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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1305407 |
審判番号 | 不服2014-11147 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-12 |
確定日 | 2015-09-10 |
事件の表示 | 特願2008-175925「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月21日出願公開、特開2010- 15038〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年7月4日を出願日とする出願であって、平成24年9月14日、平成25年9月4日に手続補正がなされたが、平成26年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月12日に拒絶査定不服審判請求がなされ、当審で平成27年2月4日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「少なくとも、拡散素子、第1の偏光子、第1の基板と第2の基板との間に液晶層を有するVAモードの液晶セル、光学補償素子、第2の偏光子、集光バックライトを、視認側からこの順に備え、 前記集光バックライトの輝度半値角が3°?30°であり、 前記光学補償素子は、前記集光バックライトから斜め方向に出射する光を光学補償するものであり、 前記第1の偏光子と、前記液晶セルとの間に光学補償素子を有さない、液晶表示装置。」 第3 刊行物の記載 1 拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-164125号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【0014】 液晶表示装置100は、液晶セル10と、液晶セル10の外側の一方に配された光学補償素子20と、光学補償素子20の外側に配された偏光板30と、液晶セル10の光学補償素子20が設けられていない側に配された偏光板30’とを備える。偏光板30、30’は、それぞれ、偏光子と必要に応じて透明保護層とを有する。偏光板30、30’は、代表的には、その偏光子の吸収軸が互いに直交するようにして配置されている。液晶セル10は、一対のガラス基板11、11’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層12とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)11には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板(カラーフィルター基板)11’には、カラーフィルター13が設けられる。なお、カラーフィルター13は、アクティブマトリクス基板11に設けてもよい。好ましくは、カラーフィルター13は視認側(図示例では基板11’)に設けられる。基板11、11’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。基板11、11’の液晶層12と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。 【0015】 本発明の液晶表示装置においては、光学補償素子20は、液晶層12を基準にして、カラーフィルター13と反対側(図示例ではバックライト側)に配されている。カラーフィルター13を基準にして言い換えると、光学補償素子20と液晶層12とが同じ側に配置されている。より具体的には、光学補償素子20は、カラーフィルター13が設けられていない基板(図示例では基板11)の外側(図示例ではバックライト側)に配置されている。特定の光学補償素子20を液晶セルの片側、かつ、カラーフィルターと特定の位置関係で配置することにより、きわめて優れた視野角補償および斜め方向のコントラストを有する液晶表示装置が得られる。このような効果は理論的には明らかではなく、実際に液晶表示装置を作製してはじめて得られた知見であり、予期せぬ優れた効果である。」 (2)「【0019】 液晶セル10の駆動モードとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な駆動モードが採用され得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モードおよびASM(Axially SymmetricAligned Microcell)モードが挙げられる。VAモードおよびOCBモードが好ましい。本発明の光学補償素子20と組み合わせると、視野角補償および斜め方向のコントラストの改善が著しいからである。」 (3)図1は次のものである。図1より、ガラス基板11’は、ガラス基板11に対して視認側に位置していると看取できる。 (4)よって、刊行物1には、「液晶セル10と、液晶セル10の外側の一方に配された光学補償素子20と、光学補償素子20の外側に配された偏光板30と、液晶セル10の光学補償素子20が設けられていない側に配された偏光板30’とを備え、液晶セル10は、一対のガラス基板11、11’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層12とを有し、光学補償素子20は、液晶層12を基準にして、バックライト側に配され、上記一対のガラス基板11、11’のうちガラス基板11’は視認側に位置し、液晶セル10の駆動モードはVAモードおよびOCBモードが好ましい、光学補償素子20と組み合わせると、視野角補償および斜め方向のコントラストの改善が著しい液晶表示装置。」(以下引用発明1という。)が記載されていると認められる。 2 拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開2008/023484号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (1)「[0057] 上記バックライト3は、図2に示すように、下から順に反射シート31と光源32と拡散シート33とを有している。本実施の形態では、バックライト3は、光源32を液晶パネル1の直下に配置した直下型バックライトシステムを採用しており、光源32としては、冷陰極管(CCFT:Cold Cathode fluorescent Tube )やLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。また、必ずしもこれに限らず、例えば、光源32をバックライト3の端面に設けたエッジライト方式のバックライトシステムとすることも可能である。 [0058] 一方、上記集光シート2は、同図に示すように、蒲鉾状のレンチキュラーレンズ21と、バックライト3側に設けられた反射体22とからなっている。この反射体22には、レンチキュラーレンズ21に設けられた複数のレンズの各光軸上に開口部22aが設けられている。これにより、バックライト3の光源32から出射された光は、拡散シート33を通して反射体22の開口部22aを通してレンチキュラーレンズ21の各レンズにより、バックライト3に対して略垂直に上記液晶パネル1に照射される。」 (2)「[0066] 次に、図1に示すように、上記遮光層5の前面側には、拡散層6が設けられている。この拡散層6は、遮光層5の開口部5aを通過してきた光を放射状に拡散させる。したがって、視野角が広がることになる。」 (3)「[0082] 図10に示すように、液晶パネル1へのバックライト最大入射角が同じ場合には、VAモードの方が正面コントラストは高いことがわかる。また、液晶パネル1へのバックライト最大入射角が小さくなると、つまりバックライト3の集光度を高めていくとVAモードの方がより効果的に正面コントラストが向上することがわかる。これらのことから、本実施の形態のような集光・拡散方式では、液晶パネル1の液晶としてはVAモードを使用することが望ましいと考えられる。」 (4)図1、2は次のものである。図1より、拡散層6は、視認側最上層に位置していると看取できる。 (5)よって、刊行物2には、「遮光層5の前面側で視認側最上層に位置する拡散層6、バックライト3の光源32から出射された光は、拡散シート33を通して反射体22の開口部22aを通してレンチキュラーレンズ21の各レンズにより、バックライト3に対して略垂直に上記液晶パネル1に照射され、バックライト3の集光度を高めていくとより効果的に正面コントラストが向上する、VAモードを使用することが望ましい液晶パネル。」(以下引用発明2という。)が記載されていると認められる。 第4 対比 本願発明と引用発明1を対比する。 1 引用発明1の「偏光板30」、「偏光板30’」、「ガラス基板11」、「ガラス基板11’」は、それぞれ、本願発明の「第2の偏光子」、「第1の偏光子」、「第2の基板」、「第1の基板」に相当する。 2 引用発明1の「光学補償素子20と組み合わせると、視野角補償および斜め方向のコントラストの改善が著しい」ことは、本願発明の「光学補償素子は」、「斜め方向に出射する光を光学補償する」ことに相当する。 3 引用発明1の「バックライト」と本願発明の「集合バックライト」とは「バックライト」の概念で共通する。 4 また引用発明1は、「液晶セル10と、液晶セル10の外側の一方に配された光学補償素子20と、光学補償素子20の外側に配された偏光板30と、液晶セル10の光学補償素子20が設けられていない側に配された偏光板30’とを備え、液晶セル10は、一対のガラス基板11、11’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層12とを有し、光学補償素子20は、液晶層12を基準にして、バックライト側に配され、上記一対のガラス基板11、11’のうちガラス基板11’は視認側に位置し、液晶セル10の駆動モードはVAモードおよびOCBモードが好ましい」から「偏光板30’、ガラス基板11’とガラス基板11との間に液晶層12を有するVAモードの液晶セル10、光学補償素子20、偏光板30、バックライトを視認側からこの順に備え」ているといえる。 5 よって、本願発明と引用発明1は、「少なくとも、第1の偏光子、第1の基板と第2の基板との間に液晶層を有するVAモードの液晶セル、光学補償素子、第2の偏光子、バックライトを、視認側からこの順に備え、 前記第1の偏光子と、前記液晶セルとの間に光学補償素子を有さない、液晶表示装置。」である点で一致し、下記(1)ないし(2)の点で相違するものと認められる。 (1)本願発明は、視認側の最上位に「拡散素子」を備えるのに対して、引用発明1には含まれていない点(以下「相違点1」という。)。 (2)本願発明は、「集光バックライト」を備え、「集光バックライトの輝度半値角が3°?30°であ」るのに対し、引用発明1は「光学補償素子20は、液晶層12を基準にして、バックライト側に配され」たものであって、バックライトを備えるものの、上記「集光バックライト」、「輝度半値角」について特定されていない点(以下「相違点2」という。)。 第5 判断 1 相違点1及び2について 引用発明2の「液晶パネル」、「拡散層」はそれぞれ、本願発明の「液晶表示装置」、「拡散素子」に相当する。 引用発明2は「バックライト3の光源32から出射された光は、・・・レンチキュラーレンズ21・・・により、バックライト3に対して略垂直に上記液晶パネル1に照射され」るものであるから、引用発明2の「バックライト3」と「レンチキュラーレンズ21」とを合わせたものは、本願発明の「集光バックライト」に相当する。 したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項、及び相違点2に係る本願発明の「集光バックライト」を備えるとの発明特定事項は、引用発明2に示されている。 そして、引用発明1に、引用発明2を適用することは、正面コントラストと斜め方向のコントラストの双方を高めて画質を向上させるという液晶表示装置の技術分野における技術常識(例えば特開2002-72215号公報【0054】段落、特開2006-133719号公報【0058】段落参照。)に照らせば、当業者にとって格別困難なことではない。 また、引用発明の「バックライト3とレンチキュラーレンズ21とを合わせたもの(集光バックライト)」において、その輝度半値角をどの程度とするかは、当業者が実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるところ、本願明細書をみても「輝度半値角が3°から30°」とした点に格別の臨界的意義や技術的意義があるとは認められないから、引用発明1に引用発明2を適用する際に「輝度半値角を3°?30°」とすることは、当業者が所望により適宜なし得る設計的事項である。 したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到するものである。 2 効果について そして、本願発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。 3 小活 よって、本願発明は、引用発明1、2及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明1、2及び技術常識に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-13 |
結審通知日 | 2015-07-14 |
審決日 | 2015-07-29 |
出願番号 | 特願2008-175925(P2008-175925) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 廣田 かおり |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 畑井 順一 |
発明の名称 | 液晶表示装置 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |