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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1304968
審判番号 不服2014-8221  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-02 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2011-551047「複数のユーザーインターフェース、環境、および/またはバーチャル・マシンをサポートするためのウェイクアップトリガ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月26日国際公開、WO2010/096070、平成24年 8月 9日国内公表、特表2012-518233〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年4月13日(パリ条約による優先権主張2009年2月18日,米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯の概略は次のとおりである。

出願審査請求(提出日) 平成23年9月6日
拒絶理由通知(起案日) 平成25年2月22日
意見、手続補正(提出日) 平成25年8月26日
拒絶査定(起案日) 平成25年12月18日
拒絶査定謄本送達 平成26年1月7日
審判請求(提出日) 平成26年5月2日
手続補正(提出日) 平成26年5月2日
前置報告(作成日) 平成26年7月15日
上申書(提出日) 平成26年10月22日

第2.平成26年5月2日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年5月2日付の手続補正を却下する。

[理由]
1. 補正の内容
平成26年5月2日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおり補正された。

[本件補正前]
「【請求項1】
以下の動作、
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ることと、
前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選ぶことと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、ことと
を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための方法。
【請求項2】
リモートコンピューティング環境をアクティブにすることが、
ウェイクアップトリガを伝達することと、
前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするアクティビティ状態に現在のアクティビティ状態を変えることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのリストが、前記利用可能なリモート周辺デバイスの各々によってサポートされたプロトコルに応じて複数のプロトコルによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ローカルコンピューティング環境が、スタンバイモードである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ローカルコンピューティング環境が、ローカル処理を実行している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リモートコンピューティング環境が、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスへのごく近接した接続に基づいて、自動でアクティブにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リモートコンピューティング環境が、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上への接続性を有するドッキングステーションとの相互作用に応じて、自動でアクティブにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リモートコンピューティング環境が、ワイヤレスハブへのごく近接した接続に応じて、自動でアクティブにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのリストが、発見プロセスに基づいて得られ、前記発見プロセスが、自動で、手動で、またはその組み合わせで、発生させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選ぶことが、
前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの2つ以上が同様の機能を提供することを確かめることと、
ルールのセットとの適合に基づいて、前記2つ以上の周辺デバイスのうちの1つを選択することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ルールのセットが、ワイヤレスリンクよりも有線リンクを選択すること、より弱いワイヤレスリンクよりもより強いワイヤレスリンクを選択すること、または、その組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの選ばれたリモート周辺デバイスの利用可能性を監視することと、
前記少なくとも1つの選ばれたリモート周辺デバイスがもはや利用可能でなければ、前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにすることと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ローカル処理を実行することと、利用可能なリモート周辺デバイスのリストを集めることと、前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上を選択することと、前記選択された利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、リモートコンピューティング環境をイネーブルにすることと、に関連する命令を保持するメモリと、
前記メモリに結合され、前記メモリに保持された前記命令を実行するように構成されたプロセッサと
を含む、ワイヤレス通信装置。
【請求項14】
前記メモリは、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上を選択した後、
ウェイクアップトリガをアクティブにすることと、現在のアクティビティ状態を前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするより高いアクティビティ状態に変えることと、に関連する命令をさらに保持する、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項15】
前記リモートコンピューティング環境が、前記選択されたリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つへのごく近接した接続に基づいて、自動でイネーブルにされる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項16】
前記リモートコンピューティング環境が、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上への接続性を有するドッキングステーションとの相互作用に応じて、自動でイネーブルにされる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項17】
前記リモートコンピューティング環境が、ワイヤレスハブへのごく近接した接続に応じて、自動でイネーブルにされる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項18】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのリストが、2つ以上のプロトコルを利用する発見プロセスに基づいて得られ、前記発見プロセスが、自動で、手動で、またはその組み合わせで発生させられる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項19】
前記メモリが、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの2つ以上が同様の機能を提供すると判定することと、ルールのセットとの適合に基づいて前記2つ以上の周辺デバイスのうちの1つを選ぶことと、に関連する命令をさらに保持する、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項20】
前記メモリが、前記選択されたリモート周辺デバイスの利用可能性を監視することと、
前記選択されたリモート周辺デバイスがもはや利用可能でなければ前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにすることと、に関連する命令をさらに保持する、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項21】
利用可能なリモート周辺デバイスのリストにアクセスするための手段と、
前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選択するための手段と、
前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための手段であって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する手段と、
を含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするワイヤレス通信装置。
【請求項22】
前記リモートコンピューティング環境が、前記選択されたリモート周辺デバイスへのごく近接した接続に基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上への接続性を有するドッキングステーションとの相互作用に基づいて、または、ワイヤレスハブへのごく近接した接続に基づいて、自動でイネーブルにされる、請求項21に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項23】
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得るように、コンピュータにさせるための第1のコードのセットと、
前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選ぶように、前記コンピュータにさせるための第2のコードのセットと、
リモートコンピューティング環境をアクティブにするように、前記コンピュータにさせるための第3のコードのセットと、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、
を含むコンピュータプログラム。
【請求項24】
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得るように構成された第1のモジュールと、
前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選ぶように構成された第2のモジュールと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにするように構成された第3のモジュールであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、第3のモジュールと、を含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするように構成された少なくとも1つのプロセッサ。
【請求項25】
異なる無線プロトコルに関する情報を集約することと、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記プロセッサに結合され、異なる無線プロトコルに関連する情報を集約するように構成されたサービス発見集約部、をさらに備える請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項27】
前記コンピュータプログラムはさらに、前記少なくとも1つの選ばれたリモート周辺デバイスの接続性に基づいて、前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにするように、前記コンピュータにさせるための第4のコードのセット、を備える、請求項23に記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
前記プロセッサはさらに、前記少なくとも1つのリモート周辺デバイスがもはや利用可能でなければ前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにするように構成された第4のモジュールを備える、請求項24に記載のプロセッサ。
【請求項29】
前記プロセッサは、前記移動デバイスと結合される、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項30】
前記選択するための手段は、前記移動デバイスと結合される、請求項21に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項31】
前記コンピュータプログラムは、前記移動デバイスと結合される、請求項23に記載のコンピュータプログラム。
【請求項32】
前記第2モジュールは、前記移動デバイスと結合される、請求項24に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項33】
前記リモートコンピューティング環境は、ローカルコンピューティング環境と同一の時間にアクティブにされる、請求項24に記載のプロセッサ。」
(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前請求項」という。)

[本件補正後]
「【請求項1】
以下の動作、
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ることと、
前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されるタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶことと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも2つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、ことと
を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための方法。
【請求項2】
リモートコンピューティング環境をアクティブにすることが、
ウェイクアップトリガを伝達することと、
前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするアクティビティ状態に現在のアクティビティ状態を変えることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのリストが、前記利用可能なリモート周辺デバイスの各々によってサポートされたプロトコルに応じて複数のプロトコルによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ローカルコンピューティング環境が、スタンバイモードである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ローカルコンピューティング環境が、ローカル処理を実行している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リモートコンピューティング環境が、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスへのごく近接した接続に基づいて、自動でアクティブにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リモートコンピューティング環境が、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上への接続性を有するドッキングステーションとの相互作用に応じて、自動でアクティブにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リモートコンピューティング環境が、ワイヤレスハブへのごく近接した接続に応じて、自動でアクティブにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのリストが、発見プロセスに基づいて得られ、前記発見プロセスが、自動で、手動で、またはその組み合わせで、発生させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを選ぶことが、
前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの2つ以上が同様の機能を提供することを確かめることと、
ルールのセットとの適合に基づいて、前記同様の機能を提供する前記2つ以上の利用可能な周辺デバイスのうちの1つを選択することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ルールのセットが、ワイヤレスリンクよりも有線リンクを選択すること、より弱いワイヤレスリンクよりもより強いワイヤレスリンクを選択すること、または、その組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つの選ばれたリモート周辺デバイスの利用可能性を監視することと、
前記少なくとも2つの選ばれたリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つがもはや利用可能でなければ、前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにすることと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ローカル処理を実行することと、利用可能なリモート周辺デバイスのリストを集めることと、前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されるタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの2つ以上を自動で選択することと、前記選択された利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、リモートコンピューティング環境をイネーブルにすることと、に関連する命令を保持するメモリと、
前記メモリに結合され、前記メモリに保持された前記命令を実行するように構成されたプロセッサと
を含む、ワイヤレス通信装置。
【請求項14】
前記メモリは、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上を選択した後、
ウェイクアップトリガをアクティブにすることと、現在のアクティビティ状態を前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするより高いアクティビティ状態に変えることと、に関連する命令をさらに保持する、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項15】
前記リモートコンピューティング環境が、前記選択されたリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つへのごく近接した接続に基づいて、自動でイネーブルにされる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項16】
前記リモートコンピューティング環境が、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上への接続性を有するドッキングステーションとの相互作用に応じて、自動でイネーブルにされる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項17】
前記リモートコンピューティング環境が、ワイヤレスハブへのごく近接した接続に応じて、自動でイネーブルにされる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項18】
前記利用可能なリモート周辺デバイスのリストが、2つ以上のプロトコルを利用する発見プロセスに基づいて得られ、前記発見プロセスが、自動で、手動で、またはその組み合わせで発生させられる、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項19】
前記メモリが、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの2つ以上が同様の機能を提供すると判定することと、ルールのセットとの適合に基づいて前記同様の機能を提供する前記2つ以上の利用可能な周辺デバイスのうちの1つを選ぶことと、に関連する命令をさらに保持する、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項20】
前記メモリが、前記選択されたリモート周辺デバイスの利用可能性を監視することと、
前記選択されたリモート周辺デバイスがもはや利用可能でなければ前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにすることと、に関連する命令をさらに保持する、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項21】
利用可能なリモート周辺デバイスのリストにアクセスするための手段と、
前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されたタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選択するための手段と、
前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための手段であって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも2つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する手段と、
を含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするワイヤレス通信装置。
【請求項22】
前記リモートコンピューティング環境が、前記選択されたリモート周辺デバイスへのごく近接した接続に基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの1つ以上への接続性を有するドッキングステーションとの相互作用に基づいて、または、ワイヤレスハブへのごく近接した接続に基づいて、自動でイネーブルにされる、請求項21に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項23】
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得るように、コンピュータにさせるための第1のコードのセットと、
前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されたタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶように、前記コンピュータにさせるための第2のコードのセットと、
リモートコンピューティング環境をアクティブにするように、前記コンピュータにさせるための第3のコードのセットと、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも2つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、
を含むコンピュータプログラム。
【請求項24】
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得るように構成された第1のモジュールと、
前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されたタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶように構成された第2のモジュールと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにするように構成された第3のモジュールであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも2つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、第3のモジュールと、を含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするように構成された少なくとも1つのプロセッサ。
【請求項25】
異なる無線プロトコルに関する情報を集約することと、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記プロセッサに結合され、異なる無線プロトコルに関連する情報を集約するように構成されたサービス発見集約部、をさらに備える請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項27】
前記コンピュータプログラムはさらに、前記少なくとも1つの選ばれたリモート周辺デバイスの接続性に基づいて、前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにするように、前記コンピュータにさせるための第4のコードのセット、を備える、請求項23に記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
前記プロセッサはさらに、前記少なくとも2つの選ばれたリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つがもはや利用可能でなければ前記リモートコンピューティング環境を選択的に非アクティブにするように構成された第4のモジュールを備える、請求項24に記載のプロセッサ。
【請求項29】
前記プロセッサは、前記移動デバイスと結合される、請求項13に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項30】
前記選択するための手段は、前記移動デバイスと結合される、請求項21に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項31】
前記コンピュータプログラムは、前記移動デバイスと結合される、請求項23に記載のコンピュータプログラム。
【請求項32】
前記第2のモジュールは、前記移動デバイスと結合される、請求項24に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項33】
前記リモートコンピューティング環境は、ローカルコンピューティング環境と同一の時間にアクティブにされる、請求項24に記載のプロセッサ。」
(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後請求項」という。下線部は補正部分を表している。)

2. 新規事項について
(1)補正前請求項1の「前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選ぶこと」を、補正後「前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されるタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶこと」とする補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものではない。即ち、補正後請求項1の「要求数」は、ある主体が要求する(リモート周辺デバイスの)数を意味し、しかも当該「要求数」は「利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶ」いわば、選択のステップにおけるものであるから、補正後の請求項1に係る発明は、選択のステップにおいて、前記ある主体が要求する(リモート周辺デバイスの)数に基づいて選択されるものである。しかし、当初明細書には、選択のステップにおいて、前記ある主体が要求する(リモート周辺デバイスの)数(「要求数」)が関わることは記載も示唆もない。例えば、段落【0076】?【0078】には、「利用可能なリモート周辺デバイスのリストは、発見プロセスに基づいてアクセスされることができ、それは、自動で、手動で、またはその組み合わせで発生させられることができる。」、「また、利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選択するための電気的コンポーネント906が、論理的グループ902に含まれる。いくつかの態様によると、(単数または複数の)リモート周辺デバイスは、少なくとも閾値の数のデバイスおよび/またはタイプのデバイスの利用可能性に応じて、選ばれることができる。たとえば、ユーザーは、デバイスの選択の前に利用可能であるべきデバイスの最小数およびタイプ(たとえば、1つのキーボード、1つのマウス、および1つのディスプレイ)を表すルールのセットを設定することができる。」、「いくつかの態様によると、電気的コンポーネント906は、利用可能なリモート周辺デバイスのうちの2つ以上が同様の機能を提供すると判定するように構成されることができる。この判定に部分的に基づいて、電気的コンポーネント906は、ルールのセットとの適合に基づいて、2つ以上の周辺デバイスのうちの1つを選択することができる。」(下線部は当審強調部を示す)と記載される如く、デバイスの選択(選択のステップ)の前にデバイスの最小数およびタイプを表すルールのセットを設定するとしても、選択のステップにおいて前記ある主体が要求する(リモート周辺デバイスの)数(「要求数」)を構成とすることは記載も示唆もない。また、特に、明細書の段落【0043】には「自動の選択は、デバイスのタイプ、デバイスの数、デバイスのタイプおよび数、ならびに他のパラメータ(たとえば、接続のタイプ、信号強度、等)に関連するルールおよび/またはポリシーに基づいて、行なわれることができる。たとえば、リモートコンピューティング環境412をアクティブにする前に利用可能であるべきデバイスの最小の組み合わせを規定するルールが、確立されることができる。たとえば、最小閾値のルールが、少なくとも1つのディスプレイ、少なくとも1つのキーボード、および少なくとも1つのマウスデバイスが、リモートコンピューティング環境412がアクティブにされる前に利用可能であるべき、というものである場合がある。」と記載され、段落【0044】には「いくつかの態様によると、自動の選択が、優先性を規定するルールまたはポリシーに基づいて、行なわれることができる。優先性は、有線接続能力を有するリモートデバイス(たとえば、移動デバイスおよびリモートデバイスが有線リンクで通信する)のほうが、ワイヤレスリンクよりも優先され得る、というものであることができる。しかしながら、さまざまな態様によると、ワイヤレスリンクのほうが有線リンクより優先されることもある。別の例において、優先性は、装置402とリモートデバイス404間の信号強度が設定可能な閾値を上回る、というものであることができる(たとえば、信号強度がある特定の値であるか、それを上回ると、リンクがイネーブルにされ、または、信号強度がある特定の値であるか、それを下回ると、リンクがイネーブルにされない(すなわち、ディスエーブルにされる))。別の例では、より強いワイヤレスリンクのほうがより弱いワイヤレスリンクよりも優先されることができる、等である。」と記載されているが、これらは別々のルールおよび/またはポリシーに基づいて選択するものであり、前記「最小閾値のルールを満たす」デバイスのうちの「少なくとも2つを自動で選ぶ」ことで何らかの課題を解決しようとするまとまりのある技術思想を記載ないし示唆するものではない。
また、請求項13、請求項21、請求項23、請求項24について、前記請求項1についての補正と同様の補正がなされているが、これらも請求項1と同様に当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

また、補正前請求項12の「少なくとも1つ」、「少なくとも1つの選ばれたリモート周辺デバイスがもはや利用可能でなければ」を補正後請求項12の「少なくとも2つ」、「少なくとも2つの選ばれたリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つがもはや利用可能でなければ」とすることは、当初明細書等に明示的な記載はなく示唆もなく、補正前請求項12は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
補正後請求項28も補正後請求項12と同様である。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。

3. 補正の目的、独立特許要件について
補正前請求項1の「周辺デバイス数」、「タイプ」、「最小の組み合わせに基づいて、」「少なくとも1つを選ぶ」を、補正後「周辺デバイスの要求数」、「前記要求数の要求されるタイプ」、「最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす」、「少なくとも2つを自動で選ぶ」とする補正は、「数」、「タイプ」、「基づいて、」「1つを」、について、それぞれ、「要求」数、「前記要求数の要求される」タイプ、「規定する最小閾値のルールを満たす」、「少なくとも2つを自動で」(「1」つは含まない)なる限定をするものであるところ、これを、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下「限定的減縮」と記す。)を目的としたものと仮定し、本件補正後の特許請求範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるもので(特許法第17条の2第6項で準用する第126条第7項)あるか否かを以下に検討する。

3.1 特許法第36条第6項1号、2号について
3.1.1 特許法第36条第6項第1号
前記「2. 新規事項について」において言及したのと同主旨で、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する。

3.1.2 特許法第36条第6項第2号
(1)請求項1について
請求項1の「利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ることと、
前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されるタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶことと、」は、前記要求数が如何なる主体により何時の時点で関わるのか明確でなく、「前記要求数の要求されるタイプ」は、端的には「数」の「タイプ」を記載するものであるが実体が明確でない。また、「最小閾値のルールを満たす」「少なくとも2つ」に係る2つの「最小閾値」(下限閾値)とする技術的意義が不明であり発明の構成が明確でない。

(2)前記(1)で検討した点について、請求項13、21、23、24の対応する事項についても同様のことがいえる。

したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないので、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。

3・2 特許法第29条第2項について
3.2.1 本件補正発明
本件補正後請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記平成26年5月2日付の手続補正(本件補正)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。(再掲する。)

「以下の動作、
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ることと、
前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されるタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶことと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも2つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、ことと
を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための方法。」

3.2.2 引用文献
(1) 引用文献1
本願優先権主張日前に頒布され、原審で引用された刊行物である米国特許出願特開第2008/0004075号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審付与)
「[0097] If, at decision block 520 , the mobile device determines that remote output is desired, the mobile device proceeds to decision block 550 and determines if a Location Based Service (LBS) output application is desired. The mobile device can determine that an LBS output is selected in the print application, or can determine, based on the desired output selection, that LBS output devices are desired.

[0098] If LBS output devices are not desired, the mobile device proceeds to block 554 and retrieves the predetermined remote output devices and services, for example, from a list stored in memory or from a database in a connected network device. The mobile device then proceeds to block 564 where the options are presented to the user.

[0099] If, at decision block 550 , the mobile device determines that LBS output is desired, the mobile device proceeds to block 552 and retrieves or otherwise initiates position determination. For example, the mobile device can initiate GPS or A-GPS position location. The operation of the print application determines if the position fix needs to be known at the mobile device, or if a network position determination is sufficient to support the LBS.

[0100] The mobile device proceeds to block 560 and determines the LBS output devices that are available. For example, the mobile device can initiate a network based position determination and, once the mobile device position is determined by a PDE on the network, can query a database at a network for output devices or services that are within a predetermined proximity of the mobile device location.

[0101] The mobile device proceeds to block 564 and presents the output device and service options to the user, for example, via the print application. The mobile device can, for example, present only non-LBS output devices and services when LBS is not utilized. Similarly, if LBS is utilized the mobile device can present only LBS output devices and services or can present available LBS output devices and services in combination with non-LBS output devices and services.

[0102] The mobile device can accept a user output device or service selection based on the presented options, and proceeds to block 570 to communicate the selected images to the selected output device. The mobile device can, for example, automatically configure the appropriate hardware, such as cellular telephone link or WiFi link, based on the selected output device.

[0103] FIG. 6 is a simplified flowchart of a method 600 of determining remote output devices using position location services. The method 600 can be performed during the method of FIG. 5 , for example, in response to determining that LBS output devices are desired. The method 600 can be performed, for example, by the mobile device of FIG. 2 and can be managed by the UPA of the architectures of FIG. 3 or 4 .

[0104] The method 600 begins at block 610 where the mobile device or UPA initiates position determination. The UPA can, for example, initiate position determination using a GPS/A-GPS module in the mobile device. The mobile device position can be determined at the mobile device or at a network PDE.

[0105] The mobile device proceeds to block 620 and determines the criteria or parameters for filtering potential LBS output devices. For example, the mobile device can accept user input regarding a maximum desired distance to output devices, parameters relating to identity of service providers, parameters relating to the types of output available from the output device or provider, and other parameters. As an example, the user may desire a particular brand of service provider and may desire that the output images be within a range of 1000 meters of the mobile device location.

[0106] The mobile device proceeds to block 630 , where the mobile device utilizes the filter criteria to generate a query. The mobile device can query a database of output devices and service providers to determine the identity of devices and service providers, if any, that satisfy the criteria. The database can be local to the mobile device or can be in a network accessible location. For example, the device and service provider database can be stored at a network location accessible through the cellular telephone communication system, and managed by the cellular service provider. In that example, the cellular service provider may also provide the position location services, and thus, the position of the mobile device need not be transmitted to any party outside of the cellular network.

[0107] The mobile device proceeds to block 640 and receives a listing of output devices satisfying the query. The mobile device can receive the results from a local database query or from a networked or otherwise remote database.

[0108] The mobile device proceeds to block 650 and displays or otherwise presents the results of the query to the user. For example, the UPA can obtain the results of the query and can forward the results to the print application for display to the user.」
訳;「【0097】もし、決定ブロック520で、モバイル装置がリモート出力が望ましいと決定するなら、モバイル装置は決定ブロック550に進んで、そしてロケーションベースのサービス(LBS)出力アプリケーションが望まれているかどうか決定する。モバイル装置が印刷アプリケーションでLBS出力が選択されたと決定することができるか、あるいは、望ましい出力選択に基づいて、LBS出力装置が望まれると決定することができる。
【0098】もしLBS出力装置が望まれないなら、モバイル装置がブロック554に進んで、そして前もって決定されたリモート出力装置とサービスを、例えば、メモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索する。モバイル装置はそれからブロック564に進み、そこでオプションがユーザーに提示される。
【0099】もし、決定ブロック550で、モバイル装置がLSB出力を望むと決定するなら、モバイル装置はブロック552に進んで、そして位置決定を始めるか検索する。例えば、モバイル装置がGPSあるいはA-GPS位置ロケーションを始めることができる。印刷アプリケーションのオペレーションは位置の固定(fix)がモバイル装置において知られている必要があるかどうか、あるいはネットワーク位置の決定がLBSをサポートするのに十分であるかどうか決定する。
【0100】モバイル装置はブロック560に進み、利用可能なLSB出力装置を決定する。例えば、モバイル装置がネットワークベースの位置決定を始めることができ、そしてネットワークで出力デバイスのために、ひと度、モバイル装置位置がネットワークでPDE(当審注;位置決定エントリ。段落【0042】参照)によって決定されると、モバイル装置ロケーション近傍の予め決められた範囲内の出力装置又はサービスに対してネットワーク上データベースに問い合わせることができる。
【0101】モバイル装置はブロック564に進んで、印刷アプリケーションを経由して、例えば、ユーザーに出力装置とサービスオプションを提示する。モバイル装置が、例えば、LBSが利用可能ではないとき、非-LBS出力装置とサービスだけを提示することができる。同様に、もしLBSが利用されるなら、モバイル装置はLBS出力装置とサービスだけを提示することができるか、あるいは利用可能なLSB出力装置と非-LBS出力装置とサービスと組み合わせでサービスを提示することができる。
【0102】モバイル装置が提示されたオプションに基づいてユーザ出力装置又はサービス選択を受け入れることができ、そして、選択されたイメージを選択済み出力装置へコミュニケートするためにブロック570に進む。モバイル装置は、例えば、選択された出力装置に基づいて自動的に、携帯電話リンクあるいはWiFiリンクのような、適切なハードウェアの構成を設定することができる。
【0103】図6は位置ロケーションサービスを用いてリモート出力装置を決定する方法600の簡略化されたフローチャートである。方法600はLSB出力装置が切望されたと決定することに応じて、例えば、図5の方法の間に行なわれることができる。方法600は、例えば、図2のモバイル装置によって行なわれることができ、そして図3あるいは4のアーキテクチャのUPA(当審注;ユニバーサルプリントエージェント。段落【0026】参照)によって管理される。
【0104】方法600はモバイル装置あるいはUPAが位置決定を始めるブロック610で始まる。UPAは、例えば、モバイル機器でGPS/A-GPSモジュールを使ってポジション決定を始めることができる。モバイル装置位置がモバイル装置においてあるいはネットワークPDEにおいて決定されることができる。
【0105】モバイル装置はブロック620に進んで、ポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準あるいはパラメータを決定する。例えば、モバイル装置は出力装置、サービスプロバイダのアイデンティティーに関連したパラメータ、出力装置あるいはプロバイダから利用可能な出力のタイプに関連したパラメータ、出力装置への最大希望距離、および他のパラメータに関してユーザ入力を受取ることができる。例として、ユーザーはサービスプロバイダの特定のブランドを切望するかもしれず、そしてアウトプットイメージが1000メートルのモバイル装置ロケーションの範囲以内にあることを望むかもしれない。
【0106】モバイル装置はブロック630に進み、そこでモバイル装置が問合せを作成するためにフィルター基準を利用する。モバイル装置は、もしあれば、基準を満たす出力装置とサービスプロバイダのアイデンティティーを決定するために出力装置とサービスプロバイダのデータベースに問い合わせることができる。データベースはモバイル装置にローカルであるか、あるいはネットワーク上アクセス可能なロケーションにあり得る。例えば、装置とサービスのプロバイダのデータベースは携帯電話通信系を通してアクセス可能なネットワークのロケーションにおいてストアされて、そして携帯電話サービスプロバイダによって管理される。例えば、セルラサービスプロバイダが位置ロケーションサービスも供給するかもしれず、それで、モバイル装置の位置はセルラネットワークの外で関係者に伝達されている必要はない。
【0107】モバイル装置はブロック640に進んで、問合せを満足させている出力装置のリストを受取る。モバイル装置はローカルなデータベース問合せあるいはネットワークで結ばれたか、あるいはさもなければリモートデータベースから結果を受け取ることができる。
【0108】モバイル装置はブロック650に進んで、ユーザーに問合せの結果を表示するか、あるいはさもなければ提示する。例えば、UPAは問合せの結果を入手することができ、そして結果をユーザに対してディスプレイするために印刷アプリケーションへ送ることができる。」

引用文献1に記載された事項を検討する。
ア.段落【0103】(以下、「段落」を省き、単に【0103】などと呼ぶ。)の「図6は位置ロケーションサービスを用いてリモート出力装置を決定する方法600の簡素化されたフローチャートである。方法600はLSB出力装置が切望されたと決定することに応じて、例えば、図5の方法の間に行なわれることができる」との記載から、図5のフローチャートの方法と図6のフローとは相互に参酌できる関係にあり、以下、適宜に相互に参酌する。
【0107】のモバイル装置が受取る「問合せを満足させている出力装置のリスト」は、【0100】?【0101】の「ネットワーク位置の決定がLBSをサポートするのに十分であるかどうか決定」し、「利用可能なLSB出力装置を決定」し、この決定により「モバイル装置ロケーション近傍の予め決められた範囲内の出力装置又はサービスに対してネットワークのデータベースに問い合わせる」ことにより「ユーザーに出力装置とサービスオプションを提示」するとの記載から、「モバイル装置ロケーション近傍の」「利用可能な」「リモート出力装置」の「リスト」である。よって、「モバイル装置ロケーション近傍の利用可能なリモート出力装置のリストを得ること」をよみとることができる。

イ.【0105】の「モバイル装置はブロック620に進んで、ポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準あるいはパラメータを決定する」、例えば、「モバイル装置は出力装置、サービスプロバイダのアイデンティティーに関連したパラメータ、出力装置あるいはプロバイダから利用可能な出力のタイプに関連したパラメータ、出力装置への最大希望距離、および他のパラメータに関してユーザ入力を受取る」との記載から「出力装置、サービスプロバイダのアイデンティティーに関連したパラメータ、出力装置あるいはプロバイダから利用可能な出力のタイプに関連したパラメータ、出力装置への最大希望距離、および他のパラメータにより決定されるポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準あるいはパラメータ」をよみとることができ、【0106】?【0107】の「モバイル装置が問合せを作成するためにフィルター基準を利用」し、「基準を満たす出力装置とサービスプロバイダのアイデンティティーを決定するために出力装置とサービスプロバイダのデータベースに問い合わせ」、「モバイル装置は」「問合せを満足させている出力装置のリストを受取る」との記載から、「モバイル装置が問合せを作成するためにフィルター基準を利用し、基準を満たす出力装置とサービスプロバイダのアイデンティティーを決定するために出力装置とサービスプロバイダのデータベースに問い合わせ、問合せを満足させている出力装置のリストを受取る」ことをよみとることができる。これらを合わせると「出力装置、サービスプロバイダのアイデンティティーに関連したパラメータ、出力装置あるいはプロバイダから利用可能な出力のタイプに関連したパラメータ、出力装置への最大希望距離、および他のパラメータにより決定されるポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準あるいはパラメータを利用して問合せを作成して、基準を満たす出力装置とサービスプロバイダのアイデンティティーを決定するために出力装置とサービスプロバイダのデータベースに問い合わせ、問合せを満足させている出力装置のリストを受取ること」をよみとることができる。

ウ.【0101】?【0102】の「ユーザーに出力装置とサービスオプションを提示」、「モバイル装置が提示されたオプションに基づいてユーザ出力装置又はサービス選択を受け入れることができ」との記載から「ユーザーに出力装置とサービスオプションを提示し、提示されたオプションに基づいて出力装置又はサービス選択を可能にすること」をよみとることができる。

エ.【0097】の決定ブロック520で、「リモート出力が望ましいと決定するなら、モバイル装置は決定ブロック550に進んで、そしてロケーションベースのサービス(LBS)出力アプリケーションが望まれているかどうか決定」し、「LBS出力装置が望まれると決定する」との記載、【0099】の「ネットワーク位置の決定がLBSをサポートするのに十分である」との記載から、「ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境」をよみとることができる。図6のフローは前記ロケーションベースのサービス(LBS)環境(決定ブロック550でYESに分岐)におけるものであり、【0102】の「そして、選択されたイメージを選択済み出力装置へコミュニケートするためにブロック570に進む。モバイル装置は、例えば、選択された出力装置に基づいて自動的に、携帯電話リンクあるいはWiFiリンクのような、適切なハードウェアの構成を設定することができる」との記載から前記コミュニケートするためにロケーションベースのサービス(LBS)環境がアクティブであることをよみとることができる。他方、前記決定ブロック550に進み、決定が【0098】の「もしLBS出力装置が望まれないなら、モバイル装置がブロック554に進んで、」「前もって決定されたリモート出力装置とサービスを」「メモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索」して「オプションがユーザーに提示される」との記載、【0107】の「モバイル装置はローカルなデータベース問合せ」から「結果を受け取る」との記載から「LBS出力装置が望まれないなら、前もって決定されたリモート出力装置とサービスをメモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索したローカルなデータベース問合せによるオプションがユーザーに提示される」ことをよみとることができる。これらを合わせると、「ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境をアクティブにすることができ、前記ロケーションベースのサービスがサポートされた(LBS)の環境は、前記少なくともLBS出力装置を含み、モバイル装置のLBS出力装置が望まれないなら、前もって決定されたリモート出力装置とサービスをメモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索したローカルなデータベース問合せによるオプションがユーザーに提示されること」をよみとることができる。

オ.前記ア.?エ.のフローを実行するためにプロセッサを用いることは自明である。また、【0103】の「位置ロケーションサービスを用いてリモート出力装置を決定する方法」は、エ.の「ロケーションベースのサービスがサポートされた(LBS)の環境」をイネーブルにして(有効にして)成されることも自明である。よって、上記のフローを「実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境をイネーブルにするための方法」をよみとることができる。

ア.?オ.によれば、引用文献1には、位置ロケーションサービスを用いてリモート出力装置を決定、利用するための次の発明(以下、「引用文献1発明」と呼ぶ。)が示されている。

「モバイル装置ロケーション近傍の利用可能なリモート出力装置のリストを得ることと、
出力装置、サービスプロバイダのアイデンティティーに関連したパラメータ、出力装置あるいはプロバイダから利用可能な出力のタイプに関連したパラメータ、出力装置への最大希望距離、および他のパラメータにより決定されるポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準あるいはパラメータを利用して問合せを作成して、基準を満たす出力装置とサービスプロバイダのアイデンティティーを決定するために出力装置とサービスプロバイダのデータベースに問い合わせ、問合せを満足させている出力装置のリストを受取り、
ユーザーに出力装置とサービスオプションを提示し、提示されたオプションに基づいて出力装置又はサービス選択を可能にすることと、
ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境をアクティブにすることができ、前記ロケーションベースのサービスがサポートされた(LBS)の環境は、前記少なくともLBS出力装置を含み、モバイル装置のLBS出力装置が望まれないなら、前もって決定されたリモート出力装置とサービスをメモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索したローカルなデータベース問合せによるオプションがユーザーに提示されることと、
を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境をイネーブルにするための方法。」

(2) 引用文献2
本願優先権主張日前に頒布され原審で引用された刊行物である特開2003-196076号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

a.「【0017】一般に、ワイヤレスのアドホックネットワークには、デバイスが動作できるように予め登録されることを必要とする集中制御がない。代わりに、例えば、適切に使用可能にされたデバイスが予め定められた範囲内及び/又は視野方向にある場合、ワイヤレスアドホックネットワークはこれらのデバイス自体によって即時に形成される。…(中略)…ワイヤレスアドホックネットワークの一部を形成するデバイスのいくつか又はその全ては、一時的に、互いに対して物理的に近接すると、通信セッションを生じる。例えば、PDAがIR使用可能プリンタでの印刷のためにドキュメントを送信すると、アドホックネットワークが形成される。」

b.「【0023】第1のネットワーク102の一部を形成するのは出力デバイス106である。出力デバイス106としては、ある方法で第1ネットワーク102に連結することができる任意の出力デバイスが可能である。出力デバイス106の例としては、プリンタ及びファクシミリなどのレンダリングデバイス、CRT又はフラットパネルディスプレイなどの表示デバイス、及びファイルサーバなどのファイル記憶装置が挙げられる。
…(中略)…
【0025】他の実施の形態では、ドキュメントサービス116は、翻訳サービス、要約サービス、勧告 (recommender) サービス、強化(enrichment)サービスなど、デバイス固有ではない多数のサービスを含み、これらを単独で、又はデバイス固有サービス(例えば、印刷)の使用と併せて用いることができる。」

c.「【0036】サービス発見要求が306において送信される際に1つよりも多くの出力デバイスが範囲内にありうるため、利用可能なサービスのリストを送信することによって複数の出力デバイスがサービス発見要求に応答する可能性がある。従って、308において、モバイルコンピュータデバイスの範囲内にある出力デバイスの数によっては、サービス発見要求が行われる際に、利用可能なサービスのリストを複数受け取る場合がある。
【0037】…(中略)…
第1に出力デバイスを識別し、第2に特定のデバイスが行うことのできるサービスを識別する。更に他の実施の形態では、ユーザによりモバイルコンピュータデバイスにおいて出力デバイスを予め選択し、その存在を発見要求によって確認することができる。」

d.「【0041】310では、モバイルコンピュータデバイスにとって先験的に既知である、予め定められた必要なサービスのリストから、ユーザが任意に定義可能なフィルタが、先験的に既知のサービスと、発見要求によって識別されたサービスに適用される。ユーザが任意に定義可能なフィルタは、ユーザが所望しないサービスを除去するか、又はユーザに対して表示されるサービスを分類することができる。例えば、フィルタは、モバイルコンピュータデバイスに最も近いと識別されるサービスを分類及び選択して、ディスプレイ上に最初に列挙することができる。
【0042】312では、モバイルコンピュータデバイス110はユーザから生じた要求を受信し、先に指定されたドキュメントリファレンスに対して選択されたサービスを行う。ユーザから生じた要求は、選択されたサービスを行う出力デバイスのタイプ(例えば、名前、種類、製造元、フォーマットなど)を識別する。」

(a)a.の「ワイヤレスのアドホックネットワーク」は、「使用可能にされたデバイスが予め定められた範囲内及び/又は視野方向にある場合」、「これらのデバイス自体によって即時に形成される」と記載されており、この記載から、リモートコンピューティング環境を形成しているとみることができる。
(b)b.c.d.には「連結することができる任意の出力デバイス」として「プリンタ及びファクシミリなどのレンダリングデバイス、CRT又はフラットパネルディスプレイなどの表示デバイス、及びファイルサーバなどのファイル記憶装置」が挙げられること、「翻訳」「サービスなど、デバイス固有ではない多数のサービスを含み、これらを単独で、又はデバイス固有サービス(例えば、印刷)の使用と併せて用いる」こと、「1つよりも多くの出力デバイスが範囲内にありうるため、利用可能なサービスのリストを送信することによって複数の出力デバイスがサービス発見要求に応答する可能性があ」り「モバイルコンピュータデバイスの範囲内にある出力デバイスの数によっては、サービス発見要求が行われる際に、利用可能なサービスのリストを複数受け取る」場合があること、「第1に出力デバイスを識別し、」「第2に」「特定のデバイスが行うことのできるサービスを識別する」こと、「ユーザによりモバイルコンピュータデバイスにおいて出力デバイスを予め選択し、その存在を発見要求によって確認する」こと、「モバイルコンピュータデバイスにとって先験的に既知である、予め定められた必要なサービスのリストから、ユーザが任意に定義可能なフィルタが、先験的に既知のサービスと、発見要求によって識別されたサービスに適用され」「ユーザが任意に定義可能なフィルタは、ユーザが所望しないサービスを除去するか、又はユーザに対して表示されるサービスを分類することができ」、例えば、「フィルタは、モバイルコンピュータデバイスに最も近いと識別されるサービスを分類及び選択して、ディスプレイ上に最初に列挙すること」、「ユーザから生じた要求は、選択されたサービスを行う出力デバイスのタイプ(例えば、名前、種類、製造元、フォーマットなど)を識別する」ことが記載されている。

3.2.3 対比
本件補正発明と引用文献1発明とを対比する。
(1)引用文献1発明の「リモート出力装置」は【0097】に「印刷」と記載されていることから周辺装置である印刷装置が含まれる。よって、引用文献1発明の「利用可能なリモート出力装置のリストを得ること」と本件補正発明の「利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ること」とに実質的な差異はない。

(2)引用文献1発明の各「パラメータ(値)」、「ポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準」は、引用文献1に「1000メートルのモバイル装置ロケーションの範囲以内にあることを望む」との例示からパラメータが「閾値」であるものが示されている点を加味れば、本件補正発明の「閾値のルール」に相当し、引用文献1発明の「問合せを満足させている出力装置のリスト」は、基準によりフィルタリングされて自動抽出、選択された出力装置とみることができるので本件補正発明の「規定する閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスを自動で選ぶ」ことに相当する。これらの点をふまえると、引用文献1発明の「出力装置、サービスプロバイダのアイデンティティーに関連したパラメータ、出力装置あるいはプロバイダから利用可能な出力のタイプに関連したパラメータ、出力装置への最大希望距離、および他のパラメータにより決定されるポテンシャルなLBS出力装置をフィルタリングするための基準あるいはパラメータを利用して問合せを作成して、基準を満たす出力装置とサービスプロバイダのアイデンティティーを決定するために出力装置とサービスプロバイダのデータベースに問い合わせ、問合せを満足させている出力装置のリストを受取り」と本件補正発明の「前記利用可能なリモート周辺デバイスの要求数と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記要求数の要求されるタイプとの両方の最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも2つを自動で選ぶこと」とは、「前記利用可能なリモート周辺デバイスと前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記タイプとの両方を規定する閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスを自動で選ぶこと」で共通する。

(3)引用文献1発明の「ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境」、「LBS出力装置」、「モバイル装置」は、それぞれ本件補正発明の「リモートコンピューティング環境」、「リモート周辺デバイス」「移動デバイス」に相当し、引用文献1発明の「ロケーションベースのサービスがサポートされた(LBS)の環境」は、「モバイル装置のLBS出力装置が望まれないなら、前もって決定されたリモート出力装置とサービスをメモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索したローカルなデータベース問合せによるオプションがユーザーに提示される」、いわば、ローカルな環境に比較して異なるロケーションベースのサービスの環境とみることができ、この環境は前記ローカルな環境とは異なるユーザ経験を提供するものであるといえる。してみれば、引用文献1発明の「前記ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境をアクティブにすることができ、前記ロケーションベースのサービスがサポートされた(LBS)の環境は、前記少なくともLBS出力装置を含み、モバイル装置のLBS出力装置が望まれないなら、前もって決定されたリモート出力装置とサービスをメモリにストアされたリストからあるいはネットワーク装置に接続されたデータベースから検索したローカルなデータベース問合せによるオプションがユーザーに提示されること」と本件補正発明の「前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも2つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、こと」とは「前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、こと」で共通する。

(4)引用文献1発明の「を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記ロケーションベースのサービス(LBS)がサポートされた環境をイネーブルにするための方法」と本件補正発明の「を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための方法」とに実質的な差異はない。

(1)?(4)の対比によれば、引用文献1発明と本件補正発明とは次の点で一致し、そして相違している。

〈一致点〉
「以下の動作、
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ることと、
前記利用可能なリモート周辺デバイスと前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記タイプとの両方を規定する閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスを自動で選ぶことと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、こと
を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための方法。」

〈相違点1〉
前記利用可能なリモート周辺デバイスと前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記タイプとの両方を規定する閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスを自動で選ぶことが、本件補正発明は、前記利用可能なリモート周辺デバイス「の要求数」と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記「要求数の要求される」タイプとの両方「の最小の組み合わせ」を規定する「最小」閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイス「のうちの少なくとも2つ」を自動で選ぶことであるのに対し、引用文献1発明はそのようであるのか不明である点。
〈相違点2〉
リモートコンピューティング環境が、本件補正発明は、少なくとも「2つの」選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含むのに対し、引用文献1発明はそのようであるのか不明である点。

3.2.4 相違点についての当審判断
〈相違点1〉について
引用文献2には、「ワイヤレスのアドホックネットワーク」は、「使用可能にされたデバイスが予め定められた範囲内及び/又は視野方向にある場合」、「これらのデバイス自体によって即時に形成される」と記載されており、リモートコンピューティング環境におけることが示されている。また、引用文献2には、「連結することができる任意の出力デバイス」として「プリンタ及びファクシミリなどのレンダリングデバイス、CRT又はフラットパネルディスプレイなどの表示デバイス、及びファイルサーバなどのファイル記憶装置」が挙げられること、「翻訳」「サービスなど、デバイス固有ではない多数のサービスを含み、これらを単独で、又はデバイス固有サービス(例えば、印刷)の使用と併せて用いる」こと、「1つよりも多くの出力デバイスが範囲内にありうるため、利用可能なサービスのリストを送信することによって複数の出力デバイスがサービス発見要求に応答する可能性があ」り「モバイルコンピュータデバイスの範囲内にある出力デバイスの数によっては、サービス発見要求が行われる際に、利用可能なサービスのリストを複数受け取る」場合があること、「第1に出力デバイスを識別し、」「第2に」「特定のデバイスが行うことのできるサービスを識別する」こと、「ユーザによりモバイルコンピュータデバイスにおいて出力デバイスを予め選択し、その存在を発見要求によって確認する」こと、「モバイルコンピュータデバイスにとって先験的に既知である、予め定められた必要なサービスのリストから、ユーザが任意に定義可能なフィルタが、先験的に既知のサービスと、発見要求によって識別されたサービスに適用され」「ユーザが任意に定義可能なフィルタは、ユーザが所望しないサービスを除去するか、又はユーザに対して表示されるサービスを分類することができ」、例えば、「フィルタは、モバイルコンピュータデバイスに最も近いと識別されるサービスを分類及び選択して、ディスプレイ上に最初に列挙すること」、「ユーザから生じた要求は、選択されたサービスを行う出力デバイスのタイプ(例えば、名前、種類、製造元、フォーマットなど)を識別する」ことが記載されている。
前記「予め選択」された「出力デバイス」、「フィルタ」に関するサービスの「任意の定義」は「ルール」に相当し、「連結することができる任意の出力デバイス」として「プリンタ及びファクシミリなどのレンダリングデバイス、CRT又はフラットパネルディスプレイなどの表示デバイス、及びファイルサーバなどのファイル記憶装置」は、数の観点からして、使用(利用)可能なリモート周辺デバイスの「要求数」に相当し、「デバイス固有サービス(例えば、印刷)の使用と併せて用いる」との記載からデバイスとデバイス固有のサービスが対応していてサービスとデバイスが等価に選択されるものが示され、「選択されたサービスを行う出力デバイスのタイプ(例えば、名前、種類、製造元、フォーマットなど)を識別する」といった識別に係る「出力デバイス識別、サービス識別」は、使用(利用)可能なリモート周辺デバイスの「要求数」と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記「要求数の要求されるタイプ」との両方の組み合わせに相当し、このタイプに係る言及に加え、「フィルタは、モバイルコンピュータデバイスに最も近いと識別されるサービスを分類及び選択して、ディスプレイ上に最初に列挙する」ことは、「最小の組み合わせ(出力デバイス識別、サービス識別)」を規定する「最小」閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスを自動で選ぶことに相当する。しかも、「連結することができる任意の出力デバイスが可能」であり「プリンタ及びファクシミリなどのレンダリングデバイス、CRT又はフラットパネルディスプレイなどの表示デバイス、及びファイルサーバなどのファイル記憶装置」があり、「「翻訳」「サービスなど、デバイス固有ではない多数のサービスを含み、これらを単独で、又はデバイス固有サービス(例えば、印刷)の使用と併せて用いる」ことができることから、デバイス「のうちの少なくとも2つ」を選ぶことは必要により適宜なされる態様でしかない。してみれば、引用文献2には、リモートコンピューティング環境におけるものであり、使用(利用)可能なリモート周辺デバイスの「要求数」と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記「要求数の要求されるタイプ」との両方の「最小の組み合わせ」を規定する「最小」閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイス「のうちの少なくとも2つ」を自動で選ぶことに相当する技術が示されている。
引用文献1発明において、前記利用可能なリモート周辺デバイスと前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記タイプとの両方を規定する閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイスを自動で選ぶことが、前記利用可能なリモート周辺デバイス「の要求数」と前記利用可能なリモート周辺デバイスの前記「要求数の要求される」タイプとの両方「の最小の組み合わせ」を規定する「最小」閾値のルールを満たす前記利用可能なリモート周辺デバイス「のうちの少なくとも2つ」を自動で選ぶことであると成すことは、前記引用文献2発明の技術を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

〈相違点2〉について
前記〈相違点1〉について、において言及した事項に「整合」させ、引用文献1発明において、リモートコンピューティング環境が、少なくとも「2つの」選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含むと成すことは、当業者が容易になし得ることである。

したがって、本件補正発明の構成は、引用文献1発明において、引用文献2に示された技術を参酌し適用することにより当業者が容易になし得ることである。

そして、本件補正発明の構成により奏する効果も引用文献1発明および引用文献2の技術から当然予測される範囲内のもので格別顕著なものとは認められない。

よって、本件補正発明は当業者が引用文献1発明および引用文献2の技術から容易に発明することができたものである。


3.2.5 小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。

4. むすび
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。また、仮に、本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとしても、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成26年5月2日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成25年8月26日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(再掲する。以下「本願発明」という。)

「以下の動作、
利用可能なリモート周辺デバイスのリストを得ることと、
前記利用可能なリモート周辺デバイス数と前記利用可能なリモート周辺デバイスのタイプとの両方の最小の組み合わせに基づいて、前記利用可能なリモート周辺デバイスのうちの少なくとも1つを選ぶことと、
前記リモートコンピューティング環境をアクティブにすることであって、前記リモートコンピューティング環境は、前記少なくとも1つの選ばれた利用可能なリモート周辺デバイスを含み、移動デバイスのローカルコンピューティング環境と比較して異なるユーザーエクスペリエンスを提供する、ことと
を実行するためにプロセッサを用いることを含む、前記リモートコンピューティング環境をイネーブルにするための方法。」

(2)引用文献
原審の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である前記引用文献1、2には、前記第2の3.2.2(1)及び(2)で摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明は、前記第2の「3.補正の目的、独立特許要件について」で検討した本件補正発明における発明特定事項である、「周辺デバイスの要求数」、「前記要求数の要求されるタイプ」、「最小の組み合わせを規定する最小閾値のルールを満たす」、「少なくとも2つを自動で選ぶ」なる限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3.2に記載したとおり、引用文献1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-20 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-14 
出願番号 特願2011-551047(P2011-551047)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 修治田中 幸雄  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 小林 大介
山崎 達也
発明の名称 複数のユーザーインターフェース、環境、および/またはバーチャル・マシンをサポートするためのウェイクアップトリガ  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 直樹  
代理人 井上 正  
代理人 佐藤 立志  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 井関 守三  

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