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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1304349
審判番号 不服2014-7793  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-25 
確定日 2015-08-13 
事件の表示 特願2010-151977「ラダープログラム作成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年1月19日出願公開、特開2012-14561〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成22年7月2日の出願であって,平成25年6月6日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,同年8月2日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成26年1月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正書が提出され,さらに平成27年3月27日付けで当審からの拒絶理由が通知され,これに対し,同年5月29日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は,平成26年4月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ,請求項1には以下のとおり記載されている。

「プログラマブルロジックコントローラの動作を表すラダープログラムの作成を行うためのラダープログラム作成装置であって、
作成された前記ラダープログラムのうちの一部分であるラダー命令の集合がラダープログラム作成画面上でユーザによって選択された際に、前記ラダー命令の集合の目的を表す説明文の入力を要求し、入力された説明文と前記ラダー命令の集合とを関連付けてプログラムノウハウ情報として記憶装置に記憶させるプログラムノウハウ登録手段と、
前記記憶装置に蓄積済みのプログラムノウハウ情報の前記説明文の中から、検索用に指定された文字列を含む説明文を検索して抽出する処理を行うプログラムノウハウ検索手段と、
前記プログラムノウハウ検索手段によって抽出された前記説明文を表示装置に一覧表示させるプログラムノウハウ一覧表示手段と、
前記表示装置に一覧表示された前記説明文の中から選択された説明文と関連付けられている前記ラダー命令の集合を、前記表示装置に表示させるプログラムノウハウ詳細表示手段とを有し、
前記プログラムノウハウ登録手段を有効にして、前記プログラムノウハウ情報を記憶装置に蓄積するノウハウ吸収モードと、前記プログラムノウハウ検索手段、前記プログラムノウハウ一覧表示手段及び前記プログラムノウハウ詳細表示手段を有効にして、前記記憶装置に蓄積されている前記プログラムノウハウ情報を前記ラダープログラムの作成に利用するノウハウ使用モードとを切り替えて動作可能であることを特徴とするラダープログラム作成装置。」 (以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.引用刊行物及びその記載内容
当審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された,特開平11-39010号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(ア)
「【請求項1】 プログラマブルコントローラにおいて汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ登録するライブラリ登録手段と、
前記レファレンスパラメータに対するコメントを自動的に付加するコメント付加手段と、
使用者の指示に基づき該当するプログラムを前記ライブラリから検索抽出する検索抽出手段と、
前記検索抽出されたプログラムにおけるレファレンスパラメータを特定する特定手段と、
使用者の指示に基づき前記レファレンスパラメータが特定されたプログラムを挿入する挿入手段と、を有することを特徴とするプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置。」

(イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法に係り、特に、汎用的に使用されるプログラムをレファレンスパラメータの導入で共通化してライブラリ登録し、プログラム設計におけるライブラリ探索や探索されたライブラリプログラムの編集処理を簡略化し、蓄積されたライブラリプログラムを効率的に運用し得るプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法、並びに、使用者が必要な機能だけを抽出して、使用者固有の故障診断機能の組み込みを可能とし、故障診断機能の論理を基本的にプログラマブルコントローラ外部で設定して、プログラマブルコントローラの負担を軽減したプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置に関する。」

(ウ)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】・・・本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、汎用的に使用されるプログラムをレファレンスパラメータの導入で共通化してライブラリ登録し、プログラム設計におけるライブラリ探索や探索されたライブラリプログラムの編集処理を簡略化し、蓄積されたライブラリプログラムを効率的に運用し得るPC(プログラマブルコントローラ)のプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法を提供することを目的としている。また、本発明の他の目的は、使用者が必要な機能だけを抽出して、使用者固有の故障診断機能の組み込みを可能とし、故障診断機能の論理を基本的にプログラマブルコントローラ外部で設定して、プログラマブルコントローラの負担を軽減したPC(プログラマブルコントローラ)のプログラム作成支援装置を提供することにある。」

(エ)
「【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明のプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法の実施の形態について、〔第1の実施形態〕、〔第2の実施形態〕の順に図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕図1は本発明の第1の実施形態に係るプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置の構成図である。図1には、当該プログラム作成支援装置102によって作成するユーザプログラムが搭載されるプログラマブルコントローラ(PC)101と、PC101の制御対象103とを併せて例示している。図1において、PC101は、CPU111、当該PC101内部の基本動作を制御するシステムプログラム112、制御対象103とのインタフェースを司る入力回路115および出力回路116、制御対象103に応じた機能プログラム1P?nPを備えて構成されるユーザプログラム113、データやパラメータ等を保持するメモリ114、表示装置118、入力装置119、並びに、プログラム作成支援装置102とのインタフェースを司るPPインタフェース117等を具備した構成である。また、同図において、本実施形態のプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置102は、制御手段121、データ部123およびライブラリ部124を備えた記憶部122、PC101とのインタフェースを司るPPインタフェース125、固有の故障診断プログラム126、表示装置127、並びに、入力装置128を備えて構成されている。記憶部122のデータ部123には、プログラム生成のために参照が必要とされるデータや、プログラム生成の過程で生成されるデータが格納されている。また、ライブラリ部124には、後述の制御手段121によって登録されたライブラリプログラムが格納されている。制御手段121は、PC101において汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ部124に登録するライブラリ登録手段、レファレンスパラメータに対するコメントを自動的に付加するコメント付加手段、使用者の指示に基づき該当するプログラムをライブラリ部124から検索抽出する検索抽出手段、検索抽出されたプログラムにおけるレファレンスパラメータを特定する特定手段、並びに、使用者の指示に基づきレファレンスパラメータが特定されたプログラムを挿入する挿入手段を実現するものであり、具体的には、マイクロプロセッサ等により実現されるものである。次に、本実施形態のプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置102におけるライブラリ登録処理およびプログラム作成処理について、図2および図3のフローチャートを参照して詳細に説明する。尚、以下の説明では、プログラムの表記としては図4に示すようなラダーダイヤグラムを扱うものとして説明を行う。・・・図2は、本実施形態におけるライブラリ登録処理を説明するフローチャートである。まず、ステップS201では、ライブラリとして登録するプログラムの範囲を指定する。次に、ステップS202では、プログラム内でパラメータ設定可能な構成要素をレファレンスパラメータとして指定して組み込む。次に、ステップS203では、プログラムで使用されているレファレンスパラメータに対して自動的にコメントを付加する。尚、該プログラムにコメントが既に登録されている場合には登録する必要はない。・・・図3は、本実施形態におけるプログラム作成処理を説明するフローチャートである。まず、ステップS301では、ライブラリ部124から、使用者の指示に該当するライブラリプログラムを検出抽出する。検出抽出結果は、表示画面上にライブラリプログラム名が一覧表示されるので、ステップS302において、使用者は、使用するライブラリプログラムを選択指示する。次に、ステップS303では、使用するレファレンスパラメータを指定する。・・・以上のように、本実施形態のプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法では、ライブラリ登録手段(ステップS201?S204)によって、プログラマブルコントローラにおいて汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ登録しておき、またコメント付加手段(ステップS203)によってレファレンスパラメータに対するコメントを自動的に付加しておき、プログラム作成に際しては、使用者の指示に基づき検索抽出手段(ステップS301)によって該当するプログラムをライブラリから検索抽出し、特定手段(ステップS303)によって検索抽出されたプログラムにおけるレファレンスパラメータを特定し、使用者の指示に基づき挿入手段(ステップS304)によってレファレンスパラメータが特定されたプログラムを挿入するので、プログラム設計におけるライブラリ探索や探索されたライブラリプログラムの編集処理を簡略化でき、蓄積されたライブラリプログラムを効率的に運用することが可能となる。」


(オ)
「【0007】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法によれば、ライブラリ登録手段(ライブラリ登録ステップ)によって、プログラマブルコントローラにおいて汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ登録しておき、またコメント付加手段(コメント付加ステップ)によってレファレンスパラメータに対するコメントを自動的に付加しておき、プログラム作成に際しては、使用者の指示に基づき検索抽出手段(検索抽出ステップ)によって該当するプログラムをライブラリから検索抽出し、特定手段(特定ステップ)によって検索抽出されたプログラムにおけるレファレンスパラメータを特定し、使用者の指示に基づき挿入手段(挿入ステップ)によってレファレンスパラメータが特定されたプログラムを挿入することとし、汎用的に使用されるプログラムをレファレンスパラメータの導入で共通化してライブラリ登録しておき、レファレンスパラメータを特定してプログラムを統合するので、プログラム設計におけるライブラリ探索や探索されたライブラリプログラムの編集処理を簡略化でき、蓄積されたライブラリプログラムを効率的に運用し得るプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法を提供することができる。・・・」

(カ)
上記記載事項(イ)の「本発明はプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法に係り、特に、汎用的に使用されるプログラムをレファレンスパラメータの導入で共通化してライブラリ登録し、プログラム設計におけるライブラリ探索や探索されたライブラリプログラムの編集処理を簡略化し、蓄積されたライブラリプログラムを効率的に運用し得るプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法・・・に関する。」との記載からみて,刊行物1には「プログラマブルコントローラの動作を表すプログラムの作成を行うためのプログラム作成支援装置」が記載されているといえる。

(キ)
上記記載事項(ア)の「プログラマブルコントローラにおいて汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ登録するライブラリ登録手段」との記載,上記記載事項(エ)の「記憶部122のデータ部123には、プログラム生成のために参照が必要とされるデータや、プログラム生成の過程で生成されるデータが格納されている。また、ライブラリ部124には、後述の制御手段121によって登録されたライブラリプログラムが格納されている。制御手段121は、PC101において汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ部124に登録するライブラリ登録手段、を実現するものであり、・・・まず、ステップS201では、ライブラリとして登録するプログラムの範囲を指定する。・・・該プログラムにコメントが既に登録されている・・・」との記載及び図1,2の記載からみて,刊行物1には「作成されたプログラムのうちの一部分であるプログラムをユーザによって指定された際に,該プログラムに対してコメントを付加し,該コメントと前記プログラムとを関連付けてライブラリプログラムとして記憶部に記憶させるライブラリ登録手段」が記載されているといえる。

(ク)
上記記載事項(ア)の「使用者の指示に基づき該当するプログラムを前記ライブラリから検索抽出する検索抽出手段」との記載,上記記載事項(エ)の「制御手段121は、・・・使用者の指示に基づき該当するプログラムをライブラリ部124から検索抽出する検索抽出手段、・・・を実現するものであり、・・・ステップS301では、ライブラリ部124から、使用者の指示に該当するライブラリプログラムを検出抽出する。検出抽出結果は、表示画面上にライブラリプログラム名が一覧表示されるので、ステップS302において、使用者は、使用するライブラリプログラムを選択指示する。」との記載及び図1,3の記載からみて,刊行物1には「記憶部に蓄積済みのライブラリプログラムのコメントの中から,検索用に指定された文字列を含むコメントを検索して抽出する処理を行う検索抽出手段」及び「前記検索抽出手段によって抽出されたライブラリプログラムの名を表示装置に一覧表示させるライブラリプログラム名一覧表示手段」が記載されているといえる。

(ケ)
上記記載事項(エ)の「本実施形態のプログラマブルコントローラのプログラム作成支援装置およびプログラム作成支援方法では、ライブラリ登録手段(ステップS201?S204)によって、プログラマブルコントローラにおいて汎用的に用いられるプログラムにレファレンスパラメータを組み込むことにより共通化してライブラリ登録しておき、またコメント付加手段(ステップS203)によってレファレンスパラメータに対するコメントを自動的に付加しておき、プログラム作成に際しては、使用者の指示に基づき検索抽出手段(ステップS301)によって該当するプログラムをライブラリから検索抽出し、特定手段(ステップS303)によって検索抽出されたプログラムにおけるレファレンスパラメータを特定し、使用者の指示に基づき挿入手段(ステップS304)によってレファレンスパラメータが特定されたプログラムを挿入するので、プログラム設計におけるライブラリ探索や探索されたライブラリプログラムの編集処理を簡略化でき、蓄積されたライブラリプログラムを効率的に運用することが可能となる。」との記載からみて,刊行物1には「ライブラリ登録手段を有効にして,ライブラリプログラムを記憶部に蓄積するモードと,検索抽出手段とライブラリプログラム名一覧表示手段を有効にして,前記記憶部に蓄積されている前記ライブラリプログラムをプログラムの作成に利用する使用モードとを切り替えて動作可能である」ことが記載されているといえる。

上記記載事項(ア)?(オ),上記認定事項(カ)?(ケ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「プログラマブルコントローラの動作を表すプログラムの作成を行うためのプログラム作成支援装置であって,
作成されたプログラムのうちの一部分であるプログラムをユーザによって指定された際に,該プログラムに対して自動的にコメントを付加し,該コメントと前記プログラムとを関連付けてライブラリプログラムとして記憶部に記憶させるライブラリ登録手段と,
前記記憶部に蓄積済みのライブラリプログラムの前記コメントの中から,検索用に指定された文字列を含むコメントを検索して抽出する処理を行う検索抽出手段と,
前記検索抽出手段によって抽出されたライブラリプログラムの名を表示装置に一覧表示させるライブラリプログラム名一覧表示手段と,
前記ライブラリ登録手段を有効にして,前記ライブラリプログラムを記憶部に蓄積するモードと,前記検索抽出手段と前記ライブラリプログラム名一覧表示手段を有効にして,前記記憶部に蓄積されている前記ライブラリプログラムをプログラムの作成に利用する使用モードとを切り替えて動作可能であるプログラム作成支援装置」(以下「引用発明」という。)

また,当審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された,実願昭62-42524号(実開昭63-151004号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(コ)
「2.実用新案登録請求の範囲
1)ラダーダイアグラムを用いてプログラミングを行うプログラミング装置において、
前記ラダーダイアグラムおよび/または前記ラダーダイアグラムの構成要素をライブラリとして記憶可能なライブラリ記憶手段と、
該ライブラリ記憶手段に記憶された、前記構成要素あるいは前記ラダーダイアグラムを用いて新たにラダーダイアグラムを作成すると共に、当該作成されたラダーダイアグラムおよび/または構成要素を指示に応じて前記ライブラリ記憶手段に記憶させるラダーダイアグラム制御手段と
を具えたことを特徴とするプログラミング装置。
2)実用新案登録請求の範囲第1項に記載のプログラミング装置において、前記ライブラリ記憶手段は、外部記憶手段であることを特徴とするプログラミング装置。」(明細書1頁4行?2頁3行)

(サ)
「[産業上の利用分野]
本考案はプログラミング装置に関し、詳しくはプログラマブルコントローラ等においてラダーダイアグラムと呼ばれる特定のシンボルを用いてプログラミングを行うプログラミング装置に関するものである。」(明細書3頁2?7行)

(シ)
「第3図は第2図で示したn個のライブラリのうちの1つ、ライブラリLkの内容を示すものである。図において4,5,6および7はライブラリ因子を示し、これらは回路の構成要素である単位の接点やコイル、あるいは回路そのものを表わし、それぞれに対応したコードでライブラリLkに格納されている。4A,5A,6Aおよび7Aは、各々の因子を呼び出すときに、ユーザが容易に認識できるように、適切にコードが付されたライブラリ因子名である。
なお、これらライブラリは、初期において単位の接点やコイル等が格納されているのみで、プログラミング時等において作成された回路を、その必要に応じて格納していくような形態としてもよい。」(明細書6頁16行?7頁10行)


(ス)
「第4図は、プログラミング装置2を用いて行うプログラムの処理手順を示すフローチャートである。
最初にステップS41でモードの選択を行う。すなわち、モードとしては編集,ライブラリ参照およびライブラリ登録の3つのモードがあるが、プログラミングの最初にあたってはライブラリ参照を選択してステップS43へ進む。
ステッブS43では、n個のライブラリの中から1つのライブラリを選択する。なお、この選択にあたっては、例えば表示部2Bにn個のライブラリをその内容がユーザに容易に解るような名称で表示して、その中から1つを選択するようにすればよい。次にステッブS44で、選択したライブラリの中から、ライブラリ因子をライブラリ因子名で選択し、ステップS45で選択したライブラリ因子をユーザプログラム領域へ転送する。
上述したライブラリ参照モードが終了した後には、ステップS41で編集モードを選択しステップS42へ進む。ステップS42では、接点やコイルの番号等の記入、あるいは回路要素や回路の削除や挿入を行う。
以上説明した、ライブラリ参照モードおよび編集モードの繰り返しによりユーザはプログラムを作成する。また、プログラミング中に、今後頻繁に使用するであろう回路を作成した場合は、ステップS41で、適宜ライブラリ登録モードを選択してステップS46へ進む。
ステップS46では、ユーザプログラム領域から登録したい回路を選択し、ステップS47でライブラリ因子名を銘名して、次にステップS48で所望のライブラリに登録する。因に、登録されたライブラリ因子は、既存のライブラリ因子と何等変わりなく使用できるのは勿論である。」(明細書7頁14行?9頁7行)

4.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると,
ア 「プログラマブルコントローラ」が一般的には「プログラマブルロジックコントローラ」を意味し,また,該「プログラマブルロジックコントローラ」は「ラダープログラム」により動作するのが技術常識であり,上記記載事項(エ)の「以下の説明では、プログラムの表記としては図4に示すようなラダーダイヤグラムを扱うものとして説明を行う。・・・」との記載及び図4の記載からみて,引用発明の「プログラマブルコントローラの動作を表すプログラムの作成を行うためのプログラム作成支援装置」により「ラダープログラム」を作成していることが明らかであるから,引用発明の「プログラム作成支援装置」は,本願発明の「ラダープログラムの作成を行うためのラダープログラム作成装置」に相当する。

イ 「ラダープログラム」の一部が「ラダー命令の集合」であることは技術常識であり,引用発明の「記憶部」がその機能・構造からみて,本願発明の「記憶装置」に相当し,「指定」及び「コメント」が,それぞれ,「選択」及び「説明文」と技術的に同義であり,また,プログラム作成において「コメントを付加」することが「説明文を入力」することを意味し,さらに,「記憶部に蓄積されたライブラリプログラム」が「記憶装置に記憶されたプログラム情報」の一種であるといえるから,引用発明の「作成されたプログラムのうちの一部分であるプログラムをユーザによって指定された際に,該プログラムに対してコメントを付加し,該コメントと前記プログラムとを関連付けてライブラリプログラムとして記憶部に記憶させるライブラリ登録手段」と,本願発明の「作成された前記ラダープログラムのうちの一部分であるラダー命令の集合がラダープログラム作成画面上でユーザによって選択された際に、前記ラダー命令の集合の説明文を入力し、入力された説明文と前記ラダー命令の集合とを関連付けてプログラムノウハウ情報として記憶装置に記憶させるプログラムノウハウ登録手段」とは,「作成されたラダープログラムのうちの一部分であるラダー命令の集合がユーザによって選択された際に,前記ラダー命令の集合の説明文を入力し,該入力された説明文と前記ラダー命令の集合とを関連付けてプログラム情報として記憶装置に記憶させるプログラム登録手段」である点で共通する。

ウ 再利用するプログラムを抽出する際に,プログラムに付与されたコメント(説明文)の文字列を検索することは,技術常識であるといえるから,引用発明の「前記記憶部に蓄積済みのライブラリプログラムの前記コメントの中から,検索用に指定された文字列を含むコメントを検索して抽出する処理を行う検索抽出手段」と,本願発明の「前記記憶装置に蓄積済みのプログラムノウハウ情報の前記説明文の中から、検索用に指定された文字列を含む説明文を検索して抽出する処理を行うプログラムノウハウ検索手段」とは,「前記記憶装置に蓄積済みのプログラム情報の前記説明文の中から,検索用に指定された文字列を含む説明文を検索して抽出する処理を行うプログラム検索手段」である点で共通する。

エ 「プログラム」に付与される名前は,その特徴が把握できる文字・記号にて表現されるのが一般的であるから,引用発明の「ライブラリプログラムの名」と,本願発明の「ラダー命令の集合の目的を表す説明文」とは,「プログラムの特徴」である点で共通し,引用発明の「前記検索抽出手段によって抽出されたライブラリプログラムの名を表示装置に一覧表示させるライブラリプログラム名一覧表示手段」と,本願発明の「前記プログラムノウハウ検索手段によって抽出された前記説明文を表示装置に一覧表示させるプログラムノウハウ一覧表示手段」とは,「前記プログラム検索手段によって抽出されたプログラムの特徴を表示装置に一覧表示させるプログラム一覧表示手段」である点で共通する。

オ 上記「イ」と同様に,引用発明の「前記ライブラリ登録手段を有効にして,前記ライブラリプログラムを記憶部に蓄積するモード」と,本願発明の「前記プログラムノウハウ登録手段を有効にして,前記プログラムノウハウ情報を記憶装置に蓄積するノウハウ吸収モード」とは,「前記プログラム登録手段を有効にして,前記プログラム情報を記憶装置に蓄積するモード」である点で共通する。

カ 上記「イ」と同様に,引用発明の「前記検索抽出手段と前記ライブラリプログラム名一覧表示手段を有効にして,前記記憶部に蓄積されている前記ライブラリプログラムをプログラムの作成に利用する使用モード」と,本願発明の「前記プログラムノウハウ検索手段、前記プログラムノウハウ一覧表示手段及び前記プログラムノウハウ詳細表示手段を有効にして、前記記憶装置に蓄積されている前記プログラムノウハウ情報を前記ラダープログラムの作成に利用するノウハウ使用モード」とは,「前記プログラム検索手段,前記プログラム一覧表示手段を有効にして,前記記憶装置に蓄積されている前記プログラム情報を前記ラダープログラムの作成に利用する使用モード」である点で共通する。

そうすると,両者は,
「プログラマブルロジックコントローラの動作を表すラダープログラムの作成を行うためのラダープログラム作成装置であって,
作成された前記ラダープログラムのうちの一部分であるラダー命令の集合がユーザによって選択された際に,前記ラダー命令の集合の説明文を入力し,該入力された説明文と前記ラダー命令の集合とを関連付けてプログラム情報として記憶装置に記憶させるプログラム登録手段と,
前記記憶装置に蓄積済みのプログラム情報の前記説明文の中から,検索用に指定された文字列を含む説明文を検索して抽出する処理を行うプログラム検索手段と,
前記プログラム検索手段によって抽出されたプログラムの特徴を表示装置に一覧表示させるプログラム一覧表示手段と,
前記プログラム登録手段を有効にして,前記プログラム情報を記憶装置に蓄積するモードと,前記プログラム検索手段,前記プログラム一覧表示手段を有効にして,前記記憶装置に蓄積されている前記プログラム情報を前記ラダープログラムの作成に利用する使用モードとを切り替えて動作可能であるラダープログラム作成装置。」
の点で一致し,次の点で相違している。

(相違点1)
「ラダー命令の集合」について,本願発明では,「ラダープログラム作成画面上でユーザによって選択され」,「目的を表す説明文の入力を要求し」,「プログラムノウハウ情報として」記憶させられているのに対し,引用発明では,プログラム作成において自動的にコメントが付加されるものであって,その他の点では不明である点。

(相違点2)
「プログラム一覧表示手段」について,本願発明では,「説明文を一覧表示させる」のに対し,引用発明では「ライブラリプログラムの名を一覧表示させる」点。

(相違点3)
表示装置について,本願発明では,「表示装置に一覧表示された前記説明文の中から選択された説明文と関連付けられている前記ラダー命令の集合を、前記表示装置に表示させるプログラムノウハウ詳細表示手段とを有し」ているのに対し,引用発明ではその様な表示手段を有していない点。

5.相違点についての検討
(1)相違点1について
刊行物2の上記記載事項(サ)の記載,上記記載事項(シ)の「第3図は第2図で示したn個のライブラリのうちの1つ、ライブラリLkの内容を示すものである。図において4,5,6および7はライブラリ因子を示し、これらは回路の構成要素である単位の接点やコイル、あるいは回路そのものを表わし、それぞれに対応したコードでライブラリLkに格納されている。4A,5A,6Aおよび7Aは、各々の因子を呼び出すときに、ユーザが容易に認識できるように、適切にコードが付されたライブラリ因子名である。」との記載及び上記記載事項(ス)の「プログラミング中に、今後頻繁に使用するであろう回路を作成した場合は、ステップS41で、適宜ライブラリ登録モードを選択してステップS46へ進む。ステップS46では、ユーザプログラム領域から登録したい回路を選択し」との記載からみて,刊行物2には,「プログラミング中に,今後頻繁に使用するであろうライブラリ因子を,ユーザプログラム領域から選択する」ことが記載されているといえる。そして,刊行物2記載の「ライブラリ因子」及び「ユーザプログラム領域」は,本願発明の「ラダー命令の集合」及び「ラダープログラム作成画面」に相当するものである。
また,刊行物2記載の「ライブラリ因子名」は,その第3図中に記載された「FLICKER7A」が「回路7」の機能・目的を表現しているといえるから,刊行物2には,「今後頻繁に使用するであろうライブラリ因子を,その目的を表すライブラリ因子名を付与して,格納する」ことが記載されているといえる。そして,上記記載事項(シ)の「4A,5A,6Aおよび7Aは、各々の因子を呼び出すときに、ユーザが容易に認識できるように、適切にコードが付されたライブラリ因子名である。」との記載からみて,刊行物2記載の「ライブラリ因子名」は,本願発明の「説明文」に相当するものである。
さらに,「再利用するプログラムに目的等のキーワードを付与し,プログラムノウハウ情報として蓄積する」ことは,従来周知の技術事項である(必要であれば、特開平9-212353号公報(「【0016】再利用情報仕込み手順の要点は、既存設計情報の流用・改造作業で用いた再利用ノウハウを、成果物である再利用設計情報と流用元の既存設計情報を結び付けるキー情報として、キーワード形式で格納することにある。ここで、再利用ノウハウとは、成果物を再利用するときの流用や改造の目的や根拠(理由)、改造の方法について、技術的な観点から説明したものである。いわゆる5W1Hの『Why(なぜ)、How(どのように)』に相当する。」,「【0017】一方、再利用情報検索手順の要点は、当面する新規システムの要求仕様からキーワードを選択し、このキーワードを基に再利用ノウハウを検索して該当する既存設計情報を抽出し、要求仕様に合致する流用元と流用先の流用経緯をもつ既存設計情報を設計者に提示することにある。」)等参照)。
また,引用発明の自動的にコメントを付加することに代えて,より正確に,確実にコメントを付加するために,刊行物2に記載されたもののように,ユーザーがコメントを付与し得るように構成することは,必要に応じて適宜なし得るものであり,格別の顕著性はない。
そうすると,刊行物2記載のプログラミング装置は,「ライブラリ参照モードおよび編集モード」,すなわち,「ノウハウ吸収モードとノウハウ使用モード」を有する点において,本願発明及び引用発明と共通しており,従来周知の課題である「プログラムノウハウを効率的に蓄積・利用する」ために,引用発明に,刊行物2記載の技術事項及び従来周知の技術事項を適用し,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者ならば容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
刊行物2の上記記載事項(ス)の「選択したライブラリの中から、ライブラリ因子をライブラリ因子名で選択し、ステップS45で選択したライブラリ因子をユーザプログラム領域へ転迭する。」との記載からみて,刊行物2には,「ライブラリの中から,ライブラリ因子でプログラムを選択し,該プログラムをユーザプログラム領域へ転迭する」ことが記載されているといえる。そして,引用発明に刊行物2記載の技術事項を適用すると,「ライブラリ因子名を一覧表示させる」ことになり,「ライブラリ因子名」の機能からみて,本願発明の「説明文を一覧表示させる」と同等となることは明らかである。
してみると,引用発明において,刊行物2記載の技術事項を適用して,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者ならば容易に想到し得ることである。

(3)相違点3について
そもそも,プログラムを選択する際に,その内容を確認することは,一般的に行われている技術的事項であり,それを画面上にて実行可能とすることは,当業者ならば必要に応じて適宜選択する設計的事項であるというべきである。
してみると,引用発明において,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者ならば容易に想到し得ることである。

そして,本願発明の効果も,当業者であれば,引用発明,刊行物2記載の技術事項及び従来周知の技術事項から予測し得る範囲のものであって,格別なものとはいえない。
したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2記載の技術事項及び従来周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.まとめ
以上のとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2記載の技術事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-10 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-29 
出願番号 特願2010-151977(P2010-151977)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 長屋 陽二郎
石川 好文
発明の名称 ラダープログラム作成装置  
代理人 酒井 宏明  

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