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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1304976
審判番号 不服2014-24700  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-03 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 特願2012-186743「媒体コンテンツを獲得および共用するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日出願公開、特開2013- 41589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
特願2008-534620号が,2006年10月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2005年10月3日(以下,「優先日」という。),アメリカ合衆国)に国際出願され,該出願を原出願とする特許法第44条第1号の規定による新たな特許出願として,本件審判に係る出願(以下,「本願」という。)が,平成24年8月27日に出願され,平成24年9月25日付けで審査請求がなされた。
そして,平成25年7月26日付けで拒絶理由通知(平成25年7月30日発送)がなされ,これに対して平成25年11月29日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ,平成26年2月14日付けで拒絶理由通知(平成26年2月18日発送)がなされ,これに対して平成26年5月15日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,平成26年7月3日付けで拒絶査定(平成26年8月19日謄本送達)がなされた。
これに対して,「原査定を取り消す,本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として平成26年12月3日付けで審判請求がなされると共に同日付けで手続補正がなされ,平成27年2月5日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされた。


第2.平成26年12月3日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成26年12月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容
平成26年12月3日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成26年5月15日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10の記載
「 【請求項1】
コンテンツを配信する方法であって,
第2のコンピュータ(28)において,コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記第2のコンピュータ(28)において,前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
前記第2のコンピュータ(28)において,第1のコンピュータ(12)からのダウンロード要求を受信し,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードし,
前記第2のコンピュータ(28)において,前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータ(12)と関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する,ことを含む方法。
【請求項2】
前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータ(12)と関係付けることが,
前記第1のコンピュータ(12)に関連付けられたユーザ暗号化キーを使用して前記コンテンツ暗号化キーを暗号化することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2のコンピュータ(28)によって,前記結合された媒体データ・ファイルを,前記第1のコンピュータ(12)に提供することをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ダウンロード要求が,署名済みダウンロード要求であり,
第2のコンピュータ(28)において,前記署名済みダウンロード要求の完全性を確認することをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ダウンロード要求が,暗号化されたダウンロード要求であり,
第2のコンピュータ(28)において,前記暗号化ダウンロード要求を解読することをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2のコンピュータ(28)によって実行されるとき,前記第2のコンピュータ(28)に,
コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
第1のコンピュータ(12)からのダウンロード要求を受信して,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードし,
前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータ(12)と関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する,
ことを含む動作を実施させる,記憶された複数の命令を有するコンピュータ可読媒体にあるコンピュータ・プログラム。
【請求項7】
前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータ(12)と関係付けるための命令が,
前記第1のコンピュータ(12)に関連付けられたユーザ暗号化キーを使用して前記コンテンツ暗号化キーを暗号化することを含む動作を実施するための命令を含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項8】
前記結合された媒体データ・ファイルを,前記第1のコンピュータ(12)に提供することを含む動作を実施するための命令をさらに含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項9】
前記ダウンロード要求が,署名済みダウンロード要求であり,
前記署名済みダウンロード要求の完全性を確認することを含む動作を実施するための命令をさらに含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
前記ダウンロード要求が,暗号化ダウンロード要求であり,
前記暗号化ダウンロード要求を解読することを含む動作を実施するための命令をさらに含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
を,

「 【請求項1】
コンテンツを配信する方法であって,
第2のコンピュータにおいて,コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
前記第2のコンピュータにおいて,第1のコンピュータからのダウンロード要求を受信し,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードし,
前記第2のコンピュータにおいて,前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する,ことを含み,
前記結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,ユーザ暗号化キーにより暗号化された前記コンテンツ暗号化キーとを含み,
前記ユーザ暗号化キーは,前記第1のコンピュータの公開キーで暗号化され,前記第2のコンピュータから前記第1のコンピュータに予め送信されたものである,
方法。
【請求項2】
前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付けることが,
前記第1のコンピュータに関連付けられたユーザ暗号化キーを使用して前記コンテンツ暗号化キーを暗号化することを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2のコンピュータによって,前記結合された媒体データ・ファイルを,前記第1のコンピュータに提供することをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ダウンロード要求が,署名済みダウンロード要求であり,
第2のコンピュータにおいて,前記署名済みダウンロード要求の完全性を確認することをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ダウンロード要求が,暗号化されたダウンロード要求であり,
第2のコンピュータにおいて,前記暗号化されたダウンロード要求を解読することをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2のコンピュータによって実行されるとき,前記第2のコンピュータに,
コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
第1のコンピュータからのダウンロード要求を受信して,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードし,
前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する,
ことを含む動作を実施させ,
前記結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,ユーザ暗号化キーにより暗号化された前記コンテンツ暗号化キーとを含み,
前記ユーザ暗号化キーは,前記第1のコンピュータの公開キーで暗号化され,前記第2のコンピュータから前記第1のコンピュータに予め送信されたものである,
記憶された複数の命令を有するコンピュータ可読媒体にあるコンピュータ・プログラム。
【請求項7】
前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付けるための命令が,
前記第1のコンピュータに関連付けられたユーザ暗号化キーを使用して前記コンテンツ暗号化キーを暗号化することを含む動作を実施するための命令を含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項8】
前記結合された媒体データ・ファイルを,前記第1のコンピュータに提供することを含む動作を実施するための命令をさらに含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項9】
前記ダウンロード要求が,署名済みダウンロード要求であり,
前記署名済みダウンロード要求の完全性を確認することを含む動作を実施するための命令をさらに含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
前記ダウンロード要求が,暗号化ダウンロード要求であり,
前記暗号化ダウンロード要求を解読することを含む動作を実施するための命令をさらに含む,請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正するものである。


2.目的要件
(1) 本件補正は,本願の願書に添付された特許請求の範囲,明細書,又は図面に基づくものといえるから,特許法第17条の2第3項の規定に適合しているといえる。また,特許法第17条の2第4項の規定に適合していることも明らかである。
そして,本件補正は,本件審判の請求と同時にする補正であり,上記「1.本件補正の内容」のとおり,特許請求の範囲についてする補正であるので,本件補正の目的を検討する。

(2) 補正前の請求項1に記載された「結合された媒体データ・ファイル」に関して,補正後の請求項1において,「前記暗号化された媒体データ・ファイルと,ユーザ暗号化キーにより暗号化された前記コンテンツ暗号化キーとを含み,前記ユーザ暗号化キーは,前記第1のコンピュータの公開キーで暗号化され,前記第2のコンピュータから前記第1のコンピュータに予め送信されたものである」との記載を追加することは,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を限定するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
してみると,本件補正の目的は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下,「限定的減縮」という。)に該当する。


3.独立特許要件
本件補正は,上記「2.目的要件」において示したように特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するから,本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1) 本件補正発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,補正後の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(再掲する。)

「 コンテンツを配信する方法であって,
第2のコンピュータにおいて,コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
前記第2のコンピュータにおいて,第1のコンピュータからのダウンロード要求を受信し,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードし,
前記第2のコンピュータにおいて,前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する,ことを含み,
前記結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,ユーザ暗号化キーにより暗号化された前記コンテンツ暗号化キーとを含み,
前記ユーザ暗号化キーは,前記第1のコンピュータの公開キーで暗号化され,前記第2のコンピュータから前記第1のコンピュータに予め送信されたものである,
方法。」

(2) 先行技術文献記載事項
ア.引用文献1
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の拒絶の理由で引用された文献である,再公表特許第2003/038704号(平成17年2月24日発行。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図とともに,次の記載がある。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同じ。)

A.「図1は,本発明の実施の形態1に関するコンテンツ情報譲渡装置の機能ブロック図を例示する。本実施の形態において,コンテンツ情報譲渡装置100は,コンテンツ情報格納部101と,権利情報格納部102と,譲渡処理部103と,送信部104を具備する。
コンテンツ情報格納部101は,コンテンツ情報105を格納する。ここにコンテンツ情報とは,図2に示すようにコンテンツ201と利用条件情報202などとから構成されていてもよい。コンテンツ201は,楽曲,静止画,動画,テキストなど再生される対象である。また,利用条件情報202は,コンテンツの利用に関する条件を定める情報であり,再生のための暗号鍵,再生可能となる日時,再生可能な期限,再生時に再生したことを知らせるサイトのIPアドレス,ホスト名,ドメイン名,ポート番号やURL,メールアドレスなどがある。コンテンツ情報は,コンテンツ201と利用条件情報202との両方を含んでいてもよいし,片方だけであってもよい。コンテンツ情報105は送信されることにより譲渡がされることが可能である。以下では,コンテンツ情報105の送信と譲渡を同じ意味で使用する。」(第7頁第24行?第36行)

B.「なお,コンテンツ情報譲渡装置100は,計算機によって実現可能である。すなわち,コンテンツ情報格納ステップと,権利情報格納ステップと,譲渡処理ステップと,送信ステップとを計算機に実行させるためのプログラムを用いることにより,計算機によってコンテンツ情報譲渡装置100を実現することができる。
コンテンツ情報格納ステップは,コンテンツ情報を格納するステップである。「格納する」とは,例えば,ハードディスク装置や不揮発性メモリにコンテンツ情報を保持し,必要に応じて読み出せるようにしておくことを意味する。
権利情報格納ステップは,権利情報を格納するステップである。例えば,ハードディスク装置や不揮発性メモリにコンテンツ情報を保持し,必要に応じて読み出せるようにしておくステップである。
譲渡処理ステップは,権利情報格納ステップにおいて格納された権利情報に基づいて,コンテンツ情報の譲渡のための情報である譲渡処理情報を生成するステップである。
送信ステップは,譲渡処理ステップにおいて生成された譲渡処理情報に基づいてコンテンツ情報を送信するステップである。」(第10頁第13行?第26行)

C.「なお,コンテンツ情報譲受装置600は,計算機によって実現可能である。すなわち,コンテンツ情報格納ステップと,権利情報格納ステップと,譲受処理ステップと,受信ステップとを計算機に実行させるためのプログラムを用いることにより,計算機によってコンテンツ情報譲受装置600を実現することができる。」(第13頁第48行?第14頁第1行)

D.「なお,コンテンツ情報譲渡装置100のコンテンツ情報の送信先はコンテンツ情報譲受装置600とは限らず,また,コンテンツ情報譲受装置600が受信するコンテンツ情報の送信元は,コンテンツ情報譲渡装置100とは限らないが,コンテンツ情報譲渡装置100が送信するコンテンツ情報をコンテンツ情報譲受装置600が受信するようにしてもよい。図10は,コンテンツ情報譲渡装置100が送信したコンテンツ情報をコンテンツ情報譲受装置600が受信する様子を例示する。また,コンテンツ情報譲渡装置100から権利情報を送信し,それをコンテンツ情報譲受装置600が受信するようにし,コンテンツ情報譲渡装置100とコンテンツ情報譲受装置600とで権利情報に従ってコンテンツ情報が送信および受信されるようにしてもよい。」(第14頁第45行?第15頁第3行)

イ.引用文献2
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の拒絶の理由で引用された文献である,特開平8-8851号公報(平成8年1月12日公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図とともに,次の記載がある。

E.「【0094】次に,第2の情報配布方式について説明する。図7は,第2の情報配布方式を示しており,情報の配送および配布鍵の転送ともに,慣用暗号方式を利用した構成である。ただし,第1の情報配布方式のように,配布鍵の転送に公開鍵暗号方式を利用しても構わない。
【0095】各情報端末103には,課金モジュール201内部の鍵記憶部303に固有の秘密鍵が記憶されている。この場合には,慣用暗号のため,秘密鍵は暗号化と復号化の両方に用いられる。以下,本方式の説明では,情報端末#iの秘密鍵をK_iとする。
【0096】秘密鍵K_iのデータベースはサービスセンタ104が管理しており,個々の情報端末103に対応する秘密鍵K_iはサービスセンタ104のみが把握可能である。情報供給局101はサービスセンタ104にアクセスし,秘密鍵情報を取得できる。ただし,本実施例では,情報端末103からは秘密鍵情報を取得できないものとする。
【0097】情報供給局101では,情報Pごとに固有の“配布鍵WK_P”を定め,情報を配布鍵により暗号化する。このときの暗号方式には,処理速度が高速な慣用暗号を利用する。この暗号化情報を,C_P=WK_P(P)と記述することにする。情報端末#jは,配布鍵WK_Pを得ることにより,暗号化配布情報を基にして通常の配布情報を復元することが可能である。
【0098】以下,図8のフローチャートを参照しながら,情報供給局101から情報端末#iへの情報の1次配布の手順を説明する。なお,情報供給局101では,既に,情報Pを固有の配布鍵WK_Pで暗号化し,情報P,暗号化配布情報C_Pおよび配布鍵WK_Pをリンクして図示しない記憶装置に格納してあるものとする。
【0099】最初に情報端末#iから情報供給局101へ情報Pの配布の要求が発生する(ステップS21)。情報供給局101は要求元の情報端末#iに対応する公開鍵K_iをサービスセンタ104から取得する(ステップS22)。
【0100】情報供給局101は情報端末#iとの間で認証プロトコルを実行し,情報端末#iの正当性を確認する(ステップS23)。ここでの認証プロトコルは,相手端末が確かに秘密鍵K_iを所持している事実を確認するものであり,例えば検査側(ここでは情報供給局101)から乱数を送り,被認証側(ここでは情報端末#i)がその乱数を秘密鍵K_iで暗号化して返送し,検査側では端末#iの鍵K_iで逆変換して送信した乱数が現れることを検査すればよい。
【0101】認証に成功した場合(ステップS24でYesの場合),情報供給局101は,暗号化情報C_Pに用いた配布鍵WK_Pを記憶装置から検索し(ステップS26),この配布鍵WK_Pを情報端末#iの秘密鍵で暗号化する(ステップS27)。このようにして生成される情報を暗号化配布鍵と呼ぶことにするとともに,D_iP=K_i(WK_P)と表記することにする。
【0102】次に,配布する情報Pの暗号化情報C_Pを検索し(ステップS28),暗号化配布情報C_Pおよび暗号化配布鍵D_iPを情報端末#iに配布する(ステップS29)。」

ウ.参考文献1
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2000-113048号公報(平成12年4月21日公開。以下,「参考文献1」という。)には,関連する図とともに,次の記載がある。

F.「【0022】次に,コンテンツ表示装置107のコンテンツ蓄積部414内部について詳細に説明する。図8は,コンテンツ蓄積部414に蓄積されているコンテンツファイルを表している。コンテンツ蓄積部414には,M個のコンテンツファイル7001 ?700Mが蓄積されている。それぞれのコンテンツファイル7001 ?700Mは,同様の構成である。例えば,m番目のコンテンツファイル700mは,コンテンツID 701m,P個のライセンスID 702m1?702mP,P個の暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mP,そして,暗号化されたコンテンツデータ704mから成る。コンテンツID 701mはコンテンツファイル700m内のコンテンツの識別子である。それぞれのライセンスID702m1?702mPは,コンテンツファイル700 m内のコンテンツを,コンテンツ提供者102から購入する際に使用したICカードのライセンス情報の識別子である。また,それぞれの暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mPは,ICカードがコンテンツ提供者から取得したユーザ鍵で暗号化されている。たとえば,コンテンツファイル700m内のp番目の暗号化されたコンテンツ鍵703 mpは,ライセンスID 702 mpを持つICカードの内部に保存されているユーザ鍵で暗号化されている。」

G.「【0029】次に,ユーザ鍵取得処理1102の詳細を述べる。ユーザ鍵取得処理1102は,ライセンス管理組織101が発行したライセンス情報をもとに,コンテンツ提供者が発行したユーザ鍵を,安全に,ICカードが取得できる方法であれば,どんな方法を用いてもよい。例えば,図13にその一例を示す。図13は,コンテンツ提供者102とICカード106の暗号通信のフロー図であり,公開鍵暗号方式を用いて,ユーザ鍵を安全に配送している。まず,コンテンツ提供者は,ユーザ鍵を生成する(処理1300)。そして先に取得した,ICカード106の認証公開鍵を用いてユーザ鍵を暗号化し,ICカード106に送信する(処理1301)。ICカード106は,コンテンツ提供者102から,暗号化されたユーザ鍵を受け取ると,自分の認証秘密鍵でそれを復号化する。以上の方法により,コンテンツ提供者102はICカード106にユーザ鍵を安全に送信できる。」

(3) 引用発明
ア.上記A.の「コンテンツ情報とは,図2に示すようにコンテンツ201と利用条件情報202などとから構成されていてもよい」との記載,及び上記D.の「コンテンツ情報譲渡装置100が送信するコンテンツ情報をコンテンツ情報譲受装置600が受信するようにしてもよい」との記載から,引用文献1には,「コンテンツを譲渡する方法」が記載されているといえる。

イ.上記A.の「利用条件情報202は,コンテンツの利用に関する条件を定める情報であり,再生のための暗号鍵,・・・(中略)・・・などがある」との記載から,「コンテンツ」の再生には「暗号鍵」が必要であること,すなわち当該「コンテンツ」は「暗号鍵」を使用して暗号化されていることが読み取れる。そして,暗号化されているコンテンツを得るためには,いずれかの段階でコンテンツを暗号化することが必要であるから,引用文献1には,「暗号鍵を使用してコンテンツを暗号化して,暗号化されたコンテンツを得る」ことが実質的に開示されていると解し得る。

ウ.上記イ.で示した,「コンテンツ」が暗号化されたものであることに加えて,上記A.の「コンテンツ情報とは,図2に示すようにコンテンツ201と利用条件情報202などとから構成されていてもよい。・・・(中略)・・・利用条件情報202は,コンテンツの利用に関する条件を定める情報であり,再生のための暗号鍵,・・・(中略)・・・などがある。」との記載,及び上記B.の「コンテンツ情報格納ステップと,・・・(中略)・・・とを計算機に実行させるためのプログラムを用いることにより,計算機によってコンテンツ情報譲渡装置100を実現することができる。コンテンツ情報格納ステップは,コンテンツ情報を格納するステップである。「格納する」とは,例えば,ハードディスク装置や不揮発性メモリにコンテンツ情報を保持し,必要に応じて読み出せるようにしておくことを意味する」との記載から,引用文献1には,「コンテンツ情報譲渡装置において,暗号鍵と暗号化されたコンテンツから構成されるコンテンツ情報を格納」することが記載されているといえる。

エ.上記D.の「コンテンツ情報譲渡装置100が送信するコンテンツ情報をコンテンツ情報譲受装置600が受信するようにしてもよい」との記載から,引用文献1には,「コンテンツ譲受装置がコンテンツ譲渡装置からコンテンツ情報をダウンロードする」ことが記載されているといえる。

オ.上記ア.ないしエ.に示したことから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 コンテンツを譲渡する方法であって,
暗号鍵を使用してコンテンツを暗号化して,暗号化されたコンテンツを得て,
コンテンツ情報譲渡装置において,暗号鍵と暗号化されたコンテンツから構成されるコンテンツ情報を格納し,
コンテンツ譲受装置がコンテンツ譲渡装置から前記コンテンツ情報をダウンロードする,
方法」

(4) 対比
ア. 引用発明と本件補正発明を対比する。
(ア) 引用発明は,「コンテンツを譲渡する方法」であって,本件補正発明は,「コンテンツを配信する方法」であるから,引用発明と本件補正発明は,「コンテンツを移動する方法」である点で共通する。

(イ) 上記A.の「コンテンツ201は,楽曲,静止画,動画,テキストなど再生される対象である」との記載,及び本願明細書の段落【0004】の,「媒体データ・ファイル(たとえば,歌)」との記載から,引用発明の「コンテンツ」は,本件補正発明の「媒体データ・ファイル」に相当するといえる。
また,引用発明の「暗号鍵」は,コンテンツを暗号化する際に使用するものであるから,「コンテンツ暗号化キー」と言い得るものである。
してみると,引用発明の「暗号鍵を使用してコンテンツを暗号化して,暗号化されたコンテンツを得」ることは,本願発明の「コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出」することに相当する。

(ウ) 引用発明において,「暗号鍵と暗号化されたコンテンツから構成されるコンテンツ情報を格納」することは,「暗号鍵」と「暗号化されたコンテンツ」を関係付けているといえる。また,上記B.の「コンテンツ情報譲渡装置100は,計算機によって実現可能である」との記載から,引用発明の「コンテンツ情報譲渡装置」は,「計算機」,すなわち「コンピュータ」であるといえる。
してみると,引用発明の「コンテンツ情報譲渡装置において,暗号鍵と暗号化されたコンテンツから構成されるコンテンツ情報を格納」することは,「前記第2のコンピュータにおいて,前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け」ることに相当する。

(エ)
a.本件補正発明においては,「前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する」ことが記載される一方,「前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロード」することが記載されている。当該両記載を,字義のとおり解すると,「結合された媒体データ・ファイルを形成する」一方で,「結合された媒体データ・ファイルを形成する」ために用いた「暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロード」するとの意味であると解することもできるが,本願明細書段落【0118】の「1,000,000の媒体データ・ファイルについて,1,000,000の固有CEK’が必要であり,そのそれぞれは,CEKが関係付けられる媒体データ・ファイルに結合される552。」との記載,及び本願明細書段落【0124】の「媒体配信システム18は,取り出された媒体配信ファイル500,504,506をユーザ14,たとえば媒体データ・ファイルを要求するユーザに結合し560,それにより,結合された媒体データ・ファイル526,528,530を創出する。それゆえ,各媒体データ・ファイル(たとえば,媒体データ・ファイル500)に関連付けられたコンテンツ暗号化キー(たとえば,CEK510)は,媒体データ・ファイルを要求するユーザ(たとえば,ユーザ14)の暗号化キー(たとえば,ユーザ暗号化キー422)を使用して暗号化される562ことが可能である。・・・(中略)・・・暗号化された562後,結合された媒体データ・ファイル526,528,530(暗号化されたCEK’510’,514’,516’をそれぞれ含む)が,パーソナル媒体デバイス12に提供される564ことが可能である。」との記載を参酌すると,「コンテンツ暗号化キー」が結合された「前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成」し,当該「結合された媒体データ・ファイル」をダウンロードする意味であると解するのが妥当であるといえる。

b.引用発明の「コンテンツ情報」は「暗号鍵と暗号化されたコンテンツから構成される」ものである。
また,上記C.の「コンテンツ情報譲受装置600は,計算機によって実現可能である」との記載から,引用発明の「コンテンツ情報譲受装置」は,「計算機」,すなわち「コンピュータ」であるといえる。

c.上記a.及びb.において示したことから,引用発明の「コンテンツ譲受装置がコンテンツ譲渡装置から前記コンテンツ情報をダウンロードする」ことと,本件補正発明の「前記第2のコンピュータにおいて,第1のコンピュータからのダウンロード要求を受信し,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロード」することと「前記結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,ユーザ暗号化キーにより暗号化された前記コンテンツ暗号化キーとを含」むことは,「前記第2のコンピュータにおいて,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードすることを含み,結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,前記コンテンツ暗号化キーとを含む」点で共通する。

イ.上記ア.において示したことから,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。

[一致点]
コンテンツを移動する方法であって,
コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記第2のコンピュータにおいて,前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
前記第2のコンピュータにおいて,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードすることを含み,
結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,前記コンテンツ暗号化キーとを含む,
方法。

[相違点1]
本件補正発明は,コンテンツを「配信」する方法であるのに対して,引用発明は,コンテンツを「譲渡」する方法である点。

[相違点2]
本件補正発明は,「暗号化された媒体データ・ファイルを創出」を「第2のコンピュータにおいて」行うのに対し,引用発明では,そのような構成でない点。

[相違点3]
本願発明は,「第1のコンピュータからのダウンロード要求を受信」すると,暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードする構成であるのに対し,引用発明は,「ダウンロード要求」に言及されていない点。

[相違点4]
本願発明は,「前記第2のコンピュータにおいて,前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータと関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する」構成であるのに対し,引用発明は,そのような構成でない点。

[相違点5]
本願発明は,「コンテンツ暗号化キー」が「ユーザ暗号化キーにより暗号化され」ているのに対し,引用発明は,暗号鍵を「ユーザ暗号化キーにより暗号化」することに言及されていない点。

[相違点6]
本願発明は,「前記ユーザ暗号化キーは,前記第1のコンピュータの公開キーで暗号化され,前記第2のコンピュータから前記第1のコンピュータに予め送信されたものである」構成を備えているのに対し,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

(5) 判断
ア.相違点1?3について
引用文献2(上記E.)には,「情報配布方式」において,「情報供給局」から「端末」に対して,「暗号化配布情報」の配布を行うことが記載されており,当該記載に見られるように,暗号化したコンテンツの配信は,極めて一般的に行われていることといえる。
また,引用文献2(上記E.)に「情報供給局101では,情報Pごとに固有の“配布鍵WK_P”を定め,情報を配布鍵により暗号化する」との記載が見られるように,暗号化されたコンテンツファイルの生成を,コンテンツを供給するコンピュータにおいて行うことは,暗号化したコンテンツを移動する際に通常行われていることといえるし,引用文献2(上記E.)に「最初に情報端末#iから情報供給局101へ情報Pの配布の要求が発生する」との記載が見られるように,コンテンツの移動が,当該コンテンツのダウンロードの要求に応じて行われることは,当然に行われていることといえる。
してみると,引用発明に引用文献2に見られる各周知技術を適用して,コンテンツを配信することとし,暗号化されたコンテンツの生成を「第2のコンピュータ」において行い,「ダウンロード要求」に応じてコンテンツを移動する構成,すなわち相違点1?3に係る構成とすることは,当業者が適宜になし得ることである。

イ.相違点4及び5について
(ア) 引用文献2(上記E.)の「情報端末#iの秘密鍵をK_iとする」との記載,「情報供給局101では,情報Pごとに固有の“配布鍵WK_P”を定め,情報を配布鍵により暗号化する」との記載,及び「情報供給局101は,・・・(中略)・・・この配布鍵WK_Pを情報端末#iの秘密鍵で暗号化する」との記載,並びに参考文献1(上記F.)の「m番目のコンテンツファイル700mは,・・・(中略)・・・P個の暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mP,そして,暗号化されたコンテンツデータ704mから成る。・・・(中略)・・・それぞれの暗号化されたコンテンツ鍵703 m1?703 mPは,ICカードがコンテンツ提供者から取得したユーザ鍵で暗号化されている。たとえば,コンテンツファイル700m内のp番目の暗号化されたコンテンツ鍵703 mpは,ライセンスID 702 mpを持つICカードの内部に保存されているユーザ鍵で暗号化されている。」との記載に見られるように,コンテンツを暗号化するのに用いた,コンテンツに固有のコンテンツ鍵を,端末に応じたユーザ鍵で暗号化することは周知技術である。
そして,コンテンツを暗号化するのに用いた,コンテンツに固有のコンテンツ鍵を,端末に応じたユーザ鍵で暗号化することは,コンテンツを再生するためには端末に応じたユーザ鍵が必要となるようにすることであるから,コンテンツを端末に関連付けることにほかならない。

(イ) 暗号鍵を転送する際に,当該暗号鍵自体を暗号化して転送することは,当業者が通常行うことであるから,引用発明においても,「コンテンツ情報」をダウンロードする際に,「コンテンツ情報」に含まれる「暗号鍵」に対して何らかの暗号化を施すことは,当然に行われることであるといえる。
してみると,引用発明に,上記(ア)に示した周知技術を適用して相違点5に係る構成とすることは,当業者が適宜になし得ることである。さらに,当該周知技術の動作が,コンテンツを端末に関連付けることにほかならないことは,上記(ア)において示したとおりであるから,引用発明に当該周知技術を適用して相違点4に係る構成とすることも,当業者が適宜になし得ることである。

ウ.相違点6について
(ア) 参考文献1(上記G.)の「コンテンツ提供者が発行したユーザ鍵を,安全に,ICカードが取得できる方法」として,「ICカード106の認証公開鍵を用いてユーザ鍵を暗号化し,ICカード106に送信する(処理1301)。ICカード106は,コンテンツ提供者102から,暗号化されたユーザ鍵を受け取ると,自分の認証秘密鍵でそれを復号化する」との記載に見られるように,端末の公開鍵で暗号化された暗号鍵があらかじめ端末に送信されることで,当該暗号鍵を共有することは,慣用技術であるといえる。

(イ) 上記イ.(イ)にも示したように,暗号鍵を転送する際に,当該暗号鍵自体を暗号化して転送することは,当業者が通常行うことであるから,上記イ.(ア)に示した周知技術においてユーザ鍵をあらかじめ共有する際にも,当該ユーザ鍵を暗号化して転送することが,当業者にとって当然であるといえる。
さらに,上記(ア)に示した,上記G.記載の「ユーザ鍵」が「取得できる方法」は,上記イ.(ア)に示した,上記F.の記載における「ユーザ鍵」を取得する方法であるから,上記(ア)に示した慣用技術は,上記イ.(ア)に示した周知技術の一部であるということもできる。
してみると,引用発明に,上記イ.(ア)に示した周知技術を適用して相違点5に係る構成とする際に,当該周知技術の一部である,上記(ア)に示した慣用技術を適用して相違点6に係る構成とすることも,当業者が適宜になし得ることである。

エ.小括
上記で検討したごとく,各相違点は格別のものではなく,そして,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明,並びに引用文献2及び参考文献1に見られる周知慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願発明は,上記引用発明,引用文献2,及び参考文献1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.補正却下の決定についてのむすび
上記3.に示したとおり,補正後の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3.本願発明について

1.本願発明
平成26年12月3日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成26年5月15日付け手続補正書の請求の範囲の請求項1?請求項10に記載された事項により特定されるものである。そして,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,補正前の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(再掲する。)

「 コンテンツを配信する方法であって,
第2のコンピュータ(28)において,コンテンツ暗号化キーを使用して媒体データ・ファイルを暗号化して,暗号化された媒体データ・ファイルを創出し,
前記第2のコンピュータ(28)において,前記コンテンツ暗号化キーを前記暗号化された媒体データ・ファイルと関係付け,
前記第2のコンピュータ(28)において,第1のコンピュータ(12)からのダウンロード要求を受信し,前記暗号化された媒体データ・ファイルをダウンロードし,
前記第2のコンピュータ(28)において,前記暗号化された媒体データ・ファイルを前記第1のコンピュータ(12)と関係付け,結合された媒体データ・ファイルを形成する,ことを含む方法。」

2.先行技術文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2,参考文献1,並びに各文献の記載事項は,上記「第2.平成26年12月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2.平成26年12月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(1)に記載した本件補正発明から,「前記結合された媒体データ・ファイルは,前記暗号化された媒体データ・ファイルと,ユーザ暗号化キーにより暗号化された前記コンテンツ暗号化キーとを含み,前記ユーザ暗号化キーは,前記第1のコンピュータの公開キーで暗号化され,前記第2のコンピュータから前記第1のコンピュータに予め送信されたものである」との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の事項を附加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2.平成26年12月3日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3.独立特許要件」(3)ないし(5)に記載したとおり,引用発明,引用文献2にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,引用文献2にみられる周知技術,及び参考文献1にみられる周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-03-20 
結審通知日 2015-03-24 
審決日 2015-04-15 
出願番号 特願2012-186743(P2012-186743)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
小林 大介
発明の名称 媒体コンテンツを獲得および共用するシステムおよび方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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