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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1305908
審判番号 不服2013-4693  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-11 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2010-501130「リーダ装置のコンテンツ購入及び転送管理」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 9日国際公開,WO2008/121590,平成22年 7月 8日国内公表,特表2010-522937〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2008年3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年3月29日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成21年 9月28日 :国内書面の提出
平成21年11月30日 :翻訳文の提出
平成23年 3月22日 :出願審査請求書,手続補正書の提出
平成24年 6月13日付け :拒絶理由の通知
平成24年 9月24日 :意見書,手続補正書の提出
平成24年10月30日付け :拒絶査定
平成25年 3月11日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成25年 5月24日 :前置報告
平成25年10月 4日付け :審尋
平成26年 1月 8日 :回答書の提出
平成26年 9月17日付け :拒絶理由の通知(当審)
平成26年12月24日 :意見書,手続補正書の提出


第2 本願発明

本願の請求項1乃至12に係る発明は,上記平成26年12月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲1乃至12に記載されたとおりのものであると認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

「電子的コンテンツをサーバから電子リーダデバイスへ配信するための方法であって,
前記サーバが,前記電子リーダデバイスとの間の無線接続を確立するステップと,
前記サーバが,前記無線接続を介して,前記電子リーダデバイスの識別情報を受信するステップと,
前記サーバが,前記サーバ上で購入可能な電子的コンテンツに対応するアイコン又はシンボルを,前記電子リーダデバイスに前記無線接続を介して送信するステップと,
前記サーバが,前記電子リーダデバイスから,ユーザにより選択された電子的コンテンツについての指示を前記無線接続を介して受信するステップと,
前記サーバが,前記識別情報を用いて,前記選択された電子的コンテンツの購入のための処理を行うステップであって,
前記サーバが,前記電子リーダデバイスの識別情報に基づいて,当該識別情報に関係するユーザが,前記選択された電子的コンテンツのための購読契約の購読者であるかどうかを判別し,
購読者ではない場合,前記選択された電子的コンテンツの費用を,当該ユーザの口座から自動的に引き落としを行い,
購読者である場合,前記選択された電子的コンテンツの費用を,前記ユーザの口座から引き落としを行わない,ステップと,
前記サーバが,前記購入された電子的コンテンツを,前記電子リーダデバイスのメモリ内に保存するために,および前記電子リーダデバイスによって表示するために,前記無線接続を介して送信するステップであって,前記購入可能な電子的コンテンツ,及び前記購入された電子的コンテンツに係るアイコン又はシンボルは,前記電子リーダデバイスにより,対応する電子的コンテンツの種類に従って表示される,ステップと
を含む,方法。」


第3 引用例

1 引用例1に記載されている技術的事項および引用発明

(1) 本願の優先日前に頒布され,当審からの上記平成26年9月17日付け拒絶理由通知において引用された,特開平11-161717号公報(平成11年6月18日出願公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【請求項1】 アイテムの購入注文を出す方法であって,前記注文はクライアント・システム側の購入者によって出され,サーバ・システムによって受信されるものにおいて,当該方法は,
サーバ・システムの制御のもとでは,
前記購入者の識別子(ID),支払いに関する情報,および出荷に関する情報を含む購入者情報を前記クライアント・システムから受信し,
前記クライアント・システムにクライアントIDを割り当て,
前記割り当てられたクライアントID(以下,割り当てクライアントIDという)を前記受信した購入者情報と関連付け,
前記割り当てクライアントIDを前記クライアント・システムに送信し,および前記アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報を前記クライアント・システムに送信し,
前記クライアント・システムの制御のもとでは,
割り当てクライアントIDを受信してストアしておき,前記表示情報を受信して表示し,および前記注文ボタンが選択されると,それに応答して前記特定されたアイテムを購入する要求であって,前記割り当てクライアントIDを含んでいる要求を前記サーバ・システムに送信し,
前記サーバ・システムの制御のもとでは,
前記要求を受信し,
前記要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成し,
以上によって,前記購入者は前記注文ボタンを選択することで前記製品の注文を出すことを特徴とする方法。
【請求項2】 請求項1に記載の方法において,前記購入者情報は前記購入者が以前の注文を出したとき受信されることを特徴とする方法。」

B 「【0004】ワールドワイド・ウェブ(World Wide Web)は電子的取引を行うのに特に役立っている。そこを通してベンダ(取引業者)が製品を宣伝し,販売できるようにするWebサーバが多数開発されている。これらの製品の中には,インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテム(例えば,音楽)や,従来の配送チャネル(例えば,運輸業者)を通して配送されるアイテム(例えば,書籍)などがある。サーバ・コンピュータ・システムは,提供されるアイテムをリストした電子版のカタログを用意している場合がある。潜在的購入者であるユーザはブラウザを使用してカタログをブラウジングしていき,購入しようとする種々のアイテムを選択することが可能になっている。ユーザが購入しようとするアイテムの選択を完了すると,サーバ・コンピュータ・システムはそのアイテムの注文を完成するための情報をユーザに要求する。この購入者固有注文情報としては,購入者の氏名,購入者のクレジット・カード番号,注文の出荷アドレスなどがある。その後,サーバ・コンピュータ・システムは,確認のWebページをクライアント・コンピュータ・システムに送信して注文を確認してから,アイテムの出荷をスケジュールするのが代表的である。」

C 「【0009】 本発明は,クライアント/サーバ環境においてシングル・アクションでアイテムを注文するための方法およびシステムを提供している。本発明のシングル・アクション注文システムは,注文を出すために必要とされる購入者のやりとりの数を低減化し,クライアント・システムとサーバ・システムの間で伝送されるセンシティブ(機密)情報の量を低減化する。本発明の一実施形態では,サーバ・システムは各クライアント・システムに一意的なクライアントIDを割り当てている。また,サーバ・システムは様々な潜在的購入者の購入者固有注文情報をストアしている。この購入者固有注文情報は購入者が出した以前の注文から収集されている場合もある。サーバ・システムは各クライアントIDを,そのクライアント・システムを使用して注文を出す可能性のある購入者にマッピング(対応付けること)している。サーバ・システムはこれらのクライアントIDを,そのクライアント・システムを使用して最後に注文を出した購入者にマッピングすることもできる。購入者が注文を出す必要が起こると,その購入者はクライアント・システムを使用して,注文するアイテムを記述している情報の要求をそのクライアントIDと一緒に送信する。サーバ・システムはそのクライアント・システムのクライアントIDが購入者にマッピングされているかどうかを判断する。マッピングされていると判断すると,サーバ・システムはそのクライアント・システムにいるその購入者のためにシングル・アクション注文が許可(enabled )されているかどうかを判断する。許可されていれば,サーバ・システムは要求された情報を(例えば,Webページを通して),アイテムの注文を出すために実行すべきシングル・アクションの指示と一緒にクライアント・コンピュータ・システムに送信する。シングル・アクション注文が許可されているときは,購入者はシングル・アクションを実行するだけで(例えば,マウス・ボタンをクリックする),アイテムを注文することができる。購入者がそのシングル・アクションを実行すると,クライアント・システムはそのことをサーバ・システムに通知する。通知を受けたサーバ・システムはそのクライアントIDにマッピングされている購入者の購入者固有注文情報をアイテム注文情報(例えば,製品のIDと数量)に追加することによって注文を完成する。従って,項目の記述が表示されたとき,購入者はシングル・アクションをとるだけで,そのアイテムを購入する注文を出すことができる。また,サーバ・システム側にすでにストアされている購入者固有注文情報はクライアントIDで特定されるので,かかるセンシティブ情報をインターネットや他の通信媒体経由で伝送する必要がない。」

D 「【0010】
【発明の実施の形態】 図1ないし図3は,本発明の一実施形態におけるシングル・アクション注文を示している。図1は注文が可能なアイテムを記述しているWebページのディスプレイを示す図である。このWebページの例は,購入者がアイテムに関する詳細情報をレビューすることを要求したときにサーバ・システムからクライアント・システムに送信されたものである。このWebページの例は要約記述セクション101,ショッピンク・カート・セクション102,シングル・アクション注文セクション103,および詳細記述セクション104を含んでいる。当業者ならば理解されるように,これらの各種セクションは省くことも,様々な方法で並べ替えたり,適応させたりすることも可能である。 …(後略)…。」

E 「【0014】図4は本発明の実施形態を示すブロック図である。この実施形態はワールドワイド・ウェブ( World Wide Web )を使用してインターネット経由でシングル・アクション注文を行うことをサポートしている。…(中略)…
カストマ・データベースは種々の購入者または潜在的購入者に関するカストマ情報を収めている。カストマ情報としては,カストマの氏名,請求書発行情報,および出荷情報などの購入者固有注文情報がある。注文データベース215は,まだ購入者に出荷されていない各注文のエントリを収めている。インベントリ・データベース216は注文可能な種々アイテムの記述を収めている。クライアントID/カストマ・テーブル212は,クライアント・システムを一意的に特定している,グローバルに一意的な識別子である各クライアントIDと,そのクライアント・システムと最後に関連付けられたカストマとを対応付けているマッピングを収めている。クライアント・システム220はブラウザ221と,割り当てられたクライアントID222とを持っている。このクライアントIDは "cookie" と名付けたファイルにストアされている。一実施形態によれば,サーバ・システムは,クライアント・システムが初めてサーバ・システムとやりとりするとき一度だけクライアントIDを割り当てて,それをクライアント・システムに送付する。それ以降,クライアント・システムはサーバ・システムに送信される全てのメッセージにそのクライアントIDを付けるので,サーバ・システムはメッセージの発信元を特定することができる。サーバ・システムとクライアント・システムは通信リンク230を経由して情報を交換することによってやりとりを行う。なお,この通信リンクには,インターネットを利用した伝送も含まれる。」

F 「【0016】 図5はカストマのためにシングル・アクション注文を許可するルーチンを示すフロー図である。シングル・アクション注文を許可するためには,サーバ・システムは,購入者固有注文情報に相当するカストマに関する情報を持っている必要がある。 …(中略)…
ステップ304で,サーバ・システムは確認Webページをクライアント・システムに提供する。購入者がアイテムの注文を次回に試みたとき,クライアント・システムはそのクライアントIDをサーバ・システムに提供する。シングル・アクション注文がその購入者に許可されていれば,サーバ・システムは,購入者がクライアントID/カストマ・テーブル内のそのクライアントIDと関連付けられたカストマであると想定する。従って購入者は,誰か他の人が同じクライアント・システムを使用する可能性がある場合には,サーバ・システムにシングル・アクション注文を許可させないこともできる。」

(2) ここで,上記引用例1に記載されている事項を検討する。

ア 上記Aの「アイテムの購入注文を出す方法であって,前記注文はクライアント・システム側の購入者によって出され,サーバ・システムによって受信されるものにおいて」との記載,上記Bの「これらの製品の中には,インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテム(例えば,音楽)や,従来の配送チャネル(例えば,運輸業者)を通して配送されるアイテム(例えば,書籍)などがある。」との記載,上記Cの「本発明は,クライアント/サーバ環境においてシングル・アクションでアイテムを注文するための方法およびシステムを提供している。本発明のシングル・アクション注文システムは,注文を出すために必要とされる購入者のやりとりの数を低減化し,クライアント・システムとサーバ・システムの間で伝送されるセンシティブ(機密)情報の量を低減化する。」との記載からすると,「クライアント・システム」側の「購入者」が「購入注文」を出す「アイテム」は「インターネット」を利用して電子的に配送されることは明らかであり,当該「購入注文」は「サーバ・システム」で受信されることが読みとれるから,引用例1には,
“インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテムの購入注文を出す方法であって,前記注文はクライアント・システム側の購入者によって出され,サーバ・システムによって受信されるもの”
が記載されていると解される。

イ 上記Bの「この購入者固有注文情報としては,購入者の氏名,購入者のクレジット・カード番号,注文の出荷アドレスなどがある。」との記載,上記Cの「本発明の一実施形態では,サーバ・システムは各クライアント・システムに一意的なクライアントIDを割り当てている。また,サーバ・システムは様々な潜在的購入者の購入者固有注文情報をストアしている。この購入者固有注文情報は購入者が出した以前の注文から収集されている場合もある。サーバ・システムは各クライアントIDを,そのクライアント・システムを使用して注文を出す可能性のある購入者にマッピング(対応付けること)している。」との記載からすると,「購入者固有注文情報」は「クライアント・システム」に「クライアントID」を割り当てるための「購入者情報」とみることができ,そして,「サーバ・システム」は「クライアント・システム」から「購入者固有注文情報」を受信して「クライアントID」を割り当て,当該「クライアントID」と「購入者固有注文情報」とを関連付けてストアしていることが読み取れる。
そうすると,上記Aの「サーバ・システムの制御のもとでは,前記購入者の識別子(ID),支払いに関する情報,および出荷に関する情報を含む購入者情報を前記クライアント・システムから受信し,前記クライアント・システムにクライアントIDを割り当て,前記割り当てられたクライアントID(以下,割り当てクライアントIDという)を前記受信した購入者情報と関連付け」との記載を勘案すると,引用例1には,
“サーバ・システムの制御のもとでは,
購入者の識別子(ID),支払いに関する情報,および出荷に関する情報を含む購入者情報をクライアント・システムから受信し,
前記クライアント・システムにクライアントIDを割り当て,
前記割り当てられたクライアントIDを前記受信した購入者情報と関連付け”るステップ
が記載されていると解される。

ウ 上記Eの「クライアント・システム220はブラウザ221と,割り当てられたクライアントID222とを持っている。このクライアントIDは "cookie" と名付けたファイルにストアされている。一実施形態によれば,サーバ・システムは,クライアント・システムが初めてサーバ・システムとやりとりするとき一度だけクライアントIDを割り当てて,それをクライアント・システムに送付する。それ以降,クライアント・システムはサーバ・システムに送信される全てのメッセージにそのクライアントIDを付けるので,サーバ・システムはメッセージの発信元を特定することができる。」との記載,上記Fの「購入者がアイテムの注文を次回に試みたとき,クライアント・システムはそのクライアントIDをサーバ・システムに提供する。シングル・アクション注文がその購入者に許可されていれば,サーバ・システムは,購入者がクライアントID/カストマ・テーブル内のそのクライアントIDと関連付けられたカストマであると想定する。」との記載からすると,「サーバ・システム」により割り当てられた「クライアントID」は,対応する「クライアント・システム」に送信しておくことが読み取れる。
また,上記Cの「購入者が注文を出す必要が起こると,その購入者はクライアント・システムを使用して,注文するアイテムを記述している情報の要求をそのクライアントIDと一緒に送信する。」との記載からすると,「クライアント・システム」から注文する「アイテム」を記述した情報の要求があると,「サーバ・システム」は「クライアント・システム」から「クライアントID」を受信することが読み取れ,さらに,上記Cの「許可されていれば,サーバ・システムは要求された情報を(例えば,Webページを通して),アイテムの注文を出すために実行すべきシングル・アクションの指示と一緒にクライアント・コンピュータ・システムに送信する。」との記載,上記Dの「図1は注文が可能なアイテムを記述しているWebページのディスプレイを示す図である。このWebページの例は,購入者がアイテムに関する詳細情報をレビューすることを要求したときにサーバ・システムからクライアント・システムに送信されたものである。このWebページの例は要約記述セクション101,ショッピンク・カート・セクション102,シングル・アクション注文セクション103,および詳細記述セクション104を含んでいる。当業者ならば理解されるように,これらの各種セクションは省くことも,様々な方法で並べ替えたり,適応させたりすることも可能である。」との記載からすると,「サーバ・システム」は「アイテム」を記述した情報の要求があると,要求された情報を「アイテム」の注文を出すための情報と共に「クライアント・システム」に送信することが読み取れることから,上記Aの「前記割り当てクライアントIDを前記クライアント・システムに送信し,および前記アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報を前記クライアント・システムに送信し」との記載を勘案すると,引用例1には,
“割り当てクライアントIDをクライアント・システムに送信しておき,および,
前記クライアント・システムからアイテムを記述した情報の要求があると,前記クライアントIDを受信し,
前記アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報を前記クライアント・システムに送信”するステップ
が記載されていると解される。

エ 上記イおよびウの検討から,「クライアント・システム」は「割り当てクライアントID」を「サーバ・システム」から受信してストアしておき,注文する必要が起こると,「アイテム」を記述した情報の要求を「サーバ・システム」に送信し,注文ボタンを含んでいる「表示情報」を受信して表示すると言える。
また,上記Cの「シングル・アクション注文が許可されているときは,購入者はシングル・アクションを実行するだけで(例えば,マウス・ボタンをクリックする),アイテムを注文することができる。購入者がそのシングル・アクションを実行すると,クライアント・システムはそのことをサーバ・システムに通知する。」との記載からすると,「クライアント・システム」から「サーバ・システム」に「アイテム」の注文を行うことが読み取れることから,上記Aの「前記クライアント・システムの制御のもとでは,割り当てクライアントIDを受信してストアしておき,前記表示情報を受信して表示し,および前記注文ボタンが選択されると,それに応答して前記特定されたアイテムを購入する要求であって,前記割り当てクライアントIDを含んでいる要求を前記サーバ・システムに送信し」との記載を勘案すると,引用例1には,
“クライアント・システムの制御のもとでは,
割り当てクライアントIDを受信してストアしておき,
アイテムを記述した情報の要求をサーバ・システムに送信し,
表示情報を受信して表示し,および
注文ボタンが選択されると,それに応答して特定されたアイテムを購入する要求であって,前記割り当てクライアントIDを含んでいる要求を前記サーバ・システムに送信”するステップ
が記載されていると解される。

オ 上記Cの「通知を受けたサーバ・システムはそのクライアントIDにマッピングされている購入者の購入者固有注文情報をアイテム注文情報(例えば,製品のIDと数量)に追加することによって注文を完成する。」との記載からすると,「サーバ・システム」は特定された「アイテム」を購入する要求を受信し
,「クライアントID」にマッピングされている「購入者情報」に基づき「アイテム」の購入注文を生成することが読み取れることから,上記Aの「サーバ・システムの制御のもとでは,前記要求を受信し,前記要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成し」との記載を勘案すると,引用例1には,
“サーバ・システムの制御のもとでは,
特定されたアイテムを購入する要求を受信し,
前記特定されたアイテムを購入する要求に含まれているクライアントIDに関連する購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成”するステップ
が記載されていると解される。

(3)以上,ア乃至オの検討によれば,引用例1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「 インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテムの購入注文を出す方法であって,前記注文はクライアント・システム側の購入者によって出され,サーバ・システムによって受信されるものにおいて,当該方法は,
サーバ・システムの制御のもとでは,
前記購入者の識別子(ID),支払いに関する情報,および出荷に関する情報を含む購入者情報を前記クライアント・システムから受信し,
前記クライアント・システムにクライアントIDを割り当て,
前記割り当てられたクライアントID(以下,割り当てクライアントIDという)を前記受信した購入者情報と関連付け,
前記割り当てクライアントIDを前記クライアント・システムに送信しておき,および,
前記クライアント・システムからアイテムを記述した情報の要求があると,前記クライアントIDを受信し,
前記アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報を前記クライアント・システムに送信し,
前記クライアント・システムの制御のもとでは,
割り当てクライアントIDを受信してストアしておき,
アイテムを記述した情報の要求を前記サーバ・システムに送信し,
前記表示情報を受信して表示し,および
前記注文ボタンが選択されると,それに応答して前記特定されたアイテムを購入する要求であって,前記割り当てクライアントIDを含んでいる要求を前記サーバ・システムに送信し,
前記サーバ・システムの制御のもとでは,
前記特定されたアイテムを購入する要求を受信し,
前記特定されたアイテムを購入する要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成し,
以上によって,前記購入者は前記注文ボタンを選択することで前記アイテム購入注文を出すことを特徴とする方法。」


2 引用例2に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布され,当審からの上記平成26年9月17日付け拒絶理由通知において引用された,特開2006-85353号公報(平成18年3月30日出願公開,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0024】
図1を参照すると,本実施の形態におけるコンテンツ配信システムは,無線端末10と,アクセスポイント20と,コンテンツサーバ30と,決済サーバ40と,会計システム50とから構成されている。そのうちアクセスポイント20,コンテンツサーバ30,決済サーバ40,会計システム50は,ネットワーク100を介して接続されている。ネットワーク100は,任意のネットワークであってよく,例えば,光ファイバ,インターネット,公衆回線,LAN(Local Area Network),ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等である。なお,通信方法は,有線であっても,無線であってもよい。
…(中略)…
【0029】
無線端末10は,アクセスポイント20を経由してネットワーク100を介してコンテンツサーバ30に接続し,所定の表示部であるディスプレイ等の画面上に各種コンテンツを表示して,表示された各種コンテンツを閲覧・購入する機能を備えている。各種コンテンツとしては,例えば,ソフトウエア,地図データ,書籍データ,雑誌データ,新聞データ,音楽データ,映像データ,ゲームデータ,クーポン情報,求人情報,アルバイト情報,案内情報,予約データ,支払・決済データ,サービス申込みデータ等である。また,商品に関しては,製品の名称,型番,商品番号,価格等の関連情報を含む。
…(中略)…
【0037】
次に,アクセスポイント20によって,無線端末10は,ネットワーク100を介してコンテンツサーバ30に接続される(ステップA2)。
【0038】
これに応答し,コンテンツサーバ30は,提供している各種コンテンツの一覧をネットワーク100を介して無線端末10に送信する(ステップA3)。
【0039】
無線端末10は,コンテンツサーバ30から各種コンテンツの一覧をネットワーク100を介して受信する(ステップA4)。
【0040】
無線端末10は,受信した各種コンテンツの一覧を画面上に表示させる(ステップA5)。これにより,利用者は,各種コンテンツが画面に表示され,各種コンテンツを閲覧することができる。
【0041】
利用者は,コンテンツを購入したい場合には,そのコンテンツを画面上で選択し,所定のボタンの押下げ等の操作によりネットワーク100を介してコンテンツサーバ30に対して購入要求を発行する(ステップA6)。
…(中略)…
【0048】
コンテンツサーバ30は,決済サーバ40から各種コンテンツ配信依頼を受信し,ネットワーク100を介して,各種施設内のアクセスポイント20を経由して,無線端末10に各種コンテンツデータを送信する(ステップA12)。ここで,無線端末10はID番号等によって識別されることであってもよい。
【0049】
無線端末10は,コンテンツサーバ30から各種コンテンツを受信する(ステップA13)。」

3 引用例3に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布され,当審からの上記平成26年9月17日付け拒絶理由通知において引用された,特開2002-99740号公報(平成14年4月5日出願公開,以下,「引用例3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0027】次に,図5を参照して,デジタルコンテンツ棚にあるデジタルコンテンツ利用する場合の動作フローを説明する。顧客は,有線あるいは無線の通信機能を持つプレイヤ端末20,例えばカーステレオ,ポータブルステレオ,ポータブル電子ブックなどを利用して,通信ネットワーク100に接続されているサーバ30のホームページにアクセスすると(ステップC1),サーバ30は記憶部にあらかじめ登録されているデジタルコンテンツ棚参照のための入力フォームをプレイヤ端末20に送信する(ステップC2)。 …(中略)… サーバ30は,受信したユーザIDとパスワードとプレイヤIDとをチェックし,該当するデジタルコンテンツ棚からデジタルコンテンツリストを作成し,作成したデジタルコンテンツリストに入力画面及びダウンロード要求ボタンを付与してプレイヤ端末20送信する(ステップC6)。 …(中略)… プレイヤ端末20は受信したデジタルコンテンツリストをメモリに保存するとともに,画面に表示する(ステップC7)。」

4 引用例4に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布され,当審からの上記平成26年9月17日付け拒絶理由通知において引用された,特開2003-271664号公報(平成15年9月26日出願公開,以下,「引用例4」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0058】また,例えば,図5?図7のアイコン32のように,各表示モードにおいて,ジャンル毎に各アイコン32の図柄や色などの表示を変えて,例えば,小説,エッセイ,ニュースなどの各ジャンルがすぐに判別できるようにすることが可能である。なお,上記のように,各コンテンツが属するジャンルをアイコン32として表示することも可能であり,また,各コンテンツに対応する画像(例えば,平積みの書籍の画像31)のサムネイルを表示することも可能である。」

5 引用例5に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布され,当審からの上記平成26年9月17日付け拒絶理由通知において引用された,特開2006-191486号公報(平成18年7月20日出願公開,以下,「引用例5」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

K 「【0055】
メニュー画面S_(1)には,図3の点線で示すように,画面の横方向にそれぞれのカテゴリを表すアイコンであるカテゴリアイコン21乃至25が配列して表示される。また,図4の点線で示すように,カテゴリアイコン21乃至25の配列方向と直交する縦方向に,ユーザにより選択されているカテゴリに属するコンテンツを表すアイコンであるコンテンツアイコン(ビデオコンテンツアイコン31乃至34)が配列して表示される。なお,図3と図4の点線は,説明の便宜上付したものであり,メニュー画面S_(1)に実際に表示されるものではない。
【0056】
図3と図4の例においては,「フォト(Photo)」のカテゴリを表すカテゴリアイコン21,「ミュージック(music)」のカテゴリを表すカテゴリアイコン22,「ビデオ(video)」のカテゴリを表すカテゴリアイコン23,「テレビ(television)」のカテゴリを表すカテゴリアイコン24,および,「ゲーム(game)」のカテゴリを表すカテゴリアイコン25が画面の左から右方向に配列して表示されている。」


第4 参考文献

1 参考文献1に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布された,特開2002-298004号公報(平成14年10月11日出願公開,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

L 「【請求項8】 通信回線を通じて配信される情報を受信する受信手段と,予め情報の受取り許可契約をした受信者と許可契約のない受信とを判別する判別手段と,前記判別手段の判別結果に基づいて,前記許可契約をした受信者に対しては情報端末へ情報のダウンロードを許可し,且つ前記許可契約のない受信者に対しては受信の都度料金を徴収することにより情報端末へ情報のダウンロードを許可する許可手段とを備えたことを特徴とする電子情報配信システム。」

M 「【0024】4は駅や街頭等の売店で,衛星3から送られてくる電子情報データを受信する受信手段4aと,配信された電子情報を蓄積する蓄積端末4bと,受信者が電子情報の受信要求をしてきた際,接続された端末からの情報に基づいて予め電子情報の受取り許可契約をした受信者か,それとも許可契約のない受信かを判別する判別手段4cと,判別手段4cの判別結果に基づいて,許可契約をした受信者である場合には受信者が接続した携帯情報端末5aへ電子情報のダウンロードを許可し,且つ許可契約のない受信者に対しては受信の都度料金を要求し,その場で所定の料金が支払われると携帯情報端末5aへ電子情報のダウンロードを許可する許可手段4dと,許可契約者,料金支払い受信者別に受信内容や金額など受信状況を検出する受信状況検出手段4eと,これら各手段を制御するCPU4fとを備えた自動販売機400を備えている。」

2 参考文献2に記載されている技術的事項

本願の優先日前に頒布された,特開2004-240843号公報(平成16年8月26日出願公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

N 「【0026】
この紙媒体形式又は電子情報形式の情報内容の課金形式を決定する際に,例えば,既に購入申し込み契約が済んでいて紙媒体形式の情報内容を提供している場合であって,新たに電子情報形式の情報内容の購入申し込みが有った場合,情報販売管理装置2は当該電子情報形式の情報内容を安価あるいは無償で提供するようになされる。また,既に購入申し込み契約が済んでいて電子情報形式の情報内容を提供している場合であって,新たに紙媒体形式の情報内容の購入申し込みが有った場合,情報販売管理装置2は,当該紙媒体形式の情報内容を安価あるいは無償で提供するようになされる。そして,ステップA4で課金処理を実行する(本発明に係る情報処理方法)。」


第5 対比

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用例1の上記Bの記載からすると,引用発明の「アイテム」は,インターネットを介して「サーバ・システム」から「クライアント・システム」へ電子的に配送される「音楽」などの態様を含むことから,引用発明の「アイテム」,「サーバ・システム」は本願発明の「電子的コンテンツ」,「サーバ」に相当し,本願発明の「電子リーダデバイス」は上位概念では「クライアント・システム」とみることができるから,引用発明の「クライアント・システム」と本願発明の「電子リーダデバイス」とは,「クライアント・システム」である点で共通すると言える。
また,引用発明において,「購入者に電子的に配送されるアイテムの購入注文を出す」のは,インターネットを利用して「アイテム」を「サーバ・システム」から「クライアント・システム」へ電子的に配送するため,すなわち,配信するためであることは自明である。
そうすると,引用発明の「インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテムの購入注文を出す方法であって,前記注文はクライアント・システム側の購入者によって出され,サーバ・システムによって受信されるもの」と,本願発明の「電子的コンテンツをサーバから電子リーダデバイスへ配信するための方法」とは後記する点で相違するものの,上位概念において“電子的コンテンツをサーバからクライアント・システムへ配信するための方法”である点で共通すると言える。

(2)引用発明は,「前記購入者の識別子(ID),支払いに関する情報,および出荷に関する情報を含む購入者情報を前記クライアント・システムから受信し,前記クライアント・システムにクライアントIDを割り当て,前記割り当てられたクライアントID(以下,割り当てクライアントIDという)を前記受信した購入者情報と関連付け,前記割り当てクライアントIDを前記クライアント・システムに送信しておき」,「前記クライアント・システムの制御のもとでは,割り当てクライアントIDを受信してストアしておき,アイテムを記述した情報の要求を前記サーバ・システムに送信」するところ,注文する「アイテム」を記述している情報を「サーバ・システム」に要求する前に,「クライアント・システム」は「購入者の識別子(ID)」を含む「購入者情報」を予め「サーバ・システム」に登録することで「割り当てクライアントID」を「サーバ・システム」から受信し,ストアすることが読み取れる。
そうすると,引用発明の「割り当てクライアントID」が,「アイテム」の購入のための処理が行われる毎に,「クライアント・システム」と「サーバ・システム」の間で送受信されることから,引用発明の「割り当てクライアントID」が本願発明の「識別情報」に相当すると言える。
してみると,引用発明の「サーバ・システム」が「クライアント・システムからアイテムを記述した情報の要求があると,前記クライアントIDを受信」するステップと,本願発明の「サーバが,前記無線接続を介して,前記電子リーダデバイスの識別情報を受信するステップ」とは後記する点で相違するものの,“サーバが,ネットワークを介して,クライアント・システムの識別情報を受信するステップ”である点で共通すると言える。

(3)引用発明は,「クライアント・システムからアイテムを記述した情報の要求があると,前記クライアントIDを受信し」,それに応じて,「前記アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報を前記クライアント・システムに送信」するところ,引用発明の「アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報」は,購入する「アイテム」に対応し,表示画面上で選択可能な表示情報であると言えることから,本願発明の「電子的コンテンツに対応するアイコン又はシンボル」に相当すると言える。
また,引用発明は,「サーバ・システムの制御のもとでは,前記特定されたアイテムを購入する要求を受信」するところ,「特定されたアイテム」は「クライアント・システム」において「注文ボタンを含んでいる表示情報」により選択されたものであることは自明であるから,引用発明の「特定されたアイテムを購入する要求」は本願発明の「ユーザにより選択された電子的コンテンツについての指示」に相当すると言える。
そうすると,引用発明の「アイテムを特定していると共に,注文ボタンを含んでいる表示情報を前記クライアント・システムに送信」し,「サーバ・システムの制御のもとでは,前記特定されたアイテムを購入する要求を受信」するステップと,本願発明の“サーバが,前記サーバ上で購入可能な電子的コンテンツに対応するアイコン又はシンボルを,前記電子リーダデバイスに前記無線接続を介して送信するステップ”および“サーバが,前記電子リーダデバイスから,ユーザにより選択された電子的コンテンツについての指示を前記無線接続を介して受信するステップ”とは後記する点で相違するものの,“サーバが,前記サーバ上で購入可能な電子的コンテンツに対応するアイコン又はシンボルを,クライアント・システムにネットワークを介して送信するステップ”および“サーバが,クライアント・システムから,ユーザにより選択された電子的コンテンツについての指示を前記ネットワークを介して受信するステップ”である点で共通すると言える。

(4)引用発明は,「前記サーバ・システムの制御のもとでは,前記特定されたアイテムを購入する要求を受信し,前記特定されたアイテムを購入する要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成」するところ,「サーバ・システム」が,「クライアントID」を用いて,「特定されたアイテム」の購入のための処理を行っているとみることができるから,本願発明の「前記サーバが,前記識別情報を用いて,前記選択された電子的コンテンツの購入のための処理を行うステップ」に対応すると言える。
また,引用発明は「購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成」するところ,「クライアントID」に関連する「購入者情報」を判別して購入のための処理を行っていると言え,一方,本願発明は「当該識別情報に関係するユーザが,前記選択された電子的コンテンツのための購読契約の購読者であるかどうかを判別」することから,両者は“クライアント・システムの識別情報に基づいて,当該識別情報に関係するユーザの情報を判別して購入処理を行う”点で共通すると言える。
してみると,引用発明の「前記サーバ・システムの制御のもとでは,前記特定されたアイテムを購入する要求を受信し,前記特定されたアイテムを購入する要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成」するステップと本願発明の「前記サーバが,前記識別情報を用いて,前記選択された電子的コンテンツの購入のための処理を行うステップであって,前記サーバが,前記電子リーダデバイスの識別情報に基づいて,当該識別情報に関係するユーザが,前記選択された電子的コンテンツのための購読契約の購読者であるかどうかを判別し,購読者ではない場合,前記選択された電子的コンテンツの費用を,当該ユーザの口座から自動的に引き落としを行い,購読者である場合,前記選択された電子的コンテンツの費用を,前記ユーザの口座から引き落としを行わない,ステップ」とは後記する点で相違するものの,“サーバが,識別情報を用いて,選択された電子的コンテンツの購入のための処理を行うステップであって,前記サーバが,クライアント・システムの識別情報に基づいて,当該識別情報に関係するユーザに関する情報を判別して購入処理を行うステップ”である点で共通すると言える。

2 以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

「電子的コンテンツをサーバからクライアント・システムへ配信するための方法であって,
前記サーバが,ネットワークを介して,前記クライアント・システムの識別情報を受信するステップと,
前記サーバが,前記サーバ上で購入可能な電子的コンテンツに対応するアイコン又はシンボルを,前記クライアント・システムに前記ネットワークを介して送信するステップと,
前記サーバが,前記クライアント・システムから,ユーザにより選択された電子的コンテンツについての指示を前記ネットワークを介して受信するステップと,
前記サーバが,前記識別情報を用いて,選択された電子的コンテンツの購入のための処理を行うステップであって,
前記サーバが,前記クライアント・システムの識別情報に基づいて,当該識別情報に関係するユーザの情報を判別して購入処理を行うステップと
を含む,方法。」

(相違点1)
コンテンツ配信のための端末とネットワークの態様に関し,本願発明は「電子的コンテンツをサーバから電子リーダデバイスへ配信」し,「サーバが,前記電子リーダデバイスとの間の無線接続を確立する」のに対して,引用発明はコンテンツを「インターネット」を介して「クライアント・システム」に配送するものであり,「サーバ・システム」と「クライアント・システム」との間の接続の確立については言及がない点。

(相違点2)
コンテンツ購入のための処理に関し,本願発明は,「前記サーバが,前記電子リーダデバイスの識別情報に基づいて,当該識別情報に関係するユーザが,前記選択された電子的コンテンツのための購読契約の購読者であるかどうかを判別し,購読者ではない場合,前記選択された電子的コンテンツの費用を,当該ユーザの口座から自動的に引き落としを行い,購読者である場合,前記選択された電子的コンテンツの費用を,前記ユーザの口座から引き落としを行わない」のに対して,引用発明は,「前記特定されたアイテムを購入する要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成」し,購入するコンテンツの費用を口座から引き落とす処理についての言及がない点。

(相違点3)
購入されたコンテンツに関し,本願発明は,「サーバが,前記購入された電子的コンテンツを,前記電子リーダデバイスのメモリ内に保存するために,および前記電子リーダデバイスによって表示するために,前記無線接続を介して送信」し,「前記購入可能な電子的コンテンツ,及び前記購入された電子的コンテンツに係るアイコン又はシンボルは,前記電子リーダデバイスにより,対応する電子的コンテンツの種類に従って表示される」のに対して,引用発明は,購入されたコンテンツを「クライアント・システム」へ送信すること,および,「クライアント・システム」における購入されたコンテンツに係るアイコン又はシンボルの表示について明確な言及がない点。


第6 当審の判断

上記相違点1乃至3について検討する。

1 相違点1について

引用発明は,「インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテムの購入注文を出す方法であって,前記注文はクライアント・システム側の購入者によって出され,サーバ・システムによって受信されるもの」であるところ,サーバが電子リーダ端末と無線ネットワーク接続を行い,電子的コンテンツをサーバから無線接続を介して電子リーダ端末に配信する旨の技術は,例えば,引用例2(上記Gを参照),引用例3(上記Hを参照)に記載されるように,本願優先日前に当該技術分野の周知技術であった。
そうすると,引用発明において,引用例2,3記載の周知技術を適用し,クライアント・システムとして無線接続可能な電子リーダ端末を採用し,適宜,サーバ・システムが電子リーダ端末との間で無線接続を確立して,電子的コンテンツであるアイテムをサーバ・システムから無線接続を介してクライアント・システムである電子リーダ端末に配送すること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について

引用発明において,「サーバ・システム」はアイテム購入のための処理として,「前記特定されたアイテムを購入する要求に含まれている前記クライアントIDに関連する前記購入者情報を結合して,請求書発行と出荷情報に従ってアイテム購入注文を生成」するところ,引用例1の上記Bの「この購入者固有注文情報としては,購入者の氏名,購入者のクレジット・カード番号,注文の出荷アドレスなどがある。」との記載からみて,購入者情報はクレジット・カード番号を含み,「サーバ・システム」はアイテムの費用を購入者の口座から引き落とす処理を実行可能であることは自明である。
一方,注文されたコンテンツの費用について,注文者が予め契約済みの購読者か否かに応じて有料/無料などを判定することは,例えば,参考文献1(上記L,Mを参照),参考文献2(上記Nを参照)に記載されるように,コンテンツ販売システムおける周知慣用の手法である。
そして,引用発明の電子的に配送されるアイテムの注文を購入者から受信する「サーバ・システム」において,購入者情報として如何なる情報を管理するかは設計的事項であり,購入者情報として,クレジット・カード番号などのほかに購読契約に関する情報を保有することに格別の困難性は認められない。
そうすると,引用発明において,参考文献1,2に記載の周知慣用手法を適用し,サーバ・システムが実行するクライアント・システムのクライアントIDに基づくアイテム購入のための処理を,適宜,当該クライアントIDに関係する購入者が,選択されたアイテムの購読者であるかどうかを判別し,購読者ではない場合,前記選択されたアイテムの費用を,当該購読者の口座から自動的に引き落としを行い,購読者である場合,前記選択されたアイテムの費用を,前記購読者の口座から引き落としを行わないようにすること,すなわち,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について

引用発明は,「インターネットを利用して購入者に電子的に配送されるアイテムの購入注文を出す方法」であるところ,購入注文された「アイテム」は「サーバ・システム」から「クライアント・システム」に配送され,「クライアント・システム」内に保存されることは自明である。
また,コンテンツ再生装置内に保存されたコンテンツの種類(ジャンルやカテゴリなど)に応じたアイコンを表示し,ユーザは当該アイコンの選択によりコンテンツを検索,閲覧可能とする旨の技術は,例えば,引用例4(上記Jを参照),引用例5(上記Kを参照)に記載されるように,本願優先日前に当該技術分野の周知技術であった。
してみると,引用発明において,引用例4,5記載の周知技術を適用し,クライアント・システムにより購入されたアイテムの送信に当たって,適宜,サーバ・システムが,購入されたアイテムを,クライアント・システムのメモリ内に保存するために,および前記クライアント・システムによって表示するために送信し,購入されたアイテムに係るアイコンは,前記クライアント・システムにおいて対応するアイテムの種類に従って表示されるようにすること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

4 小括

上記で検討したごとく,相違点1乃至3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び引用例2乃至5などに記載の当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。


第7 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-27 
結審通知日 2015-04-28 
審決日 2015-05-11 
出願番号 特願2010-501130(P2010-501130)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸野 徹  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 木村 貴俊
辻本 泰隆
発明の名称 リーダ装置のコンテンツ購入及び転送管理  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 窪田 郁大  
復代理人 濱中 淳宏  

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