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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1305608 |
審判番号 | 不服2014-7352 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-04-21 |
確定日 | 2015-09-18 |
事件の表示 | 特願2009-553229「セキュアな識別文書」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日国際公開、WO2008/110892、平成22年 9月 2日国内公表、特表2010-530088〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の手続の経緯は,次のとおりである。 国際出願 2008年 3月 7日 (優先権主張2007年3月12日,欧州特許庁) 拒絶理由通知書 平成24年10月10日付け 手続補正書,意見書 平成25年 4月12日 拒絶理由通知書 平成25年 5月14日付け 手続補正書,意見書 平成25年11月18日 拒絶査定 平成25年12月16日付け 審判請求書 平成26年 4月21日 手続補正書(請求の理由) 平成26年 6月 2日 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年11月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 <本願発明> 「2つの主表面(S1,S2;S3,S4)及び少なくとも1つの縁部を有し,少なくとも2つの構成層(20,22;24,26;32,33,34)を備えたセキュアな識別文書であって, 前記縁部は,前記縁部の表面から材料を除去してレーザビームを用いて前記縁部にエッチングされた書込データ(23;27;31;35)がマーキングされ,前記レーザビームを用いてエッチングされた書込データが,不正な層状剥離がなされた場合,その剥離されたことがわかるように前記少なくとも2つの構成層(20,22;24,26;32,33,34)に渡って連続してマーキングされる,ことを特徴とするセキュアな識別文書。」 第3 引用文献 原査定において引用された特開平10-58871号公報(原査定の「引用文献2」)には,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,プリペイドカード,クレジットカード,バンクカード等の各種カードにて,カード面を有効に利用でき且つ偽造されにくいカードと,そのカード認識方法に関する。」 イ.「【0004】 【課題を解決するための手段】そこで,上記課題を解決する為に本発明のカードは,マークやバーコード等の情報をカード側面に印刷等により側面情報として付したカードとした。このため,カード面の有効エリアは減少せず,また,側面情報は印刷等で形成した情報なので,ホログラムの様に高価でなく安価に偽造防止が可能で,プリペイドカード等にも適用可能となった。また,カード面に付された磁気ストライプやエンボス文字等のカード側面以外に付された非側面情報と,関連を持たせた内容の側面情報とすれば,これら両情報を用いてよりセキュリティ性の高い偽造防止が可能となる。」 ウ.「【0005】 【発明の実施の形態】以下,図面を参照しながら,本発明のカードおよびカード認識方法の実施の形態を説明する。先ず,図1は本発明のカードの一形態を示す外観図である。図1の如く,本発明のカード10では,カード側面1に側面情報2が付されたカードである。同図に例示するカード10では,天地左右の4辺あるカード側面のうち下側のカード側面に,側面情報2として機械読取り可能な情報であるバーコードが設けられたものである。」 エ.「【0006】側面情報2に持たせる情報の意味内容,使用目的は任意である。側面情報の一つの使い方は,カードの真偽判定,すなわち正当性を判定する為の情報である。・・・(中略)・・・複数ビットの情報を持たせることで,よりセキュリティ性の高い真偽判定の為の側面情報とすることができる。側面情報の,複数のビットからなる情報とは,例えば,ID番号等の個々のカード毎に異なる情報である。」 オ.「【0010】また,側面情報は,カードの側面が複数の側面(図1の様に長方形の形状であれば左右上下)から構成される場合に,どの面に設けてもよいが,任意の複数の側面に設けてもよい。複数の面に設けることによって,利用できる側面の長さを長くとれば,より大きな情報量の側面情報を形成できる。なお,カード側面の数は,カード形状がコイン型等の一つの閉曲線からなれば一つである。」 カ.「【0012】ところで,カードの厚さは,従来より,クレジットカード,バンクカード等では約0.7?0.8mm程度,また電話や鉄道等のプリペイドカードでは約0.1mm程度である。このように,カード面に印刷するのに比べれば,遙に薄くて狭い線状の部分に所定形状のパターンを付して,側面情報を形成する方法であるが,そのパターン形成法は特に限定されず,例えば,既存の各種印刷手段によっても十分に可能である。」 キ.「【0016】また,本発明のカードの場合,カード基材としては従来公知のものが使用できる。例えば,塩化ビニル樹脂,塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体,ポリエステル樹脂,ポリプロピレン,ポリエチレン,アクリル樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ABS樹脂等の各種樹脂,金属,紙等の単層,又はこれら一種又は二種以上からなる複層のシートが使用できる。複層のシートとしては,例えば,白色の色材を含有させた白色樹脂シートをコアシートとして,透明樹脂シートからなるオーバーシートを,上記コアシートの表裏両面に積層した3層構成等である。カードの厚みは特に制限はなく,用途により適宜選択すれば良い。例えば0.1?2.0mmである。厚みが薄すぎるとカード側面に付した側面情報の認識がしずらくなる。また,厚みが厚ければ,厚み方向に側面情報のパターン形成も可能とはなるが,強度的に十分となれば材料費的にコスト高となるだけである。なお,上記3層構成の場合は,カード面への印刷は3層構成とする前のコアシートやオーバーシート等にするが,カード側面への側面情報の形成は,通常は3層構成とした後に行う。3層構成後に,カードサイズに打ち抜くからである。 【0017】上記透明なオーバーシートを用いた3層構成のカード基材では,カード側面は中央部は白色だが両側は透明となり,そこに例えば黒色のバーコードを設けた場合,下地に透明部分があるとコントラストが低下する。しかし,白色部分のバーコードでのみ判定すれば良い。この様な場合は,側面情報としてパターン形成する前に,設ける側面部分に白色等の下地層を設けておいても良い。」 ク.「【0022】なお,本発明のカードは,側面に側面情報を有するものであれば,その他の部分については特に限定はなく,磁気カード,ICカード,光カード等と機械読取り可能な情報を持つ場合でも,それらに限定はなく,複数の機械読取り可能な情報記録手段を有するものでも良い。また,機械読取り可能な情報の外部との授受形式も,接触又は非接触と任意である。」 前記ア.?ク.によれば,引用文献2には,次の事項が記載されているといえる。 ・前記ア.の「本発明は,プリペイドカード,クレジットカード,バンクカード等の各種カードにて,カード面を有効に利用でき且つ偽造されにくいカードと,そのカード認識方法に関する。」の記載によれば,引用文献2には,「プリペイドカード,クレジットカード,バンクカード等の偽造されにくいカード」が記載されている。 ・前記イ.の「そこで,上記課題を解決する為に本発明のカードは,マークやバーコード等の情報をカード側面に印刷等により側面情報として付したカードとした。」の記載によれば,引用文献2には「バーコード等の情報をカード側面に印刷等により側面情報として付し」が記載されているといえる。 ・前記イ.の「カード面に付された磁気ストライプやエンボス文字等のカード側面以外に付された非側面情報と,関連を持たせた内容の側面情報とすれば,これら両情報を用いてよりセキュリティ性の高い偽造防止が可能となる。」の記載によれば,引用文献2には「カード面に付された非側面情報と関連を持たせた内容の側面情報とすれば,これら両情報を用いてよりセキュリティ性の高い偽造防止が可能となり」が記載されているといえる。 ・前記ウ.の「図1は本発明のカードの一形態を示す外観図である。・・・(中略)・・・同図に例示するカード10では,天地左右の4辺あるカード側面のうち下側のカード側面に,側面情報2として機械読取り可能な情報であるバーコードが設けられたものである。」の記載,及び,図1において,バーコードの各バーを,カードの厚み方向に付した記載によれば,引用文献2には,「バーコードの各バーは,カードの厚み方向に形成され」が記載されているといえる。 ・前記エ.の「側面情報2に持たせる情報の意味内容,使用目的は任意である。・・・(中略)・・・側面情報の,複数のビットからなる情報とは,例えば,ID番号等の個々のカード毎に異なる情報である。」の記載によれば,引用文献2には「側面情報2の意味内容は,例えば,ID番号等の個々のカード毎に異なる情報であり」が記載されているといえる。 ・前記オ.の「側面情報は,カードの側面が複数の側面(図1の様に長方形の形状であれば左右上下)から構成される場合に,どの面に設けてもよいが,任意の複数の側面に設けてもよい。複数の面に設けることによって,利用できる側面の長さを長くとれば,より大きな情報量の側面情報を形成できる。なお,カード側面の数は,カード形状がコイン型等の一つの閉曲線からなれば一つである。」の記載によれば,引用文献2には「カード側面の数は,カードが長方形の形状であれば左右上下の4つであり,コイン型等の一つの閉曲線からなれば一つであり」が記載されている。 ・前記キ.の「また,本発明のカードの場合,カード基材としては従来公知のものが使用できる。例えば,・・・(中略)・・・一種又は二種以上からなる複層のシートが使用できる。複層のシートとしては,例えば,白色の色材を含有させた白色樹脂シートをコアシートとして,透明樹脂シートからなるオーバーシートを,上記コアシートの表裏両面に積層した3層構成等である。」の記載, 前記キ.の「なお,上記3層構成の場合は,カード面への印刷は3層構成とする前のコアシートやオーバーシート等にするが,カード側面への側面情報の形成は,通常は3層構成とした後に行う。」の記載によれば, 引用文献2には,「カード基材としては,二種以上からなる複層のシートが使用でき,例えば,白色の色材を含有させた白色樹脂シートをコアシートとして,透明樹脂シートからなるオーバーシートを,上記コアシートの表裏両面に積層した3層構成であり,カード面への印刷は3層構成とする前のコアシートやオーバーシート等にするが,カード側面への側面情報の形成は,通常は3層構成とした後に行い」が記載されているといえる。 ・前記キ.の「上記透明なオーバーシートを用いた3層構成のカード基材では,カード側面は中央部は白色だが両側は透明となり,そこに例えば黒色のバーコードを設けた場合,下地に透明部分があるとコントラストが低下する。しかし,白色部分のバーコードでのみ判定すれば良い。この様な場合は,側面情報としてパターン形成する前に,設ける側面部分に白色等の下地層を設けておいても良い。」の記載によれば,引用文献2には「中央部は白色だが両側は透明となるカード側面に,黒色のバーコードを設けた場合,下地に透明部分があるとコントラストが低下するが,白色部分のバーコードでのみ判定すれば良く,この様な場合は,側面情報としてパターン形成する前に,設ける側面部分に白色等の下地層を設けておいても良く」が記載されているといえる。 ・前記ク.の「なお,本発明のカードは,側面に側面情報を有するものであれば,その他の部分については特に限定はなく,磁気カード,ICカード,光カード等と機械読取り可能な情報を持つ場合でも,それらに限定はなく,複数の機械読取り可能な情報記録手段を有するものでも良い。また,機械読取り可能な情報の外部との授受形式も,接触又は非接触と任意である。」の記載によれば,引用文献2には,「当該カードは,側面に側面情報を有するものであれば,その他の部分については特に限定はなく,磁気カード,ICカード,光カード等と機械読取り可能な情報を持つ場合でも良く,機械読取り可能な情報の外部との授受形式も,接触又は非接触と任意である」が記載されているといえる。 したがって,引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。 <引用発明> 「プリペイドカード,クレジットカード,バンクカード等の偽造されにくいカードであって, バーコードの情報をカード側面に印刷等により側面情報として付し, カード面に付された非側面情報と関連を持たせた内容の側面情報とすれば,これら両情報を用いてよりセキュリティ性の高い偽造防止が可能となり, カード側面の数は,カードが長方形の形状であれば左右上下の4つであり,コイン型等の一つの閉曲線からなれば一つであり, バーコードの各バーは,カードの厚み方向に形成され, 側面情報2の意味内容は,例えば,ID番号等の個々のカード毎に異なる情報であり, カード基材としては,二種以上からなる複層のシートが使用でき,例えば,白色の色材を含有させた白色樹脂シートをコアシートとして,透明樹脂シートからなるオーバーシートを,上記コアシートの表裏両面に積層した3層構成であり,カード面への印刷は3層構成とする前のコアシートやオーバーシート等にするが,カード側面への側面情報の形成は,通常は3層構成とした後に行い,中央部は白色だが両側は透明となるカード側面に,黒色のバーコードを設けた場合,下地に透明部分があるとコントラストが低下するが,白色部分のバーコードでのみ判定すれば良く,この様な場合は,側面情報としてパターン形成する前に,設ける側面部分に白色等の下地層を設けておいても良く, 当該カードは,側面に側面情報を有するものであれば,その他の部分については特に限定はなく,磁気カード,ICカード,光カード等と機械読取り可能な情報を持つ場合でも良く,機械読取り可能な情報の外部との授受形式も,接触又は非接触と任意である, カード。」 第4 対比 次に,本願発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明はカードであり,表裏のカード面と,側面とを有し,そのカード基材は二種以上からなる複層のシートである。また,引用発明のカードは,長方形の形状であれば4つの側面を有し,コイン型等の一つの閉曲線からなれば一つの側面を有することから,少なくとも1つの縁部を有するといえる。 したがって,引用発明のカードは,2つの主表面及び少なくとも1つの縁部を有し,少なくとも2つの構成層を備えているといえる。 また,引用発明のカードは,プリペイドカード,クレジットカード,バンクカード等の偽造されにくいカードであるから,セキュアな識別文書といえる。 したがって,引用発明のカードは,本願発明の「2つの主表面及び少なくとも1つの縁部を有し,少なくとも2つの構成層を備えたセキュアな識別文書」に相当する。 ・引用発明における,カードの側面に印刷等によりバーコードの情報を付すことと,本願発明の「前記縁部は,前記縁部の表面から材料を除去してレーザビームを用いて前記縁部にエッチングされた書込データ(23;27;31;35)がマーキングされ」は,「前記縁部は,書込データがマーキングされ」の点で共通する。 ・引用発明は,バーコードを,中央部は白色で両側は透明となる3層構成のカード基材に設けた場合,下地に透明部分があるとバーコードのコントラストが低下することから,バーコードの下地に透明部分があるといえる。このことは,バーコードが,両側の透明となる層の上に形成されていることにほかならない。 また,引用発明が白色部分のバーコードでのみ判定することは,バーコードが中央部の白色の層にも形成されていることにほかならない。 そして,図1に記載されるように,バーコードの各バーが,カードの厚み方向に付されることも考慮すれば,バーコードが3層に渡って形成されていることは明らかである。 すなわち,引用発明は,カード基材が複層のシートである場合,バーコードが複層に渡って形成されるものである。 したがって,引用発明において,バーコードが複層に渡って形成されることと,本願発明の「前記レーザビームを用いてエッチングされた書込データが,不正な層状剥離がなされた場合,その剥離されたことがわかるように前記少なくとも2つの構成層(20,22;24,26;32,33,34)に渡って連続してマーキングされる」は,「書込データが,前記少なくとも2つの構成層に渡って連続してマーキングされる」の点で共通する。 したがって,本願発明と引用発明の一致点は次のとおりである。 <一致点> 「2つの主表面及び少なくとも1つの縁部を有し,少なくとも2つの構成層を備えたセキュアな識別文書であって, 前記縁部は,書込データがマーキングされ,書込データが,前記少なくとも2つの構成層に渡って連続してマーキングされる,ことを特徴とするセキュアな識別文書。」 また,本願発明と引用発明の相違点は次のとおりである。 <相違点1> 書込データが,本願発明では「前記縁部の表面から材料を除去してレーザビームを用いて前記縁部にエッチングされた」ものであるのに対し,引用発明では,印刷されたものである点。 <相違点2> マーキングが,本願発明では「不正な層状剥離がなされた場合,その剥離されたことがわかるように」マーキングされるものであるのに対し,引用発明では,上記のようにマーキングされるものかどうか不明である点。 第5 判断 <相違点1>について 原査定において引用された.米国特許出願公開第2005/0087606号明細書(原査定の引用文献1)には,カード側面へのマーキング方法について,次の事項が記載されている。 「[0001] The invention relates to data bearing cards, such as credit cards, driver's licenses, identification cards and the like. More particularly, the invention relates to a new system to track such cards prior to and during card processing through use of non-visible or visible markings provided on a portion of the card, preferably a portion of the perimeter edge of the card, as well as to a card containing such markings, to the processing of such cards, and to various methods relating to the new system. 」 (当審訳:「本発明は,クレジットカード,運転免許証,IDカードなどの,データを保持するカードに関する。特に,本発明は,カードの一部,好ましくはカード周囲のエッジ部分に設けられた不可視あるいは可視のマーキングを通して,カード処理の間やその前に,カードを追跡する新しいシステムに関するものであり,さらに,このようなマーキングを含むカード,このようなカードの生産,この新しいシステムに関する種々の方法に関する。」) 「[0042] Visible markings can be produced using conventional inks used in card processing. Alternatively, the visible markings can be produced using a laser beam projected onto the appropriate card edge. The laser beam scores the card edge and at the locations of the scoring, alters the color of the plastic. 」 (当審訳:可視のマーキングは,カード処理で使用される従来のインクを用いて作成される。代わりに,可視のマーキングは,適切なカードのエッジに照射されるレーザービームを使って作成することができる。このレーザービームは,カードエッジに傷を付け,その傷を付けた位置において,プラスチックの色に変化をもたらす。」 上記記載によれば,クレジットカードなどのエッジ(側面)にマーキングする場合に,インクを用いる代わりに,レーザービームを照射することが記載されている。 レーザービームを照射して樹脂等の表面をエッチングしたり変色させたりするマーキング方法は,一般にレーザー彫刻,レーザーマーキング等と呼ばれる周知の加工方法であり,引用文献1には,このような周知の加工方法が,クレジットカードなどのエッジへのマーキングに使用可能であることを示唆している。 また,引用文献2には,側面情報を形成する方法について,次の事項が記載されている。 「【0012】・・・(中略)・・・カード面に印刷するのに比べれば,遙に薄くて狭い線状の部分に所定形状のパターンを付して,側面情報を形成する方法であるが,そのパターン形成法は特に限定されず,例えば,既存の各種印刷手段によっても十分に可能である。」 上記記載によれば,引用発明は,側面情報のパターン形成法を印刷のみに限定するものではない。 してみると,引用発明において,カードの側面にバーコードを形成するために,印刷に代えて,引用文献1に記載されたレーザービームを使用し,これにより,エッチングされた書込みデータをマーキングして上記相違点に係る構成を備えるようにすることは容易に想到し得ることである。 <相違点2>について 本願発明の「不正な層状剥離がなされた場合,その剥離されたことがわかるように」について,本願明細書には次の事項が記載されている。 「【0022】 識別文書の少なくとも1つの縁部のマーキングの結果,2つのオリジナル文書D1,D2の構成層を分離し,例えばD1の層20及びD2の層25など,これらの少なくとも2つを組み立てて,偽造文書D3を作成するものである,あらゆる不正行為が,直ぐに分かるようになる。実際,この場合には,偽造文書D3の第1の層20の側部にマーキングされたデータの部分23Aは,もはや第2の層26の側部上にマーキングされたデータの部分27Bとは連続していない。 【0023】 図3Bは,このような偽造文書D4の縁部を示し,ここではオリジナルの層32は,別の文書の層35で置き換えられている。書込データはもはや連続してマーキングされておらず,完全に一貫性がなく,もはや読取り可能ではないように見える。従って,不正が直ぐに分かることになる。」 上記記載によれば,「不正な層状剥離がなされた場合」とは,オリジナル文書の構成層を分離し,その構成層の一部を別の文書の層で置き換える不正がなされた場合と解することができる。 また,「その剥離されたことがわかるように」とは,側面のマーキングが,連続せず一貫性がなくなることで不正が分かることと解される。ここで,不正がなされた場合にマーキングの連続性や一貫性がなくなるためには,2つの識別文書においてマーキングを異ならせる必要があることは明らかである。なぜなら,2つの識別文書のマーキングが同じであれば,構成層の一部を別の文書の層で置き換える不正がなされたとしても,マーキングの連続性や一貫性が保たれ,剥離されたことがわからないからである。 したがって,「不正な層状剥離がなされた場合,その剥離されたことがわかるように」は,オリジナル文書の構成層を分離し,その構成層の一部を別の文書の層で置き換える不正がなされた場合に,マーキングの連続性や一貫性が失われるように,2つの識別文書のマーキングを異ならせることと解される。 これに対し,引用発明は,側面情報を,ID番号等の個々のカードごとに異なる情報とするものである。バーコードの情報がカードごとに異なることから,上記不正がなされた場合,バーコードの連続性や一貫性が失われることは明らかである。 引用発明は上記不正行為を想定していないものの,バーコードは,その不正行為があったときには連続性や一貫性が失われる性質・構成を有している。したがって,引用発明のバーコードは,「不正な層状剥離がなされた場合,その剥離されたことがわかるように」マーキングされたという点において,本願発明と実質的な相違がない。 また,「不正が直ぐに分かることになる。」という本願発明の作用効果は(【0023】),引用発明に開示あるいは示唆されていないものの,このような作用効果は,引用発明のように複層に渡って連続してバーコードをマーキングし,そのバーコードの情報をカードごとに異ならせた構成であれば,もたらされるものにすぎず,進歩性の判断を左右しない。 よって,本願発明は,引用発明,引用文献1の記載事項,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用文献1の記載事項,及び,周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-22 |
結審通知日 | 2015-04-23 |
審決日 | 2015-05-11 |
出願番号 | 特願2009-553229(P2009-553229) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 甲斐 哲雄、圓道 浩史 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
緑川 隆 手島 聖治 |
発明の名称 | セキュアな識別文書 |
代理人 | 夫馬 直樹 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 竹内 茂雄 |
代理人 | 山本 修 |