出される「磁界の損失分」も「検出物の渦電流に変化することによる」とされており、センサも「渦電流」センサであるのに対し、引用発明においては、これらの点が特定されていない点で相違する。

相違点2:本願補正発明においては、「磁気センサの感磁方向と同一方向に磁界が通過するように前記交流磁界発生用コイルと磁気センサを配置」しているのに対し、引用発明においてはホール素子からなる磁気センサの感磁方向と励磁コイルの配置関係が特定されていない点で相違する。

(3)判断
ア 相違点1について
引用発明においては、励磁コイルにより交番磁界が導電体である硬貨に印加されているのであるから、その際に硬貨において渦電流が発生していることは、技術常識からみて明らかである。そうすると、引用発明のホール素子は検出する対象に「渦電流による磁界」が含まれる「渦電流」センサであり、また検出される「磁界の損失分」に「検出物の渦電流に変化することによる」ものが含まれるといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
一定方向に感度を持った「ホール素子」により「励磁コイルより誘起される磁界の変化を捉えて出力する」引用発明において、ホール素子の感磁方向と同一方向に励磁コイルにより誘起される磁界が全く通過しなければ、出力は得られないのであるから、引用発明においてもホール素子の感磁方向と同一方向に磁界が通過するように励磁コイルが配置されているといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

してみると、本願補正発明は引用発明であるといえる。
また、本願補正発明は引用発明から当業者が容易に発明をすることができたともいえる。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明であり、特許法第29条1項第3号に規定する発明であるから特許出願の際独立して特許を受けることができない。また、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。(平成26年2月17日提出の手続補正書に係る手続は、却下されている。)

「交流磁界の印加により導電体である検出物に渦電流を発生させる交流磁界発生用コイルと、前記渦電流による磁界を検出する一定方向に感度を持った磁気センサとを有し、磁気センサの感磁方向と同一方向に磁界が通過するように前記交流磁界発生用コイルと磁気センサを配置し、前記交流磁界発生用コイルと磁気センサとの間の磁束線を横切るように検出物が通過するようにして、前記交流磁界発生用コイルからの磁界が検出物の渦電流に変化することによる磁界の損失分を検出するようにしたことを特徴とする渦電流センサ。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開昭52-152298号公報(引用例)等に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、また、本願発明は、引用例等に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないい、というものである。

3 引用例記載の事項・引用発明
引用例に記載されている事項は、上記「第2 補正の却下の決定 2検討 (1)引用例記載の事項・引用発明」に示したとおりである。

4 判断
本願発明は、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明から、「磁気センサ」を「異方性磁気抵抗素子又はホール素子からなる磁気センサ」と限定することを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(3)判断」に記載したとおり、引用発明であり、また、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明であり、また、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条1項第3号に規定する発明であるから特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-18 
結審通知日 2015-06-19 
審決日 2015-06-30 
出願番号 特願2012-280946(P2012-280946)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 洋介  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 堀 圭史
中塚 直樹
発明の名称 渦電流センサ及び検出物判別回路  
代理人 古澤 俊明  

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