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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1304967
審判番号 不服2014-7626  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-04-24 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2010-550677「無線ネットワーク内のセキュリティアソシエーションを動的に管理するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月17日国際公開、WO2009/114100、平成23年 5月19日国内公表、特表2011-515930〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2009年3月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2008年3月14日(以下,「優先日」という。),アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成22年9月14日付けで特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され,平成22年11月4日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出されるとともに,同日付けで審査請求がなされ,平成24年11月20日付けで拒絶理由通知(同年11月22日発送)がなされ,平成25年5月22日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年6月7日付けで最後の拒絶理由通知(同年6月13日発送)がなされ,同年12月2日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,同年12月20日付けで前記平成25年12月2日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年12月26日発送)がなされるとともに,同日付けで拒絶査定(同年12月26日謄本送達)がなされたものである。
これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成26年4月24日付けで本件審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年9月30日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされた。


第2 平成26年4月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年4月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成26年4月24日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成25年5月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10の記載

「 【請求項1】
ネットワーク内のセキュリティアソシエーションを動的に管理するための方法であって、
セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップであって、前記新しいセキュリティ鍵及び前記既存のアクティブなセキュリティ鍵がそれぞれ、同じホームエージェントに関連付けられ、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が、前記ホームエージェントと少なくとも1つの外部エージェントとの間の既存のセキュリティアソシエーションのベースとして使用される、ステップと、
前記セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップと、を備える方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップに基づいて前記新しいセキュリティ鍵を適用し又は無視するステップ
をさらに備える方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、前記新しいセキュリティ鍵が、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効する場合に無視され、
前記既存のアクティブなセキュリティ鍵に基づいて生成された前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して、送信又は受信されるデータを保護するステップ
をさらに備える方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、前記新しいセキュリティ鍵が、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効する場合に無視され、
前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つ
をさらに備える方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法であって、前記新しいセキュリティ鍵が、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に適用され、
前記新しいセキュリティ鍵に基づいて生成されたセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つ
をさらに備える方法。
【請求項6】
請求項2記載の方法であって、前記新しいセキュリティ鍵が、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に適用され、
前記新しいセキュリティ鍵に基づいて生成されたセキュリティアソシエーションを使用して、送信又は受信されるデータを保護するステップ
をさらに備える方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵を適用するステップ、及び
前記新しいセキュリティ鍵に基づいて前記ホームエージェントと前記少なくとも1つの他のネットワーク要素との間のセキュリティアソシエーションを作成するステップ
をさらに備える方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、前記アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップが、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップを備え、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵で置き換えられる、方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、
前記新しいセキュリティ鍵に基づいて前記ホームエージェントと前記少なくとも1つの他のネットワーク要素との間のセキュリティアソシエーションを作成するステップ
をさらに備える方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法であって、
前記現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップは、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵が現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップ、及び
前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記現在の保留中のセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップ
を備える、方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
ネットワーク内のセキュリティアソシエーションを動的に管理するための方法であって、
セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断する第1の判断ステップであって、前記新しいセキュリティ鍵及び前記既存のアクティブなセキュリティ鍵がそれぞれ、同じホームエージェントに関連付けられ、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が、前記ホームエージェントと少なくとも1つの外部エージェントとの間の既存のセキュリティアソシエーションのベースとして使用される、第1の判断ステップと、
前記セキュリティ鍵管理コンポーネントで、前記第1の判断ステップが前記アクティブなセキュリティ鍵として前記新しいセキュリティ鍵を適用すると判断する場合に、既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断する第2の判断ステップと、
前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限、前記第1の判断ステップ及び前記第2の判断ステップに基いて、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップと、を備える方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記第1の判断ステップに基づいて前記新しいセキュリティ鍵を無視するステップをさらに備える方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記第1の判断ステップが、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効すると判断する場合に、前記無視するステップは、前記新しいセキュリティ鍵を無視し、
前記方法は、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵に基づいて生成された前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して、送信又は受信されるデータを保護するステップをさらに備える、方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法であって、
前記第1の判断ステップが、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効すると判断する場合に、前記無視するステップは、前記新しいセキュリティ鍵を無視し、
前記方法は、前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つをさらに備える、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、
前記置き換えるステップは、
前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が失効し、
前記第1の判断ステップが、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効すると判断し、かつ
前記第2の判断ステップが、前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効すると判断する場合に、
前記既存のアクティブなセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換え、
前記方法は、前記新しいセキュリティ鍵に基づいて生成されたセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つをさらに備える、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、
前記置き換えるステップが前記既存のアクティブなセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換える場合に、前記新しいセキュリティ鍵に基づいて前記ホームエージェントと前記少なくとも1つの他のネットワーク要素との間の新しいセキュリティアソシエーションを作成するステップ
をさらに備える方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、
前記第1の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵の有効期限と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限とを比較するステップを備え、
前記新しいセキュリティ鍵の有効期限が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限の後である場合に、前記第2の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵を前記現在の保留中のセキュリティ鍵として適用するかどうかを判断する、方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法であって、
前記第2の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵の有効期限と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限とを比較するステップを含み、
前記方法は、前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記現在の保留中のセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップをさらに備える、方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお,下線は,補正箇所を示すものとして,出願人が付与したものである。)

に補正するものである。

そして,本件補正は,特許法184条の4第1項の国際出願日における国際特許出願の明細書,請求の範囲,及び図面(図面の中の説明に限る。)の日本語による翻訳文,又は,国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

2 目的要件

ここで,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。),誤記の訂正,あるいは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)本件補正における補正事項について

ア 本件補正のうち,本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項1】

本件補正前の請求項1の
「セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップであって、前記新しいセキュリティ鍵及び前記既存のアクティブなセキュリティ鍵がそれぞれ、同じホームエージェントに関連付けられ、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が、前記ホームエージェントと少なくとも1つの外部エージェントとの間の既存のセキュリティアソシエーションのベースとして使用される、ステップ」との記載を,
本件補正後の請求項1の
「セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断する第1の判断ステップであって、前記新しいセキュリティ鍵及び前記既存のアクティブなセキュリティ鍵がそれぞれ、同じホームエージェントに関連付けられ、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が、前記ホームエージェントと少なくとも1つの外部エージェントとの間の既存のセキュリティアソシエーションのベースとして使用される、第1の判断ステップ」との記載に変更する補正。

【補正事項2】

本件補正前の請求項1の
「前記セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」との記載を,
本件補正後の請求項1の
「前記セキュリティ鍵管理コンポーネントで、前記第1の判断ステップが前記アクティブなセキュリティ鍵として前記新しいセキュリティ鍵を適用すると判断する場合に、既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断する第2の判断ステップ」との記載に変更する補正。

【補正事項3】

本件補正前の請求項1に,
「前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限、前記第1の判断ステップ及び前記第2の判断ステップに基いて、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップ」を追加する補正。

イ 本件補正のうち,本件補正前の請求項2を本件補正後の請求項2に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項4】

本件補正前の請求項2の
「前記アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップに基づいて前記新しいセキュリティ鍵を適用し又は無視するステップ」との記載を,
本件補正後の請求項2の
「前記第1の判断ステップに基づいて前記新しいセキュリティ鍵を無視するステップ」との記載に変更する補正。

ウ 本件補正のうち,本件補正前の請求項3を本件補正後の請求項3に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項5】

本件補正前の請求項3の
「前記新しいセキュリティ鍵が、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効する場合に無視され」との記載を,
本件補正後の請求項3の
「前記第1の判断ステップが、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効すると判断する場合に、前記無視するステップは、前記新しいセキュリティ鍵を無視し」との記載に変更する補正。


【補正事項6】

本件補正前の請求項3の
「前記既存のアクティブなセキュリティ鍵に基づいて生成された前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して、送信又は受信されるデータを保護するステップ」との記載を,
本件補正後の請求項3の
「前記方法は、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵に基づいて生成された前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して、送信又は受信されるデータを保護するステップ」との記載に変更する補正。

エ 本件補正のうち,本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項4に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項7】

本件補正前の請求項4の
「前記新しいセキュリティ鍵が、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効する場合に無視され」との記載を,
本件補正後の請求項4の
「前記第1の判断ステップが、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵の後に失効すると判断する場合に、前記無視するステップは、前記新しいセキュリティ鍵を無視し」との記載に変更する補正。

【補正事項8】

本件補正前の請求項4の
「前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つ」との記載を,
本件補正後の請求項4の
「前記方法は、前記既存のセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つ」との記載に変更する補正。

オ 本件補正のうち,本件補正前の請求項5を本件補正後の請求項5に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項9】

本件補正前の請求項5の
「請求項2記載の方法であって、前記新しいセキュリティ鍵が、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に適用され」との記載を,
本件補正後の請求項5の
「請求項1記載の方法であって、
前記置き換えるステップは、
前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が失効し、
前記第1の判断ステップが、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効すると判断し、かつ
前記第2の判断ステップが、前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効すると判断する場合に、
前記既存のアクティブなセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換え」との記載に変更する補正。

【補正事項10】

本件補正前の請求項5の
「前記新しいセキュリティ鍵に基づいて生成されたセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つ」との記載を,
本件補正後の請求項5の
「前記方法は、前記新しいセキュリティ鍵に基づいて生成されたセキュリティアソシエーションを使用して保護されるデータを送信するステップ及び受信するステップのうちの少なくとも1つ」との記載に変更する補正。

カ 本件補正のうち,本件補正前の請求項7を本件補正後の請求項6に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項11】

本件補正前の請求項7の
「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵を適用するステップ」との記載を,
本件補正後の請求項6の
「前記置き換えるステップが前記既存のアクティブなセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換える場合」との記載に変更する補正。

【補正事項12】

本件補正前の請求項7の
「前記新しいセキュリティ鍵に基づいて前記ホームエージェントと前記少なくとも1つの他のネットワーク要素との間のセキュリティアソシエーションを作成するステップ」との記載を,
本件補正後の請求項6の
「前記新しいセキュリティ鍵に基づいて前記ホームエージェントと前記少なくとも1つの他のネットワーク要素との間の新しいセキュリティアソシエーションを作成するステップ」との記載に変更する補正。

キ 本件補正のうち,本件補正前の請求項8を本件補正後の請求項7に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項13】

本件補正前の請求項8の
「前記アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップが、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップを備え」との記載を,
本件補正後の請求項7の
「前記第1の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵の有効期限と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限とを比較するステップを備え」との記載に変更する補正。

【補正事項14】

本件補正前の請求項8の
「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合」との記載を,
本件補正後の請求項7の
「前記新しいセキュリティ鍵の有効期限が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限の後である場合」との記載に変更する補正。

【補正事項15】

本件補正前の請求項8の
「前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵で置き換えられる」との記載を,
本件補正後の請求項7の
「前記第2の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵を前記現在の保留中のセキュリティ鍵として適用するかどうかを判断する」との記載に変更する補正。

ク 本件補正のうち,本件補正前の請求項10を本件補正後の請求項8に変更する補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項16】

本件補正前の請求項10の
「前記現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップは、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵が現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップ」との記載を,
本件補正後の請求項8の
「前記第2の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵の有効期限と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限とを比較するステップ」との記載に変更する補正。

【補正事項17】

本件補正前の請求項10の
「前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記現在の保留中のセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップ」との記載を,
本件補正後の請求項8の
「前記方法は、前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記現在の保留中のセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップ」との記載に変更する補正。

ケ 本件補正のうち,本件補正前の請求項6及び請求項9についてする補正は,下記の補正事項よりなるものである。

【補正事項18】

本件補正前の請求項6及び請求項9を削除する補正。

(2)当審の判断

ア 補正事項1について

上記補正事項1は,本件補正前の請求項1が含む2つの「判断するステップ」を区別するための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。

イ 補正事項2について

(ア)上記補正事項2のうち,本件補正前の請求項1の「判断するステップ」を「判断する第2の判断ステップ」との記載に変更する補正は,上記アと同様,本件補正前の請求項1が含む2つの「判断するステップ」を区別するための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。
(イ)上記補正事項2のうち,本件補正前の請求項1に「前記第1の判断ステップが前記アクティブなセキュリティ鍵として前記新しいセキュリティ鍵を適用すると判断する場合に、」を追加する補正は,上記補正事項2が含む「第2の判断ステップ」が,どのような場合に行われるものであるか,限定を付して下位概念化する補正である。そして、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。したがって,当該補正事項の目的は,請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって,その補正前後の当該請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下,単に「限定的減縮」という。)に該当する。

ウ 補正事項3について

(ア)上記補正事項3が含む「置き換えるステップ」は,本件補正前の請求項1が含む2つの「判断するステップ」のいずれかを限定する補正ではなく,本件補正前の請求項1に新たなステップを追加する補正であると認められる。
(イ)なお,上記補正事項3が,特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除,第3号の誤記の訂正,第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものでないことも明らかである。

エ 補正事項4ないし補正事項8,補正事項10,補正事項17について

(ア)上記補正事項4,補正事項5,補正事項7は,上記ア及びイ(ア)と同様,2つの「判断するステップ」を区別するための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。
(イ)なお,上記補正事項5及び補正事項7のうち,本件補正前の請求項3及び請求項4の「無視され」を「前記無視するステップは,前記新しいセキュリティ鍵を無視し」との記載に変更する補正は,当該「無視」について,「セキュリティ鍵を無視」する旨の限定を追加することによって下位概念化するものである。そして、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。したがって,当該補正事項の目的は,限定的減縮に該当する。
(ウ)そして,「前記方法は、」を附加する補正を含む,上記補正事項6,補正事項8,補正事項10,補正事項17は,当該「ステップ」の主体を明確にするための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。

オ 補正事項9及び補正事項11について

(ア)上記ウにおける指摘内容と同様に,上記補正事項9及び補正事項11が含む「置き換えるステップ」は,本件補正前の請求項5及び請求項7には含まれておらず,また,本件補正前の請求項5及び請求項7が引用する本件補正前の請求項1が含む2つの「判断するステップ」のいずれかを限定する補正でもないから,当該補正は,新たなステップを追加する補正であると認められる。
(イ)なお,上記補正事項9及び補正事項11が,特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除,第3号の誤記の訂正,第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものでないことも明らかである。

カ 補正事項12について

上記補正事項12は,本件補正前の請求項7の「セキュリティアソシエーション」に対して,これが「新しい」ものである旨の限定を追加することによって下位概念化するものである。そして、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。したがって,当該補正事項の目的は,限定的減縮に該当する。

キ 補正事項13について

(ア)上記補正事項13のうち,本件補正前の請求項8の「前記アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」を,本件補正後の請求項7の「前記第1の判断ステップ」との記載に変更する補正は,上記アと同様,2つの「判断するステップ」を区別するための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。
(イ)上記補正事項13のうち,本件補正前の請求項8の「前記新しいセキュリティ鍵と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限を比較する」を,本件補正後の請求項7の「前記新しいセキュリティ鍵の有効期限と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限とを比較する」との記載に変更する補正は,比較対象を明確にするための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。

ク 補正事項14について

上記補正事項14は,本件補正前の請求項8が含む「セキュリティ鍵の後に失効する場合」について,「有効期限の後」である旨の限定を追加することによって下位概念化するものである。そして、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。したがって,当該補正事項の目的は,限定的減縮に該当する。

ケ 補正事項15について

(ア)上記補正事項15において,本件補正前の請求項8が含む「前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵で置き換えられる」態様は,翻訳文等の明細書の段落【0069】に「ステップS224で、現在の保留中のHA-RK鍵KEYPNDを、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWで置き換える」と記載されるように,図2のフローチャートのステップS224に相当するものであると解される。
(イ)一方,上記補正事項15において,本件補正後の請求項7が含む「前記第2の判断ステップは、前記新しいセキュリティ鍵を前記現在の保留中のセキュリティ鍵として適用するかどうかを判断する」態様は,翻訳文等の明細書の段落【0067】に「ステップS222で、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWが保留中のHA-RK鍵KEYPNDの前に失効するかどうか判断する」と記載されるように,図2のフローチャートのステップS222に相当するものであると解される。
(ウ)してみると,上記補正事項15は,本件補正前の請求項8が含む上記態様(ステップS224)を,本件補正後の請求項7が含む別の態様(ステップS222)に変更する補正であるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
(エ)なお,上記補正事項15が,特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除,第3号の誤記の訂正,第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものでないことも明らかである。

コ 補正事項16について

(ア)補正事項16のうち,本件補正前の請求項10の「前記現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」及び「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合」を,本件補正後の請求項8の「前記第2の判断ステップ」との記載に変更する補正は,上記アと同様,2つの「判断するステップ」を区別するための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。
(イ)上記補正事項16のうち,本件補正前の請求項10の「前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較する」を,本件補正後の請求項8の「前記新しいセキュリティ鍵の有効期限と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限とを比較する」との記載に変更する補正は,比較対象を明確にするための補正であり,誤記の訂正を目的としたものと認められる。

サ 補正事項18について

上記補正事項18は,請求項の削除を目的として,本件補正前の請求項6及び請求項9を削除したものと認められる。

(3)小括

したがって,上記補正事項3,補正事項9,補正事項11,補正事項15を含む本件補正は,補正前の当該請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではなく,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。

また,上記補正事項3,補正事項9,補正事項11,補正事項15が,特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除,第3号の誤記の訂正,第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものとも認められない。

3 審判請求書における請求人の主張について

なお,請求人は,上記平成26年4月24日付けで提出された審判請求書において,
『当該補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加はなく、いわゆるシフト補正の要件を満たし、また、以下に示すように独立特許要件を満たす適法な補正であると思料します。』
と主張している。

しかしながら,上記2で検討したとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められないから,請求人の上記主張を受け入れることはできない。

4 むすび

以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1 本願発明の認定

平成26年4月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,平成25年5月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10に記載された事項により特定されるものである。

2 平成25年6月7日付け拒絶理由

原審の拒絶査定の理由である,上記平成25年6月7日付けで通知した拒絶理由(以下,「原審拒絶理由」という。)の概要は,下記のとおりである。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

『 理 由

平成25年5月22日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。

・・・(中略)・・・

補正後の請求項1の記載「既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」からすると、補正後の請求項1において、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断することは、「既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限」に基づくものの、その判断が、如何なる場合に行われる判断であるのかということは、特定されていない。また、その判断が、「既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限」以外のものにも基づくということも特定されておらず、判断の結果、如何なることを行うのかということも、何ら特定されていない。

・・・(中略)・・・

さらに、補正後の請求項1の記載「既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」からすると、補正後の請求項1において、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断が、如何なることに基づく判断であるのかということは特定されておらず、判断の結果、如何なることを行うのかということも、何ら特定されていない。
・・・(中略)・・・
これらの記載からすると、「既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」を記載する補正後1の請求項に記載の「既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」に関し、翻訳文等の記載では、その判断は「前記判断ステップが、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップを備え」という判断であり、それ以外の判断であるということは、記載も示唆もされていない。判断の結果「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵で置き換えられる」を行うものであり、そのようなことを行うことがないということは、記載も示唆もされていない。
そうすると、「既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」に関し、その判断が「前記判断ステップが、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップを備え」であることを特定することなく、かつ、判断の結果「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵で置き換えられる」ことを特定することのない、請求項1に対する補正は、翻訳文等の範囲内においてしたものではない。』

3 当審の判断

ア 上記平成25年5月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下,「本願請求項1」という。)は,その記載からして,次の2つのステップを備えている。

(a)「セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」
(b)「セキュリティ鍵管理コンポーネントで、既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限に基いて、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」

イ 一方,翻訳文等には,下記の記載がある。

「【0063】
図2のステップS204に戻って、オーセンティケータ52-1は、アクティブなHA-RK鍵KEYACTが存在すると判断する場合は、ステップS216で、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効するかどうか判断する。オーセンティケータ52-1は、新しく受け取られたHA-RK鍵Life_KEYNEWの有効期間をアクティブなHA-RK鍵Life_KEYACTの有効期間と比較することによって、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効するかどうか判断する。
・・・(中略)・・・
【0066】
ステップS216に戻ると、オーセンティケータ52-1は、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効しないと判断する場合は、ステップS220で、ホームエージェント48のための保留中のHA-RK鍵KEYPNDが既に存在するかどうか判断する。
【0067】
保留中のHA-RK鍵KEYPNDが存在する場合は、オーセンティケータ52-1は、ステップS222で、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWが保留中のHA-RK鍵KEYPNDの前に失効するかどうか判断する。オーセンティケータ52-1は、ステップS216に関して上述されたように、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWが保留中のHA-RK鍵KEYPNDの前に失効するかどうか判断する。」
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

ウ そして,上記イの記載からすると,上記(b)のステップが実行されるのは,上記(a)のステップを実行した結果,“新しいセキュリティ鍵(新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEW)がアクティブなセキュリティ鍵(アクティブなHA-RK鍵KEYACT)の前に失効しないと判断される場合”かつ“現在の保留中のセキュリティ鍵(保留中のHA-RK鍵KEYPND)が存在する場合”のみであって,当該限定がない場合においても上記(b)のステップが実行される態様を含む本願請求項1は,翻訳文等に記載されておらず,かつ,その記載から自明なものでもない。

エ そうすると,原審拒絶理由において,
『補正後の請求項1において、現在の保留中のセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断することは、「既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限」に基づくものの、その判断が、如何なる場合に行われる判断であるのかということは、特定されていない。また、その判断が、「既存の現在の保留中のセキュリティ鍵の期限」以外のものにも基づくということも特定されておらず』,
『「既存のアクティブなセキュリティ鍵の期限に基づいて、アクティブなセキュリティ鍵として新しいセキュリティ鍵を適用すべきかどうか判断するステップ」に関し、その判断が「前記判断ステップが、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために前記新しいセキュリティ鍵と前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップを備え」であることを特定することなく、かつ、判断の結果「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の後に失効する場合に、前記既存のアクティブなセキュリティ鍵が前記新しいセキュリティ鍵で置き換えられる」ことを特定することのない、請求項1に対する補正は、翻訳文等の範囲内においてしたものではない。』
とした判断は,妥当なものであると認められる。

オ したがって、平成25年5月22日付けでした手続補正は、翻訳文等に記載した範囲内でしたものではない。

4 請求項10についての検討

(1)翻訳文等に記載された請求項10について

ア 翻訳文等の請求の範囲には,下記の記載がある。

「【請求項10】
請求項8記載の方法であって、
前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵が現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップ、及び
前記新しいセキュリティ鍵が前記現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効する場合に前記現在の保留中のセキュリティ鍵を前記新しいセキュリティ鍵で置き換えるステップ
をさらに備える方法。」,
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

イ 一方,翻訳文等の明細書には,下記の記載がある。

「【0063】
図2のステップS204に戻って、オーセンティケータ52-1は、アクティブなHA-RK鍵KEYACTが存在すると判断する場合は、ステップS216で、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効するかどうか判断する。オーセンティケータ52-1は、新しく受け取られたHA-RK鍵Life_KEYNEWの有効期間をアクティブなHA-RK鍵Life_KEYACTの有効期間と比較することによって、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効するかどうか判断する。
・・・(中略)・・・
【0065】
オーセンティケータ52-1は、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効すると判断する場合は、ステップS218で、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWを無視し廃棄する。
【0066】
ステップS216に戻ると、オーセンティケータ52-1は、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWがアクティブなHA-RK鍵KEYACTの前に失効しないと判断する場合は、ステップS220で、ホームエージェント48のための保留中のHA-RK鍵KEYPNDが既に存在するかどうか判断する。
【0067】
保留中のHA-RK鍵KEYPNDが存在する場合は、オーセンティケータ52-1は、ステップS222で、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWが保留中のHA-RK鍵KEYPNDの前に失効するかどうか判断する。オーセンティケータ52-1は、ステップS216に関して上述されたように、新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEWが保留中のHA-RK鍵KEYPNDの前に失効するかどうか判断する。」

ウ そして,上記イの記載からすると,翻訳文等の明細書及び関連する図面(図2)には,ステップ216及びステップ218に,新しいセキュリティ鍵(新しく受け取られたHA-RK鍵KEYNEW)が,既存のアクティブなセキュリティ鍵(HA-RK鍵KEYACT)の前に失効するかどうか判断し,“新しいセキュリティ鍵が既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合に,前記新しいセキュリティ鍵を無視し廃棄する”態様は記載されているが,翻訳文等に記載された請求項10が含む「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵が現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較する」態様は,記載も示唆もなく,当業者にとって自明な事項でもない。

エ してみると,「前記新しいセキュリティ鍵が前記既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効する場合に前記新しいセキュリティ鍵が現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較するステップ」を含む翻訳文等に記載された請求項10は,翻訳文等の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

オ なお,上記イの記載からすると,翻訳文等には,“新しいセキュリティ鍵が既存のアクティブなセキュリティ鍵の前に失効しない場合に前記新しいセキュリティ鍵が現在の保留中のセキュリティ鍵の後に失効するかどうか判断するために、前記新しいセキュリティ鍵と前記現在の保留中のセキュリティ鍵の有効期限を比較する”態様が記載されていると解される。

(2)上記平成25年5月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項10(以下,「本願請求項10」という。)について

ア 上記(1)で検討した内容と同様の理由で,本願請求項10についても,翻訳文等の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

イ そして,本願請求項10が間接的に引用する本願請求項1は,上記3で指摘したとおり,翻訳文等に記載されたものとは認められないものである。

ウ そうすると,本願請求項10が間接的に引用する本願請求項1が,上記3で指摘したとおり,翻訳文等に記載されたものとは認められないから,仮に,本願請求項10が,上記(1)オと同様に補正されたとしても,本審決の結論に影響するものではない。

5 むすび

以上のとおり,平成25年5月22日付けでした手続補正は,翻訳文等に記載した範囲内においてしたものでないから,外国語特許出願に係る明細書又は図面について補正ができる範囲の特例について規定した特許法第184条の12第2項により読み替える,同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-24 
結審通知日 2015-03-26 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2010-550677(P2010-550677)
審決分類 P 1 8・ 573- Z (H04L)
P 1 8・ 574- Z (H04L)
P 1 8・ 55- Z (H04L)
P 1 8・ 571- Z (H04L)
P 1 8・ 572- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 辻本 泰隆
田中 秀人
発明の名称 無線ネットワーク内のセキュリティアソシエーションを動的に管理するための方法及び装置  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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