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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1304974
審判番号 不服2014-18057  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-10 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2012-182628「突起付きスリーブ型可撓性軸継ぎ手」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月27日出願公開、特開2012-255555〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2008年1月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年1月17日、米国)を国際出願日とする特願2009-546403号の一部を平成24年8月21日に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月1日付けで拒絶査定がされ(発送日:同年5月13日)、これに対して、平成26年9月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成25年12月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
可撓性環状スリーブ、駆動側エンドピース、及び被駆動側エンドピースを有し、前記エンドピースの双方は軸に接続するようになっており、前記駆動側エンドピースは軸方向に延びる複数の駆動側突起を有し、前記被駆動側エンドピースは軸方向に延びる駆動側突起に対応した数の被駆動側突起を有する軸継ぎ手であって、
前記駆動側突起は、前記被駆動側突起間の空間内に緩やかに適合されるとともに隣接する突起同士の間には間隙が設けられ、前記スリーブは前記突起の外周周りにぴったり適合し、
各突起には、その外周に1又は2本の突起溝が設けられ、
前記スリーブは、その内周に軸方向に延びる複数の溝歯と複数の間隙歯とを有し、前記溝歯と間隙歯は、各突起に設けられた突起溝の数の溝歯と単一の間隙歯とが交互に並ぶように配置され、
前記溝歯は前記突起溝と噛み合うとともに前記間隙歯は前記間隙と噛み合い、
各々のエンドピースが4以上の突起を備える
ことを特徴とする軸継ぎ手。」

第2 刊行物
1 刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された米国特許第2740271号明細書(以下「刊行物1」という。)には、「可撓性カップリング」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付したものである。また、翻訳文は当審による仮訳である。以下同じ。)。

(1)第1欄15行?21行
”This invention relates to new and useful improvements in flexible couplings for coupling coaxially aligned shafts, and it is among the objects thereof to provide a flexible coupling which is of simple construction, flexible in its operation and adapted to allow for misalignment of the coupled shafts without appreciable vibration or unbalance. ”

「本発明は、同軸上のシャフトを連結するための可撓性カップリングにおける新規かつ有用な改良に関するものであって、簡単な構造で、物体間に、その動作中において可撓性であり、感知できるほどの振動やアンバランスなしに連結されたシャフトの位置ずれを許容するような可撓性カップリングを提供するものである。」

(2)第1欄36行?43行
”With reference to the several figures of the drawing, the coupling comprises hub portions 1 and 2 with flange portions 3 and 4 which are cut away in the manner shown in Figure 1 to permit the cut away flange portions to interact in driving alignment when the coupling elements are assembled on a pair of shafts 5 and 6. Coupling elements 1 and 2 are secured to the shafts in the usual manner as by keys 7 and 8.”

「図面の幾つかの図を参照すると、カップリングは、カップリングエレメントが一対のシャフト5,6に取り付けられた際に駆動軸合わせ作用を行うとともに図1では切除されているフランジ部3,4を備えたハブ部1,2から構成される。カップリングエレメント1及び2は、キー7及び8のような通常の手段でシャフトに固定されている。」

(3)第1欄44行?第2欄7行
”As shown in Figure 3, the peripheries of the coupling elements are provided with teeth 9, such as are employed in silent belt drives, for receiving flexible belted material 10 having teeth interacting with the teeth 9 of the coupling flanges. Such a flexible belting material is shown in Figure 4 and consists of rubberized fabric structures with metal reinforcing 11, if needed. When the coupling parts 1 and 2 are assembled by moving them axially with the cut out portions of the flanges interacting, the belting material 10 is slipped over the teeth 9 in the same manner as a belt would be placed on a pulley, except that the flexible belting material is an annular member prefabricated in the form of an endless belt that fits snugly on the teeth 9 of the coupling flanges. The tooth portions of the couplings may be grooved as shown at 12 to receive rings 13 which may be made of spring steel or other suitable material which, as shown in Fig. 2, constitute guides to retain the belting material 9 when assembled on the coupling flanges.”

「図3に示すように、カップリングエレメントの外周には、例えばサイレントベルト駆動に用いられるような、カップリングフランジの歯9と相互作用する歯を有する可撓性ベルト付き材10を受け入れるための歯9が設けられている。このような可撓性ベルト材は図4に示されており、必要に応じて金属強化材11を有するゴム入りの布帛構造体で構成される。カップリング部1,2が相互作用するフランジの切欠き部分が軸方向にそれらを移動させることにより組み立てられたとき、可撓性ベルト材がカップリングフランジの歯9にぴったりと合う無端ベルトの形で予め製造された環状の部材であることを除いて ベルトがプーリに巻き掛けられるのと同様の方法で、ベルト材10は歯9の上に滑らされる。カップリングの歯部は符号12で示すように、バネ鋼または他の適切な材料から作られるリング13を受ける溝を設けてもよく、図2に示すように、カップリングフランジが組み立てられたときベルト材9を保持するためのガイドを構成する。」

(4)第2欄8行?16行
”In operation the coupling, when assembled in the manner shown in Figures 1 and 2 of the drawing, provides a loose connection with ample space between the coacting coupling elements to prevent contact and they are maintained in their separated position by the toothed flexible belting material 10. In operation the coupling elements are separated and float, as it were, through their engagement with the flexible belting material that completely surrounds them.”

「図1及び図2に示すように組み立てられたカップリングは、その動作中、協働するカップリングエレメント間の十分な空間が接触を防止するための緩い接続をもたらし、それらは、歯付き可撓性ベルト材10により、それらの分離された位置を維持する。動作中は、カップリングエレメントは、それらを完全に囲む可撓性ベルト材との係合を通じて、言わば、分離し浮いている。」

(5)上記(3)の「カップリング部1,2が相互作用するフランジの切欠き部分が軸方向にそれらを移動させることにより組み立てられ」との記載及び図1ないし図3からみて、カップリング部1,2は、一方のフランジの切欠き部分に、他方のフランジの切欠かれていない部分を受け入れる構造を有し、該フランジの切欠かれていない部分は、シャフト方向に延出する部分(以下「延出部」という。)であり、各カップリング部1,2は、各々3個の前記延出部を有することがわかる。

(6)上記(4)の「協働するカップリングエレメント間の十分な空間が接触を防止するための緩い接続をもたらし」との記載及び図1からみて、カップリング部1側延出部は、カップリング部2側延出部間の十分な空間内に接触を防止するようにカップリング部2側延出部との間に空間を設けて配置されることがわかる。

(7)上記(3)の「カップリングエレメントの外周には、・・・、カップリングフランジの歯9と相互作用する歯を有する可撓性ベルト付き材10を受け入れるための歯9が設けられている」との記載、同(3)の「可撓性ベルト材がカップリングフランジの歯9にぴったりと合う無端ベルトの形で予め製造された環状の部材である」との記載及び図1ないし図3からみて、歯付き可撓性ベルト材10は、延出部の外周の歯9にぴったりと合うことがわかる。

(8)上記(3)の「カップリングエレメントの外周には、・・・、カップリングフランジの歯9と相互作用する歯を有する可撓性ベルト付き材10を受け入れるための歯9が設けられている」との記載及び図1ないし図4からみて、以下のことがわかる。
・各延出部は、その外周に6枚の歯9を有し、各歯9の間に合計5本の凹部(以下「歯溝」という。)を設けること。
・歯付き可撓性ベルト材10は、その内周に、シャフト方向に延びて”歯溝と相互作用する歯”と、”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”とをそれぞれ複数有し、各延出部に設けられた歯溝の数の”歯溝と相互作用する歯”と単一の”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”とが交互に並ぶように配置すること。
・前記”歯溝と相互作用する歯”は前記歯溝と噛み合っており、”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”を
カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間の空間(上記(6)参照)内に配置すること。

(9)上記(6)で示した「カップリング部1側延出部は、カップリング部2側延出部間の十分な空間内に接触を防止するようにカップリング部2側延出部との間に空間を設けて緩く接続されること」及び上記(8)で示した「前記”歯溝と相互作用する歯”は前記歯溝と噛み合っており」からみて、カップリング部1,2間の動力伝達は、延出部の外周の歯溝と、歯付き可撓性ベルト材10が有する歯との相互作用により行われるといえる。

これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「歯付き可撓性ベルト材10、カップリング部1、及びカップリング部2を有し、前記カップリング部1,2の双方はシャフト5,6に接続するようになっており、前記カップリング部1はシャフト方向に延びる3個のカップリング部1側延出部を有し、前記カップリング部2はシャフト方向に延びるカップリング1側延出部に対応した数のカップリング部2側延出部を有する可撓性カップリングであって、
カップリング部1側延出部は、カップリング部2側延出部間の空間内に接触を防止するように緩く接続されるとともに隣接する延出部同士の間には空間が設けられ、前記歯付き可撓性ベルト材10は、前記延出部の外周の歯9にぴったりと合っており、
各延出部には、その外周に5本の歯溝が設けられ、
前記歯付き可撓性ベルト材10は、その内周にシャフト方向に延びる複数の”歯溝と相互作用する歯”と複数の”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”とを有し、前記”歯溝と相互作用する歯”と”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”は、各延出部に設けられた歯溝の数の”歯溝と相互作用する歯”と単一の”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”とが交互に並ぶように配置され、
前記”歯溝と相互作用する歯”は前記歯溝と噛み合うとともに前記”カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯”は前記空間内に配置され、
各々のカップリング部1,2が3個の延出部を備える
可撓性カップリング。」

2 刊行物2
また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された実願平3-60420号(実開平5-12757号)のCD-ROM(以下「刊行物2」という。)には、「カップリング」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、動力伝達用のカップリングの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のカップリングは、軸の端部間で動力を伝達するため等に用いられるものであり、クラッチと違って伝動を断つことはできないが、両軸を比較的ラフな芯出しで連結できることや分離が容易であること等の利点があることから、試練機や各種の装置に広く使用されている。」

(2)「 【0015】
(実施例1)
図1は本考案の実施例1に係るカップリングCの全体構成を示し、このカップリングCは1つのタイミングベルト1と、このベルト1に噛合される第1及び第2の2つのタイミングプーリ3,9とで構成される。上記タイミングベルト1はゴムからなるベルト本体内に補強体としてのエンドレスの複数本の心線(図示せず)を埋設してなる公知構造のもので、その内周に複数(図では20個)の歯2,2,…がベルト長さ方向に一定ピッチで突設されている。
【0016】
これに対し、第1及び第2のタイミングプーリ3,9は板金をプレス加工等により成形されたもので、第1のプーリ3は、図2にも示すように、軸取付孔4を有するボス5が表面側に突設された円板状の本体6と、その外周に等角度間隔をあけて突設された半径方向外側に延びる複数(図では10個)の連結部7,7,…と、各連結部7の外端から背面側にプーリ3の軸心方向に沿って延びる複数の歯8,8,…とを備えている。・・・(略)・・・。
【0017】
一方、第2のタイミングプーリ9は基本的に第1のタイミングプーリ3と同じであり、図3にも示すように、軸取付孔10を有するボス11が表面側に突設された円板状の本体12と、その外周に等角度間隔をあけて突設された半径方向外側に延びる複数(10個)の連結部13,13,…と、各連結部13の外端から表面側にプーリ9の軸心方向に沿って延びる複数の歯14,14,…とを備えている。・・・(略)・・・。
【0018】
そして、図4に示すように、動力伝達状態で上記第1及び第2のタイミングプーリ3,9同士が互いに同心状に近接配置されて、一方のプーリ3(又は9)の各歯8(又は14)が他方のプーリ9(又は3)の歯14,14(又は8,8)間に嵌め込まれ、両プーリ3,9の歯8,8,…,14,14,…により同じ平面内で円周方向に交互に一定ピッチで並ぶ歯が構成され、この歯にタイミングベルト1がプーリ3,9外周側から噛合されるようになっている。
【0019】
・・・(略)・・・この軸の回転は第1のプーリ3に伝達され、このプーリ3の各歯8から該歯8とは円周方向に隣り合った第2のプーリ9の歯14にタイミングベルト1の歯2を介して伝わり、このことにより該第2のプーリ9及びそれと一体の軸が回転駆動される。また、逆に、第2のプーリ9から第1のプーリ3に回転動力を伝達するときには、上記と逆の伝動経路で動力が伝達される。
【0020】及び【0021】(略)
【0022】
さらに、両プーリ3,9間の歯8,8,…,14,14,…に噛み合うタイミングベルト1はゴム製で、ある程度の伸縮性を有するので、カップリングCの組立時に両プーリ3,9の軸心が多少位置ずれしていても、それはベルト1の伸縮により吸収でき、両軸の心出しが容易となる。」

(3)上記(2)の「両プーリ3,9の歯8,8,…,14,14,…により同じ平面内で円周方向に交互に一定ピッチで並ぶ歯が構成され、この歯にタイミングベルト1がプーリ3,9外周側から噛合されるようになっている。」(段落【0018】)との記載、同(2)の「この軸の回転は第1のプーリ3に伝達され、このプーリ3の各歯8から該歯8とは円周方向に隣り合った第2のプーリ9の歯14にタイミングベルト1の歯2を介して伝わり、このことにより該第2のプーリ9及びそれと一体の軸が回転駆動される。」(段落【0019】)との記載及び図4からみて、プーリ3、9間の回転動力の伝達を、各プーリ3,9の各歯8,14とタイミングベルト1の歯2間に形成された凹部(以下「歯溝」という。)との噛合により行うといえる。


これらの記載事項、認定事項及び図面の図示内容からみて、刊行物2には、次の事項(以下「刊行物2に記載された事項」という。)が記載されている。

「一方のプーリ3の歯8が他方のプーリ9の歯14間に嵌め込まれ、両プーリ3,9の歯8,14により円周方向に交互に一定ピッチで並ぶ歯8,14が形成され、これらの歯8,14にタイミングベルト1が噛合されるようになっているカップリングにおいて、各々のプーリ3,9が10個の連結部7,13を備えること。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「歯付き可撓性ベルト材10」は前者の「可撓性環状スリーブ」に相当し、以下同様に、
どちらのカップリング部を駆動側又は被駆動側にするかは適宜決定することであるから「カップリング部1」及び「カップリング部2」はそれぞれ「駆動側エンドピース」及び「被駆動側エンドピース」に、
「シャフト5,6」及び「シャフト方向」はそれぞれ「軸」及び「軸方向」に、
「3個のカップリング部1側延出部」は「複数の駆動側突起」に、
「カップリング部2側延出部」は「被駆動側突起」に、
「可撓性カップリング」は「軸継ぎ手」に、
「接触を防止するように緩く接続される」は「緩やかに適合される」に、
「延出部同士の間には空間が設けられ」は「突起同士の間には間隙が設けられ」に、
「外周の歯9にぴったり合っており」は「外周周りにぴったり適合し」に、
「歯溝」は「突起溝」に、
「歯溝と相互作用する歯」は「溝歯」に、
「カップリング部1側延出部とカップリング部2側延出部との間に介在する歯」は「間隙歯」に、
「空間内に配置され」は「空隙と噛み合い」にそれぞれ相当する。
また、後者の「5本の歯溝」と前者の「1又は2本の突起溝」は「複数の突起溝」という限りで共通し、同様に、
「3個の延出部」と「4以上の突起」は「複数の突起」という限りで共通する。

したがって両者は、
「可撓性環状スリーブ、駆動側エンドピース、及び被駆動側エンドピースを有し、前記エンドピースの双方は軸に接続するようになっており、前記駆動側エンドピースは軸方向に延びる複数の駆動側突起を有し、前記被駆動側エンドピースは軸方向に延びる駆動側突起に対応した数の被駆動側突起を有する軸継ぎ手であって、
前記駆動側突起は、前記被駆動側突起間の空間内に緩やかに適合されるとともに隣接する突起同士の間には間隙が設けられ、前記スリーブは前記突起の外周周りにぴったり適合し、
各突起には、その外周に複数の突起溝が設けられ、
前記スリーブは、その内周に軸方向に延びる複数の溝歯と複数の間隙歯とを有し、前記溝歯と間隙歯は、各突起に設けられた突起溝の数の溝歯と単一の間隙歯とが交互に並ぶように配置され、
前記溝歯は前記突起溝と噛み合うとともに前記間隙歯は前記間隙と噛み合い、
各々のエンドピースが複数の突起を備える
軸継ぎ手。」
で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、突起溝が「1又は2本」であり、突起が「4以上」であるのに対し、
引用発明では、歯溝が「5本」であり、延出部が「3個」である点。

第4 当審の判断
そこで、相違点について検討する。

上述したとおり、刊行物2には、「一方のプーリ3の歯8が他方のプーリ9の歯14間に嵌め込まれ、両プーリ3,9の歯8,14により円周方向に交互に一定ピッチで並ぶ歯8,14が形成され、これらの歯8,14にタイミングベルト1が噛合されるようになっているカップリングにおいて、各々のプーリ3,9が10個の連結部7,13を備えること。」が記載されている。

引用発明及び刊行物2に記載された事項は、連結されたシャフト間での位置ずれを許容するカップリングに関するものである点で共通する。

さらに、動力伝達を、引用発明では、延出部の外周の歯溝と、歯付き可撓性ベルト材10が有する歯との相互作用により行い(前記「第2」の「1(9)」を参照。)、他方、刊行物2に記載された事項では、各プーリ3,9の各歯8,14とタイミングベルト1の歯2間に形成された歯溝との噛合により行うものであるから(前記「第2」の「2(3)」を参照。)、引用発明及び刊行物2に記載された事項は、動力伝達を、歯と歯溝とからなる係合部を介して行うものである点でも共通する。

そして、刊行物2に記載された事項の連結部7,13は、本願発明のエンドピースが備える「突起」に相当するから、刊行物2に記載された事項は、4以上の突起を備えることを示唆しているといえる。

他方、引用発明において、カップリング部1,2が備える延出部の個数は、各シャフト5,6間で許容する位置ずれ(前記「第2」の「1(1)」を参照)の程度や伝達する動力の大きさ等に合わせて選択し得るものであるところ、刊行物2に記載された事項に照らせば、引用発明のカップリング部1,2が備える延出部(本願発明の「突起」に相当)の個数を4個以上に設定することは想起できることである。

さらに、カップリング部1,2の延出部の個数が多くなるにつれて、各延出部が有する歯溝の本数は、歯溝を設置可能な面積を考慮すれば、少なくなることは明らかである。

そうすると、引用発明において、カップリング部1,2が備える延出部を4個以上に設定することに合わせて、歯溝を5本から1又は2本に変更することは、当業者であれば適宜に設定し得るものである。

したがって、引用発明に刊行物2に記載された事項に基いて、引用発明の歯溝を「1又は2本」とし、延出部を「4以上」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が容易に予測できる範囲内のものであって、格別なものではない。

よって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-27 
結審通知日 2015-03-31 
審決日 2015-04-15 
出願番号 特願2012-182628(P2012-182628)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中川 隆司
稲葉 大紀
発明の名称 突起付きスリーブ型可撓性軸継ぎ手  
代理人 松浦 孝  
代理人 小倉 洋樹  

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