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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1304938
審判番号 不服2014-17421  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-02 
確定日 2015-09-03 
事件の表示 特願2012- 56061「導電性接着フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-151486〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年8月29日(優先権主張 平成18年1月16日)を出願日とする特願2006-232381号(以下、「原出願」という。)の一部を平成24年3月13日に新たな特許出願としたものであって、平成25年10月31日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成26年5月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月2日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年9月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年9月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、本件補正により補正される前の特許請求の範囲の請求項1について、下記アを、下記イと補正するものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「太陽電池セルの表面電極と、配線部材とを電気的に接続するための導電性接着フィルムであって、
絶縁性接着剤と導電性粒子とを含有し、
前記導電性粒子の平均粒子径をr(μm)、前記導電性接着フィルムの厚さをt(μm)として、(t/r)の値が2.0?9.0の範囲内であり、
前記導電性粒子の平均粒子径rが12?20μmであり、
前記導電性粒子の含有量が、前記導電性接着フィルムの全体積を基準として1.7?15.6体積%であり、
弾性率が0.5?4.0GPaである、導電性接着フィルム。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「太陽電池セルの表面電極と、配線部材とを電気的に接続するための導電性接着フィルムであって、
絶縁性接着剤と導電性粒子とを含有し、
前記絶縁性接着剤が、該絶縁性接着剤全量を基準として9?34質量%のアクリルゴムを含み、
前記導電性粒子の平均粒子径をr(μm)、前記導電性接着フィルムの厚さをt(μm)として、(t/r)の値が2.0?9.0の範囲内であり、
前記導電性粒子の平均粒子径rが12?20μmであり、
前記導電性粒子の含有量が、前記導電性接着フィルムの全体積を基準として1.7?15.6体積%であり、
弾性率が0.5?4.0GPaである、導電性接着フィルム。」

2.新規事項の有無及び補正の目的要件
本件補正は、本件補正前の「絶縁性接着剤」について、「絶縁性接着剤全量を基準として9?34質量%のアクリルゴムを含」む点を限定するものを含むものであり、願書に最初に添付した明細書の【0039】等の記載からみて、当初明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)を、進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

3.本件補正発明の進歩性について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.イ」のとおりのものと認める。
(2)引用文献の記載
ア 引用文献1について
原査定の拒絶理由に引用された、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-298525号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「異方導電性接着剤樹脂組成物及び異方導電性接着フィルム」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
(引1ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細な回路同士の電気的接続、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)とフレキシブル回路基板との接続や、半導体ICとIC搭載用回路基板のマイクロ接合など、電子部品の組立等に用いられる異方導電性接着剤樹脂組成物及び異方導電性接着フィルムに関するものである。」
(引1イ)「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る異方導電性接着剤樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、硬化剤からなる組成物100重量部に、エラストマー5?50重量部を配合したものを主成分とする樹脂組成物において、導電性粒子を0.1?15vol%含有して成ることを特徴とするものである。」
(引1ウ)「【0011】また本発明において用いる硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化に関与するものであれば特に限定されないものであり、アミン系、フェノール系、酸無水物系の硬化剤が好ましい。さらに、本発明において添加するエラストマーについては、反応性のものであっても非反応性のものであってもよく、特に限定されるものではないが、SBR(スチレン-ブタジエンラバー)、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS(スチレン-エチレン-ブテン・スチレン共重合体)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン共重合体)等を用いるのが好ましい。」
(引1エ)「【0012】また本発明において導電性粒子としては、特に限定するものではないが、例えぱニッケル、銅、鉄、アルミニウム、金、銀、鉛、錫等の金属や金属酸化物、半田等の合金、カーボン、グラファイト、あるいはプラスチックやセラミック等の核材の表面にめっきなどの方法で金属をコーティングしたものを挙げることができる。導電性粒子の平均粒径は、接続すべき回路間の接続の高信頼性を確保し、且つ隣接する回路間の絶縁性を確保するために、1?20μmの範囲のものがより好ましい。」
(引1オ)「【0013】そして上記のエポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、硬化剤を配合すると共にエラストマーを配合し、さらに導電性粒子を配合することによって、本発明に係る異方導電性接着剤樹脂組成物を得ることができるものである。ここで、エラストマーは、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、硬化剤からなる組成物100重量部に対して5?50重量部の範囲で配合するものである。エラストマーの配合量が5重量部未満であると、異方導電性接着剤樹脂組成物が脆くなり、フィルム化することが困難になって異方導電性接着フィルムを調製することができなくなる。逆にエラストマーの配合量が50重量部を超えると、異方導電性接着剤樹脂組成物の硬化物の耐熱性が損なわれるおそれがある。尚、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、硬化剤の各配合割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、ポリフェニレンエーテル20?100重量部、硬化剤0.5?20重量部の範囲が好ましい。」
(引1カ)「【0014】また導電性粒子の配合量は、上記のエポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、硬化剤、エラストマーを配合した樹脂組成物に対して、0.1?15vol%の範囲が好ましい。導電性粒子の配合量が0.lvol%未満であると、接続すべき回路間の安定した導通信頼性を得ることが難しく、また導電性粒子の配合量が15vol%を超えると、隣接する回路間の絶縁信頼性が得られなくなるおそれがある。」
(引1キ)「【0015】ここで、本発明の異方導電性接着剤樹脂組成物は、溶剤で希釈して使用することができる。この溶剤としては、ポリフェニレンエーテルを溶解することができるものであれば特に限定されないが、例えばトルエン、ベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素系溶剤やトリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤を使用することができる。これらの溶剤は単独で使用することもでき、複数の種類を併用することもできるものである。
【0016】一方、本発明の異方導電性接着フィルムは、異方導電性接着剤樹脂組成物をフィルムに成形することによって得ることができる。例えば、キャリア用のフィルムとしてポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂系フィルムなど異方導電性接着剤樹脂組成物の樹脂液中の溶剤に不溶で、かつ離型処理されているものを用い、このキャリアフィルム上に異方導電性接着剤樹脂組成物を流延して乾燥することによって、異方導電性接着フィルムを得ることができるものである。」
(引1ク)「【0017】
【実施例】次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)日本GEプラスチック(株)製の数平均分子量(Mn)20000のポリフェニレンエーテル(PPE)に表1に示す割合でベンゾイルパーオキサイド(BPO)とビスフェノールA(BPA)及びトルエンを配合し、これを90℃にて60分間攪拌して反応させた生成物を用いた。この生成物の数平均分子量を表1に示す。尚、PPEの数平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフ(カラム構成…東ソー(株)製TSKgel SuperHM-M(1本)+SuperHM-H(1本))にて分子量分布を測定して求めた。
【0018】上記のようにして得た数平均分子量1300のポリフェニレンエーテルのトルエン溶液64重量部と、エラストマー成分としてSBS(旭化成工業(株)製「タフプレンA」)40重量部を配合し、90℃で60分間攪拌してその後室温まで冷却した。次にこれに、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「YDBー500」をトルエンにより不揮発分80重量%にしたもの)80重量部、硬化剤としてジアミノジフェニルメタン(DDM)1重量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)5重量部を加え、さらに平均粒径2μmのニッケル粒子を10vol%添加し、これらを均一に攪拌することによって、異方導電性接着剤樹脂組成物を調製した。
【0019】そして、この異方導電性接着剤樹脂組成物を、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコータを用いて塗布し、80℃で送風乾燥することによって、厚みが25μmの異方導電性接着フィルムを得た。」
(引1ケ)「【0024】(実施例7)数平均分子量20000のポリフェニレンエーテルに表1に示す割合でベンゾイルパーオキサイドとビスフェノールAを配合し、実施例1と同様に反応させることによって得た数平均分子量3400のポリフェニレンエーテルを用い、ジアミノジフェニルメタンの配合量を1.5重量部にし、平均粒径12μmのニッケル粒子を5vol%添加するようにした他は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤樹脂組成物を調製し、さらにこの異方導電性接着剤樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして厚みが25μmの異方導電性接着フィルムを得た。」
(引1コ)【0029】【表1】


(3)引用発明の認定
ア (引1ア)の「液晶ディスプレイ(LCD)とフレキシブル回路基板との接続」とは、当業者の技術常識に照らして、「液晶ディスプレイ」の端子部等に設けられた電極と、「フレキシブル回路基板」の配線との電気的な「接続」を意味することは明らかである。

イ 実施例7では、トルエン100重量部、BPA(ビスフェノールA)2重量部、PPE(ポリフェニレンエーテル)100重量部、BPO(ベンゾイルパーオキサイド)2重量部からなる、平均分子量3400のポリフェニレンエーテル64重量部と、エラストマー成分としてSBS(スチレン-ブダジエン-スチレン共重合体)40重量部と、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂80重量部(トルエンにより不揮発分80重量%にしたもの)を配合し、硬化剤としてジアミノジフェニルメタン(DDM)1.5重量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)5重量部を加えたものに、さらに、平均粒径12μmのニッケル粒子を5vol%添加したものを送風乾燥させて、「厚みが25μmの異方導電性接着フィルム」を得ており、該「導電性接着フィルム」には、トルエンが含まれないと解されることから、「異方導電性接着フィルム」の平均粒径12μmのニッケル粒子を除く樹脂組成物全量に対するエラストマーの配合量は、27.9重量%(40/{64×(2+100+2)/(100+2+100+2)+40+80×0.8+1.5+5}×100(%))となる。

ウ そうすると、引用文献1には、
「数平均分子量20000のポリフェニレンエーテルにベンゾイルパーオキサイドとビスフェノールAを配合することによって得た数平均分子量3400のポリフェニレンエーテルのトルエン溶液64重量部と、エラストマー成分としてSBS(スチレン-ブダジエン-スチレン共重合体)40重量部を配合し、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂80重量部(トルエンにより不揮発分80重量%にしたもの)、硬化剤としてジアミノジフェニルメタン(DDM)1.5重量部、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)5重量部を加えて得られたものに、さらに、平均粒径12μmのニッケル粒子を5vol%添加して調製した得られたトルエンを含む樹脂組成物を、
離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコータを用いて塗布し、80℃で送風乾燥することによって、トルエンを含まない樹脂組成物とし、
厚みを25μmとし、
トルエンを含まない樹脂組成物全量を基準として27.9重量%のエラストマー成分を含む、
液晶ディスプレイの電極とフレキシブル回路基板の配線を電気的に接続する異方導電性接着フィルム。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「異方導電性接着フィルム」及び「フレキシブル回路基板の配線」は、本件補正発明の「導電性接着フィルム」及び「配線部材」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明は、「異方導電性接着フィルム」であるから、「トルエンを含まない樹脂組成物」は、絶縁性であって、しかも、「導電性粒子」自体は接着性を有さないことから、該「トルエンを含まない樹脂組成物」は、異方導電性接着剤樹脂組成物における接着剤の成分として用いられていることは明らかであるから、引用発明の「トルエンを含まない樹脂組成物」は、本件補正発明の「絶縁性接着剤」に相当する。
ウ 引用発明の「ニッケル粒子」の「平均粒径」は本件補正発明の「導電性粒子の平均粒子径」の範囲に含まれ、引用発明の「ニッケル粒子」の「平均粒径」と「異方導電性接着フィルム」との比は、本件補正発明の(t/r)の範囲に含まれる。
エ 本件補正発明の「アクリルゴム」と引用発明の「エラストマー」とは、「エラストマー」である点で共通し、引用発明の「エラストマー」の量は、本件補正発明の「アクリルゴム」の量に含まれる。
オ 本件補正発明の「太陽電池セルの電極」と引用発明の「液晶ディスプレイの電極」とは、「液晶ディスプレイ」という「機器の電極」である点で共通する。

そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「機器の電極と、配線部材とを電気的に接続するための導電性接着フィルムであって、
絶縁性接着剤と導電性粒子とを含有し、
前記絶縁性接着剤が、該絶縁性接着剤全量を基準として9?34質量%のエラストマーを含み、
前記導電性粒子の平均粒子径をr(μm)、前記導電性接着フィルムの厚さをt(μm)として、(t/r)の値が2.0?9.0の範囲内であり、
前記導電性粒子の平均粒子径rが12?20μmである、
導電性接着フィルム。」である点で一致し、次の相違点1?4で相違する。

(相違点1)
配線部材と電気的に接続される部材について、本件補正発明は、「太陽電池セルの表面電極」であるのに対し、引用発明では、「液晶ディスプレイの電極」である点。

(相違点2)
エラストマーが、本件補正発明は、「アクリルゴム」であるのに対し、引用発明は、「SBS(スチレン-ブダジエン-スチレン共重合体)」である点。

(相違点3)
導電性粒子の含有量について、本件補正発明は、「導電性接着フィルムの全体積を基準として1.7?15.6体積%」であるのに対し、引用発明における、トルエンを含み、送風乾燥する前の「トルエンを含む樹脂組成物」に「導電性粒子」は、「0.1?15vol%」含有されるものの、送風乾燥させて得られた、「トルエンを含まない樹脂組成物」は、その体積が不明であって、「異方導電性接着フィルム」に含有される量(体積%)は不明な点。

(相違点4)
「導電性接着フィルム」の「弾性率」について、本件補正発明は、「0.5?4.0GPa」であるのに対し、引用発明の「異方導電性接着フィルム」の弾性率は不明な点。

(5)判断
以下、相違点について検討する。
(相違点1について)
表面電極と配線部材とが導電性接着フィルムによって電気的に接続される機器として、「太陽電池セル」は周知であり、引用発明は、液晶ディスプレイの電極とフレキシブル回路基板との電気的な接続に用いるものに限られないことは明らかであるから、引用発明を、「太陽電池セル」に用いて、本件補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
異方導電性接着フィルムにアクリルゴムを含有させることは周知である。
そして、エラストマーとしてどのような種類を用いるかは、フィルム化や耐熱性等を考慮して、当業者が適宜決定する設計的事項にすぎないものと認められる。
そうすると、引用発明の「SBS(スチレン-ブダジエン-スチレン共重合体)」に代えて、「アクリルゴム」を用いて、本件補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用文献に、「導電性粒子の配合量が0.lvol%未満であると、接続すべき回路間の安定した導通信頼性を得ることが難しく、また導電性粒子の配合量が15vol%を超えると、隣接する回路間の絶縁信頼性が得られなくなるおそれがある。」(引1カ)と記載されているように、引用発明の異方導電性接着フィルムにおいて、異方導電性接着フィルムの全体積に対して、導電性粒子をどの程度含有させるかは、導通信頼性等を考慮して、当業者が適宜決定する設計的事項にすぎないものと認められる。
そうすると、引用発明において、本件補正発明の上記相違点3に係る量のニッケル粒子を含有させることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
引用発明の「異方導電性接着フィルム」の弾性率は、キャリアフィルム上に樹脂組成物を流延した後に、どの程度、硬化させるかによって適宜決定されるものである。
そして、「異方導電性接着フィルム」の「弾性率」として「0.5?4.0GPa」は格別なものではなく、引用発明において、本件補正発明の上記相違点4に係る弾性率とすることは、格別困難性があるとは認められない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.本件補正発明についての結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成26年9月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年12月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2 1.ア」のとおりのものと認める。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、及びその記載事項は、前記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」で検討した本件補正発明から「前記絶縁性接着剤が、該絶縁性接着剤全量を基準として9?34質量%のアクリルゴムを含み」を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 3.」に記載したとおり、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-02 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-22 
出願番号 特願2012-56061(P2012-56061)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 川端 修
井口 猶二
発明の名称 導電性接着フィルム  
代理人 古下 智也  
代理人 清水 義憲  
代理人 池田 正人  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 城戸 博兒  

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