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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1305517
審判番号 不服2013-22181  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-12 
確定日 2015-09-08 
事件の表示 特願2009-550250「胃液抵抗性の作用物質-マトリックスを有しているペレット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日国際公開、WO2008/101743、平成22年 6月 3日国内公表、特表2010-519236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は2008年1月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年2月22日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特許出願であって,出願後の経緯は次のとおりである。

平成24年12月14日付け 拒絶の理由の通知
平成25年 3月19日 意見書及び手続補正書の提出
平成25年 7月11日付け 拒絶査定
平成25年11月12日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書 の提出
平成25年12月10日付け 前置審査の結果の報告
平成26年 7月29日付け 審尋
平成26年 7月30日 上申書の提出
平成26年 9月22日 回答書の提出

第2 平成25年11月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年11月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成25年11月12日付けの手続補正は,特許請求の範囲の請求項1について,補正前の
「【請求項1】
1種以上の水不溶性ポリマーからのポリマーマトリックス中に埋包された薬剤学的に有効な物質を含有している、300?1100μmの範囲の平均粒径を有するペレットであって、前記ポリマーマトリックスは付加的に陰イオンポリマー10?90質量%を含有している、但し、このペレットは、USPによる放出試験において、pH1.2の人工胃液中で120分後には、含有作用物質の10%以下の量を放出し、pH6.8及び/又はpH7.5で更なる合計300分の後には、含有作用物質の少なくとも50%を放出することを条件としていることを特徴とする、押出成形により製造されたペレット。」
を,補正後の
「【請求項1】
1種以上の水不溶性ポリマーからのポリマーマトリックス中に埋包された薬剤学的に有効な物質を含有している、300?1100μmの範囲の平均粒径を有するペレットであって、水不溶性ポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のC_(1)?C_(4)-アルキルエステル98?85質量%及び第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー2?15質量%からの重合体であるか又はこれら物質群の複数のポリマーの混合物であるか、水不溶性ポリマーは、エチルアクリレート20?40質量%及びメチルメタクリレート60?80質量%及びアクリル酸及び/又はメタクリル酸0?5質量%からのコポリマーであるか、あるいは水不溶性ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル-コポリマー、エチルセルロース又はメチルセルロースであり、前記ポリマーマトリックスは付加的に陰イオンポリマー10?90質量%を含有しており、その際、陰イオンポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のC_(1)?C_(4)-アルキルエステル25?95質量%及び陰イオン基を有する(メタ)アクリレート-モノマー5?75質量%からの重合体である、但し、このペレットは、USPによる放出試験において、pH1.2の人工胃液中で120分後には、含有作用物質の10%以下の量を放出し、pH6.8及び/又はpH7.5で更なる合計300分の後には、含有作用物質の少なくとも50%を放出することを条件としていることを特徴とする、押出成形により製造されたペレット。」
と補正することを含むものである。(以下,この請求項1についての補正を「本件補正」という。)

本件補正は,補正前の発明を特定するために必要な事項である「水不溶性ポリマー」を,「水不溶性ポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のC_(1)?C_(4)-アルキルエステル98?85質量%及び第4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー2?15質量%からの重合体であるか又はこれら物質群の複数のポリマーの混合物であるか、水不溶性ポリマーは、エチルアクリレート20?40質量%及びメチルメタクリレート60?80質量%及びアクリル酸及び/又はメタクリル酸0?5質量%からのコポリマーであるか、あるいは水不溶性ポリマーは、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル-コポリマー、エチルセルロース又はメチルセルロースであり」として限定するものであり,また,同じく「陰イオンポリマー」を,「その際、陰イオンポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のC_(1)?C_(4)-アルキルエステル25?95質量%及び陰イオン基を有する(メタ)アクリレート-モノマー5?75質量%からの重合体である」として限定するものである。
そして,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本件補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)特許法第36条第4項第1号について
本件補正後発明は,ペレットについての発明であるところ,「このペレットは、USPによる放出試験において、pH1.2の人工胃液中で120分後には、含有作用物質の10%以下の量を放出し、pH6.8及び/又はpH7.5で更なる合計300分の後には、含有作用物質の少なくとも50%を放出することを条件としている」との発明特定事項(以下,「本願放出特性」という。)を有するものである。
作用物質の放出に関連し,本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
「【0012】
水不溶性ポリマーは、おそらく、水中に劣悪に溶ける作用物質を、それからの放出後に、長時間に渡り高い溶解性の状態で安定化させて、溶解度低下性の凝集、再結晶又は沈殿を遅延化させるか又は阻止する機能を有していると思われる。本発明における水不溶性ポリマーは、遅延化性ポリマーと同じ意味である。」
「【0032】
陰イオン基を有する(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT^((R))L、L100-55、S及びFS型)
好適な陰イオン(メタ)アクリレートコポリマーは、例えばアクリル-又はメタクリル酸のC_(1)?C_(4)-アルキルエステル25?95質量%と陰イオン基を有する(メタ)アクリレート-モノマー5?75質量%とからの重合体である。相応するポリマーは、陰イオン基の含有率及び他のモノマーの特性に応じて、pH5.0を上回るpH-値で水溶性であり、従って腸液可溶性でもある。」
「【0051】
特別な放出プロフィル又は放出位置の調節のために、記載のコポリマーの混合物を使用することもできる。」
「【0082】
USPによる作用物質放出
作用物質放出は、USP、殊にUSP28-NF23、General Chapter<711>、Dissolution,Apparatus 2(Paddle)、Method<724>"Delayed Release (Enteric Coated)Articles-General General Drug Release Standard",Method B (100 Upm,37℃)に従がい、次の変更を伴って測定することができる:ペレットを差し当たり、人工胃液(USP)中、pH1.2で120分間の胃液抵抗性を試験し、引き続き、燐酸塩緩衝液を用いてpH6.8又は7.5(これは、人工腸環境に相当する)まで緩衝値変更を行った。試験媒体中の作用物質濃度は、作用物質に依存して、例えば光度測定法により測定することができる。」
しかし,これらの記載からは,どのようにすれば,本願放出特性を有するペレットが得られるのか明らかではない。
本願の発明の詳細な説明にはさらに,実施例として,V1?V9,例10,V11?V15,例16?例18,V19,例20が記載されており,このうち,冒頭に「V」がついたものは比較例とされ,冒頭に「例」がついたものは本発明によるとされているところ(表1?3),V7?V9については,本件補正後発明において特定される水溶性ポリマー,陰イオンポリマーを含有し,陰イオンポリマーの配合割合を有するにもかかわらず,本願放出特性を有しないものであるから(表2),これらの記載からは,本件補正後発明において特定される水溶性ポリマー,陰イオンポリマーを含有し,陰イオンポリマーの配合割合を有するだけでは,本願放出特性を有するペレットが得られるとはいえないことが理解できる。
そして,表2及び表3において,特定の水不溶性ポリマー及び陰イオンポリマーについてその配合割合を変化させることにより作用物質の放出率が変化することは理解でき(なお,表1に記載の例は全て比較例である。),また,例えば,水不溶性ポリマーの種類のみが異なるV8と例16,V7と例20では,水不溶性ポリマー及び陰イオンポリマーの配合割合が同じであるにもかかわらず,pH1.2での120分後の作用物質放出率は大きく異なること,本願放出特性を有し,水不溶性ポリマーの種類が異なる例17及び例18と例20とでは,水不溶性ポリマー及び陰イオンポリマーの配合割合が大きく異なることからみて,作用物質の放出は,水不溶性ポリマーの種類並びに水不溶性ポリマー及び陰イオンポリマーの配合割合に大きく影響されることは明らかであるが,表1?3からは,それらの関係について,本願放出特性を有するペレットを当業者が得ることができるというに足る特定の傾向を見出すことはできない。そして,本件補正後発明に係る水不溶性ポリマーのうちどのようなポリマーがどのような作用物質の放出性を付与するか,また,各ポリマーの配合割合が作用物質の放出性にどのように影響するか,については,表1?3に記載されたもの以外は,発明の詳細な説明の記載をみても,不明である(なお,表1には,本件補正後発明に係る陰イオンポリマーを含有する例は記載されていないから,表1からは各ポリマーの配合割合が作用物質の放出性にどのように影響するかは不明である。)。
さらに,本願発明の詳細な説明に記載された,作用物質の放出について具体的にその結果が記載されたペレットに用いられる陰イオンポリマーは,表2,3に記載された特定の1種のみであり,本件補正後発明に係る陰イオンポリマーのうちどのようなポリマーがどのような作用物質の放出性を付与するか,発明の詳細な説明の記載をみても,表2,3に記載された上記1種のもの以外は,不明である。
そうしてみると,表2,3に記載されたペレット以外の本願放出特性を有するペレットを得るには,水不溶性ポリマーの種類,陰イオンポリマーの種類,及びそれらの配合割合について,当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤が必要となる。
したがって,本件補正後発明について,発明の詳細な説明は,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(3)特許法第36条第6項第1号について
上記(2)で述べたとおり,本件補正後発明に係る水不溶性ポリマー,陰イオンポリマーのうちどのようなポリマーがどのような作用物質の放出性を付与するか,各ポリマーの配合割合が作用物質の放出性にどのように影響するかについて,表1?3に記載されたもの以外は,発明の詳細な説明の記載をみても,不明であるから,上記本願放出特性を有するペレットに用いられる水不溶性ポリマー,陰イオンポリマー及び陰イオンポリマーの配合割合について,発明の詳細な説明に記載の具体例(例10,16?18及び20)から,本件補正後発明の範囲にまで拡張ないし一般化できる技術的根拠はない。
したがって,本件補正後発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

(4)むすび
(2)及び(3)で述べたとおりであるから,本件補正後発明について,本願は特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たすものではなく,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、平成25年11月12日付けの手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
(1)本願発明
平成25年11月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?24に係る発明は,平成25年3月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,請求項1に係る発明は以下のとおりのもの(以下,「本願発明」という。)である。
「【請求項1】
1種以上の水不溶性ポリマーからのポリマーマトリックス中に埋包された薬剤学的に有効な物質を含有している、300?1100μmの範囲の平均粒径を有するペレットであって、前記ポリマーマトリックスは付加的に陰イオンポリマー10?90質量%を含有している、但し、このペレットは、USPによる放出試験において、pH1.2の人工胃液中で120分後には、含有作用物質の10%以下の量を放出し、pH6.8及び/又はpH7.5で更なる合計300分の後には、含有作用物質の少なくとも50%を放出することを条件としていることを特徴とする、押出成形により製造されたペレット。」

(2)原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,次の理由1及び理由2を含むものであり,
「[理由1]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
具体的には,次の指摘事項を含むものである。
「本願請求項1-24に係る発明は・・・。そうすると、本願出願当時の技術常識を参酌しても、本願上記請求項に係る発明を実施しようとする当業者は、種々の水不溶性ポリマー、陰イオンポリマーのうち、所望の溶解性を有するものを検討し、さらにその配合比についても実験的に確認する必要に迫られることになり、当業者に期待しうる試行錯誤を超える負担を強いられるものと認められる。
してみると、本願の発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に十分かつ明確に記載されているとは認められない。また、本願上記請求項は発明の詳細な説明に発明として記載されていない範囲についてまで特許請求しようとするものである。」

(3)判断
本願発明は,本件補正後発明において限定されている水不溶性ポリマー,陰イオンポリマーの種類について,その限定がされていないものである。
したがって,上記第2の(2)で述べたと同様の理由により,表2,3に記載されたペレット以外の本願放出特性を有するペレットを得るには,水不溶性ポリマーの種類,陰イオンポリマーの種類,及びそれらの配合割合について,当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤が必要となる。
したがって,本願発明について,発明の詳細な説明は,当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

また,上記第2の(3)で述べたと同様の理由により,上記本願放出特性を有するペレットに用いられる水不溶性ポリマー,陰イオンポリマー及び陰イオンポリマーの配合割合について,発明の詳細な説明に記載の具体例(例10,16?18及び20)から,本願発明の範囲にまで拡張ないし一般化できる技術的根拠はない。
したがって,本願発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

(4)むすび
したがって,本願発明について,本願は特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たすものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,他の理由を検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-02 
結審通知日 2015-04-06 
審決日 2015-04-21 
出願番号 特願2009-550250(P2009-550250)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 直寛福井 悟  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 冨永 保
関 美祝
発明の名称 胃液抵抗性の作用物質-マトリックスを有しているペレット  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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