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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1305815
審判番号 不服2015-737  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-14 
確定日 2015-09-17 
事件の表示 特願2010-243811「発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日出願公開、特開2012- 99544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成22年10月29日 特許出願
平成25年 9月10日 上申書・手続補正書
平成26年 3月17日 拒絶理由通知(平成26年 4月 1日発送)
平成26年 6月 2日 意見書・手続補正書
平成26年10月 7日 拒絶査定(平成26年10月14日送達)
平成27年 1月14日 本件審判請求・手続補正書

第2 平成27年 1月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年 1月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概略
(1) 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1において、

「【請求項1】
発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程と、
前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に、前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料から成り、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を、該第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分が第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程と、を有し、
前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する樹脂硬化工程を備える発光装置の製造方法。」
とあったものを、

「【請求項1】
発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程と、
前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料であり、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を用い、前記発光素子の上面を覆わないように、前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に前記第2の光反射性樹脂を充填し、前記第2の光反射性樹脂の充填は、前記第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分の高さが前記第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程と、
前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する樹脂硬化工程と、を備える発光装置の製造方法。」
とする補正を含むものである。

(2) 本件補正についての検討
ア 本件補正は、語順を入れ替えるとともに、「前記発光素子の上面を覆わないように」との発明特定事項を追加する補正事項を含むものである。

イ 上記アの補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0045】に記載されており、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであって、特許法第17条の2第3項の要件を満たす。

ウ 上記アの補正事項は、補正前の請求項1の「第2の光反射性樹脂充填工程」について、語順を入れ替えるとともに、「前記発光素子の上面を覆わないように」第2の光反射性樹脂を充填するとの発明特定事項を付加する補正であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

エ そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2 引用文献1の記載事項、及び引用発明1
(1) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-219324号公報(平成22年9月30日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図とともに、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。

ア 「【0014】
(実施の形態1)
図1,2は、本発明の実施の形態1に係る発光装置100であり、図1(a)の断面は、概略上面の図1(b)のA-Aにおける概略断面図であり、図2はその光源部周辺の概略断面図である。図1に示す例の発光装置100は、発光面90を有する面発光型の発光装置である。この発光装置100は、主として、成長基板1上に半導体素子構造11を有する発光素子10と、発光面90となる表面21が露出され、該表面21と対向する受光面22を有する板状の光透過部材20と、発光素子10の出射光を光透過部材20に導光する導光部材30と、光反射性材料45を含有する被覆部材40と、から構成される。発光素子10は、その成長基板1の裏面である出射面を光透過部材の受光面22に対向させて、基板50の配線層51上にフリップチップ実装されており、介在する導光部材30により光透過部材20と光結合されている。基板50上には、発光素子10および光透過部材20を包囲する枠体55が設けられており、その内側に被覆部材40が充填されて、発光素子10と光透過部材20の一部は被覆部材40により被覆されている。このような発光装置100の発光領域つまり光放出の窓部は、実質的に光透過部材20の表面21にほぼ限定され、この表面21を発光面90とする面発光型の発光装置となる。また、発光装置100は、光透過部材20の表面21の形状、大きさによって、この表面21すなわち発光面90から放出される光の輝度、並びに配光の分布を制御可能となっている。さらに、発光面内の輝度、色度が比較的均一な発光装置となる。ここで、光透過部材、発光素子の平面形状は図示するように矩形状であり、平面で発光素子が光透過部材に内包されている。
【0015】
・・・
【0033】
(被覆部材)
被覆部材40は、図1に示すように、光透過部材20の一部を被覆し、具体的には光透過部材20の側面の少なくとも一部を被覆する。そして、本発明においては、被覆部材が素子等から垂下され、光の漏れ経路の形成を防ぐことから、基板、更にはそれに設けられた配線より、被覆部材の反射率が高いことが好ましい。また、光反射材料を含有する被覆部材40は、その基材は透光性の樹脂材料が好ましく、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物等を使用することが好ましいが、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の透光性を有する絶縁樹脂組成物を用いることができる。また、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂等、耐候性に優れた被覆部材も利用できる。さらに、ガラス、シリカゲル等の耐光性に優れた無機物を用いることもできる。また、樹脂材料を成形することで、所望の形状に成形でき、また所望領域を被覆でき、本発明では光源部の発光素子、導光部材、光透過部材の表面、特にその側面を被覆して形成できる。また、その発光面側の表面も同様に所望形状とでき、図示するような平坦な面状の他、凹や凸の曲面とできる。実施の形態1では耐熱性・耐候性の観点から被覆部材としてシリコーン樹脂を使用する。
【0034】
また、被覆部材40は、上記基材中に少なくとも1種類の光反射性材料45を含有してなる。光反射性材料45を含有することで、被覆部材40の反射率が高まり、更に好適には低吸収性の粒子を用いると、光吸収、損失が低減され、光散乱性を備えた被覆部材とできる。被覆部材40中に含有される光反射性材料45は、Ti、Zr、Nb、Al、Siからなる群から選択される1種の酸化物、若しくはAlN、MgFの少なくとも1種であり、具体的にはTiO_(2)、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、Al_(2)O_(3)、MgF、AlN、SiO_(2)よりなる群から選択される少なくとも1種である。光反射性材料の粒子が、Ti、Zr、Nb、Alからなる群から選択される1種の酸化物であることで、材料の高い反射性及び低吸収性とでき、基材、特に透光性樹脂との屈折率差を高められ、好ましい。・・・
【0035】
・・・
【0036】
被覆部材の形成領域は、光透過部材20における少なくとも側面に被覆部材40を設け、好ましくは発光素子の側面も被覆し、更に好ましくは、光透過部材及び発光素子を含む光源部において発光面を露出させてその他を被覆し、導光部材30を介する場合も同様である。これにより、光透過部材の側面から光が漏れ出すのを回避でき、その側面からの比較的強度の大きい、また光り変換部材を有する場合は色味差を有する光を抑止して、放射光の指向性を良好にし、輝度ムラ、色ムラを低減できる。また、各部材、素子の側面を被覆して、光取り出し方向側へ制限することで、指向性、輝度を高められる。また、光透過部材20が波長変換材料を含有する場合には、この波長変換材料の発熱が特に著しいため、それを改善できる。光透過部材20の側面が被覆部材40により被覆され、かつ表面21が露出されていれば、その外面形状は特に限定されず、図1に示すように表出面が光透過部材の表面21よりも窪んだ構造でもよい。この発光面90が突出することで被覆部材40による遮光を回避でき、また略同一面でもよく、所望の表面とできる。実施の形態1において、被覆部材40は受光面22の一部も被覆し、図示するように、発光素子10の周囲を、具体的に光透過部材の受光面22において発光素子10との対向域を除く領域を、被覆する。この構成により、図2に観るように、受光面22において、光学的な接続領域(接合領域31)と、導光部材(被覆領域32,33)を介して被覆される被覆領域とが設けられる。また、被覆領域で、光透過部材の受光面22側へと進行した光を光取り出し側へと反射させ、基板50での光吸収などによる一次光の光損失を抑制できる。・・・
【0037】
・・・
【0040】
(枠体、積層基板、基材)
図1に示す発光装置100は、枠体55を有し、被覆部材40の保持部材である。枠体55は、セラミックや樹脂などで形成することができる。光反射性の高いアルミナが好ましいが、表面に反射膜を形成すればこれに限らない。樹脂であれば、スクリーン印刷等を用いるほか、成形体を実装基板に接着してもよい。また、被覆部材40と同様に光反射性材料を用いるなどして、反射率を高くすると好ましい。また、上記添加部材同様に、枠体を目的に応じて着色してもよい。なお、この枠体は、被覆部材を充填又は成形後に、取り外すこともできる。また、枠体として、積層基板56、基材などでキャビティ構造を有する装置基体など、発光素子の実装基板に一体に形成されている形態でもよい。
【0041】
(発光装置の製造方法)
図1に示される例の発光装置100の製造方法の一例として以下に説明する。まず、実装基板50上または発光素子10にバンプ60を形成しフリップチップ実装する。この例では個片化前の基板50上で、1つの発光装置に対応する領域に1個のLEDチップを並べて実装する。次に、発光素子10の出射面側(サファイア基板裏面あるいはLLOで基板除去した場合であれば窒化物半導体露出面)に、導光部材30を塗布して、光透過部材20を積層し、その樹脂30を熱硬化して接合する。次に、発光素子10の周囲に立設された枠体55内に、光透過部材20の側面を被覆するように、ディスペンサ(液体定量吐出装置)等により、被覆部材40を構成する樹脂をポッティングする。滴下された樹脂40は、表面張力によって発光素子10、光透過部材20の側面を這い上がり被覆し、表面21より枠体55に向かって低くなる傾斜表面が形成される。また、樹脂40の表出面を表面21と略同一面となるよう平坦化してもよい。そして、樹脂40を硬化させた後、所定の位置でダイシングを行い、所望の大きさに切り出して発光装置100を得る。」

イ 「【0042】
(実施の形態2)
図5(a)は、本発明の実施の形態2に係る発光装置200の概略断面図であり、図5(b)はその光源部周辺を説明するための概略断面図である。発光装置200において、発光素子10の個数および導光部材30の構造を除く他の構成については、上述の実施の形態1と実質上同様であり、したがって同様の構成については同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0043】
・・・
【0044】
発光装置200は、実装基板50上に複数(図中は2個)の発光素子10が互いに離間されて実装されており、その複数の発光素子10を包含する大きさの受光面22を有する光透過部材20が、その上に導光部材30を介して接合されている。なお、この発光装置200では、枠体は基板50に積層されてキャビティ構造を有する基体56となっており、また、上面側の実装素子用の配線層51とそれに電気的に接続され、外部接続用の配線層52が基体56下面側にも設けられている。」

ウ 実施の形態2に係る発光装置200の概略断面図を示す図5(a)は、次のものである。

図5(a)から、樹脂40の表面の最も低い部分の高さが、基体56の高さより低いことが見てとれるところ、上記イの【0044】から、基体56の基板50に積層されている部分は枠体であるから、樹脂40の表面の最も低い部分の高さが、枠体の高さより低いことが見てとれる。

(2) 引用発明1
以上より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「実装基板50上または発光素子10にバンプ60を形成しフリップチップ実装し、
発光素子10の出射面側に、導光部材30を塗布して、光透過部材20を積層し、その樹脂30を熱硬化して接合し、
発光素子10の周囲に立設された枠体55内に、光透過部材20の側面を被覆するように、ディスペンサ等により、被覆部材40を構成する樹脂をポッティングし、
滴下された樹脂40は、表面張力によって発光素子10、光透過部材20の側面を這い上がり被覆し、表面21より枠体55に向かって低くなる傾斜表面が形成され、
樹脂40を硬化させた後、所定の位置でダイシングを行い、所望の大きさに切り出す発光装置の製造方法であって、
発光素子10は、基板50の配線層51上にフリップチップ実装されており、
基板50上には、発光素子10および光透過部材20を包囲する枠体55が設けられており、
被覆部材40は、基材中に少なくとも1種類の光反射性材料45を含有してなり、
被覆部材の形成領域は、光透過部材及び発光素子を含む光源部において発光面を露出させてその他を被覆し、
枠体55は、被覆部材40の保持部材であり、セラミックや樹脂などで形成することができ、樹脂であれば、スクリーン印刷等を用いるほか、成形体を実装基板に接着してもよく、被覆部材40と同様に光反射性材料を用いるなどして、反射率を高くすると好ましい、
発光装置の製造方法。」

3 引用文献2の記載事項
(1) 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-324589号公報(平成18年11月30日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある(当審注:下線は、当審が付与した。)。

ア 「【請求項6】
配線基板上に1つ以上のLED素子を配置する工程と、前記配線基板上に前記LED素子に接触することなく前記LED素子を取り囲むように第1の樹脂体を形成する工程と、前記配線基板上の前記第1の樹脂体に取り囲まれた領域上に前記LED素子を被覆するように第2の樹脂をポッティングすることにより第2の樹脂体を形成する工程とを含むLED装置の製造方法。
・・・
【請求項9】
前記第1の樹脂体を形成する第1の樹脂として、前記第2の樹脂体を形成する前記第2の樹脂より粘度が高い樹脂を用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のLED装置の製造方法。」

イ 「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な方法で製造可能なLED装置およびその製造方法を提供することができる。」

ウ 「【0027】
(実施形態3)
・・・
【0029】
次に、配線基板1上にLED素子2に接触することなくLED素子2を取り囲むように第1の樹脂体を形成する工程は、たとえば、樹脂吐出ノズル(図示せず)を用いて、第1の樹脂体を形成する第1の樹脂を、配線基板1上に配置されたLED素子2に接触することなくLED素子2を取り囲んで円状に、線引き塗布することによって行なうことができる。かかる第1の樹脂体は、次に形成される第2の樹脂体の広がりを防止するためのダムとしての機能を有するもの(かかる機能を有する材料をダム材という、以下同じ)である。第1の樹脂体がダム材として機能するためには、第1の樹脂体は一定の高さを有する必要があり、第1の樹脂体を形成する第1の樹脂は、チクソ性を有するもの、粘度が高いものが好ましい。
・・・
【0032】
さらに、配線基板1上の第1の樹脂体11に取り囲まれた領域上にLED素子2を被覆するように第2の樹脂をポッティングすることにより第2の樹脂体を形成する工程は、この領域上にLED素子2を被覆するように第2の樹脂を滴下させた後、第2の樹脂を硬化させることにより行なうことができる。図1?図4は、配線基板1の上に第2の樹脂が位置する状態で第2の樹脂を硬化させる場合を示しているが、配線基板1と第2の樹脂の位置関係を逆にして、すなわち、配線基板1の下に第2の樹脂が位置する状態で硬化させることもできる。このときは、第2の樹脂体をより高くすることができる。また、上記の第1の樹脂の硬化を第2の樹脂の硬化と同時に行なうことも可能である。
・・・
【0037】
上記の観点から、第2の樹脂体を形成する樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂などで形成されるものが好ましく、第1の樹脂体を形成する樹脂としては、第2の樹脂体よりも分子量の大きい同種類の樹脂、または第2の樹脂に増粘剤、充填剤を添加したものが好ましい。」

(2) 以上より、引用文献2には、次の技術事項が記載されている。
「配線基板上に1つ以上のLED素子を配置する工程と、前記配線基板上に前記LED素子に接触することなく前記LED素子を取り囲むように第1の樹脂体を形成する工程と、前記配線基板上の前記第1の樹脂体に取り囲まれた領域上に前記LED素子を被覆するように第2の樹脂をポッティングすることにより第2の樹脂体を形成する工程とを含み、
第1の樹脂体が、次に形成される第2の樹脂体の広がりを防止するためのダム材として機能するために、第1の樹脂体を形成する第1の樹脂は、粘度が高いものが好ましく、
第2の樹脂をポッティングすることにより第2の樹脂体を形成する工程は、第2の樹脂を滴下させた後、第2の樹脂を硬化させることにより行なうことができ、
第1の樹脂の硬化を第2の樹脂の硬化と同時に行なうことも可能であり、
第1の樹脂体を形成する樹脂としては、第2の樹脂体よりも分子量の大きい同種類の樹脂、または第2の樹脂に増粘剤、充填剤を添加したものが好ましい、
簡便な方法で製造可能なLED装置の製造方法。」

4 対比
(1) 本願補正発明と引用発明1を対比する。

ア 引用発明1の「発光素子10」が「フリップチップ実装され」た「基板50上に」、「発光素子10・・・を包囲する枠体55」を形成する「光反射性材料を用い」た「樹脂」を「設け」る工程と、
本願補正発明の「発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「発光素子10」及び「基板50」は、本願補正発明の「発光素子」及び「基材」にそれぞれ相当する。
(イ) 引用発明1の「『枠体55』を形成する『樹脂』」は、「光反射性材料を用い」たものであるので、本願補正発明の「第1の光反射性樹脂」に相当する。
(ウ) してみれば、両者は相当関係にある。

イ 引用発明1の「発光素子を含む光源部において発光面を露出させてその他を被覆」するように、「発光素子10の周囲に立設された枠体55内に」、「光反射性材料45を含有してな」る「被覆部材40を構成する樹脂をポッティングし」、「滴下された樹脂40は、表面張力によって発光素子10・・・の側面を這い上がり被覆し、表面21より枠体55に向かって低くなる傾斜表面が形成され」る工程と、
本願補正発明の「前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料であり、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を用い、前記発光素子の上面を覆わないように、前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に前記第2の光反射性樹脂を充填し、前記第2の光反射性樹脂の充填は、前記第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分の高さが前記第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「被覆部材40を構成する樹脂」は、「光反射性材料45を含有」するものであるから、本願補正発明の「第2の光反射性樹脂」に相当する。
(イ) 上記ア(イ)によれば、引用発明1の「『枠体55』を形成する『樹脂』」は、本願補正発明の「第1の光反射性樹脂」に相当するから、引用発明1の「発光素子10の周囲に立設された枠体55内」に、「発光素子を含む光源部において発光面を露出させてその他を被覆」するように、「被覆部材40を構成する樹脂をポッティング」することは、本願補正発明の「前記発光素子の上面を覆わないように、前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に前記第2の光反射性樹脂を充填」することに相当する。
(ウ) してみれば、両者は「前記発光素子の上面を覆わないように、前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に第2の光反射性樹脂を充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程」である点で一致する。

ウ 引用発明1の「被覆部材40を構成する樹脂をポッティングし」た後、「樹脂40を硬化させ」る工程と、本願補正発明の「前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する樹脂硬化工程」とを対比する。
上記イ(ア)によれば、引用発明1の「被覆部材40を構成する樹脂」は、本願補正発明の「第2の光反射性樹脂」に相当するから、両者は「前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第2の光反射性樹脂を硬化する樹脂硬化工程」である点で一致する。

エ 引用発明1の「発光装置の製造方法」は、本願補正発明の「発光装置の製造方法」に相当する。

(2) 以上より、本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:
「発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程と、
前記発光素子の上面を覆わないように、前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に第2の光反射性樹脂を充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程と、
前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第2の光反射性樹脂を硬化する樹脂硬化工程と、を備える発光装置の製造方法。」

相違点1:
本願補正発明は、「前記第2の光反射性樹脂の充填は、前記第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分の高さが前記第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填」するのに対し、
引用発明1は、そのような特定がされていない点。

相違点2:
本願補正発明は、「前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料であり、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を用い」るのに対し、
引用発明1は、そのような特定がされていない点。

相違点3:
本願補正発明は、「前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する」のに対し、
引用発明1は、そのような特定がされていない点。

5 判断
以下、相違点について検討する。

(1) 相違点1について検討する。
上記2(1)イ、ウによれば、引用文献1に記載された実施の形態2に係る発光装置200は、発光素子10の個数および導光部材30の構造を除く他の構成については、実施の形態1と実質上同様であるところ、実施の形態2に係る発光装置200の概略断面図を示す図5(a)から、樹脂40の表面の最も低い部分の高さが、枠体の高さより低いことが見てとれる。
してみれば、引用発明1においても、樹脂40の表面の最も低い部分の高さが、枠体55の高さより低くなるようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜なしうることである。

(2) 相違点2について検討する。
引用発明1の枠体55は、被覆部材40の保持部材であるところ、引用文献2に記載の第1の樹脂体も、引用発明1の枠体55と同様に、第2の樹脂体の広がりを防止するためのダム材として機能するものである。
しかるところ、上記3(2)によれば、引用文献2には、第1の樹脂体を形成する第1の樹脂としては、ダム材として機能するために、粘度が高いものが好ましく、粘度が高い第1の樹脂としては、第2の樹脂に増粘剤を添加したものが好ましいという技術事項が記載されている。
したがって、引用発明1の「『枠体55』を形成する『樹脂』」として、「被覆部材40を構成する樹脂」の広がりを防止するべく、当該「被覆部材40を構成する樹脂」に増粘剤を添加したものを用いて、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易になしうることである。

(3) 相違点3について検討する。
引用文献1には、「『枠体55』を形成する『樹脂』」の硬化方法について記載されていないものの、「『枠体55』を形成する『樹脂』」の硬化を独立の工程で行えば、それだけ工程数が増加することは明らかである。
しかるところ、上記3(2)によれば、引用文献2には、ダム材として機能する第1の樹脂の硬化を、第2の樹脂の硬化と同時に行なうことも可能であることが記載されている。
してみれば、引用発明1において、「『枠体55』を形成する『樹脂』」の硬化工程を、工程数を削減するために、「被覆部材40を構成する樹脂」の硬化工程と同時に行うようになし、その結果、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易になしうることである。

6 小括
以上によれば、引用発明1及び引用文献2の記載事項から、本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年1月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年6月2日付けの手続補正による特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程と、
前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に、前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料から成り、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を、該第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分が第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程と、を有し、
前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する樹脂硬化工程を備える発光装置の製造方法。」

2 引用文献1の記載事項、及び引用発明1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項、及び引用発明1は、上記第2の[理由]2に記載したとおりである。

3 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、上記第2の[理由]3に記載したとおりである。

4 対比
(1) 本願発明と引用発明1を対比する。

ア 引用発明1の「発光素子10」が「フリップチップ実装され」た「基板50上に」、「発光素子10・・・を包囲する枠体55」を形成する「樹脂」であって、「光反射性材料を用い」た「樹脂」を「設け」る工程と、
本願発明の「発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「発光素子10」及び「基板50」は、本願発明の「発光素子」及び「基材」にそれぞれ相当する。
(イ) 引用発明1の「『枠体55』を形成する『樹脂』」は、「光反射性材料を用い」たものであるので、本願発明の「第1の光反射性樹脂」に相当する。
(ウ) してみれば、両者は相当関係にある。

イ 引用発明1の「発光素子を含む光源部において発光面を露出させてその他を被覆」するように、「発光素子10の周囲に立設された枠体55内に」、「光反射性材料45を含有してな」る「被覆部材40を構成する樹脂をポッティングし」、「滴下された樹脂40は、表面張力によって発光素子10・・・の側面を這い上がり被覆し、表面21より枠体55に向かって低くなる傾斜表面が形成され」る工程と、
本願発明の「前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に、前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料から成り、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を、該第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分が第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程」とを対比する。
(ア) 引用発明1の「被覆部材40を構成する樹脂」は、光反射性材料45を含有するものであるから、本願発明の「第2の光反射性樹脂」に相当する。
(イ) 上記ア(イ)によれば、引用発明1の「『枠体55』を形成する『樹脂』」は、本願発明の「第1の光反射性樹脂」に相当するから、引用発明1の「発光素子10の周囲に立設された枠体55内」に、「発光素子を含む光源部において発光面を露出させてその他を被覆」するように、「被覆部材40を構成する樹脂をポッティング」することは、本願発明の「前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に、・・・第2の光反射性樹脂を・・・充填」することに相当する。
(ウ) してみれば、両者は「前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に、第2の光反射性樹脂を充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程」である点で一致する。

ウ 引用発明1の「被覆部材40を構成する樹脂をポッティングし」た後、「樹脂40を硬化させ」る工程と、本願発明の「前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する樹脂硬化工程」とを対比する。
上記イ(ア)によれば、引用発明1の「被覆部材40を構成する樹脂」は、本願発明の「第2の光反射性樹脂」に相当するから、両者は「前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第2の光反射性樹脂を硬化する樹脂硬化工程」である点で一致する。

エ 引用発明1の「発光装置の製造方法」は、本願発明の「発光装置の製造方法」に相当する。

(2) 以上より、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

一致点:
「発光素子が載置された基材上に、前記発光素子を囲む枠状の第1の光反射性樹脂を形成する第1の光反射性樹脂形成工程と、
前記第1の光反射性樹脂と前記発光素子との間に、第2の光反射性樹脂を充填し、前記第2の光反射性樹脂の這い上がりによって前記発光素子の側面を被覆する第2の光反射性樹脂充填工程と、を有し、
前記第2の光反射性樹脂充填工程の後、さらに、前記第2の光反射性樹脂を硬化する樹脂硬化工程を備える発光装置の製造方法。」

相違点4:
本願発明は、「第2の光反射性樹脂を、該第2の光反射性樹脂の表面の最も低い部分が第1の光反射性樹脂の高さより低くなるように充填」するのに対し、
引用発明1は、そのような特定がされていない点。

相違点5:
本願発明は、「前記第1の光反射性樹脂と同じ樹脂材料から成り、かつ、前記第1の光反射性樹脂より粘度の低い第2の光反射性樹脂を」充填するのに対し、
引用発明1は、そのような特定がされていない点。

相違点6:
本願発明は、「前記第1の光反射性樹脂と前記第2の光反射性樹脂とを略同時に硬化する」のに対し、
引用発明1は、そのような特定がされていない点。

5 判断
以下、相違点について検討する。

(1) 相違点4について検討する。
上記第2の[理由]2(1)イ、ウによれば、引用文献1に記載された実施の形態2に係る発光装置200は、発光素子10の個数および導光部材30の構造を除く他の構成については、実施の形態1と実質上同様であるところ、実施の形態2に係る発光装置200の概略断面図を示す図5(a)から、樹脂40の表面の最も低い部分が、枠体の高さより低いことが見てとれる。
してみれば、引用発明1においても、樹脂40の表面の最も低い部分が、枠体55の高さより低くなるようにして、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が適宜なしうることである。

(2) 相違点5について検討する。
引用発明1の枠体55は、被覆部材40の保持部材であるところ、引用文献2に記載の第1の樹脂体も、引用発明1の枠体55と同様に、第2の樹脂体の広がりを防止するためのダム材として機能するものである。
しかるところ、上記第2の[理由]3(2)によれば、引用文献2には、第1の樹脂体を形成する第1の樹脂としては、ダム材として機能するために、粘度が高いものが好ましく、粘度が高い第1の樹脂としては、第2の樹脂に増粘剤を添加したものが好ましいという技術事項が記載されている。
したがって、引用発明1の「『枠体55』を形成する『樹脂』」として、「被覆部材40を構成する樹脂」の広がりを防止するべく、当該「被覆部材40を構成する樹脂」に増粘剤を添加したものを用いて、上記相違点5に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易になしうることである。

(3) 相違点6について検討する。
引用文献1には、「『枠体55』を形成する『樹脂』」の硬化方法について記載されていないものの、「『枠体55』を形成する『樹脂』」の硬化を独立の工程で行えば、それだけ工程数が増加することは明らかである。
しかるところ、上記第2の[理由]3(2)によれば、引用文献2には、ダム材として機能する第1の樹脂の硬化を、第2の樹脂の硬化と同時に行なうことも可能であることが記載されている。
してみれば、引用発明1において、「『枠体55』を形成する『樹脂』」の硬化工程を、工程数を削減するために、「被覆部材40を構成する樹脂」の硬化工程と同時に行うようになし、その結果、上記相違点6に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者が容易になしうることである。

6 小括
以上によれば、引用発明1及び引用文献2の記載事項から、本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-30 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-30 
出願番号 特願2010-243811(P2010-243811)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 近藤 幸浩
山口 裕之
発明の名称 発光装置の製造方法  

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