ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
---|---|
管理番号 | 1305785 |
審判番号 | 不服2014-12291 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-26 |
確定日 | 2015-09-16 |
事件の表示 | 特願2013- 89801「半導体発光素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日出願公開,特開2013-141038〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成22年9月6日を出願日とする特願2010-199330号(以下「原出願」という。)の一部を,平成25年4月22日に新たな出願としたものであって,平成25年11月21日付けで拒絶理由が通知され,平成26年1月21日に手続補正がされ,同年3月27日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年6月26日に審判請求がされるとともに同時に手続補正がされたものである。 その後,当審において,平成27年3月20日付けで拒絶理由が通知され,これに対して,同年5月14日に手続補正書及び意見書が提出された。 2 本願発明について (1)本願発明 本願の発明は,平成27年5月14日に提出された補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。 「【請求項1】 第1導電形の第1半導体層と, 第2導電形の第2半導体層と, 前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と, 前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対側に設けられ,前記第2半導体層と接する金属部を有する第1電極層であって,10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の寸法範囲において,第1の円相当直径の第1開口と,前記第1の円相当直径よりも大きい第2の円相当直径の第2開口と,を含み,前記金属部を貫通する複数の開口部を有し,前記複数の開口部がランダムに配置された第1電極層と, 前記第1半導体層と導通する第2電極層と, を備え, 前記複数の開口部間の平均距離をAd, 前記発光層から放出される光の波長(ナノメートル)をλ, 前記第2半導体層の前記光に対する屈折率をn2, 前記第2半導体層に対して外側の媒質の前記光に対する屈折率をn0,としたとき, Ad≦λ×(2/(n2+n0)) であり, 前記第2半導体層は,前記金属部に接する凸部と,前記複数の開口部のそれぞれにおいて前記凸部よりも前記方向に後退した凹部と,を有し, 前記凸部の前記方向に沿った厚さと,前記凹部の前記方向に沿った厚さと,の差は,前記発光層から放出される光の波長以下である半導体発光素子。」 (2)刊行物に記載された発明 ア 引用例1: 特開2007-324411号公報 (ア)当審において通知した拒絶理由に引用し,原出願の出願前に日本国内において頒布された引用例1には,図1?図4及び図8とともに以下の記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。 「【0014】 (第1の実施形態) 図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の断面図であり,窒化物系III-V族化合物半導体を用いた半導体発光素子,より具体的には発光ダイオードの断面構造を示している。なお,窒化物系III-V族化合物半導体とはIn_(x)Ga_(y)Al_(1-x-y)N(0≦x,y≦1,0≦x+y≦1)を意味し,典型的にはGaN,GaAlN,InGaN,InGaAlNから選ばれる半導体である。 【0015】 図1の発光ダイオードは,n型GaN基板1上に形成されるn型GaN層2と,その上に形成されるn型GaNからなるn型ガイド層3と,その上に形成される異なる組成のInGaN層を積層した多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造の活性層4と,その上に形成されるp型InGaNからなるp型第1ガイド層5と,その上に形成されるp型GaAlN層(電子オーバーフロー防止層)6と,その上に形成されるp型GaNからなるp型第2ガイド層7と,その上に形成されるp型GaNコンタクト層8とを備えている。11はp側電極,12はn側電極を示している。 【0016】 図1に示すように,p型GaNコンタクト層8及びp側電極11はそれぞれ所定のパターン形状を有し,これらのパターン形状は互いに同一となっている。図8は,p型GaNコンタクト層8及びp側電極11のパターン形状の例を示す平面図である。図8(a)のように複数のストライプ状のパターンが互いに平行に並びそれらの両端部において互いに連結されるパターン形状81であっても良いし,図8(b)のように格子状のパターン形状82であっても良いし,図8(c)のように開口部が千鳥状に配置されたパターン形状83であっても良い。 【0017】 従来より,p型GaNコンタクト層8にドープされるMgはそのアクセプタ準位が深いため,p型GaNコンタクト層8には高濃度のMg(約10^(20)cm^(-3))がドープされている。これだけ高濃度のMgがドーピングされた場合,ドーピング濃度が高すぎるため,Mgはさらに深い準位を形成し,約430nm以下の短い波長成分(約2.9eV以上のエネルギー成分)の光は吸収されてしまう。例えば紫外?青色の波長領域の光を発生するLEDの場合,電流注入によって活性層で発生した光は等方的に広がるため,p型GaNコンタクト層で光が吸収され,半導体発光素子の高効率化を妨げてしまう問題があることを本発明者は見出した。 【0018】 本実施形態の半導体発光素子によれば,2次元平面内においてp側電極11及びp型GaNコンタクト層8が存在する領域と除去された領域とが交互に存在しており,p型GaNコンタクト層8を無くした領域を存在させる構造が実現されている。このため,p型GaNコンタクト層8を無くした領域においては,活性層で発生した光がp型GaNコンタクト層8に吸収されることを防止することができ,p側電極11及びp型GaNコンタクト層8が除去された領域を通じて光が外部に取り出されるので,高効率な半導体発光素子を実現することが可能となる。 【0019】 かかる効果は,p型GaNコンタクト層8に含まれるMgが5×10^(19)cm^(-3)以上の濃度で含まれている場合に特に顕著になる。また,p型GaNコンタクト層8より下層の他のp型半導体層(p型第1ガイド層5,p型GaAlN層6,p型第2ガイド層7)に含まれるMgについては,かかる層における光の吸収を抑制するために,そのMg濃度を5×10^(17)cm^(-3)以上5×10^(19)cm^(-3)未満とすることが望ましい。 【0020】 ・・・(中略)・・・ 【0028】 図2(a)に示すように,p型GaNコンタクト層8の上には,例えばパラジウム-白金-金(Pd/Pt/Au)の複合膜からなるp側電極11が形成される。例えば,Pdは膜厚0.05μm,Ptは膜厚0.05μm,Auは膜厚0.05μmである。 【0029】 次に,p側電極11上に図示しないレジストを塗布し,フォトリソグラフィーもしくは電子線リソグラフィーなどを用いて,レジストのパターニングを行う。さらに,図2(b)に示すように,パターニングされたレジスト(図示せず。)を用いてp側電極11をパターニングする。必要に応じてレジストは除去する。その後,反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置にウェハを導入し,パターニングされたp側電極11をマスクとしてドライエッチングを行う。 【0030】 ここで,エッチング深さ(溝の深さ)としては,p型GaNコンタクト層8の厚さである例えば60nm以上,好ましくはp型第2ガイド層7の途中までの厚さである例えば61nm以上110nm未満,であれば良い。エッチング角度としては垂直,すなわち90度であっても良いが,光取り出し効率をさらに高めるためにテーパー角度をつけても良い。テーパー角度は封止する材料の屈折率によって異なってくる。後工程において,空気で封止する場合0?20度,すなわちテーパー角度70?90度をつけても構わない。樹脂で封止する場合0?40度,すなわちテーパー角度50?90度をつけても構わない。テーパー角度の制御は,RIEにおけるエッチング速度を調整することにより実現される。また,2次元平面内における寸法としては図8(a)のように2μmのラインアンドスペースとした。これに限定されることなく図8(b),(c)のように穴形状(矩形等の多角形状や円形状等)でドットパターンを彫りぬいても構わない。また,寸法もこれに限定されることなく,電子線リソグラフィーなどによれば,サブマイクロメーターオーダーの加工も可能である。 【0031】 その後,RIE装置からウェハを取り出し,レジストを取り除いた後,n型GaN基板1側から研磨を行い,ウェハ厚を100μm程度までに薄くする。その後,図2(c)に示すように,n型GaN基板1の裏面(研磨面)にn側電極12を形成する。n側電極12としては,例えば,チタン-白金-金(Ti/Pt/Au)の複合膜からなる。膜厚としては,例えば,膜厚0.05μm程度のTi膜,膜厚0.05μm程度のPt膜,および膜厚1.0μm程度のAu膜である。 【0032】 本実施形態で作製した青色LEDと,比較例としての青色LED(p型第2ガイド層及びp型コンタクト層が2次元平面内で全てにわたりほぼ均一な厚さで存在するLED)の特性を比較した。比較例のLEDの場合に20mAにおける光出力が15mWであるのに対して,本実施形態のLEDの同条件における光出力は22mWまでに達した。これは,p型コンタクト層8における光の吸収が少なくなったためと考えられる。」 (イ)以上によれば,引用例1には,以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明1」という。)。 「発光ダイオードであって, n型GaN基板1上に形成されるn型GaN層2と,その上に形成されるn型GaNからなるn型ガイド層3と,その上に形成される異なる組成のInGaN層を積層した多重量子井戸構造の活性層4と,その上に形成されるp型InGaNからなるp型第1ガイド層5と,その上に形成されるp型GaAlN層(電子オーバーフロー防止層)6と,その上に形成されるp型GaNからなるp型第2ガイド層7と,その上に形成されるp型GaNコンタクト層8とともに,p型GaNコンタクト層8上にp側電極11,n型GaN基板1下にn側電極12を備えており, p型GaNコンタクト層8及びp側電極11はそれぞれ所定のパターン形状を有し,これらのパターン形状は互いに同一となっており,複数のストライプ状のパターンが互いに平行に並びそれらの両端部において互いに連結されるパターン形状81であっても良いし,格子状のパターン形状82であっても良いし,開口部が千鳥状に配置されたパターン形状83であっても良いものであり, p側電極11は,例えばパラジウム-白金-金(Pd/Pt/Au)の複合膜からなり,ここで,例えば,Pdは膜厚0.05μm,Ptは膜厚0.05μm,Auは膜厚0.05μmであるものであり, p側電極11がない部分において,p型第2ガイド層7とp型GaNコンタクト層8には溝が形成され,当該溝の深さは,例えば61nm以上110nm未満であり,溝形成のエッチング角度は,光取り出し効率をさらに高めるためにテーパー角度50?90度であり,2次元平面内では,サブマイクロメーターオーダーの大きさの穴形状(矩形等の多角形状や円形状等)である, 青色LED。」 イ 引用例2: 特開2006-135311号公報 (ア)当審において通知した拒絶理由に引用し,原出願の出願前に日本国内において頒布された引用例2には,図1,図4?6及び図10とともに以下の記載がある 「【0013】 また,上記のような従来の窒化物LEDにおいて,本発明者等が着目した第二の問題は,窒化物半導体の屈折率が,実装状態において素子を取り囲む媒体(空気やモールド樹脂など)と比べて高いために,活性層で生じた光が,窒化物半導体からなる積層体部分の内部に閉じ込められ易く(即ち,光の取り出し効率が悪く),そのために発光効率が低いという問題である。 従って,本発明の他の目的は,上記問題を解決し,活性層で生じた光をより多く素子外に取り出すことができる構成を付与することによって,発光効率の優れた窒化物LEDを提供することである。」 「【0016】 また,本発明の第二の態様に係る窒化物LEDでは,積層体の最上層の上面に凹凸形状が形成されており,これによって,活性層で発生される光が素子外に出射され易くなる。 素子上部から光を取り出す場合,最上層上面に凹凸形状があると,活性層から該上面に達した光が素子外部に出やすくなる。これは,該上面が凹凸面とされることによって,該上面が平坦面であった場合には全反射されていた光が,素子外部に出射され得るようになるからである。 更に,最上層の上面を凹凸面とすると,該凹凸面で生じる反射は乱反射となり,反射光の進行方向がランダム化する。その結果,活性層で発生する光が,素子内部で多重反射を受ける確率が低くなり,素子外に出射され易くなる。この多重反射の抑制による光取り出し効率の改善効果は,上方へ光を取り出す場合や,下方へ光を取り出す場合など,素子のいずれの面から光を取り出す構成を採用した場合においても得られる効果である。 【0017】 以下に,本発明の好ましい実施の形態を,図面を用いて説明する。 本発明による窒化物LEDは,図1に示すように,基板101上に,窒化物半導体層からなる積層体が形成された素子構造を有する,該積層体には,基板側101から,第1のn型窒化物半導体層102と,窒化物半導体からなる活性層103と,p型窒化物半導体層104と,第2のn型窒化物半導体層(第2のn型層)105とがこの順に含まれている。」 「【0051】 〔第二の態様〕 本発明では,光取り出し効率を向上させるために,窒化物半導体からなる積層体の最上層の上面のうちの一部または全部を凹凸面とする。ただし,n型コンタクト層(第2のn型層)には,活性層へ正孔を注入するためのp側電極を必ず形成する。 即ち,積層体の最上層がn型コンタクト層である場合には,該n型コンタクト層105の上面を凹凸面とし,かつ,p側電極を設ける。その場合,n型コンタクト層の上面を全面的に凹凸面とし,該凹凸面の一部または全部を覆ってp側電極を形成してもよいし,図10(a)に示すように,n型コンタクト層105の上面のうちの一部の領域にp側電極P102を形成し,それ以外の領域を凹凸面とする態様でもよい。n型コンタクト層の上面を全面的に凹凸面とし,該凹凸面の全部(凹部内および凸部上の全て)を覆ってp側電極を形成する態様では,該p側電極の下面が,n型コンタクト層上面の凹凸形状を反映した凹凸状の反射面となり,光取り出し方向は,下方となる。 また,図10(b)に示すように,n型コンタクト層105の上にさらに他の窒化物半導体層106が形成されている場合には,最上面(層106の上面)の局所的な領域にドライエッチングを施してn型コンタクト層105に達するまで掘り下げ,該ドライエッチングによって露出したn型コンタクト層105の露出面にp側電極P102を形成する。 【0052】 凹凸のサイズ(凹部および凸部を形成する間隔および,凹部と凸部の間の高低差)は,活性層103で発生する光の散乱・回折が生じるサイズであればよいが,好ましくは,発光波長の4分の1以上とする。例えば,発光波長が空気中で400nmの窒化物LEDの場合,窒化物半導体の屈折率が2.5前後であるから,凹凸のサイズは40nm以上とすることが好ましい。 凹凸のサイズは,これよりずっと大きくてもよく,凹部と凸部の高低差は,好ましくは0.5μm以上であり,より好ましくは1μm以上である。凹部と凸部の横方向(基板の主面に平行な方向)の間隔も同様である。このようなサイズとすれば,窒化物LEDの典型的な発光波長である緑色?近紫外の光に対して,十分な乱反射効果を得ることができる。 【0053】 n型コンタクト層105の上面に凹凸形状を形成する方法として,次の方法が例示される。 (A)n型コンタクト層105を厚めに成長した後,エッチングにより上面に凹部を形成する方法。 (B)n型コンタクト層105の上面が凹凸状を呈すように,n型窒化物半導体の成長を行う方法。 【0054】 (A)の方法は,例えば,発光波長が400nmの窒化物LEDの場合,n型コンタクト層105を100nmの厚さに成長した後,ドライエッチングによって,n型コンタクト層105の上面に深さ40nm以上の凹部を形成する。 ドライエッチングは,n型コンタクト層105の上面にエッチングマスクを形成せずに,単にエッチングガスにさらすことにより行うこともできるし,該上面に部分的にエッチングマスクを形成したうえで行うこともできる。 窒化物半導体のエッチングに使用できるエッチングガスは公知であり,ハロゲン系のガスや,水素ガスなどが使用できる。好ましいエッチング方法は,塩素ガスなどの塩素系ガスを用いたプラズマエッチングである。 エッチングマスクを用いる場合,該マスクは,フォトリソグラフィにより所定のパターンに形成したものであってもよいし,耐エッチング性を有する粉末を,n型コンタクト層105の上面にランダムに付着させたものであってもよい。 フォトリソグラフィ技法でパターニングしたエッチングマスクを用いると,凹部を所望のパターンに形成することができる。凹部のパターンは任意であり,凹部または凸部を,ストライプ状,ドット状等に形成することができる。ドット状の場合のドットの形状(上から見た形状)に限定はなく,円形,楕円形,方形,多角形,不定形等の各種形状が例示される。 凹部または凸部の分布は,規則的であってもよいし,不規則的であってもよいが,発光面内における発光強度の均一性をよくするためには,規則的である方が好ましい。 凹部および凸部からなるパターンを一定の規則に従って形成することにより,フォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶を構成することも可能である。 凹凸を形成したn型コンタクト層105の上面には,通常のマスクプロセスを用いて,平坦な上面に対するのと同様に,Al電極P102を形成することができる。Al電極P102を開口電極とすることも任意に行い得る。 【0055】 また,(A)の方法では,図4に示すように,凹部のみ(図4(a)),または凸部のみ(図4(b))に,Al電極P102を形成することも可能である。 この場合,凹部の底面または凸部の頂面を連続面となるように形成し,該連続面をAl電極P102の形成面とする。 図5(a)?(f)は,かかる電極形成面のパターンの一例であり,斜線部で示した電極形成面が,(a)?(c)では網目状,(d)では櫛形の分岐状,(e)ではミアンダ状,(f)では渦巻き状とされている。 【0056】 n型コンタクト層105の上面の凹部のみにAl電極P102を形成する場合の作製手順の一例を,図6に示す。 まず,n型コンタクト層105の上面に,フォトリソグラフィによって,窓部(n型コンタクト層105の上面が露出した部分)が凹部のパターンに形成されたレジストマスクRを形成する(図6(a))。 次に,ドライエッチングによって,レジストマスクRの窓部に所定の深さの凹部を成する(図6(b))。 次に,n型コンタクト層105の凸部上にレジストマスクRを残したまま,Alの蒸着を行う(図6(c))。 最後に,レジストマスクRをリフトオフすると,凹部のみにAl電極P102を残すことができる(図6(d))。 以上の加工によって,Al電極P102は開口電極となり,その開口部のパターンが凸部のパターンとほぼ一致することになる。 【0057】 このように凹部のみにAl電極P102を形成した窒化物LEDは,n型コンタクト層105の上面の凹凸による光散乱効果と,光取り出し側(上方)に向かって突出した凸部から光が出射され易いために,凹凸面を通過させた上方への光取り出し効率が向上する。 【0058】 図6(b)に示すように,凸部のみに電極を形成する場合には,例えば,上記手順において,レジストマスクの代わりに,開口部が凹部のパターンに形成されたp側電極をn型コンタクト層の上面に形成し,このp側電極をエッチングマスクとして,凹部をエッチング形成すればよい。」 ここで,図4は次のものである。 (イ)以上から,引用例2には以下の事項が記載されている。 a 窒化物LEDであって,基板101上に,窒化物半導体層からなる積層体が形成された素子構造を有し,該積層体には,基板側101から,第1のn型窒化物半導体層102と,窒化物半導体からなる活性層103と,p型窒化物半導体層104と,第2のn型窒化物半導体層(第2のn型層)105とがこの順に含まれているものについて,第二の態様に係る窒化物LEDにおいては,光取り出し効率を向上させるために,窒化物半導体からなる積層体の最上層の上面のうちの一部または全部を凹凸面とする。ただし,n型コンタクト層(第2のn型層)には,活性層へ正孔を注入するためのp側電極を必ず形成する。 b 凹凸のサイズ(凹部および凸部を形成する間隔および,凹部と凸部の間の高低差)は,活性層103で発生する光の散乱・回折が生じるサイズであればよいが,好ましくは,発光波長の4分の1以上とする。例えば,発光波長が空気中で400nmの窒化物LEDの場合,窒化物半導体の屈折率が2.5前後であるから,凹凸のサイズは40nm以上とすることが好ましく,凹凸のサイズは,これよりずっと大きくてもよく,凹部と凸部の高低差は,好ましくは0.5μm以上であり,より好ましくは1μm以上である。凹部と凸部の横方向(基板の主面に平行な方向)の間隔も同様である。このようなサイズとすれば,窒化物LEDの典型的な発光波長である緑色?近紫外の光に対して,十分な乱反射効果を得ることができる。 c n型コンタクト層105の上面に凹凸形状を形成する方法として,(A)n型コンタクト層105を厚めに成長した後,エッチングにより上面に凹部を形成する方法があり,この方法においては,ドライエッチングは,n型コンタクト層105の上面にエッチングマスクを形成せずに,単にエッチングガスにさらすことにより行うこともできるし,該上面に部分的にエッチングマスクを形成したうえで行うこともでき,エッチングマスクを用いる場合,該マスクは,フォトリソグラフィにより所定のパターンに形成したものであってもよいし,耐エッチング性を有する粉末を,n型コンタクト層105の上面にランダムに付着させたものであってもよい。 d フォトリソグラフィ技法でパターニングしたエッチングマスクを用いると,凹部を所望のパターンに形成することができるところ,凹部のパターンは任意であり,凹部または凸部を,ストライプ状,ドット状等に形成することができ,ドット状の場合のドットの形状(上から見た形状)に限定はなく,円形,楕円形,方形,多角形,不定形等の各種形状が例示され,凹部または凸部の分布は,規則的であってもよいし,不規則的であってもよいものである。 e 前記(A)の方法では,図4に示すように,凹部のみ(図4(a)),または凸部のみ(図4(b))に,Al電極P102を形成することも可能であり,この場合,凹部の底面または凸部の頂面を連続面となるように形成し,該連続面をAl電極P102の形成面とする。 (3)対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「n型GaN層2と,その上に形成されるn型GaNからなるn型ガイド層3」を合わせたものは,本願発明の「第1導電形の第1半導体層」に相当する。 イ 引用発明1の「p型InGaNからなるp型第1ガイド層5と,その上に形成されるp型GaAlN層(電子オーバーフロー防止層)6と,その上に形成されるp型GaNからなるp型第2ガイド層7と,その上に形成されるp型GaNコンタクト層8」を合わせたものは,本願発明の「第2導電形の第2半導体層」に相当する。 ウ 引用発明1の,「n型ガイド層3」「の上に形成される」,「異なる組成のInGaN層を積層した多重量子井戸構造の活性層4」は,「その上に」「p型InGaNからなるp型第1ガイド層5」が「形成される」から,本願発明の「前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層」に相当する。 エ 引用発明1の「p型GaNコンタクト層8上」の「p側電極11」は,「例えばパラジウム-白金-金(Pd/Pt/Au)の複合膜からな」るものであるから,本願発明の「前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対側に設けられ,前記第2半導体層と接する金属部を有する第1電極層」に相当する。 オ 引用発明1においては,「p型GaNコンタクト層8及びp側電極11はそれぞれ所定のパターン形状を有し,これらのパターン形状は互いに同一となっており,複数のストライプ状のパターンが互いに平行に並びそれらの両端部において互いに連結されるパターン形状81であっても良いし,格子状のパターン形状82であっても良いし,開口部が千鳥状に配置されたパターン形状83であっても良いものであ」るから,「開口部」は「p側電極11」を貫いて形成されていることは明らかである。それゆえ,当該「p側電極11」と,本願発明の「10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の寸法範囲において,第1の円相当直径の第1開口と,前記第1の円相当直径よりも大きい第2の円相当直径の第2開口と,を含み,前記金属部を貫通する複数の開口部を有し,前記複数の開口部がランダムに配置された第1電極層」とは,「金属部を貫通する複数の開口部が配置された第1電極層」である点で一致する。 カ 引用発明1の「n型GaN基板1下」の「n側電極12」が,「n型GaN基板1」を介して「n型GaN層2」と導通していることは明らかであるから,当該「n型GaN基板1下」の「n側電極12」は,本願発明の「前記第1半導体層と導通する第2電極層」に相当する。 キ 引用発明1においては,「p型GaNコンタクト層8及びp側電極11はそれぞれ所定のパターン形状を有し,これらのパターン形状は互いに同一となっており,複数のストライプ状のパターンが互いに平行に並びそれらの両端部において互いに連結されるパターン形状81であっても良いし,格子状のパターン形状82であっても良いし,開口部が千鳥状に配置されたパターン形状83であっても良いものであ」るとともに,「p側電極11がない部分において,p型第2ガイド層7とp型GaNコンタクト層8には溝が形成され」るものである。ここで,「p型GaNコンタクト層8に」「形成され」る溝の深さは,「n型GaNからなるn型ガイド層3」ないし「p型GaNコンタクト層8」が形成される方向に沿うものであることは明らかである。 一方,本願発明の「前記第2半導体層は,前記金属部に接する凸部と,前記複数の開口部のそれぞれにおいて前記凸部よりも前記方向に後退した凹部と,を有」するとの構成における「前記方向」とは,本願明細書の「実施形態に係る半導体発光素子110では,第2半導体層52の金属部23と接する凸部521のZ方向に沿った第1の厚さt1と,第2半導体層52の複数の開口部21に対応する凹部522のZ方向に沿った第2の厚さt2と,が異なっている。」(段落【0022】)及び「また,第1半導体層51から第2半導体層52に向かう方向をZ方向とする。」(段落【0015】)の記載を参酌すると,「第1半導体層」から「第2半導体層」に向かう方向であることは明らかである。 そうすると,引用発明1に係る前記構成は,本願発明の「前記第2半導体層は,前記金属部に接する凸部と,前記複数の開口部のそれぞれにおいて前記凸部よりも前記方向に後退した凹部と,を有」することに相当する。 ク 引用発明1の「青色LED」は,本願発明の「半導体発光素子」に相当する。 ケ したがって,引用発明1と本願発明とは以下の点で一致する。 「第1導電形の第1半導体層と, 第2導電形の第2半導体層と, 前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と, 前記第2半導体層の前記第1半導体層とは反対側に設けられ,前記第2半導体層と接する金属部を有する第1電極層であって, 前記金属部を貫通する複数の開口部を有し,前記複数の開口部が配置された第1電極層と, 前記第1半導体層と導通する第2電極層と, を備え, 前記第2半導体層は,前記金属部に接する凸部と,前記複数の開口部のそれぞれにおいて前記凸部よりも前記方向に後退した凹部と,を有する半導体発光素子。」 コ 一方,両者は以下の各点で相違する。 《相違点1》 本願発明は,「第1電極層」が有する開口部の形状と配置について,「10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の寸法範囲において,第1の円相当直径の第1開口と,前記第1の円相当直径よりも大きい第2の円相当直径の第2開口と,を含み,前記金属部を貫通する複数の開口部を有し,前記複数の開口部がランダムに配置された第1電極層」を備えるのに対して,引用発明1は,「金属部を貫通する複数の開口部」が「配置された」ことに対応する構成は備えるものの,「10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の寸法範囲において,第1の円相当直径の第1開口と,前記第1の円相当直径よりも大きい第2の円相当直径の第2開口と,を含」む「複数の開口部を有」するとともに,「複数の開口部」の「配置」が「ランダム」であることまでは特定されていない点。 《相違点2》 本願発明は,「前記複数の開口部間の平均距離をAd,前記発光層から放出される光の波長(ナノメートル)をλ,前記第2半導体層の前記光に対する屈折率をn2,前記第2半導体層に対して外側の媒質の前記光に対する屈折率をn0,としたとき,Ad≦λ×(2/(n2+n0))であ」る構成を備えるのに対して,引用発明1においては,そのように特定されていない点。 《相違点3》 本願発明は,「前記凸部の前記方向に沿った厚さと,前記凹部の前記方向に沿った厚さと,の差は,前記発光層から放出される光の波長以下である」構成を備えるのに対して,引用発明1は,本願発明の「前記複数の開口部のそれぞれにおいて前記凸部よりも前記方向に後退した凹部」に対応する,「溝」あるいは「穴」を備えるところ,当該「溝の深さは,例えば61nm以上110nm未満であ」るとの特定はされているものの,本願発明に係る「前記凸部の前記方向に沿った厚さと,前記凹部の前記方向に沿った厚さと,の差は,前記発光層から放出される光の波長以下である」とは特定されていない点。 (4)判断 上記各相違点について,まず相違点1及び相違点2を併せて検討する。 ア 相違点1及び相違点2について (ア)引用発明1は,「p側電極11がない部分において,p型第2ガイド層7とp型GaNコンタクト層8には溝が形成され,当該溝の深さは,例えば61nm以上110nm未満であり,溝形成のエッチング角度は,光取り出し効率をさらに高めるためにテーパー角度50?90度であり,2次元平面内では,サブマイクロメーターオーダーの大きさの穴形状(矩形等の多角形状や円形状等)である」ものであり,当該「溝」あるいは「穴」により光取り出し効率を高めることを意図していることは明らかである。ここで,「サブマイクロメーターオーダーの大きさ」とは,0.1μm(100nm)単位程度の大きさを表すことは明らかであるから,引用発明1において,「2次元平面内」での「サブマイクロメーターオーダーの大きさの穴(矩形等の多角形状や円形状等)」について,そのサイズを100nmを超える程度とすることは,当業者が適宜になし得たことである。 (イ)上記(ア)で検討したとおり,引用発明1は,「溝」あるいは「穴」により光取り出し効率を高めることを意図しているものであることは明らかである。 一方,前記2(2)イ(イ)で摘記したとおり,引用例2には,「光取り出し効率を向上させるために,窒化物半導体からなる積層体の最上層の上面のうちの一部または全部を凹凸面とする」とともに,「凸部のみ(図4(b))に,Al電極P102を形成すること」が記載され,これは,引用発明1において「p側電極11がない部分において,p型第2ガイド層7とp型GaNコンタクト層8には溝が形成され」ることと同様の構成をとるものといえる。さらに,引用例2には,「凹凸のサイズ(凹部および凸部を形成する間隔および,凹部と凸部の間の高低差)は,活性層103で発生する光の散乱・回折が生じるサイズであればよいが,・・・例えば,発光波長が空気中で400nmの窒化物LEDの場合,窒化物半導体の屈折率が2.5前後であるから,凹凸のサイズは40nm以上とすることが好ましく,凹凸のサイズは,これよりずっと大きくてもよく,凹部と凸部の高低差は,好ましくは0.5μm以上であり,より好ましくは1μm以上である。凹部と凸部の横方向(基板の主面に平行な方向)の間隔も同様である」ことが記載されている。 それゆえ,引用発明1において,光取り出し効率をより向上させるために,「穴形状」の間隔について上記引用例2に記載された事項を適用して,当該間隔を100nmを超える程度とすることは,当業者が適宜になし得たことである。 なお,引用例2に記載されたものは,「p側電極」が,p型窒化物半導体層104上に,第2のn型窒化物半導体層(第2のn型層)105を介して形成されている。しかしながら,引用例2に係る「第2のn型窒化物半導体層(第2のn型層)105」,及び引用発明1に係る「p型GaNコンタクト層8」は,いずれも窒化物半導体であって,屈折率に格段の差異はないから,引用例2に記載されている,「凹凸のサイズ」を「活性層103で発生する光の散乱・回折が生じるサイズ」とする点について,「p側電極」が,上記のとおり,当該第2のn型窒化物半導体層(第2のn型層)105が設けられているか,あるいは,引用発明1のように「p型GaNコンタクト層8上」に設けられるかによって,格段の効果の差異が生ずるとは認められない。 (ウ)引用例2には,凹凸形状について,「凹部のパターンは任意であり,凹部または凸部を,ストライプ状,ドット状等に形成することができ,ドット状の場合のドットの形状(上から見た形状)に限定はなく,円形,楕円形,方形,多角形,不定形等の各種形状が例示され,凹部または凸部の分布は,規則的であってもよいし,不規則的であってもよいものである」ことが記載されている。ここでは,凹部の形状として「不定形」が記載されているところ,当該「不定形」について更なる記載はない。 ところが,引用例2には「凹凸形状を形成する方法として,(A)n型コンタクト層105を厚めに成長した後,エッチングにより上面に凹部を形成する方法があり,・・・,エッチングマスクを用いる場合,該マスクは,フォトリソグラフィにより所定のパターンに形成したものであってもよいし,耐エッチング性を有する粉末を,n型コンタクト層105の上面にランダムに付着させたものであってもよい」とも記載されている。 ここで,一般に,粉末を構成する微粒子は,全てが同一の大きさを有するものではなく,一定のばらつきを有するものであることは,例えば以下の周知例1にも示されているような周知事項である。 周知例1: 特開2005-279807号公報 当審において通知した拒絶理由に引用し,原出願の出願日前に日本国内において頒布された特開2005-279807号公報(以下「周知例1」という。)には,図1とともに以下の記載がある。 「【0013】 図1に示すように,凸凹パターン形成用部材は,シート状基材1とこの上に順次形成された熱軟化性層2,耐エッチング層3,微粒子4がバインダー5に包埋された実質的に単層の微粒子層6,接着層7を備える。但し,図1では粒子として回転半径が1μm以下,0.05μmから0.5μm程度の微粒子を示している。また,微粒子層6は実質的に単層の微粒子層を例に説明する。本発明における粒子,粒子層は,この例に限られない。粒子の回転半径については,粒子は平均回転半径が1μm以下のものを表し,光学素子の反射防止構造や回折格子構造などを形成する場合には,例えば0.1から0.4μm程度のものが良い。ここで平均回転半径とは,無作為に抽出した100個の粒子を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡,あるいは透過型電子顕微鏡で撮影して,得られた個々の粒子の投影像の回転半径の平均値である。回転半径は,理化学辞典第5版(岩波書店)を参照することができる。」 「【0027】 粒子径分布は,下記式(1)で定義され,好ましくは0.8?1.0の範囲内であり,より好ましくは0.9?1.0の範囲である。 粒子径分布=個数平均粒子径/体積平均粒子径 (1) ここで,個数平均粒子径とは,無作為に抽出した100個の微粒子の直径を測定した平均値である。体積平均粒子径とは,微粒子を真球とみなし無作為に抽出した100個の微粒子の直径から合計体積を算出し,小さい体積の微粒子から累積していき,その累積体積が合計体積の50%となった微粒子の直径である。具体的には平均粒子径は,微粒子を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡,あるいは透過型電子顕微鏡で撮影して投影像を得,それを画像解析することにより得られる。」 よって,引用例2には,各凹部が同一の大きさを持つものに限られず,各凹部の大きさがばらつきを有するものが記載されているといえる。したがって,ある一つの凹部と,これとは別の凹部を比較したとき,どちらか一方がより大きいものであるもの,すなわち,相違点1に係る「第1の円相当直径の第1開口と,前記第1の円相当直径よりも大きい第2の円相当直径の第2開口と,を含」むことも,引用例2に記載されているといえる。 また,引用例2には,「凹部または凸部の分布は,規則的であってもよいし,不規則的であってもよいものである」との記載から,凹部をランダムに配置したものも記載されているといえる。 (エ)以上から,引用発明1において,光取り出し効率をより向上させるために,引用例2に記載された前記各事項を適用して,相違点1に係る,「10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の寸法範囲において,第1の円相当直径の第1開口と,前記第1の円相当直径よりも大きい第2の円相当直径の第2開口と,を含み,前記金属部を貫通する複数の開口部を有」するとともに,「複数の開口部」「配置」が「ランダム」であることに対応する構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。 ここで,上記(ウ)において検討したように,「穴形状」の配置をランダムにするときにあっても,上記(イ)において検討したとおり,各「穴形状」間の間隔が100nmを超える程度となるように配置することは,一様な光取り出しの観点から当然になされることといえ,このとき,本願発明における「複数の開口部間の平均距離」である「Ad」に対応する値は,100nmを超える程度になるものといえる。 (オ)そして,引用発明1に係る,GaN,GaAlN及びInGaN等の窒化物半導体からなる「青色LED」については,引用例1に「室温におけるフォトルミネッセンスの波長を430nmに設計した。」(段落【0022】)との記載があるから,その発光波長も同程度の波長と推察され,また,引用例2の「窒化物半導体の屈折率が2.5前後」との記載も参照して,本願発明における「λ×(2/(n2+n0))」との式に代入すると,約246nmとなり,これは,前記「Ad」に対応する値である,100nmを超える程度の値よりも大きい値となる。 よって,引用発明1において,相違点1及び相違点2に係る構成を備えることは当業者が適宜になし得たことである。 イ 相違点3について 引用発明1における「溝」あるいは「穴」は,本願発明の「前記複数の開口部のそれぞれにおいて前記凸部よりも前記方向に後退した凹部」に対応するものであるところ,当該「溝の深さは,例えば61nm以上110nm未満であ」るとの特定がされているから,「穴」についても,その深さは「例えば61nm以上110nm未満であ」るものといえる。 そして,上記「ア 相違点1及び相違点2について」の(オ)で検討したとおり,引用発明1に係る,GaN,GaAlN及びInGaN等の窒化物半導体からなる「青色LED」については,引用例1に「室温におけるフォトルミネッセンスの波長を430nmに設計した。」(段落【0022】)との記載があり,その発光波長もこれと同程度の波長と推察されるから,前記溝の深さである「例えば61nm以上110nm未満」は,当該波長よりも小さいことは明らかである。 よって,相違点3は引用発明1が既に備える事項であり,仮にそうでないとしても,引用発明1において相違点3に係る構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。 ウ また,本願明細書の記載を見ても,本願発明が,相違点1ないし3に係る構成を備えることにより,引用例1及び2の記載,並びに周知技術から当業者が予測し得ない作用効果を奏するものとは認められない。 (5)まとめ 以上検討したとおり,本願発明は,周知技術を勘案して,引用発明1及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 むすび 以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-07-17 |
結審通知日 | 2015-07-21 |
審決日 | 2015-08-03 |
出願番号 | 特願2013-89801(P2013-89801) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松崎 義邦、佐藤 俊彦 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 近藤 幸浩 |
発明の名称 | 半導体発光素子及びその製造方法 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |