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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1304351
審判番号 不服2014-10752  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-06 
確定日 2015-08-13 
事件の表示 特願2009-257140「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月26日出願公開,特開2011-102663〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成21年11月10日の出願であって,平成25年8月8日付けで通知された拒絶の理由に対して,平成25年10月16日に意見書および手続補正書が提出されたが,平成26年3月6日付けで拒絶査定され,これに対して,平成26年6月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,審査官により平成26年8月1日付けで前置報告書が作成され,平成26年10月22日に請求人より上申書が提出されたものである。

2 平成26年6月6日の手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1) 本件補正後の本願の発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「外箱と内箱との間に空間が形成された断熱箱体と、前記断熱箱体の内部に設けられた貯蔵室を冷却する冷却器と、前記冷却器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機の吐出側に接続された凝縮器とを備えた冷蔵庫において、
前記内箱の外側面の全面を覆う真空断熱パネルを前記空間に備え、前記真空断熱パネルの庫外側と前記外箱との間に発泡断熱材が配設されておらず、
前記断熱箱体の上部に前記圧縮機が配設されていることを特徴とする冷蔵庫。」
と補正された。

(2) 本件補正の目的
本件補正は,何ら新規事項を追加するものではなく,本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「内箱の外側面を覆う真空断熱パネル」を「内箱の外側面の全面を覆う真空断熱パネル」に限定するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3) 引用例
(a) 本願の出願の前に日本国内において頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-194571号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

(ア) 「【請求項1】
天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の総重量よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の総重量が大きい冷蔵庫。
【請求項2】
天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の体積よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の体積が大きい冷蔵庫。」

(イ) 「【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高さを低くするなどして内容積を減少させることなく、使いにくい上奥部の収納空間をなくし、使いやすい下部引出し式貯蔵室の収納量を増加させたうえに、内容積や省エネ性を損なうことなく断熱箱体の安定性をまし、転倒防止を図る冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の総重量よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の総重量が大きいものである。
【0017】
これによって、真空断熱材の密度が発泡断熱体よりも大きいので、真空断熱材を用いるほど断熱箱体の重量が増加する。真空断熱材の被覆面積を下方重点となるように配置することで冷蔵庫上方に比べて下方の重量を増加させることができる。
【0018】
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
【0019】
また、本発明の冷蔵庫は天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の体積よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の体積が大きいものである。
【0020】
これによって、真空断熱材の密度が発泡断熱体よりも大きいので、真空断熱材を用いるほど断熱箱体の重量が増加する。真空断熱材の被覆面積を下方重点となるように配置することで冷蔵庫上方に比べて下方の重量を増加させることができる。
【0021】
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の冷蔵庫は、高さを低くするなどして内容積を減少させることなく、使いにくい上奥部の収納空間をなくし、使いやすい下部引出し式貯蔵室の収納量を増加させたうえに、断熱箱体の安定性をまし、転倒防止性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
請求項1に記載の発明は、天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の総重量よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の総重量が大きいものである。
【0024】
これによって、真空断熱材の密度が発泡断熱体よりも大きいので、真空断熱材を用いるほど断熱箱体の重量が増加する。真空断熱材の被覆面積を下方重点となるように配置することで冷蔵庫上方に比べて下方の重量を増加させることができ、転倒に対する安定性が向上する。
【0025】
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。
【0026】
請求項2に記載の発明は、天面部に圧縮機を配設した断熱箱体が上下方向に少なくとも二つ以上の断熱区画を設けてあり、前記断熱箱体は内箱と外箱と発泡断熱体と前記発泡断熱体より密度の大きい真空断熱材とで構成され、前記断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の体積よりも、前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の体積が大きいものである。
【0027】
これによって、発泡断熱体よりも密度の大きい真空断熱材の厚みを変えたり、複数枚重ねて使ったりすることで、下方重点となるように真空断熱材を配置でき冷蔵庫上方に比べて下方の重量を増加させて転倒に対する安定性が向上する。
【0028】
また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。」

(ウ) 「【0067】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の概略断面図を示すものであり、図4は真空断熱材の断面図を示すものであり、図5は冷蔵庫の正面扉部を除く面展開図を示すものであり、図6は傾斜時の冷蔵庫概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
【0068】
図3において、断熱箱体1はABSなどの樹脂体を真空成型した内箱22とプリコート鋼板などの金属材料を用いた外箱23とで構成された空間に発泡断熱体24を注入してなる断熱壁を備えている。発泡断熱体24はたとえば硬質ウレタンフォームやフェノールフォームやスチレンフォームなどが用いられる。発泡材としてはハイドロカーボン系のシクロペンタンを用いると、温暖化防止の観点でさらによい。
【0069】
また、発泡前の内箱22と外箱23とで構成される空間には真空断熱材25が外箱側に接着部材(図示せず)を用いて密着貼付けされている。また、真空断熱材25は断熱箱体1の璧厚内に配設するために薄い平面形状のものが必要となる。さらに、ホットメルトなどの接着部材は接着部に空気が混入しないように真空断熱材25貼付け面に全面塗布されている。真空断熱材25は発泡断熱体24と一体に発泡されて断熱箱体1を構成しており、発泡断熱体24と比べて5倍?20倍の断熱性能を有する真空断熱材25により性能向上させるものである。
【0070】
図4に示すように、真空断熱材25は内部をシート状の無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体26とその周囲を覆う複数の材料よりなるガスバリア性フィルム27で構成され、内部を減圧してなる平面状の断熱材である。ガスバリア性フィルム27は減圧後に溶着部28を溶着して減圧状態を維持している。溶着部28を要するフィルム端部は他辺と比べて長くなるので折り返して接着部材(図示せず)で固定してある。
【0071】
真空断熱材25は無機材料を用いるので発泡断熱体24と比べて密度が高いものとなる。発泡断熱体24の密度が20?50kg/m3であるのに対して真空断熱材25は200?250kg/m3と少なくとも4倍以上とすることができる。」

(エ) 「【0079】
冷凍サイクルは凹み部10に配設した圧縮機16と凝縮器(図示せず)と減圧器であるキャピラリと蒸発器20とを環状に接続して構成されている。蒸発器20は冷却ファン21で強制対流熱交換させている。凝縮器(図示せず)はファンを用いて強制空冷してもよいし、外箱23の内側に熱伝導よく貼り付けられた自然空冷タイプであってもよいし、各室断熱扉体間の仕切りに配設して防滴防止を行うための高圧配管を組み合わせてもよい。」

(オ) 「【0084】
また、真空断熱材25の配設位置について図5の断熱箱体1の展開図を元に説明する。真空断熱材25は断熱箱体1の両側面39及び背面40と底面41に貯蔵室の側面および背面のほぼ全面を覆うように貼付けてあり各面下部を基準に上部に向かって配設している。最上部に位置する回転扉式貯蔵室である冷蔵室2の下端面を示すA-A´線(実際には最上部断熱区画の下端面を示すので、冷蔵室2と下部貯蔵室である切替室29,製氷室30とを区画する区画壁の上下方向の中心線を指す)から上部に貼りつけた真空断熱材25の合計面積を斜線部で示している。真空断熱材25は斜線部と比較して無印部の合計面積の方が大きくなるように貼付け位置と大きさを決定している。
【0085】
断熱箱体1の背面40は圧縮機16を配設した凹み部10と、制御基板37を配置した第二の凹み部36が設けてあり真空断熱材25は第二の凹み部36の高さまで配設してある。両側面39に用いる真空断熱材25も合理化のために背面と同一寸法の仕様としている。底面41は冷蔵庫の設置支持点となるキャスター42が4点設けられており、真空断熱材25はこれを避けた寸法で外箱23側に最大限貼りつけられている。キャスター42は安定性を向上させるために最大限キャスター間寸法を拡大している。
【0086】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
【0087】
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板37からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機16の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて放熱して凝縮液化し、キャピラリで減圧されて低温低圧の液冷媒となり蒸発器20に至る。
【0088】
冷却ファン21の動作により、庫内の空気と熱交換されて蒸発器20内の冷媒は蒸発気化する。低温の冷気をダンパ(図示せず)などで分配することで各室の冷却を行う。また複数の蒸発器や減圧器を用いる場合は流路制御手段により必要な蒸発器20へ冷媒が供給される。蒸発器20を出た冷媒は圧縮機16へと吸い込まれる。このようにサイクル運転を繰り返すことで庫内の冷却が行われる。」

(カ) 「【0107】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
【0108】
図において、断熱箱体1の底面41に設けた真空断熱材48の厚みを比較的増加させたので、下方に配置された真空断熱材体積を大きくすることができる。下方の真空断熱材25体積を増加させて重量を増加することで転倒に対する安定性が向上する。
【0109】
また、真空断熱材25は内部をシート状の無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体26とその周囲を覆う複数の材料よりなるガスバリア性フィルム27で構成され、内部を減圧してなる平面状の断熱材であるので、シート状セラミックファイバー成形体26を複数積層して使用することで容易に厚みを変更可能であり、複数の厚みを使用する場合に有利である。
【0110】
なお、厚みを同等の真空断熱材25を用いる場合は複数枚の真空断熱材25を積層させて使用してもよいが、真空断熱材25の平面性がよいので複数枚の接合が容易であり、空気の混入などによる変形などを防止するのに有利である。」

(キ) 「【0119】
真空断熱材625は断熱箱体601の下部に備えられた引出し式の貯蔵室である冷蔵室603のほぼ全面を覆うように貼付けてある。特に本実施例においては、冷蔵室602と冷凍室603の間の断熱壁にも真空断熱材625を設置している。」

(ク) 図3には,実施の形態3における冷蔵庫の概略断面図が示され,図4には,実施の形態3における真空断熱材の断面図が示され,図5には,実施の形態3における冷蔵庫の正面扉部を除く面展開図が示され,図7には,実施の形態4における冷蔵庫の概略断面図が示されている。

(ケ) 上記摘記事項(オ)の特に段落【0084】「真空断熱材25は断熱箱体1の両側面39及び背面40と底面41に貯蔵室の側面および背面のほぼ全面を覆うように貼付けてあり」の記載及び図3の図示内容とからすると,「真空断熱材は貯蔵室を覆うように貼付けた」ことが理解でき,上記摘記事項(ウ)の特に段落【0069】「内箱22と外箱23とで構成される空間には真空断熱材25が外箱側に接着部材(図示せず)を用いて密着貼付けされている。」の記載及び図3の図示内容とからすると,「真空断熱材の庫外側と外箱との間に発泡断熱体が配設されていない」ことが理解できる。

(コ) これらの事項を総合して,特に図3に示す実施の形態3に係るものについて整理すると,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「外箱と内箱とで空間が構成された断熱箱体と,前記断熱箱体に設けられた断熱区画の貯蔵室を冷却する蒸発器と,前記蒸発器に供給される冷媒を吐出する圧縮機と,前記圧縮機の動作により吐出された冷媒が凝縮器にて放熱して蒸発器に至る冷凍サイクルの凝縮器とを備えた冷蔵庫において,
貯蔵室を覆うように貼付けた平面状の真空断熱材を前記空間に断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量よりも,前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量が大きいように備え,前記平面状の真空断熱材の庫外側と前記外箱との間に発泡断熱体が配設されておらず,
前記断熱箱体の上部に前記圧縮機が配設されている冷蔵庫。」

(b) 本願の出願の前に日本国内において頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-61834号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。

(ア) 「【0015】
【実施例】以下、本発明を冷蔵庫に用いられる断熱箱体に適用した第1実施例につき、図1ないし図7を参照して説明する。まず、図1及び図2において、断熱箱体1の外殻を構成する外殻体2は、鋼板製の外箱3と、プラスチック製の内箱4とを組み合わせて構成されている。」

(イ) 「【0019】また、上記外殻体2内の空間部9には、真空断熱パネル15と、真空断熱パネル以外の断熱材として発泡ポリウレタンからなる発泡断熱材16が充填されている。このうち、真空断熱パネル15は、外殻体2の左右両側部、天井部、及び背部に、それぞれ外箱3と内箱4との間に挟持された状態で配設されており、また、発泡断熱材16は、外殻体2の各コーナー部2aに現場発泡によって充填されている。
【0020】ここで、斯様な構成の断熱箱体1を製造する手順を説明する。まず、外箱3における天板部3bの内面側に補強体11の上面部材13を取り付けると共に、外箱3の各側板部3aの内面側に補強体11の側面部材12をそれぞれ取り付ける。そして、外箱3の天板部3b及び各側板部3aの内面にホットメルト等の接着剤(図示せず)を塗布し、それら天板部3b及び各側板部3aの内面に真空断熱パネル15を張り付ける。また、外箱3の背板部3cの内面にも同様な接着剤を塗布し、真空断熱パネル15を張り付けけておく。」

(ウ) 図1には,断熱箱体の横断平面図が示され,図2には,発泡断熱材を充填する前の状態の断熱箱体の横断平面図が示されており,特に,少なくとも外箱3の背板部3cの内面に貼付けられた真空断熱パネル15は,内箱の外側面を覆う態様であることが理解できる。

(エ) 特に,真空断熱パネルは外箱と内箱との間に挟持された状態で配設されていることからして,これらの事項を総合すると,引用例2には次の事項が記載されていると認めることができる。

「外箱と内箱との間に空間部が形成された外殻体を備えた冷蔵庫において,前記内箱の外側面を覆う真空断熱パネルを前記空間部の少なくとも外箱3の背板部3cに備え,前記真空断熱パネルの庫外側と前記外箱との間に発泡断熱材が配設されていないこと。」

(4) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
その機能・構成からして,引用発明の「外箱と内箱とで空間が構成された断熱箱体」は本願補正発明の「外箱と内箱との間に空間が形成された断熱箱体」に相当し,以下同様に,「断熱箱体に設けられた断熱区画の貯蔵室」は「断熱箱体の内部に設けられた貯蔵室」に,「蒸発器」は「冷却器」に,「蒸発器に供給される冷媒を吐出する圧縮機」は「冷却器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機」に,「圧縮機の動作により吐出された冷媒が凝縮器にて放熱して蒸発器に至る冷凍サイクルの凝縮器」は「圧縮機の吐出側に接続された凝縮器」に,「平面状の真空断熱材」は「真空断熱パネル」に,「平面状の真空断熱材の庫外側と外箱との間に発泡断熱体が配設されておらず」の態様は「真空断熱パネルの庫外側と外箱との間に発泡断熱材が配設されておらず」の態様に,「断熱箱体の天面部」は「断熱箱体の上部」に,それぞれ相当している。

したがって,両者は,
「外箱と内箱との間に空間が形成された断熱箱体と,前記断熱箱体の内部に設けられた貯蔵室を冷却する冷却器と,前記冷却器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機と,前記圧縮機の吐出側に接続された凝縮器とを備えた冷蔵庫において,
真空断熱パネルを前記空間に備え,前記真空断熱パネルの庫外側と前記外箱との間に発泡断熱材が配設されておらず,
前記断熱箱体の上部に前記圧縮機が配設されている冷蔵庫。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

<相違点>
真空断熱パネルを空間に備える点に関し,本願補正発明では「内箱の外側面の全面を覆う真空断熱パネルを空間に備え」るのに対して,引用発明では「貯蔵室を覆うように貼付けた平面状の真空断熱材を空間に断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量よりも,前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量が大きいように備え」る点。

(5)判断
上記<相違点>について検討する。
引用発明の平面状の真空断熱材は貯蔵室を覆うように貼付けられているのであって,引用例2に記載された事項は内箱の外側面を覆うことで貯蔵室を覆うようにしているのであるから,引用発明において,貯蔵室を真空断熱パネルで覆う態様として内箱の外側面を真空断熱パネルで覆う態様とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また,引用例1には,例えば段落【0018】に「また、発泡断熱体よりも高い断熱性能を有する真空断熱材を用いるので、壁厚を増加させるなどして内容積を減少させることなく、省エネ性を向上させているのはもちろんのことである。」と記載されている(上記(3)の摘記事項(a)(ア)参照。)ことからすると,冷蔵庫において,断熱のためにできるだけ発泡断熱体を用いずに真空断熱材を用いることは断熱性向上,すなわち,省エネ性を向上させるから,引用発明において断熱性向上のために,断熱すべき箇所に真空断熱材を用いることが引用例1に示唆されているといえる。さらに,引用例1には,例えば段落【0119】に「真空断熱材625は断熱箱体601の下部に備えられた引出し式の貯蔵室である冷蔵室603のほぼ全面を覆うように貼付けてある。」と記載されている(上記(3)の摘記事項(a)(キ)参照。)ことからすると,真空断熱材で冷蔵室の全面を覆うようにすることが示唆されている。その上,外箱と内箱との間に空間部が形成された断熱箱体を備えた冷蔵庫において,できるだけ内箱の外側面の全面を真空断熱パネルで覆うようにすることは,本願の出願の前に周知の事項である(必要であれば,例えば,前置報告書に引用された特開2002-90048号公報(段落【0093】?【0110】,図1等参照。),特開平7-98174号公報(段落【0026】,図6等参照。)等,参照。)。そうすると,引用発明において,断熱性向上のために,引用発明の断熱すべき全ての箇所に真空断熱材を配置するように,内箱の外側面の全面を真空断熱パネルで覆うことによって,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,引用発明の「平面状の真空断熱材を前記空間に断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量よりも,前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量が大きいように備え」る態様は,本願補正発明の「真空断熱パネルを前記空間に備え」る態様の一つといい得るから,両者は実質的に相違するものではない。また,内箱の外側面の全面を真空断熱パネルで覆うとしても,断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の体積よりも,前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の体積が大きいようにする態様とすることによって,引用発明は断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記真空断熱材の総重量よりも,前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記真空断熱材の総重量が大きいように真空断熱部材を備えるられること,すなわち,真空断熱材の体積すなわち厚さを調整することで下方の総重量を大きくできることが引用例1に示唆されているから(引用例1の【請求項2】や段落【0107】?【0110】,等参照(上記(3)の摘記事項(a)(ア)及び(カ)参照。)。),引用発明の上記態様は,必ずしも,引用発明において内箱の外側面の全面を真空断熱パネルで覆うようにすることを阻害するものではない。
なお,請求人は上申書において「引用文献1は、断熱箱体の低重心化を図り断熱箱体の転倒を防止するために、断熱箱体の上部に配置する真空断熱材の総重量を断熱箱体の下部より少なくする技術であるので、断熱材として真空断熱パネルを用いることや、真空断熱パネルが発泡断熱体よりも断熱性能が高いことが、引用文献1に記載されているからといって、引用文献1の冷蔵庫に接した当業者が、内箱の外側面の全面を覆うように真空断熱材を配置して断熱箱体の上部に真空断熱材が多く配置されることになる構造を採用する具体的理由が存在しません。」と主張しているが,上述のとおりであるから,当該主張は採用できない。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明,引用例2に記載された事項,引用例1に示唆された事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された事項,引用例1に示唆された事項及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6) むすび
以上のとおりであって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に記載された発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,以下のとおりのものと認められる。

「外箱と内箱との間に空間が形成された断熱箱体と、前記断熱箱体の内部に設けられた貯蔵室を冷却する冷却器と、前記冷却器に供給する冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機の吐出側に接続された凝縮器とを備えた冷蔵庫において、
前記内箱の外側面を覆う真空断熱パネルを前記空間に備え、前記真空断熱パネルの庫外側と前記外箱との間に発泡断熱材が配設されておらず、
前記断熱箱体の上部に前記圧縮機が配設されていることを特徴とする冷蔵庫。」

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2の記載事項及び引用発明は,上記「2 (3)」のとおりである。

(2) 対比・判断
本願発明は,前記「2 (2)」で検討した本願補正発明における「内箱の外側面の全面を覆う真空断熱パネル」と特定していた点を「内箱の外側面を覆う」と特定して内箱の外側面の「全面」を覆う旨の限定を削除したものに実質的に相当する。
したがって,本願発明と引用発明とを対比すると,前記「2 (4)」にて検討したことからすれば,

<相違点>
真空断熱パネルを空間に備える点に関し,本願補正発明では「内箱の外側面を覆う真空断熱パネルを空間に備え」るのに対して,引用発明では「貯蔵室を覆うように貼付けた平面状の真空断熱材を空間に断熱区画の中で最上部に配設された最上部断熱区画の下端面より上方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量よりも,前記最上部断熱区画の下端面より下方に配置された前記平面状の真空断熱材の総重量が大きいように備え」る点。

で相違しその余の点で一致している。

上記<相違点>について検討すると,前記「2 (5)」にて<相違点>について検討したことからすれば,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

(3) むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-12 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-07-02 
出願番号 特願2009-257140(P2009-257140)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 森本 康正
田村 嘉章
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 夫 世進  
代理人 中村 哲士  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 蔦田 正人  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 正人  
代理人 中村 哲士  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 夫 世進  
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