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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1304948
審判番号 不服2013-8929  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-15 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2008-534620「デバイス初期化のための方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日国際公開、WO2007/041567、平成21年 4月 9日国内公表、特表2009-515238〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件審判に係る出願(以下,「本願」という。)は,2006年10月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2005年10月3日(以下,「優先日」という。),アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成20年4月3日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され,平成20年5月30日付けで特許法第184条の4第1項の規定による翻訳文が提出され,平成21年10月2日付けで審査請求がなされ,平成24年2月23日付けで拒絶理由通知(平成24年2月27日発送)がなされ,これに対して,平成24年8月27日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成24年9月12日付けで拒絶理由通知(平成24年9月18日発送)がなされ,これに対して,平成24年12月18日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成25年1月10日付けで手続補正が却下(平成25年1月15日発送)されるとともに,同日付けで拒絶査定(平成25年1月15日謄本送達)がなされたものである。
これに対して,「原査定を取り消す,本願は特許をすべきものとする,との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成25年5月15日付けで審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成25年11月19日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされ,平成25年11月28日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成25年12月3日発送)がなされ,平成26年3月3日付けで回答書の提出がなされた。
そして,当審にて,平成26年6月24日付けで拒絶理由通知(平成26年6月26日発送)がなされ,これに対して平成26年9月4日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正書が提出され,平成26年10月16日付けで拒絶理由通知(平成26年10月21日発送)がなされ,これに対して平成27年3月4日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正書が提出された。


第2.平成27年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成27年3月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容
平成27年3月4日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成26年9月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8の記載,
「 【請求項1】
第1のコンピュータにおいて,該第1のコンピュータを識別するためのデバイス公開キーを含むライセンス要求を生成し,
前記第1のコンピュータとネットワークを介して接続された第2のコンピュータにおいて,ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含み,
前記デバイス・ライセンスは,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含む,
デバイス初期化方法。
【請求項2】
前記ライセンス要求を生成するステップと,前記時間切れ識別子を生成するステップとの間に,前記第1のコンピュータから前記ライセンス要求を前記第2のコンピュータに設けられたメディア配信システムに提供し,
前記デバイス・ライセンスにデジタル署名するステップに続いて,前記第2のコンピュータから前記デバイス・ライセンスを前記第1のコンピュータに提供する,ことをさらに含む,請求項1に記載のデバイス初期化方法。
【請求項3】
前記ライセンス要求が,
前記加入を識別するユーザID,チャレンジ,および前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書の少なくとも1つを含む,請求項1又は2に記載のデバイス初期化方法。
【請求項4】
前記ライセンス要求を生成するステップと,前記時間切れ識別子を生成するステップの間に,第1のコンピュータにおいて,署名済みライセンス要求を形成するために,前記ライセンス要求にデジタル署名することをさらに含む,請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス初期化方法。
【請求項5】
前記ライセンス要求にデジタル署名するステップと,前記時間切れ識別子を生成するステップの間に,前記第2のコンピュータにおいて,前記署名済みライセンス要求の完全性を確認することをさらに含む,請求項4に記載のデバイス初期化方法。
【請求項6】
前記デバイス・ライセンスが,
認可サービス・デジタル証明書,およびシステム時間識別子の少なくとも1つを含む,請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス初期化方法。
【請求項7】
前記デバイス・ライセンスにデジタル署名するステップに続いて,前記第1のコンピュータにおいて,前記署名済みデバイス・ライセンスの完全性を確認することをさらに含む,請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス初期化方法。
【請求項8】
プロセッサによって実行されるとき,前記プロセッサに,
第1のコンピュータを識別するためのデバイス公開キーを含むライセンス要求を生成し,
ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成し,
前記第1のコンピュータによって第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ,
前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含む動作を実施させる,複数の命令を有し,
前記デバイス・ライセンスは,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含む,
プログラム。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
を,

「 【請求項1】
第1のコンピュータにおいて,該第1のコンピュータを識別するためのライセンス要求であって,ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求を生成し,
前記第1のコンピュータとネットワークを介して接続された第2のコンピュータにおいて,ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含み,
前記デバイス・ライセンスは,前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書,及び,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる,
デバイス初期化方法。
【請求項2】
前記ライセンス要求を生成するステップと,前記時間切れ識別子を生成するステップとの間に,前記第1のコンピュータから前記ライセンス要求を前記第2のコンピュータに設けられたメディア配信システムに提供し,
前記デバイス・ライセンスにデジタル署名するステップに続いて,前記第2のコンピュータから前記デバイス・ライセンスを前記第1のコンピュータに提供する,ことをさらに含む,請求項1に記載のデバイス初期化方法。
【請求項3】
前記ライセンス要求が,
前記加入を識別するユーザID,チャレンジ,および前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書の少なくとも1つを含む,請求項1又は2に記載のデバイス初期化方法。
【請求項4】
前記ライセンス要求を生成するステップと,前記時間切れ識別子を生成するステップの間に,第1のコンピュータにおいて,署名済みライセンス要求を形成するために,前記ライセンス要求にデジタル署名することをさらに含む,請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス初期化方法。
【請求項5】
前記ライセンス要求にデジタル署名するステップと,前記時間切れ識別子を生成するステップの間に,前記第2のコンピュータにおいて,前記署名済みライセンス要求の完全性を確認することをさらに含む,請求項4に記載のデバイス初期化方法。
【請求項6】
前記デバイス・ライセンスが,
認可サービス・デジタル証明書,およびシステム時間識別子の少なくとも1つを含む,請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス初期化方法。
【請求項7】
前記デバイス・ライセンスにデジタル署名するステップに続いて,前記第1のコンピュータにおいて,前記署名済みデバイス・ライセンスの完全性を確認することをさらに含む,請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス初期化方法。
【請求項8】
プロセッサによって実行されるとき,前記プロセッサに,
第1のコンピュータを識別するためのライセンス要求であって,ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求を生成し,
ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成し,
前記第1のコンピュータによって第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ,
前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含む動作を実施させる,複数の命令を有し,
前記デバイス・ライセンスは,前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書,及び,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる,
プログラム。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正するものである。


2.目的要件
(1) 本件補正は,本願の願書に添付された特許請求の範囲,明細書,又は図面に基づくものといえるから,特許法第17条の2第3項の規定に適合しているといえる。また,特許法第17条の2第4項の規定に適合していることも明らかである。
そして,本件補正は,本件審判の請求と同時にする補正であり,上記「1.本件補正の内容」のとおり,特許請求の範囲についてする補正であるので,本件補正の目的を検討する。

(2) 補正前の請求項1及び8の「第1のコンピュータを識別するためのデバイス公開キーを含むライセンス要求を生成し」との記載を,補正後の請求項1及び8において「第1のコンピュータを識別するためのライセンス要求であって,ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求を生成し」と補正することと,補正前の請求項1及び8の「前記デバイス・ライセンスは,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含む」との記載を,補正後の請求項1及び8において「前記デバイス・ライセンスは,前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書,及び,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる」と補正することは,いずれも補正前の各請求項に係る発明を特定する事項を限定するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
してみると,本件補正の目的は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下,「限定的減縮」という。)に該当する。


3.独立特許要件
本件補正は,上記「2.目的要件」において示したように特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するから,本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は,補正後の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(再掲する。)

「 第1のコンピュータにおいて,該第1のコンピュータを識別するためのライセンス要求であって,ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求を生成し,
前記第1のコンピュータとネットワークを介して接続された第2のコンピュータにおいて,ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含み,
前記デバイス・ライセンスは,前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書,及び,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる,
デバイス初期化方法。」

(2) 先行技術文献記載事項
ア.引用文献1
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,当審の上記平成26年10月16日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2005-57435号公報(平成17年3月3日公開。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同じ。)

A 「【0001】
本発明は,クライアント機器に関し,特にネットワークに接続され,同様に前記ネットワークに接続されたサーバ機器からコンテンツデータ及び鍵情報を受信するクライアント機器及びこのクライアント機器におけるコンテンツ処理方法に関する。また,本発明は,ネットワークを介してサーバ機器に接続されたクライアント機器にサーバ機器からコンテンツを提供するコンテンツ提供システムに関する。」

B 「【0019】
クライアント12とインターネット2を介して接続しているサーバ11には,クライアント12に対してコンテンツを提供するコンテンツサーバ11-A,コンテンツサーバ11-Aが提供するコンテンツを利用するのに必要なライセンスをクライアント12に対して付与するライセンスサーバ11-B,およびクライアント12がライセンスを受け取った場合に,そのクライアント12に対して課金処理を行う課金サーバ11-Cがある。これらのコンテンツサーバ11-A,ライセンスサーバ11-B,及び課金サーバ11-Cも,任意の台数,インターネット2に接続されている。」

C 「【0022】
クライアント12は,鍵情報がヘッダに付加された暗号化コンテンツKc(コンテンツ)を,インターネット2を介して図2に示すインターフェース(I/F)部21により取り込み,暗号化コンテンツKc(コンテンツ)を復号部であるコンテンツ利用部23へ共通バス20を介して,また鍵情報を権限管理部22へ共通バス20を介して渡す。
・・・(中略)・・・
【0028】
図2にあってCPU(Central Processing Unit)24は,ハードディスク(HD)26に記憶されているプログラムをメモリ25に取り出して各種の処理を実行する。」

D 「【0045】
次に,ステップS25において,コンテンツサーバ11-AのCPU31は,暗号化したコンテンツデータを伝送するフォーマットを構成するヘッダに,暗号化されているコンテンツを復号するのに必要なコンテンツ鍵(キー)情報と,コンテンツを利用するのに必要なライセンスを識別するためのライセンスIDを付加する。このとき,コンテンツ鍵は,クライアント機器に固有の鍵に基づいて暗号化される。例えば,後述するEKB(有効化キーブロック)から生成される鍵KEKBCを用いて暗号化され,KEKBC(Kc)とされる。そして,ステップS26において,コンテンツサーバ11-AのCPU31は,ステップS24の処理で暗号化したコンテンツと,ステップS25の処理により暗号化コンテンツ鍵とライセンスIDを付加したヘッダとをフォーマット化したデータを,通信部39から,インターネット2を介して,アクセスしてきたクライアント12に送信する。」

E 「【0059】
コンテンツ鍵Kcを得る方法の具体例は,図19を参照して後述するが,デバイスノード鍵(DNK)(図19)を用いて,EKB(図6)に含まれる鍵KEKBCを得ることができ,その鍵KEKBCを用いて,データKEKBC(Kc)(図6)から,コンテンツ鍵Kcを得ることができる。
・・・(中略)・・・
【0062】
クライアント12は,事前にライセンスサーバ11-Bに登録することにより,リーフID,DNK(Device Node Key),クライアント12の秘密鍵・公開鍵のペア,ライセンスサーバの公開鍵,及び各公開鍵の証明書を含むサービスデータを取得しておく。
【0063】
リーフIDは,クライアント毎に割り当てられた識別情報を表し,DNKは,そのライセンスに対応するEKB(有効化キーブロック)に含まれる暗号化されているコンテンツ鍵Kc(データKEKBC(Kc))を復号するのに必要なデバイスノード鍵である(図13を参照して後述する)。」

F 「【0065】
CPU24は,ステップS63,S64において,入力部から入力されたライセンス識別情報を取り込むとともに,ユーザIDとパスワードを取り込む。CPU24は,ステップS65において,I/F21を制御し,入力されたユーザIDとパスワードを,ライセンス指定情報及びサービスデータ(後述する)に含まれるリーフIDを含むライセンス要求をインターネット2を介してライセンスサーバ11-Bに送信させる。」

G 「【0070】
なお,図8のライセンス取得処理は,各ユーザがコンテンツを取得する前に,予め行っておくようにすることも可能である。」

H 「【0073】
次に,図10のフローチャートを参照して,図8のクライアント12のライセンス取得処理に対応して実行されるライセンスサーバ11-Bのライセンス提供処理について説明する。なお,この場合において,図3のコンテンツサーバ11-Aの構成は,ライセンスサーバ11-Bの構成として引用される。
・・・(中略)・・・
【0075】
そして,ライセンスサーバ11-BのCPU31は,ステップS103において,通信部39から課金サーバ11-Cにアクセスし,ユーザIDとパスワードに対応するユーザの与信処理を要求する。課金サーバ11-Cは,インターネット2を介してライセンスサーバ11-Bから与信処理の要求を受けると,そのユーザIDとパスワードに対応するユーザの過去の支払い履歴などを調査し,そのユーザが,過去にライセンスの対価の不払いの実績があるか否かなどを調べ,そのような実績がない場合には,ライセンスの付与を許容する与信結果を送信し,不払いの実績などがある場合には,ライセンス付与の不許可の与信結果を送信する。
【0076】
ステップS104において,ライセンスサーバ11-BのCPU31は,課金サーバ11-Cからの与信結果が,ライセンスを付与することを許容する与信結果であるか否かを判定し,ライセンスの付与が許容されている場合には,ステップS105に進み,ステップS102の処理で取り込まれたライセンス指定情報に対応するライセンスを,記憶部38に記憶されているライセンスの中から取り出す。記憶部38に記憶されているライセンスは,あらかじめライセンスID,バージョン,作成日時,有効期限等の情報が記述されている。ステップS106において,CPU31は,そのライセンスに受信したリーフIDを付加する。さらに,ステップS107において,CPU31は,ステップS105で選択されたライセンスに対応づけられている使用条件を選択する。あるいはまた,ステップS102の処理で,ユーザから使用条件が指定された場合には,その使用条件が必要に応じて,予め用意されている使用条件に付加される。CPU31は,選択された使用条件をライセンスに付加する。
【0077】
ステップS108において,CPU31はライセンスサーバの秘密鍵によりライセンスに署名し,これにより,図9に示されるような構成のライセンスが生成される。」

イ.引用文献2について
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,当審の上記平成26年10月16日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2004-56794号公報(平成16年2月19日公開。以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

I 「【請求項1】
コンテンツをライセンス供与する方法であって,
ライセンス要求を受け取るステップであって,前記ライセンス要求はライセンスの交付を受けるエンティティについての識別証明書を含み,前記識別証明書は前記識別証明書を交付した交付者を示すステップと,
前記識別証明書の前記交付者を信用すると決定するステップと,
前記コンテンツを前記エンティティにライセンス供与するための条件が存在すると決定するステップと,
前記コンテンツを前記エンティティが使用するためのライセンスを生み出すステップと,
前記ライセンスを前記エンティティに送るステップと
を含むことを特徴とする方法。
・・・(中略)・・・
【請求項4】
前記識別証明書は,公開鍵を含み,前記公開鍵に対応する秘密鍵を含むかまたは前記秘密鍵に関連付けられ,ライセンスを生み出す前記ステップは,
前記公開鍵を使用して前記コンテンツのための復号鍵を暗号化して,暗号化済み復号鍵を生成するステップと,
前記暗号化済み復号鍵を前記ライセンスに含めるステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」

ウ.引用文献3について
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,当審の上記平成26年10月16日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2003-333507号公報(平成15年11月21日公開。以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

J 「【0035】番組情報取得後,ユーザは,ユーザインタフェース経由にてライセンス要求の是非を選択し,もし,ラインセンス取得を行う場合には,受信機側にてライセンスサーバに対してライセンス取得情報を送信する。図5は,ライセンス取得情報のデータ構造を示す。ライセンス取得情報データは,ヘッダ,コマンドID,ユーザ認証データ,蓄積装置認証番号,番組IDで構成される。受信機側は,ユーザの認証ID(パスワードも含む),データ蓄積装置の蓄積媒体の識別ナンバー(蓄積媒体自身が持つ製造番号等,蓄積媒体を識別するユニークな番号),番組情報で入手している番組IDを送出する。一方,ライセンスサーバ側は,ライセンス取得要求を受け取ったところでライセンス取得要求応答を返す。このライセンス取得要求応答は,省略してもよい。
【0036】ライセンスサーバは,ライセンス取得要求受け付け後,ライセンス取得要求に基づきライセンスファイルを作成し(ライセンスファイル作成処理),処理完了後,ライセンスファイルを受信機に発行する。図6は,ライセンスファイルのデータ構造を示す。ライセンスファイルは,ヘッダ,コマンドID,番組ID,番組放送時間,必要蓄積容量サイズ,ユーザID,蓄積装置ID,ライセンスID,ライセンスデータ長,ハッシュ演算比較データ,保存データ読み出しフラグで構成される。受信機側は,このライセンスファイル取得により,ライセンス要求したデジタルコンテンツ内のデジタルコピー制御記述子を書き換えることが可能となる。」

K 図5には,「ライセンス情報」が「ヘッダ」,「コマンドID」,「ユーザ認証データ(ユーザID)」,「蓄積装置認証番号(蓄積装置ID)」,及び「番組ID」からなることが記載されている。

エ.引用文献4について
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,当審の上記平成26年10月16日付けの拒絶理由通知において引用された,国際公開第2005/60257号(2005年6月30日公開。以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

L 「 ペイパコンテンツ契約(以下,PPC契約と記述する)とは,指定されたコンテンツ(あるいはコンテンツ群)を1パッケージとして売買の単位とするものである。サブスクリプション契約とは,例えば,テレビジョン放送の有料チャンネルを月単位で契約するように,特定されない複数のコンテンツの利用権を1パッケージとして売買の単位とするものである。
PPC契約に基づいて配信されるコンテンツには,1階層ライセンス方式が適用される。一方,サブスクリプション契約に基づいて配信されるコンテンツには,2階層ライセンス方式が適用される。
・・・(中略)・・・
図4は,2階層ライセンス方式が適用された場合における,コンテンツとライセンスの配信の概要を示している。
コンテンツは,その主要素であるコンテンツリソースファイルが,コンテンツサーバ75によりコンテンツキーKcを用いて暗号化され,ワークキーKwによって暗号化されたサブライセンスとともに,DTV2に供給される。ここで,サブライセンスは,対応するコンテンツの利用に関する条件を示す第2の利用条件と,対応するコンテンツの暗号を復号するためのコンテンツキーKcとから構成される。
暗号化されたサブライセンスを復号するためのワークキーKwは,サブスクリプション契約に1対1に対応付けられているメインライセンスに含まれている。メインライセンスは,コンテンツとは別途,DRMサーバ74からDTV2に供給される。メインライセンスには,ワークキーKwの他,サブスクリプション契約に対応するコンテンツの利用に関する条件を示す第1の利用条件が含まれている。
DTV2では,メインライセンスに含まれるワークキーKwを用いて,暗号化されているサブライセンスが復号され,その結果得られるコンテンツキーKcを用いて,暗号化されているコンテンツが復号され,再生が行われる。なお,2階層ライセンス方式が適用された場合における,コンテンツとライセンスの配信の詳細については,図8を参照して後述する。」(第12頁第10行?第13頁第17行)

オ.引用文献5について
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,当審の上記平成26年10月16日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2005-128960号公報(平成17年5月19日公開。以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

M 「【0079】
続いて,クライアント43のメッセージ処理モジュール61は,署名済みの乱数RS及びサーバ時刻TTを含めたライセンスの取得要求のメッセージ(以下,ライセンス要求メッセージという。)を生成,そのライセンス要求メッセージを通信モジュール32を経由してサーバ42に対して送信する(ステップS31)。」

カ.引用文献6について
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であって,当審の上記平成26年10月16日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2005-20623号公報(平成17年1月20日公開。以下,「引用文献6」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

N 「【0088】
ライセンス要求受信手段33は,ユーザ端末40から,通信送受信手段31を介して,ユーザが視聴/閲覧するコンテンツに対応するライセンスの要求(ライセンス要求)を受信するものである。このライセンス要求受信手段33は,コンテンツ配信サーバ20が生成した署名付き補助情報SMをライセンス要求として受信する。
【0089】
この署名付き補助情報SMには,コンテンツを特定する識別子IDM,コンテンツの暗号化に用いた暗号鍵(共通鍵K)を暗号化した暗号化共通鍵CK,及びコンテンツの識別子IDMと暗号化共通鍵CKとを含んだ補助情報に付加した電子署名SIが含まれている。そして,ライセンス要求受信手段33は,署名付き補助情報SMの各情報を,電子署名検証手段35,共通鍵復号手段36及びライセンス生成手段37へ通知する。
【0090】
検証鍵取得手段34は,コンテンツ配信サーバ20が公開している検証鍵vkpを,通信送受信手段31を介して取得するものである。ここで取得した検証鍵vkpは,電子署名検証手段35に通知される。この検証鍵vkpは,電子署名方式における公開鍵であって,この検証鍵vkpに対応する秘密鍵である署名鍵は,コンテンツ配信サーバ20に保持されている。」

キ.参考文献1について
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2000-113048号公報(平成12年4月21日公開。以下,「参考文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

O 「【0022】次に,コンテンツ表示装置107のコンテンツ蓄積部414内部について詳細に説明する。図8は,コンテンツ蓄積部414に蓄積されているコンテンツファイルを表している。コンテンツ蓄積部414には,M個のコンテンツファイル7001 ?700Mが蓄積されている。それぞれのコンテンツファイル7001 ?700Mは,同様の構成である。例えば,m番目のコンテンツファイル700mは,コンテンツID 701m,P個のライセンスID 702m1?702mP,P個の暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mP,そして,暗号化されたコンテンツデータ704mから成る。コンテンツID 701mはコンテンツファイル700m内のコンテンツの識別子である。それぞれのライセンスID702m1?702mPは,コンテンツファイル700 m内のコンテンツを,コンテンツ提供者102から購入する際に使用したICカードのライセンス情報の識別子である。また,それぞれの暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mPは,ICカードがコンテンツ提供者から取得したユーザ鍵で暗号化されている。たとえば,コンテンツファイル700m内のp番目の暗号化されたコンテンツ鍵703 mpは,ライセンスID 702 mpを持つICカードの内部に保存されているユーザ鍵で暗号化されている。」

P 「【0029】次に,ユーザ鍵取得処理1102の詳細を述べる。ユーザ鍵取得処理1102は,ライセンス管理組織101が発行したライセンス情報をもとに,コンテンツ提供者が発行したユーザ鍵を,安全に,ICカードが取得できる方法であれば,どんな方法を用いてもよい。例えば,図13にその一例を示す。図13は,コンテンツ提供者102とICカード106の暗号通信のフロー図であり,公開鍵暗号方式を用いて,ユーザ鍵を安全に配送している。まず,コンテンツ提供者は,ユーザ鍵を生成する(処理1300)。そして先に取得した,ICカード106の認証公開鍵を用いてユーザ鍵を暗号化し,ICカード106に送信する(処理1301)。ICカード106は,コンテンツ提供者102から,暗号化されたユーザ鍵を受け取ると,自分の認証秘密鍵でそれを復号化する。以上の方法により,コンテンツ提供者102はICカード106にユーザ鍵を安全に送信できる。」

(3) 引用発明の認定
ア.上記Aの「本発明は,クライアント機器に関し,特にネットワークに接続され,同様に前記ネットワークに接続されたサーバ機器からコンテンツデータ及び鍵情報を受信するクライアント機器及びこのクライアント機器におけるコンテンツ処理方法に関する」との記載から,引用文献1には,「クライアントがサーバからコンテンツを受信する方法」が記載されているといえる。

イ.上記Cの「クライアント12は,・・・(中略)・・・図2に示す」及び「図2にあってCPU(Central Processing Unit)24は,・・・(中略)・・・各種の処理を実行する」との記載,上記Eの「リーフIDは,クライアント毎に割り当てられた識別情報を表し」との記載,並びに上記Fの「CPU24は,・・・(中略)・・・入力されたユーザIDとパスワードを,ライセンス指定情報及びサービスデータ(後述する)に含まれるリーフIDを含むライセンス要求をインターネット2を介してライセンスサーバ11-Bに送信させる」との記載から,引用文献1には,「クライアントは,ユーザIDとクライアントごとに割り当てられた識別情報を表すリーフIDを含むライセンス要求を送信する」ことが記載されているといえる。

ウ.上記Bの「クライアント12とインターネット2を介して接続しているサーバ11には,・・・(中略)・・・コンテンツを利用するのに必要なライセンスをクライアント12に対して付与するライセンスサーバ11-B・・・(中略)・・・がある」との記載から,引用文献1には,「クライアントとインターネットを介して接続されたライセンスサーバ」が記載されているといえる。

エ.上記Hの「ライセンスサーバ11-BのCPU31は,・・・(中略)・・・ライセンス指定情報に対応するライセンスを,記憶部38に記憶されているライセンスの中から取り出す。記憶部38に記憶されているライセンスは,・・・(中略)・・・有効期限等の情報が記述されている。」との記載から,引用文献1には,上記「ライセンスサーバ」が「有効期限を含むライセンスを記憶部から取り出す」ことが記載されているといえる。

オ.上記Hの「ライセンスサーバ11-BのCPU31」及び「CPU31は,そのライセンスに受信したリーフIDを付加する」との記載から,引用文献1には,上記「ライセンスサーバ」が「記憶部から取り出したライセンスにライセンス要求に含まれるリーフIDを付加する」ことが記載されているといえる。

カ.上記Hの「ライセンスサーバ11-BのCPU31」及び「CPU31はライセンスサーバの秘密鍵によりライセンスに署名し」との記載から,引用文献1には,上記「ライセンスサーバ」が「ライセンスに署名する」ことが記載されているといえる。

キ.上記Gの「ライセンス取得処理は,各ユーザがコンテンツを取得する前に,予め行っておくようにすることも可能である」との記載,及びHの「クライアント12のライセンス取得処理に対応して実行されるライセンスサーバ11-Bのライセンス提供処理について説明する」との記載から,引用文献1には,上記エないしカの一連の処理からなる「ライセンス取得処理を,コンテンツを取得する前にあらかじめ行っておく」ことが記載されているといえる。

ク.上記Dの「コンテンツ鍵は,クライアント機器に固有の鍵に基づいて暗号化される」,及びEの「クライアント12は,事前にライセンスサーバ11-Bに登録することにより,リーフID,DNK(Device Node Key),クライアント12の秘密鍵・公開鍵のペア,ライセンスサーバの公開鍵,及び各公開鍵の証明書を含むサービスデータを取得しておく。・・・(中略)・・・DNKは,そのライセンスに対応するEKB(有効化キーブロック)に含まれる暗号化されているコンテンツ鍵Kc(データKEKBC(Kc))を復号するのに必要なデバイスノード鍵である」との記載から,引用文献1には,「コンテンツ鍵を得るために用いるデバイスノード鍵を,クライアントをライセンスサーバに登録することで取得しておく」ことが記載されているといえる

ケ.上記ア.ないしク.に示したことから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「クライアントがサーバからコンテンツを受信する方法であって,
クライアントは,
ユーザIDとクライアントごとに割り当てられた識別情報を表すリーフIDを含むライセンス要求を送信し,
クライアントとインターネットを介して接続されたライセンスサーバは,
有効期限を含むライセンスを記憶部から取り出し,
記憶部から取り出したライセンスに,ライセンス要求に含まれるリーフIDを付加し,
ライセンスに署名する,
ことからなるライセンス取得処理を,
コンテンツを取得する前にあらかじめ行っておくことを含み
コンテンツ鍵を得るために用いるデバイスノード鍵を,クライアントをライセンスサーバに登録することで取得しておく,
方法。」

(4) 対比
ア.本件補正発明と引用発明を対比する。

(ア) 引用発明において「クライアントは,クライアントごとに割り当てられた識別情報を表すリーフIDを含むライセンス要求を送信」するためには,まず当該「ライセンス要求」をクライアントが生成する必要があることは,当業者にとって自明であるので,引用発明の当該「ライセンス要求」を送信する構成は,当該「ライセンス要求」を生成する構成を実質的に備えているといえる。さらに,引用発明の「クライアント」は,本件補正発明の「第1のコンピュータ」に対応するものであり,引用発明の「クライアントごとに割り当てられた識別情報を表すリーフID」がクライアントを識別するための情報であることは,当業者にとって自明である。してみれば,引用発明の「クライアントは,ユーザIDとクライアントごとに割り当てられた識別情報を表すリーフIDを含むライセンス要求を送信」することと,本件補正発明の「第1のコンピュータにおいて,該第1のコンピュータを識別するためのライセンス要求であって,ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求を生成」することは,「第1のコンピュータにおいて,ユーザIDと該第1のコンピュータを識別するための情報を含むライセンス要求を生成」する点で共通する。

(イ) 引用発明の「ライセンスサーバ」は,本件補正発明の「第2のコンピュータ」に対応するものであるから,引用発明の「クライアントとインターネットを介して接続されたライセンスサーバ」は,本件補正発明の「前記第1のコンピュータとネットワークを介して接続された第2のコンピュータ」に相当する。

(ウ) 本件補正発明の「ユーザの現在加入の満了日」は,上位概念でみれば「有効期限」であるといえることは,当業者にとって自明であるから,本件補正発明の「ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子」と,引用発明の「有効期限を含むライセンス」はともに,「有効期限」を示すものであるといえる。
さらに,引用発明において,ライセンスを記憶部から取り出すためには,あらかじめライセンスを生成して記憶部に格納しておく必要があることは,当業者にとって自明であるから,引用発明は,ライセンスを生成することを含んでいるといえる。
してみれば,引用発明の「ライセンスサーバ」は「有効期限を含むライセンスを記憶部から取り出」すことと,本件補正発明の「ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成」することは,「有効期限を示すライセンスを生成」することを含む点で共通する。

(エ) 引用発明は,クライアントがサーバからコンテンツを受信する方法であるので,引用発明に含まれる技術事項は,クライアントがサーバからコンテンツを獲得するためのものであるといえる。
また,引用発明において,クライアントごとに割り当てられた識別情報を表す「リーフID」を「ライセンス」に付加することで,付加された「ライセンス」が各クライアントのための,各クライアントに固有の「ライセンス」となることは,当業者にとって自明である。
してみれば,引用発明の「ライセンスサーバ」が「記憶部から取り出したライセンスにライセンス要求に含まれるリーフIDを付加」することと,本件補正発明の「前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ」ることは,「前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,少なくともライセンス要求に含まれる情報と生成されたライセンスを組み合わせ」ることを含む点で共通する。

(オ) 引用発明の「署名」が「デジタル署名」であることと,引用発明において「ライセンスに署名する」ことが,クライアントに送信するデバイス・ライセンスを形成するためにサーバで行うことであることは,当業者にとって自明である。
よって,引用発明の「ライセンスサーバ」が「ライセンスに署名する」ことは,本件補正発明の「前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名する」ことに相当する。

(カ) 本願において「初期化」とは,明細書等において明示的に定義された用語ではないが,「デバイスの初期化」について記載された本願明細書の段落【0092】?【0115】の記載を参酌すると,前記「初期化」とは,本願の図12bに記載されるような,コンテンツの獲得に先立って,ライセンスを取得することを意味しているといえる。してみれば,引用発明の「ライセンス取得処理を,コンテンツを取得する前にあらかじめ行っておく方法」は,本件補正発明の「デバイス初期化方法」に相当する。

イ.以上のことから,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「第1のコンピュータにおいて,ユーザIDと該第1のコンピュータを識別するための情報を含むライセンス要求を生成し,
前記第1のコンピュータとネットワークを介して接続された第2のコンピュータにおいて,有効期限を示すライセンスを生成し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,少なくともライセンス要求に含まれる情報と生成されたライセンスを組み合わせ,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含むデバイス初期化方法。」

[相違点1]
本件補正発明は,「ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求」を生成するのに対して,引用発明においては,「ライセンス要求」に「ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書」を含むこと,及び「ライセンス要求」が「第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名」されることに言及されていない点。

[相違点2]
本件補正発明は,「ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子」を生成するのに対して,引用発明は,「有効期限を含むライセンス」をあらかじめ生成しておく点。

[相違点3]
本件補正発明は,デバイス・ライセンスを形成するために,「前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ」るのに対して,引用発明は,「ライセンス要求に含まれるリーフIDと生成されたライセンスを組み合わせ」る点。

[相違点4]
本件補正発明においては,「前記デバイス・ライセンスは,前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書,及び,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる」のに対して,引用発明の「ライセンス」は,そのような構成でない点。

(5) 判断
ア.相違点1について
(ア) 上記Iの「前記ライセンス要求はライセンスの交付を受けるエンティティについての識別証明書を含み」及び「前記識別証明書は,公開鍵を含み」との記載から,引用文献2には,「公開鍵」を含むエンティティの「識別証明書」を,「ライセンス要求」に含めることが記載されているといえるし,当該記載における「識別証明書」は,ライセンスを要求しているエンティティの信頼性を証明するものであるといえる。
一方,引用発明の「リーフID」は,ライセンスを要求している主体が何であるかを単に確認できる情報であるといえる。
そして,セキュリティをより強固にすることは,情報セキュリティの技術分野において,当業者が当然に考慮することであるから,引用発明において,「ライセンス要求」を行う主体が何であるかを単に確認できる情報である「リーフID」に代えて,ライセンスを要求している主体の信頼性を証明する「識別証明書」を用いる構成とすることは,当業者が適宜採用する程度のことである。

(イ) 引用文献5(上記M参照)の「クライアント43のメッセージ処理モジュール61は,署名済みの乱数RS及びサーバ時刻TTを含めたライセンスの取得要求のメッセージ(以下,ライセンス要求メッセージという。)を生成,そのライセンス要求メッセージを通信モジュール32を経由してサーバ42に対して送信する」との記載にみられるように,ライセンス要求に乱数を含めることは,周知技術といえる。そして,当該周知技術を単に引用発明に適用して,ライセンス要求に乱数を含めることは,格別の効果を奏することではないから,当業者が適宜選択し得る程度のことであるといえる。

(ウ) 引用文献5(上記M参照)の「クライアント43のメッセージ処理モジュール61は,署名済みの乱数RS及びサーバ時刻TTを含めたライセンスの取得要求のメッセージ(以下,ライセンス要求メッセージという。)を生成,そのライセンス要求メッセージを通信モジュール32を経由してサーバ42に対して送信する」との記載,並びに引用文献6(上記N参照)の「コンテンツ配信サーバ20が生成した署名付き補助情報SMをライセンス要求として受信する」,「この署名付き補助情報SMには,コンテンツを特定する識別子IDM,コンテンツの暗号化に用いた暗号鍵(共通鍵K)を暗号化した暗号化共通鍵CK,及びコンテンツの識別子IDMと暗号化共通鍵CKとを含んだ補助情報に付加した電子署名SIが含まれている」,及び「検証鍵取得手段34は,コンテンツ配信サーバ20が公開している検証鍵vkpを,通信送受信手段31を介して取得するものである。・・・(中略)・・・この検証鍵vkpは,電子署名方式における公開鍵であって,この検証鍵vkpに対応する秘密鍵である署名鍵は,コンテンツ配信サーバ20に保持されている」との記載にみられるように,ライセンス要求に秘密鍵で署名を行うことは,情報セキュリティの技術分野における周知技術であって,当業者が通常行うことであるといえる。
してみると,引用発明に当該周知技術を適用して,「ライセンス要求」に秘密鍵で署名を行うことは,当業者が適宜なし得ることである。

(エ) 上記(ア)ないし(ウ)に示したことから,引用発明において,「ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名されたライセンス要求」を生成する構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

イ.相違点2について
(ア) ユーザがそのシステムに加入することで,サーバからユーザが備えるクライアントにコンテンツが提供されるシステムにおいて,ユーザの現行加入に有効期限,すなわち満了日が設けられることは,以前から当業者が普通に採用している常とう手段である。
そして,引用発明において,「有効期限を含むライセンス」は,ユーザIDとパスワードに対応するユーザの与信結果に応じて取り出されるものであり,該与信結果は,そのユーザIDとパスワードに対応するユーザが過去にライセンスの対価の不払の実績があるか否かなどに応じてライセンス付与の可否を判断したものであって,ユーザIDとパスワードに対応付けられた情報が,ユーザの加入に関する情報であることは,当業者にとって自明であるから,「有効期限を含むライセンス」は,ユーザの加入に関する情報の一部であるといえる。
してみれば,引用発明の,ユーザの加入に関する情報の一部である「有効期限を含むライセンス」に,ユーザの加入に関する有効期限という態様が含まれる程度のことは,当業者にとって自明である。
したがって,引用発明に対して上記常とう手段を適用して,ユーザの加入に関する「有効期限」をユーザの「現行加入の満了日」とすることは,当業者が容易になし得る設計変更にすぎない。

(イ) 引用発明において,記憶部に格納されるライセンスを生成するタイミングを,クライアントがライセンス要求を生成する前後のいずれにしたとしても,効果に格別の相違がないことは,当業者にとって明らかであるから,引用発明において,記憶部に格納されるライセンスを生成するタイミングを,クライアントがライセンス要求を生成した後とすることは,当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。

(ウ) 引用発明の有効期限を含む「ライセンス」が有効期限を識別可能な識別子であることは,当業者にとって自明であるから,引用発明の「ライセンス」を,「時間切れ識別子」と呼ぶことは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(エ) 上記(ア)ないし(ウ)に示したことから,引用発明の「ユーザの加入に関する情報の一部である有効期限を含むライセンス」を,請求項1に係る発明の「加入のためのユーザに関する加入情報の一部である,該ユーザの現行加入の満了日を示す時間切れ識別子」とすることは,当業者が容易になし得ることである。

ウ.相違点3について
(ア) 上記Kの記載事項における,「ユーザ認証データ(ユーザID)」との記載からは,「ユーザ認証データ」と「ユーザID」が同一のものを指していることが読み取れ,「蓄積装置認証番号(蓄積装置ID)」との記載からは,「蓄積装置認証番号」と「蓄積装置ID」が同一のものを指していることが読み取れる。
してみれば,引用文献3には,上記J及びKの記載事項にみられるように,「ライセンス取得情報」,すなわちライセンス要求が,「ヘッダ」及び「コマンドID」に加えて,「ユーザID」,「蓄積装置ID」,及び「番組ID」からなるものであり,「ライセンスファイル」が,「ヘッダ」及び「コマンドID」に加えて,「ユーザID」,「蓄積装置ID」,及び「番組ID」を含むものであること,すなわち,ライセンス要求を構成する情報をすべて「ライセンスファイル」に格納することが記載されているといえる。

(イ) 引用発明は,ライセンス要求に含まれるリーフIDと生成されたライセンスを組み合わせる構成である。してみれば,ライセンス要求を構成する情報の全てを「ライセンスファイル」に格納する引用文献3に記載された発明と,引用発明は,少なくともライセンス要求に含まれる情報をライセンスに格納させる点で共通する。
そして,ライセンス要求を構成する情報の全てをライセンスに格納することは,格別の効果を奏することではないから,引用発明において,引用文献3に記載された構成を採用して,ライセンス要求を構成する情報の全てをライセンスと組み合わせることは,当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)に示したことから,引用発明の「ライセンス要求に含まれるリーフIDと生成されたライセンスを組み合わせ」る構成を,請求項1に係る発明の「前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ」る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

エ.相違点4について
(ア) 上記ア.に示したように,引用発明において,「ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書」を含む「ライセンス要求」を生成する構成とすること,すなわち相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることであり,上記ウ.に示したように,引用発明において,「前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ」てライセンスを形成すること,すなわち相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。
そして,引用発明において,相違点1に係る構成及び相違点3に係る構成とすると,「ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書」を含む「ライセンス要求」と「時間切れ識別子を組み合わせ」てライセンスを形成する構成となるのであるから,ライセンスは,結果として,「ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書」を含む構成となることが自明である。
してみると,ライセンスが,「前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書」を含む構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるといえる。

(イ)
a.上記Lの「コンテンツは,その主要素であるコンテンツリソースファイルが,コンテンツサーバ75によりコンテンツキーKcを用いて暗号化され,ワークキーKwによって暗号化されたサブライセンスとともに,DTV2に供給される。ここで,サブライセンスは,対応するコンテンツの利用に関する条件を示す第2の利用条件と,対応するコンテンツの暗号を復号するためのコンテンツキーKcとから構成される。暗号化されたサブライセンスを復号するためのワークキーKwは,サブスクリプション契約に1対1に対応付けられているメインライセンスに含まれている。メインライセンスは,コンテンツとは別途,DRMサーバ74からDTV2に供給される。」との記載から,引用文献4には,「コンテンツ」が「コンテンツキーKc」を用いて暗号化され,「コンテンツキーKc」は「ワークキーKw」によって暗号化されると共に「コンテンツ」と結合され,「ワークキーKw」は「サブスクリプション契約に1対1に対応付けられているメインライセンス」に含まれた構成が記載されているといえる。
さらに,「サブスクリプション契約」がユーザに対応付けられるものであることは自明であるから,「サブスクリプション契約に1対1に対応付けられているメインライセンス」に含まれた「ワークキーKw」は,ユーザに対応付けられた暗号鍵,すなわち「ユーザ暗号化キー」といえるものである。
そして,引用発明と引用文献4に記載された発明は,コンテンツ鍵を得るために用いる鍵を,コンテンツの取得前にあらかじめ取得しておく点で共通であって,コンテンツ鍵を得るために用いる鍵をライセンスを取得する際に取得することは,クライアントを登録する際に取得する場合と比較して格別の効果を奏することではない。してみれば,引用発明において,引用文献4に記載された構成を適用して,「ユーザ暗号化キー」を「デバイス・ライセンス」に含めて取得する構成とすることは,当業者が容易に想到することである。

b.参考文献1(上記O参照)の「それぞれの暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mPは,ICカードがコンテンツ提供者から取得したユーザ鍵で暗号化されている」との記載,及び参考文献1(上記P参照)の「ICカード106の認証公開鍵を用いてユーザ鍵を暗号化し,ICカード106に送信する(処理1301)」との記載から,コンテンツ鍵をユーザ鍵で暗号化し,当該ユーザ鍵を公開鍵で暗号化して送信することは,情報セキュリティの技術分野における慣用技術であるといえる。
してみれば,引用発明において,「ユーザ暗号化キー」を「デバイス・ライセンス」に含めて取得する構成とする際に,「ユーザ暗号化キー」が「デバイス公開キー」で暗号化されたものとすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。

c. 上記a.及びb.において示したことから,引用発明の「コンテンツ鍵を得るために用いるデバイスノード鍵を,クライアントをライセンスサーバに登録することで取得しておく」という構成を,「前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる」という構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)において示したことから,引用発明において,「前記デバイス・ライセンスは,前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書,及び,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含み,前記ユーザ暗号化キーは,媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる」構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

オ.上記で検討したごとく,各相違点はいずれも格別なものではなく,また,各相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術事項,引用文献5ないし6にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.補正却下の決定についてのむすび
上記3.に示したとおり,補正後の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成27年3月4日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成26年9月4日付け手続補正書の請求の範囲の請求項1?請求項8に記載された事項により特定されるものである。そして,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,補正前の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(再掲する。)

「 第1のコンピュータにおいて,該第1のコンピュータを識別するためのデバイス公開キーを含むライセンス要求を生成し,
前記第1のコンピュータとネットワークを介して接続された第2のコンピュータにおいて,ユーザの現在加入の満了日を示す時間切れ識別子を生成し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータによって前記第2のコンピュータからメディアコンテンツを獲得するためのデバイス・ライセンスを形成するために,前記ライセンス要求と前記時間切れ識別子を組み合わせ,
前記第2のコンピュータにおいて,前記第1のコンピュータに提供するための署名済みデバイス・ライセンスを形成するために,前記デバイス・ライセンスにデジタル署名することを含み,
前記デバイス・ライセンスは,前記デバイス公開キーで暗号化されたユーザ暗号化キーを含む,
デバイス初期化方法。」

2 先行技術文献の記載事項
当審の上記平成26年10月16日付け拒絶理由通知で引用された引用文献1ないし6,及び各文献の記載事項は,上記「第2.平成27年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記「第2.平成27年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(1)に記載した本件補正発明から,「ライセンス要求」との特定事項における,「ユーザID,ランダム数,及び,デバイス公開キーを含む前記第1のコンピュータのデバイス・デジタル証明書を含み,前記第1のコンピュータによりデバイス秘密キーで署名された」との限定事項と,「デバイス・ライセンス」との特定事項における,「前記第1のコンピュータから送信された前記ライセンス要求に含まれる前記ユーザID,前記ランダム数,前記デバイス・デジタル証明書・・・を含み」との限定事項と,「ユーザ暗号化キー」との特定事項における,「媒体データ・ファイルに結合されたコンテンツ暗号化キーを暗号化するのに用いられる」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の事項を附加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2.平成27年3月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(3)ないし(5)に記載したとおり,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術事項,引用文献5ないし6にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術事項,引用文献5ないし6にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-30 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2008-534620(P2008-534620)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (G06F)
P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
小林 大介
発明の名称 デバイス初期化のための方法及びプログラム  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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