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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1304679
審判番号 不服2013-24694  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-16 
確定日 2015-08-19 
事件の表示 特願2010-524092「データを処理するシステム、プロセスの局面を制御するスマート装置、及びプロセス制御データを保存する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日国際公開、WO2009/032583、平成22年12月 9日国内公表、特表2010-538393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20(2008)年8月25日(パリ条約による優先権主張 平成19(2007)年9月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成25年2月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後、平成26年11月27日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対し、審判請求人から平成27年2月27日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

2.本願発明
本願の請求項1?26に係る発明は、平成27年2月27日付け手続補正書により補正された請求項1?26に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項11には、次のとおり記載されている。

「プロセスの少なくとも1つの局面を制御するスマート装置であって、
メモリと、
プロセス変数データを受信するのに適合している入力と、
前記受信されたプロセス変数データに関連付けられた統計データを第1のデータ・サンプル・レートで前記メモリに一時的に記憶し、異常プロセス事象の検出により前記メモリに記憶された前記統計データの一部を保存し、当該保存後、前記保存された統計データを第2のデータ・サンプル・レートで外部装置へ通信するように構成されているプロセッサと、
を備えるスマート装置。」(以下請求項11に係る発明を「本願発明」という。)

3.引用刊行物とその記載事項

当審の拒絶の理由に引用され、本件優先日前に頒布された、特表2007-500896号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線部は当審において付与)。

(ア)
「プロセス制御装置におけるフィールド装置のための診断システムであって、
前記プロセス制御装置と関連付けられた少なくとも1つのセンサと、
前記フィールド装置上に配置され、前記センサからデータを受け取り所定のプロセス事象の発生を検出するよう構成されるコンピュータと、
前記コンピュータに動作的に接続され、前記所定のプロセス事象の発生に対応する時点に前記コンピュータが受け取ったセンサデータを格納するよう構成される記憶装置と、
を備える、診断システム。」(【請求項1】)

(イ)
「化学プロセス、石油プロセス又はその他のプロセスで用いられるような分散プロセス制御システムは、アナログ、デジタル、又はアナログ/デジタル複合バスを介して1つ以上のフィールド装置に通信可能に接続された1つ以上のプロセスコントローラを含むのが一般的である。プロセス環境内には、例えば、バルブ、バルブポジショナ(例えば、デジタルバルブポジショナ)、スイッチ及びトランスミッタ(例えば、温度センサ、圧力センサ、レベルセンサ、及び流量センサ)であり得るフィールド装置が配置されており、バルブの開閉、プロセスパラメータの測定等といったプロセス機能を実行する。周知のFOUNDATION(登録商標)フィールドバス・プロトコルに準拠したフィールド装置等といったインテリジェント化されたフィールド装置は、一般的にコントローラ内で実装される制御計算、警報機能及びその他の制御機能も実行し得る。時に厳しいプラント環境内に配置されるのが一般的であるプロセスコントローラは、フィールド装置によって実行されるプロセス測定及び/又はフィールド装置に関する他の情報を示す信号を受け取って、例えば、プロセス制御決定を行う複数の異なる制御モジュールを実行するコントローラアプリケーションを実行し、受け取った情報に基づいて制御信号を生成し、HARTやフィールドバスのフィールド装置等といったフィールド装置で実行中の制御モジュール又はブロックと協調する。コントローラ内の制御モジュールは、通信回線を介してフィールド装置に制御信号を送ることにより、プロセスプラントの運転を制御する。
フィールド装置及びコントローラからの情報は、通常、より厳しいプラント環境から離れた調整室やその他の場所に配置されるのが一般的な1つ以上の他のハードウェア装置(オペレータワークステーション、パーソナルコンピュータ、データ履歴装置、レポート・ジェネレータ、集中データベース等)が、データハイウェイを介して利用できるようにされる。これらのハードウェア装置は、例えば、オペレータがプロセスに関する機能(例えば、プロセス制御ルーチンの設定変更、コントローラ又はフィールド装置内の制御モジュールの動作の修正、プロセスの現在状態の検分、フィールド装置及びコントローラが生成した警報の検分、人員の訓練又はプロセス制御ソフトウェアの試験を目的としたプロセスの動作シミュレーション、コンフィグレーション・データベースの維持及び更新、プロセスプラント内のセクション又はユニットの動作及び運転に関するレポートの生成、等)を実行できるようにし得るアプリケーションを実行する。」(段落【0002】?【0003】)

(ウ)
「現在のところ、デジタルバルブポジショナ等といったフィールド装置には、トリガ式データ収集は存在しない。しかしながら、対象事象の発生時にプラント職員がフィールド装置を監視していない場合もあるので、所定のプロセス事象によってデータ収集をトリガ可能にすることは、多くのアプリケーションにおいて特に有用である。例えば、タービンバイパスバルブ及びコンプレッサ・アンチサージバルブは、常閉の安全装置である。しかし、トリップが生じると、これらのバルブは絞り制御に入る。データを収集して制御バルブの健康状態を評価すべきであるのは、これらの断続的な過渡現象の間である。トリップは正常な動作状態の一部ではないので、トリップ発生時にこれらのバルブが監視される可能性は低い。
従って、対象事象の発生時にデータを取り込むために、プロセス制御システムに用いられるフィールド装置ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアにトリガ機能を提供する必要性が存在する。」(段落【0007】?【0008】)

(エ)
「プロセスがバッチプロセスである場合には、バッチ監視ルーチン56(ワークステーション14の異なる1つに格納されて示されている)を用いて、異なる時にプロセス制御システム10内の特定のユニットに対して異なるレシピを用いてバッチを実行してもよい。動作中、バッチ監視ルーチン56は、プロセス制御システム10内の特定のユニットを留保してもよく、コントローラ12内の制御モジュール40、45及び46、I/O装置20、22、並びにフィールド装置25?39に、バッチプロセスの1以上のフェーズを実施するためのレシピ及び他のオペレータ生成情報を提供してもよい。バッチ監視ルーチン56は、これらのフェーズが完了するまで監視してもよい。当然ながら、この間、制御モジュール40、45及び46は、プロセスの動作に基づいて事象(例えば、警報のような重要な問題や、警告や通知のようなさほど深刻でない問題)を検出し、1つ以上のオペレータワークステーション14に事象信号を送る。オペレータワークステーション14では、これらの事象(例えば、警報)がオペレータやメンテナンス要員に対して表示され、オペレータやメンテナンス要員は、必要に応じて、その事象を引き起こした状態を軽減するための措置を講じてもよい。当然ながら、動作中、バッチオペレータ等といったプロセスオペレータは、実行すべき新たなバッチ、新たなレシピ、既存のバッチラン及びレシピに対する変更等を提供することにより、バッチ監視ルーチン56に対して変更を与えてもよい。」(段落【0014】)


(オ)
「周知のように、データ履歴装置16は、通信ネットワーク18上のデータ又はメッセージを監視するためにプロセッサ60上で実行されるプログラミング又はルーチンを格納するプロセッサ60及びメモリ62を含む。これらのルーチンは、オペレータ又は他のユーザがワークステーション14の任意の1つを介してバッチラン又はプロセスプラント内のモジュールに対して行う変更と、任意のモジュール40、45及び46、又は任意の装置12、20、22、若しくは25?39が生じる事象とを監視する。これらの監視ルーチンは、収集された情報を、例えば、複数の異なる要素、特に、プロセス制御システム10内の複数の異なるユニットの過去の動作の報告を作成するために、後で読み出し可能な方法で格納する。データ履歴装置16によって収集されるデータは、オペレータワークステーション14で生成される(例えばユニットの設定点の変更等の)任意のデータ、プロセスプラント内の機器又は制御モジュールに対する変更を行ったオペレータによって送られる他の制御データ、又は、プロセスプラント内の制御モジュールによって生成される、(例えば警報等の)事象データを含むデータであり得る。データ履歴装置16がプロセスプラント内から受け取ったデータを関連付けられるよう適切に機能できるようにするために、データ履歴装置16は、複数の異なる高レベルのエンティティ(例えばユニット)と低レベルのエンティティ(例えば機器及び制御モジュール)との関係を示すコンフィギュレーションメモリ又はリスト64を含み、これらの関係はコンフィグレーション・データベース55内で指定又は格納される。履歴装置16が、プロセスプラント内の複数の異なる高レベルエンティティの各々に対して行われた変更やそれらに関連付けられた事象等の情報を記録できるように、データ履歴装置16はこのコンフィギュレーション情報を用いて、ワークステーション14又は制御モジュール40、45及び46から受け取ったデータと適切な高レベルエンティティ(適切なユニット等)とを関連付ける。更に、データ履歴装置16はこのコンフィギュレーション情報を用いて、プロセスプラント内で生成された警報又は事象が、実際に現在実行中のユニット又はバッチプロセスの一部として動作中のユニットによって生成されたものであり、従ってユニットの動作状態に関連するか、又は、これらの事象が非アクティブなユニットと関連付けられており、従ってユニットの動作状態に関連しないかを、判定してもよい。」(段落【0015】)

(カ)
「図2は、バルブアクチュエータ70に取り付けられたフィールド機器68を示す。フィールド機器68は、例えば、デジタルバルブポジショナ72であってよく、その構成要素は図3の分解図でより良好に示されている。図3を参照すると、デジタルバルブポジショナ72は、主カバー74、空気式リレーアセンブリ76、I/P変換器77、ゲージ78、電子機器モジュール80、主ハウジング82、端子箱84、端子箱カバー86、及び移動センサ88を含む。電子機器モジュール80は、マイクロコントローラ90と、不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態の記憶装置92とを含む。」(段落【0020】)


(キ)
「次に図4を参照すると、トリガ事象として用いられ得る所定のプロセス事象の発生前、発生中、及び発生後にデータを記録するための、マイクロコントローラ90にプログラムされてよいルーチン94が示されている。ブロック96で示されるように、1以上のトリガ事象が入力されてよい。ブロック98で示されるように、ルーチン94には、記録すべきデータ、及びデータを記録すべき期間である経過時間(「x秒」)も入力される。ブロック100では、選択されたデータが記録され、経過時間が満了するたびに、記録されたデータがループされてもよい(即ち、メモリが制限される場合には上書きされる)。次に、ブロック102で、ルーチン94がトリガ事象の発生をチェックする。トリガ事象が生じていない場合には、ルーチン94はブロック100を繰り返し、選択されたデータの記録を続ける。トリガ事象が生じた場合には、ブロック104で、トリガ事象発生後の経過時間の半分(x/2秒)及びトリガ事象発生前の経過時間の半分のデータが記録され、次にルーチン94が終了する。このように、ブロック96で入力されたトリガ事象の発生を中心とする、ブロック98で選択された経過時間にわたって、データが記録されて維持され、次に、ユーザが後で処理する及び/又は取り出すために不揮発性RAM92に格納されてもよい。」(段落【0022】)


(ク)
「トリガ事象の原因及び影響の判定の補助となる情報を提供するために、トリガ事象の発生前、発生中及び発生後にデータの収集を含むことが望ましい。
フィールド機器内に由来するトリガ事象に加えて、ネットワークセグメント上の任意の信号からトリガされてデータを収集するために、ネットワーク化されたフィールド機器(即ち、FOUNDATION(登録商標)フィールドバス装置)を用いてもよい。例えば、流量トランスミッタ及び制御バルブが同じネットワークセグメント上に存在する場合には、制御バルブを用いてトランスミッタのデータを監視し、トリガ事象の発生に際してデータレコードを作成してもよい。更に、ネットワーク化されたフィールド機器は、トリガ事象として、プロセス変数(例えばプロセス変数の変化及び/又はプロセス変数の高低)を用いてもよい。」(段落【0027】?【0028】)

(ケ)
「このように、デジタルバルブポジショナ72内では、マイクロコントローラ90及び不揮発性RAM92を用いて、データ収集及びデータ格納を実行してもよく、これにより、このようなフィールド機器に「オンボード」診断機能が効果的に提供される。例えば、エマーソン・プロセス・マネジメント(Emerson Process Management)から入手可能なValveLink(登録商標)ブランドのソフトウェア等のソフトウェアを用いて、デジタルバルブポジショナ72から取り込まれたデータをダウンロードして表示してもよい(これは通常、トリガ事象の発生からかなり後に実行される)。フィールドネットワークを介して大量の補助機器データを継続的に読み取ることはしばしば実際的でないので、デジタルバルブポジショナ72において、トリガ式にデータを格納することは特に重要である。例えば、典型的な化学プラントには、数千個の制御バルブと、その何倍ものトランスミッタが存在する場合があり、そのような多くの装置からの連続的なデータストリームを管理することは非常に困難である。」(段落【0031】)

(コ)
上記記載事項(カ)の「図2は、バルブアクチュエータ70に取り付けられたフィールド機器68を示す。フィールド機器68は、例えば、デジタルバルブポジショナ72であってよく、・・・デジタルバルブポジショナ72は、・・・電子機器モジュール80、・・・及び移動センサ88を含む。電子機器モジュール80は、マイクロコントローラ90と、不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態の記憶装置92とを含む。」との記載を参酌すれば、デジタルバルブポジショナ72の「電子機器モジュール80」は、デジタルバルブポジショナ72の状態を制御する装置であって、マイクロコントローラ90と不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態の記憶装置92とを含むものであり、明示されていないが、移動センサ88により得られたデータを不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態の記憶装置92に入力する手段が設けられていることは明らかであることから、刊行物1に記載された「電子機器モジュール80」は、デジタルバルブポジショナ72の状態を制御するものであって、不揮発性RAM92と、移動センサ88により得られたデータを受信するのに適合している入力と、マイクロコントローラ90とを備えるものということができる。

(サ)
上記記載事項(ク)の「トリガ事象の発生前、発生中及び発生後にデータの収集を含むことが望ましい。・・・トリガ事象として、プロセス変数(例えばプロセス変数の変化及び/又はプロセス変数の高低)を用いてもよい。」との記載を参酌すれば、刊行物1に記載された「データ」は、「プロセス変数データ」を含むものであると解することができる。

(シ)
上記記載事項(キ)の「次に図4を参照すると、トリガ事象として用いられ得る所定のプロセス事象の発生前、発生中、及び発生後にデータを記録するための、マイクロコントローラ90にプログラムされてよいルーチン94が示されている。・・・ブロック100では、選択されたデータが記録され、経過時間が満了するたびに、記録されたデータがループされてもよい(即ち、メモリが制限される場合には上書きされる)。次に、ブロック102で、ルーチン94がトリガ事象の発生をチェックする。トリガ事象が生じていない場合には、ルーチン94はブロック100を繰り返し、選択されたデータの記録を続ける。トリガ事象が生じた場合には、ブロック104で、トリガ事象発生後の経過時間の半分(x/2秒)及びトリガ事象発生前の経過時間の半分のデータが記録され、次にルーチン94が終了する。このように、ブロック96で入力されたトリガ事象の発生を中心とする、ブロック98で選択された経過時間にわたって、データが記録されて維持され、次に、ユーザが後で処理する及び/又は取り出すために不揮発性RAM92に格納されてもよい。」との記載を参酌すれば、記録されるデータがループされ上書きされることから、不揮発性RAM92には一時的にデータが記憶されるということができ、また、トリガ事象(所定のプロセス事象)が生じないときは上書きが繰り返され、トリガ事象(所定のプロセス事象)が生じたときは少なくともトリガ事象発生前の経過時間の半分のデータが記録されることから、所定のプロセス事象の発生前に始まる期間に対応するデータが保存されるということができる。また、上記記載事項(カ)の記載を参酌すれば、当該データ保存に係る制御は「マイクロコントローラ90」を用いて行っていることは明らかである。
してみると、刊行物1には、「不揮発性RAM92に一時的にデータを記憶し、所定のプロセス事象の検出により当該記憶されたデータの一部を保存するものである」ことが記載され、当該データ保存に係る制御は「マイクロコントローラ90」を用いて行っているということができる。

上記記載事項(ア)?(ケ)、上記認定事項(コ)?(シ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、上記刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「デジタルバルブポジショナ72の状態を制御する電子機器モジュール80であって、
不揮発性RAM92と、
プロセス変数データを受信するのに適合している入力と、
前記受信されたプロセス変数データに関連付けられたデータを前記不揮発性RAM92に一時的に記憶し、所定のプロセス事象の検出により前記不揮発性RAM92に記憶された前記データの一部を保存するように構成されているマイクロコントローラ90と、
を備える電子機器モジュール80。」(以下「引用発明」という。)

また、当審の拒絶の理由に引用され、本件優先日前に頒布された、特開2002-228340号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線部は当審において付与)。

(ス)
「それぞれのデータ収集装置から読み込んだ温度データは、データ記憶装置4に、ユーザ毎に、かつ、温度センサ毎に、時間の経過順に記録されていく。さらに、データ記憶装置4に記録された温度データは、日々の平均温度,最高温度,最低温度,積算管理温度等を所定のフォーマットに加工した上で、郵便,ファクシミリ,Eメール等により定期的にユーザに送られる。さらに、より詳細な温度データがサーバ5により順次インターネットホームページに掲載される。そして、それらの温度データは、インターネット回線15を介して、ユーザパソコン16,17やモバイルコンピュータ18によりユーザが随時アクセスして確認することができる。その際、それぞれのユーザの設備のデータが他人に見られないように、パスワードによりデータが保護される。
また、例えば、コンビニエンスストア7の冷凍冷蔵設備に異常が発生した場合は、データ収集装置9がそれを検知し、通信装置10,公衆電話回線14を介して、管理事業者の管理装置1へ異常発生警報信号を通知する。管理装置1では、データ記憶装置4から関係個所の異常発生以前一定期間(例えば、1時間)の温度データを読み出して、管理コンピュータ2により分析し、メンテナンスサービス会社13に、異常発生個所,異常内容,必要な処置等を、関係個所の異常発生以前一定期間の温度データと共に通知する。さらに、ユーザに対しても同様な通知を行う。」(段落【0020】?【0021】)

さらに、当審の拒絶の理由に引用され、本件優先日前に頒布された、特開2000-172329号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線部は当審において付与)。

(セ)
「例えば、電動機あるいはタービンの振動の監視では、短い周期でデータをサンプリングする必要がある。ところが、遠隔通信手段では一般的にこのような短い周期のデータを実時間で送信することは困難であり、また一つ一つのデータにヘッダー情報が添付されるため、データ送信の効率も低下する。
一方、マンマシンインタフェース部を使ってプラントを監視する監視員は、このような短い周期のデータが逐次送られてきても即座に反応できる訳ではない。また、遠隔通信手段が長さ3000Kmの光ファイバケーブルならば、光信号が伝わるだけで10msecの遅れが生じる。このような理由から、プロセスデータを遠隔地に送信する場合、各周期のデータが全体として到達することが重要で、ある程度遅延が発生することはやむを得ない。
図21は、プロセスデータ送信サーバーの複数周期分のプロセスデータをパケットにまとめる機能を示すものである。
プロセスデータ送信サーバーC13は、プロセスデータ入力装置C5からプロセスデータパケットA8を受信する。プロセスデータパケットA8は、監視用ネットワークC3を流れてくるもので、ヘッダーA8aとプロセスデータA8bからなる。プロセスデータパケットA8は10msecの周期で、送られてくるが、プロセスデータ送信サーバーC13は、内部にパケットバッファー10を持ち、10周期分のプロセスデータを蓄積させる。10周期分のプロセスデータを蓄積すると、パケットバッファー10の内容を、パケットA11として送信する。パケットA11もヘッダーA11aを持つが、プロセスデータ10周期分に対して一つの割合であるから、送信される全データに占めるヘッダーの割合は少なくなる。」(段落【0137】?【0140】)

4.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「不揮発性RAM92」、「所定のプロセス事象」、「マイクロコントローラ90」は、それぞれ、本願発明の「メモリ」、「異常プロセス事象」、「プロセッサ」に相当する。
また、引用発明の「デジタルバルブポジショナ72の状態を制御する電子機器モジュール80」と、本願発明の「プロセスの少なくとも1つの局面を制御するスマート装置」は、「プロセス変数データ監視制御装置」である点で共通している。

そうすると、両者は、
「プロセス変数データ監視制御装置であって、
メモリと、
プロセス変数データを受信するのに適合している入力と、
前記受信されたプロセス変数データに関連付けられたデータを前記メモリに一時的に記憶し、異常プロセス事象の検出により前記メモリに記憶された前記データの一部を保存するように構成されているプロセッサと、
を備えるプロセス変数データ監視制御装置。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点1〉
メモリに記憶される「受信されたプロセス変数データに関連付けられたデータ」について、本願発明では「統計データ」であるのに対し、引用発明では、統計データであるかどうか不明である点。

〈相違点2〉
「プロセッサ」に関して、本願発明では「プロセス変数データに関連付けられたデータを第1のデータ・サンプル・レートでメモリに一時的に記憶し、異常プロセス事象の検出により前記メモリに記憶された前記データの一部を保存し、当該保存後、前記保存されたデータを第2のデータ・サンプル・レートで外部装置へ通信するように構成されている」のに対し、引用発明では、そのような構成を有しているかどうか不明である点。

5.相違点についての検討
(1)相違点1について
上記刊行物2の上記記載事項(ス)には「・・・データ記憶装置4に記録された温度データは、日々の平均温度,最高温度,最低温度,積算管理温度等を所定のフォーマットに加工した上で、郵便,ファクシミリ,Eメール等により定期的にユーザに送られる。・・・管理装置1では、データ記憶装置4から関係個所の異常発生以前一定期間(例えば、1時間)の温度データを読み出して、管理コンピュータ2により分析し、メンテナンスサービス会社13に、異常発生個所,異常内容,必要な処置等を、関係個所の異常発生以前一定期間の温度データと共に通知する。・・・」との記載があり、これを参酌すると、刊行物2には、データ収集装置が異常発生を検知し、管理装置がデータ記憶装置から異常発生以前一定期間のデータを読み出して分析し、異常内容、必要な処置等をデータとともにユーザ等へ通知することや、データの平均値や最高値、最小値を所定のフォーマットに加工すること、すなわち統計処理することが記載されているといえる。
また、一般に、データをそのままメモリに保存するよりも、統計処理して保存する方が格納される情報量が少なくて済むものであり、データの利用として後ほど統計処理が必要なものであれば、統計処理済みのデータをあらかじめ用意して保存することは技術常識である(必要であれば、特開平7-261838号公報(段落【0016】、図1)、特開2001-75840号公報(段落【0005】?【0007】)等参照)。
してみると、引用発明において、プロセス変数データを分析のため加工処理することは引用文献2記載の技術事項に基づいて容易になし得るものであり、特に単に統計処理をしてデータを保存すること自体は情報量を減少するために必要に応じて適宜なし得るものであって、具体的な統計処理に特徴がない限り、格別の顕著性はないものといえる。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、刊行物2記載の技術事項及び技術常識を適用し、当業者ならば容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
上記刊行物3の上記記載事項(セ)には「・・・遠隔通信手段では一般的にこのような短い周期のデータを実時間で送信することは困難であり、・・・プロセスデータを遠隔地に送信する場合、各周期のデータが全体として到達することが重要で、ある程度遅延が発生することはやむを得ない。・・・プロセスデータパケットA8は10msecの周期で、送られてくるが、プロセスデータ送信サーバーC13は、内部にパケットバッファー10を持ち、10周期分のプロセスデータを蓄積させる。10周期分のプロセスデータを蓄積すると、パケットバッファー10の内容を、パケットA11として送信する。・・・」との記載があり、これを参酌すると、刊行物3には、プロセスデータを測定受信し、送信する装置において、測定受信する周期と同様の周期で送信することは困難であり、データ全体を送ることを優先すれば、送信が遅延することはやむを得ず、測定受信する周期よりも、送信する周期の方が長くなるものが記載されているものといえる。
してみると、引用発明において、データ全体を送ることを優先し、格納されたプロセス変数データに関連したデータを、測定した周期とは異なる周期で送信することは、引用文献3記載の技術事項に基づいて、当業者ならば必要に応じて適宜なし得るものであり、格別の困難性はない。
よって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、刊行物3記載の技術事項及び技術常識を適用し、当業者ならば容易に想到し得るものである。

そして、本願発明により得られる作用効果も、引用発明、刊行物2記載の技術事項、刊行物3記載の技術事項及び技術常識から予測し得る範囲のものであって格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の技術事項、刊行物3記載の技術事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の技術事項、刊行物3記載の技術事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-19 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-06 
出願番号 特願2010-524092(P2010-524092)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 石川 好文
刈間 宏信
発明の名称 データを処理するシステム、プロセスの局面を制御するスマート装置、及びプロセス制御データを保存する方法  
代理人 中島 淳  
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