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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
管理番号 1304579
審判番号 不服2013-3042  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2015-08-20 
事件の表示 特願2008-509082「窒化ホウ素を含む高温バイオベース潤滑剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日国際公開、WO2006/116502、平成20年11月13日国内公表、特表2008-539316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年4月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、平成17年4月26日、平成18年4月26日、すべて米国)を国際出願日とする国際特許出願であって、手続の経緯は、概略以下のとおりである。

平成23年 3月31日付け 拒絶理由通知
平成23年 8月 3日 意見書・手続補正書
平成23年11月11日付け 拒絶理由通知(最後)
平成24年 3月 6日 意見書・手続補正書
平成24年 3月12日 手続補足書
平成24年10月10日付け 補正の却下の決定
平成24年10月10日付け 拒絶査定
平成25年 2月18日 本件審判請求・手続補正書
平成25年 4月 3日 手続補正書(方式)
平成25年 6月 3日付け 前置報告書
平成25年 7月19日付け 審尋
平成25年10月24日 回答書
平成26年 4月10日付け 拒絶理由通知(審尋)
平成26年10月14日 意見書・手続補正書
平成26年10月20日 手続補足書
平成26年12月18日付け 応対記録

第2 平成26年4月10日付け拒絶理由通知について

当審において通知した、平成26年4月10日付けの拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。

「(1)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
・・・・
(4)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<理由(1)・・について>
・・・・
(ロ)請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載したものとの対応関係を判断するにあたっては、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えるものであるか否かに着目すべきである。
・・・・
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件請求項に係る発明の上記課題が解決できると当業者が認識できる程度に具体例や説明が記載されていないため、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えるものであり、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
・・・・
<理由(4)について>
平成25年2月18日付けの手続補正後の本件請求項1?14に記載された発明・・は、下記引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2?5に記載された周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものと認められる。
引用文献1:特開2003-49187号公報
引用文献2:特開2002-88383号公報
引用文献3:特開平10-130678号公報
引用文献4:特開2004-182879号公報
引用文献5:特開2000-129279号公報 ・・・・」

第3 審尋事項とその回答について

1 審尋事項

上記拒絶理由通知は審尋を兼ねているところ、当審からの審尋事項は次のとおりである。
「(a)本件明細書に記載された処方例(実施例)に関して、以下の点について説明してください。
ア)段落【0121】?【0126】に記載された各処方例が、請求項に係るいずれの発明と対応するのか、また、この処方例におけるNP343は、オレイン酸残基60%以上のバイオベース油に相当するのか。
・・・
(b)本件明細書に記載された処方例のものが、上記した本件請求項に係る発明の課題を解決することができることを、挙証の上、釈明してください。」

2 審尋に対する回答

上記審尋事項(a)に関連して審判請求人から提出された資料(平成26年12月18日付けの応対記録参照。なお、この資料は、「http://www.exxonmobilchemical.com/Chem-English/Files/Resources/Content/esterex-summary.aspx」からも入手可能。)から、上記「NP343」は、オレイン酸残基60%以上のトリグリセリドではなく、トリメチロールプロパンとカプリル酸/カプリン酸のエステルであること(すなわち、後述する本願発明の成分(A)には該当しないこと)が判明している。
また、上記審尋事項(b)に関し提出された平成26年10月20日受付の手続補足書には、参考資料3が添付されており、そこには、「Bio-SynXtra HD Plus SHP Motor Oil, SAE 5W30(Low Ash)」の特性が示されている(ただし、このモーターオイルの成分組成は不明)。

第4 当審の判断

当審は、平成26年10月14日付けの意見書及び上記審尋に対する回答を勘案しても、補正された本願につき、上記「第2 平成26年4月10日付け拒絶理由通知について」で示した理由(1)及び理由(4)が依然として妥当すると判断する。
以下、その判断理由につき詳述する。

1 理由(1):特許法第36条第6項第1号の要件(いわゆる明細書のサポート要件)の充足性について

(1) 前提

特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に係る規定(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから(知財高裁特別部判決平成17年(行ケ)第10042号参照)、以下当該観点に立って検討する。

(2) 特許請求の範囲の記載

平成26年10月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲には、請求項1ないし14が記載され、そのうち請求項1の記載は以下のとおりである。
「 【請求項1】
(A)60%以上のオレイン酸の割合を有し、且つ次式で表されるトリグリセリドから成るバイオベース油:
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は、7?23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である)、
(B)少なくとも1つの窒化ホウ素;
(C)合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1種の基油;及び
(D)抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度調整剤、磨耗防止剤、摩擦改質剤、および極圧剤からなる群から選択された少なくとも1種の添加剤または添加剤の組合せ;
から成る潤滑剤であって、
該バイオベース油、該基油、該窒化ホウ素及び該添加剤は全て食品グレードであり、そして該潤滑剤は500℃を超える温度で安定性、潤滑性、耐摩耗性及び極圧性能を維持する、液状潤滑剤。」
(以下、当該請求項1に記載された発明を「本願発明」という。)

(3) 発明の詳細な説明の記載

平成26年10月14日付けの手続補正書により補正された明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載が認められる。

ア 「【技術分野】
【0001】
・・・本発明は、天然および/または合成の野菜油、動物油、植物油、または樹木油、ならびに窒化ホウ素から作製されたバイオベース潤滑剤組成物に関する。これらの組成物は、最高1000℃およびそれ以上の極高温における潤滑性、耐摩耗性、および極圧性能の改善をもたらす。これらの組成物は、高温用途で燃焼機関、オーブン、チェーン、ケーブル、ギヤ、軸ピン、軸受、および滑り面を潤滑するのに特に有用であり得る。潤滑剤組成物は、作動液、タービン油、圧縮機油、浸透性潤滑剤、グリース、耐焼付き性コンパウンド、スレッドコンパウンド、深絞り用コンパウンド、圧延油、金属加工流体、離型剤、ならびに耐磨耗性および極圧性能を必要とする任意の潤滑剤に処方することもできる。さらに、これらの潤滑剤組成物は、電気絶縁流体およびコンパウンドにおいて有用な高絶縁耐力をもたらす。」

イ 「【背景技術】
【0002】
バイオベース油は、野菜、動物、植物、または樹木に由来する再生可能資源から大量に得ることが可能であり、一般に易生分解性または「環境的に無毒性」を特徴とする。そのため、このような油は、広範囲の用途で使用する上で魅力的であるとされており、米国2002年農業法(2002 Farm Bill)にバイオベースと定義されている。これらのバイオベース油は天然および合成の形で得られる。
【0003】
潤滑目的の使用に関して、バイオベース油は完全に望ましいというわけではない。バイオベース油の多くでは、とりわけ流動点、酸化安定性、および添加剤との相溶性に関する特性が所望の範囲にない。しかし、バイオベース油は、潤滑剤として使用する上で望ましい特性も多数有する。具体的には、バイオベース油は、通常引火点が高く、境界潤滑が良好で、燃料節約できるほど非常に粘度指数が高く、NOACK試験による揮発性が1%未満と、エンジン油排出物の低下がすでに示されている値をとる。さらに、バイオベース油は、一般に無毒性および易生分解性である。例えば、標準試験条件下(例えば、OCED 301DおよびASTM D-5864試験方法)で、典型的な野菜油は、最高80%が28日で二酸化炭素と水に生分解することができる。これに比べて、典型的な石油系潤滑流体の場合は25%以下である。本組成物は、環境に潤滑剤が直接損失することのある場合はいつでも、非常に優れた利点を示すこととなる。影響範囲としては、林業、鉱業、海洋業、農業、重工業、輸送、鉄道運送業、パルプ紙製作所、製材所、合板製作所、海上運送業分野におけるホイストケーブルおよびチェーン、ドラグライン、ストラドル・リフト型木材運搬車の駆動装置、オートバイおよびATVのチェーンなどが挙げられる。
【0004】
この組成物中のバイオベース材料および窒化ホウ素は、USDAおよびNSFによって食品用と認証されたものとして挙げられており、環境的に無毒性である。食品加工業で使用される設備は部門によって異なり、主要な3部門は、獣肉および家禽肉、飲料、スナック食品、野菜、ならびに乳製品を含む。設備は部門によって異なるが、軸受、ギヤ、滑り機構などの可動部は同じであり、潤滑を必要とすることが多い。これらの用途で最も多用されている潤滑剤には、オーブン潤滑剤、チェーン潤滑剤、ケーブル潤滑剤、浸透性潤滑剤、耐焼付き性コンパウンド、スレッドコンパウンド、深絞り用コンパウンド、圧延油、離型剤、ギヤ油、および汎用グリースが含まれる。これらの食品産業用油は、他の産業用の潤滑剤より厳しい基準を満たさなければならない。
【0005】
食品の品質の保護および基準を保証し維持することが重要であるため、食品産業は、米国農務省(United States Department of Agriculture)(USDA)によって詳述されている規則および規制に従わなければならない。USDAの食品安全検査局(Food Safety Inspection Service)(FSIS)は、獣肉、家禽肉、卵、乳製品、果実、および野菜の検査、等級付け、および標準化のためのプログラム全部を担う。これらのプログラムは必須であり、連邦政府による検査が行われたプラントで使用される非食品化合物については、この検査が義務付けられている。
【0006】
FSISは、連邦政府による検査が行われたプラントで使用するための公認化合物の公式リストの管理責任者である。公式リスト(米国農務省食品安全検査局(Food Safety and Inspection Service、United States Department of Agriculture)によるList of Proprietary Substances and Nonfood Compounds、Miscellaneous Publication Number 1419 (1989)、11-1頁を参照のこと)には、食品との偶発的接触を受けやすい潤滑剤および他の物質を、USDA規制下で間接食品添加物と見なすと記述されている。したがって、H-1またはH-2として分類されているこれらの潤滑剤は、食品加工プラントで使用する前にUSDAによって認証されなければならない。最も厳しい分類H-1は、食品との偶発的接触が認証された潤滑剤に関するものである。分類H-2は、食品との接触の可能性がないところで使用されるものであり、潤滑剤に既知の毒物または発癌物質が使用されていないことを保証する。本発明は、H-1およびH-2認証潤滑油に関する。本出願では、H-1およびH-2認証油と用語「食品用」は同義で用いられる。
・・・
【0008】
生成物は、米国の連邦規制機関によって設定された安全性の要件を満たすことに加えて、有効な潤滑剤でなければならない。食品加工プラント用の潤滑油は、機械部品を潤滑し、粘度変化を抑制し、酸化を防止し、発錆および腐食から保護し、磨耗保護をもたらし、使用中に堆積物およびスラッジの生成を抑制すべきである。また、生成物は、流体厚膜条件から境界薄膜条件の範囲の様々な潤滑条件下で有効に機能すべきである。
【0009】
潤滑油の酸化および熱特性から、油がいかに有効に、その潤滑性を経時的に維持し、スラッジおよび堆積物の生成を抑制するかを予想することが容易である。炭化水素油は、高温で酸素と長時間接触すると部分酸化され、硬質の炭素堆積物を生じる恐れがあり、金属間の接触部分の中で許容範囲にある近接箇所で焼付きが引き起こされる。
【0010】
このような潤滑剤は、食品源の汚染要因物として無毒性であるように設計されてきたが、その潤滑性は、通常の潤滑剤、例えば食品との直接接触が認証された材料を含んでいない潤滑剤に比べて、有効でない場合が多い。潤滑剤産業は、特殊添加剤を潤滑剤組成物に組み込むことによって、この問題をある程度克服してきた。例えば、性能添加剤を含有させることによって、耐磨耗性、酸化防止、錆止め/腐食防止、金属不活性化、極圧性、摩擦調整、消泡性、および潤滑性を向上させてきた。このような化学的性質は、次の特許:米国特許第5、538、6545号(ローウェイト(Lawate)ら);米国特許第4、062、785号(ニバート(Nibert));米国特許第4、828、727号(マッカニンチ(McAninch));米国特許第5、338、471号、および米国特許第5、413、7254号(ライ(Lai))に記載されている。
【0011】
関連技術に記載されている食品用潤滑剤の欠点は、耐酸化性、粘度幅処方能力の限界、および粘度保護の限界に関連する。潤滑剤は、長期にわたって熱および機械的ストレスを受けると、酸化およびレオロジー特性が悪くなる場合が多い。
【0012】
したがって、優れた極圧性および耐摩耗性を示し、熱的および機械的ストレスを受けたときの絶縁耐力、耐酸化性、粘度指数、粘度幅処方能力、および粘度安定性が実質的に改善された潤滑剤が求められている。さらに、この組成物は、温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるとき、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供することができる。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、環境に優しい高温用食品用潤滑剤の特性を改善するのに有用な添加剤および基油の種類と範囲を拡大することである。今回、本出願人は、窒化ホウ素を本発明の組成物に処方すると、組成物が、最高1000℃およびそれ以上の極高温において向上された潤滑性、耐摩耗性、極圧性、および耐酸化性を示すことを発見した。さらに、本発明は、流体および化合物を絶縁する際に有益である高絶縁耐力を提供する。これらの組成物は、高温用途で燃焼機関、オーブン、チェーン、ケーブル、ギヤ、軸ピン、軸受、および滑り面を潤滑するのに特に有用であり得る。潤滑剤組成物を、作動液、タービン油、圧縮機油、浸透剤、グリース、耐焼付き性コンパウンド、スレッドコンパウンド、深絞り用コンパウンド、圧延油、金属加工流体、離型剤、ならびに耐摩耗性および極圧性能を必要とする任意の潤滑剤に処方することもできる。これらの本発明の組成物は、窒化ホウ素を含む潤滑剤基油類の化学構造をとるため、焼けても、研磨性のある硬質炭素堆積物をあまり生じることなく、窒化ホウ素の白色粉末を被潤滑表面上に残すことになる。本発明の組成物は、接触部分の中で許容範囲にある近接箇所において石油系炭化水素の既知の問題である焼付きを引き起こす硬質の炭素堆積物の連続的蓄積を防止する助けにもなる。
【0020】
さらに、本発明の組成物は、500℃を超える温度において、改善された潤滑性、耐摩耗性、および極圧性能が改善されることがわかった。この温度下では、グラファイトでもモリブデンでも実現できないことが知られている。
【0021】
さらに、本発明の組成物は、燃料節約を改善し、排出物を削減することによって、エンジン油の環境上の利点を有することがわかった。
【0022】
さらに、本発明の組成物は、食品用となるように処方することができ、該組成物を環境に対して無毒性にする生分解性が改善されることがわかった。
【0023】
本発明の別の態様は、環境的に無毒性の食品用高温潤滑剤であって、a)天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1つのバイオベース天然油およびバイオベース合成油、b)少なくとも1つの窒化ホウ素を準備し、ならびにc)場合によっては、他の基油、およびd)場合によっては、他の添加剤を含み、前記組成物材料が、米国農務省によって要求されたH-1およびH-2の認証を有する組成物に関する。当然のことながら、H-1およびH-2の指定は、ほとんどの場合、米国以外の諸国の類似の分類に対応するに到る。
・・・
【0026】
本発明の別の態様によれば、潤滑剤は、天然または合成の野菜油、天然または合成の動物油、遺伝子組換え野菜油、遺伝子組換え合成野菜油、天然または合成の樹木油、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つのバイオベース油、および少なくとも1つの窒化ホウ素を含む。
【0027】
本発明の別の態様によれば、潤滑剤は、さらに、合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物を含む群から選択された少なくとも1つの基油を含む。
【0028】
本発明の別の態様によれば、潤滑剤は、さらに、抗酸化剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、粘度調整剤、磨耗防止剤、摩擦改質剤、および極圧剤を含む群から選択された少なくとも1つの添加剤または添加剤の組合せを含む。
【0029】
本発明の別の態様によれば、油は、次式のトリグリセリドである。


式中、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は、約7?約23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0030】
本発明の別の態様によれば、脂肪族ヒドロカルビル基は、脂肪族炭化水素基、置換脂肪族炭化水素基、およびヘテロ基を含む群から選択される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、トリグリセリドは、約60%以上のオレイン酸プロファイルを有する。・・・」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(A)トリグリセリド油
本発明の実施では、基油は、次式の合成トリグリセリドまたは天然油である。

式中、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は、約7?約23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である。本明細書では、用語「ヒドロカルビル基」は、上記分子の残部に直接結合している炭素原子を有する基を意味する。脂肪族ヒドロカルビル基としては、下記のものが挙げられる:(1)脂肪族炭化水素基;すなわち、ヘプチル、ノニル、ウンデシル、トリデシル、ヘプタデシルなどのアルキル基;ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル、トリデセニル、ヘプタデセニル、ヘンエイコセニルなど、二重結合を1個だけ含むアルケニル基;8,11-ヘプタデカジエニルや8,11,14-ヘプタデカトリエニルなど、二重結合を2個または3個含むアルケニル基。これらの異性体はすべて包含されるが、本実施形態では、直鎖基を使用する。(2)置換脂肪族炭化水素基;すなわち、本発明に関しては、基の顕著な炭化水素性を変更しない非炭化水素置換基を含む基。当業者には、適切な置換基は周知であろう。例は、ヒドロキシ、カルブアルコキシ(特に低級カルブアルコキシ)、およびアルコキシ(特に低級アルコキシ)である。用語「低級」は、7個以下の炭素原子を含む基を意味する。(3)ヘテロ基;すなわち、本発明に関しては、顕著な脂肪族炭化水素性を有し、普通なら脂肪族炭素原子から構成される鎖または環に存在する炭素以外の原子を含む基。適切なヘテロ原子は、当業者に明らかであるが、例えば酸素、窒素、および硫黄が挙げられる。
・・・
【0054】
一実施形態では、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)の脂肪族ヒドロカルビル基は、トリグリセリドが少なくとも60パーセント、別の実施形態では少なくとも70パーセント、および別の実施形態では少なくとも80パーセントの単不飽和性を有するようなものである。本発明で有用なトリグリセリドの例は、通常より高いオレイン酸含有量を含むように遺伝子組換えされた野菜油である。通常のヒマワリ油は、オレイン酸含有量が25?30パーセントである。ヒマワリの種を遺伝子改質することによって、オレイン酸含有量が約60パーセントから約90パーセントまでであるヒマワリ油を得ることができる。すなわち、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)基はヘプタデセニル基であり、1,2,3-プロパントリイル基CH_(2)CHCH_(2)に結合しているR^(1)COO-、R^(2)COO-、およびR^(3)COO-は、オレイン酸分子の残基である。米国特許第4,627,192号および米国特許第4,743,402号は、高オレイン酸ヒマワリ油の調製のその開示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
例えば、全くオレイン酸部分のみからなるトリグリセリドは、オレイン酸含有量が100%であり、したがって単不飽和含有量が100%である。トリグリセリドが、70%のオレイン酸、10%のステアリン酸、13%のパルミチン酸、および7%のリノール酸である酸部分で構成されている場合、単不飽和含有量は70%である。一実施形態では、トリグリセリド油は、高オレイン酸の、すなわち遺伝子組換え野菜油(少なくとも60パーセント)トリグリセリド油である。本発明内で使用する典型的な高オレイン酸野菜油は、高オレイン酸サフラワー油、高オレイン酸カノーラ油、高オレイン酸落花生油、高オレイン酸トウモロコシ油、高オレイン酸ナタネ油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸綿実、高オレイン酸レスクエレラ油、高オレイン酸パーム油、高オレイン酸ヒマシ油、高オレイン酸メドウフォーム油、および高オレイン酸大豆油である。カノーラ油は、1パーセント未満のエルカ酸を含む様々なナタネ油である。1つの高オレイン酸野菜油は、ヒマワリ属(Helianthus sp)から得られた高オレイン酸ヒマワリ油である。この生成物は、エー・シー・ヒュムコ(AC Humko)(米国テネシー州コルドバ(Cordova,TN,38018))からTriSun(商標)高オレイン酸ヒマワリ油として入手可能である。TriSun 80は、酸部分が80パーセントのオレイン酸を含む高オレイン酸トリグリセリドである。別の高オレイン酸野菜油は、ブラッシカ・カンペストリス(Brassica campestris)またはブラッシカ・ナパス(Br
assica napus)から得られた高オレイン酸カノーラ油であり、これもまたエー・シー・ヒュムコ(AC Humko)からRS高オレイン酸油として入手可能である。RS80油は、酸部分が80パーセントのオレイン酸を含むカノーラ油を意味する。・・・」

オ 「【0058】
(B)窒化ホウ素
アドバンスド・セラミックス・コーポレーション(Advanced Ceramics Corporation)は、窒化ホウ素の粉末、成形体、およびコーティング剤、ならびに他の特殊セラミックの世界最大の製造業者である。
【0059】
窒化ホウ素粉末は、グラファイト、二硫化モリブデン、および他の頻用される無機固体潤滑剤に代わって、魅力的な性能向上用物質となる特有の特性を有する軟質で滑らかな(滑りやすい)白色粉末である。窒化ホウ素は、密着性および熱化学的安定性が優れているので、通常の固体潤滑剤であれば分解したり所望の性能が得られなかったりする用途でも適用の可能性がある。
【0060】
この無機固体粉末は、極寒または極暑において潤滑する能力を保持し、極圧(EP)用途によく適している。これは、環境に優しく、大部分の化学物質に対して不活性である。これは、グラファイトと異なって、優れた電気絶縁性を示し、その特性を真空中で維持する。
【0061】
現在の潤滑用途としては、固体高分子複合成形体;石油溶媒、油、およびグリース中での添加剤の分散;金属-セラミック電着塗装;離型剤として使用される水性および油性分散液;ならびにエポキシ塗装、溶射塗装、およびプラズマスプレー塗装の構成要素がある。
【0062】
窒化ホウ素は、グラファイトに類似の物理的および化学的諸特性を有する高耐火性(耐熱性、熱安定性)の材料である。しかし、グラファイトと異なって、自然界に自然に生じるものではない。通常は、尿素または尿素誘導体、およびアンモニアの存在下、酸化ホウ素またはホウ酸から、800℃?2000℃の範囲の温度で合成される。
【0063】
BNの一般的な2つの結晶構造は、立方晶系および六方晶系である。立方晶系窒化ホウ素(c)BNは、ダイヤモンドに類似しており、硬質で研磨性であり、六方晶系窒化ホウ素(h)BNは、グラファイトに類似しており、軟質で滑らかである。
【0064】
下記では、高性能用途向けの理想的な固体潤滑剤にする(h)BNの重要な材料特性を述べる。
【0065】
六方晶系窒化ホウ素粉末は、グラファイトおよび二硫化モリブデンに見られる固体潤滑剤特性と同じ特性を示す。これらには、結晶構造、低せん断強さ、固体潤滑剤膜の密着性、低研磨性、および熱化学的安定性が含まれる。多くの場合、(h)BNは、上記のような通常の固体潤滑剤特性、特に密着性および熱化学的安定性の性能レベルを上回る。
【0066】
最近まで、粉末の摩擦係数、または「滑り」特性の測定方法は、ひいき目で見ても明確でなかった。例えば、(h)BN粉末の様々な等級間の相異は、感触ではっきりと知覚できるが、摩擦係数を決定するために一般的に使用されるインストロン(INSTRON)方法では識別することができない。(h)BNと他の固体潤滑剤の「滑り」を比較するために、ファレックス・コーポレーション(Falex Corporation)と共に新しい試験装置を開発した。
【0067】
図1に示すこの試験結果から、(h)BNは、この方法で試験された他の全材料に対して、摩擦係数が最も低かったことがはっきりとわかる。
【0068】
(h)BNと、グラファイト、二硫化モリブデン、および他の潤滑剤の極圧(EP)特性を比較するために、各材料を5重量%含むFOMBLIN(登録商標)油試料について、ファレックス四球式極圧(Falex 4-Ball EP)試験を行った。
【0069】
2つの等級の(h)BN、2つの等級のグラファイト、二硫化モリブデン(MoS_(2))、酸化アンチモン(SbO_(2))、およびTeflon(PTFE)を試験した。表2はこれらの試験結果を示す。(h)BN試料は両方とも、他のどれよりも高い溶着点を示した(溶着点は、潤滑剤を分割し、溶着または金属間移動を生じさせる荷重の重量キログラム[kgf]の量である)。磨耗痕径データ(溶着点に到達する前の金属移動のsパターン)によると、基準荷重では、一方の等級の(h)BNが、他の固体潤滑剤よりわずかに高い値を有するが、400kgfにすると、本試験群では、両方の等級の(h)BNが優れていることがわかる(基準荷重は、純粋な試験流体の溶着点と定義され、本図の場合、315kgfとした)。
【0070】
アドバンスド・セラミックス(Advanced Ceramics)は、複数の等級の潤滑剤用窒化ホウ素を生産している。潤滑剤用の新しい窒化ホウ素粉末としてNX等級が挙げられており、これには、NX1、NX5、NX9、およびNX10が含まれる。一実施形態では、濾過および溶解性のための等級は、粒径が1ミクロン以下のNX1である。
【0071】
表2


カ 「【0072】
(C)他の油
本発明の(A)および(B)組成物は、さらに、(C)(1)合成エステル基油、(C)(2)ポリアルファオレフィン、または(C)(3)未精製、精製、もしくは再精製の油、(C)(4)合成の完全水素化分解された油およびフィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)基油、ならびに(C)(1)、(C)(2)、(C)(3)、および(C)(4)のいずれか2つ以上の混合物を含む、他の添加剤および油を含むことができる。合成エステル基油(C)(1)は、次式のモノカルボン酸R^(8)COOH、次式のジカルボン酸

または次式のアリールカルボン酸R^(10)-Ar(COOH)_(p)、式中、R^(8)は、約4?約24個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、R^(9)は、水素、または約4?約50個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、R^(10)は、水素、または1個から約24個までの炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、mは0?約6の整数であり、pは1?約4の整数である;と、次式のアルコール

式中、R^(11)は、1?約24個の炭素原子を含む脂肪族基、または6?約18個の炭素原子を含む芳香族基であり、R^(12)は、水素、または1もしくは2個の炭素原子を含むアルキル基であり、tは0?約40であり、nは1?約6である;との反応を含む。
【0073】
モノカルボン酸内のR^(8)は、この実施形態では約6?約18個の炭素原子を含む。モノカルボン酸の例示的かつ非限定的なリストは、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸のカルボン酸、ならびにこれらの酸の異性体およびその混合物である。
【0074】
ジカルボン酸内のR^(9)は、この実施形態では約4?約24個の炭素原子を含み、mは1?約3の整数である。ジカルボン酸の例示的かつ非限定的なリストは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、およびフマル酸である。
【0075】
アリールカルボン酸のR^(10)は、この実施形態では約6?約18個の炭素原子を含み、pは2である。有用なアリールカルボン酸は、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメリック酸、およびピロメリト酸である。
【0076】
アルコール内のR^(11)は、この実施形態では約3?約18個の炭素原子を含み、tは0?約20である。アルコールは、1価、多価、またはアルコキシル化された1価および多価とすることができる。1価アルコールは、例えば第一級および第二級のアルコールを含むことができる。しかし、一実施形態では、1価アルコールは、第一級脂肪族アルコール、特にアルケノールやアルカノールなどの脂肪族炭化水素アルコールである。R^(11)を誘導する1価アルコールの例としては、1-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、フィトール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびベヘニルアルコールが挙げられる。
【0077】
多価アルコールの例は、2?約6個のヒドロキシ基を含むものである。これらは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、および他のアルキレングリコールなどのアルキレングリコールが例示される。本発明での使用に適したアルコールの一クラスは、最高約12個の炭素原子を含む多価アルコールである。このクラスのアルコールには、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、グルコン酸、グリセルアルデヒド、グルコース、アラビノース、1,7-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,4-ヘキサントリオール、1,2,5-ヘキサントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、キナ酸、2,2,6,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、1-10-デカンジオール、ジギタロアールなどが含まれる。
【0078】
本発明で使用するための多価アルコールの別のクラスは、3?10個の炭素原子を含む多価アルコール、具体的には3?6個の炭素原子を含み、少なくとも3個のヒドロキシル基を有するものである。このようなアルコールは、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、マンニトール、ソルビトール、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、ビス-トリメチロールプロパン、1,2,4-ヘキサントリオールなどが例示される。
【0079】
アルコキシル化アルコールは、アルコキシル化された1価アルコール、またはアルコキシル化された多価アルコールとすることができる。アルコキシアルコールは、一般にアルコールを過剰のエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドで処理することによって生成される。例えば、約6?約40モルのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを脂肪族アルコールと縮合することができる。・・・」

同様に、段落【0088】、段落【0089】、及び段落【0090】?【0102】にはそれぞれ、「(C)(2)ポリアルファオレフィン」、「(C)(3)未精製、精製、もしくは再精製の油」、及び「(C)(4)合成の完全水素化分解された油およびフィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)基油」について記載されている(摘記省略)。

キ 「【0103】
(D)他の添加剤:
本発明で有用な抗酸化剤類としては、酪酸化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェンル-a-ナフチルアミン(PANA)が挙げられるが、これらに限定されず、抗酸化剤に関するさらなる情報は、次の特許に列挙され、説明されている:米国特許第5,536,493号、第5,863,872号、第5,990,055号、第6,534,454号(B1)、第6,774,091号。」

同様に、段落【0104】?【0111】には、腐食防止剤類、分散剤阻害剤類、金属不活性化剤類、粘度調整剤類、流動点降下剤、磨耗防止剤類、摩擦改質剤類、極圧剤類など、種々の添加剤について記載されている(摘記省略)。

ク 「【0112】
成分(A)および(B)、または(A)、(B)、および(C)、または(A)、(B)、(C)、および(D)を含む本発明の組成物は、高温生分解性潤滑剤、食品用潤滑剤、およびエンジン油として有用である。
・・・
【0114】
組成物が成分(A)、(B)、(C)、および(D)を含む場合について、これらの成分の範囲を重量部で以下に示す。
成分 第1の実施形態 第2の実施形態 第3の実施形態
(A) 5-90 40-80 60-90
(B) 0.002-80 0.002-35 0.002-5
(C) 20-80 10-20 1-10
(D) 0.001-80 0.001-40 0.001-20」

ケ 「【0120】
いくつかの処方例を下記に示す。
【0121】
NP 343は、USDAによってバイオベースであると同定された、エクソン・モービル(Exxon Mobil)のポリオールエステルであり、Indopol H1500は、ブリティッシュ・ペトロリアム(British Petroleum)(BP)の食品用ポリブテンであり、PD23は、ウィトコ・コーポレーション(Witco Corporation)の食品用白色鉱物油であり、窒化ホウ素は、食品用である。
・・・
【0124】
処方#883B バイオHTオーブンチェーン潤滑剤USDA H-2
成分 粘度 重量%
NP343 19.30 73.00
NX5 窒化ホウ素 粉末 3.00
Indopol H1500 50,000.00 19.00
PD 23 2.40 5.00
40℃における粘度, cSt 97.19
・・・
【0134】
-35℃でのミニローター粘度計(Mini Rotor Viscometer)による低温ポンプ吐出性を5Wとし、10.5?10.7 cSt.(SAE 30)に処方したいくつかの処方例を下記に示す。
【0135】
乗用車モーター油 (PCMO) 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
グループIII 4.10 67.35
LZ7070D 1150.00 9.20
LZ20001 210.00 9.15
NP343 4.30 13.00
LZ6662 500.00 1.00
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
Molyvan855 55.00 0.15
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0136】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
PAO4 4.10 9.85
PAO6 5.80 61.20
LZ7070D 1150.00 6.50
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
Molyvan855 55.00 0.15
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0137】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
グループIII 4.10 66.70
LZ7070D 1150.00 9.20
LZ20001 210.00 9.15
NP343 4.30 13.00
LZ6662 500.00 1.00
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
Molyvan855 55.00 0.10
NX1窒化ホウ素 粉末 0.10
Teflon 8.00 0.10
【0138】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
PAO4 4.10 11.20
PAO6 5.80 61.20
LZ7070D 1150.00 6.50
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
Molyvan855 55.00 0.10
NX1窒化ホウ素 粉末 0.10
Teflon 8.00 0.10
【0139】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
グループIII 4.10 67.50
LZ7070D 1150.00 9.20
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
LZ6662 500.00 1.00
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0140】
乗用車モーター油 合成 SAE 5W30
成分 粘度 重量%
PAO4 4.10 10.00
PAO6 5.80 61.20
LZ7070D 1150.00 6.50
LZ20001 210.00 9.15
LZ8676 8.00 0.50
LZ8650 8.00 0.50
NP343 4.30 13.00
NX1窒化ホウ素 粉末 0.15
【0141】
窒化ホウ素粒子添加剤は、処方前に基油担体および/またはバイオベース油に処方すると、よりよく分散することがある。例は、1部の窒化ホウ素を3?10部のNP343に分散するものであるが、これに限定されない。
【0142】
乗用車モーター油 通常のモーター油をトップトリートするための濃縮添加剤処方(バイオベースブースターパッケージ(Bio-Booster Pak))
成分 粘度 重量%
NP343 4.30 66.85
LZ8676 8.00 59.00
LZ7070D 1150.00 9.00
LZ20001 210.00 9.15
LZ6662 500.00 1.00
LZ8650 8.00 3.00
Molyvan855 55.00 2.00
NX1窒化ホウ素 粉末 2.00
Teflon 8.00 2.00」

(4) 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比・検討

ア 明細書のサポート要件の充足性を判断するにあたっては、上記(1)の前提に従い、上記(2)の特許請求の範囲の記載と上記(3)の発明の詳細な説明の記載を対比しながら、発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲と、特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明の技術的範囲との対応関係を検討することになることから、はじめに、潤滑剤の技術分野において、当業者が発明の課題を解決できると認識し得るには、一般に、発明の詳細な説明においてどの程度の記載を要するのかにつき検討の上、これを踏まえて、本願発明の課題、及び、発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲につき整理した後、最終的に、特許請求の範囲の記載との対比・検討を行うこととする。

イ 潤滑剤の技術分野における発明の詳細な説明の記載について
潤滑剤の技術分野において、当業者が発明の課題を解決できると認識し得るには、一般に、発明の詳細な説明においてどの程度の記載を要するのかについてみるに、潤滑剤の研究開発は概して、潤滑剤自体に所望される特性をいかにして達成するかが主眼とされ、このような特性の改善こそが、基本的には、研究開発の課題、すなわち、発明の解決課題にあたると解される(もちろん、潤滑剤に所望される特性は多岐にわたるため、発明ごとに課題とされる特性が異なることはいうまでもないが、本願発明の場合も、後記ウのとおり、環境に優しい高温用食品用潤滑剤の特性改善(極圧性、耐摩耗性、熱的および機械的ストレスを受けたときの絶縁耐力、耐酸化性、粘度指数、粘度幅処方能力、粘度安定性、さらには、温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるときであっても、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供すること)が解決課題とされていることが理解できる。)。
このような潤滑剤の特性改善に係る課題が解決できることを、発明の詳細な説明の記載に接した当業者が認識できるというためには、もとより当該発明の詳細な説明において、当該特性が改善された(改善される)という事実の開示を要するというべきである。そして、この事実とは、実際に潤滑剤を処方した処方例及び当該処方例に係る潤滑剤の特性を把握するに足りる実験例、あるいは、これら具体例に代わる、各構成成分が相互に作用して特性を改善する仕組み(作用機序)を理解するに足りる根拠であると解するのが相当である。
なぜなら、潤滑剤のように、種々の成分を調合した組成物にあっては、実際にどのような化合物等を構成成分として用い、これをどのような配合比で処方するかにより、その特性は大きく異なったものとなることは、当該技術分野における技術常識というべき事項であるため、上記事実の開示なくして、得られる潤滑剤の特性を予測することは極めて困難であるからである。また、仮に、具体的な処方例までが開示されていたとしても、当該処方例に係る潤滑剤が現実にどのような特性を有するのかは、個々の構成成分の機能のみから予測することは困難であって、それら相互の作用が問題となることから、上記作用機序が明らかである場合を除き(一般に、潤滑剤の特性に係る実験結果なくして、当該作用機序を根拠付けることは難しい。)、当該処方例に係る潤滑剤を特性実験に供した結果なくして把握することはできないからである。
そして、発明の詳細な説明において、上記処方例や実験例等を開示することなく、単に、出願人が所望ないし期待する潤滑剤の特性を記載すること(単に、文言上で、所望の特性改善が達成できたと謳うこと)は、とりもなおさず、潤滑剤の特性改善という発明の解決課題自体を明示的に記したにすぎないのであって、発明の課題を解決することができることを、裏付けをもって詳述したことにはならないのであるから、このような場合につきサポート要件が充足されていると判断してしまうと、実質的に発明の詳細な説明において公開されていない発明についてまで、独占的、排他的な権利が発生することになり、特許制度の趣旨に反することとなるからである。

ウ 本願発明の課題について
(ア) 上記(3)認定の発明の詳細な説明の記載によると、以下の事項を把握することができる。
(i) 本願発明は、天然および/または合成の野菜油、動物油、植物油、または樹木油、ならびに窒化ホウ素から作製されたバイオベース潤滑剤組成物に関するものであり、最高1000℃およびそれ以上の極高温における潤滑性、耐摩耗性、および極圧性能の改善をもたらし、高温用途で燃焼機関、オーブン、チェーン、ケーブル、ギヤ、軸ピン、軸受、および滑り面を潤滑するのに有用であり得ること(上記(3)ア【0001】参照)。
(ii) 食品加工プラント用の潤滑剤は、安全性の要件を満たすことに加えて、有効な潤滑剤でなければならず、機械部品を潤滑し、粘度変化を抑制し、酸化を防止し、発錆および腐食から保護し、磨耗保護をもたらし、使用中に堆積物およびスラッジの生成を抑制すべきであるところ(上記(3)イ【0008】参照)、従来の関連技術に記載されている食品用潤滑剤の欠点は、耐酸化性、粘度幅処方能力の限界、および粘度保護の限界に関連し、長期にわたって熱および機械的ストレスを受けると、酸化およびレオロジー特性が悪くなる場合が多いことから(上記(3)イ【0011】参照)、優れた極圧性および耐摩耗性を示し、熱的および機械的ストレスを受けたときの絶縁耐力、耐酸化性、粘度指数、粘度幅処方能力、および粘度安定性が実質的に改善された潤滑剤が求められていること(上記(3)イ【0012】参照)。
(iii) 本願発明は、温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるとき、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供することができ(上記(3)イ【0012】参照)、環境に優しい高温用食品用潤滑剤の特性を改善するのに有用な添加剤および基油の種類と範囲を拡大するものであり、窒化ホウ素を処方すると、組成物が、最高1000℃およびそれ以上の極高温において向上された潤滑性、耐摩耗性、極圧性、および耐酸化性を示し、流体および化合物を絶縁する際に有益である高絶縁耐力を提供し、高温用途で燃焼機関、オーブン、チェーン、ケーブル、ギヤ、軸ピン、軸受、および滑り面を潤滑するのに特に有用であり得、窒化ホウ素を含む潤滑剤基油類の化学構造をとるため、焼けても、研磨性のある硬質炭素堆積物をあまり生じることなく、窒化ホウ素の白色粉末を被潤滑表面上に残すことになり、接触部分の中で許容範囲にある近接箇所において石油系炭化水素の既知の問題である焼付きを引き起こす硬質の炭素堆積物の連続的蓄積を防止する助けにもなること(上記(3)ウ【0019】参照)。
(iv) 本願発明は、500℃を超える温度において、改善された潤滑性、耐摩耗性、および極圧性能が改善され(この温度下では、グラファイトでもモリブデンでも実現できないことが知られている)、食品用となるように処方することができ、該組成物を環境に対して無毒性にする生分解性が改善されること(上記(3)ウ【0020】、【0022】参照)。
(イ) 上記(i)?(iv)を整理すると、本願発明の課題は、端的にいえば、環境に優しい高温用食品用潤滑剤の特性改善にあるといえ、詳しくは、食品用潤滑剤に求められている、優れた極圧性および耐摩耗性、さらに、熱的および機械的ストレスを受けたときの絶縁耐力、耐酸化性、粘度指数、粘度幅処方能力、および粘度安定性を改善するとともに、温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるときであっても、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供することにあるということができる。
ここで、上記特性のうち、「優れた極圧性および耐摩耗性、さらに、熱的および機械的ストレスを受けたときの絶縁耐力、耐酸化性、粘度指数、粘度幅処方能力、および粘度安定性」については潤滑剤一般に所望される特性であるということもできるから、本願発明は、このような潤滑剤一般に求められる極圧性や耐摩耗性といった特性の改善に加えて、「温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるときであっても、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供すること」を解決課題とするものと整理することもできる。

エ 発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲について
(ア) 当業者が上記ウ(イ)に記載した本願発明の課題が解決できると認識できる範囲を検討するにあたっては、上記イのとおり、発明の詳細な説明に記載された処方例及び実験例、あるいは上記作用機序を理解するに足りる根拠の存在が重要となることから、これらの存在につき、上記(3)認定の発明の詳細な説明の記載を精査する。
(イ) 処方例及び実験例について
本願明細書の発明の詳細な説明には、上記(3)エ?キのとおり、本願発明の成分(A)?(D)が具体的にどのような成分であるのかが例示され、個々の構成成分の機能についての解説も認められる。
また、上記(3)ク、ケのとおり、これらの成分の配合比の概略と種々の処方例に関する記載も認めることができる。
しかしながら、この種々の処方例において使用されている「NP343」は、上記「第3 2」のとおり、トリメチロールプロパンとカプリル酸/カプリン酸のエステルであって、成分(A)(オレイン酸残基60%以上のトリグリセリド)には該当しないのであるから、本願発明の処方例とはいえない。
結局のところ、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、各構成成分の例示・解説とその配合比の概略の提示にとどまるものであって、本願発明に係る液状潤滑剤に対応する処方例、及び、その特性を具体的に示す実験例はともに一例も存在しないということができる。
(ウ) 作用機序について
さらに、上記(3)認定の発明の詳細な説明の記載を仔細にみても、各構成成分が相互に作用して特性を改善する仕組み(作用機序)を把握するに足りる記載は見出せないし、当該作用機序に関する技術常識も見当たらない。
すなわち、本願発明の課題は、上記ウ(イ)のとおり、潤滑剤一般に求められる極圧性や耐摩耗性といった特性の改善に加えて、「温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるときであっても、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供すること」にあるから、処方例等の具体例を開示しないで、このような課題が解決できると当業者が認識し得るためには、窒化ホウ素をバイオベース油などと調合し、該バイオベース油の自然着火温度を超える環境下に晒した場合、本願発明に係る液状組成物を構成する各成分がどのように作用して当該課題の解決に効果を及ぼすのか(作用機序)を理解するに足りる根拠が必要になるところ、確かに、上記(3)オ(さらには、(3)ウ【0019】)に摘記した成分(B)の窒化ホウ素に関する記載によれば、高温特性に関連する窒化ホウ素自体の機能や、FOMBLIN油に添加した場合の試験結果を理解することができるものの、これらのうち前者はあくまで窒化ホウ素単独の機能であり、後者はバイオベース油に該当しないFOMBLIN油での試験結果であって、他の成分(A)、(C)、(D)と調合した場合の相互作用を把握することは到底できないから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から、上記作用機序を理解することはできないというべきであって、これを理解するための技術常識も見当たらない。
(エ) そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、単なる構成成分の例示や配合比の概略の開示、さらには、窒化ホウ素など各構成成分単独の機能の開示は認められるものの、本願発明に対応する処方例及び実験例は一例も存在しないし、発明の詳細な説明の記載全体を俯瞰しても、さらには出願時の技術常識に照らしても、本願発明の課題に係る特性改善の作用機序を理解するに足りる根拠も見当たらないのであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本願発明の課題が解決できることを何ら認識し得ないというほかない。

オ 上記のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本願発明の課題が解決できることを何ら認識し得ないのであるから、特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明の技術的範囲は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えることは明らかである。

(5) 審判請求人の主張について

審判請求人は、参考資料3(平成26年10月20日受付の手続補足書参照)を提出し、平成26年10月14日付け意見書において、
「SAE 5W30の性能を記載した、本出願人(リニューアブル リューブリカンツ インコーポレーテッド)による資料(Bio-SynXtra HD Plus SHP Motor Oil, SAE 5W30(Low Ash))を参考資料3として提出します。これによると、SAE 5W30は超高度の粘度インデックスを有し、従って燃料希釈を低減し、摩耗を低減し、そして燃料経済に有効であることが示されます。」
と主張する(上記「第3 審尋事項及びその回答について」も参照)。
しかしながら、当該参考資料3には、「Bio-SynXtra HD Plus SHP Motor Oil, SAE 5W30(Low Ash)」がどのような構成成分により処方されたものであるのかについては、何ら記載されていないのであるから、そもそも、この資料に示されたものが本願発明に係る液状潤滑剤に対応するものであるとする前提を欠くものといわざるを得ず、この主張は採用できない。
なお、「NP343」は、オレイン酸残基60%以上のトリグリセリドではなく、トリメチロールプロパンとカプリル酸/カプリン酸のエステルであることから、審判請求人より、本願発明の成分(A)を、当該「NP343」に即したもの(すなわちトリメチロールプロパンとカプリル酸/カプリン酸のエステル)に補正したいとの申出があった(平成26年12月18日付け応対記録参照)。しかしながら、本願明細書の段落【0073】、【0078】等の記載からみて、トリメチロールプロパンとカプリル酸(オクタン酸)/カプリン酸(デカン酸)のエステルは、本願発明の成分(A)というよりはむしろ成分(C)に相当するものと解されるし、本願発明の主たる課題は上記(4)ウ(イ)のとおり、「温度がバイオベース油の自然着火温度を超えるときであっても、硬質の炭素堆積物を生じることなく、乾燥潤滑膜を提供すること」ともいえ、バイオベース油は本願発明における重要な構成成分であることから、本願発明のバイオベース油(成分(A))に代えて、そもそもバイオベース油であるかも定かでない「NP343」を構成成分とする補正の申出を受け入れることはできない。

(6) 小括

以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の上記課題が解決できると当業者が認識できる程度に処方例等が記載されていないため、出願時の技術常識に照らしても、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定される明細書のサポート要件を充足するものではない。

2 理由(4):特許法第29条第2項の規定違反(いわゆる進歩性の有無)について

(1) 留意事項

上記1のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は明細書のサポート要件を充足するものではないが、仮に、本願の特許請求の範囲の記載がサポート要件を充足するものとして以下検討する。なお、その場合には、進歩性の有無を判断する際の当業者の創作能力のレベルにつき、以下のように解すべきである。
すなわち、本願の発明の詳細な説明には、上記1のとおり、液状潤滑剤の各構成成分の例示等はあるものの、その具体的処方例や実験例は存在しないし、特性改善に係る作用機序を理解するに足りる記載も存在しない。仮に、このように実施例等が存在しない状況下にあっても明細書のサポート要件を充足するものであるとするならば、この場合の出願時の技術常識のレベル(当業者の創作能力のレベルということもできる。)は、発明の詳細な説明を十分に補完し得るレベル、つまり、単に潤滑剤の各構成成分の例示等があれば、処方例や実験例が示されていなくとも、当該潤滑剤の特性(各構成成分の組合せによる作用効果)を予測し得るレベルにあると解さざるを得ない。
したがって、本願発明が、特許法第29条第2項の規定に違反するものか否か(いわゆる進歩性を有するか否か)の判断にあたっては、このような当業者の創作能力のレベルにも留意すべきである。

(2) 本願発明

本願請求項1?14に係る発明は、平成25年10月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(本願発明)は、上記1(2)のとおりのものである。

(3) 引用文献とその記載事項

ア 引用文献
引用文献1:特開2003-49187号公報
引用文献2:特開2002-88383号公報
引用文献3:特開平10-130678号公報
引用文献4:特開2004-182879号公報
引用文献5:特開2000-129279号公報

イ 引用文献1に記載された事項
引用文献1には以下の記載がされている。
(1-a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)下式の少なくとも1種のトリグリセリド油
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は炭素数約7?約23の脂肪族炭化水素基を表す。)
(B)(1)乳酸エチル、(2)大豆メチルエステル、(3)少なくとも1種のミネラルスピリット、(4)上記1、2、および3の組み合わせ、からなる群から選ばれる有機溶媒、および
(C)酸化防止剤を含む組成物。
【請求項2】 前記トリグリセリド油(A)が天然植物油である請求項1記載の組成物。
【請求項3】 前記トリグリセリド油(A)が改質された植物油である請求項1記載の組成物。
【請求項4】 前記天然植物油が大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ヤシ油、レスクエレラ(lesquerella)油、カノラ(canola)油、落花生油、コーン油、綿実油、パーム油、紅花油、メドウフォーム(meadowfoam)油、およびヒマシ油を含む群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項2記載の組成物。
【請求項5】 前記改質された植物油が化学的に改質された植物油および遺伝的に改質された植物油を含む群から選ばれる請求項3記載の組成物。
【請求項6】 R1、R2、およびR3がオレイン酸残基に由来するモノ-不飽和含有量を少なくとも60%有する請求項5記載の組成物。
・・・
【請求項18】 前記少なくとも1種のミネラルスピリットがPD23である請求項1記載の組成物。
・・・
【請求項37】 さらに二硫化モリブデンを含む請求項1記載の組成物。
・・・」

(1-b)
「【0001】
【発明の属する技術分野】・・・本発明は潤滑剤を浸透させる技術に関し、特に生分解性浸透性潤滑剤の技術に関する。」

(1-c)
「【0004】典型的には、浸透性潤滑剤は石油系油類を含む。石油系油類は満足に機能してきたが、いくつかの欠点を持つ。石油系油類は最低限の生分解性しかなく、従って、安全性と汚染について問題がある。さらに、石油系油類は再生できない。
【0005】これに対して、植物油は再生可能な資源から大量に入手可能であり、一般に容易に生分解可能であり、すなわち「環境に優しい」。その結果、そのような油類は浸透性潤滑剤をはじめとする広範囲の用途に使用する関心を惹く可能性がある。」

(1-d)
「【0010】(A)トリグリセリド油
本発明を実施する際に、基剤油は下式の合成トリグリセリドまたは天然油である。
【化5】

(式中、R1、R2およびR3は炭素数約7?約23の脂肪族炭化水素基を表す。)本明細書において「炭化水素基」という用語は分子の残部に直接結合している炭素原子を有するラジカルを示す。脂肪族炭化水素基は下記の基を含む。
(1)脂肪族炭化水素基:ヘプチル、ノニル、ウンデシル、トリデシル、ヘプタデシルのようなアルキル基;ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル、トリデセニル、ヘプタデセニル、ヘンエイコセニルのような単一の二重結合を有するアルケニル基;8、11-ヘプタデカジエニルおよび8、11、14-ヘpタデカトリエニルのような2個または3個二重結合を有するアルケニル基。これらの異性体はすべて含まれるが、直鎖基が好ましい。
(2)置換脂肪族基:非炭化水素置換基(本発明の文脈では基の炭化水素としての性質を顕著に変更しないもの)を含む基。当業者は好適な置換基を知悉しているであろう。例としてはヒドロキシ、カルボアルコキシ(特に低級カルボアルコキシ)およびアルコキシ(特に低級アルコキシ)があり、「低級」という用語は炭素数7以下の基を示す。
(3)ヘテロ基:圧倒的に本発明の文脈における脂肪族炭化水素の性質を有する一方、脂肪族炭素原子からなる鎖または環に存在する炭素以外の原子を含む。好適なヘテロ原子は当業者には明らかであるが、例えば、酸素、窒素およびイオウを含む。」

(1-e)
「【0017】好適な一実施態様においては、R1、R2およびR3の脂肪族炭化水素基はトリグリセリドが少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%のモノ-不飽和性を有するような基である。本発明において有用なトリグリセリドの例としては、通常より高いオレイン酸含有量を持つように遺伝的に改質された植物油類である。通常のヒマワリ油はオレイン酸含有量が25?30%である。ヒマワリの種子を遺伝的に改質することにより、オレイン酸含有量が約60%?約90%であるヒマワリ油が得られる。」

(1-f)
「【0037】(G)食品品位の粘着付与剤
食品品位の粘着付与剤を添加すると生分解性浸透性潤滑剤の性能に粘着性が付与される。用途および環境条件によっては装置を腐食から保護する、粘着性も追加的に有する表面を持つフィルムが必要とされる。粘着付与剤も潤滑剤を運動部材の表面に潤滑性を保持し、耐磨耗性を改善する。この実施態様では、粘着付与剤は潤滑剤の1重量%?2重量%であるが、約0.5重量%?約5重量%であってもよい。本発明で使用できる食品品位粘着付与剤の一例は米国オハイオ州マケドニア市、Funtional Food Inc.社から市販されているファンクショナルV-584脂肪油系潤滑剤用天然ゴム粘着付与剤/食品品位(Functional V-584 Natural Rubber Tackifier for Fatty-Oil Based Lubricants・Food Grade)がある。
【0038】(H)二硫化モリブデン
二硫化モリブデンを含有する生分解性浸透性潤滑剤を目の詰まった耐性領域内に浸透し、潤滑し、腐食を防止するように処方する。この潤滑剤はケーブルや金網のコア内に深く浸透して保護する。二硫化モリブデンを添加すると、粘着付与剤を含有する生分解性浸透性潤滑剤よりも塵や汚れに対して抵抗性の格別の耐磨耗性/極限の圧力性能が付加される。本実施態様では、二硫化モリブデンは潤滑剤の1.0重量%であるが、約0.5重量%?約5重量%であってもよい。
【0039】本発明の他の実施態様では、生分解性浸透性潤滑剤は粘着付与剤と二硫化モリブデンの両方を含有していてもよい。本実施態様は高速ローラーチェーン、ケーブルおよび運動部材のような用途に性能上の利点を有する。本実施態様の潤滑剤は塗装に迅速に浸透、付着して極端な高圧および高速度でも拭き取れない潤滑剤フィルム層を形成する。この潤滑剤は環境条件に曝される金属表面を錆びおよび腐食から保護する。」

(1-g)
「【0040】化学薬品は磨耗防止剤を除いてすべて食品品位のものを用いて浸透性潤滑剤の生分解性を向上させるのが好ましい。しかしながら、健全な判断の下に選択される任意の品位の化学薬品を本発明において使用してもよい。」

ウ 引用文献2?5に記載された事項
(ア) 引用文献2には、合成油に、固体潤滑剤として、黒鉛及び窒化硼素を混入した固体潤滑剤入り耐熱用チェーンオイルが記載され(【特許請求の範囲】)、窒化硼素単体で混入する場合の比率は合成油に対し重量比4%至0.1%であること、及び、その効果として、合成油が蒸発した後も固体潤滑剤が残るので、耐久性に優れることや黒鉛及び窒化硼素は悪質なカーボンにならずに潤滑油機能が発揮できることが記載されている(【0005】、【0006】)。
(イ) 引用文献3には、六方晶窒化ホウ素粉末を分散してなる潤滑油が記載され(【特許請求の範囲】など)、窒化ホウ素は耐熱性に優れており、他の固体潤滑剤に比べて高温度域までその潤滑特性を失わないため優れていること、及び、窒化ホウ素は白色であり、同品を分散してなる潤滑油も白色もしくは乳白色であるため、黒色度でその劣化が判断されるモーターオイルにおいては利点を有することが記載されている(【0002】)。
(ウ) 引用文献4には、二硫化モリブデン等の重金属を含まず、且つ廃棄処理時にダイオキシン等の有害物質を発生しない、環境に優しい水溶性金属加工油剤として、基油に結晶性乱層構造の窒化硼素微粉末を有効量分散させたものを用いることが記載されており(【特許請求の範囲】、【0007】など)、この窒化硼素微粉末は、黒鉛等の他の固体潤滑剤と比べて化学的に安定であり、空気中では1000℃近くまで酸化されないという特徴があることが記載されている(【0012】)。
(エ) 引用文献5には、窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を分散せしめたチェーン用潤滑油組成物が記載され(【特許請求の範囲】、【0023】など)、当該固体潤滑剤につき、二硫化モリブデンは黒色であり、業種によっては潤滑剤の飛散により製品が着色したり、又、作業場が汚染することもあるため、白色であり、分散性が良好で、更には高温での潤滑性能が優れる窒化ホウ素を用いることが特に好ましいことが記載されている(【0024】)。

(4) 引用発明

上記(3)イの摘記事項(1-a)の請求項1、37には、トリグリセリドと二硫化モリブデンについて記載され、摘記事項(1-b)には、生分解性浸透性潤滑剤の用途について記載されているから、これらより、引用文献1には、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。
(なお、引用文献1の請求項1に記載された【化1】と、その説明(括弧書き)とに化合物を構成する基の表記の点で齟齬がみられるが、【化1】中のR、R^(2)、及びR^(3)と、説明中のR1、R2、及びR3とが対応関係にあることは明らかであるから、これらを整理して記載した。)
「(A)下式の少なくとも1種のトリグリセリド油
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)およびR^(3)は炭素数約7?約23の脂肪族炭化水素基を表す。)
(B)(1)乳酸エチル、(2)大豆メチルエステル、(3)少なくとも1種のミネラルスピリット、(4)上記1、2、および3の組み合わせ、からなる群から選ばれる有機溶媒、および
(C)酸化防止剤、
さらに二硫化モリブデンを含む生分解性浸透性潤滑剤。」

(5) 本願発明と引用発明の対比・検討

ア 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明におけるトリグリセリド油は、炭素数約7?約23の脂肪族炭化水素基を残基とするものであるから(摘記事項(1-d)も参照)、60%以上のオレイン酸残基を有することを除き、本願発明におけるトリグリセリドから成るバイオベース油に相当するものということができる。また、引用発明における酸化防止剤及び生分解性浸透性潤滑剤はそれぞれ、本願発明における抗酸化剤及び液状潤滑剤に相当するものといえる。
そうすると、両者は、
「(A)次式で表されるトリグリセリドから成るバイオベース油、
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)、およびR^(3)は、7?23個の炭素原子を含む脂肪族ヒドロカルビル基である)、
(D)抗酸化剤、
を有する液状潤滑剤。」
である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。
<相違点1>
本願発明におけるトリグリセリドは、「60%以上のオレイン酸の割合を有」するのに対して、引用発明のものは、その点の明示がない点。
<相違点2>
本願発明は、「(B)少なくとも1つの窒化ホウ素」を有しているのに対して、引用発明は、「二硫化モリブデン」を有している点。
<相違点3>
本願発明は、「(C)合成エステル、溶剤精製石油系オイル、水素化分解された石油系ホワイトオイル、完全水素化分解された合成油、フィッシャー・トロプシュ(Fischer Tropsch)油、グループI石油系オイル、グループII石油系オイル、グループIII石油系オイル、ポリアルファオレフィン(PAO)、およびその混合物からなる群から選択された少なくとも1種の基油」を有しているのに対して、引用発明は、「(B)(1)乳酸エチル、(2)大豆メチルエステル、(3)少なくとも1種のミネラルスピリット、(4)上記1、2、および3の組み合わせ、からなる群から選ばれる有機溶媒」を有している点。
<相違点4>
本願発明は、「該バイオベース油、該基油、該窒化ホウ素及び該添加剤は全て食品グレード」であるのに対して、引用発明は、その点の明示がない点。
<相違点5>
本願発明は、「500℃を超える温度で安定性、潤滑性、耐摩耗性及び極圧性能を維持する」と明示しているのに対して、引用発明は、この点の明示がない点。

イ 相違点の検討
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
引用文献1の摘記事項(1-a)の請求項6及び摘記事項(1-e)には、オレイン酸残基を60%以上とすることが記載されているから、引用発明におけるトリグリセリド油として、本願発明のように、「60%以上のオレイン酸の割合を有」するものを用いることは当業者にとって容易なことである。
<相違点2について>
周知技術として挙げた引用文献2?5の記載内容から(上記(3)ウ参照)、窒化ホウ素は、二硫化モリブデンと並び固体潤滑剤としてよく知られた材料であって、該二硫化モリブデンと比較して、高温特性に優れていることに加え、重金属を含まない点で環境にも優しい材料であることが理解できる。
また、引用文献1の摘記事項(1-f)によれば、引用発明の二硫化モリブデンは、「格別の耐摩耗性/極限の圧力性能」という一般に固体潤滑剤に求められる特性を期待して添加されるものであるとともに、その用途としては、高速ローラーチェーン、ケーブルおよび運動部材のような用途も予定されていることから、摺動部材の高速稼動時の温度上昇なども含め、高温下での使用を特に排除するものとも認められない。そして、低温下での使用に特化した潤滑剤でない限り、高温特性(耐熱性)は通常の潤滑剤に求められる典型的な特性というべきであり、引用発明に係る潤滑剤においても当該高温特性(耐熱性)に関する要請が少なからず内在するものと解するのが妥当である。
さらに、引用文献1の摘記事項(1-c)によると、引用発明も環境に優しいものを前提としていることが分かる。
これらの点を勘案すると、引用発明において、高温特性向上及び環境対策の観点から、二硫化モリブデンに代えて、これと同じく固体潤滑剤の代表例である窒化ホウ素を用いることは、上記引用文献2?5に記載された、窒化ホウ素の周知の特性を参酌し当業者が容易に想到し得るものと認められる。
そして、(i)本願明細書には処方例や実験例が存在せず、窒化ホウ素を用いることの有利な作用効果(二硫化モリブデンを用いた場合と比較したときの顕著な作用効果など)を認めるに足りる記載は見出せないこと、及び(ii)本願発明により奏される作用効果は、窒化ホウ素固有の性状から容易に予測し得るものであるとともに、上記(1)の留意事項に従えば、当業者の創作能力のレベルであれば、潤滑剤の構成成分から、その特性(作用効果)を容易に予測することができるのであるから、構成成分として窒化ホウ素を用いた場合の潤滑剤の特性(作用効果)は当業者の予測の範疇のものにすぎないこと、を鑑みると、引用発明における二硫化モリブデンに代えて、固体潤滑剤として慣用の窒化ホウ素を使用することにより奏される作用効果は格別顕著なものとは認められない。
<相違点3について>
引用文献1の摘記事項(1-a)の請求項18より、引用発明において選択的に示された有機溶媒の中から、PD23(この材料は、本願明細書の段落【0121】などにおいて、本願発明の成分(C)に係る基油の具体例として記載されているものである。)を選定し、本願発明と同様の基油とすることは当業者が容易に想到し得るものと認められる。
<相違点4について>
引用文献1の摘記事項(1-g)より、引用発明において、構成成分を全て食品グレードとすることに特段の困難性は見当たらない。
<相違点5について>
当該相違点5に係る技術的事項は、液状潤滑剤が奏する作用効果に関するものと解されるところ、上記相違点1?4について検討したとおり、本願発明に係る液状潤滑剤の成分組成は、当業者にとって容易に想到し得るものであることから、この容易想到とされた液状潤滑剤も、本願発明と同等の上記作用効果を奏するものと解するのが妥当である。
このように本願発明の上記相違点1?5に係る技術的事項に特段の創意は認められないし、上記(1)において述べた当業者の創作能力のレベルからみて、本願発明が当該技術的事項を具備することにより奏する作用効果も当業者の予測の範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。

(6) 審判請求人の主張について

審判請求人は、平成26年10月14日付けの意見書において、
「以上の通り引用例2?5は潤滑剤に窒化ホウ素を添加することを開示しますが、これを引用例1の生分解性浸透性潤滑剤中の・・ニ硫化モリブデンの代わりに使用する動機はなく、本願発明の開示に基づくものです。
・・・引用例1の潤滑剤において、ニ硫化モリブデンの代わりに、引用例2?5に基づき窒化ホウ素を使用した場合、高温での潤滑性、耐摩耗性及び/又は極圧性能が改善されるとは、当業者でも予期し得ないと思料します。
従って、本願発明の潤滑剤は、引用例1?5から容易に想到し得ないと思料します。」
と主張する。
しかしながら、上記相違点2についての検討のとおり、二硫化モリブデンと窒化ホウ素はともに、よく知られた固体潤滑剤であることから、それらの周知の特性を勘案しながら、窒化ホウ素の置換適用を図ることに特段の困難性は認められず、また、これを阻害する要因も特段見当たらないことに加え、窒化ホウ素の置換適用による本願発明の作用効果は、当業者の予測の範疇のものであって格別顕著なものではないから、審判請求人の上記主張も採用することはできない。

(7) 小括

以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用発明及び引用文献2?5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、進歩性を有するものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび

以上をまとめると、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、同法第49条第4号に該当するとともに、本願は、請求項1に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号に該当するものであって、いずれにしても拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-01-30 
結審通知日 2015-02-24 
審決日 2015-03-24 
出願番号 特願2008-509082(P2008-509082)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C10M)
P 1 8・ 121- WZ (C10M)
P 1 8・ 536- WZ (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 浩子江間 正起  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 日比野 隆治
橋本 栄和
発明の名称 窒化ホウ素を含む高温バイオベース潤滑剤組成物  
代理人 小沢 慶之輔  
復代理人 篠田 通子  

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