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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23C
管理番号 1305253
審判番号 不服2013-4070  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-04 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2006- 8490「一体形ブレードを備えたロータの加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開、特開2006-198766〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本件発明
本願は平成18年1月17日の外国語出願(パリ条約による優先権主張2005年1月20日、イタリア共和国)であって、同年3月10日に翻訳文が提出されたものである。原審において、平成23年9月8日付拒絶理由通知に対し、同年12月6日に意見書と手続補正書が提出され、更に、平成24年3月28日付拒絶理由通知に対し、同年6月26日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成24年10月30日付で拒絶すべき旨の査定がなされた。本件審判は該査定の取消しを求めて平成25年3月4日に請求され、同時に手続補正書が提出された。当審における平成25年5月31日付審尋に対し、同年9月3日に回答書が提出され、更に、当審による平成25年12月4日付拒絶理由通知に対し、平成26年3月4日に意見書と手続補正書が提出されている。
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成26年3月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「一連のブレード(12、13)を一体的に備えたロータ(10)を得るために、回転式ツール(20)によって半加工製品を加工する方法であって、
前記半加工製品に穴を形成する段階(ア)と、
前記回転式ツール(20)によって材料を除去して前記一連のブレード(12、13)を形成するために、前記穴から開始し所定の経路をたどって前記半加工製品に一連の空洞(14、15)を形成する段階(イ)と、
を含み、
前記段階(イ)が、前記穴(17)の軸線に対して心ずれしている回転軸線に沿って前記回転式ツール(20)を前進させることによって前記半加工製品から材料を除去し、かつ、該除去後に、さらなる材料の除去に先立って、材料を除去せずに前記回転式ツールを前記所定の経路に沿って移動する段階(ウ)を含み、
前記段階(ウ)が、
該除去後であって、前記回転式ツールを前記所定の経路に沿って移動する前に、その軸線に沿って前記回転式ツール(20)を後退方向に移動させる段階(エ)と、
その軸線に沿って前記回転式ツール(20)を後退させた後に、前記穴(17)の軸線に対して前記ツール(20)の軸線をさらに心ずれさせる段階(オ)と、
を含む、
加工方法。」(以下、「本件発明」という。)

2.刊行物に記載された発明
当審の拒絶理由に引用した刊行物であって、本願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2004/0184920号明細書(以下、単に「刊行物」という。)には、以下の記載がなされている。なお、カッコ内に当審による和訳を示す。
a.(段落2)
「[0002] The invention relates to a method of producing components subjected to flow and components made by said method. Preferred embodiments of the invention related to methods of producing disc-shaped or ring-shaped components subjected to flow, in particular of rotor discs having integral blading for turbomachines, by milling and finish machining subsequent to the milling, the component being milled out of a workpiece, and a finish machining medium flowing through the component for finish machining after the milling.」(本発明は流れにさらされる部品の製造方法と、該方法により製造される部品に関する。流れにさらされる円盤形状または環状の部品、特に一体化されたブレードをもつタービン機械用のロータディスク、の製造方法に係る本発明の好ましい実施例では、フライス加工に続いて仕上げ加工が行われ、部品がワークピースからフライス加工により削り出され、フライス加工後に部品を通して仕上げ加工用の媒体が流されて仕上げ加工が行われる。)
b.(段落11)
「[0011] According to an advantageous development of the invention, plunge milling is used for the milling, the main feeding direction of a milling cutter during the plunge milling running in the direction of its cutter axis. Plunge milling, also called piercing, ensures stable cutter guidance during the milling.」(本発明の有利な応用例では、フライス加工がプランジミリング法で行われ、プランジミリング中はフライスカッターの主切込み方向はカッターの回転軸線の方向に沿っている。プランジミリング法は、ピアシングとも呼ばれ、フライス加工の間、カッターの安定した送り込みを確保する。)
c.(段落23)
「[0023] After the start of the production method according to step 10 and the setting of the counter N to the value 1 according to step 11, a first channel is milled in the workpiece according to step 12. The milling method used is "plunge milling", the main feed direction of a milling cutter during plunge milling running in the direction of its cutter axis. In step 12 of the method according to the invention, the corresponding channel is milled out between two adjacent blades. The "annular space" and the "fillet" of the rotor disc are then milled according to step 13 in the region of this channel.」(ステップ10で製造方法の開始し、ステップ11でカウンタ11の値を1にセットした後、ステップ12でワークピースに最初の流路をフライス加工する。フライス加工はプランジミリング法によって行い、プランジミリング中のカッターの主切込み方向はカッターの回転軸線の方向に沿っている。本発明の方法においてステップ12では、2枚の隣接するブレードの間に対応する流路が削り出される。その後、ステップ13でロータディスクの「環状空間」及び「フィレット」が流路の領域に加工される。)
d.(段落36)
「A milling cutter 4 is shown in FIG.3, the main feed direction of the milling cutter 4 running approximately in the direction of its cutter or longitudinal axis. To improve the machining, the main feed direction and the cutter axis may be adjusted slightly angled relative to one another. During the milling process, the material removal is effected in particular by moving the milling cutter 4 in its main feed direction, the milling cutter subsequently being pulled out like a drill, being displaced and being moved again in its main feed direction for further material removal. The fluidically effective surfaces of the component 1, i.e. in particular the surfaces of the blades 3 and the annular space, which is formed by the outer surface of the rotor carrier 2, are machined by the finish machining.」(図3にはフライスカッター4が示され、このフライスカッター4の主切込み方向はおおまかにカッターまたは長手方向の軸線に沿っている。機械加工の性能向上のため、主切込み方向とカッター軸線とは僅かに角度をなすように調整してもよい。フライス加工の間、材料の除去は特にフライスカッター4をその主切込み方向に沿って送ることによってなされ、その後、フライスカッターはドリルのように引き出され、ずらされて再び主切込み方向に送られて更に材料を除去する。部品1の流体力学的に作用する表面、とくにブレード3と、ロータのキャリア2の外面に形成される環状空間の表面は、仕上げ加工される。)
上記記載事項を、技術常識を考慮しながら本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物には次の発明が記載されているということができる。
「一連のブレード3を一体的に備えたタービン機械のロータディスクのような部品1を得るために、フライスカッター4によってワークピースを加工する方法であって、
前記フライスカッター4によって材料を除去して前記一連のブレード3を形成するために、前記ワークピースに一連の環状空間を形成する段階を含み、
前記段階が、フライスカッター4をカッター軸線に沿った主切込み方向に送ることによってワークピースから材料を除去し、該除去後に、フライスカッター4をドリルのように引き出し、ずらして、再びカッター軸線に沿った主切込み方向に送って材料を除去する、プランジミリング法により行われる、
加工方法。」(以下、「刊行物記載の発明」という。)

3.対比
本件発明と刊行物記載の発明とを対比すると、後者の「タービン機械のロータディスクのような部品1」、「フライスカッター4」及び「環状空間」が、前者の「ロータ」、「回転式ツール」及び「空洞」にそれぞれ相当することは明白であり、後者の「カッターの軸線」は前者の「回転式ツールの回転軸線」に相当するということができるから、後者において「フライスカッター4をカッター軸線に沿った主切込み方向に送る」ことは、「回転軸線に沿って回転式ツールを前進させる」といい換えることができる。また、後者の「ワークピース」と前者の「半加工製品」とは、回転式ツールによって除去加工される素材である限りにおいて共通する。
そうしてみると、本件発明と刊行物記載の発明とは、以下の点において一致し、また一応相違すると認められる。
<一致点>
「一連のブレードを一体的に備えたロータを得るために、回転式ツールによって素材を加工する方法であって、
前記素材に、前記回転式ツールで前記一連のブレードを形成するために、前記素材に一連の空洞を形成する段階を含む、
加工方法。」である点。
<相違点1>
除去加工される素材が、前者では「半加工製品」であるのに対し、後者では「ワークピース」ではあるものの、半加工製品であるのか、特定されない点。
<相違点2>
素材に一連の空洞を形成する段階が、前者では半加工製品に穴を形成する段階と、前記穴の軸線に対して心ずれしている回転軸線に沿って回転式ツールを前進させることによって材料を除去し、かつ、該除去後に、さらなる材料の除去に先立って、前記回転式ツールを所定の経路に沿って移動する前に、その軸線に沿って前記回転式ツールを後退方向に移動させ、その軸線に沿って前記回転式ツールを後退させた後に、前記穴の軸線に対して前記ツールの軸線をさらに心ずれさせることにより材料を除去せずに前記回転式ツールを所定の経路に沿って移動する段階を含むのに対し、後者では回転式ツールをその回転軸線に沿って前進させることによって素材から材料を除去し、該除去後に、回転式ツールをドリルのように引き出し、ずらして、再び回転式ツールの回転軸線に沿って前進させて材料を除去する、プランジミリング法による点。

4.当審の判断
以下、上記各相違点について検討する。

4.1 <相違点1>について
除去加工の対象となる素材として、製品のおおまかな形状に予備加工された「半加工製品」を使用することは、機械工作分野において慣用的に行われているから、刊行物記載の発明においても「ワークピース」を「半加工製品」とすることは、当業者が容易に想到し得る。

4.2 <相違点2>について
刊行物記載の発明において、「プランジミリング法」とは、「回転式ツールをその回転軸線に沿って前進させることによって素材から材料を除去し、該除去後に、回転式ツールをドリルのように引き出し、ずらして、再び回転式ツールの回転軸線に沿って前進させて材料を除去する」ものと説明されている。
最初に「回転式ツールをその回転軸線に沿って前進させることによって材料を除去」することが、回転式ツールをドリルのように使用して穴を形成することを意味することは、自明である。その後、さらなる材料の除去に先立って、回転式ツールはドリルのように引き出されるのであり、ドリルの引き出しに際して材料が除去されないことは常識である。そして、引き出された回転式ツールは、ずらされ、その後、再び回転式ツールの回転軸線に沿って前進させられるのであるが、このことが本件発明における「心ずれしている回転軸線に沿って回転式ツールを前進させる」ことに相当することは明白である。刊行物記載の発明ではこのような動作を繰り返していることは当業者にとって自明であるから、「除去後に、さらなる材料の除去に先立って、回転式ツールを所定の経路に沿って移動する前に、その軸線に沿って回転式ツールを後退方向に移動させ、その軸線に沿って回転式ツールを後退させた後に、穴の軸線に対して回転式ツールの軸線をさらに心ずれさせることにより材料を除去せずに前記回転式ツールを移動する段階」を含むということができる。回転式ツールを所定の経路をたどるように心ずれさせることは、所定形状のブレードを形成するという課題を考慮すれば当然のことであり、刊行物記載の発明においても同様に所定の経路をたどるようにずらしていることは当業者にとって自明である。
したがって、刊行物記載の方法における「プランジミリング法」と本件発明における「素材に一連の空洞を形成する段階」とは実質的に同一のものであり、<相違点2>は実質的なものではない。

4.3 まとめ
本件発明の作用効果についても、刊行物記載の発明及び周知慣用の技術事項に基づいて普通に予測される範囲を超える、格別のものを認めることはできない。
したがって、本件発明は、刊行物記載の発明及び周知慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物記載の発明及び周知慣用の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2号の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-09 
結審通知日 2014-04-15 
審決日 2014-04-28 
出願番号 特願2006-8490(P2006-8490)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 裕之  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 石川 好文
長屋 陽二郎
発明の名称 一体形ブレードを備えたロータの加工方法  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  

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