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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1304728 |
審判番号 | 不服2013-5613 |
総通号数 | 190 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-27 |
確定日 | 2015-09-11 |
事件の表示 | 特願2009-513469「生理的徴候を監視するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日国際公開、WO2007/143535、平成21年11月12日国内公表、特表2009-538720〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年6月1日(優先権主張2006年6月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年2月16日及び同年10月31日に手続補正がなされたが、同年11月19日付けで、上記平成24年10月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成25年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされた。 第2 平成25年3月27日付けの手続補正の補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年3月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の発明 平成25年3月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりのものに補正された。 「生体対象の呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上を検知、分析、および表示するのに有用な装置であって、 前記生体対象に使用可能な無線周波数(RF)のパルス信号を送信する送信機と、 前記生体対象から反射された反射信号を受信するように設けられたセンサと、 前記反射信号に送信信号を乗じ、それより呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と、 前記センサと接続され、前記ベースバンド信号を分析し、前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定し、前記位相差信号から呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと、 分析および導出された前記測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイと、 を備え、 前記センサ及び前記プロセッサは、共に前記生体対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられ、前記反射信号は、当該装置とともに設けられた前記送信機により生成される装置。」(以下「補正発明」という。) 2.特定事項 補正発明は、「生体対象に使用可能な無線周波数(RF)のパルス信号を送信する送信機」(以下「特定事項1」という。)及び「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定・・・するように構成されたプロセッサ」(以下「特定事項2」という。)という事項を含む。 請求人は、上記各特定事項に関して、特定事項1の補正は本件補正前の請求項3(本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項5と、引用する請求項を除いて同一。)及び明細書の段落【0039】の記載に基づくものであり、特定事項2の補正は、明細書の段落【0041】の記載に基づくものであって、上記各特定事項は本願明細書に開示されている事項である(審判請求書参照)と主張している。 3.本願明細書等の記載 本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項5】 前記送信機は、前記生体対象に使用可能な無線周波数(RF)エネルギー信号を生成するように構成された請求項4の装置。」(当審注:本件補正前の請求項3と、引用する請求項を除いて同一) (2)「【0025】 図1は、本装置およびシステムの無線周波数センサの構成要素の概略を、説明のためにパルス連続波信号とともに示す図である。送信機は、人間などの対象に向けて無線周波数信号を送信する。ついで、反射した信号が受信、増幅、および元の信号の一部と混合され、このミキサの出力がローパスフィルタリングされる。得られた信号は被験者の動作、呼吸、および心活動に関する情報を含んでおり、これを未処理センサ信号という。別の実施形態では、本システムにおいて90°位相のずれた2つの搬送信号を用いて直交送信を行うことも可能である。パルスの時間幅がきわめて短い場合、そのようなシステムは超広帯域(UWB:ultrawideband)無線周波数センサとして特徴付けられる。 【0026】 図2は、未処理センサ信号を処理し、次の処理に用いる3つの信号を生成する方法についての概略を示す図である。未処理信号は、身体動作、呼吸、および心活動の組み合わせを反映する成分を通常含んでいる。身体動作は、ゼロ交差またはエネルギーエンベロープ検出アルゴリズム(またはさらに複雑なアルゴリズム)を用いて特定でき、それを用いて「動作オン」または「動作オフ」インジケータを形成できる。呼吸活動は、通常0.1?0.8Hzの範囲にあり、その領域を通過領域とするバンドパスフィルタにより元の信号をフィルタリングすることで得られる。心活動は、それより高い周波数の信号に反映されており、1?10Hzといった通過領域のバンドパスフィルタによりフィルタリングすることで測定できる。 【0027】 図3は、未処理センサ信号を処理し動作情報を得る手段をさらに詳細に示す図である。ある技術では、ある期間における信号のエネルギーエンベロープを算出し、しきい値と比べて高いエネルギーエンベロープを有する期間を動作期間とする。別の技術では、信号がしきい値(たとえばゼロ値)を交差した回数をカウントし、ゼロ交差の値が高い領域を高動作領域とする。これらの技術を別個にまたは組み合わせて用いることで、動作を検知することができる。 【0028】 図4は、本システムより得られた呼吸活動のサンプル信号を、現在臨床上のゴールドスタンダードとなっているインダクタンスプレチスモグラフィより得られた信号(レスピバンド(Respiband)(登録商標)という市販システムを使用)と比較して示す図である。本開示の装置およびシステムでは、呼吸の振幅と周波数の両方を測定することができる。 【0029】 図5は、本装置およびシステムより得られた心活動のサンプル信号を、パルスオキシメータを用いた従来の心拍数監視システムより得られた信号と比較して示す図である。本開示の装置およびシステムでは、個々の心拍動が判別可能な信号を取得することができる。 【0030】 図6は、本装置およびシステムにより心拍数を算出するための技術を示す図である。心活動により、心弾動と呼ばれる圧力波が体表面に発生する。その心信号からは、個々のパルスが判然と見える信号が得られることがある(位置、体型、およびセンサを形成する距離の組み合わせによる)。そのような場合、しきい値通過技術(信号がしきい値を超えた地点とパルスとを関連付ける)により心拍動が特定される。より複雑な(しかし一般的な場合においては)、心弾動はより複雑であるが反復性のパルス波形を示す。そのため、得られた心信号をパルス波形テンプレートと関連付けることができ、その相関の強い部位が心拍動位置として用いられる。」 (3)「【0039】 具体的な一実施形態では、動作センサが無線周波数ドップラーセンサを備えてもよく、このセンサを用いて無線周波数エネルギー(通常100MHz?100GHzの範囲)を送信し、受信した反射信号を用いて動作信号を構成することができる。この動作原理としては、無線周波数波 【数1】(略) がユニットから送信される。この例において、fcは搬送周波数、tは時間、θは任意の位相角、u(t)はパルス波形である。連続波システムでは、u(t)の大きさは常に1であるため、式(1)より省略できる。より一般化すれば、パルスは以下のように定められる。 【数2】(略) ここでTは期間幅、Tpはパルス幅である。Tp<<Tのとき、このシステムはパルス連続波システムとなる。極限的な例では、Tpの時間がきわめて短くなると、放射信号のスペクトルがきわめて広くなり、このようなシステムを超広帯域(UWB)レーダまたはインパルスレーダという。あるいは、RF送信信号の搬送周波数を変化(チャープ)させ、いわゆる周波数変調連続波(FMCW:frequency modulated continuous wave)システムを構成することもできる。 【0040】 この無線周波数信号は、パルスゲーティング用の回路に接続された局部発振器を用いて、センサとともに配置した送信機により生成することができ、あるいは信号タイミングの適切な制御により、いわゆる「バイスタティック」構成にて受信機/センサから送信機を分離することもできる。FMCWの場合、電圧制御発振器を電圧周波数変換器とともに用いて送信用RF信号を生成する。RF信号を電磁波に乗せるには、アンテナを用いればよい。アンテナは、無指向性(全方向にほぼ等しく電力を送信する)と指向性(ある特定の方向に優先的に電力を送信する)のいずれであってもよい。本システムでは、指向性アンテナを用い、送信および反射エネルギーが主に一方向から来るようにするのが有利である。本開示の装置、システム、および方法は、単純なダイポールアンテナ、パッチアンテナ、ヘリカルアンテナなどさまざまな種類のアンテナを用いた多様な実施形態で利用でき、アンテナの選択は、必要とする指向性、大きさ、形状、コストなどの要因に左右される。ただし本装置およびシステムは、人間に使用する上で安全とされている構成で使用できる点に注意されたい。本システムでは、総システム平均放射電力が1mW(0dBm)以下であることが実証されている。RF照射の推奨安全レベルは1mW/cm^(2)である。0dBmで送信するシステムから1メートル離れた場所での等価電力密度は、上記推奨限界の少なくとも100分の1である。 【0041】 いずれの場合も、放射された信号は電波を反射する物体により反射され(空気と身体との界面など)、反射された信号の一部が受信機で受信される。受信機は、送信機とともに配置しても、いわゆる「バイスタティック」構成にて送信機と別個に配置してもよい。受信信号と送信信号は、ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナログあるいはデジタル方式)により混合することができる。たとえばCWの場合、混合信号は以下に等しい。 【数3】(略) ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)、γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合、φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では、反射体(胸部など)が動作しており、m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として、呼吸により胸部が正弦動作している場合、 【数4】(略) 混合信号は、fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2fcを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側の信号を未処理センサ信号と称し、動作、呼吸、および心活動に関する情報を含んでいる。」 (4)「【0043】 UWBの場合、未処理センサ信号を解放する別の方法が有利である。UWBの場合、最も重要な空気と身体との界面までの経路距離は、送信パルスとピーク反射信号との間の遅延を測定することにより求められる。たとえばパルス幅が1ns、センサを形成する身体までの距離が0.5mのとき、パルスのピーク反射までの総経過時間m(τ)は、1/(3×108)s=3.33nsとなる。多数のパルス(たとえば1μsあたり1nsパルス1回)を送信し、経路距離がゆっくり変化していると仮定することにより、その期間における時間遅延の平均として未処理センサ信号を導出することができる。 【0044】 このように、無線周波数センサなどのセンサにより、胸壁の動作、より一般的には本システムの対象となる身体の一部の動作を取得することができる。方向選択性は、指向性アンテナまたは多重RF送信機を用いることにより得られる。このようにしてパルス連続波システムを用いて得られた呼吸信号が、図4の上側に示されている。ただし連続波、FMCW、またはUWBレーダを用いても同様の信号が得られることは言うまでもない。」 (5)「【0072】 本実施形態およびさまざまな実施形態の別の態様においては、センサをプロセッサに接続し、対象より反射された信号を受信するように設けてもよい。センサおよびプロセッサは、対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられる。本実施形態の別の態様においては、本装置とともに設けられた送信機により反射信号を生成してもよい。さらに、人間の被験者に使用可能なRFエネルギー信号を生成するように送信機を構成してもよい。本実施形態およびさまざまな実施形態のさらに別の態様においては、反射信号に送信信号を乗じ、それより呼吸、心活動、および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設けてもよい。身体機能の一例として子供の排尿があり、これを被験者の小さな身体動作により検知してもよい。」 4.判断 (1)当初明細書等の記載事項 上記各記載を含む当初明細書等の記載を総合的に勘案すれば、当初明細書等には、以下の事項が記載されているものと認められる。 (a)無線周波数エネルギーがCWの場合、受信信号と送信信号のミキサによる混合混合信号は送信および受信信号の経路差と反射信号の減衰量を含み、混合後のローパスフィルタの出力側の信号は動作、呼吸、および心活動に関する情報を含んでいる。(上記摘記事項(3)参照) (b)反射信号に送信信号を乗じ、それより呼吸、心活動、および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設ける。(同(5)参照) (c)UWBの場合、未処理センサ信号を解放する別の方法が有利である。UWBの場合、最も重要な空気と身体との界面までの経路距離は、送信パルスとピーク反射信号との間の遅延を測定することにより求められる。たとえばパルス幅が1ns、センサを形成する身体までの距離が0.5mのとき、パルスのピーク反射までの総経過時間m(τ)は、1/(3×108)s=3.33nsとなる。多数のパルス(たとえば1μsあたり1nsパルス1回)を送信し、経路距離がゆっくり変化していると仮定することにより、その期間における時間遅延の平均として未処理センサ信号を導出することができる。(同(4)参照) (2)補正発明に含まれる事項 (a)包含事項 これに対して、上記特定事項1及び2によれば、補正発明には、無線周波数エネルギーがパルス信号の場合に、位相差信号から呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するという事項(以下「包含事項」という。)が含まれることになる。 しかしながら、上記(1)(c)のとおり、本願明細書等には、無線周波数エネルギーがパルス信号の場合に、経路距離を送信パルスとピーク反射信号との間の遅延を測定することにより求めることは記載されているが、当初明細書等のすべての記載を参酌しても、上記包含事項を示唆する記載はない。 また、上記包含事項が、本願の出願時点で当業者にとって自明な事項であるともいえない。 よって、上記包含事項は、当初明細書等に記載された事項とすることはできない。 (b)特定事項2 特定事項2の「位相差信号」及びそれを「決定」するという事項は、ともに、当初明細書等に記載されているとは認められない。 当初明細書の段落【0039】には「θは任意の位相角」、また同【0041】には「ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差」という記載がある。しかしながら、経路差と位相差とに一定の関係が存在すること、及び、反射体が動いている場合には位相差が時間とともに変化することが出願当時の技術常識であったとしても、上記各記載を含む当初明細書等の記載から当業者が認識できるのは、反射体の動きに応じて位相差が変化するであろうこと、それに伴って反射信号も変化するであろうことぐらいであって、反射信号自体は、位相差だけではなく振幅や周波数もあわせて変化するであろうことも、当業者にとって自明のことであるから、これらの技術常識及び上記記載を含む当初明細書等のすべての記載を参酌しても、位相差のみを信号として取り出した「位相差信号」なるものが、記載されているとすることはできないし、ましてや、呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出する「位相差信号」なる信号についてはなおさらである。 また、それをどのように「決定」するかについても、同様に、当初明細書等に記載されているすることはできない。 (c)結論 したがって本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでない。 (d)小括 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成25年3月27日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成24年10月31日付けの手続補正は、上記のとおり、同年11月19日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成24年2月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「生体対象の呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上を検知、分析、および表示するのに有用な装置であって、 前記対象より反射された反射信号を前記対象との物理的接触または機械的結合なしに分析し、それより呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと、 前記プロセッサに接続され、前記反射信号を受信するように設けられたセンサと、 前記反射信号に送信信号を乗じ、それより呼吸、心活動、および身体機能または動作のうち1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と、 分析および導出された前記測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイと、 を備え、 前記センサおよび前記プロセッサは、共に前記対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられている装置。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物及び該刊行物に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-252770号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0012】 本発明は、人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置を提供することを目的とする。 【0013】 【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するために、本発明に係る溺没検知装置は、浴槽における入浴者の有無を検知するための信号を発射する信号発射手段と、前記信号を受信する受信手段と、前記浴槽に入浴している入浴者の動きを検知するためのドプラ信号を出力すると共に、反射されたドプラ信号を受信し、ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と、前記受信手段からの出力に基づいて、前記浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し、前記ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて、前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか、又は、前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのかを判断する制御手段と、前記制御手段の制御に基づいて警報を発する警報手段とを備える。 【0014】 また、本発明に係る溺没検知装置は、前記制御手段は、前記ドプラ出力に、前記入浴者が浴槽から出る動作を示す出力が含まれているか否かに基づいて、前記判断を行う。 【0015】 また、本発明に係る溺没検知装置は、前記信号発射手段が、前記浴槽の一端に接する浴室の壁に形成され、該浴槽を挟んで、前記信号発射手段が形成されている壁と対向する浴室の壁に、前記信号発射手段から発射された信号を反射する反射手段を備え、前記受信手段が、該反射手段から反射された信号を受信する。」 (2)「【0018】 また、本発明に係る溺没検知装置は、前記信号発射手段及び前記ドプラ成分検出手段は、所定の周波数の信号を生成する発振回路と、前記発振回路から出力された信号を変調する変調回路と、前記変調回路から出力された信号を分配して出力する分配回路と、前記分配回路から出力された信号を増幅して出力する第1の増幅回路と、前記第1の増幅回路から出力された信号を出力する送信空中線と、受信した信号を出力する受信空中線と、前記受信空中線から出力された信号を増幅して出力する第2の増幅回路と、前記分配回路から出力された信号と、前記第2の増幅回路から出力された信号とを乗算し、その結果をドプラ出力として出力する乗算回路とを備えた装置により一体的に構成される。」 (3)「【0052】 図4に示されるように、本実施形態のドプラ成分検出装置は、発振回路401と、分配回路402と、増幅回路403と、送信空中線404と、受信空中線405と、増幅回路406と、乗算回路407とを備える。 【0053】 発振回路401は、所定の周波数の信号を発生し、分配回路402に出力する。 【0054】 分配回路402は、発振回路401から出力された信号を、増幅回路403及び乗算回路407に分配して出力する。 【0055】 増幅回路403は、分配回路402から出力された信号を増幅し、送信空中線404に出力する。 【0056】 送信空中線404は、増幅回路403から出力された信号をドプラ信号として送信する。 【0057】 受信空中線405は、ドプラ信号を受信して、増幅回路406に出力する。 【0058】 増幅回路406は、受信空中線405から出力された信号を増幅し、乗算回路407に出力する。 【0059】 乗算回路407は、分配回路402から出力された信号と、増幅回路406から出力された信号とを乗算し、その結果をドプラ出力として出力する。 【0060】 ここで、図1に示されるドプラ成分検出装置の動作について図5を参照してさらに説明する。図5は、図1に示されるドプラ成分検出装置の動作の概略図である。 【0061】 図5に示されるように、送信空中線501から発射されたドプラ信号Fcは、速度Vで動いている人502に当たる。本実施形態では、この人502は、例えば入浴者である。 【0062】 そして、速度Vで動いている人502に当たったドプラ信号Fcは、この速度Vに依存した周波数を含むドプラ信号Fdとして反射される。 【0063】 そして、ドプラ信号Fdは、受信空中線503において受信される。」 (4)「【0142】 図26に示されるように、本発明に係る溺没検知装置の第2の実施形態は、信号を発射する信号発射装置2601と、反射信号を受信する受信装置2602と、ドプラ信号を発射すると共に、反射されたドプラ信号を受信するドプラ成分検出装置2603と、本実施形態の溺没検知装置の動作を制御する制御装置2604と、制御装置2604の制御に基づいて警報を発生する警報装置2605とを備える。」 (5)「【0147】 制御装置2604は、本実施形態の溺没検知装置の動作を制御する。また、制御装置2604は、受信装置2602からの出力と、ドプラ成分検出装置2603からのドプラ出力とに基づいて、警報装置2605に対して警報の発生を指示する。 【0148】 警報装置2605は、制御装置2604の指示に基づいて警報を発する。なお、警報装置2605が発する警報は、音、光、ディスプレイの表示、物体の動き、溺没検知装置にネットワークで接続されたサーバに警報を示す情報を送信するなどを単体で、又は任意に組み合わせて実現できる。 【0149】 なお、本実施形態において使用する信号発射装置2501の構成及び動作は、前述の図1、図3を参照して説明した、信号発射装置101と同様の構成及び動作であるためその詳細な説明を省略する。」 (6)「【図4】 」 (7)「【図5】 」 (8)「【図26】 」 これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「浴槽における入浴者の有無を検知するための信号を発射する信号発射手段と、前記信号を受信する受信手段と、前記浴槽に入浴している入浴者の動きを検知するためのドプラ信号を出力すると共に、反射されたドプラ信号を受信し、ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と、前記受信手段からの出力に基づいて、前記浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し、前記ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて、前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか、又は、前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのかを判断する制御手段と、前記制御手段の制御に基づいてディスプレイの表示よる警報を発する警報手段とを備え、 前記制御手段は、前記ドプラ出力に、前記入浴者が浴槽から出る動作を示す出力が含まれているか否かに基づいて、前記判断を行い、 前記信号発射手段及び前記ドプラ成分検出手段は、所定の周波数の信号を生成する発振回路と、前記発振回路から出力された信号を変調する変調回路と、前記変調回路から出力された信号を分配して出力する分配回路と、前記分配回路から出力された信号を増幅して出力する第1の増幅回路と、前記第1の増幅回路から出力された信号を出力する送信空中線と、受信した信号を出力する受信空中線と、前記受信空中線から出力された信号を増幅して出力する第2の増幅回路と、前記分配回路から出力された信号と、前記第2の増幅回路から出力された信号とを乗算し、その結果をドプラ出力として出力する乗算回路とを備えた装置により一体的に構成される、 溺没検知装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「入浴者」は本願発明の「生体対象」に相当し、同様に「入浴者が浴槽から出る動作」は「生体対象の動作」に相当する。 また、引用発明が「入浴者が浴槽から出る動作を示す出力が含まれているか否かに基づいて判断を行い、」「ディスプレイの表示よる警報を発する」ことは、本願発明の「動を検知、分析、および表示する」ことに相当する。 (2)引用発明の「反射されたドプラ信号」及び「制御手段」は、それぞれ本願発明の「前記対象より反射された反射信号」及び「プロセッサ」に相当し、引用発明のプロセッサが入浴者との物理的接触又は機械的結合なしに分析し、動作の測定結果を導出することは明らかである。 (3)引用発明の「入浴者の有無を検知するために発射される信号」、「受信した信号を出力する受信空中線」及び「乗算回路」は、それぞれ本願発明の「送信信号」、「反射信号を受信するように設けられたセンサ」及び「乗算回路」に相当する。 引用発明の「ドプラ出力」は送信したドプラ信号と反射したドプラ信号を乗算して得られるものであるから、本願発明の、反射信号に送信信号を乗じて得られる「ベースバンド信号」に相当する。 (4)引用発明の「ディスプレイ」は本願発明の「ディスプレイ」に相当し、引用発明の「ディスプレイの表示よる警報」は、本願発明の「測定結果を前記装置のユーザに与える」ことに相当する。 (5)引用発明の「受信空中線」(本願発明の「センサ」に相当)が、「入浴者」(同「生体対象」に相当)との直接的または間接的な物理的接触なしに作動することは自明である。 (6)引用発明の「溺没検知装置」は本願発明の「装置」に相当する。 以上のことから、両者は、 「生体対象の動作を検知、分析、および表示するのに有用な装置であって、 前記対象より反射された反射信号を前記対象との物理的接触または機械的結合なしに分析し、それより動作の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと、 前記プロセッサに接続され、前記反射信号を受信するように設けられたセンサと、 前記反射信号に送信信号を乗じ、それより動作を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と、 分析および導出された前記測定結果を前記装置のユーザに与えるように構成されたディスプレイと、 を備え、 前記センサおよび前記プロセッサは、共に前記対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられている装置。」 の点で一致し、次の点で相違している。 (相違点) ユーザが、本願発明では「ローカルまたはリモートユーザ」であるのに対して、引用発明はどのようなユーザであるか不明な点。 4.判断 上記相違点について検討する。 引用発明が人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置を提供することを目的としている(上記摘記事項(1)参照)ことに照らせば、ユーザとしてリモートユーザを想定することに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。 してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 また、本願発明全体の効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-07 |
結審通知日 | 2014-05-13 |
審決日 | 2014-05-27 |
出願番号 | 特願2009-513469(P2009-513469) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤田 年彦、石井 哲 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 神 悦彦 |
発明の名称 | 生理的徴候を監視するための装置 |
代理人 | 上田 邦生 |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 川上 美紀 |