• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1304685
審判番号 不服2014-5253  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-19 
確定日 2015-08-19 
事件の表示 特願2011-506438「マルチメディアデバイスにおける電力管理機能の調整」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日国際公開、WO2009/132140、平成23年 8月 4日国内公表、特表2011-523116〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年4月22日(パリ条約による優先権主張2008年4月23日,米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯の概略は次のとおりである。

出願審査請求(提出日) 平成22年12月20日
拒絶理由通知(起案日) 平成24年10月19日
意見、手続補正(提出日) 平成25年4月23日
拒絶理由通知(起案日) 平成25年5月16日
意見、手続補正(提出日) 平成25年10月21日
補正の却下の決定(起案日) 平成25年11月15日
拒絶査定(起案日) 平成25年11月15日
拒絶査定謄本送達 平成25年11月19日
審判請求(提出日) 平成26年3月19日
手続補正(提出日) 平成26年3月19日
前置報告(作成日) 平成26年5月26日

第2.平成26年3月19日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年3月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正の内容
平成26年3月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲は次のとおり補正された。なお、平成25年10月21日付の手続補正は補正の却下の決定がされているので、本件補正前とは平成25年4月23日付の手続補正書におけるものである。

[本件補正前]
「【請求項1】
1つ以上のマルチメディアリソースを含むマルチメディアデバイスにおける電力管理のための方法において、
電力管理エンティティによって、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得することと、
前記電力管理エンティティによって、前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むことと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定することとを含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することは、
前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を調整することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものを制御して、前記1つ以上の電力管理機能を実行することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものの制御とともに、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行を調整して、前記1つ以上の電力管理機能を実行することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得することをさらに含み、
前記構成情報を決定することは、前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記構成情報を決定することは、低電力モードの選択にしたがって電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記利用可能な電力の量に基づいて、選択可能な低電力モードの階層リストを提示することと、
前記階層リストからの、低電力モードのユーザ選択を取得することとをさらに含み、
前記構成情報を決定することは、前記選択された低電力モードにしたがって、前記構成情報を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記利用可能な電力の量を取得することは、利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記マルチメディアデバイスは、モデムプロセッサを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
マルチメディアデバイスにおいて、
複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つと、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに結合されている1つ以上の電力管理エンティティとを具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、前記マルチメディアデバイスにおいて利用可能な電力の量を取得し、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含み、
前記マルチメディアデバイス内での電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整し、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供し、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けし、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定する、マルチメディアデバイス。
【請求項11】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を少なくとも調整することによって、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項12】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものを制御して、前記1つ以上の電力管理機能を実現するようにさらに実行される、
請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項13】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものの制御とともに、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行を少なくとも調整することによって、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する、請求項12記載のマルチメディアデバイス。
【請求項14】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得するようにさらに実行され、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいて、前記構成情報を決定する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項15】
表示ユニットをさらに具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、低電力モードの選択にしたがって前記表示ユニット上で、電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を少なくとも決定することによって、前記構成情報を決定する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項16】
バッテリをさらに具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、前記バッテリに対する利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得することによって、前記利用可能な電力の量を取得する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項17】
モデムプロセッサをさらに具備する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項18】
前記マルチメディアデバイスは、ワイヤレス通信デバイスハンドセットを備える、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項19】
前記マルチメディアデバイスは、1つ以上の集積回路デバイスを備える、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項20】
命令を含むコンピュータ読取可能記憶媒体において、
前記命令は、1つ以上の電力管理プロセッサに、
マルチメディアデバイス内で、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得させ、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記マルチメディアデバイスの複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定させ、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含み、
前記マルチメディアデバイス内での電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整させ、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供させ、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けさせ、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定させる、コンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項21】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整させる命令は、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を調整させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項22】
前記コンピュータ読取可能記憶媒体は、前記電力管理プロセッサに、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものを制御させて、前記1つ以上の電力管理機能を実行させる命令をさらに含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項23】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整させる命令は、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものの制御とともに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行を調整させて、前記1つ以上の電力管理機能を実行させる命令を含む、請求項22記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項24】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得させる命令をさらに含み、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報を決定させる命令は、前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいて、前記構成情報を決定させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項25】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報を決定させる命令は、前記1つ以上のプロセッサに、低電力モードの選択にしたがって電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を決定させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項26】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、
少なくとも前記利用可能な電力の量に基づいて、選択可能な低電力モードの階層リストを提示させ、
前記階層リストからの、前記低電力モードのユーザ選択を取得させる命令をさらに含み、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報を決定させる命令は、前記1つ以上のプロセッサに、前記選択された低電力モードにしたがって、前記構成情報を決定させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項27】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記利用可能な電力の量を取得させる命令は、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項28】
マルチメディアデバイスにおいて、
前記マルチメディアデバイス内で、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得する手段と、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記マルチメディアデバイスの複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定する手段と、
前記マルチメディアデバイス内の電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する手段と、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供する手段と、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けする手段と、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定する手段とを具備し、
前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含む、マルチメディアデバイス。
【請求項29】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する手段は、
前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を調整する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項30】
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものを制御して、前記1つ以上の電力管理機能を実行する手段をさらに具備する、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項31】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する手段は、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第2のものの制御とともに、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行を調整して、前記1つ以上の電力管理機能を実行させる手段を備える、請求項30記載のマルチメディアデバイス。
【請求項32】
前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得する手段をさらに含み、
前記構成情報を決定する手段は、前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいて、前記構成情報を決定する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項33】
前記構成情報を決定する手段は、低電力モードの選択にしたがって、電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を決定する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項34】
少なくとも前記利用可能な電力の量に基づいて、選択可能な低電力モードの階層リストを提示する手段と、
前記階層リストからの、前記低電力モードのユーザ選択を取得する手段と
をさらに具備し、
前記構成情報を決定する手段は、前記選択された低電力モードにしたがって、前記構成情報を決定する手段を備える、請求項33記載のマルチメディアデバイス。
【請求項35】
前記利用可能な電力の量を取得する手段は、利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。」
(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前請求項」という。)

[本件補正後]
「【請求項1】
1つ以上のマルチメディアリソースを含むマルチメディアデバイスにおける電力管理のための方法において、
電力管理エンティティによって、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得することと、
前記電力管理エンティティによって、前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むことと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定することとを含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することは、
前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を調整することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサを制御して、前記1つ以上の電力管理機能を実行することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサの制御とともに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第1のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行を調整して、前記1つ以上の電力管理機能を実行することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得することをさらに含み、
前記構成情報を決定することは、前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記構成情報を決定することは、低電力モードの選択にしたがって電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記利用可能な電力の量に基づいて、選択可能な低電力モードの階層リストを提示することと、
前記階層リストからの、低電力モードのユーザ選択を取得することとをさらに含み、
前記構成情報を決定することは、前記選択された低電力モードにしたがって、前記構成情報を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記利用可能な電力の量を取得することは、利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記マルチメディアデバイスは、モデムプロセッサを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
マルチメディアデバイスにおいて、
複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つと、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに結合されている1つ以上の電力管理エンティティとを具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、前記マルチメディアデバイスにおいて利用可能な電力の量を取得し、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含み、
前記マルチメディアデバイス内での電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整し、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供し、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けし、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定する、マルチメディアデバイス。
【請求項11】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を少なくとも調整することによって、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項12】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサを制御して、前記1つ以上の電力管理機能を実現するようにさらに実行される、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項13】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサの制御とともに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第1のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行を少なくとも調整することによって、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する、請求項12記載のマルチメディアデバイス。
【請求項14】
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得するようにさらに実行され、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいて、前記構成情報を決定する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項15】
表示ユニットをさらに具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、低電力モードの選択にしたがって前記表示ユニット上で、電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を少なくとも決定することによって、前記構成情報を決定する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項16】
バッテリをさらに具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、前記バッテリに対する利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得することによって、前記利用可能な電力の量を取得する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項17】
モデムプロセッサをさらに具備する、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項18】
前記マルチメディアデバイスは、ワイヤレス通信デバイスハンドセットを備える、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項19】
前記マルチメディアデバイスは、1つ以上の集積回路デバイスを備える、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項20】
命令を含むコンピュータ読取可能記憶媒体において、
前記命令は、1つ以上の電力管理プロセッサに、
マルチメディアデバイス内で、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得させ、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記マルチメディアデバイスの複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定させ、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含み、
前記マルチメディアデバイス内での電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整させ、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供させ、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けさせ、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定させる、コンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項21】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整させる命令は、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を調整させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項22】
前記コンピュータ読取可能記憶媒体は、前記電力管理プロセッサに、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のものを制御させて、前記1つ以上の電力管理機能を実行させる命令をさらに含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項23】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整させる命令は、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサの制御とともに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第1のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行を調整させて、前記1つ以上の電力管理機能を実行させる命令を含む、請求項22記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項24】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得させる命令をさらに含み、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報を決定させる命令は、前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいて、前記構成情報を決定させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項25】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報を決定させる命令は、前記1つ以上のプロセッサに、低電力モードの選択にしたがって電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を決定させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項26】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、
少なくとも前記利用可能な電力の量に基づいて、選択可能な低電力モードの階層リストを提示させ、
前記階層リストからの、前記低電力モードのユーザ選択を取得させる命令をさらに含み、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記構成情報を決定させる命令は、前記1つ以上のプロセッサに、前記選択された低電力モードにしたがって、前記構成情報を決定させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項27】
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、前記利用可能な電力の量を取得させる命令は、
前記1つ以上の電力管理プロセッサに、利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得させる命令を含む、請求項20記載のコンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項28】
マルチメディアデバイスにおいて、
前記マルチメディアデバイス内で、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得する手段と、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記マルチメディアデバイスの複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定する手段と、
前記マルチメディアデバイス内の電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する手段と、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供する手段と、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けする手段と、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定する手段とを具備し、
前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含む、マルチメディアデバイス。
【請求項29】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する手段は、
前記構成情報に基づいて、前記サービスの複数のマルチメディアアプリケーションに対する、前記電力最適化された処理命令の実行を調整する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項30】
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサを制御して、前記1つ以上の電力管理機能を実行する手段をさらに具備する、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項31】
前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整する手段は、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサの制御とともに、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記少なくとも第1のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行を調整して、前記1つ以上の電力管理機能を実行させる手段を備える、請求項30記載のマルチメディアデバイス。
【請求項32】
前記サービスの実行のために見込まれる電力の量を取得する手段をさらに含み、
前記構成情報を決定する手段は、前記見込まれる電力の量と、前記利用可能な電力の量とに基づいて、前記構成情報を決定する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項33】
前記構成情報を決定する手段は、低電力モードの選択にしたがって、電力最適化されたビデオデータを表示するために、1つ以上のビデオ機能の実行のためのビデオ構成情報を決定する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。
【請求項34】
少なくとも前記利用可能な電力の量に基づいて、選択可能な低電力モードの階層リストを提示する手段と、
前記階層リストからの、前記低電力モードのユーザ選択を取得する手段とをさらに具備し、
前記構成情報を決定する手段は、前記選択された低電力モードにしたがって、前記構成情報を決定する手段を備える、請求項33記載のマルチメディアデバイス。
【請求項35】
前記利用可能な電力の量を取得する手段は、利用可能な電気的電力の量、および、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに対する処理電力の量のうちの少なくとも1つを取得する手段を備える、請求項28記載のマルチメディアデバイス。」
(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後請求項」という。下線部は補正部分を表している。)

2. 新規事項について
(1)補正前請求項1の「前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、」(当審注;下線は補正された部分を示す。)を、補正後の「前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、」とする補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲(特に請求項1?7)又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものではない。特に、電力管理機能の実行を調整するプロセッサと電力最適化された処理命令の提供先及び優先度付けの対象となるプロセッサとが別々のプロセッサとなるようにすること、すなわち、「第1」、「第2」の明示的な記載はどこにもない。請求人が記載の根拠とする段落【0025】、段落【0083】?【0085】には、「いくつかのケースでは、電力管理モジュール46は、デバイス10中の1つのプロセッサによる、特定の電力最適化された処理演算の実行を、デバイス10中の別のプロセッサ中の構成情報のインプリメンテーションとともに調整して、電力管理機能を実現してもよい。」「段落【0083】…(中略)…しかしながら、電力マネージャー106が、さまざまなマルチメディアリソース105の間での電力管理機能の調整を管理するので、かなりの効率性が実現される。
【0084】
例えば、電力管理エンティティ150、152、および、162は、それらの動作を調整して、電力マネージャー106によって、動的リソース管理システム102中で決定された構成情報に基づいて、CPU、DSP、ハードウェアアクセラレータそれぞれの内で、電力管理機能を実行してもよい。いくつかの例では、電力管理エンティティ150は、電力管理エンティティ152を制御して、特定の電力管理機能を調整してもよい。同様に、いくつかの例において、電力管理エンティティ152は、電力管理エンティティ162を制御して、特定の電力管理機能を調整してもよい。
【0085】
このような方法で、電力マネージャー106は、いくつかのケースにおいて、マルチメディアデバイス内で電力利用の管理を支援することができ、マルチメディアリソース105内のプロセッサ間通信における潜在的な潜時を減少させることができ、マルチメディアリソース105のより効率的な調停を容易にできる。…(後略)…」と記載されているだけで、これらの記載から、電力管理機能の実行を調整するプロセッサと、電力最適化された処理命令の提供先及び優先度付けの対象となるプロセッサとを別々のプロセッサとなるようにすることで何らかの課題を解決しようとする、まとまりのある技術思想をよみとることは、到底できない。
請求項3?4、請求項10、請求項12?13、請求項20、請求項23、請求項28,請求項30?31についての補正も同様に当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたもではないと認められる。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

3. 独立特許要件について
補正前請求項1の「少なくとも1つ」、「少なくとも第1のもの」、「少なくとも第1のもの」を、補正後の「第1のマルチメディアプロセッサ」「第2のマルチメディアプロセッサ」、「前記第2のマルチメディアプロセッサ」とする補正を、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下「限定的減縮」と記す。)を目的としたものと仮定し、以下では、本件補正後の特許請求範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。

A.特許法第29条第2項について
3.1 本件補正発明
本件補正後請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記平成26年3月19日付の手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。(再掲する。)

「1つ以上のマルチメディアリソースを含むマルチメディアデバイスにおける電力管理のための方法において、
電力管理エンティティによって、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得することと、
前記電力管理エンティティによって、前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むことと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定することとを含む方法。」

3.2 引用文献
(1) 引用文献1
本願優先権主張日前に頒布され、原審で引用された刊行物である特開2001-229040号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審付与)
ア.「【要約】(修正有)
【課題】性能に深刻な影響を与えることなく、回路内で電力を管理すること
【解決手段】分散型処理システムは複数の処理モジュール、例えばMPU12と、DSP14と、コプロセッサ/DMAチャンネル16を含む。種々の処理モジュールおよび実行すべきタスクのためのプロフィル36に関連する電力管理ソフトウェア38を使って、所定の電力目的、例えばパッケージの熱的制約内で最大の作動を行ったり、または最小のエネルギーを使用する目的を満たすシナリオを作成する。目的との適合性を補償するよう、作動中にタスクに関連する実際のアクティビティをモニタする。環境条件の変化およびタスクリストの変化に適合するように、タスクの割り当てをダイナミックに変えることができる。」

イ.「【0005】電力全体を節約する外に、複雑な処理環境では集積回路から熱を散逸できる能力も1つの要素となっている。集積回路は所定の量の熱を散逸させるようになっており、高レベルの電流を引き出すためにタスクが集積回路上に多数のシステムを必要とする場合、回路が過熱し、システムが故障する可能性がある。
【0006】将来、集積回路で実現されるアプリケーションはより複雑となり、単一の集積回路内に設けられたMPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネルを含むマルチプロセッサ(以下、分散型処理システムと称す)により、マルチ処理を行う可能性がある。DSPは多数の同時アプリケーションをサポートする。アプリケーションの一部は特定のDSPプラットフォームの専用ではないが、グローバルネットワーク、例えばインターネットからロードされる。従って、過熱を生じることなく、分散型処理システムが処理できるタスクは不確実となる。
【0007】従って、性能に深刻な影響を与えることなく、回路内で電力を管理するための方法および装置に対するニーズが生じている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は複数の処理モジュールを含むプロセッサ内でのタスクの実行を制御するための方法および装置を提供するものである。タスクに関連するアクティビティーに対する確率値に基づき、電力消費量情報が計算され、この電力消費量情報に応答する処理モジュールでタスクが実行される。
【0009】本発明は従来技術よりも大きな利点を有する。第1に、完全にダイナミックな電力管理を可能にできることが挙げられる。処理システム内で実行されるタスクが変化するにつれ、電力管理ソフトウェアはスレッショルドを越えないように新しいシナリオを作成できる。更に、環境条件が変化するにつれ、例えばバッテリー電圧が低下するにつれ、電力管理ソフトウェアは条件を評価し直し、必要であればシナリオを変更できる。第2に、電力管理ソフトウェアが制御する種々のタスクに対して、この電力管理ソフトウェアがトランスペアレントであることが挙げられる。従って、特定のタスクが電力管理を可能にしない場合でも、この電力管理ソフトウェアは処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行する責任を果たす。第3に、電力計算を行うのに使用されるプロフィルを変えることにより適合される、異なるハードウェアプラットフォーム、異なるハードウェアおよびタスクと共に電力管理ソフトウェアの作動全体を使用できる。」

ウ.「【0013】図2は、分散型処理システム10のためのソフトウェアのレイヤー図を示す。図1に示されるように、MPU12はOSを実行するが、他方、DSP14はRTOSを実行する。OSおよびRTOSはソフトウェアのOSレイヤー30を含む。分散型アプリケーションレイヤー32はJAVA(登録商標)、C++および他のアプリケーション34、プロファイリングデータ36を使用する電力管理タスク38およびグローバルタスクスケジューラ40を含む。ミドルウェアソフトウェアレイヤー42はOSレイヤー30と分散型アプリケーションレイヤー32内のアプリケーションとの間の通信を行う。
【0014】図1および2を参照し、分散型処理システム10の作動について説明する。分散型処理システム10は種々のタスクを実行できる。分散型処理システム10のための代表的なアプリケーションとしては、スマートフォーンアプリケーション内に設けられることになろう。このスマートフォーンアプリケーションでは分散型処理システム10が無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェース(例えばLCDの更新、キーボードのデコード)を取り扱う。このアプリケーションでは、分散型処理システム10内の異なる埋め込みシステムが異なる優先度の多数のタスクを実行する。一般には、OSは種々の埋め込み型システムへの異なるタスクのタスクスケジュール設定を実行する。
【0015】本発明は、タスクのスケジュール設定における基準としてエネルギー消費量を積分する。好ましい実施例では、タスクのリストを実行するための確率値に基づくシステムのシナリオを作成するために、電力管理アプリケーション38および分散型アプリケーションレイヤー32からのプロフィル36を使用する。シナリオが所定の基準を満たさない場合、例えば電力消費量が過度に多い場合、新しいシナリオを発生する。許容できるシナリオを設定した後にOSレイヤーはシナリオで予想されたアクティビティが正確であったかどうかを検証するように、ハードウェアのアクティビティをモニタする。
【0016】許容できるタスクスケジュール設定シナリオのための基準はデバイスの性質に応じて変わり得る。移動デバイスのための重要な基準は最小エネルギー消費量である。上記のように電子通信デバイスが更に小型化されるにつれ、より小型のバッテリーの割り当てによってエネルギー消費量にプレミアムが課される。デバイス作動中の多くのケースでは、特にバッテリーが低レベルに達する際に、電力を低減するよう、タスクのためのエネルギー低減作動モードを許可できる。例えば画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減する。別のオプションとしては、性能が低速化することを代償に、分散型処理システム10のMIP(1秒あたりの100万回数の命令の実行回数を単位とする)を低減し、電力を低減することが挙げられる。電力管理ソフトウェア38はデバイスの許容可能な作動に達するよう、低下した性能の異なる組み合わせを使用する別のシナリオを解析できる。
【0017】電力管理における別の目的は、所定の電力限界設定量に対する最大のMIPまたは最低のエネルギーを探すことである。」

エ.「【0019】図4aは、電力管理タスク38の第1実施例の作動を示すフローチャートである。ブロック50において、グローバルスケジューラ40により電力管理タスクが呼び出され、このタスクはMPU12またはDSP14の1つによって実行できる。スケジューラは入力されたアプリケーションを評価し、これを関連する優先度および排除ルールに関連する複数のタスクに分割する。タスクリスト52は、例えばオーディオ/ビデオデコーディング、ディスプレイ制御、キーボード制御、キャラクター認識などを含むことができる。ステップ54において、タスクモデルファイル56および受け入れられたエネルギー低減ファイル58を考慮して、タスクリスト52を評価する。このタスクモデルファイル56は分散型アプリケーションレイヤー32のプロフィル36の一部である。タスクモデルファイル56はタスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てる、先に発生されたファイルである。各モデルはデータの集合であり、このデータの集合は実験的に、またはコンピュータ補助ソフトウェアデザイン技術によって誘導でき、関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響およびMIPおよび時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定める。エネルギー低減リスト58はシナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定める。
【0020】タスクリストを変更するごとに(例えば新しいタスクを作成したり、タスクを削除するごとに)、またはリアルタイムイベントが発生する時に、ステップ54におけるタスクリスト52およびタスクモデル56に基づき、シナリオを作成する。このシナリオはモジュールに種々のタスクを割り当て、タスクを実行する優先度を設定する優先度情報を与える。タスクのエネルギー推定値から基準速度におけるシナリオのエネルギー推定値59を計算できる。必要であるか、または望ましい場合に、タスクを低減してもよい。すなわち、タスクのフルバージョンに対し、ほとんどリソースを使用しないタスクのモードに置換できる。このシナリオから、ブロック60でアクティビティ推定値を発生する。このアクティビティ推定値は(分散型アクティビティレイヤー32のプロファイリングデータ36からの)タスクアクティビティプロフィル62および(分散型アプリケーションレイヤー32のプロファイリングデータ36からの)ハードウェアアーキテクチャモデル64を使用し、シナリオから生じるハードウェアアクティビティに対する確率値を発生する。この確率値は各モジュールの待機/実行時間の比率(有効MHz)、キャッシュおよびメモリへのアクセス、I/O切り替えレートおよびDMAフローリクエストおよびデータボリュームを含む。熱時間定数に一致する期間Tを使用すると、基準プロセッサ速度およびステップ60で誘導された平均アクティビティ(特にプロセッサの有効速度)から熱パッケージモデルに匹敵する平均電力散逸量を計算することができる。電力値がパッケージ熱モデル72に記載されたスレッショルドを越える場合、判断ブロック74でシナリオを拒否する。この場合、ブロック54で新しいシナリオを作成し、ステップ60、66および70を繰り返す。スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行する。
【0021】シナリオが定めるタスクの作動中に、OSおよびRTOSはハードウェア内に組み込まれたカウンタ78を使ってブロック76でそれぞれのモジュールによるアクティビティを追跡する。分散型処理システム10のモジュールにおける実際のアクティビティはブロック60で推定されるアクティビティと異なることがある。ハードウェアカウンタからのデータは測定されたアクティビティ値を発生するようにT時間方法に基づき、モニタされる。これら測定されたアクティビティ値は、この時間の間のエネルギー値、従って上記のようにブロック66における平均電力値を計算するのにブロック66で使用され、ブロック72においてパッケージ熱モデルと比較される。測定された値がスレッショルド値を越える場合、ブロック54で新しいシナリオが作成される。測定されたアクティビティ値を連続的にモニタすることにより、所定の限度内に留まるように、または変化する環境条件に合わせるように、シナリオをダイナミックに変更できる。」

オ.「【0029】図4bは、電力管理タスク38の第2実施例の作動を示すフローチャートである。図4bのフローは、図4lのフローと同じであるが、次の点が異なる。すなわち新しいシナリオを選択する代わりに、ステップ50においてシナリオ作成アルゴリズムを呼び出す際に(新しいタスク、タスクの削除、リアルタイム事象の時に)、性能の制約に合致するn個の異なるシナリオをステップ54および59で予め計算し、記憶し、ダイナミックループ内の演算回数を低減し、トラッキングループ内で計算された電力によりブロック74内で現在のシナリオを拒否することになる場合、より高速の適応化を実行する点が異なっている。…(中略)…
【0030】図5?8は、図3の種々のブロックの作動をより詳細に示す図である。図5には、シナリオ作成システムブロック54が示されている。このブロックでは、シナリオを発生するのにタスクリスト52、タスクモデル56および可能性のあるタスク低減58のリストを使用する。タスクリストは分散型処理システム10でどのタスクを実行すべきかに依存している。図5の例では、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクが示されている。実際の実現例では、これらタスクは任意の数のソースから得られる。タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めている。このブロックでは他の条件も使用できる。シナリオ作成システムブロックの出力はシナリオ80であり、このシナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、タスクの各々に優先度を割り当てる。図5に示された例では、例えばMPEG4は16の優先度を有し、無線モデムタスクは4の優先度を有する。
【0031】ブロック54で作成されるシナリオは多数の異なる検討事項に基づいてもよい。例えばシナリオはパッケージの熱的制約内で最大の性能を発揮することに基づいて作成できる。これとは別に、シナリオは可能な最小のエネルギーを使用することに基づくことができる。最適なシナリオはデバイスの作動中に変わることができる。例えばバッテリーが完全に充電された状態では、デバイスは最大性能レベルで作動できる。バッテリー内の電力が設定されたレベル以下に減少するにつれ、デバイスは作動を維持する可能な最小電力レベルで作動できる。」

カ.「【0037】本発明は、従来技術よりも大きな利点を有する。第1に完全にダイナミックな電力管理が可能である。分散型処理システム10内で実行されるタスクが変化するにつれ、電力管理はスレッショルド値を越えないように新しいシナリオを作成できる。更に、環境条件が変化するにつれ、例えばバッテリー電圧が低下するにつれ、電力管理ソフトウェアが条件を評価し直し、必要な場合にシナリオを変えることができる。例えばVddを公称値に維持できない点までバッテリー電圧(電源電圧)が低下した場合、より低いVddで分散型処理システム10を作動できる、より低い周波数を設定でき、より低い周波数を考慮した新しいシナリオを作成できる。ある状況では、より低い周波数を補償するように、より多くのエネルギー低減法を導入できる。しかしながら、通常不充分となる電源電圧にもかかわらず、周波数を低くすれば、デバイスの作動を持続することができる。更に、より低い周波数が認められる場合、比較的低いアクティビティの期間中に電力を節約するように(スイッチングモードの電源を利用できる場合に)、より低いVddでデバイスを作動できる。」

引用文献1に記載された事項を検討する。
(ア)ア.の「複数の処理モジュール、例えばMPU12と、DSP14と、コプロセッサ/DMAチャンネル16を含む」との記載、エ.の「モジュール」との記載から、MPU、DSPなどはMPUモジュール、DSPモジュールであり、処理モジュール、モジュールでもある。イ.の「単一の集積回路内に設けられたMPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネルを含むマルチプロセッサ(以下、分散型処理システムと称す)により、マルチ処理を行う」、「回路内で電力を管理するための方法」に対するニーズが生じているとの記載、「完全にダイナミックな電力管理を可能にできる」、「電力管理ソフトウェアは処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行する」との記載、イ.の「分散型処理システム10」との記載から、「複数の処理モジュールであるMPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネルを含むマルチプロセッサ(以下、分散型処理システムと称す)における電力管理のための方法」をよみとることができる。

(イ)前記ア.の「電力管理ソフトウェアは処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行する」との記載、イ.の「スマートフォーンアプリケーションでは分散型処理システム10が無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェース(例えばLCDの更新、キーボードのデコード)を取り扱う。このアプリケーションでは、分散型処理システム10内の異なる埋め込みシステムが異なる優先度の多数のタスクを実行する」との記載から、「電力管理ソフトウェアは処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行し、スマートフォーンアプリケーションでは分散型処理システムが無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェースを取り扱い、分散型処理システム内の異なる埋め込みシステムが異なる優先度の多数のタスクを実行するものである」ことをよみとることができる。

(ウ)エ.の「図4aは、電力管理タスク38の第1実施例の作動を示すフローチャートである」、オ.の「図4bのフローは、図4l(「図4a」の誤記と認める。)のフローと同じであるが、…(中略)…予め計算し、…(中略)…より高速の適応化を実行する点が異なっている」と記載されていることから、図4aと図4bとは入れ子の関係にあるものが含まれるので図4aと図4bの共通の同様の記載については、相互に参照しつつ適宜に選択的に記載を抽出するものとする。
エ.の「グローバルスケジューラ40により電力管理タスクが呼び出され、」「スケジューラは入力されたアプリケーションを評価し、これを関連する優先度および排除ルールに関連する複数のタスクに分割」し、分割された「タスクリスト52は、例えばオーディオ/ビデオデコーディング、ディスプレイ制御、キーボード制御、キャラクター認識などを含」み、「タスクモデルファイル56および受け入れられたエネルギー低減ファイル58を考慮して、タスクリスト52を評価」し、「タスクモデルファイル56はタスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てる」ものであり、「各モデルは」、「関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響およびMIPおよび時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定め」、「エネルギー低減リスト58はシナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定め」との記載から「電力管理タスクは、優先度および排除ルールに関連する複数のタスクに分割されたタスクリスト、例えばオーディオ/ビデオデコーディング、ディスプレイ制御、キーボード制御、キャラクター認識を含むタスクリストをタスクモデルファイルおよびエネルギー低減ファイルを考慮して評価し、前記タスクモデルファイルはタスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てるものであり、各モデルは関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響、MIPおよび時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定めるものであり、前記エネルギー低減リストはシナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定めるものであり」をよみとることができる。
また、オ.の「図3の種々のブロックの作動をより詳細に示す図である。図5には、シナリオ作成システムブロック54が示されている。このブロックでは、シナリオを発生するのにタスクリスト52、タスクモデル56および可能性のあるタスク低減58のリストを使用する。タスクリストは分散型処理システム10でどのタスクを実行すべきかに依存している。図5の例では、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクが示されている。」、「タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めている」、「シナリオ作成システムブロックの出力はシナリオ80であり、このシナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、タスクの各々に優先度を割り当てる」との記載と、図5に前記3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの処理モジュールと関連付けられて配置され、前記シナリオが種々のタスクとモジュールとを関連づけが示されていることから、「電力管理タスク」の中の「シナリオ作成システムブロック54」において、「タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用してシナリオが発生され、前記タスクリストは分散型処理システムでどのタスクを実行すべきかに依存し、タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めており、シナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、例えば、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの各処理モジュールと関連付けられ、これらのタスクの各々に優先度が割り当てられ」ることをよみとることができる。
また、エ.の「タスクリストを変更するごとに(例えば新しいタスクを作成したり、タスクを削除するごとに)、またはリアルタイムイベントが発生する時に、ステップ54におけるタスクリスト52およびタスクモデル56に基づき、シナリオを作成」し「このシナリオはモジュールに種々のタスクを割り当て、タスクを実行する優先度を設定する優先度情報を与え」、「ほとんどリソースを使用しないタスクのモードに置換でき」、「シナリオから、ブロック60でアクティビティ推定値を発生」し「電力値がパッケージ熱モデル72に記載されたスレッショルドを越える場合、判断ブロック74でシナリオを拒否」して「新しいシナリオを作成し」「スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行する」、そしてこの実行において、「シナリオが定めるタスクの作動中に、それぞれのモジュール(複数の処理モジュールであるMPUと、DSPと、コプロセッサ/DMAチャンネル)によるアクティビティを追跡」し「測定されたアクティビティ値を連続的にモニタすることにより、所定の限度内に留まるように、または変化する環境条件に合わせるように、シナリオをダイナミックに変更できる」との記載から、「前記新しいタスクを作成したり、タスクを削除してタスクリストを変更するごとに、またはリアルタイムイベントが発生する時に、前記タスクリストおよび前記タスクモデルに基づき、シナリオを作成し、このシナリオは複数の処理モジュールであるMPUと、DSPと、コプロセッサ/DMAチャンネルに種々のタスクを割り当て、タスクを実行する優先度を設定する優先度情報を与え、ほとんどリソースを使用しないタスクのモードに置換でき、シナリオから、アクティビティ推定値を発生(計算)し、電力値がパッケージ熱モデルに記載されたスレッショルドを越える場合、シナリオを拒否して新しいシナリオを作成し、スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行し、この実行において、シナリオが定めるタスクの作動中に、それぞれの処理モジュールによるアクティビティを追跡し測定されたアクティビティ値を連続的にモニタすることにより、所定の限度内に留まるように、または変化する環境条件に合わせるように、シナリオをダイナミックに変更する」ことをよみとることができる。
これらをあわせると、「電力管理タスクは、優先度および排除ルールに関連する複数のタスクに分割されたタスクリスト、例えばオーディオ/ビデオデコーディング、ディスプレイ制御、キーボード制御、キャラクター認識を含むタスクリストをタスクモデルファイルおよびエネルギー低減ファイルを考慮して評価し、前記タスクモデルファイルはタスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てるものであり、各モデルは関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響、MIPおよび時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定めるものであり、前記エネルギー低減リストはシナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定めるものであり、
タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用してシナリオが発生され、前記タスクリストは分散型処理システムでどのタスクを実行すべきかに依存し、タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めており、シナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、例えば、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの各処理モジュールと関連付けられ、これらのタスクの各々に優先度が割り当てられ、
前記新しいタスクを作成したり、タスクを削除してタスクリストを変更するごとに、またはリアルタイムイベントが発生する時に、前記タスクリストおよび前記タスクモデルに基づき、シナリオを作成し、このシナリオは複数の処理モジュールであるMPUと、DSPと、コプロセッサ/DMAチャンネルに種々のタスクを割り当て、タスクを実行する優先度を設定する優先度情報を与え、ほとんどリソースを使用しないタスクのモードに置換でき、シナリオから、アクティビティ推定値を発生し、電力値がパッケージ熱モデルに記載されたスレッショルドを越える場合、シナリオを拒否して新しいシナリオを作成し、スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行し、この実行において、シナリオが定めるタスクの作動中に、それぞれの処理モジュールによるアクティビティを追跡し測定されたアクティビティ値を連続的にモニタすることにより、所定の限度内に留まるように、または変化する環境条件に合わせるように、シナリオをダイナミックに変更」することをよみとることができる。

(エ)ウ.の「許容できるタスクスケジュール設定シナリオのための基準はデバイスの性質に応じて変わり得る。移動デバイスのための重要な基準は最小エネルギー消費量である」、「バッテリーが低レベルに達する際に、電力を低減するよう、タスクのためのエネルギー低減作動モードを許可できる。例えば画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減する。別のオプションとしては、性能が低速化することを代償に、分散型処理システム10のMIP(1秒あたりの100万回数の命令の実行回数を単位とする)を低減し、電力を低減する」、「電力管理ソフトウェア38はデバイスの許容可能な作動に達するよう、低下した性能の異なる組み合わせを使用する別のシナリオを解析できる」との記載から、「最小エネルギー消費基準における設定シナリオにより、バッテリーが低レベルに達する際に、画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減し、別のオプションとしては、性能が低速化することを代償に、分散型処理システムの命令の実行回数/秒を低減して電力を低減する」ことをよみとることができる。

(オ)カ.の「完全にダイナミックな電力管理が可能である。分散型処理システム10内で実行されるタスクが変化するにつれ、電力管理はスレッショルド値を越えないように新しいシナリオを作成できる。更に、環境条件が変化するにつれ、例えばバッテリー電圧が低下するにつれ、電力管理ソフトウェアが条件を評価し直し、必要な場合にシナリオを変えることができる。例えばVddを公称値に維持できない点までバッテリー電圧(電源電圧)が低下した場合、より低いVddで分散型処理システム10を作動できる、より低い周波数を設定でき、より低い周波数を考慮した新しいシナリオを作成できる。ある状況では、より低い周波数を補償するように、より多くのエネルギー低減法を導入できる。しかしながら、通常不充分となる電源電圧にもかかわらず、周波数を低くすれば、デバイスの作動を持続することができる。更に、より低い周波数が認められる場合、比較的低いアクティビティの期間中に電力を節約するように(スイッチングモードの電源を利用できる場合に)、より低いVddでデバイスを作動できる。」との記載から、「完全にダイナミックな電力管理が可能であって、分散型処理システム内で実行されるタスクが変化するにつれ、電力管理はスレッショルド値を越えないように新しいシナリオを作成でき、更に、環境条件、例えばバッテリー電圧が低下するにつれ、電力管理ソフトウェアが条件を評価し直して必要な場合にシナリオを変えることができ、例えばVddを公称値に維持できない点までバッテリー電圧が低下した場合、より低いVddで分散型処理システムを作動可能な、より低い周波数を設定して、より低い周波数を考慮した新しいシナリオを作成でき、ある状況では、より低い周波数を補償するように、より多くのエネルギー低減法を導入でき、通常不充分となる電源電圧にもかかわらず、周波数を低くしてデバイスの作動を持続することができ、更に、より低い周波数が認められる場合、比較的低いアクティビティの期間中に電力を節約するようにスイッチングモードの電源を利用して、より低いVddでデバイスを作動できる」ことをよみとることができる。

(ア)?(オ)によれば、引用文献1には、性能に深刻な影響を与えることなく、回路内で電力を管理するための方法(ア.参照)を提供することを目的とした次の発明(以下、「引用文献1発明」と呼ぶ。)が示されている。


「MPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネルを含む分散型処理システムにおける電力管理のための方法において、
電力管理ソフトウェアは分散型処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行し、スマートフォーンアプリケーションでは分散型処理システムが無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェースを取り扱い、分散型処理システム内の異なる埋め込みシステムが異なる優先度の多数のタスクを実行するものであり、
電力管理タスクは、優先度および排除ルールに関連する複数のタスクに分割されたタスクリスト、例えばオーディオ/ビデオデコーディング、ディスプレイ制御、キーボード制御、キャラクター認識を含むタスクリストをタスクモデルファイルおよびエネルギー低減ファイルを考慮して評価し、前記タスクモデルファイルはタスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てるものであり、各モデルは関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響、命令の実行回数/秒および時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定めるものであり、前記エネルギー低減リストはシナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定めるものであり、
タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用してシナリオが発生され、前記タスクリストは分散型処理システムでどのタスクを実行すべきかに依存し、タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めており、シナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、例えば、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの各処理モジュールと関連付けられ、これらのタスクの各々に優先度が割り当てられ、
前記新しいタスクを作成したり、タスクを削除してタスクリストを変更するごとに、またはリアルタイムイベントが発生する時に、前記タスクリストおよび前記タスクモデルに基づき、シナリオを作成し、このシナリオは複数の処理モジュールであるMPUと、DSPと、コプロセッサ/DMAチャンネルに種々のタスクを割り当て、タスクを実行する優先度を設定する優先度情報を与え、ほとんどリソースを使用しないタスクのモードに置換でき、シナリオから、アクティビティ推定値を発生し、電力値がパッケージ熱モデルに記載されたスレッショルドを越える場合、シナリオを拒否して新しいシナリオを作成し、スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行し、この実行において、シナリオが定めるタスクの作動中に、それぞれの処理モジュールによるアクティビティを追跡し測定されたアクティビティ値を連続的にモニタすることにより、所定の限度内に留まるように、または変化する環境条件に合わせるように、シナリオをダイナミックに変更し、
最小エネルギー消費基準における設定シナリオにより、バッテリーが低レベルに達する際に、画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減し、別のオプションとしては、性能が低速化することを代償に、分散型処理システムの命令の実行回数/秒を低減して電力を低減し、
完全にダイナミックな電力管理が可能であって、分散型処理システム内で実行されるタスクが変化するにつれ、電力管理はスレッショルド値を越えないように新しいシナリオを作成でき、更に、環境条件、例えばバッテリー電圧が低下するにつれ、電力管理ソフトウェアが条件を評価し直して必要な場合にシナリオを変えることができ、例えばVddを公称値に維持できない点までバッテリー電圧が低下した場合、より低いVddで分散型処理システムを作動可能な、より低い周波数を設定して、より低い周波数を考慮した新しいシナリオを作成でき、ある状況では、より低い周波数を補償するように、より多くのエネルギー低減法を導入でき、通常不充分となる電源電圧にもかかわらず、周波数を低くしてデバイスの作動を持続することができ、更に、より低い周波数が認められる場合、比較的低いアクティビティの期間中に電力を節約するようにスイッチングモードの電源を利用して、より低いVddでデバイスを作動可能とする
ことを含む方法。」

(2) 引用文献2
本願優先権主張日前に頒布され原審で引用された刊行物である特開平5-268275号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は,モデムの電源電圧が十分に高い時は,高速なクロックにより変復調および高機能処理(エラー訂正,データ圧縮伸長等)を行い,電源電圧が低下した時は,低消費電力で動作可能なモード(クロック周波数を低下させるとともにエラー訂正等の機能処理を削減したモード)に自動的に移行できるようにした。その際,通信の相手側のモデムに対しても自局のモードに合わせて通信を行うように通知できるようにした。また,電源電圧が低下した場合にも,その電圧において可能な限り多くの高機能処理を行うことができるように機能処理を選択できるようにした。」

3.3 対比
本件補正発明と引用文献1発明とを対比する。
(1)引用文献1発明の「MPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネル」は、通常、メモリなどとともに「分散型処理システム」に含まれるリソースとみることができ、リソースであることは「ほとんどリソースを使用しないタスクのモードに置換できる」との記載において前記「置換」された「モード」で「タスク」を実行する主体が「分散型処理システム」に含まれる前記「MPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネル」であることからもいえるとともに、「MPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネル」といったリソースを含む「分散型処理システム」は「オーディオ/ビデオ」に関することから「マルチメディア」「デバイス」とみることができる。よって、引用文献1発明の「MPU、DSP、コプロセッサおよびDMAチャンネルを含む分散型処理システムにおける電力管理のための方法」と本件補正発明の「1つ以上のマルチメディアリソースを含むマルチメディアデバイスにおける電力管理のための方法」とに実質的な差異はない。

(2)引用文献1発明の「電力管理ソフトウェアは分散型処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行し、スマートフォーンアプリケーションでは分散型処理システムが無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェースを取り扱い、分散型処理システム内の異なる埋め込みシステムが異なる優先度の多数のタスクを実行するものである」ことは、当該「電力管理ソフトウェア(電力管理タスクということがある。)」は「設定シナリオにより、バッテリーが低レベルに達する際に、画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減し、別のオプションとしては、性能が低速化することを代償に、分散型処理システムの命令の実行回数/秒を低減して電力を低減することを含む」ことから「電力管理ソフトウェア」は少なくとも「リフレッシュレートを下げて(変更して)」おり、前記「電力管理ソフトウェア」は本件補正発明の「電力管理エンティティ」(本願明細書の段落【0042】の「電力管理エンティティは、動作電圧、クロック、動作周波数を変更する」、「プロセッサ108の振る舞いと構成を動的に修正」との記載を参照。)に相当し、引用文献1発明の「多数のタスクを実行するものである」における当該実行される「タスク」は、「スマートフォーンアプリケーション」での「無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェースを取り扱」うことにより分散処理システムに要求されるサービス(無線通信、ビデオおよびオーディオのデコンプレッションおよびユーザーインターフェース)の「ため」に実行しているとみることができ、また、前記「分散型処理システムの電力能力と合致した態様」は「最小エネルギー消費基準における設定シナリオ」によるものであり「完全にダイナミックな電力管理」、「より低い周波数を設定して、より低い周波数を考慮」し、「エネルギー低減法を導入」でき「周波数を低くしてデバイスの作動を持続」し「電力を節約する」することから、エネルギーや電力の時間積分、即ち電力量が考慮されており、前記電力能力や電力管理における電力は「電力量」と同義のものであると解することができ、一方、本件補正発明の「利用可能な電力の量を取得すること」も上位概念では「電力の量の把握をする」ものであるとみることができる。よって、引用文献1発明と本件補正発明とは「電力管理エンティティによって、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、電力の量を把握をすること」で共通する。

(3)前記(2)で言及した「電力の把握をする」ことによりその後把握された電力を用いるべく、「電力管理ソフトウェアは分散型処理システムの電力能力と合致した態様でタスクを実行」することが、前記「電力の把握」に基づいてなされることとなることは当然である。また、引用文献1発明の「タスクリスト」、関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響、命令の実行回数/秒および時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定めるものである「モデル」および、シナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定めるものである「エネルギー低減リスト」は本件補正発明の「構成情報」に相当し、引用文献1発明の「タスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てる」ことは本件補正発明の「電力管理機能の実行のための構成情報を決定」することに相当し、引用文献1発明の「前記電力管理タスクは、タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用して」発生した「シナリオ」は、「種々のタスクとモジュールとを関連づけ、例えば、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの各処理モジュールと関連付けられ、これらのタスクの各々に優先度が割り当てられ」、該「シナリオを使ってタスクリストを実行」することにより決定された構成情報を用いたタスク(タスクリスト)の実行により発生する機能が「電力管理機能」であるとみることができることから、「タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用して」発生した「シナリオを使ってタスクリストを実行」することは本件補正発明の「1つ以上の電力管理機能の実行」に相当し、処理モジュールと関連付けられたタスクには当該処理モジュールに対する処理命令が存在することによりタスクの実行がされることは自明であり、エ.に「最適なシナリオ」と記載された如く「シナリオを使って」実行される「タスク(処理命令が含まれる)」は最適なタスクであるとみることができる。してみれば、引用文献1発明の「電力管理タスクは、優先度および排除ルールに関連する複数のタスクに分割されたタスクリスト、例えばオーディオ/ビデオデコーディング、ディスプレイ制御、キーボード制御、キャラクター認識を含むタスクリストをタスクモデルファイルおよびエネルギー低減ファイルを考慮して評価し、前記タスクモデルファイルはタスクリスト内の各リストに異なるモデルを割り当てるものであり、各モデルは関連するタスクの特性、例えばレイテンシーの制約、優先度、データフロー、基準プロセッサ速度における初期エネルギー予想値、エネルギー低減の影響、命令の実行回数/秒および時間に応じた所定のプロセッサにおける実行プロフィルを定めるものであり、前記エネルギー低減リストはシナリオを発生する際に使用できる種々のエネルギー低減方法を定めるものであり、
タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用してシナリオが発生され、前記タスクリストは分散型処理システムでどのタスクを実行すべきかに依存し、タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めており、シナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、例えば、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの各処理モジュールと関連付けられ、これらのタスクの各々に優先度が割り当てられ」および「シナリオを使ってタスクリストを実行し」と、本件補正発明の「前記電力管理エンティティによって、前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むこと」とは、上位概念において「前記電力管理エンティティによって、前記電力の量の把握に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むこと」で共通する。

(4)前記(3)の言及に加え、引用文献1発明の「DSP1、DSP2、MPUの各処理モジュール」のいずれかは本件補正発明の「第1のマルチメディアプロセッサ」「第2のマルチメディアプロセッサ」に相当する。また、引用文献1発明の「シナリオから、アクティビティ推定値を発生し、電力値がパッケージ熱モデルに記載されたスレッショルドを越える場合、シナリオを拒否して新しいシナリオを作成し、スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行し、この実行において、シナリオが定めるタスクの作動中に、それぞれの処理モジュールによるアクティビティを追跡し測定されたアクティビティ値を連続的にモニタすることにより、所定の限度内に留まるように、または変化する環境条件に合わせるように、シナリオをダイナミックに変更し」はシナリオをダイナミックに変更して所定の限度内に留まるように「実行を調整」しているとみることができることから、本件補正発明の「電力管理機能の実行を調整する」に相当する。この点と、引用文献1発明の「前記新しいタスクを作成したり、タスクを削除してタスクリストを変更するごとに、またはリアルタイムイベントが発生する時に、前記タスクリストおよび前記タスクモデルに基づき、シナリオを作成し、」および「シナリオを使ってタスクリストを実行し」とは、当該「実行」により「電力管理機能を実現」するとみることができる点をふまえれば、引用文献1発明の「前記新しいタスクを作成したり、タスクを削除してタスクリストを変更するごとに、またはリアルタイムイベントが発生する時に、前記タスクリストおよび前記タスクモデルに基づき、シナリオを作成し、このシナリオは複数の処理モジュールであるMPUと、DSPと、コプロセッサ/DMAチャンネルに種々のタスクを割り当て」、「シナリオから、アクティビティ推定値を発生し、電力値がパッケージ熱モデルに記載されたスレッショルドを越える場合、シナリオを拒否して新しいシナリオを作成し、スレッショルドを越えない場合、シナリオを使ってタスクリストを実行し」と、本件補正発明の「前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整すること」、および、「前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供すること」とに実質的な差異はない。

(5)引用文献1発明の「タスクリスト、タスクモデルおよび可能性のあるタスク低減のリストを使用してシナリオが発生され、前記タスクリストは分散型処理システムでどのタスクを実行すべきかに依存し、タスクモデルはシナリオを作成する際に考慮すべき条件、例えばレイテンシーおよび優先度の制約、データフロー、初期エネルギー推定値およびエネルギー低減の影響を定めており、シナリオは種々のタスクとモジュールとを関連づけ、例えば、3つのタスク、すなわちMPEG4デコード、無線モデムデータ受信およびキーボードイベントモニタのタスクがDSP1、DSP2、MPUの各処理モジュールと関連付けられ、これらのタスクの各々に優先度が割り当てられ」(優先度とは通常、順序、順位のことと換言できる。)と、本件補正発明の「前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすること」とに実質的な差異はない。

(6)引用文献1発明の「画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減し」、「性能が低速化することを代償に、分散型処理システムの命令の実行回数/秒を低減して電力を低減する」ことは、上位概念では「電力を低減するための対象を決定」しているとみることができ、本件補正発明の「訂正する必要のあるエラーを決定する」ことも上位概念では「電力を低減するための対象を決定する」ものであるとみることができる。してみれば、引用文献1発明の「最小エネルギー消費基準における設定シナリオにより、バッテリーが低レベルに達する際に、画質を代償に、LCDのリフレッシュレートを下げて電力を低減し、別のオプションとしては、性能が低速化することを代償に、分散型処理システムの命令の実行回数/秒を低減して電力を低減する」ことと本件補正発明の「前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定する」こととは「前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより電力を低減するための対象を決定する」ことで共通する。

(1)?(6)の対比によれば、引用文献1発明と本件補正発明とは次の点で一致し、そして相違している。

〈一致点〉
「1つ以上のマルチメディアリソースを含むマルチメディアデバイスにおける電力管理のための方法において、
電力管理エンティティによって、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、電力の量を把握をすることと、
前記電力管理エンティティによって、前記電力の量の把握に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むことと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより電力を低減するための対象を決定することとを含む方法。」

〈相違点1〉
電力の量の把握をすることが、本件補正発明は「利用可能な電力の量を取得すること」であるのに対し、引用文献1発明はそのようであるのか不明である点。
〈相違点2〉
前記電力の量の把握に基づいて、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定することが、本件補正発明は「前記利用可能な電力の量に基づいて」決定するのに対し、引用文献1発明はそのようであるのか不明である点。
〈相違点3〉
電力を低減するための対象を決定することが、本件補正発明は「誤り訂正する必要のあるエラーを」決定するのに対し、引用文献1発明はそのようであるのか不明である点。

3.4 相違点についての当審判断
〈相違点1〉について
残存動作時間を決定する等のために「電力の量の把握をすること」が、「利用可能な電力の量を取得すること」である技術は周知技術である。(必要なら、特表2007-514209号公報段落【0055】「 一般に、電力モニタ817は、手持ち式携帯デバイス100に給電するバッテリ中に残存する利用可能な電力を監視した後、利用可能な電力レベルとアクティブに実行中のアプリケーション(例えば、ゲーム等)の残存する動作時間とを比較して、実行中のアプリケーションの終了まで手持ち式携帯デバイス100の動作を持続可能にするために必要な適切な電力レベルを決定する。1つの実施形態において、電力モニタ817は、バッテリやCPU(ゲームの残存する実行時間を示す)等からの入力を使用して、記憶された電力レベル-動作時間アルゴリズムを実行する状態機械であってもよい。アルゴリズムは、基本的に、入力の比較(例えば、利用可能な電力と、現在の精度モード下で実行中のアプリケーションの終了までの時間とを比較)を行なって、他の利用可能な精度モード下での残存する動作時間を決定するとともに、バッテリの利用可能な電力がアプリケーションを終了させるに足るものとなるようにする精度モードを選択する。」参照。残存する利用可能な電力を監視、バッテリやCPU(ゲームの残存する実行時間を示す)等からの入力を使用、電力レベル-動作時間、残存する動作時間の記載には、電力の時間積分である電力の量の監視、入力、即ち、電力の量を取得することが示されている。)
してみれば、引用文献1発明において、電力の量の把握をすることが、「利用可能な電力の量を取得すること」であると成すことは、前記周知技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

〈相違点2〉について
前記〈相違点1〉について、において言及した事項に方法全体を「整合」させることは設計的事項であり、引用文献1発明において、前記電力の量の把握に基づいて、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定することを、「前記利用可能な電力の量に基づいて」決定すると成すことは、当業者が容易になし得ることである。

〈相違点3〉について
引用文献2には、「電源電圧が低下した時は,低消費電力で動作可能なモード(クロック周波数を低下させるとともにエラー訂正等の機能処理を削減したモード)に自動的に移行できるように」する技術が示されている。
してみれば、引用文献1発明において、電力を低減するための対象を決定することが、「誤り訂正する必要のあるエラーを」決定することであると成すことは前記技術を参酌することにより当業者が適宜になし得ることである。

そして、本件補正発明の構成により奏する効果も引用文献1発明および引用文献2の技術、および周知の技術から当然予測される範囲内のもので格別顕著なものとは認められない。
したがって、本件補正発明は当業者が引用文献1発明および引用文献2の技術、および周知の技術から容易に発明することができたものである。

B.特許法第36条第6項第1号、第2号について
3.5 特許法第36条第6項第1号について
前記「2. 新規事項について」において言及したのと同主旨で、本願特許請求の範囲の請求項1?35に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する。

3.6 特許法第36条第6項第2号について
請求項1について
(1)請求項1の第3段落の記載は、「前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つ」に関連する動作に対して、「前記電力管理エンティティによって」とする一方、請求項1の第4段落の記載は、「第1のマルチメディアプロセッサ」に関連する動作に対して、「前記電力管理エンティティによって」とし、さらに、第5?6段落の記載は、「第2のマルチメディアプロセッサ」に関連する動作に対しても、同じく「前記電力管理エンティティによって」としており、電力管理エンティティが1つなのか否か、マルチメディアプロセッサと対応して各電力管理エンティティがあるのか否か、各電力管理エンティティ相互の関連が不明瞭である。仮に電力管理管理エンティティが1つであるとすると、「前記利用可能な電力の量に基づいて、」如何なる情報をもとに「構成情報を決定」するのか明確でない。また、その他の、「前記電力管理エンティティによって」についても同様である。

(2)電力管理機能の実行あるいは実現に関して、請求項1の第3段落には、「前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける」との記載があり、第4段落には、「前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第1のマルチメディアプロセッサにおける」との記載があり、さらに、第5?6段落には、「前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの第2のマルチメディアプロセッサにおける」、「前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの前記第2のマルチメディアプロセッサによる」との記載があり、複数のマルチメディアプロセッサについての、「少なくとも1つ」、「第1のマルチメディアプロセッサ」、「第2のマルチメディアプロセッサ」のそれぞれの相互の関連が不明瞭である。
また、第4段落の「調整」、第5段落の「処理命令」の「提供」、第6段落の「優先度付け」に係るマルチメディアプロセッサが、それぞれ「第1のマルチメディアプロセッサ」、「第2のマルチメディアプロセッサ」である関連に関し「前記利用可能な電力の量に基づいて、」如何なる情報をもとに、何れを「第1のマルチメディアプロセッサ」あるいは「第2のマルチメディアプロセッサ」とするのか、「電力管理機能の実行を調整」し、「実行用の前記電力最適化された処理命令」を「提供」し、「前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付け」し、「複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定する」ことにするのかも理由が不明であり、マルチメディアプロセッサ相互の関連や相違が不明である。結局、マルチメディアデバイスにおける電力管理に対して、複数のマルチメディアプロセッサのうちの「少なくとも1つ」、「第1のマルチメディアプロセッサ」、「第2のマルチメディアプロセッサ」のそれぞれが、「前記利用可能な電力の量に基づいて、」如何なる情報をもとに、如何なる関連・機能をし、全体としてどのような電力管理の制御を行うこととなるのか不明であり、発明の構成が明確でない。

(3)前記(1)、(2)で検討した点について、請求項10、20、28の対応する事項・記載についても同様である。

したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないので、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

3.7 小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。また、本願特許請求の範囲の請求項1?35の記載は、特許法第36条第6項第1号に違反するとともに、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するから、本願特許請求の範囲の請求項1?35に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4. むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1. 特許法第29条第2項について
(1)本願発明
平成26年3月19日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成25年4月23日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(再掲する。以下「本願発明」という。)

「1つ以上のマルチメディアリソースを含むマルチメディアデバイスにおける電力管理のための方法において、
電力管理エンティティによって、複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、利用可能な電力の量を取得することと、
前記電力管理エンティティによって、前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含むことと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整することと、
前記電力管理エンティティによって、前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供することと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けすることと、
前記電力管理エンティティによって、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにより訂正する必要のあるエラーを決定することと
を含む方法。」

(2)引用文献
原審の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である前記引用文献1、2には、前記第2の3.2(1)及び(2)で摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、前記第2の「3.独立特許要件」の判断で検討した本件補正発明における発明特定事項である、「第1のマルチメディアプロセッサ」、「第2のマルチメディアプロセッサ」、「前記第2のマルチメディアプロセッサ」なる限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3.に記載したとおり、引用文献1発明および引用文献2の技術、周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1発明および引用文献2の技術、周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2. 特許法第36条第6項第2号について
(1)本願特許請求項の範囲の請求項18?19が引用する請求項10及び請求項18?19は、次のとおりのものである。
「【請求項10】
マルチメディアデバイスにおいて、
複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つと、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つに結合されている1つ以上の電力管理エンティティとを具備し、
前記1つ以上の電力管理エンティティは、
前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つを要求するサービスの実行のために、前記マルチメディアデバイスにおいて利用可能な電力の量を取得し、
前記利用可能な電力の量に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、1つ以上の電力管理機能の実行のための構成情報を決定し、前記構成情報は、電力最適化された処理命令を含み、
前記マルチメディアデバイス内での電力利用を管理するために、前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1つにおける、前記1つ以上の電力管理機能の実行を調整し、
前記1つ以上の電力管理機能を実現するために、実行用の前記電力最適化された処理命令を、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものに対して提供し、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも第1のものによる、前記電力最適化された処理命令の実行の順序を優先度付けし、
前記構成情報に基づいて、前記複数のマルチメディアプロセッサのうちの少なくとも1
つにより訂正する必要のあるエラーを決定する、マルチメディアデバイス。
…(中略)…
【請求項18】
前記マルチメディアデバイスは、ワイヤレス通信デバイスハンドセットを備える、請求項10記載のマルチメディアデバイス。
【請求項19】
前記マルチメディアデバイスは、1つ以上の集積回路デバイスを備える、請求項10記載のマルチメディアデバイス。」

(2)平成25年5月16日付の拒絶理由における[理由2]は次のとおりである。
「[請 求 項]18、19
イ)請求項18に記載の、「ワイヤレス通信デバイスハンドセット」は、装置の態様を意味すると解され、「前記マルチメディアデバイスは、ワイヤレス通信デバイスハンドセットを備える」は、特定するマルチメディアデバイスが、ワイヤレス通信デバイスハンドセットを備えるとする態様が日本語として不明である。

ロ)請求項19に記載の、「前記マルチメディアデバイスは、1つ以上の集積回路デバイスを備える」は、「集積回路デバイス」の機能内容が不明であり、マルチメディアデバイスと機能的にどのような関連があるかも不明であり、集積回路は回路の実現手法の一つでしかなく、単にその機能内容が不明な「集積回路デバイスを備える」とすることは、他の事項との関連が不明であり、発明の技術内容を明確に特定していない。」

(3)当審判断
イ)について
請求項18に記載の、「ワイヤレス通信デバイスハンドセット」は、装置の態様を意味すると解することができ、「前記マルチメディアデバイスは、ワイヤレス通信デバイスハンドセットを備える」は、文言どおりの解釈をすれば「マルチメディアデバイス」がその部品として「ワイヤレス通信デバイスハンドセット」(通常は独立した電源を有する。)を備えることを意味するが、これは本願発明の課題等からみて、その技術的意味(請求項に係る発明において果たす役割り。)が不明のものである。また、「ワイヤレス通信デバイスハンドセット」がその部品として「マルチメディアデバイス」を備えるのであれば技術的な不合理はないものの、請求項18の記載は、これを日本語として正確に表現したものになっていない。
したがって、請求項18に係る発明は明確でない。

ロ)について
請求項19に記載の、「前記マルチメディアデバイスは、1つ以上の集積回路デバイスを備える」は、「集積回路デバイス」の機能内容が不明であり、これがマルチメディアデバイスと機能的にどのような関連があるかも不明であり、「集積回路デバイス」が「マルチメディアデバイス」において果たす役割や、これらデバイスの相互の関連が不明である。
したがって、請求項19の記載は明確でない。

以上のとおり、特許請求の範囲の請求項18、19に係る発明は明確でないので、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するので、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-18 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-07 
出願番号 特願2011-506438(P2011-506438)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 宏一  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 山崎 達也
小林 大介
発明の名称 マルチメディアデバイスにおける電力管理機能の調整  
代理人 野河 信久  
代理人 砂川 克  
代理人 福原 淑弘  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 直樹  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井上 正  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ