• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F
管理番号 1305790
審判番号 不服2014-15041  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2015-09-16 
事件の表示 特願2011- 26626号「作業機械」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日出願公開、特開2011-169097号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成23年2月10日(パリ条約による優先権主張2010年2月11日、英国)の出願であって、平成26年3月24日付けで拒絶査定(発送日は平成26年4月1日)がなされ、これに対し、平成26年7月31日付けで拒絶査定不服審判請求および手続補正がなされ、これに対し、平成26年12月1日付けで前置報告がなされ、平成27年2月6日付けで上申書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明は、平成26年7月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお、平成26年7月31日付けの手続補正書では請求項1について補正されていない。

「【請求項1】
前端および後端を有する本体を備える作業機械であって、
前記本体が、前記機械を地上で駆動できる地面係合推進構造を有し、
前記機械が、一方の端部で前記本体に対して取り付けられると共に、前記本体の一方の側またはその近くで作業器具のための取付部がある第2の端部まで前記本体の前記前端を超えて前方に延びるローディング・アームを有するローディング・アーム・アセンブリを備え、
前記機械が、前記アームが延びる前記第1の側と反対側にある前記本体の第2の側の近くに、前記本体に取り付けられた運転室を含み、
前記運転室は、前記運転室の前方に前記本体のどの部分も大幅に延びないように、前記運転室が前記本体の前記前端に取り付けられ、
前記運転室が、運転室屋根と、運転室床と、前壁と、後壁と、前記ローディング・アーム・アセンブリに隣接する第1の側壁と、前記第1の側壁の反対側にある第2の運転室側部と、を含み、
前記第2の運転室側部に前記運転室の全長にわたって延びる遮るものが略無い開口が設けられ、前記開口がアクセス・ドアによって閉じることが可能であり、
前記機械がスキッドステアローダ機であり、前記地面係合推進構造が前記本体の両側に一対の車輪またはループの無限軌道を含み、前記本体の一方の側にある前記車輪もしくは一対の前記車輪のうちの少なくとも1つまたは無限軌道を、前記本体の他方の側にある前記1つ以上の車輪または無限軌道に対して差動駆動することによって操舵作用が得られる作業機械。」

3.刊行物に記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2001-509225号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付与し、また、括弧内の記載は当審で追記した。)。

(1a)「【特許請求の範囲】
1.本体、運転室およびブーム構体からなり、前記本体が前方端および後方端を有しかつそれぞれ車両の対向側に配置された第1および第2の地面に係合可能な推進手段を備え、かつそのさい前記第1および第2推進手段が車両の他方の側の推進手段から独立して車両の1方の側の推進手段を駆動することにより車両を推進かつ操縦するために第1および第2の伝動手段によって駆動され、前記ブーム構体が、その外方端において、前記ブーム構体に荷捌き器具を接続するための接続手段を有しておりそして前記ブーム構体の内方端が、上昇位置と、前記ブーム構体が前記オペレータ室に沿って前方に延びかつ前記荷捌き器具が本体の前方端の前方に配置される下降位置との間の運動のために、前記本体の後方端に隣接して、本体に枢着される、横滑り操縦積み込み車両において、前記第1および第2伝動手段を内部に有している、車両の1側に配置された伝動箱手段からなることを特徴とする横滑り操縦積み込み車両。」

(1b)「【発明の詳細な説明】
発明の名称
横滑り操縦積み込み車両
技術分野
本発明は、本体、運転室およびブーム構体からなり、前記本体が前方端および後方端を有しかつそれぞれ車両の対向側に配置された第1および第2の地面に係合可能な推進手段を備え、かつそのさい前記第1および第2推進手段が車両の他方の側の推進手段から独立して車両の1方の側の推進手段を駆動することにより車両を推進かつ操縦するために第1および第2の伝動手段によって駆動され、前記ブーム構体が、その外方端において前記ブーム構体に荷捌き器具を接続するための接続手段を有しておりそして前記ブーム構体の内方端が、上昇位置と、ブーム構体がオペレータ室に沿って前方に延びかつ荷捌き器具が本体の前方端の前方に配置される下降位置との間の運動のために、本体の後方端に隣接して、本体に枢着される、「特定された種類の」と以下で言及される横滑り操縦積み込み車両(スキッドステアリングローダー)に関するものである。(第6頁第1行?第15行)

(1c)「本体11は前方の地面係合可能な車輪15および後方の地面係合可能な車輪16からなっている第1の地面係合可能な推進手段14、および本体の反対側で、同様に後輪18および前輪19からなっている第2の地面に係合可能な推進手段17を備えている。車両10は同一速度で4輪すべてを駆動することによって、または、車両を操縦するために、第2の地面に係合可能な手段19の車輪17,18(車輪18,19の誤記)より異なる速度および/または方向において第1の地面に係合可能な推進手段14の車輪15,16を駆動することによって前方にまたは後方に直線において推進されることができる。かかる横滑り操縦積み込み機は高度の操縦性を有しかつ横滑り操縦を容易にしそしてとくに、例えば、地面に係合可能な推進手段の中心軸線のまわりに回転するような車両の能力のために、輪距は、本実施例においては、所望ならば、輪距は軌道と同一または所望ならばそれより長くすることができるけれども、車両の軌道より僅かに短く作られている。」(第9頁第29行?第10頁第11行)

(1d)「次に、とくに第4図ないし第6図を参照して、本体11は、1側で、略平らな外方側壁31および略平らな内方側壁32からなる単一の伝動箱手段30からなっている。側壁31,32は底壁33および傾斜頂部壁34によってともに接続され、この傾斜頂部壁34は外方端で外方壁31に接続されかつ内方上方端で内方壁32と一体の内方にかつ上方に傾斜されたさらに他の部分35に接続される。この例において、側壁は略平行であるが、所望ならば、それらは平行でなくてもよい。
延長部分36はさらに他の部分35と一体でありかつ上方に突出しそしてオペレータ室39の側フレーム38の後方部材用の取り付け具37aを設ける内方に向けられたフランジ37を備えている。側フレーム38の前方部材およびオペレータ室の対向側フレーム40の前方部材は符号37bおよび40bで、その前方端12で本体を横切って横方向に延びる本体の前方壁部分42aの内側に曲げられたフランジ41にそれぞれ固定される。
フレーム40の後方部材は第2の横方向に延びる壁50に取り付けられる。
フレーム38および40は頂部壁46を備えかつガラス窓が付けられおよび/または所望されるような通常の方法において他の部分を備えてもよい。
前方壁部分42は、オペレータの座席および持ち上げアーム構体の駆動および運転用の通常の制御盤が設けられる本体の内部キャビティ45にアクセスするように切り欠かれた部分44を備える本体の対向側壁43に接続される。」(第10頁第18行?第11頁第7行)

(1e)「伝動箱手段30の外方側壁31の延長部分60は直立体またはタワー61の1つの外方部材を設ける一方、・・・タワー61の上方端に隣接して設けられるのは、1対の取り付けブッシュ66であり、これらの取り付けブッシュによって単一の持ち上げアーム構体67が、内方端で、その後方端13に隣接して本体10(本体11の誤記)に枢着される。持ち上げアーム構体67はオペレータ室39の1側68に隣接して配置される。持ち上げアーム構体67は、この持ち上げアーム構体67用の枢軸を設けるために前記ブッシュ66内に受容される、枢軸ピン70用の、図示してない受容手段を有している。
前方端において、持ち上げアーム構体67は器具支持部材71を有しており、この部材71は持ち上げアーム構体67の外方または前方端72から突出しかつその前方に本体12の前方端を横切って横方向に延びそして本体11の前方端12の前方に配置されるようにそれにより支持される荷捌き器具73を有している。」(第11頁第7行?第12頁第5行)

(1f)前記(1e)を参考に図1を見ると、オペレータ室39は、本体11に対し、持ち上げアーム構体67(ブーム構体67)が延びる側に対し、その反対の側に設けられ、また、図1、図2から、オペレータ室39は、その前方には本体11のどの部分も延びておらず、オペレータ室39が本体11の前端に取り付けられていることがわかる。

(1g)また、図1、図4、図6から、オペレータ室39はフレーム38、40により囲まれた空間、及び、延長部分35、36、前方壁部分42、対向壁部分43、壁50と図示されていない床で囲まれた空間で形成されている。そして、前記(1d)によれば、「フレーム38および40は頂部壁46を備えかつガラス窓が付けられ」と記載されているから、フレーム38、40により囲まれた空間で、頂部壁46以外は前面部、後面部、オペレータ室39の1側68とその反対側の他側はガラス窓が付けられているといえる。

したがって、上記記載事項及び図示内容を総合すれば、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「前端および後端を有する本体11、オペレータ室39、ブーム構体67からなり、
前記本体11が、前記車両を駆動する第1の地面に係合可能な推進手段14と第2の地面に係合可能な推進手段17を有し、
前記ブーム構体67がその外方端において、前記ブーム構体67に荷捌き器具73を接続するための接続手段を有しておりそして前記ブーム構体67の内方端が、上昇位置と、前記ブーム構体が前記オペレータ室に沿って前方に延びかつ前記荷捌き器具73が本体の前方端の前方に配置される下降位置との間の運動のために、前記本体11の後方端に隣接して、本体11に枢着される横滑り操縦積み込み車両において、
前記車両10が、ブーム構体67が延びる側に対し、その反対の側にある本体11にオペレータ室39を設け、
前記オペレータ室39は、その前方には本体11のどの部分も延びておらず、オペレータ室39が本体10の前端に取り付けられ、
前記オペレータ室39は、頂部壁46、床、前面部と前方壁部分42、後面部と壁50、ブーム構体と隣接するオペレータ室39の1側68と延長部分35、36、そして、オペレータ室39の1側68と反対側の他側と対向壁部分43から構成され、
前記オペレータ室39の1側68と反対側の他側はガラス窓が設けられ、
前記車両10はスキッドステアリングローダーであり、前記車両10を駆動する地面に係合可能な推進手段14,17は前記本体11の両側にそれぞれ一対の車輪を有し、一方側の地面に係合可能な手段の車輪より異なる速度において、他方側の地面に係合可能車輪を駆動することによって高度の操縦性を有しかつ横滑り操縦を容易にした横滑り操縦積み込み車両10。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平1-239227号号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(2a)「【特許請求の範囲】
運転室の側部を乗降口とし、基端部が車体フレーム後部のリフトアーム取付ブラケットに枢支され先端部に荷役アタッチメントが取り付けられたリフトアームを、最下位置に降ろした際に前記乗降口の下方に位置するように湾曲形成したことを特徴とするスキッドステアローダ。」

(2b)「[実施例]
以下、図面と共に本発明の好適な実施例について詳細に説明するが、図中、同一符号は同一または相当部分を示すものとする。
第1図および第2図において、本発明が適用されるスキッドステアローダは、車体フレーム1の中央部に運転室6が設けられ、該運転室6を囲むべくオペレータガード10が設置されている。オペレータガード10の側面は運転室6への乗降口となっており、この乗降口6には、はぼ全面がガラス張りとされたドア11がヒンジ12により取り付けられている。」(第2頁右上欄第4行?第15行)

(2c)「[発明の効果]
以上のように、本発明によれば、リフトアームを最も下げた状態にすることで、運転室の側部に設けられた乗降口から乗降することが可能となる。
しかも、リフトアームは乗降口の下方に位置するので、乗降口の高さ寸法を十分に大きくすることができ、また、リフトアームをステップとしても用いることができるので、乗降が極めて容易となる。」(第2頁右下欄第6行?第14行)

(2d)第1図にはスキッドステアローダの側面図が示され、前記(2b)、(2c)を参考に見ると、キッドステアローダの一方の側面には、全面がガラス張りとされたドア11がヒンジ12、12により取り付けられ、ドア11は前面から運転席の背もたれより後方までの幅を有し、十分な高さ寸法であることがわかる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「横滑り操縦積み込み車両10」は本願発明の「作業機械」に相当し、以下同様にして、
「本体11」は「本体」に、
「地面に係合可能な推進手段14、17」は「地面係合推進構造」に、
「ブーム構体67」は「ローディング・アームを有するローディング・アーム・アセンブリ」に、
それぞれ相当する。
そして、「ローディング・アームを有するローディング・アーム・アセンブリ」(「ブーム構体67」)、の取り付け構造に関し、引用発明の「外方端」、「内方端」、「接続手段」、「荷捌き器具73」、「本体11の後方端に隣接して」は、本願発明の「第2の端部」、「一方の端部」、「取付部」、「作業器具」、「本体の一方の側またはその近くで」に、
それぞれ相当する。

(2)また、引用発明の「オペレータ室39」は本願発明の「運転室」に相当し、いずれも、アームが延びる側である本体の第1の側と反対側の第2の側に設けられている。
そして、「運転室」(「オペレータ室39」)の構造に関し、引用発明の「頂部壁46」は本願発明の「運転室屋根」に相当し、以下同様にして、
「床」は「運転室床」に、
「前面部」は「前壁」に、
「後面部」は「後壁」に、
「ブーム構体と隣接するオペレータ室39の1側68」は、「ローディング・アーム・アセンブリに隣接する第1の側壁」に、
「反対側の他側」は「前記第1の側壁の反対側にある第2の運転室側部」
にそれぞれ相当する。
したがって、引用発明のオペレータ室39(運転室)は、本願発明の「運転室屋根と、運転室床と、前壁と、後壁と、前記ローディング・アーム・アセンブリに隣接する第1の側壁と、前記第1の側壁の反対側にある第2の運転室側部と、を含」む構成である。

(3)そして、引用発明の「スキッドステアリングローダー」は本願発明の「スキッドステアローダ機」に相当し、いずれも「スキッドステア」である故、引用発明の「車両10を駆動する地面に係合可能で左右で独立した推進手段14,17は前記本体の両側に一対の車輪を有し、一方側の地面に係合可能な手段の車輪より異なる速度において、他方側の地面に係合可能車輪を駆動することによって高度の操縦性を有しかつ横滑り操縦を容易にした」は、本願発明の「地面係合推進構造が前記本体の両側にそれぞれ一対の車輪またはループの無限軌道を含み、前記本体の一方の側にある前記車輪もしくは一対の前記車輪のうちの少なくとも1つまたは無限軌道を、前記本体の他方の側にある前記1つ以上の車輪または無限軌道に対して差動駆動することによって操舵作用が得られる」と同じ構成を意味している。

そうすると、両者は、
「前端および後端を有する本体を備える作業機械であって、
前記本体が、前記機械を地上で駆動できる地面係合推進構造を有し、
前記機械が、一方の端部で前記本体に対して取り付けられると共に、前記本体の一方の側またはその近くで作業器具のための取付部がある第2の端部まで前記本体の前記前端を超えて前方に延びるローディング・アームを有するローディング・アーム・アセンブリを備え、
前記機械が、前記アームが延びる前記第1の側と反対側にある前記本体の第2の側の近くに、前記本体に取り付けられた運転室を含み、
前記運転室は、前記運転室の前方に前記本体のどの部分も大幅に延びないように、前記運転室が前記本体の前記前端に取り付けられ、
前記運転室が、運転室屋根と、運転室床と、前壁と、後壁と、前記ローディング・アーム・アセンブリに隣接する第1の側壁と、前記第1の側壁の反対側にある第2の運転室側部と、を含み、
前記機械がスキッドステアローダ機であり、前記地面係合推進構造が前記本体の両側に一対の車輪またはループの無限軌道を含み、前記本体の一方の側にある前記車輪もしくは一対の前記車輪のうちの少なくとも1つまたは無限軌道を、前記本体の他方の側にある前記1つ以上の車輪または無限軌道に対して差動駆動することによって操舵作用が得られる作業機械。」である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、第2の運転室側部に運転室の全長にわたって延びる遮るものが略無い開口が設けられ、前記開口がアクセス・ドアによって閉じることが可能であるのに対し、引用発明はガラス窓が付けられた第2の運転室側部についてそのような特定がなされていない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、ガラス窓が付けられている第2の運転室側部から運転手、作業員等が乗降(出入り)することは明らかである。そして、運転手、作業員等の体型は様々であることから、乗降(出入り)しやすくするためには、開口を大きくすること、そして、遮るものをできるだけが少なくすることは、自明の課題ともいえる。さらに、引用発明はスキッドステアリングローダーであり、比較的小型の建機であるから、運転室は比較的小さいことから、第2の運転室側部における開口部の割合は大きくする必要があり、また、第2の運転室側部はアームが上下する側と反対側であるから、開口を遮るものは特段存在しない。
一方、刊行物2には、3.(2a)?(2d)より、スキッドステアローダの一方の側面には、全面がガラス張りとされたドア11がヒンジ12により取り付けられたことが記載され、また、高さ寸法を十分大きくし乗降を容易にすることが記載され、さらに、ドアの幅、高さとも十分大きいドア及び開口が記載されているといえる。
そして、引用発明も刊行物2に記載のものもスキッドステアローダに関するものであるから、引用発明において、刊行物2に記載のドアを採用し上記の事情を考慮して、前記相違点に係る本願発明の構成、すなわち、第2の運転室側部に運転室の全長にわたって延びる遮るものが略無い開口が設けられ、前記開口がアクセス・ドアによって閉じることが可能とすることは当業者が容易になし得ることである。

次に請求人の主張について検討する。
請求人は、平成27年2月6日付けの上申書において以下の主張をしている。
「添付の参考図1に示すように、引用文献2の第1図に記載のドア11は、運転席のフレームに二つのヒンジ12によってマウントされています。ここで、二つのヒンジ12は、破線Aで示された共通の軸を有します。そして仮に、当業者が引用文献2記載のドア11を、他の作業機械の運転席フレームに適用する場合、ドア11をフレームにマウントするために二つのヒンジを必要とするはずです。
ここで、引用文献2記載のドア11を引用文献1記載の運転席のフレームに適用した場合、以下の三つの構成が考えられます。
(1)一つ目の構成では、添付の参考図2に示すように、引用文献2のドアは二つのヒンジによって運転席の後側のフレームにマウントされます。フレームの後部はカーブしているので、一方のヒンジは軸Xを有し、他方のヒンジは軸Yを有します。このような共通の軸を有さないヒンジの配置では、ドアを開くことができません。
(2)二つ目の構成では、添付の参考図3に示すように、引用文献2のドアは二つのヒンジによって運転席の後側のフレームにマウントされます。二つのヒンジは共に、フレームの後側上部に配置され、共通の軸Xを有します。しかしながら、フレームの後側上部は傾斜形状であるため、使用時にドアが勝手に閉まってしまいます。
(3)三つ目の構成では、添付の参考図4に示すように、引用文献2のドアは二つのヒンジによって運転席の後側のフレームにマウントされます。二つのヒンジは共に、フレームの後側下部に配置され、共通の軸Yを有します。しかしながら、フレームの後側上部は傾斜形状であるため、使用時にドアが勝手に開いてしまいます。
このように、引用文献2のドアは、引用文献1の運転席のフレームと不適合であり相いれないものであるため、引用文献2のドアを引用文献1の開口に適用することは当業者が容易に想到できるものであるとの審査官殿の御認定は、誤りであると思料致します。

なお、添付の参考図5に示すように、引用文献2の第4図に記載の運転席のフレームは、フロントポストと、リアポストと、フロントポスト及びリアポストの間に位置するセンターポストと、を有します。フロントポスト及びセンターポストはハンドルを有します。ハンドルは、フロントポストとセンターポストとの間の開口から作業者が乗降する際の補助部材です。ここで、この作業機械はドアを有するものではありません。したがって、引用文献2の第4図に記載の技術を、引用文献1の運転席に適用した場合、その構成は添付の参考図6のようになります。この運転席の開口は、明らかに運転席の全長にわたって延びる遮るものが無いものではなく、本願請求項1の構成を開示するものではありません。」

そこで、上記請求人の主張を検討すると、刊行物1の図1、2において、フレーム40がの後方の立ち上がり部がやや屈曲した形状になってみえることから、それを前提にして、刊行物1の図2をベースに、請求人は参考図2?参考図4を作成したと考えられる。しかしながら、刊行物1の図1、2は模式図にすぎず、刊行物1の明細書等にはフレーム40の後方の立ち上がり部の形状については記載されていない。
そして、引用発明において刊行物2に記載のドアを採用する際に、ドアのヒンジが鉛直方向に設けられているなら、引用発明のフレーム40の後方の立ち上がり部(ヒンジが取り付けられる部分)も略鉛直に設計することは当然のことであり、参考図2?参考図4に記載されているドアは技術常識を有した当業者にとって現実的なものではない。
また、参考図5について、刊行物2の第4図に示されているドアがない従来技術に関するものベースにしたものであるが、そもそも、刊行物2の従来技術は原査定においても引用していないので引用発明に採用することはあり得ない。
なお、本願の平成26年7月31日付けの手続補正書の補正により特許請求の範囲の請求項2には「運転室の前記後柱は、略鉛直である」という事項が加えられた。ここで、「略」「鉛直」と表現しているとおり、本願の当初明細書をみても、図1?図4をみても、運転室の後柱が鉛直であるという記載、示唆する記載事項はなく、したがって、運転室の後柱は多少傾斜していてもドアが開閉できる程度の構成であれば足りるということになる。
以上のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び刊行物2に記載された事項から予測できる程度のものであり、格別なものとは認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-08 
結審通知日 2015-04-14 
審決日 2015-05-07 
出願番号 特願2011-26626(P2011-26626)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 信也  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
本郷 徹
発明の名称 作業機械  
代理人 濱田 百合子  
代理人 本多 弘徳  
代理人 北島 健次  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ