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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23P
管理番号 1304363
審判番号 不服2014-17452  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-02 
確定日 2015-08-13 
事件の表示 特願2010-210208「ボルト締結支持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月29日出願公開、特開2012-61589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年9月17日の出願であって、平成26年3月6日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正書が提出され、さらに平成27年3月25日付けで当審からの拒絶理由が通知され、これに対し、同年5月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は、平成27年5月8日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、請求項1には、次のとおり記載されている。

「作業者がボルト締め付け工具によって被締結物にボルトを締め付ける際に、該ボルトを支持して該被締結物のボルト孔に案内するボルト締結支持装置であって、
前記ボルト締め付け工具の先端部の径と略同一の内径を有するボルト案内部と、
前記ボルト案内部に近接して設けられる締め付け指示部と、
複数のボルトを前記被締結物のそれぞれ複数のボルト孔に締め付けるときに、適正な締め付け順序に基づいて、前記締め付け指示部によって、作業者が締め付けるボルト孔を指示する制御手段と、
を具備し、
前記ボルトが装着された前記ボルト締め付け工具を前記ボルト案内部に差し込むことで、前記ボルト締め付け工具に装着された前記ボルトと前記ボルト孔との軸心が一致するように構成され、
前記制御手段は、前記ボルトが装着された前記ボルト締め付け工具が前記ボルト案内部に差し込まれたかどうかを確認し、前記ボルト締め付け工具が前記ボルト案内部に差し込まれたことを認識していなければ、前記ボルト締め付け工具を回転しない、
ボルト締結支持装置。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.引用刊行物とその記載事項
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された、特開2008-200812号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)
「【請求項1】
所定の締結順番に従ってワークに設定された締結箇所に締結部材を締結して組み立てる際に、前記ワークに取り付けた状態で前記各締結箇所に適合する部位に開口部が設けられるとともに、各開口部に対応した各締結箇所への前記締結部材の締結順番を示す指示部が各開口部の近傍に設けられたテンプレートを用いる組立方法であって、
前記各指示部が示す締結順番に従って当該指示部が示す前記開口部に適合した締結箇所に前記締結部材を締結することを特徴とする組立方法。
【請求項2】
前記指示部を、前記締結順番に従って発光する発光体で構成するとともに、発光した指示部が示す締結箇所への締結完了を検出した際に、締結順番が次の締結箇所を示す指示部を発光することを特徴とした請求項1記載の組立方法。」

(イ)
「【0025】
前記組立システム1は、制御部を構成するシーケンサー21を備えている。このシーケンサー21は、マイコンを中心に構成されており、記憶装置に記憶されたプログラムに従って動作するように構成されている。
【0026】
また、前記組立システム1は、部品棚31を備えており、該部品棚31には、複数の収容部32,・・・が設けられている。各収容部32,・・・には、締結部材としてのボルト33,・・・が収容されており、各収容部32,・・・には、ねじ部の長さや径など異なるサイズのボルト33,・・・が類別して収容されている。各収容部32,・・・には、取出口を開閉するシャッター34,・・・が設けられており、各シャッター34,・・・は、前記シーケンサー21からの制御信号に応じて開閉作動するように構成されている。これにより、該シーケンサー21からの制御信号によって前記シャッター34,・・・が開放された収容部32のボルト33,・・・だけを取り出せるように構成されている。
【0027】
前記シーケンサー21には、前記ボルト33,・・・を回動して締め付ける工具としてナットランナー用コントローラ91を介してナットランナー41が接続されており、前記ナットランナー用コントローラ91は、前記ナットランナー41への通電を制御できるように構成されている。このナットランナー41は、当該ナットランナー41による締め付けトルクが設定値に達した際に、トルクアップ信号を前記ナットランナー用コントローラ91に出力するように構成されており、該ナットランナー用コントローラ91は、このトルクアップ信号を入力することによって、前記ナットランナー41で締結するボルト33の締め付けトルクが前記設定値に達したことを検出できるように構成されている。
【0028】
また、前記シーケンサー21には、組立時において前記コントロールバルブ2に対して位置決めされるテンプレート51が接続されている。
【0029】
該テンプレート51は、透明板によって構成されており、作業中において、前記コントロールバルブ2への取付面を目視できるように構成されている。なお、前記テンプレート51は、不透明な板で構成しても良い。
【0030】
このテンプレート51は、図外のワークセット治具に位置決め固定されるように構成されており、前記コントロールバルブ2も前記ワークセット治具に位置決め固定されるように構成されている。これにより、前記ワークセット治具を介して、前記テンプレート51を前記コントロールバルブ2に位置決めできるように構成されている。
【0031】
前記テンプレート51には、前記アッパボディ11の前記締結箇所13,・・・に設けられた前記ボルト穴14,・・・と合致する部位に、円形の開口部61,・・・が設けられており、該開口部61は、前記ボルト穴14にセットしたボルト33を回動する前記ナットランナー41のヘッド62を挿入できる大きさに設定されている。
【0032】
前記各開口部61,・・・の近傍には、図2にも示すように、各開口部61,・・・に対応した各締結箇所13,・・・への前記ボルト33の締結順番を示す指示部としてのランプ71,・・・が設けられている。各ランプ71,・・・は、前記締結順番に従って発光する発光体を構成しており、発光したランプ71が示す開口部61に対応した締結箇所13へのボルト33の締結完了を検出した際に、締結順番が次の締結箇所13を示すランプ71を点灯して発光するように構成されている。これにより、前記各ランプ71,・・・が示す締結順番に従って、当該ランプ71が示す前記開口部61に適合した締結箇所13に前記ボルト33を締結することにより、前記コントロールバルブ2を組み立てられるように構成されている。
【0033】
そして、前記各開口部61,・・・の開口縁部には、当該開口部61に前記ボルト33や前記ナットランナー41の前記ヘッド62が挿入されたことを検出するセンサ81が設けられている。該センサ81は、光を投光する投光部82と、該投光部82からの光を受光する受光部83とからなり、前記投光部82と前記受光部83とは、前記開口部61の中央を中心とした点対称位置に配置されている。
【0034】
前記受光部83は、前記投光部82からの光の受光状態を受光信号として前記シーケンサー21に出力するように構成されており、該シーケンサー21は、前記受光部83からの前記受光信号を入力することによって、当該開口部61に前記ボルト33や前記ナットランナー41の前記ヘッド62が挿入されたか否かを判断できるように構成されている。」


(ウ)
「【0041】
この締結処理では、図4に示したように、始めにボルト33を締め付ける締結箇所13に合致した開口部61を示すランプ71を点灯する(SB1)。このランプ71の点灯を確認した作業者は、前記ナットランナー41の前記ヘッド62を、点灯したランプ71に対応した開口部61に挿入する。
【0042】
このとき、前記コントロールバルブ2のアッパボディ11に取り付けられた前記テンプレート51には、前記ボルト33の締結箇所13に適合した部位に前記開口部61が設けられている。このため、この開口部61によって前記ボルト33を締結すべき箇所を明確にすることができる。これにより、ナットランナー41を操作して締結作業を行う場合であっても、前記ボルト33の締結忘れを防止することができる。
【0043】
そして、前記シーケンサー21は、前記開口部61に対応する前記センサ81の受光部83からの前記受光信号を検出することで、当該開口部61に前記ナットランナー41の前記ヘッド62が挿入されたか否かを判断する(SB2)。
【0044】
前記開口部61に前記ナットランナー41の前記ヘッド62が挿入された際には、前記センサ81の前記投光部82から前記受光部83への光が遮られるので、その旨が前記受光信号として前記シーケンサー21に出力される。この受光信号を入力した前記シーケンサー21は、前記ナットランナー41への通電を開始し、当該ナットランナー41を作動可能とする(SB3)。」


(エ)
上記記載事項(イ)の「前記テンプレート51には、前記アッパボディ11の前記締結箇所13,・・・に設けられた前記ボルト穴14,・・・と合致する部位に、円形の開口部61,・・・が設けられており、該開口部61は、前記ボルト穴14にセットしたボルト33を回動する前記ナットランナー41のヘッド62を挿入できる大きさに設定されている。」(【0031】)との記載によれば、開口部61は、ボルト33を支持してコントロールバルブ2のボルト穴14にナットランナー41を案内するものであって、ナットランナー41のヘッド62の径と略同一の内径を有するものとみることができる。

(オ)
上記記載事項(ウ)の「前記開口部61に前記ナットランナー41の前記ヘッド62が挿入された際には、前記センサ81の前記投光部82から前記受光部83への光が遮られるので、その旨が前記受光信号として前記シーケンサー21に出力される。この受光信号を入力した前記シーケンサー21は、前記ナットランナー41への通電を開始し、当該ナットランナー41を作動可能とする(SB3)。」(【0044】)との記載によれば、「ナットランナー41が開口部61に差し込まれたかどうかを確認し、前記ナットランナー41が前記開口部61に差し込まれたことを認識していなければ、前記ナットランナー41を回転しない」ものとみることができる。

上記記載事項(ア)?(ウ)、上記認定事項(エ)?(オ)及び図面並びに当業者の技術常識によれば、上記刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「作業者がナットランナー41によってコントロールバルブ2にボルト33を締め付ける際に、該ボルト33を支持して該コントロールバルブ2のボルト穴14に案内する組立システム1であって、
前記ナットランナー41のヘッド62の径と略同一の内径を有する開口部61と、
前記開口部61に近接して設けられるランプ71と、
複数のボルト33を前記コントロールバルブ2のそれぞれ複数のボルト穴14に締め付けるときに、適正な締め付け順序に基づいて、前記ランプ71によって、作業者が締め付けるボルト穴14を指示するシーケンサー21と、
を具備し、
前記シーケンサー21は、前記ナットランナー41が前記開口部61に差し込まれたかどうかを確認し、前記ナットランナー41が前記開口部61に差し込まれたことを認識していなければ、前記ナットランナー41を回転しない、
組立システム1。」(以下「引用発明」という。)

4.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「ナットランナー41」、「コントロールバルブ2」、「ボルト33」、「ボルト穴14」、「組立システム1」、「ヘッド62」、「開口部61」、「ランプ71」、「シーケンサー21」は、本願発明の「ボルト締め付け工具」、「被締結物」、「ボルト」、「ボルト孔」、「ボルト締結支持装置」、「先端部」、「ボルト案内部」、「締め付け指示部」、「制御手段」に相当する。

そうすると、両者は、
「作業者がボルト締め付け工具によって被締結物にボルトを締め付ける際に、該ボルトを支持して該被締結物のボルト孔に案内するボルト締結支持装置であって、
前記ボルト締め付け工具の先端部の径と略同一の内径を有するボルト案内部と、
前記ボルト案内部に近接して設けられる締め付け指示部と、
複数のボルトを前記被締結物のそれぞれ複数のボルト孔に締め付けるときに、適正な締め付け順序に基づいて、前記締め付け指示部によって、作業者が締め付けるボルト孔を指示する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、前記ボルト締め付け工具が前記ボルト案内部に差し込まれたかどうかを確認し、前記ボルト締め付け工具が前記ボルト案内部に差し込まれたことを認識していなければ、前記ボルト締め付け工具を回転しない、
ボルト締結支持装置。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点1〉
「ボルト締め付け工具」について、本願発明では、ボルトが装着された「ボルト締め付け工具」であるのに対して、引用発明では「ボルト締め付け工具」にボルトが装着されているかどうか不明である点。

〈相違点2〉
本願発明では、ボルト締め付け工具をボルト案内部に差し込むことで、ボルト締め付け工具に装着されたボルトとボルト孔との軸心が一致するように構成されているのに対し、引用発明ではその点が不明である点。

5.相違点についての検討
(1)相違点1について
上記相違点1に係る構成は、単に、対象となる「ボルト締め付け工具」について、ボルト締め付け作業前にボルトが工具に装着されているかどうかの違いであるとみることができる。そして、ボルト締め付け工具において、ボルト締め付け作業前に工具にボルトが装着されているものは従来周知(必要であれば、刊行物2(段落【0019】)等参照)であり、また、ボルトを締め付け作業前に工具に装着せずに、被締結物のボルト孔の方に装着するものも従来周知であるところ、そのどちらを採用するかは選択的技術事項にすぎないものである。
したがって、引用発明において、対象となる「ボルト締め付け工具」について、ボルト締め付け作業前にボルトが装着された状態のボルト締め付け工具を採用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者ならば従来周知の技術事項に基づいて必要に応じて適宜なし得るものであり、格別の顕著性はない。

(2)相違点2について
当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された、特開平11-198055号公報(以下「刊行物2」という。)には、ガイド板にねじ穴と同一軸心にドライバの軸を挿通可能なガイド穴が形成しているものが記載されている(【請求項1】)。また、ボルト穴にボルト締め付け工具に装着されたボルトを差し込み締め付ける場合、斜め締めを回避するためにボルトとボルト孔との軸心が一致するように差し込むことは、技術常識ともいえる。
してみると、引用発明において、ボルト33が装着されたナットランナー41を開口部61に差し込むことで、ナットランナー41に装着されたボルト33とボルト孔との軸心が一致するようし、上記相違点2に係る構成とすることは、刊行物2の記載事項及び技術常識に基づき、当業者ならば容易に想到し得るものであり、格別の顕著性はないものである。

そして、本願発明の効果も、当業者であれば、引用発明、刊行物2の記載事項及び従来周知の技術事項から予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2の記載事項及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2の記載事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-09 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-06-29 
出願番号 特願2010-210208(P2010-210208)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 三澤 哲也
石川 好文
発明の名称 ボルト締結支持装置  
代理人 矢野 寿一郎  
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