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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G04B
管理番号 1305894
審判番号 不服2014-12475  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-30 
確定日 2015-09-25 
事件の表示 特願2012- 33884「表面に図柄を形成した組み合わせ時計」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 2日出願公開、特開2013-170871〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、平成24年2月20日にされた特許出願であって、平成26年4月7日付けで特許請求の範囲及び明細書についての補正がなされ、平成26年5月7日(送達:同年6月3日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての補正がなされたものである。
その後、当審より平成27年3月5日付け(発送:同年同月31日)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、平成27年5月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての補正がなされたものである。

2 当審拒絶理由
当審拒絶理由の一つは、本願の特許請求の範囲に記載の請求項1ないし3に係る発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-252900号公報(発明の名称:木目を形成した木製時計、出願人:竹内良介、公開日:平成23年12月15日、以下、「引用例1」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて、その特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成27年5月28日付け補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。

「結婚祝いとして夫婦がそれぞれ所持する2個一組の時計、また夫婦と新郎の両親及び新婦の両親がそれぞれ所持する3個一組の時計、さらに仲の良い友人同士が卒業記念にそれぞれ所持する複数一組の時計において、各時計の本体表面には模様、図形、記号、数字、写真などの図柄を形成し、各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される図柄が互いに連続して上記図柄が1つにまとまる形態としたことを特徴とする表面に図柄を形成した組み合わせ時計。」(以下、「本願発明」という。)

4 引用例に記載の事項・引用発明
(1)引用例に記載の事項
引用例1には、以下のア及びイが図面とともに記載されている。なお、下線は、当審が付与した。

「【請求項1】
本体を木質とした置き時計又は掛け時計において、該置き時計又は掛け時計は複数個を一組として構成し、木製の本体はその表面に木目を有し、そして一組と成る時計本体表面に形成される木目は互いに連続した木目を形成し、
表面には時を刻む針を設け、裏面に形成した凹部には該針を駆動する機器を取付けたことを特徴とする木目を形成した木製時計。」

「【0011】
従って、結婚祝いとして2個1組の時計を贈ることが出来る。又、結婚式に両親への感謝の気持ちとして2個一組の時計を贈ることができる。更に3個を一組として、両方の家族と本人がそれぞれ1個づつ所持することが出来る。勿論、贈りものとしての用途は限定しないが、2個の時計本体はその表面木目が互いに連続して繋がっていることで、互いの結び付きを時計で表現することが出来、有効である。」

(2)引用発明
以上の記載を総合勘案すると、引用例1には、以下の発明が記載されているといえる。

「結婚祝いとして2個1組の時計を贈ることが出来、更に3個を一組として、両方の家族と本人がそれぞれ1個づつ所持することが出来、
本体を木質とした置き時計又は掛け時計において、該置き時計又は掛け時計は複数個を一組として構成し、木製の本体はその表面に木目を有し、そして一組と成る時計本体表面に形成される木目は互いに連続した木目を形成し、
表面には時を刻む針を設け、裏面に形成した凹部には該針を駆動する機器を取付けたことを特徴とする木目を形成した木製時計。」(以下、「引用発明」という。)

5 本願発明と引用発明との対比
引用発明は、「結婚祝いとして2個1組の時計を贈ることが出来、更に3個を一組として、両方の家族と本人がそれぞれ1個づつ所持することが出来る」「時計」であり、本願発明の「結婚祝いとして夫婦がそれぞれ所持する2個一組の時計、また夫婦と新郎の両親及び新婦の両親がそれぞれ所持する3個一組の時計、さらに仲の良い友人同士が卒業記念にそれぞれ所持する複数一組の時計」とは、「結婚祝いとして夫婦がそれぞれ所持する2個一組の時計、また夫婦と新郎の両親及び新婦の両親がそれぞれ所持する3個一組の時計」である点で共通する。また、引用発明の 「2個1組の時計」、「3個を一組」の「時計」は、本願発明の「組み合わせ時計」に相当する。

引用発明において、本体表面に形成されているのは、木目であるが、木目も模様の一種であるから、本願発明の「模様、図形、記号、数字、写真などの図柄」とは、「模様の図柄」である点で共通する。

引用発明における「一組と成る時計本体表面に形成される木目は互いに連続した木目を形成」することは、本願発明における「各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される図柄が互いに連続して上記図柄が1つにまとまる形態とした」と、「各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される模様の図柄が互いに連続した形態とした」点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「結婚祝いとして夫婦がそれぞれ所持する2個一組の時計、また夫婦と新郎の両親及び新婦の両親がそれぞれ所持する3個一組の時計において、各時計の本体表面には模様の図柄を形成し、各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される模様の図柄が互いに連続した形態としたことを特徴とする表面に図柄を形成した組み合わせ時計。」

(相違点1)
本願発明は、「仲の良い友人同士が卒業記念にそれぞれ所持する複数一組の時計」であるのに対し、引用例1には、そのような時計であるかの記載はなく、引用発明が、卒業記念の時計であるか不明な点。
(相違点2)
本体表面の図柄として、本願発明は、「模様、図形、記号、数字、写真などの図柄」であり、各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される図柄が互いに連続して上記図柄が1つにまとまる形態としたのに対し、引用発明は、木目の模様の図柄であり、各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される図柄が互いに連続した形態となるものの、図柄が1つにまとまる形態となるか不明な点。

6 判断
(1) 相違点1について
引用例1に「【0002】 近年、時計をお祝いの品や引き出物として使用する場合は多い。これには色々な理由があるであろうが、見栄えが良い割りに比較的手頃な値段であること、又時計は毎日使うものであることが主な理由であろう。従って、結婚式のお祝いの品、新築祝いの品など、又結婚式の引き出物の品、法事の引き出物として時計が使われるケースが多い。」と記載されているように、時計はお祝いの品として使われるものであり、「卒業」もお祝いの機会であることから(例えば、実願平5-75634号(実開平7-36093号)のCD-ROMの段落0006等参照。)、引用発明の時計も、本願発明のように「仲の良い友人同士が卒業記念にそれぞれ所持する複数一組の時計」として使うことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2) 相違点2について
本体を木製とする時計において、木目の模様以外の図柄を施すことは、例えば、特開昭59-77377号公報第1図、実願平2-61241号(実開平4-21892号)のマイクロフィルム第8頁第8行ないし第10行、実願昭54-34025号(実開昭55-133381号)のマイクロフィルム第3頁第9行ないし第17行等に記載されているように、当該技術分野において常套手段である。
よって、時計本体表面に形成される木目は互いに連続した木目を形成した2個1組又は3個1組の時計である引用発明に、木目の模様以外の図柄を施すという前記常套手段を適用することは、当業者が容易に着想し得たことである。そして、引用発明に上記常套手段を適用すれば、木目の模様以外の図柄も、各時計を一組として配列した場合には、木目と同様に互いに連続した図柄を形成し、「1つにまとまる形態」となることは明らかである。
よって、引用発明に、木目の模様以外の図柄も施し、本願発明のように、「各時計を一組として配列した場合には、本体表面に形成される図柄が互いに連続して上記図柄が1つにまとまる形態とする」ことは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願発明は、引用発明及び常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 請求人の主張について
請求人は、平成27年5月28日付け意見書において、「D.例えば、図1には3個1組として構成される時計を表しており、3個の時計本体に跨って2羽の孔雀を描いている。その為に、個々の時計外観を見ただけでは2羽の孔雀であることを認識し難く、少なくともその図柄は不自然である。
木目も模様の1形態であるとしても、自然に形成される木目と人工的に描く図柄とは異なり、個々の時計を単独で見た場合の不自然さが、配列して1組の時計と成った場合にこの不自然さが解消される点に、木目の時計と本発明に係る図柄を形成した時計との大きな違いが存在すると考えます。」と主張している。
しかしながら、個々の図柄は不自然で、図柄が互いに連続して1つにまとまると不自然さが解消されるかどうかは、図柄の内容次第であり、図柄が互いに連続して1つにまとまることによってのみで生じるものではない。
例えば、米国特許第6322245号明細書のFIG1,2には、一方の時計のケースの表面に記載された「Best」と他方の時計のケースの表面に記載された「Friends」を組合わせると、「Best Friends」と銘が連続する配置関係であることが図示され、また、第2欄第23行ないし第26行には、「The front of each casing 18 and 19 may carry a respective design or written legend 32 and 34, which is a complete design or legend only when the watch casings are assembled.」(当審訳:ケース18、19のそれぞれの表面に記載されたそれぞれのデザイン又は銘32、34は、時計のケースが組合わせられた時のみに、完全なデザイン又は銘となる。)と記載されているように、1つにまとまった際に、完全なデザイン又は銘を表現するものであったとしても、例えば銘についてみると、個々の銘である「Best」や「Friends」は、それ自体で意味のある単語であるから、1つにまとまらなければ不自然さが解消されないというものではない。つまり、請求人の主張(個々の図柄は不自然で1つにまとまると不自然さが解消されるか)は、特定の図柄(例えば、2羽の孔雀)についてのみ成立するものである。しかし、本願の特許請求の範囲には、「模様、図形、記号、数字、写真などの図柄」と、図柄について具体的な特定はなされていないのであるから、上記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張ではなく、採用することはできない。

8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-16 
結審通知日 2015-07-07 
審決日 2015-07-21 
出願番号 特願2012-33884(P2012-33884)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
森 竜介
発明の名称 表面に図柄を形成した組み合わせ時計  
代理人 平崎 彦治  

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