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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1304360
審判番号 不服2014-15872  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-11 
確定日 2015-08-13 
事件の表示 特願2012-221761「無線ICデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日出願公開、特開2013- 13148〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2008年7月18日(優先権主張2007年7月18日,2008年2月26日 日本国)を国際出願日とする特願2009-523685号の一部を平成24年7月23日に新たな特許出願として出願した特願2012-162403号の一部を平成24年10月4日に新たな特許出願として出願したものであって,平成25年12月12日付け拒絶理由通知に対して平成26年2月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが同年5月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年8月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書により補正がなされた(以下,「本件補正」という。)ものである。

2 本件補正についての補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正により,平成26年2月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1は,平成26年8月11日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1として,次のように補正された。

(補正前)
「送受信信号を処理する無線ICと,
グランド電極を有し,前記無線ICを搭載したプリント配線基板と,
機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と,
を備え,
前記ケース及び/又は前記金属部品は,前記グランド電極に接続され,かつ,所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を介して前記無線ICに接続され,
前記ケース及び/又は前記金属部品は放射板として機能すること,
を特徴とする無線ICデバイス。」(以下,「本願発明」という。)

(補正後)
「送受信信号を処理する無線ICと,
グランド電極を有し,前記無線ICを搭載したプリント配線基板と,
機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と,
を備え,
前記ケース及び/又は前記金属部品は,前記グランド電極に接続され,かつ,所定の共振周波数を有する共振回路を含む給電回路を介して前記無線ICに接続され,
前記ケース及び/又は前記金属部品は,前記共振回路の前記共振周波数によって決定される周波数の信号を放射する放射板として機能すること,
を特徴とする無線ICデバイス。」(以下,「本願補正発明」という。)

上記補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「放射板」を,「前記共振回路の前記共振周波数によって決定される周波数の信号を放射する放射板」と特定することにより,特許請求の範囲を限定的に減縮するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。
また,特許法第17条の2第4項(シフト補正)に違反するものでもない。
そこで,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。

(2)引用発明と周知技術
A 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-335180号公報(以下,「引用例」という。)には,「携帯電話機」(発明の名称)に関し,以下の事項アが図面とともに記載されている。

ア 「【0017】
【発明の実施の形態】図1は,この発明の一実施の形態による携帯電話機1の構成を示す斜視図である。図1において,この携帯電話機1は,ヒンジ部2で結合された上部ケース3および下部ケース4を備え,ヒンジ部2を中心として折り畳み可能になっている。
【0018】上部ケース3の表面には受話器5と液晶パネル6が設けられ,下部ケース4の表面には送話器7とダイヤルボタン8が設けられ,上部ケース3と下部ケース4はフレキシブルケーブル9で接続されている。上部ケース3内には後述するシールドボックス14が設けられており,このシールドボックス14が基地局へ信号を送信するとともに基地局からの信号を受信するためのアンテナを兼ねている。
【0019】携帯電話機1の使用者は,下部ケースを手に持ち,受話器5を耳に当てて通話する。非通話時は,携帯電話機1は折り畳まれてたとえば使用者の衣服のポケットに収められる。
【0020】図2は,上部ケース3およびその内部の構成を示す断面図である。図2において,上部ケース3の少なくとも表面は絶縁物で構成されており,その内壁表面には導電性部材によってシールド層3aが形成されている。上部ケース3内には積層基板10が収容されており,積層基板10の表面には液晶表示装置などを構成する種々の電子部品11?13,…が搭載されている。
【0021】積層基板10は,複数の導電層と複数の絶縁層を交互に積層したものである。各導電層は,電源層,グランド層,信号配線層などとして用いられる。図2では,図面の簡単化のため,電子部品11?13,…用のグランド層10bと,シールド用のグランド層10dと,電子部品11?13,…とグランド層10bの間に設けられた絶縁層10aと,グランド層10b,10d間に設けられた絶縁層10cとが示されている。グランド層10dおよびシールド層3a間は導通状態にされており,グランド層10dおよびシールド層3aはシールドボックス14を構成している。シールドボックス14は,電子部品11?13,…を外部ノイズから保護するとともに,電子部品11?13,…で発生したノイズが外部に漏れるのを防止し,さらにアンテナを兼ねている。
【0022】下部ケース4およびその内部も,上部ケース3およびその内部と基本的には同じ構造である。すなわち図3に示すように,下部ケース4は,積層基板10′と,それをシールドするためのシールドボックス14′とを含む。積層基板10′およびシールドボックス14′は,図2で示した積層基板10およびシールドボックス14と同じ構成である。積層基板10′の表面には,送信回路15,受信回路などを構成する複数の電子部品が搭載されている。上部ケース3内の積層基板10と下部ケース4内の積層基板10′とはフレキシブルケーブル9で接続されている。積層基板10,10′の電子部品用のグランド層10bと10b′は導通し,シールド用のグランド層10dと10d′は導通し,電子部品用のグランド層10b,10b′とシールド用のグランド層10d,10d′とは絶縁されている。
【0023】ここで,この携帯電話機1では,図4に示すように,送信回路15の接地端子が積層基板10′のグランド層10b′に接続され,送信回路15の出力端子がフレキシブルケーブル9を介して積層基板10のグランド層10dすなわちシールドボックス14に接続され,シールドボックス14の外皮がアンテナとして用いられる。シールドボックス14は従来のロッドアンテナ40よりも十分に大きいので,携帯電話機1の使用者の手の状態による利得の変化が従来よりも小さくなり,信号の送受信を安定に行なうことが可能となる。」

上記摘記事項アによれば,特に【図1】?【図4】に記載された実施の形態において,以下の技術事項が読み取れる。

a 上部ケース3において,積層基板10のグランド層10dおよびシールド層3aはシールドボックス14を構成し,グランド層10dがフレキシブルケーブル9を介して送信回路15の出力端子に接続されることで,前記シールドボックスの外皮14がアンテナとして用いられる。

b 送信回路15は下部ケース4の積層基板10’に搭載されている。

c 積層基板10,10’のシールド用グランド層10dと10d’は,フレキシブルケーブル9により導通している。

上記技術事項及びこの分野における技術常識を総合勘案すると,上記引用例には次の発明が記載されていると認める。

「送信回路15と,
グランド層10d’が形成され,前記送信回路15を搭載した積層基板10’と
積層基板10のグランド層10d及び上部ケース3の内壁表面に導電性部材によって形成されたシールド層3aで構成されたシールドボックス14と,
を備え,
前記シールドボックス14のグランド層10dは前記グランド層10d’と導通し,かつ,フレキシブルケーブル9を介して前記送信回路15の出力端子に接続され,
前記シールドボックス14の外皮がアンテナとして用いられる,
携帯電話機。」(以下,「引用発明」という。)

B 周知技術
例えば,特開平9-232854号公報(以下,「周知例1」という。)には,「移動無線機用小型平面アンテナ装置」(発明の名称)に関し,次の事項イが記載され,特開2003-179426号公報(以下,「周知例2」という。)には,「アンテナ装置及び携帯無線装置」(発明の名称)に関し,次の事項ウが記載されている(下線は,当審が付与した。)。

イ 「【0016】以下,本発明の実施の形態について,図1から図7を用いて説明する。
(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1におけるアンテナ装置を示す図である。図1において,1は第1導電板であり銅板等の金属板で形成され,2は第2導電板であり無線機の回路基板上のグランドプレーンパターンを利用する。銅板(第1導電板1)と回路基板(第2導電板2)との間をモールド材等の絶縁体によって機械的に支持することで,1,2のそれぞれは距離tの間隔をもって配置される。一般にtは2mmないし5mm程度に選ばれる。さらに1,2は,銅板等の金属板で形成された接続部3により電気的に接続されて,端面短絡1/4波長マイクロストリップアンテナ(MSA)を構成する。以上は図5の従来技術における移動無線機用小型平面アンテナと同一の構造を示している。本実施の形態1においては,第1導電板1上で接続部3からc1の距離を隔てた点に給電部4を置き,その給電部4にその共振周波数を使用周波数付近に合わせた直列共振回路5の一端を接続して,その他端を給電端子8に接続するように構成している。本実施の形態1においては,直列共振回路5は,無線機の回路基板上に実装したインダクタンス6とコンデンサ7により構成している。給電端子8は無線機側のアンテナ切替回路に接続される。
・・・(中略)・・・
【0019】図1において,給電部4と給電端子8との間に,直列共振回路5を挿入し,直列共振回路5の共振周波数を,平面アンテナの共振周波数付近に選び,インダクタンス6のインダクタンスLとコンデンサ7の容量Cとの比,すなわち,L/Cを最適な値に選ぶことで,図6の39に示すような2共振インピーダンス整合特性を得ることができる。このとき,入力VSWRが2以下の周波数範囲(帯域幅)が最大となるようなL/Cの最適値が存在し,その最適値は,c1の長さが長いほど(すなわち給電部4のインピーダンスが高いほど)小さい値となり,Lが小さく,Cが大きい値となる。ここで例えばc1を約10mm程度に選んだ場合,図6の39に示すように帯域幅は約95MHzとなり,38に比較して1.9倍の帯域幅が得られる。また,95MHzの帯域幅全体にわたって良好な放射効率を得ることができる。」(周知例1)

ウ 「【0030】
【発明実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)図1は,本発明の第1の実施の形態のアンテナ装置を示す図である。以下,アンテナの動作周波数を800MHz帯及び1500MHz帯に設定して説明する。
【0031】板状素子1及び板状素子2はそれぞれ800MHz帯及び1500MHz帯に対応する逆Fアンテナ素子である。板状素子1と板状素子2は,その大部分がスリット5によって絶縁されるが,給電部4の近傍において電気的に接続される。一般には,板状素子1と板状素子2は1枚の板金の一部にスリット5を設けることによって成形される。
【0032】板状素子1及び板状素子2からなる逆Fアンテナ素子の一部は,短絡部3によって地板6に電気的に接地される。地板6は携帯無線機の回路基板上のグランド(接地電位)であり,逆Fアンテナのグランドプレーンとして動作する。
【0033】板状素子1及び板状素子2からなる逆Fアンテナ素子の寸法は,Wが例えば35mmに設定され,Dが例えば20mmに設定される。逆Fアンテナ素子と地板6との間隔Hは例えば6mmに設定される。
【0034】給電部4には,インダクタンス7及びコンデンサ8を直列接続した直列共振回路9と,インダクタンス10及びコンデンサ11を直列接続した直列共振回路12が並列に接続される。直列共振回路9と直列共振回路12が並列に接続された他端が給電端子13に接続され,この給電端子13が無線回路(送受信回路)に給電される。
【0035】インダクタンス7及びコンデンサ8の容量値は,直列共振回路9の共振周波数が800MHz帯になるように設定される。また,インダクタンス10及びコンデンサ11の容量値は,直列共振回路12の共振周波数が1500MHz帯になるように設定される。
・・・(中略)・・・
【0043】この問題を解決するために,図1に示す本実施形態のアンテナ装置では,800MHz帯の直列共振回路9に加えて,1500MHz帯の直列共振回路12を並列に接続している。これにより,1500MHz帯における給電回路のインピーダンスを低くしてVSWR特性を確保することができる。
【0044】図1に示す本実施形態のアンテナ装置の給電端子13におけるVSWR特性を図2に示す。図2において,14は800MHz帯のVSWR特性を,15は1500MHz帯のVSWR特性をそれぞれ示す。これから,VSWRが3以下の帯域幅は,800MHz帯において約120MHz,1500MHz帯において約80MHzである。
【0045】以上に述べたように,本発明の第1の実施の形態のアンテナ装置によれば,複数の周波数で動作する逆Fアンテナの給電部に各動作周波数に対応した複数の直列共振回路を並列接続して挿入することで,複数の周波数バンドにおいて広い周波数帯域が得られる。」(周知例2)

上記周知例1,2に記載されているように,移動無線機のアンテナにおいて,帯域幅やVSWR特性等のアンテナ特性の確保を目的として「アンテナの使用周波数を共振周波数とする共振回路を給電回路に設けること。」は周知技術である。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを,主たる構成要件毎に順次対比する。

a 引用発明の「送信回路15」が送信信号を処理することは自明であり,また,本願補正発明の「無線IC」は「送受信信号を処理する」のであるから「送信回路」を備えることは自明であり,そうすると,引用発明の「送信回路15」と本願補正発明の「送受信信号を処理する無線IC」とは,「送信信号を処理する送信回路」の点で共通する。
b 引用発明の「グランド層10d’」は,送信回路15が搭載される積層基板10’のグランド層であって,本願補正発明の「グランド電極」に含まれる。
c 引用発明の「積層基板10’」は,送信回路15が搭載される配線基板であるから本願補正発明の「プリント配線基板」に相当するものであって,両者は「配線基板」の点で共通する。
d 引用発明の「シールドボックス14」は,【図2】からも明らかなように,携帯電話機の上部ケース3の内部に形成された「シールドボックス」であるから,「機器のケース」とも言えるものである。
そうすると,引用発明の「積層基板10のグランド層10d及び上部ケース3の内壁表面に導電性部材によって形成されたシールド層3aで構成されたシールドボックス14」は,本願補正発明の「機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品」に含まれる。
e 引用発明の「前記シールドボックス14のグランド層10dは前記グランド層10d’と導通し」は,本願補正発明の「前記ケース及び/又は前記金属部品は,前記グランド電極に接続され」に相当する。
f 引用発明の「フレキシブルケーブル9」は,「送信回路15の出力端子に接続され」るから,「給電回路」と言うことができる。
g 引用発明の「アンテナとして用いられる」と本願補正発明の「信号を放射する放射板として機能する」とは実質的に同義である。
h 引用発明の「携帯電話機」は「無線デバイス」と言うことができる。

してみると,両者の一致点及び相違点は,以下のとおりある。

(一致点)
「送信信号を処理する送信回路と,
グランド電極を有し,前記送信回路を搭載した配線基板と,
機器のケース及び/又は機器内部に配置された金属部品と,
を備え,
前記ケース及び/又は前記金属部品は,前記グランド電極に接続され,かつ,給電回路を介して前記送信回路に接続され,
前記ケース及び/又は前記金属部品は,信号を放射する放射板として機能する,
無線デバイス。」

(相違点1)
「送信信号を処理する送信回路」に関し,
本願補正発明では「送受信信号を処理する無線IC」であるのに対し,
引用発明では単に「送信回路15」である点。

(相違点2)
「配線基板」が,
本願補正発明では「プリント配線基板」であるのに対し,
引用発明では「積層基板10’」である点。

(相違点3)
「給電回路」に関し,
本願補正発明のものは「所定の共振周波数を有する共振回路を含む」のに対し,
引用発明のものはそのような回路を有しない点。

(相違点4)
「信号を放射する放射板」が,
本願補正発明では「前記共振回路の前記共振周波数によって決定される周波数の信号を放射する放射板」であるのに対し,
引用発明では単に「アンテナ」である点。

(相違点5)
「無線デバイス」が,
本願補正発明では「無線ICデバイス」であるのに対し,
引用発明では「携帯電話機」である点。

(4)判断
上記各相違点につき検討する。

(相違点1)及び(相違点5)について
引用発明の「積層基板10’」の表面には受信回路も搭載されており(段落【0022】),引用発明のような「携帯電話機」において,「送信回路15」や受信回路が無線信号に係る送受信信号を処理するものであることは明らかであるが,さらに,携帯電話機において部品の小型化が一般的な課題であることに鑑みれば,引用発明の「送信回路15」と受信回路とをIC化して本願補正発明のように「送受信信号を処理する無線IC」とすることに何ら困難性はない。
そして,そのような無線ICを備えた「携帯電話機」を「無線ICデバイス」と称することも当業者であれば適宜なし得ることである。
したがって,上記(相違点1)及び(相違点5)はいずれも格別なものということはできず,引用発明の「送信回路15」を本願補正発明のように「送受信信号を処理する無線IC」とすること,及び,引用発明の「携帯電話機」を本願補正発明のように「無線ICデバイス」とすることは,いずれも当業者が適宜なし得たものである。

(相違点2)について
配線基板の配線等を「プリント」によって形成することは周知慣用技術であり,引用発明の「積層基板10’」を本願補正発明のように「プリント配線基板」とすることは当業者が適宜なし得たものである。

(相違点3)及び(相違点4)について
まず,前記「(2)引用発明及び周知技術」の「B 周知技術」に示したように,移動無線機のアンテナにおいて,帯域幅やVSWR特性等のアンテナ特性の確保を目的として「アンテナの使用周波数を共振周波数とする共振回路を給電回路に設けること。」は周知技術である。
引用発明の「携帯電話機」においても,帯域幅やVSWR特性等に関する所望のアンテナ特性の確保を目的として上記周知技術を採用し,「給電回路」が「所定の共振周波数を有する共振回路を含む」構成とすること(相違点3)は,当業者が容易になし得ることである。
さらにこのとき,上記「所定の共振周波数」は「アンテナの使用周波数」であるから,「携帯電話機」の「アンテナ」から放射される信号の周波数が該「所定の共振周波数」の信号,すなわち,「共振回路の共振周波数によって決定される周波数の信号」となることは明らかである。
そうすると,引用発明の「アンテナ」を本願補正発明のように「前記共振回路の前記共振周波数によって決定される周波数の信号を放射する放射板」とすること(相違点4)は,上記周知技術を引用発明に採用することにより自ずと達成される構成に過ぎない。

また,本願補正発明の作用効果も,当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。

(5)まとめ
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明,周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は前記「2 (1)補正の内容」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明と周知技術
原査定の拒絶の理由に引用された引用発明と周知技術は,前記「2 (2)引用発明と周知技術」の項でそれぞれ「引用発明」,「周知技術」として認定したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は,前記「2 (1)補正の内容」で検討したとおり,本願補正発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が,前記「2 (3)対比」,「2 (4)判断」で説示したとおり引用発明,周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,周知技術及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-10 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-30 
出願番号 特願2012-221761(P2012-221761)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 努高橋 宣博角田 慎治  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 新川 圭二
中野 浩昌
発明の名称 無線ICデバイス  
代理人 特許業務法人プロフィック特許事務所  

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