• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1304951
審判番号 不服2013-15811  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-15 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2008-544326「デジタル映画プレゼンテーション用の鍵配布方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月14日国際公開,WO2007/067235,平成21年 5月 7日国内公表,特表2009-518949〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2006年9月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月5日(以下,「優先日」という),米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成20年 6月 4日 :国内書面の提出
平成21年 9月 1日 :出願審査請求書の提出
平成24年 1月17日付け :拒絶理由の通知
平成24年 4月23日 :意見書,手続補正書の提出
平成24年 7月20日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成24年10月30日 :意見書,手続補正書の提出
平成25年 4月 9日付け :拒絶査定
平成25年 8月15日 :審判請求書の提出


第2 本願発明

本願の請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,上記平成24年10月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 デジタル映画プレゼンテーション施設での鍵配布方法であって,
前記デジタル映画プレゼンテーション施設の映画館管理システムにおいて,デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を有する少なくとも1つの鍵配布メッセージを受領するステップと,
前記映画館管理システムにおいて,前記プレゼンテーションを復号化する鍵に関連する有効期間内に前記デジタル映画プレゼンテーションがスケジュールされた上映時間を有するか否かを決定するステップと,
そうである場合,前記プレゼンテーション施設内で前記鍵配布メッセージを前記映画館管理システムからセキュアメディアブロックにルーティングし,前記デジタル映画プレゼンテーション施設内での予め選択されたスクリーンで前記デジタル映画プレゼンテーションの前記セキュアメディアブロックによるプレゼンテーションを可能にするステップと
を有する方法。」


第3 引用例

1 引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

(1) 本願優先日前に頒布され,上記平成24年7月20日付け拒絶理由通知(最後)において引用された,特開平11-27647号公報(平成11年1月29日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0021】
【発明の実施の形態】以下,本発明にかかる映像信号受信再生装置の実施形態について,図を用いて説明する。
【0022】(実施の形態1)図1は実施形態1にかかる映像信号受信再生装置のブロツク図である。図1において,1は映像信号受信再生装置,2は受信器,3はゲートウェイ,4はサーバ,5はルーティング装置,6はモデム,7は暗号解読器,8はデコーダ,9はタイマ,10はコントローラ,11はディジタルプロジェクタを示す。
【0023】以上のように構成された映像信号受信再生装置について,以下,その動作を述べる。
【0024】まず送信局(図示せず)から暗号化された映画データが配信される。受信局において,受信器2によって映画データが受信され,ゲートウェイ3により,自分自身宛ての信号であるか否かが判別される。例えば,送信パケットのヘッダ部分に「劇場A」等のIDやデータの内容(タイトル,有効期間,サイズなど)が埋め込まれているものとし,ゲートウェイ3が前記ヘッダを解析して受信データの取捨選択を行う。自分自身宛ての信号であると判断されたデータはサーバ4に暗号化されたまま記録される。映画上映の際には必要に応じてルーティング装置5がサーバ4から上映しようとする映画番組を選択して映像信号受信再生装置1に対して出力する。」

B 「【0025】映像信号受信再生装置1に入力されたデータは暗号解読器7に入力される。暗号解読器7は,モデム6を介して送信局と通信し,送信局との間で自局が正規な受信局であることを認証確認した後,上映しようとする映画データの復号鍵を得るための復号鍵情報を入手する。モデム6を介した送信局との通信は電話回線などの有線通信手段でよい。暗号解読器7は,前記送信局から得られた復号鍵情報と暗号解読器7中に記憶されている固有のID情報とから復号鍵を生成し,生成した復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダ8に出力する。この際,タイマ9により与えられる時刻情報と,映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較し,有効期限が切れている場合には復号データを出力しない。
【0026】暗号解読器7から出力された暗号が解除された映画データはデコーダ8に入力され,映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタ11に入力されて上映される。ディジタルプロジェクタ11は光学的にデータを出力する直前までディジタルデータのままで処理されるので,アナログ出力として傍受しにくい利点を有している。」
(当審注:引用例1の段落【0025】における「上映しようとする映画データを復号鍵」は「上映しようとする映画データの復号鍵」の誤記と認められるので、上記Bにおいては、「上映しようとする映画データの復号鍵」に正して記載した。)

(2) ここで,上記引用例1に記載されている事項を検討する。

ア 上記Aの「図1は実施形態1にかかる映像信号受信再生装置のブロツク図である。図1において,1は映像信号受信再生装置,2は受信器,3はゲートウェイ,4はサーバ,5はルーティング装置,6はモデム,7は暗号解読器,8はデコーダ,9はタイマ,10はコントローラ,11はディジタルプロジェクタを示す。」,「受信局において,受信器2によって映画データが受信され,ゲートウェイ3により,自分自身宛ての信号であるか否かが判別される。 …(中略)… 映画上映の際には必要に応じてルーティング装置5がサーバ4から上映しようとする映画番組を選択して映像信号受信再生装置1に対して出力する。」との記載からすると,「映像信号受信再生装置」は「受信局」に設置されていることが読み取れる。
また,上記Bの「映像信号受信再生装置1に入力されたデータは暗号解読器7に入力される。暗号解読器7は,モデム6を介して送信局と通信し,送信局との間で自局が正規な受信局であることを認証確認した後,上映しようとする映画データの復号鍵を得るための復号鍵情報を入手する。」との記載からすると,「受信局」に設置された「映像信号受信再生装置」において,映画上映のために「復号鍵情報」を入手し,「復号鍵」を利用していることは明らかであるから,引用例1には,
“受信局で復号鍵を利用する方法”
が記載されていると解される。

イ 上記Aの「映画上映の際には必要に応じてルーティング装置5がサーバ4から上映しようとする映画番組を選択して映像信号受信再生装置1に対して出力する。」との記載,上記Bの「映像信号受信再生装置1に入力されたデータは暗号解読器7に入力される。暗号解読器7は,モデム6を介して送信局と通信し,送信局との間で自局が正規な受信局であることを認証確認した後,上映しようとする映画データの復号鍵を得るための復号鍵情報を入手する。」との記載からすると,映画上映の際に,上映しようとする「映画データ」が「映像信号受信再生装置」に出力されると共に,「映像信号受信再生装置」における「暗号解読器」が「送信局」から「上映しようとする映画データの復号鍵を得るための復号鍵情報」を受信することが読み取れることから,引用例1には,
“受信局の映像信号受信再生装置において,映画上映の際に,暗号解読器がモデムを介して送信局から,上映しようとする映画データの復号鍵を得るための復号鍵情報を受信するステップ”
が記載されていると解される。

ウ 上記Bの「暗号解読器7は,前記送信局から得られた復号鍵情報と暗号解読器7中に記憶されている固有のID情報とから復号鍵を生成し,生成した復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダ8に出力する。」との記載からすると,「映画データ」の暗号を解除するに当たり,「復号鍵情報」と「固有のID情報」とから「復号鍵」を生成するステップが読み取れることから,引用例1には,
“暗号解読器が,送信局から得られた復号鍵情報と前記暗号解読器中に記憶されている固有のID情報とから復号鍵を生成するステップ”
が記載されていると解される。

エ 上記Bの「暗号解読器7は,前記送信局から得られた復号鍵情報と暗号解読器7中に記憶されている固有のID情報とから復号鍵を生成し,生成した復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダ8に出力する。この際,タイマ9により与えられる時刻情報と,映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較し,有効期限が切れている場合には復号データを出力しない。」との記載からすると,「映画データ」および「復号鍵情報」の「有効期限」を確認するために,「タイマ9により与えられる時刻情報と,映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較」するステップが読み取れ,そのステップの契機は「暗号解読器」が生成した「復号鍵」を使って暗号を解除して「映画データ」を「デコーダ」に出力しようとする時であることは明らかである。
また,上記Bの「有効期限が切れている場合には復号データを出力しない。」との記載からすると,「タイマ9により与えられる時刻情報と,映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較」の結果,「有効期限」が切れている場合には「復号データ」を「デコーダ」に出力しないステップを実行することが読み取れることから,引用例1には,
“暗号解読器が,生成した復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報と,前記映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較するステップと,
比較の結果,有効期限が切れている場合には復号データをデコーダに出力しないステップ”
が記載されていると解される。

オ 上記Bの「この際,タイマ9により与えられる時刻情報と,映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較し,有効期限が切れている場合には復号データを出力しない。」との記載からすると,「タイマ9により与えられる時刻情報と,映画データのヘッダ部分および復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較」の結果,「有効期限」が切れていない場合には「復号データ」を「デコーダ」に出力すると言える。
また,上記Bの「暗号解読器7から出力された暗号が解除された映画データはデコーダ8に入力され,映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタ11に入力されて上映される。」との記載からすると,「暗号解読器」は「暗号が解除された映画データ」,すなわち「復号データ」を「デコーダ」に出力し,「映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタ11に入力されて上映される」ステップが読み取れることから,引用例1には,
“比較の結果,有効期限が切れていない場合には復号データをデコーダに出力し,映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタに入力されて上映されるステップ”
が記載されていると解される。

(3) 以上,ア乃至オの検討によれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「 受信局で復号鍵を利用する方法であって,
前記受信局の映像信号受信再生装置において,映画上映の際に,暗号解読器がモデムを介して送信局から,上映しようとする映画データの前記復号鍵を得るための復号鍵情報を受信するステップと,
前記暗号解読器が,前記送信局から得られた前記復号鍵情報と前記暗号解読器中に記憶されている固有のID情報とから前記復号鍵を生成するステップと,
前記暗号解読器が,生成した前記復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報と,前記映画データのヘッダ部分および前記復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較するステップと,
比較の結果,有効期限が切れている場合には復号データをデコーダに出力しないステップと,
比較の結果,有効期限が切れていない場合には復号データをデコーダに出力し,映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタに入力されて上映されるステップと
を有する方法。」

2 引用例2に記載されている技術的事項

本願優先日前に頒布され,上記平成24年7月20日付け拒絶理由通知(最後)において引用された,特開平9-91344号公報(平成9年4月4日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

C 「【0025】パソコン6内においてナビゲータ10が実行されると,ナビゲータ10は,コンテンツ復号部9を生成する。そして,ナビゲータ10は,ユーザ5からの入力に応じて,CD-ROM11内の試用版コンテンツの試用を可能とするとともに,CD-ROM11内の本物コンテンツの一覧をユーザ5に示し,何れかのコンテンツに対するユーザ5からの購入希望を受け付ける。 …(中略)… この購入伝票の送付に応じてセンタ1が暗号化されたコンテンツ鍵(暗号化されたコンテンツを復調するための鍵,「購入番号」という)を送信してくると,ナビゲータ10は,マシンIDによってコンテンツ鍵を復号して,コンテンツ復号部9に渡す。コンテンツ復号部(復号化手段及びインストール手段に対応)9は,ユーザ5が購入希望しているコンテンツ(暗号化されたコンテンツ)をCD-ROM11から読み出して,コンテンツ鍵を用いて復号化し,復号化されたコンテンツをハードディスク(ディスク装置)12にインストールする。
…(中略)…
【0026】図3に示すように,ナビゲータ10は,CD-ROM(コンテンツ)有効期限判断部13,アクセス番号生成部14,購入伝票送信部15,購入番号・期限分離部16,マシン日付生成部17,比較チェック部18,コンテンツ鍵取り出し部19,及び有効期限外エラー処理20から構成されている。」

D 「【0038】パソコン6側に戻り,通信プログラム21を介して受信された購入番号と「期限日時」との組は,購入番号・期限日分離部16に入力され,エラーメッセージは,有効期限外エラー処理部20に入力される。
【0039】購入番号・期限日分離部16は,受信した購入番号と「期限日時」との組を,購入番号と「期限日時」とに夫々分離する。そして,購入番号をコンテンツ鍵取り出部19に入力するとともに,「期限日時」を比較チェック部18に入力する。
【0040】比較チェック部(第2の比較手段,比較手段に対応)18は,購入番号に付されていた「期限日時」をマシン日付け生成部17から入力されたマシン日付と比較し,マシン日付が「期限日時」を過ぎているか否かをチェックする。そして,マシン日付が既に「期限日時」を過ぎていた場合には,有効期限外メッセージを有効期限外エラー処理部20に通知する。また,マシン日付が未だ「期限日時」を過ぎていない場合には,コンテンツ鍵取出部19を起動する。
【0041】有効期限外エラー処理部20は,CD-ROM(コンテンツ)有効期限判断部13又は比較チェック部18から有効期限外メッセージが通知された時,及び通信プログラム21から直接エラーメッセージを受信した時に,パソコン6に接続された図示せぬディスプレイ装置上に,CD-ROM又はユーザ5が選択したコンテンツの有効期限が過ぎてしまっていてコンテンツ購入をすることができない旨を表示する。
【0042】コンテンツ鍵取り出し部19は,受信した購入番号をマシンIDで復号して,コンテンツ鍵を取り出す。このコンテンツ鍵は,コンテンツ復号部9に入力されて,上述したように,CD-ROM11から読み出されたコンテンツを復号するのに用いられる。
<購入手順>次に,コンテンツを購入するためにパソコン6内及びセンタ1内で実行される処理の内容を説明する。」

3 引用例3に記載されている技術的事項

本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,上記平成24年7月20日付け拒絶理由通知(最後)において引用された,
“Digital Cinema System Specification”,[online],Digital Cinema Initiatives, LLC,2005年7月20日,V1.0,pp. 146-153,[2012年1月16日検索],インターネット<URL: http://www.dcimovies.com/archives/spec_v1/DCI_Digital_Cinema_System_Spec_v1.pdf>,
以下,「引用例3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「9.8.3 Key Delivery Message (KDM)
The KDM provides the mechanism by which content keys, key usage permission time window (parameters) and optional TDL are exchanged between an issuer and a recipient (see Figure 27 below). The model supports a tiered process, whereby a Rights Owner may provide Key Delivery Message(s) (KDMs) to a Distributor, which subsequently creates Key Delivery Message(s) (KDMs) for multiple Exhibitors. Individual Key Delivery Message(s) (KDMs) are essentially entitlement messages that provide permissions and necessary information for a particular theater to play the content during the specified time window.」(146頁下から14行?同頁下から7行)
当審訳;「9.8.3 鍵配送メッセージ(KDM)
KDMは,コンテンツ鍵,鍵使用許可時間帯(パラメータ)とオプションのTDLが発行者と受信者(以下の図27を参照)との間で交換されるメカニズムを提供します。そのモデルは,その後,複数の上映者のための鍵配送メッセージ(KDMs)を作成する配給者へ権利所有者が鍵配送メッセージ(KDMs)を提供できるようにすることで,段階的プロセスをサポートします。個々の鍵配送メッセージ(KDMs)は,本質的には,指定された時間帯にコンテンツを再生する特定の映画館のための権限と必要な情報を提供する権利付与メッセージです。」

4 引用例4に記載されている技術的事項

本願優先日前に頒布され,上記平成24年7月20日付け拒絶理由通知(最後)において引用された,特開2004-222245号公報(平成16年8月5日出願公開,以下,「引用例4」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0020】
シネマ動作システムのユーザインターフェース24は,映画館管理者及び/又は主任投映者若しくは他の指定された人によって,投映ブースや状況によってはLAN22に接続可能な如何なる場所のような,通常それらのオフィス若しくは作業場の環境内で,動作されるように設計される。シネマ動作システムのコアには,本実施例では,
・コンテンツ管理機能38
・上映リスト管理機能40
・計画化機能42,及び,
・上演/再生監視機能44
の4つの機能を含む機能インターフェース要素28がある。
…(中略)…
【0021】
コンテンツのその他のキーとなる使用は,上映リストの生成のためである。上映リストは,コンテンツ管理サーバー10から利用可能な一若しくはそれ以上のコンテンツファイルの順番付けられた収集であり,特定時間で特定上映室に計画化されるコンテンツパッケージを表わす。完全なデジタル環境では,上映リストは,メインの映画フィルムにローリング広告及びトレイラーを継ぎ合わせることによって,投映者が上演のために用意するフィルムの最終リールに例えられる。デジタルとフィルムの混合された環境では,上映リストは,メイン映画フィルムに先行するよう,若しくは,例えばデジタル化スライドショートしてメイン映画フィルム間に単に流されるよう計画化されたローリング広告及びおそらくはトレイラーを含む継ぎ合わせフィルム要素に例えられる。上映リスト管理機能40の下では,映画館管理者は,上映リストを生成,編集及び消去することができる。上映リストは,それらのコアにコンテンツを有し,特定の寿命を有し,その後,除去される。従って,各上映リストは,上映室30のプロジェクタを介して,若しくは,例えば映画館内の,ディスプレイ16上で,今後に投映されるデジタルエンティティを表わす。
【0022】
上映リストが生成されると,映画館管理者若しくは他の指定人は,要求される上映リストがいつどこで上映されるかを計画化する必要がある。これは,計画化機能42で行われる。上演されるべき上映リストに対するスケジュールは,映画館管理システム36にも結び付けられ,特に映画館発券システムに結び付けられ,また,新聞に上映時間及び他のソースを,計画化された上映よりも前に提供する。好ましい実施例によるシネマ動作システムでは,計画化の機能は,各上映リストが上映されることになる上映室及び開始時間をシステムにプログラム化することである。計画化された時間が到来した時,シネマ動作システムは,デジタル上映リスト内に表現されたコンテンツの開始及び再生を制御する。最後に,監視機能44は,上映リスト再生の現在状態を見るための手段を映画館管理者若しくは投映者に提供する。モニタユーザインターフェースは,現時間にセットされた計画化ユーザインターフェースに類似し,そこでは,映画館管理者は,種々の上映室での再生の全体状態を,シネマ動作システムに接続される種々のディスプレイ上で見ることができる。」


第4 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「受信局」は,引用例1の上記Aの「受信局において,受信器2によって映画データが受信され,ゲートウェイ3により,自分自身宛ての信号であるか否かが判別される。 …(中略)… 映画上映の際には必要に応じてルーティング装置5がサーバ4から上映しようとする映画番組を選択して映像信号受信再生装置1に対して出力する。」との記載からすると,「受信器」,「サーバ」,「映像信号受信再生装置」を備え,映画を上映することが可能な施設であることから,本願発明の「デジタル映画プレゼンテーション施設」に相当すると言える。
また,引用発明では「復号鍵」を利用して「映画データ」の暗号の解除を行っていることから,引用発明の「復号鍵」は本願発明の「鍵」に相当すると言える。
そうすると,「鍵」の「配布」は「鍵」の「利用」の一つの態様とみることができるから,引用発明の「受信局で復号鍵を利用する方法」と,本願発明の「デジタル映画プレゼンテーション施設での鍵配布方法」とは,上位概念において“デジタル映画プレゼンテーション施設での鍵利用方法”である点で共通すると言える。

(2)引用発明は「受信局の映像信号受信再生装置において,映画上映の際に,暗号解読器がモデムを介して送信局から,上映しようとする映画データの前記復号鍵を得るための復号鍵情報を受信する」ところ,「復号鍵」を利用して「映画データ」を上映し,「復号鍵情報」は「復号鍵」を得るために受信することから,引用発明の「映画データ」は本願発明の「デジタル映画プレゼンテーション」に相当し,引用発明の「上映しようとする映画データの前記復号鍵を得るための」「復号鍵情報」と本願発明の「デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を有する少なくとも1つの」「鍵配布メッセージ」とは,“デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を得るための少なくとも1つの情報”である点で共通すると言える。
また,引用発明は「復号鍵情報」を「受信局」の「映像信号受信再生装置」内の「暗号解読器」が「送信局」から受信するところ,引用発明の「映像信号受信再生装置」も本願発明の「映画館管理システム」も,「デジタル映画プレゼンテーション施設」の「システム」とみることができる。
そうすると,引用発明の「前記受信局の映像信号受信再生装置において,映画上映の際に,暗号解読器がモデムを介して送信局から,上映しようとする映画データの前記復号鍵を得るための復号鍵情報を受信するステップ」と,本願発明の「前記デジタル映画プレゼンテーション施設の映画館管理システムにおいて,デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を有する少なくとも1つの鍵配布メッセージを受領するステップ」とは後記する点で相違するものの,“デジタル映画プレゼンテーション施設のシステムにおいて,デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を得るための少なくとも1つの情報を受領するステップ”である点で共通すると言える。

(3)引用発明は「暗号解読器が,生成した前記復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報と,前記映画データのヘッダ部分および前記復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較する」ところ,「暗号解読器」を含む「映像信号受信再生装置」は「受信局」の「システム」とみることができ,「復号鍵」は「復号鍵情報」に付加された「有効期限情報」が関連付けられ,「映画データ」を復号化するものに他ならない。
また,引用発明は「映像信号受信再生装置」内に「タイマ」を有し,当該「タイマ」が時刻情報を与えるところ,「映画データ」を復号化する「復号鍵」が有効期限内であるか否かの確認を,「映画データ」を「デコーダに出力しようとする時」,すなわち,「映画データ」を上映する時に実行することから,引用発明の「タイマにより与えられる時刻情報」は「映画データ」の「上映時刻」とみることができる。
そうすると,引用発明の「前記暗号解読器が,生成した前記復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報と,前記映画データのヘッダ部分および前記復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較するステップ」と,本願発明の「前記映画館管理システムにおいて,前記プレゼンテーションを復号化する鍵に関連する有効期間内に前記デジタル映画プレゼンテーションがスケジュールされた上映時間を有するか否かを決定するステップ」とは後記する点で相違するものの,“デジタル映画プレゼンテーション施設のシステムにおいて,プレゼンテーションを復号化する鍵に関連する有効期間内に前記デジタル映画プレゼンテーションの上映時刻が含まれているか否かを決定するステップ”である点で共通すると言える。

(4)引用発明は「タイマにより与えられる時刻情報と,前記映画データのヘッダ部分および前記復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較」し,「比較の結果,有効期限が切れていない場合には復号データをデコーダに出力し,映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタに入力されて上映される」ところ,引用例1の上記Aの記載からすると,前記の比較処理を行う「暗号解読器」,「デコーダ」,「ディジタルプロジェクタ」は「映像信号受信再生装置」内の構成であり,「ディジタルプロジェクタ」は所定の「スクリーン」に対応付けられていることは自明であり,「復号鍵」の「有効期限」が切れていない場合に,「映像信号受信再生装置」が「映画データ」の上映を可能とするとみることができるから,引用発明の「映像信号受信再生装置」は本願発明の「セキュアメディアブロック」に対応すると言える。
また,引用発明は「比較の結果,有効期限が切れていない場合には」,「映像信号受信再生装置」が「復号鍵」を利用して「復号データをデコーダに出力」する一方,本願発明は「そうである場合,前記プレゼンテーション施設内で前記鍵配布メッセージを前記映画館管理システムからセキュアメディアブロックにルーティング」するところ,引用発明の「映像信号受信再生装置」と本願発明の「セキュアメディアブロック」とは,「鍵」の利用を有効とする点で共通すると言える。
そうすると,引用発明の「比較の結果,有効期限が切れていない場合には復号データをデコーダに出力し,映像信号,音声信号としてデコードされた後,ディジタルプロジェクタに入力されて上映されるステップ」と,本願発明の「そうである場合,前記プレゼンテーション施設内で前記鍵配布メッセージを前記映画館管理システムからセキュアメディアブロックにルーティングし,前記デジタル映画プレゼンテーション施設内での予め選択されたスクリーンで前記デジタル映画プレゼンテーションの前記セキュアメディアブロックによるプレゼンテーションを可能にするステップ」とは後記する点で相違するものの,“そうである場合,プレゼンテーション施設内のセキュアメディアブロックが鍵の利用を有効として,前記デジタル映画プレゼンテーション施設内での予め選択されたスクリーンでデジタル映画プレゼンテーションの前記セキュアメディアブロックによるプレゼンテーションを可能にするステップ”である点で共通すると言える。

2 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

「 デジタル映画プレゼンテーション施設での鍵利用方法であって,
前記デジタル映画プレゼンテーション施設のシステムにおいて,デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を得るための少なくとも1つの情報を受領するステップと,
前記デジタル映画プレゼンテーション施設のシステムにおいて,前記プレゼンテーションを復号化する前記鍵に関連する有効期間内に前記デジタル映画プレゼンテーションの上映時刻が含まれているか否かを決定するステップと,
そうである場合,前記プレゼンテーション施設内のセキュアメディアブロックが前記鍵の利用を有効として,前記デジタル映画プレゼンテーション施設内での予め選択されたスクリーンで前記デジタル映画プレゼンテーションの前記セキュアメディアブロックによるプレゼンテーションを可能にするステップと
を有する方法。」

(相違点1)
本願発明は「デジタル映画プレゼンテーション施設での鍵配布方法」であるのに対して,引用発明は「受信局で復号鍵を利用する方法」である点。

(相違点2)

デジタル映画プレゼンテーションを復号化する鍵を得るために受領する情報に関し,本願発明は「鍵配布メッセージ」を受領するのに対して,引用発明は「復号鍵情報」を受信する点。

(相違点3)

鍵の有効期間に上映時刻が含まれるか否かの判定に関し,本願発明は「デジタル映画プレゼンテーションがスケジュールされた上映時間」を上映時刻とするのに対して,引用発明は「映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報」を上映時刻とする点。

(相違点4)

鍵の有効期間内に上映時刻が含まれると決定される場合のシステムの動作に関し,本願発明は「鍵配布メッセージ」を受領した「映画館管理システム」が,「鍵」の有効期間内であることを決定し,当該「鍵配布メッセージ」を「セキュアメディアブロックにルーティング」するのに対して,引用発明は「映像信号受信再生装置」が「復号鍵情報」を受信するとともに,「復号鍵」の有効期限が切れていないことを判定しており,「復号鍵情報」のルーティングは行われない点。


第5 当審の判断

上記相違点1乃至4について検討する。

1 相違点1及び4について

引用発明は「映画データ」を上映する「映像信号受信再生装置」が「復号鍵情報」を受信するとともに,「復号鍵」の有効期限が切れているか否かの判定も行うところ,引用例1の上記Aの記載からすると,受信局内の「サーバ」は送信局から配信された「映画データ」を暗号化されたまま記録し,映画上映の際に,暗号化された「映画データ」をルーティング装置を介して対応する「映像信号受信再生装置」に出力する機能を有していることが読み取れる。
また,復号鍵を用いた暗号化コンテンツ再生の技術分野において,コンテンツ復号化ユニットとは別の機能ユニットで復号鍵を受信し,復号鍵が有効か否かを判定した後に,有効であることが判定された場合に当該復号鍵を復号化ユニットに配送する旨の技術も,例えば引用例2(上記C,Dを参照)に記載されるように,本願優先日前には当該技術分野において普通に採用されていた周知技術であった。
そして,引用発明及び引用例2に記載された上記周知技術とは,コンテンツの復号鍵の有効期限を検証して,暗号化されたコンテンツの信頼性の高い再生を行うという共通する課題を有していることは明らかである。
してみると,引用発明に引用例2に記載の上記周知技術を適用し,映像信号受信再生装置の一部の機能を,送信局からのデータを受信し,映像信号受信再生装置にルーティングすることが可能な受信局内のサーバに具備させることにより,適宜,サーバが復号鍵情報を送信局から受信し,復号鍵が有効期間内であることを決定し,当該復号鍵情報を映像信号受信再生装置にルーティングし,配送すること,すなわち,上記相違点1及び相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について

引用発明は「暗号解読器がモデムを介して送信局から,上映しようとする映画データの前記復号鍵を得るための復号鍵情報を受信する」ところ,暗号化されたコンテンツを復号化するための鍵情報を,有効期間を表す情報と共に鍵配送メッセージにより通信する旨の技術は,例えば引用例3(上記Eを参照)に記載されるように,本願優先日前には当該技術分野における周知技術であった。
そして,引用発明に引用例3に記載の上記周知技術を適用し,復号鍵情報に代えて,適宜,鍵配送メッセージの形式により送信局と受信局の間で通信すること,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について

引用発明は「暗号解読器が,生成した前記復号鍵を使って暗号を解除して映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報と,前記映画データのヘッダ部分および前記復号鍵情報に付加されている有効期限情報とを比較する」ところ,「映画データをデコーダに出力しようとする時に,タイマにより与えられる時刻情報」,すなわち,上映時刻が「復号鍵情報に付加されている有効期限情報」に含まれるか否かを判定していると言える。
また,映画館管理システムにおいて,上映計画化機能により,スケジュールされた上映室や開始時刻に基づきコンテンツの開始及び再生を制御する旨の技術は,例えば,引用例4(上記Fを参照)に記載されるように,本願優先日前には当該技術分野の周知技術であり,サーバを用いた映画データの再生システムにおいて,スケジュールされた開始時刻に基づき映画データの開始及び再生を制御するか否かは当業者が必要に応じて選択可能な事項であった。
そうすると,引用発明に引用例4に記載の上記周知技術を適用し,適宜,スケジュールされた上映時刻が復号鍵の有効期限に含まれるか否かを判定すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

4 小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至4に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び引用例2,3,4などに記載の当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。


第6 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-30 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-15 
出願番号 特願2008-544326(P2008-544326)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金沢 史明  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 小林 大介
辻本 泰隆
発明の名称 デジタル映画プレゼンテーション用の鍵配布方法及び装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ