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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C09D 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09D 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 C09D |
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管理番号 | 1304358 |
審判番号 | 不服2014-14690 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-07-28 |
確定日 | 2015-08-13 |
事件の表示 | 特願2011-112516「複色不定形着色粒子およびその製造方法、複色不定形着色粒子を含有する多彩模様塗料組成物とそれより形成される多彩模様塗膜」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-241107〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成23年5月19日の出願であって、平成25年6月28日付けの拒絶理由の通知に対し、平成25年8月27日に意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、平成26年5月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年7月28日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成26年10月3日付けで前置報告がされたところ、平成26年10月28日付けで上申書が提出されたものである。 2.平成26年7月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成26年7月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (2-1)補正事項 本件補正は、補正前の請求項1、2を補正後の請求項1、2に補正することを含むものである。(当審注:下線部は、補正箇所である。) (補正前) 「【請求項1】 色の異なる複数のエマルション塗料を接触させた状態で、ゲル化膜でカプセル化した不定形物からなることを特徴とする複色不定形着色粒子。 【請求項2】 前記複数のエマルション塗料のうち、任意のエマルション塗料より形成される塗膜と、他のエマルション塗料より形成される塗膜との色差が1?10であることを特徴とする請求項1に記載の複色不定形着色粒子。」 (補正後) 「【請求項1】 色の異なる複数のエマルション塗料を接触させた状態で、ゲル化膜でカプセル化した、複数の不定形物からなることを特徴とする複色不定形着色粒子。 【請求項2】 前記複数のエマルション塗料のうち、任意のエマルション塗料より形成される塗膜と、他のエマルション塗料より形成される塗膜との色差が1?10であることを特徴とする請求項1に記載の複色不定形着色粒子。」 (2-2)補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1における複色不定形着色粒子が「不定形物からなる」との事項を、「複数の不定形物からなる」に補正するものであり、発明を特定するために必要な事項である「不定形物」の個数が「複数」であると限定するものであり、かつ、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2-3)独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1、2に係る発明(以下、「本願補正発明1」、「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。 (2-3-1)引用例に記載の事項 原査定の拒絶の理由において引用文献4として引用された特開昭59-84957号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載及び表示がある。 (ア)特許請求の範囲 「アルカリ増粘性を有する合成樹脂エマルジヨンと顔料とを主要成分とした相互に色相の異なる2種以上の水性着色塗料、または該相互に色相の異なる2種以上の水性着色塗料とアルカリ増粘性を有する合成樹脂エマルジヨンとを、カチオン性を有する水溶性重合体と塩基性物質とを主成分として含み、かつPHが7以上の水性分散媒中に分散し、分散粒子をゲル化させて水分散体とした水性多彩模様塗料。」 (イ)第2頁左上欄16行?右上欄1行 「ゲル化とは、通常のゲル化とは異なり、アルカリ増粘性を有する合成樹脂エマルジヨンの粒子中に含まれるアニオン性基とカチオン性を有する水溶性重合体中に含まれるカチオン性基とが反応して、粒子表面を軟質のゲル状にし、粒子内部が増粘している状態を意味する。」 (ウ)第2頁右下欄5?9行 「顔料としては、たとえば酸化チタン、カーボンブラツク、カドミウム赤、チタン黄、コバルト青、群青等の無機系顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機系顔料、その他任意のものを用いることができる。」 (エ)第4頁左下欄3行?5頁左上欄19行 「得られた合成樹脂エマルジヨンは、アクリル酸の含量が16.2モル%であり、乳白色の固形分濃度40% PH=4.5、粘度 1ポイズであり、PH=9において粘度は1000ポイズ以上であつた。 実施例 1 次の配合割合で水性分散媒を調製した。 カチオン性を有する水溶性重合体 〔昭和高分子(株)社製、ポリフイツクス601 2部 (特殊変性ポリアミン樹脂) 〕 アンモニア水(28%) 4部 5%ヒドロキシエチルセルロース水溶液 50部 〔フジケミカル(株)社製、AH - 15〕 水 200部 分散媒のPH=10.7 次に、上記分散媒を攪拌(攪拌速度100rpm)しながら、第1表のNo. - 2のペースト(分散相)15部を滴下し、次いでNo. - 3のペースト15部を滴下し、最後にNo. - 1のペースト120部を滴下して白赤青混合の分散粒子表面がゲル化し、粒子内部が増粘した粒子を含む水性多彩模様塗料を得た。さらに上記塗料に対して、エチレン - 酢酸ビニル共重合体エマルジヨン〔昭和高分子(株)社製、ポリゾールEVAP- 4〕50部を添加した。 実施例 2 実施例1と同一の配合処方で調製した水性分散媒に第1表のNo. - 4のペースト120部、No. - 5のペースト15部、No. - 6のペースト15部を一度に加え、通常の攪拌機で約10分間攪拌(攪拌速度100rpm)して、白赤青混合の分散粒子表面がゲル化し、粒子内部が増粘した粒子を含む水性多彩模様塗料を得た。さらに上記塗料に対してエチレン - 酢酸ビニル共重合体エマルジヨン〔昭和高分子(株)社製、ポリゾールEVAP- 4〕50部を添加した。 実施例 3 実施例1と同一の配合処方で調製した水性分散媒に第1表のNo. - 7合成樹脂エマルジヨン15部、No. - 2のペースト15部、最後にNo. - 1のペースト120部を実施例1と同様の方法により滴下して、赤白混合模様の中に無色透明な部分を有する、粒子表面がゲル化し、粒子内部が増粘した粒子を含む水性多彩模様塗料を得た。さらに上記塗料に対してエチレン - 酢酸ビニル共重合体エマルジヨン〔昭和高分子(株)社製、ポリゾールEVAP- 4〕50部を添加した。」 (2-3-2)引用例記載の発明 (A)上記(ア)より、引用例には、「アルカリ増粘性を有する合成樹脂エマルジヨンと顔料とを主要成分とした相互に色相の異なる2種以上の水性着色塗料を、水性分散媒中に分散させて、ゲル化された分散粒子」が記載されているといえる。 (B)上記(イ)によれば、前記「分散粒子」におけるゲル化とは、「粒子表面を軟質のゲル状にし、粒子内部が増粘している状態を意味する」のであるから、前記「ゲル化された分散粒子」とは、「粒子表面をゲル化させ、粒子内部が増粘した分散粒子」といえる。 (C)上記(ウ)、(エ)より、引用例には、実施例1,2で用いられている白赤青に限らず、任意の顔料を用いることができる旨記載されているといえる。 上記(ア)(イ)(エ)の記載事項及び(A)(B)の検討事項より、引用例には、 「アルカリ増粘性を有する合成樹脂エマルジヨンと顔料とを主要成分とした相互に色相の異なる2種以上の水性着色塗料を、水性分散媒中に分散させ、分散粒子表面をゲル化させ、粒子内部が増粘した分散粒子。」(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認める。 (2-3-3)対比・判断 (2-3-3-1)本願補正発明1について 本願補正発明1と引用例記載の発明とを対比する。 ○引用例記載の発明の「相互に色相の異なる2種以上の水性着色塗料」は、本願補正発明1の「色の異なる複数のエマルション塗料」に相当する。 ○引用例記載の発明の「分散粒子」は水性着色塗料から得られることから、本願補正発明1の「着色粒子」といえる。 ○引用例記載の発明の「分散粒子表面をゲル化させ」は、当該粒子中に含まれるアニオン性基と水溶性媒体中のカチオン性基とが反応し、当該粒子表面がゲル化することで表面にゲル状の層(膜)が形成することにより、当該粒子がカプセル化されることを示すものであるから、本願補正発明1の「ゲル化膜でカプセル化した」に相当する。 上記より、本願補正発明1と引用例記載の発明とは、 「色の異なる複数のエマルション塗料を、ゲル化膜でカプセル化した、着色粒子。」という点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1> 本願補正発明1では、色の異なる複数のエマルション塗料を「接触させた状態で」ゲル化膜でカプセル化したことが特定されているのに対し、引用例記載の発明では、斯かる点が不明である点。 <相違点2> 本願補正発明1の着色粒子が「複数の不定形物からなる」「複色不定形着色粒子」と特定されているのに対し、引用例記載の発明の着色粒子(分散粒子)について、斯かる点が不明である点。 上記両相違点について検討する。 <相違点1>について 引用例の実施例1、3では、複数のエマルション塗料を順次滴下し、また、実施例2では、複数のエマルション塗料を同時に滴下しており(その際、複数のエマルション塗料を接触させた状態で同時に滴下する本願明細書で開示された着色粒子の製造方法と同一であるかは不明であるので、非接触の状態であるとして、検討を進める。)、水性着色塗料(エマルション塗料)は水性分散媒中に滴下された時点から徐々に表面からゲル化(固形化)が進行し、また、複数の水性着色塗料(エマルション塗料)が滴下される水性分散媒中における個々の水性着色塗料(エマルション塗料)に由来する部分同士の接触及び表層における融着が事後的に生じる結果、個々の着色領域が独立に存在する分散(複合)粒子が得られると推認される。そして、この推認は、複数のエマルション塗料を順次滴下する実施例3で得られる「粒子表面がゲル化した分散粒子」が、No. - 7合成樹脂エマルジヨンに由来する無色透明な領域とNo. - 2のペーストに由来する赤い領域とNo. - 1のペーストに由来する白い領域とが一の分散粒子中に偏在して(独立して)存在するという実験結果と合致する。 したがって、引用例の各実施例で得られる分散粒子(着色粒子)の構成によれば、引用例記載の発明も、複数のエマルション塗料を「接触させた状態で」ゲル化膜でカプセル化した複色着色粒子(分散粒子)といえることから、上記相違点1は実質的なものでない。 <相違点2>について 本願明細書の【0010】には、 『[複色不定形着色粒子] 図1は、本発明の複色不定形着色粒子の一例を示す模式図である。この例の複色不定形着色粒子10は、色の異なる2つの不定形物11a,11bからなる。 ここで、「不定形」とは、圧力等の変化によって形状が容易に変化することを意味し、例えばゲル状などが挙げられる。』 ことが記載されている。すなわち、本願補正発明1の複色不定形着色粒子は、色の異なる複数の不定形物によって構成され、かつ、それぞれの不定形物は、圧力等の変化によって形状が容易に変化する性質を有している。 一方、上記「<相違点1>について」での検討より、引用例記載の発明の「分散粒子表面をゲル化させ、粒子内部が増粘した分散粒子」にも、異なる色の複数の領域が存在している。そして、当該粒子は粒子内部が増粘している以上、粒子内部に存在するそれぞれの領域も増粘しており(すなわち、液体状ではなく、また、固化でもないから)、圧力をかければ形状が容易に変化し、「不定形物」といえる。そして、色の異なる複数の不定形物からなる粒子は複色となる。 よって、引用例記載の発明の分散粒子(着色粒子)も「複数の不定形物からなる複色着色粒子」であるといえるから、上記相違点2も実質的なものでない。 なお、請求人は、平成26年7月28日付け審判請求書において、下記の点を挙げて、本願補正発明1が引用例記載の発明でないことを主張する。 <主張> 『本願明細書の段落[0052]に記載の「エマルション塗料M-1?M17の調製」と同様の方法により、エマルション塗料M-14、M-15、M-17を調製』し、また、『別途、本願明細書の段落[0056]に記載て、引用例に記載の実施例2を下記のように再現、すなわち、 『分散媒が入った分散槽の上方に、独立した3本のノズルを均等に配置した。分散媒をディソルバによりの「分散媒の調製」と同様の方法により、分散媒を調製』し、これらを用い撹拌しながら、第一のノズルからエマルション塗料M-14を、第二のノズルからエマルション塗料M-15を、第三のノズルからエマルション塗料M-17を同時に滴下し、着色粒子を得た。なお、各エマルション塗料の滴下量が同量となるように設定した。また、エマルション塗料と分散媒の割合は、分散媒に投入される全エマルション塗料の合計量:分散媒の=60:40となるように設定した』ところ、『各色のエマルション塗料が個別にゲル化した各色の着色粒子が分散媒中に混在した状態で得られ』るにとどまり、『本願の図1に示すような、色の異なる複数のエマルション塗料を接触させた状態で、ゲル化膜でカプセル化した複数の不定形物からなる複色不定形着色粒子とは異な』る(審判請求書6?8頁)。 上記主張について検討する。 請求人は、引用例の実施例2における分散粒子の製造を、引用例の実施例2で用いられているのとは異なる水性着色塗料を用いて再現し、その結果から引用例記載の発明を認定しようとするが、そのような再現実験から引用例記載の発明を解釈しようとすることが妥当でないことは明らかである。また、請求人は、引用例記載の発明は、本願の図1に示すような複色不定形着色粒子とは異なることを主張するが、本願補正発明1の新規性の判断は、引用例記載の発明と本願の図1に示すものとの異同ではなく、平成26年7月28日付け手続補正書の請求項1記載の発明特定事項を引用例記載の発明が全て満たすか否かである。そして、当該(2-3-3-1)で検討してきたように、引用例記載の発明は、全ての発明特定事項を満たしている。 したがって、本願補正発明1は、引用例記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。 (2-3-3-2)本願補正発明2について 引用例記載の発明でも色相の異なる2種以上の水性着色塗料(色の異なる複数のエマルション塗料)が用いられているが、異なる色相の間には必ず色差が存在し、かつ、色相の異なる2種以上の水性着色塗料(色の異なる複数のエマルション塗料)それぞれの塗膜間でも当該色差は観測されることから、本願補正発明2と引用例記載の発明とは、 「複数のエマルション塗料のうち、任意のエマルション塗料より形成される塗膜と、他のエマルション塗料より形成される塗膜とに色差が存在する複色不定形着色粒子。」という点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点3> 本願補正発明2では、「任意のエマルション塗料より形成される塗膜と、 他のエマルション塗料より形成される塗膜との色差が1?10である」のに対して、引用例記載の発明では、斯かる点の特定がされていない点。 上記相違点3について検討する。 引用例には、上記(C)で示したように、任意の顔料を用いることができる旨記載されている。そして、通常、塗料の製造時における顔料の選択は、所望の意匠性に合わせて、当業者がその都度適宜決定しうる事項であるところ、任意の顔料の組み合わせ次第では、塗膜間の色差が1?10の範囲になり得るというべきである。また、引用例には、少なくとも上記色差が1?10の範囲となる顔料の組み合わせが排除されていない。 したがって、相違点3に係る本願補正発明2の発明特定事項を構成することは、引用例記載の発明に基いて当業者であれば容易になし得ることである。 そして、本願明細書の【0031】に、 「本発明の複色不定形着色粒子10は、色の異なる2つの不定形物11a,11bからなるため、個々の複色不定形着色粒子に陰影ができたように見える。従って、塗膜に優れた意匠性と共に、立体感(奥行き感)があるような深みを付与できる。 特に、色差が1以上、中でも4以上であれば、陰影が際立って見えるようになる。ただし、色差が大きすぎると、特定の色が必ず特定の色に隣接するといった、意匠性における斬新さは得られるものの、塗膜となったときに陰影の付きかたが不自然に見えるようになる傾向にある。従って、色差は10以下が好ましい。」 と記載されているように、本願明細書の図1で示される構造の複色不定形着色粒子10において、不定形物11a、11bの色差を1?10に調製した場合、複色不定形着色粒子の明るい色の不定形物の輪郭に沿って(同系統で)暗い色の不定形が配置されることから、陰影ができたように見えることで、立体感(奥行き感)があるような深みを付与できるとしても、本願補正発明2では、暗い色相の領域が明るい色相の領域の輪郭に配置される必然性はなく、複色不定形着色粒子に陰影ができたような表現にならない場合もあり、立体感(奥行き感)があるような深みを付与できない。このように、本願補正発明2の全範囲にわたり、立体感があるような深みを付与できるという作用効果は存しないので、本願補正発明2の進歩性を検討するにあたり、有利な効果を参酌することはできない。 よって、本願補正発明2は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。 (2-3-4)まとめ よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (3-1)本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成25年8月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、上記2.(2-1)の(補正前)で示したものである。 (3-2)原査定の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1及び本願発明2は、特開昭59-84957号公報(引用例)記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 (3-3)引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由において引用された特開昭59-84957号公報(引用例)記載の発明は、上記2.(2-3-2)において示したとおりである。 (3-4)当審の判断 (3-4-1)本願発明1についての対比・判断 上記2.(2-3-3-1)において、その特許独立要件を検討した本願補正発明1は、前記2.(2-2)に記載したとおり、本願発明1において、不定形物の個数を複数に特定したものであるから、発明を特定するために必要な事項を限定するものである。 そして、このような発明を特定するために必要な事項をより狭い範囲に限定的に減縮した本願補正発明1が、引用例記載の発明であることは、上記2.(2-3-3-1)に記載したとおりであるから、本願発明1についても、上記2.(2-3-3-1)に記載したものと同様の理由により、引用例記載の発明であるといえる。 (3-4-2)本願発明2についての対比・判断 上記2.(2-3-3-2)において、その特許独立要件を検討した本願補正発明2は、前記2.(2-2)に記載したとおり、本願発明2が引用する本願発明1において、不定形物の個数を複数に特定したものである本願補正発明1を引用するものであるから、発明を特定するために必要な事項を限定するものである。 そして、このような発明を特定するために必要な事項をより狭い範囲に限定的に減縮した本願補正発明2が、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、上記2.(2-3-3-2)に記載したとおりであるから、本願発明2についても、上記2.(2-3-3-2)に記載したものと同様の理由により、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.請求人の主張について 請求人は、平成26年10月28日付け上申書中で、補正後の請求項2に減縮する予定であると述べるが、前記2.(2-3-3-2)にて記載したとおり、仮に補正後の請求項2に減縮する、すなわち、補正後の請求項1を削除するとしても、補正後の請求項2に係る発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は特許を受けることができないとの結論に変わりない。 5.むすび したがって、本願発明1は、引用例記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本願発明2は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 それゆえ、請求項3-5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-10 |
結審通知日 | 2015-06-16 |
審決日 | 2015-06-29 |
出願番号 | 特願2011-112516(P2011-112516) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C09D)
P 1 8・ 575- Z (C09D) P 1 8・ 56- Z (C09D) P 1 8・ 572- Z (C09D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁科 努 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
國島 明弘 岩田 行剛 |
発明の名称 | 複色不定形着色粒子およびその製造方法、複色不定形着色粒子を含有する多彩模様塗料組成物とそれより形成される多彩模様塗膜 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 三義 |