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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1304364 |
審判番号 | 不服2014-20101 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-10-06 |
確定日 | 2015-08-13 |
事件の表示 | 特願2010-166295「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 29066〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年7月23日の出願であって、原審において平成26年1月20日付けで拒絶理由が通知され、同年3月11日付けで手続補正されたが、同年7月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月6日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年10月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の平成26年3月11日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された 「人間の皮膚に類似した感触を持つ柔軟体から成り、人間のミニマルデザインの外観を持つように、人間の胴体に相当しかつ胴体と見える胴体部分、前記胴体部分の上にあって人間の頭に相当しかつ頭と見える頭部分、前記胴体部分の両側に突出して人間の腕または手に相当しかつ手と見える手部分および前記胴体部分から下方に延びて人間の脚に相当しかつ脚と見える脚部分を含む本体を備え、前記本体は、両側から指で挟むようにして持つことが可能な大きさであり、さらに 前記本体に内蔵され、音声の入力に従って発呼処理を実行する発呼手段、着呼を伝える音声出力手段、および前記音声出力手段によって着呼が伝えられているとき、着呼操作に応答して通話可能状態を確立する確立手段を含む電話機能回路を備える、携帯電話機。」 という発明(以下「本願発明」という。)を、 「人間の皮膚に類似した感触を持つ柔軟体から成り、一見して人と分かるが、男性とも女性とも、高齢者とも幼児とも認識できるような、年齢や性別が、見る人によって、どのようにも解釈できる人間のミニマルデザインの外観を持つように、人間の胴体に相当しかつ胴体と見える胴体部分、前記胴体部分の上にあって人間の頭に相当しかつ頭と見える頭部分、前記胴体部分の両側に突出して人間の腕または手に相当しかつ手と見える手部分および前記胴体部分から下方に延びて人間の脚に相当しかつ脚と見える脚部分を含む本体を備え、前記本体は、両側から指で挟むようにして持つことが可能な大きさであり、さらに 前記本体に内蔵され、音声の入力に従って発呼処理を実行する発呼手段、着呼を伝える音声出力手段、および前記音声出力手段によって着呼が伝えられているとき、着呼操作に応答して通話可能状態を確立する確立手段を含む電話機能回路を備える、携帯電話機。」 という発明(以下「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、シフト補正、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「人間のミニマルデザイン」に関し、「一見して人と分かるが、男性とも女性とも、高齢者とも幼児とも認識できるような、年齢や性別が、見る人によって、どのようにも解釈できる人間のミニマルデザイン」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するとともに、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。 (2)引用発明 原審の拒絶理由に引用された、本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-357259号公報(平成16年12月16日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明はインターネット技術を用いた音声伝送技術および遠隔制御技術に関する。」(2頁) ロ.「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 音声品質を上げただけでは電話での会話の楽しさが増すとは必ずしも言えないが、ロボット型VoIP電話機を利用することにより声色の変化・身振り手振り・視覚等を加えた実在とバーチャルとが混在した会話が楽しめるようになる。IT社会における新たな安価で楽しいコミュニケーション手段を提供することを課題とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 以上の課題を解決するために、請求項1の発明は、インターネット・LAN・無線LANなどのデジタル信号を用いたVoIP技術によるハンズフリー電話機であり、VoIP技術によるIP電話機がアナログ電話機より使用音声帯域を広くとれることを利用して、高品質でリアルな音質の通話をしつつ、同時にデジタル信号に制御信号を含ませることにより、電話機に実装された演算手段により再生音声の質を変化させたり、お互いに相手の動作部分を動作させたり、カメラ部からの映像を相互に送りあうことができる、あたかも通話相手が目の前にいるかのように通話ができるロボット型VoIP電話機である。 【0005】 【発明の実施の形態】 この発明の一実施形態を、図1に示す。 このロボット型VoIP無線電話機は縫いぐるみ等の形態をなし、マイクロフォン4・スピーカー5を備え、無線LAN1・8を経由してハンズフリー通話が可能となっている。胴部に備えた演算手段6はVoIP通信の処理と同時に目に備えたCCDカメラ2、顔面部・手・足等に備えた動作部を制御する。CCDカメラにより取り込まれ送信された映像は表示装置により表示可能であり、通話者はパソコン等をLAN経由でこのロボット型VoIP無線電話機と接続することにより、例えば見たい風景を見るために相手側ロボット型VoIP電話機の顔部の向きを変え、あるいは目を動かすなどこのロボット型VoIP電話機を制御することが可能である。 発呼・着呼操作等はリモート補助入力装置(図示せず)により受信部3を通じて操作することもできる。 【0006】 「実施形態の効果」 この実施形態によればあたかも遠隔地にいる通話相手が自らの部屋に訪問しているかのような、或いは遠隔地に相手を訪問しているかのような会話を楽しむことができる。 【0007】 「他の実施形態」 図1の実施形態ではVoIP無線電話機であるが、充電部とVoIP電話機部が一体となった有線VoIP電話機でもよい。またアニメーションキャラクタのような造形でもよい。」(2?3頁) 上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0005】における「ロボット型VoIP無線電話機は縫いぐるみ等の形態をなし、・・・胴部に備えた演算手段6はVoIP通信の処理と同時に目に備えたCCDカメラ2、顔面部・手・足等に備えた動作部を制御する。」との記載、及び図1によれば、引用例のロボット型VoIP無線電話機は、人間を模した縫いぐるみの形態をした本体を備えており、図1によれば、人間を模した縫いぐるみの形態をした本体は、人間を模した縫いぐるみの胴部と見える胴部部分、人間を模した縫いぐるみの頭と見える頭部分、人間を模した縫いぐるみの手と見える手部分、人間を模した縫いぐるみの足と見える足部分が見て取れるから、ロボット型VoIP無線電話機は、人間を模した縫いぐるみの胴部と見える胴部部分、胴部部分の上にあって人間を模した縫いぐるみの頭と見える頭部分、胴部部分の両側に突出して人間を模した縫いぐるみの手と見える手部分および胴部部分から下方に延びて人間を模した縫いぐるみの足と見える足部分を含む本体を備えているということができる。 また、上記ロ.の【0005】における「ロボット型VoIP無線電話機は縫いぐるみ等の形態をなし、マイクロフォン4・スピーカー5を備え、無線LAN1・8を経由してハンズフリー通話が可能となっている。胴部に備えた演算手段6はVoIP通信の処理と同時に目に備えたCCDカメラ2、顔面部・手・足等に備えた動作部を制御する。・・・通話者はパソコン等をLAN経由でこのロボット型VoIP無線電話機と接続することにより、・・・発呼・着呼操作等はリモート補助入力装置(図示せず)により受信部3を通じて操作することもできる。」との記載、及び図1によれば、ロボット型VoIP無線電話機は、本体に、スピーカー(5)、演算手段(6)を内蔵していることが見て取れる。そして、前述の演算手段(6)が、VoIP通信処理をし、ロボット型VoIP無線電話機が発呼・着呼動作をする以上、ロボット型VoIP無線電話機は、発呼手段と、着呼操作に応答して通話可能状態を確立する確立手段を含む電話機能回路を備えていることは明らかである。 したがって、上記引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「人間を模した縫いぐるみの胴部と見える胴部部分、前記胴部部分の上にあって人間を模した縫いぐるみの頭と見える頭部分、前記胴部部分の両側に突出して人間を模した縫いぐるみの手と見える手部分および前記胴部部分から下方に延びて人間を模した縫いぐるみの足と見える足部分を含む本体を備え、 前記本体に内蔵され、発呼手段、スピーカー(5)、および着呼操作に応答して通話可能状態を確立する確立手段を含む電話機能回路を備える、ロボット型VoIP無線電話機。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「人間を模した縫いぐるみの胴部と見える胴部部分」、「人間を模した縫いぐるみの頭と見える頭部分」、「人間を模した縫いぐるみの手と見える手部分」、「人間を模した縫いぐるみの足と見える足部分」及び「スピーカー(5)」は、後述する相違点を除いて、補正後の発明の「人間の胴体に相当しかつ胴体と見える胴体部分」、「人間の頭に相当しかつ頭と見える頭部分」、「人間の腕または手に相当しかつ手と見える手部分」、「人間の脚に相当しかつ脚と見える脚部分」及び「音声出力手段」にそれぞれ相当する。 b.引用発明の「ロボット型VoIP無線電話機」と、補正後の発明の「携帯電話機」とは、後述する相違点を除いて、「電話機」という点で一致する。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「人間の胴体に相当しかつ胴体と見える胴体部分、前記胴体部分の上にあって人間の頭に相当しかつ頭と見える頭部分、前記胴体部分の両側に突出して人間の腕または手に相当しかつ手と見える手部分および前記胴体部分から下方に延びて人間の脚に相当しかつ脚と見える脚部分を含む本体を備え、さらに 前記本体に内蔵され、発呼手段、音声出力手段、および着呼操作に応答して通話可能状態を確立する確立手段を含む電話機能回路を備える、電話機。」 (相違点1) 電話機の「本体」の材質に関し、 補正後の発明は、「人間の皮膚に類似した感触を持つ柔軟体から成る」のに対し、引用発明は、その様な特定がない点。 (相違点2) 電話機の「本体」の形態に関し、 補正後の発明は、「一見して人と分かるが、男性とも女性とも、高齢者とも幼児とも認識できるような、年齢や性別が、見る人によって、どのようにも解釈できる人間のミニマルデザインの外観を持つように」構成されているのに対し、引用発明は、その様な構成を備えていない点。 (相違点3) 電話機の「本体」の大きさに関し、 補正後の発明は、「前記本体は、両側から指で挟むようにして持つことが可能な大きさである」のに対し、引用発明は、その様な特定がない点。 (相違点4) 「発呼手段」に関し、 補正後の発明は、「音声の入力に従って発呼処理を実行する」ものであるのに対し、引用発明は、発呼手段であるものの、当該「音声の入力に従って発呼処理を実行する」ものでない点。 (相違点5) 「音声出力手段」に関し、 補正後の発明は、「着呼を伝える」ものであるのに対し、引用発明は、スピーカー(5)であるものの、「着呼を伝える」か明らかでない点。 (相違点6) 確立手段において「着呼操作に応答して通話可能状態を確立する」条件に関し、 補正後の発明は、「前記音声出力手段によって着呼が伝えられているとき」であるのに対し、引用発明は、その様な特定がない点。 (相違点7) 「電話機」に関し、 補正後の発明は、「携帯」電話機であるのに対し、引用発明は、「ロボット型VoIP無線」電話機であり、「携帯」電話機であるとの特定がない点。 そこで、まず、上記相違点2について検討する。 引用発明は、「ロボット型VoIP無線電話機」であるところ、「ロボット型VoIP無線電話機」は、「無線電話機」である以上、通話相手が必ずしも特定されない任意の通話相手とのコミュニケーションをすることを前提としていることは明らかである。ここで、上記引用例の上記ロ.の【0005】における「ロボット型VoIP無線電話機は縫いぐるみ等の形態をなし」との記載、及び図1における、「ロボット型VoIP無線電話機」の人間を模した縫いぐるみの形態に着目すれば、人間を模した縫いぐるみの形態は、任意の通話相手とのコミュニケーションを前提に簡素化された人間の形態を備えたものである。そして、上記引用例の上記ロ.の【0004】における「あたかも通話相手が目の前にいるかのように通話ができるロボット型VoIP電話機である。」との記載、同ロ.の【0006】における「この実施形態によればあたかも遠隔地にいる通話相手が自らの部屋に訪問しているかのような、或いは遠隔地に相手を訪問しているかのような会話を楽しむことができる。」との記載によれば、ロボット型VoIP無線電話機は、人間を模した縫いぐるみの形態をしたロボット型VoIP無線電話機を介して、通話相手があたかも人間を模した縫いぐるみに乗り移ったかのような錯覚を生じ、そのため、使用者は、ロボット型VoIP無線電話機自体に非常に強く通話相手を感じることができる効果を奏していると認められる。 一方、本願明細書段落【0020】における「この発明によれば、ユーザが「人間のミニマルデザイン」の外観を持つ携帯電話機を利用し、その携帯電話機から通話相手の声が出力されるとき、たとえば、携帯電話機に相手が乗り移ったかのような錯覚を生じる。そのため、携帯電話機のユーザは、携帯電話機自体に非常に強く相手を感じることができる。」との記載、同段落【0079】における「2人のユーザのそれぞれが、携帯電話機10を利用して通話している状態について説明する。図11を参照して、部屋1にはハンズフリー機能が実行された携帯電話機10aを持つユーザAが居て、遠隔地の部屋2にはハンズフリー機能が実行された携帯電話機10bを持つユーザBが居る。この状態でユーザAとユーザBとが通話した場合、各ユーザは、自身の存在を相手の居る場所に送るとともに、自身が持つ携帯電話機10に通話相手が乗り移ったかのように感じることができる。つまり、ユーザAは、部屋2に自身の存在を送るとともに、携帯電話機10aをユーザBのように感じることができる。一方、ユーザBは、部屋1に自身の存在を送るとともに、携帯電話機10bをユーザAのように感じることができる。」との記載によれば、補正後の発明の「人間のミニマルデザイン」の外観を持つ携帯電話機は、携帯電話機に通話相手が乗り移ったかのような錯覚を生じ、そのため、携帯電話機のユーザは、携帯電話機自体に非常に強く通話相手を感じることができる効果を奏するものである。 すなわち、引用発明の「ロボット型VoIP無線電話機」と、補正後の発明の「人間のミニマルデザインの外観を持つ携帯電話機」とは、任意の通話相手を強く意識させるために電話機の外観として人間を簡素化した形態を採用する点において共通する。他方で、補正後の発明の「人間のミニマルデザインの外観」については、主観的な要素を含むものの、形態の簡素化(作り込み)の程度について、一応両者に相違があるとみることができる。 上記相違について検討する。 人間をより簡素化して表現した形態として、例えば、土偶、藁人形等があることは周知の事項である。ここで、土偶、藁人形等は、一見して人と分かるが、男性とも女性とも、高齢者とも幼児とも認識できるような、年齢や性別が、見る人によって、どのようにも解釈できる人間のミニマルデザインの一つということができる。 そうすると、引用発明の「ロボット型VoIP無線電話機」の「本体」の外観を、設計する際に、任意の通話相手を強く意識させるために、土偶、藁人形のような、年齢や性別についてどのようにも解釈できる人間をより簡素化した形態を採用することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。そして、これによる効果も予測される範囲を超えるものではなく、上記相違点2は格別なものとはいえない。 次に、上記相違点1について検討する。 人間型コミュニケーションロボットにおいて、ロボット本体を、握ったり、やさしくなでたりするようなコミュニケーションを図るために、ロボット本体を人間の皮膚に類似した感触を持つ柔軟体から形成することは、例えば、特開2004-283975号公報(段落【0002】、【0032】、図2)に開示されているように周知の技術である。そして、上記引用例の上記ロ.の【0003】に「楽しいコミュニケーション手段を提供することを課題とする。」との記載があり、更に人間型コミュニケーションロボットと触れ合いを通じてコミュニケーションの向上を図る課題は周知の課題である。 そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「本体」の材質を、補正後の発明のように「人間の皮膚に類似した感触を持つ柔軟体から成る」ものとすることは、容易に想到し得ることである。 次に、上記相違点3及び7について検討する。 無線電話機を、身近なコミュニケーションツールとして携帯可能にすべく、本体の大きさを、両側から指で挟むようにして持つことが可能な大きさとすることは、例えば、原審の拒絶査定で周知例として挙げられた登録実用新案第3104727号公報(段落【0015】、図1A、1C)に開示されているように周知の技術である。そして、無線電話機において、本体の大きさを、使い方に応じて変更することは自然なことである。 そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明において、「本体」の大きさを、補正後の発明のように「前記本体は、両側から指で挟むようにして持つことが可能な大きさ」とすること(相違点3)は、容易に想到し得ることである。その際、引用発明の「ロボット型VoIP無線」電話機を、「携帯」電話機と称することができること(相違点7)は当然である。 次に、上記相違点4について検討する。 電話機において、発呼手段において、音声の入力、すなわち、音声認識によって発呼処理を実行することは、例えば、原審の拒絶理由で周知例として挙げられた特開2009-177761号公報(段落【0026】)に開示されているように周知の技術である。そして、電話機において、音声認識よって発呼処理を実行する課題は普通の課題である。 そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「発呼手段」に適用して、補正後の発明のように「音声の入力に従って発呼処理を実行する」発呼手段とすることは、容易に想到し得ることである。 次に、上記相違点5及び6について検討する。 電話機において、音声出力手段が着呼を伝え、音声出力手段によって着呼が伝えられているとき、確立手段において着呼操作に応答して通話可能状態を確立することは、例えば、原審の拒絶理由に周知例として挙げられた特開2002-27575号公報(段落【0007】)に開示されているように周知の技術である。 そうすると、上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明の「スピーカー(5)」に適用して、補正後の発明のように「着呼を伝える」ものとすること(相違点5)は、容易に想到し得ることである。その際、「確立手段」において、補正後の発明のように「前記音声出力手段によって着呼が伝えられているとき」通話可能状態を確立すること(相違点6)は、当然である。 そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成26年10月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-06-15 |
結審通知日 | 2015-06-16 |
審決日 | 2015-06-29 |
出願番号 | 特願2010-166295(P2010-166295) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
山中 実 萩原 義則 |
発明の名称 | 携帯電話機 |
代理人 | 山田 義人 |