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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25D
管理番号 1305282
審判番号 不服2014-10699  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-05 
確定日 2015-09-30 
事件の表示 特願2009-545519「削岩機及び該削岩機に関わる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年7月17日国際公開、WO2008/085114、平成22年5月13日国内公表、特表2010-515590、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年1月10日(パリ条約による優先権主張2007年1月11日外国庁受理、スウェーデン王国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年8月24日付け 拒絶理由通知
平成25年1月25日 意見書及び手続補正書提出
平成25年6月25日付け 拒絶理由通知
平成26年1月6日 意見書及び手続補正書提出
平成26年1月28日付け 拒絶査定
平成26年6月5日 審判請求書提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成25年1月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」などという)は以下のとおりである。なお、平成26年1月6日付け手続補正書の補正の対象は明細書のみであって、特許請求の範囲は補正の対象に含まれていない。

「【請求項1】
ピストンハウジング(7)と、
前記ピストンハウジング(7)に移動可能に取り付けられかつ液圧液体で加圧され、使用中に、削岩装置に接続されたドリル鋼体に主に連続して掘削方向に力を伝達するようにされた第一のピストン(13)と、
使用中に、接続されたドリル鋼体に反復的に衝撃を与えるために圧力の切換えを受けるようにされた第二のピストン(6)と、
前記第二のピストン(6)内の第二の制御装置(12)と共動して、前記第二のピストン(6)に作用する液圧液体の第一の部分の圧力の切換を制御するようにピストンハウジング(7)内に配置された第一の制御装置(11a,32、33)と、
を有して成る削岩装置(1)において、
削岩装置が、ドリル鋼体或いはドリル鋼体に接続された部分(9)に前記第二のピストン(6)が接触する瞬間に、相互に相対した第一及び第二制御装置の変位を打ち消すために、前記ピストンハウジング(7)内の前記第二のピストン(6)の位置に対して前記第一のピストン(13)に作用する圧力の切換えを制御する第一の制御手段(21,22)を前記第二のピストン(6)内に備えていることを特徴とする削岩装置。
【請求項2】
前記第一の制御手段(21,22)が、前記ピストンハウジング(7)に位置決めされ固定される或いは前記ピストンハウジング(7)に取り付けられる第二の制御手段(20、23、24、25)と共動して、前記第二のピストン(6)と前記ピストンハウジング(7)との間の相対位置で前記第一のピストン(13)に対する圧力を変化させるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の削岩装置。
【請求項3】
請求項1?請求項2の何れか一項に記載の少なくとも1つの削岩装置を備える岩盤ドリルリグ。
【請求項4】
ピストンハウジング(7)と、
前記ピストンハウジング(7)に移動可能に取り付けられかつ液圧液体で加圧され、使用中に、液圧液体の第二の部分における圧力を、削岩装置に接続されたドリル鋼体に主に連続して掘削方向に作用する力に変換するようにされた第一のピストン(13)と、
使用中に、接続されたドリル鋼体に反復的に衝撃を与えるために圧力の切換えを受けるようにされた第二のピストン(6)と、
前記ピストンハウジング(7)内の第一の制御装置(11a,32、33)及び前記第二のピストン(6)内の第二の制御装置(12)と
を有し、
これら制御装置が、互いに共動して、前記反復的な衝撃を達成するために、前記第二のピストン(6)における駆動面(5)に作用する液圧液体の第一の部分の圧力の切換を制御するようにされ、
前記第一の制御装置(11a,32、33)が前記第二の制御装置(12)に対して予定の位置にあるときに、前記第一のピストン(13)における液圧流体の前記第二の部分の作用が変化するようにされること
を特徴とする方法。」

第3 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献:特開平05-138549号公報

第4 当審の判断

1. 引用文献の記載事項
上記引用文献には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、打撃ピストン、該打撃ピストンの運動を交番的に切り換える制御装置及び打撃ピストンによって負荷されこの打撃ピストンとは無関係に縦方向で移動可能に保持される工具-差込み端部を有する、液圧式に駆動される打撃機構に関する。」
【0002】
【従来の技術】特に岩石-及びルーフボルト用作孔において、とりわけ圧着段中に、作孔工具(ビット)のための普通の不都合な付加条件(例えば傾斜して延びる及び/又は割れた表面)を考慮して、低い固有打撃エネルギー及び小さい圧着力に結びつく多くの打撃数が必要である。作孔工具をセンタリングした後に、十分な作孔進度を達成するために、打撃機構が固有打撃エネルギーと圧着力とを同時に高める際に少ない打撃数に切り換えることが必要である。相応する調整動作は、軟らかい層(例えば粘土)又は中空室が作孔される場合に生じることになる。」

イ.
「【0006】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するために講じた本発明の手段は、差込み端部に、打撃方向で作用する戻し調整部材の作用を受けて、圧着制御部材が少なくとも一時的に当接されており、さらに圧着制御部材を介して、この圧着制御部材が差込み端部にのみ、あるいは戻し調整力を越える圧着力において圧着制御部材に関して差し込み端部とは反対側に位置する当接面にも当接するかどうかに依存して、制御導管を、圧力導管にも、圧力軽減される戻し導管にも接続可能であり、さらに制御装置が打撃ピストン-戻し行程中に早い又は遅い時点に作業行程位置で制御運動を実施し、かつこのことによって打撃ピストン-作業行程を打撃方向でレリーズするように、制御導管を介して切換え部材が操作可能であることにある。」

ウ.
「【0015】
【実施例】実施例に示された打撃回転作孔装置は、主構成部分として打撃機構ケーシング2を有する打撃機構1、往復運動可能な打撃ピストン3、制御装置4並びに回転機構ケーシング6を有する回転機構5を備えており、前記回転機構ケーシングは、構成部分6a,6bから成っており、かつ構成部分6bを介して打撃機構ケーシング2にフランジ結合されている。・・・回転機構ケーシング6及び対抗軸受11に関する差込み端部の運動可能性は段部12bによって制限されている。液圧モータ7、駆動ピニオン8及び対抗軸受11の作用を受けて回転される差込み端部12は、打撃ピストン3によって生ぜしめられる固有打撃エネルギーを、図示しない作孔工具に伝達する。この際、打撃ピストン先端3a及び該打撃ピストン先端と協働する当接面12cは、著しい応力にさらされている。」

エ.
「【0018】打撃ピストン3は、周知の制御装置4の作用を受けて、打撃方向(矢印18)で作業行程を、あるいはそれとは逆の方向(矢印19)で戻り行程を選択的に実施するように圧力負荷される。制御装置は、主に、貫通孔20aを有する制御スライダ20から成っており、該制御スライダは、円筒室21内に縦方向に往復移動可能に保持されており、かつ貫通孔を介して圧力導管22と、並びに貫通孔の延長部22aを介して(制御装置4に関して)圧力室13と接続される。圧力導管22は、図示しない圧力源を介して運転中に、打撃機構1のために生じる作業圧P_(S)によって負荷される。
【0019】円筒室21内の制御シリンダ20の位置に関連して、制御室14は、制御通路23、円筒室21及び接続通路24を介して無圧に保持される戻し導管25に、もしくは制御通路23及び円筒室21を介して圧力導管22に接続可能である。
【0020】打撃ピストン3の圧力負荷は、戻し行程運動を生じる小さい戻し行程面3fが運転状態で圧力導管22,22aを介して常に作業圧を負荷されているように得られる。これに対して、打撃ピストンの作業行程をレリーズする大きな作業行程面3gは、制御シリンダ20が左側へ運動されることによって図示しない別の作業行程位置に移動される場合に、制御室14を介して一時的にのみ作業圧によって負荷される。制御スライダのこのような運動は、区分20bによって制御通路23と接続通路24との間の接続を遮断し、並びに同時に制御通路23が圧力導管22に接続されることになる。」

オ.
「【0023】打撃回転作孔装置は、さらに調整スリーブ31の形状の圧着制御部材を備えており、該調整スリーブは、縦方向で運動可能に、一面では打撃ピストン3に、かつ他面では一時的に差込み端部12の当接面12cに支持される。調整スリーブを打撃ピストン3及び打撃機構ケーシング2に対してシールするために、調整スリーブもしくは打撃機構ケーシング内に保持されるシール部材32もしくは33が設けられている。調整スリーブの運動遊びスペースは、対抗軸受11と打撃機構ケーシング2における定置の当接面34との間の間隔によって規定されており、かつ調整スリーブ31の縦方向で見て符号bで示されている。
【0024】調整スリーブ31は、作業行程方向(矢印18)に整合されたリング面31aとそれから区分されたリング溝31bとを有している。リング溝31bは、仕切り弁30に接続された制御導管35を調整スリーブの位置に関して圧力導管22の延長部22aと、又は戻し導管25と交番的に接続するように形成かつ配置されている。さらに、延長部22aを介してリング面31aは運転状態で常に作業圧によって負荷される。要するに、このような形式で作業行程方向(矢印18)で作用する保持力が生ぜしめられ、この保持力の作用を受けて調整スリーブ31は、差込み端部12のそれぞれの位置に関して、差込み端部又は対抗軸受11に当接保持される。要するに、差込み端部12から伝達される圧着力Aが、該圧着力とは反対向きの作業力によって生ぜしめられる戻し力Rより大きい場合に、調整スリーブ31が差込み端部12の作用を受けて当接面34に圧着され、その結果制御導管35はリング溝31b及び戻し導管25を介して無圧に保持されている。戻し力Rの大きさが圧着力Aの大きさを越えると(図2)、調整スリーブ31は対抗軸受11における中央に当接し、その結果制御導管35はリング溝31b及び延長部22aを介して作業力P_(S)によって負荷され、同時にリング溝と戻し導管25との間の接続は遮断されている。調整スリーブ31と当接面34との間に望まない圧力クッションが形成されることを避けるために、当接面34に向かう側に少なくとも1つの除圧溝31cが存在しており、さらに当接面34の周囲は、戻し導管25に開口する戻し通路36を介して圧力負荷されている。打撃ピストン3及び差込み端部12の縦方向に対して平行な調整スリーブ31の運動遊びスペースbは、回転機構ケーシング6の内側の差込み端部の運動遊びスペースより著しく小さく設計されている。
・・・
【0026】・・・仕切り弁30の前記休止位置は、図1に示された運転状態に相応し、この運転状態では調整スリーブ31は中央で当接面34に当接し、かつ制御導管35は戻し導管25と接続される。圧着力Aが調整スリーブ31に作用する戻し力より小さい値を占める場合に(図2)、制御導管35は圧力導管の延長部22aを介して作業圧を負荷され、弁ピストン30aは閉鎖体30bと一緒に戻しばね38の作用に抗して摺動し、かつこのことによって付加通路29と戻し通路27との接続が形成される。今や、リング溝3h(図1)が、打撃ピストンが戻り運動するうちに付加通路29のリング溝29aの範囲に達する場合に、すでにそれにより生じるより早い時点に、切換え通路26、付加通路29及び無圧に保持される戻し通路27の間の接続が形成される:それに相応して、制御装置4が早い時点で作業行程位置に切り換えられるので、打撃ピストン3は高い打撃数及び減少された固有打撃エネルギーで小さな行程を実施する。・・・」

カ.
【図1】


【図3】



そうすると、上記摘記事項ア.ないしオ.及び上記カ.の図示を技術常識を考慮しつつ整理すると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。
「打撃機構ケーシング2と、
前記打撃機構ケーシング2に移動可能に取り付けられかつ液圧液体で加圧され、使用中に、打撃機構1に接続された作孔工具に主に連続して掘削方向に作用する力に変換するようにされた調整スリーブ31と、
使用中に、接続された作孔工具に反復的に衝撃を与えるために圧力の切換えを受けるようにされた打撃ピストン3を有して成る打撃機構1。」

また、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明2」という)も記載されている。
「打撃機構ケーシング2と、
前記打撃機構ケーシング2に移動可能に取り付けられかつ液圧液体で加圧され、使用中に、液圧液体のリング面31aにおける圧力を、打撃機構1に接続された作孔工具に主に連続して掘削方向に力を伝達するようにされた調整スリーブ31と、
使用中に、接続された作孔工具に反復的に衝撃を与えるために圧力の切り替えるようにされた打撃ピストン3を使用する方法。」

2-1. 本願発明1ないし3についての検討

(1) 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
上記1.の摘記事項ア.本願発明の「特に岩石-及びルーフボルト用作孔において、とりわけ圧着段中に、作孔工具(ビット)のための普通の不都合な付加条件(例えば傾斜して延びる及び/又は割れた表面)を考慮して、低い固有打撃エネルギー及び小さい圧着力に結びつく多くの打撃数が必要である。」との記載から、引用発明は岩石に対して孔を作るものであるといえ、その際に岩を削ることは自明であるので、引用発明の「打撃機構1」は本願発明の「削岩装置」に相当する。
引用発明1の「打撃機構ケーシング2」は、その機能及び構成からみて、本願発明の「ピストンハウジング(7)」に相当し、以下同様に、引用発明1の「作孔工具」、「調整スリーブ31」及び「打撃ピストン3」は、それぞれ本願発明の「ドリル鋼体」、「第一のピストン(13)」及び「第二のピストン(6)」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1は、以下の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>
「ピストンハウジング(7)と、
前記ピストンハウジング(7)に移動可能に取り付けられかつ液圧液体で加圧され、使用中に、削岩装置に接続されたドリル鋼体に主に連続して掘削方向に力を伝達するようにされた第一のピストン(13)と、
使用中に、接続されたドリル鋼体に反復的に衝撃を与えるために圧力の切換えを受けるようにされた第二のピストン(6)と、
を有して成る削岩装置(1)」

<相違点1>
本願発明1は、「第一の制御装置(11a,32、33)」及び「第二の制御装置(12)」を有し、「第一の制御装置(11a,32、33)」は、「第二のピストン(6)内の第二の制御装置(12)と共動して、前記第二のピストン(6)に作用する液圧液体の第一の部分の圧力の切換を制御するようにピストンハウジング(7)内に配置され」たものであるのに対し、引用発明1がそのようなものであるか、明らかではない点。

<相違点2>
本願発明1は、「削岩装置が、ドリル鋼体或いはドリル鋼体に接続された部分(9)に第二のピストン(6)が接触する瞬間に、相互に相対した第一及び第二制御装置の変位を打ち消すために、ピストンハウジング(7)内の前記第二のピストン(6)の位置に対して第一のピストン(13)に作用する圧力の切換えを制御する第一の制御手段(21,22)を前記第二のピストン(6)内に備え」たものであるのに対し、引用発明1がそのようなものであるか、明らかではない点。

(2) 判断
上記相違点のうち、まず、相違点2について検討する。
引用発明の「調整スリーブ31」について、引用文献には、上記1.オ.に示した以下の記載がある。
「調整スリーブ31は、作業行程方向(矢印18)に整合されたリング面31aとそれから区分されたリング溝31bとを有している。リング溝31bは、仕切り弁30に接続された制御導管35を調整スリーブの位置に関して圧力導管22の延長部22aと、又は戻し導管25と交番的に接続するように形成かつ配置されている。さらに、延長部22aを介してリング面31aは運転状態で常に作業圧によって負荷される。要するに、差込み端部12から伝達される圧着力Aが、該圧着力とは反対向きの作業力によって生ぜしめられる戻し力Rより大きい場合に、調整スリーブ31が差込み端部12の作用を受けて当接面34に圧着され、その結果制御導管35はリング溝31b及び戻し導管25を介して無圧に保持されている。戻し力Rの大きさが圧着力Aの大きさを越えると(図2)、調整スリーブ31は対抗軸受11における中央に当接し、その結果制御導管35はリング溝31b及び延長部22aを介して作業力P_(S)によって負荷され、同時にリング溝と戻し導管25との間の接続は遮断されている。」(段落【0024】)
「仕切り弁30の前記休止位置は、図1に示された運転状態に相応し、この運転状態では調整スリーブ31は中央で当接面34に当接し、かつ制御導管35は戻し導管25と接続される。圧着力Aが調整スリーブ31に作用する戻し力より小さい値を占める場合に(図2)、制御導管35は圧力導管の延長部22aを介して作業圧を負荷され、弁ピストン30aは閉鎖体30bと一緒に戻しばね38の作用に抗して摺動し、かつこのことによって付加通路29と戻し通路27との接続が形成される。今や、リング溝3h(図1)が、打撃ピストンが戻り運動するうちに付加通路29のリング溝29aの範囲に達する場合に、すでにそれにより生じるより早い時点に、切換え通路26、付加通路29及び無圧に保持される戻し通路27の間の接続が形成される:それに相応して、制御装置4が早い時点で作業行程位置に切り換えられるので、打撃ピストン3は高い打撃数及び減少された固有打撃エネルギーで小さな行程を実施する。」(段落【0026】)

当該記載から、「調整スリーブ31」は、その「リング面31a」に作用する「圧力導管22」の「延長部22a」の圧力が一定で、「差込み端部12」から「調整スリーブ31」に伝達される「圧着力A」と、「戻し力R」との大小関係に応じて、「調整スリーブ31」の位置が変位し、その位置に応じて「制御導管35」に対して、「延長部22a」の「作業圧」が作用するか、あるいは「戻し導管25」に接続することにより圧力が作用しないかのいずれの状態をとるものであり、それにより引用発明1は、「圧着力A」と「戻し力R」の関係応じて「打撃ピストン3」の「打撃数」及び「固有打撃エネルギー」を増減させることができる、との作用効果を奏するものであることが理解できる。そうすると、引用発明1は、「工具-差込み端部12」に「打撃ピストン3」が接触する瞬間前後で「調整スリーブ13」に作用する圧力である上記「延長部22a」の「作業圧」自体を切り換えるものではない。さらに、「調整スリーブ31」の位置を、「制御導管35」に上記「延長部22a」の圧力がかかっているか否かを「仕切弁30」で検出するものであるから、「調整スリーブ31」に作用する圧力を切り換えることの阻害事由が、引用発明1には存在するといえる。
そうすると、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用文献に記載された発明である引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、引用発明2について検討すると、引用発明2の「調整スリーブ31」も、上記したとおり作用する圧力が変化するものではないし、むしろ圧力を変化させることへの阻害事由が引用発明2には存在するといえるから、本願発明1ないし3は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2-2. 本願発明4についての検討

(1) 上記2-1.(1)に記載した、本願発明1と引用発明1との対比も踏まえつつ、本願発明4と引用発明2とを対比すると、両者は以下の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>
「ピストンハウジング(7)と、
前記ピストンハウジング(7)に移動可能に取り付けられかつ液圧液体で加圧され、使用中に、液圧液体の第二の部分における圧力を、削岩装置に接続されたドリル鋼体に主に連続して掘削方向に作用する力に変換するようにされた第一のピストン(13)と、
使用中に、接続されたドリル鋼体に反復的に衝撃を与えるために圧力の切換えを受けるようにされた第二のピストン(6)と、
前記ピストンハウジング(7)内の第一の制御装置(11a,32、33)及び前記第二のピストン(6)内の第二の制御装置(12)と
を有する方法。」

<相違点>
本願発明4は、「ピストンハウジング(7)内の第一の制御装置(11a,32、33)」及び「第二のピストン(6)内の第二の制御装置(12)」とを有し、「これら制御装置が、互いに共動して、前記反復的な衝撃を達成するために、前記第二のピストン(6)における駆動面(5)に作用する液圧液体の第一の部分の圧力の切換を制御するようにされ、前記第一の制御装置(11a,32、33)が前記第二の制御装置(12)に対して予定の位置にあるときに、第一のピストン(13)における液圧流体の第二の部分の作用が変化するようにされる」ものであるのに対し、引用発明2がそのようなものであるか明らかではない点。

(2) 判断
本願発明4は、「前記第一の制御装置(11a,32、33)が第二の制御装置(12)に対して予定の位置にあるときに、第一のピストン(13)における液圧流体の第二の部分の作用が変化するようにされる」ものであるところ、上記2-1.(2)で示したように、引用発明2は、「調整スリーブ31」に作用する圧力を変化させるものでなく、むしろ変化させることへの阻害事由を有するものである。
そうすると、本願発明4は、当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、引用発明1について検討すると、上記2-1.(2)で示したように、引用発明1も「調整スリーブ31」に関する上記阻害事由を有するから、本願発明4が引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3. 小括
本願発明1ないし4が奏する作用効果は、引用発明1又は2に基づいて当業者が容易に予測し得る範囲内のものであるとはいえない。
そうすると、本願発明1ないし4は、引用発明1又は2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、当業者が引用文献に記載された引用発明1又は2に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-09-10 
出願番号 特願2009-545519(P2009-545519)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B25D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中野 裕之  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
久保 克彦
発明の名称 削岩機及び該削岩機に関わる方法  
代理人 浜野 孝雄  

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