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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1304584
審判番号 不服2014-5083  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-17 
確定日 2015-08-20 
事件の表示 特願2013-505268「内視鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月16日国際公開,WO2013/069382〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成24年9月24日(優先権主張 平成23年11月9日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成25年4月4日付けで拒絶理由が通知され,同年6月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年8月8日付けで最後の拒絶理由が通知されたが,請求人から応答されず,同年12月13日付で拒絶査定がされたのに対し,平成26年3月17日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
そして,その請求項1?8に係る発明は,上記平成25年6月10日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
生体内に挿通される挿入部と、
前記挿入部の先端に配置され、光ファイバにより構成される光学素子と、
前記光学素子に対して光を入射させることで前記挿入部の先端から生体に照明光を照射する光源部と、
前記照明部の照射に基づき前記生体からの戻り光を検出する受光部と、
圧電素子により構成され、前記光学素子の先端である自由端を揺動させるために伸縮する駆動部と、
前記光学素子の長手軸方向に沿って前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置され、角柱形状を有するとともに前記光学素子の径に基づき近位端及び遠位端面の中心に位置する貫通孔を有し、当該貫通孔を介して前記光学素子を保持する接合部材と、
を有し、
前記駆動部は、前記接合部材上の第1側面に配置された第1駆動部と、前記光学素子の軸方向に対して、前記第1側面の点対称である面とは異なる前記接合部材上の第2側面に配置された第2駆動部と、を有し、前記駆動部における伸縮が前記接合部材を介して前記光学素子に伝達されることで前記光学素子の先端を揺動させることを特徴とする内視鏡。」

第2 引用刊行物及びその記載事項
1 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2010-148769号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記において,引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。
(1-ア)「【0004】
光ファイバの先端を所定の変位経路に沿って正確に変位させるときに、正確な位置の推定が可能である。しかし、光ファイバ先端の周囲温度や振動などにより正確な変位経路に沿って変位させることが困難な場合がある。このような場合に表示する画像に歪みが生じることがあった。」

(1-イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を適用した光走査型内視鏡装置の外観を概略的に示す外観図である。
【0017】
光走査型内視鏡装置10は、光走査型内視鏡プロセッサ20、光走査型内視鏡60、およびモニタ11によって構成される。光走査型内視鏡プロセッサ20は、光走査型内視鏡60、およびモニタ11に接続される。
【0018】
なお、以下の説明において光供給ファイバ(図1において図示せず)の出射端(第1の出射端)、反射光ファイバ(図1において図示せず)の入射端(第2の入射端)、および位置検出ファイバ(図1において図示せず)の入射端(第3の入射端)は光走査型内視鏡60の挿入管61の遠位端側に配置される端部であり、光供給ファイバの入射端(第1の入射端)、反射光ファイバの出射端(第2の出射端)、および位置検出ファイバの出射端(第3の出射端)は光走査型内視鏡プロセッサ20と接続されるコネクタ62に配置される端部である。
【0019】
光走査型内視鏡プロセッサ20から観察対象領域OAに照射する光が供給される。供給された光は光供給ファイバ(供給光伝達路)により挿入管61の遠位端に伝達され、観察対象領域内の一点に向かって照射される。光が照射された観察対象領域上の一点における反射光が、光走査型内視鏡60の挿入管61の先端から光走査型内視鏡プロセッサ20に伝達される。
【0020】
光供給ファイバの出射端の向く方向が、ファイバ駆動部(図1において図示せず)により変えられる。先端の方向を変えることにより、光供給ファイバから照射される光が観察対象領域上に走査される。ファイバ駆動部は、光走査型内視鏡プロセッサ20により制御される。」

(1-ウ)「【0023】
後述するように、光源ユニット30から観察対象領域に照射する光および光供給ファイバ63の変位位置の検出用の光が光供給ファイバ63に供給される。液晶駆動回路21は、第1、第2の液晶シャッタ71a、71bの透過と遮光とを切替える。スキャン駆動回路22は、ファイバ駆動部72(駆動部)に光供給ファイバ63を変位させる。
【0024】
光が照射された観察対象領域の反射光が、光走査型内視鏡60により光走査型内視鏡プロセッサ20に伝達される。また、光供給ファイバ63の位置に応じた検出用の光も光走査型内視鏡60により光走査型内視鏡プロセッサ20に伝達される。光走査型内視鏡プロセッサ20に伝達された反射光および検出用の光は、受光ユニット40に受光される。」

(1-エ)「【0046】
図6に示すように、ファイバ駆動部72は、ファイバ支持部72sおよび屈曲部72bにより形成される。屈曲部72bは円筒形状であり、円筒内部に光供給ファイバ63が挿通されている。ファイバ支持部72sにより光供給ファイバ63は屈曲部72bの挿入管61の遠位端側の端部において支持される。
【0047】
図7に示すように、屈曲部72bには第1、第2の屈曲源72b1、72b2が設けられる。第1、第2の屈曲源72b1、72b2はそれぞれ2組の圧電素子であり、スキャン駆動回路22から送信されるファイバ駆動信号に基づいて屈曲部72の円筒軸方向に伸縮する。
【0048】
第1の屈曲源72b1を構成する2つの圧電素子が、第2の方向に沿って並びながら屈曲部72bの円筒の中心を挟むように屈曲部72bの円筒外周面に固定される。また、第2の屈曲源72b2を構成する2つの圧電素子が、第1、第2の方向に垂直な第3の方向に沿って並びながら屈曲部72bの円筒の中心を挟むように屈曲部72bの円筒外周面に固定される。
【0049】
図8に示すように、第1の屈曲源72b1を構成する2つの圧電素子を同時に逆方向に伸縮させることにより、第2の方向に沿って屈曲部72bは屈曲する。また、第2の屈曲源72b2を構成する2つの圧電素子を同時に逆方向に伸縮させることにより、第3の方向に沿って屈曲部72bは屈曲する。
【0050】
光供給ファイバ63はファイバ支持部72sを介して屈曲部72bに付勢され、第2、第3の方向、すなわち光供給ファイバ63の出射端からの光の出射方向に垂直な2方向に屈曲する。光供給ファイバ63が屈曲することにより、光供給ファイバ63の出射端は変位する。
【0051】
なお、図9に示すように、光供給ファイバ63の出射端は第2、第3の方向に沿って振幅の増加と減少を繰返しながら振動するように駆動される。なお、振動の周波数は第2、第3の方向において同一となるように調整される。また、振幅の増加時期と減少時期も第1、第2の方向において一致するように調整される。
【0052】
第2、第3の方向に沿ってこのような振動をさせることにより、図10に示すような渦巻き型の変位経路(所定の変位経路)を通るように光供給ファイバ63の先端は変位し、光が観察対象領域上で走査される。」

(1-オ)ファイバ駆動部の図面として,以下の図6及び図7が記載されている。
【図6】

上記図6には,光供給ファイバ(63)の先端部分すなわち出射端は,固定されておらず,自由端となっていることが示されている。

【図7】

上記図6及び図7には,光供給ファイバ(63)の径に基づき面の中心に位置する貫通孔を有し,貫通孔を介して光供給ファイバ(63)を支持するファイバ支持部(72s)が,光供給ファイバ(63)と,第1,第2の屈曲源(72b1、72b2)が設けられた屈曲部(72b)との間の領域に亘って配置されていることが示されている。
さらに,上記図7には,ファイバ支持部(72s)材上の測面に配置された第1の屈曲源(72b1)と,光供給ファイバ(63)の軸方向に対して,その配置された位置に対して点対称である位置と異なるファイバ支持部(72s)材上の側面に配置された第2の屈曲源(72b2)が示されている。

上記引用例1の記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「光供給ファイバの出射端,反射光ファイバの入射端は光走査型内視鏡の挿入管の遠位端側に配置される端部であり,光供給ファイバの出射端の向く方向が,ファイバ駆動部により変えられ,光源ユニットから観察対象領域に照射する光が光供給ファイバに供給され,
光が照射された観察対象領域の反射光が受光される,光走査型内視鏡において,
ファイバ駆動部は,ファイバ支持部および屈曲部により形成され,ファイバ支持部により光供給ファイバは屈曲部の挿入管の遠位端側の端部において支持され,屈曲部には第1,第2の屈曲源(72b1,72b2)が設けられ,第1,第2の屈曲源(72b1,72b2)はそれぞれ2組の圧電素子であり,スキャン駆動回路から送信されるファイバ駆動信号に基づいて屈曲部の円筒軸方向に伸縮し,光供給ファイバはファイバ支持部を介して屈曲部に付勢され,光供給ファイバの出射端は第2,第3の方向に沿って振幅の増加と減少を繰返しながら振動するように駆動されるものであって,
光供給ファイバの出射端は,自由端であり,
光供給ファイバの径に基づき面の中心に位置する貫通孔を有し,貫通孔を介して光供給ファイバを支持するファイバ支持部が,光供給ファイバと,第1,第2の屈曲源(72b1,72b2)が設けられた屈曲部との間の領域に亘って配置され,
ファイバ支持部材上の測面に配置された第1の屈曲源(72b1)と,光供給ファイバの軸方向に対して,その配置された位置に対して点対称である位置と異なるファイバ支持部材上の側面に配置された第2の屈曲源(72b2)を有する,光走査型内視鏡。」(以下「引用発明」という。)

2 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-174744号公報(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付与した。
(2-ア)「【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は第1の実施の形態を備えた光走査型顕微鏡の全体構成を示し、図2は第1の実施の形態の光走査プローブ装置の先端部の構成を示し、図3は先端部に設けた光学ユニットの構成を示し、図4は制御部の構成を示し、図5は走査面を光走査する様子を示し、図6は光走査プローブ装置が挿通された状態の内視鏡の先端側を示す。」

(2-イ)「【0014】チューブ8内に挿通された細長の光ファイバ6bの先端は光学ユニット11Aに固定され、この光ファイバ6bの先端から出射される光を光走査機構(スキャナ)を介して検査対象となる被検部側に集光して照射し、被検部側からの反射光を(戻り光)を受光する。図2の断面図で示す光学ユニット11A部分を図3では斜視図で詳細に示す。この光学ユニット11Aは以下の構成となっている。
・・・
【0017】さらに各薄板15i(i=a?d)にはそれぞれ厚み方向に分極された板状の圧電素子16i(16dは図示しない)が各薄板15iの前寄りの位置に装着されている。圧電素子16iはユニモルフタイプの圧電素子を用いている。各圧電素子16iの両面の電極は該圧電素子16iを駆動するためのケーブル19(図1参照)が接続されており、チューブ8の内部を通って制御部5(の駆動手段)に接続されている。

(2-ウ)図3として,以下の図面が記載されている。
【図3】


(2-エ)「【0054】(第4の実施の形態)次に本発明の第4の実施の形態を図10及び図11を参照して説明する。図10は第4の実施の形態における先端部の構成を示し、図11は光学ユニットを示す。本実施の形態は第1の実施の形態と先端部9の光学ユニット11Dのみ異なる(第1の実施の形態と同じ部分は同じ番号を記して説明は省略する)。 ・・・
【0057】移動台73付近の詳細を図11に示す。移動台73には円筒型の圧電素子75が設けられている。この円筒型の圧電素子75には4枚の電極76a、76b、76c、76dが周方向を4分割するように設けられ、さらに圧電素子75の内面にも電極76eが設けられている。また、それぞれの電極はケーブル19を介して制御部5と接続されている。」

(2-オ)図11として,以下の図面が記載されている。
【図11】


3 本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2011-156235号公報(以下「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。
(3-ア)「【0039】
挿入管31の遠位端に、ファイバ駆動ユニット40が設けられる。図4に示すように、ファイバ駆動ユニット40は、ファイバ駆動部41および硬質管42(支持体)などによって構成される。」

(3-イ)図4として,以下の図面が記載されている。
【図4】


(3-ウ)「【0043】
図5に示すように、光供給ファイバ33はコイルバネ45を介して中空管41a内に保持される。中空管41aの内面には、コイルバネ45の側面に螺合する雌螺子46が形成される。コイルバネ45は、コイルの中心軸が中空管41aの円筒軸と重なり中空管41aから遠位端方向に向かって突出するように挿入された状態で、中空管41aに螺着される。光供給ファイバ33は、出射端がコイルバネ45から突出した状態で、コイルバネ45に挿通される。
【0044】
したがって、雌螺子46とコイルバネ45とは、ファイバ駆動部41と光供給ファイバ33との間に介在するように配置されている。
【0045】
なお、光供給ファイバ33はコイルバネ45内部で回動自在に支持される。コイルバネ45の両端には、ストッパ47(係止体)が当接される。ストッパ47は光供給ファイバ33に固定される。
【0046】
したがって、コイルバネ45が遠位端方向に沿って変位する場合には、ストッパ47を介して光供給ファイバ33も変位する。一方、コイルバネ45が雌螺子46に沿って回転する場合であっても、光供給ファイバ33は回転しない。
【0047】
4つの圧電素子41bが、カラー44より遠位端方向側において、遠位端方向に伸縮可能に固定される(図4参照)。2つの圧電素子41bは、中空管41aの円筒軸を挟みながら遠位端方向に垂直な第1の方向に並ぶように配置される。また、他の2つの圧電素子41bは、中空管41aの円筒軸を挟みながら遠位端方向および第1の方向に垂直な第2の方向に並ぶように配置される。すなわち、中空管41aの円筒軸から4つの異なる角度方向それぞれに圧電素子41bが配置される。」

(3-エ)図5として,以下の図面が記載されている。
【図5】


第3 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)一般に内視鏡とは生体の腔に挿入し生体内部を観察するものであるから,引用発明の「光走査型内視鏡」の「挿入管」は,本願発明の「生体内に挿通される挿入部」に相当する。

(2)引用発明の「出射端」が「挿入管の遠位端側に配置される端部」である「光供給ファイバ」は,本願発明の「前記挿入部の先端に配置され、光ファイバにより構成される光学素子」に相当する。

(3)引用発明の「光供給ファイバに供給される」「観察対象領域に照射する光」の「光源ユニット」は,本願発明の「前記光学素子に対して光を入射させることで前記挿入部の先端から生体に照明光を照射する光源部」に相当する。

(4)本願発明の「前記照明部の照射に基づき前記生体からの戻り光を検出する受光部」について,「照明部の照射」は「前記」されていないものの,実質的に前記されている「生体に照明光を照射」することを指しているといえ,「戻り光」とは反射光のことであり,本願明細書に「挿入部11の内部には、挿入部11の内周に沿って基端側から先端側へ挿通され、被検体からの戻り光を受光する受光部としての検出ファイバ16が設けられている。」(【0020】)と記載されていることから,「受光部」は検出ファイバーのことである。
してみれば,引用発明の「光が照射された観察対象領域の反射光」の「反射光ファイバ」は,本願発明の「前記照明部の照射に基づき前記生体からの戻り光を検出する受光部」に相当する。

(5)引用発明の「光供給ファイバの出射端は,自由端であり」,「光供給ファイバの出射端は第2,第3の方向に沿って振幅の増加と減少を繰返しながら振動するように」「それぞれ2組の圧電素子であ」る「第1,第2の屈曲源(72b1,72b2)」「が設けられ」「円筒軸方向に伸縮」する「屈曲部」は,本願発明の「圧電素子により構成され、前記光学素子の先端である自由端を揺動させるために伸縮する駆動部」に相当する。

(6)本願発明の「前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置され」「前記光学素子の径に基づき近位端及び遠位端面の中心に位置する貫通孔を有し、当該貫通孔を介して前記光学素子を保持する接合部材」の「貫通孔」について,本願明細書の【0040】に「フェルール41は、図2に示すように、四角柱であり、X軸方向に対して垂直な側面42a及び42cと、Y軸方向に対して垂直な側面42b及び42dとを有する。なお、フェルール41は、四角柱に限定されるものではなく、角柱であればよい。フェルール41の略中心には、照明ファイバ14の径に基づいた貫通孔41aが設けられ、中心孔加工が施され、照明ファイバ14が接着剤等により固定される。より具体的には、フェルール41は、貫通孔41aがフェルール41における近位端及び遠位端面の中心に位置するように設けられ、光ファイバである照明ファイバ14を保持する。」(ここで「フェルール」及び「照明ファイバ14」は,本願発明の「接合部材」及び「光学素子」のことといえる。)と記載され,本願には以下の図2が添付されており,これらを参照するに,本願発明の「貫通孔」は「前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域」における「中心」に位置するものと解される。
【図2】


してみれば,引用発明の「光供給ファイバ」を「屈曲部の挿入管の遠位端側の端部において支持」する「光供給ファイバと,第1,第2の屈曲源(72b1,72b2)が設けられた屈曲部との間の領域に亘って配置され」る「光供給ファイバの径に基づき面の中心に位置する貫通孔を有し,貫通孔を介して光供給ファイバを支持するファイバ支持部」と,本願発明の「前記光学素子の長手軸方向に沿って前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置され、角柱形状を有するとともに前記光学素子の径に基づき近位端及び遠位端面の中心に位置する貫通孔を有し、当該貫通孔を介して前記光学素子を保持する接合部材」とは,「前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置され,前記光学素子の径に基づき近位端及び遠位端面の中心に位置する貫通孔を有し,当該貫通孔を介して前記光学素子を保持する接合部材」の点で共通する。

(7)引用発明の「ファイバ支持部材上の測面に配置された第1の屈曲源(72b1)と,光供給ファイバの軸方向に対して,その配置された位置に対して点対称である位置と異なるファイバ支持部材上の側面に配置された第2の屈曲源(72b2)を有」し,「屈曲部の円筒軸方向に伸縮し,光供給ファイバはファイバ支持部を介して屈曲部に付勢され,光供給ファイバの出射端は第2,第3の方向に沿って振幅の増加と減少を繰返しながら振動するように駆動される」ことと,本願発明の「接合部材上の第1側面に配置された第1駆動部と、前記光学素子の軸方向に対して、前記第1側面の点対称である面とは異なる前記接合部材上の第2側面に配置された第2駆動部と、を有し、前記駆動部における伸縮が前記接合部材を介して前記光学素子に伝達されることで前記光学素子の先端を揺動させること」とは,「接合部材上の側面に配置された第1駆動部と,前記光学素子の軸方向に対して,その側面の位置に対して点対称である位置と異なる位置の前記接合部材上の側面に配置された第2駆動部と,を有し,前記駆動部における伸縮が前記接合部材を介して前記光学素子に伝達されることで前記光学素子の先端を揺動させる」ことで共通する。

してみれば,本願発明と引用発明とは,
(一致点)
「生体内に挿通される挿入部と,
前記挿入部の先端に配置され,光ファイバにより構成される光学素子と,
前記光学素子に対して光を入射させることで前記挿入部の先端から生体に照明光を照射する光源部と,
前記照明部の照射に基づき前記生体からの戻り光を検出する受光部と,
圧電素子により構成され,前記光学素子の先端である自由端を揺動させるために伸縮する駆動部と,
前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置され,前記光学素子の径に基づき近位端及び遠位端面の中心に位置する貫通孔を有し,当該貫通孔を介して前記光学素子を保持する接合部材と,
を有し,
前記駆動部は,前記接合部材上の側面に配置された第1駆動部と,前記光学素子の軸方向に対して,その側面の位置に対して点対称である位置と異なる位置の前記接合部材上の側面に配置された第2駆動部と,を有し,前記駆動部における伸縮が前記接合部材を介して前記光学素子に伝達されることで前記光学素子の先端を揺動させる内視鏡。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
光学素子と駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置される接合部材が,本願発明では,「光学素子の長手軸方向に沿って」配置されるのに対し,引用発明では,そのように配置されているかどうか不明である点。

(相違点2)
接合部材が,本願発明では,「角柱形状」有するものあるのに対し,引用発明では,円筒であり,そして,それゆえに,第1駆動部が配置される接合部材上の側面と第2駆動部が配置される前記側面の位置に対して点対称である位置と異なる位置の接合部材上の側面が,本願発明では,「第1側面」と「第2側面」と区別(順序付け)されるのに対し,引用発明では,「第1側面」と「第2側面」のように区別(順序付け)されない点。

2 当審の判断
(1)相違点1について
引用発明のファイバ支持部(接合部材)の具体例である上記摘記(1-オ)の図6を参照するに,ファイバー支持部は,光供給ファイバの長手軸方向に沿って屈曲部の端面から中に入り込んでおり,その入り込んでいる部分は本願発明の「光学素子の長手軸方向に沿って」いる部分に相当するものであるから,引用発明のファイバー支持部は,「光学素子の長手軸方向に沿って」配置されていると解することができる。
してみれば,上記相違点は,引用発明のファイバー支持部(接合部材)においても満たし得るものであるから,実質的な相違点とはならないものである。
なお,本願発明における「光学素子の長手軸方向に沿って」という意味が,ある程度の長さ(例えば,駆動部のZ軸方向の長さ)をもって長手軸方向に沿っているものとして解した場合においても,例えば,上記引用例3には,引用例1と同じ光供給ファイバを圧電素子からなる駆動部で振動させる内視鏡おいて,上記摘記(3-イ)及び(3-エ)の図4及び図5には,光供給ファイバと圧電素子との間の領域に亘って「雌螺子とコイルバネ」(接合部材)があり,それは「光学素子の長手軸方向に沿って」配置されていることが記載されている。してみれば,このように態様に応じて,接合部材は「光学素子の長手軸方向に沿って」ある程度の長さをもって配置される場合もあることから,引用発明においても,引用例3に記載されている事項を参酌して,態様に応じて接合部材であるファイバ支持部を「光学素子の長手軸方向に沿って」ある程度の長さをもって配置させることは当業者が容易になしうることである。

(2)相違点2について
引用例2の摘記(2-ア)?(2-オ)に記載されているように,光ファイバ(引用発明の「光供給ファイバ」)を圧電素子によって駆動させる内視鏡において,その圧電素子を配置させる形状として,四角柱(本願発明の「角柱形状」)のものと円筒のものがあり,両者は適宜選択しうる形状である。してみれば,引用発明の「圧電素子」である「第1,第2の屈曲源(72b1,72b2)」を配置させる形状として,円筒に代えて四角柱すなわち「角柱形状」を選択することは,当業者が適宜選択し得ることであり,その際,引用発明におけるファイバー支持部は「角柱形状」を有するものとなり,「第1の屈曲源(72b1)」と「第2の屈曲源(72b2)」を配置させる側面は,本願発明のように「第1側面」と「第2側面」と区別(順序付け)されることになる。

(3)本願発明の効果について
引用発明は,引用例1の摘記(1-ア)に「光ファイバの先端を所定の変位経路に沿って正確に変位させるときに、正確な位置の推定が可能である。しかし、光ファイバ先端の周囲温度や振動などにより正確な変位経路に沿って変位させることが困難な場合がある。このような場合に表示する画像に歪みが生じることがあった。」と記載されているように,本願発明と同様,光供給ファイバ(照明ファイバ)が安定駆動されないことを課題としており,それを解決したものである。すなわち,本願発明の効果は,引用発明が既に奏している効果であって,当業者の予測を超える格別顕著なものということはできない。
なお,請求人は,審判請求書で,
「ここで、引用文献1に開示されているファイバ支持部に対して、引用文献3または4に開示されているフェルール構成を組み合わせた場合、ファイバ支持部が形成されている領域のみで圧電素子の伸縮がファイバに伝わるため振動の『節』ができてしまうと考えられる。
これにより、この『節』から後端(手元)側でもファイバが振動し、この影響が先端側の振動に対しても影響を与えてしまうことになる。
これに対して本願請求項1に係る発明は、上述したように、『(F)前記光学素子の長手軸方向に沿って前記光学素子と前記駆動部が形成される領域との間の領域に亘って配置され、角柱形状を有するとともに前記光学素子の径に基づき近位端及び遠位端面の中心に位置する貫通孔を有し、当該貫通孔を介して前記光学素子を保持する接合部材』を備えるものであり、少なくとも駆動部が形成されている領域においては全面に亘ってファイバを保持することで、上述した引用文献の組み合わせに係る『節』を基点とした先端側の振動の影響を排除することが可能となる。」と主張しているが,
「少なくとも駆動部が形成されている領域においては全面に亘ってファイバを保持する」(下線は当審において付与した。)ことは本願発明の発明特定事項にされていないことから,上記主張は本願発明の発明特定事項に基づかないものであると同時に,上記のような技術的事項(効果)は本願明細書に一切記載されていないであり,そして,上記本願明細書に基づかない事項を本願発明の効果として認めることはできない。

(4)小括
したがって,本願発明は,相違点1が上記(1)で説示したように実質的な相違点ではないから,引用発明及び引用例2に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,相違点1が実質的な相違点としても,引用発明並びに引用例2及び3に記載されている事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2015-06-16 
結審通知日 2015-06-23 
審決日 2015-07-06 
出願番号 特願2013-505268(P2013-505268)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田倉 直人  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 三崎 仁
麻生 哲朗
発明の名称 内視鏡  
代理人 伊藤 進  
代理人 篠浦 治  
代理人 長谷川 靖  

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