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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
管理番号 1305911
審判番号 不服2013-17085  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-04 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2009-523655「計測方法、ステージ装置、及び露光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月22日国際公開、WO2009/011356〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、2008年7月16日(優先権主張2007年7月18日、日本国)を国際出願日とする出願であって、 平成25年5月31日付け(送達:同年6月4日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成26年9月17日付け(発送:同年同月24日)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年11月13日付けで意見書の提出があり、平成27年2月23日付け(発送:同年同月24日)で拒絶理由を通知したところ、同年4月17日付けで意見書の提出があった。

そして、本願の請求項1?17に係る発明は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「基板が載置されるステージを有するステージ装置により前記基板を投影光学系の下に移動し、前記基板に露光光を照射して前記基板に所定のパターンを形成する露光装置であって、
前記投影光学系を支持する所定部材と、
前記所定部材に設けられたスケールと、
前記ステージに設けられ、前記スケールに検出光を照射して前記ステージの位置に関する情報を検出する複数の検出器と、
前記所定部材に設けられた前記スケールを支持するとともに、線膨張率が前記ステージよりも小さい支持部材と、
前記複数の検出器の検出結果から、前記ステージの変位情報を求める制御装置と、
を備える露光装置。」
(以下、「本願発明」という。)


第2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、概略、以下のとおりである。

「この出願の請求項1?17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用刊行物
1 特開平7-270122号公報
2 特開平8-178694号公報
3 国際公開第2006/038952号
(パテントファミリー:特表2008-515219号公報)」


第3 引用例
1 引用例1
(1)記載事項
当審拒絶理由で引用された特開平7-270122号公報(以下、「引用例1」という。)には、特に変位検出装置、該変位検出装置を備えた露光装置およびデバイスの製造方法(発明の名称)に関し、次の事項(a)?(e)が図面とともに記載されている。なお、下線は強調のため当審が引いた。

(a)
「【0010】一方、移動体の移動量を高精度で検出する変位検出装置としては、回折格子干渉の原理を用いた変位検出装置がある。この例としては特開平5-215515号公報に示されたものがあり、これについて図14を参照して説明する。
【0011】図14において半導体レーザ211は、表面に回折格子216が設けられた移動体222に対して所定の距離に配置されており、半導体レーザ211の活性層212により発生した可干渉性光束を空間上の1点(回折格子216上)に偏向させる2つのミラー214a、2134bと、回折格子216からの回折光を受光する検出手段215とを有する。活性層212の面は回折格子216の面に対して略平行に配置され、検出手段215の受光面は活性層212の面と略平行となるように設定されている。そして、各ミラー214a、214bからの2つのレーザ光束231a、231bが活性層212の面に垂直な面内で交差するように各要素が配置されている。
【0012】‥‥‥
【0013】‥‥‥
【0014】そして、回折格子216から略垂直に射出した±m次の2つの回折光を重ね合わせて受光手段215に入射させている。検出手段215では干渉した光が検出される。すなわち、検出手段215では回折格子216の移動状態に応じた干渉縞の明暗の数(パルス)が検出される。このとき、受光手段215の受光面が入射光束に対して垂直となるようにして受光効率を高めている。」

(b)
「【0030】(第1実施例)図1は、本発明の変位検出装置を露光装置に適用した第1実施例の概略側面図であり、図2は、図1に示した露光装置の概略斜視図である。
【0031】本実施例の露光装置はステップ&スキャン方式の露光装置であり、X方向に移動可能に設けられたXステージ7と、Y方向に移動可能に設けられたYステージ6とで構成される移動機構には、軸受部10が、チルト機構8によりXY平面に対する傾きの調節が自在に支持されている。また、軸受部10には、Z方向に伸縮可能な微Z機構9を介して、上面にウエハ4を保持するウエハチャック5が支持されている。これによりウエハチャック5は、X、Y、Z方向の位置およびXY平面に対する傾きが調節可能な移動物体を構成している。
【0032】ウエハチャック5に保持されたウエハ4の上方には、ウエハ4に転写する回路パターンが描かれた原版3が、Y方向に移動可能に設けられた原版ホルダ11に保持されている。原版3の上方には露光用の光源1が配置され、原版3とウエハチャック5との間には、光源1からの光が原版3を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハ4に縮小して投影する縮小光学系を含む、固定物体としての鏡筒2が配置されている。」

(c)
「【0036】再び図1および図2に戻り、鏡筒2の下端部外周面には、4つのウエハ用ヘッドユニット21a、21b、21c、21dが取り付けられ、それらに対応して、ウエハチャック5の上面には、ウエハ4を取り囲んで4つのウエハ用スケール22a、22b、22c、22dが固定されている。すなわち、図5の(a)に示すように、各ウエハ用ヘッドユニット21a、21b、21c、21dのうち2つのウエハ用ヘッドユニット21a、21bは、長手方向がX方向に平行で、しかも互いに鏡筒2の中心軸に対して反対側に取り付けられている。残りの2つのウエハ用ヘッドユニット21c、21bは、長手方向がY方向に平行で、しかも互いに鏡筒2の中心軸に対して反対側に取り付けられる。また、図5の(b)に示すように、各ウエハ用スケール22a、22b、22c、22dはそれぞれ長さ×幅が150mm×5mm程度の大きさであり、石英基板上に幅が1μmの短冊状のニクロムパターンを2μmピッチで長手方向に並べた1次元回折格子が形成されたものである。各ウエハ用スケール22a、22b、22c、22dのうち、長手方向がX方向と平行なウエハ用ヘッドユニット21a、21bに対応する2つのウエハ用スケール22a、22bは、それぞれ長手方向がY方向と平行になるように固定され、長手方向がY方向と平行なウエハ用ヘッドユニット21c、21dに対応する2つの1次元スケール22c、22dは、それぞれ長手方向がX方向と平行になるように固定される。
【0037】ここで、各ウエハ用ヘッドユニット21a、21b、21c、21dについて、1つのウエハ用ヘッドユニット21aを例に挙げて説明する。図6は、ウエハ用ヘッドユニット21aを下方から見た斜視図であり、それに対応するウエハ用スケール22aとの関係も示している。図5に示すようにウエハ用ヘッドユニット21aは、多数の要素ヘッド210を長手方向に並列に接合したもので、少なくとも2つの要素ヘッド210が常にウエハ用スケール22aに対向している。すなわち、ウエハ用スケール22aの幅は、その中に少なくとも2つの要素ヘッド210が対向する幅となっている。各要素ヘッド210は、それぞれ図14に示した半導体レーザと同様の構成であり、また、要素ヘッド210による変位検出の原理についても図14で説明したものと同様であるので、その説明は省略する。これにより、長手方向がX方向と平行な2つのウエハ用ヘッドユニット21a、21bでウエハチャック5のY方向の移動量が検出され、長手方向がY方向と平行な2つのウエハ用ヘッドユニット21c、21dでウエハチャック5のX方向の移動量が検出される。
【0038】図7は、ウエハ用ヘッドユニット21aを制御する制御部30の構成図である。上述したようにウエハ用ヘッドユニット21aは複数の要素ヘッド210からなっており、各要素ヘッド210からの出力は、アレイ状リレースイッチ31を介してヘッドコントローラ32に入力される。ヘッドコントローラ32は、どの要素ヘッド210が検出可能かを、ウエハ用スケール22a(図5参照)の1次元回折格子に向けた光束の反射光の光量で判断し、少なくとも2個以上の要素ヘッド210から同時に出力を取り込むようリレースイッチコントローラ33に指令を出す。リレースイッチコントローラ33では、ヘッドコントローラ32からの指令に基づきアクティブとなるべき要素ヘッド210の少なくとも2つ以上の要素ヘッド210のリレーを接続し、ヘッドコントローラ32に方向も含めた2相の干渉信号を送る。
【0039】以上の説明から明らかなように、各ウエハ用ヘッドユニット21a、21b、21c、21dと各ウエハ用スケール22a、22b、22c、22dと制御部30とで、本発明にかかる変位検出装置が構成されている。」

(d)
「【0040】次に、本実施例の露光装置の動作について説明する。
【0041】‥‥‥
【0042】次に、原版3の回路パターンをウエハ4上に縮小投影し露光する。このとき光源1からの光は、スリット18aを介して原版3に照射されるので、ウエハ4には、原版3の回路パターンの一部がスリット状に投影される。ウエハ4上に露光すると同時に、原版3とウエハ4とを鏡筒2の縮小光学系の縮小倍率に相当する速度差で同期移動し、1枚の原版3全体をウエハ4上に1チップとして露光する。次に、Xステージ7およびYステージ6を一定量ステップ移動させてウエハ4上の露光領域を移動させ、再び前記の露光を繰り返すことはステップ&リピート方式と同様である。原版3の移動は、原版用ヘッド23で原版用スケール24の回折格子での回折光を検出しつつ、原版ホルダ11を移動させて行なう。ウエハ4のスキャンは、詳細については後述するが、基本的な原理は原版3のスキャンと同様である。」

(e)
「【0047】(第2実施例)図9は、本発明変位検出装置を露光装置に適用した第2実施例の概略斜視図であり、図10は、図9に示した露光装置の各ウエハ用スケールの位置関係および各ウエハ用ヘッドユニットの位置関係を説明するための図である。
【0048】本実施例では、鏡筒52の下端部に板部材が固定され、この板部材に4つのウエハ用スケール72a、72b、72c、72dが固定されている。また、ウエハチャック55の上面には、ウエハ54を取り囲んで4つのウエハ用ヘッドユニット71a、71b、71c、71dが固定されている。各ウエハ用スケール72a、72b、72c、72dや各ウエハ用ヘッドユニット71a、71b、71c、71dの構成および配置は第1実施例と同様であり、また、露光装置のその他の構成についても第1実施例と同様であるので、その説明は省略する。」

以下、第2実施例の露光装置に着目する。
・第2実施例の露光装置の構成は第1実施例と同様である(前記記載(e))から、前記記載(b)及び(e)、並びに【図9】より、
ア 「光源からの光が原版を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハに縮小して投影する縮小光学系を含む、固定物体としての鏡筒52」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(e)及び【図9】より、
イ 「鏡筒52の下端部に固定された板部材に固定されたウエハ用スケール」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(e)及び【図9】より、
ウ 「ウエハチャック55の上面に固定されたウエハ用ヘッドユニット」との技術的事項が読み取れる。

・第2実施例のウエハ用スケールやウエハ用ヘッドユニットの構成及び配置は第1実施例と同様である(前記記載(e))から、前記記載(a)、(c)及び(e)、並びに【図14】より、
エ 「ウエハ用ヘッドユニットは、多数の要素ヘッドを長手方向に並列に接合したもので、少なくとも2つの要素ヘッドが常に1次元回折格子が形成されたウエハ用スケールに対向しており、各要素ヘッドは、半導体レーザと、半導体レーザの活性層により発生した可干渉性光束を回折格子上の1点に偏向させる2つのミラーと、回折格子からの回折光を受光する検出手段とを有し、検出手段では回折格子の移動状態に応じた干渉縞の明暗の数(パルス)が検出される。」との技術的事項が読み取れる。

・前記記載(e)及び【図9】より、
オ 「鏡筒52の下端部に固定され、ウエハ用スケールを固定する板部材」との技術的事項が読み取れる。

・第2実施例のウエハ用ヘッドユニットの構成及び配置は第1実施例と同様である(前記記載(e))から、前記記載(c)及び(e)より、
カ 「ウエハ用ヘッドユニットでウエハチャックの移動量が検出される」との技術的事項が読み取れる。

・第2実施例の露光装置の構成は第1実施例と同様である(前記記載(e))から、前記記載(b)及び(d)、並びに【図9】より、
キ 「上面にウエハを保持するウエハチャック55をX方向及びY方向に移動させるXステージ及びYステージを一定量ステップ移動させてウエハ上の露光領域を移動させ、原版の回路パターンをウエハ上に縮小投影し露光する露光装置」との技術的事項が読み取れる。

(2)引用発明
以上の技術的事項アないしキを総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「上面にウエハを保持するウエハチャック55をX方向及びY方向に移動させるXステージ及びYステージを一定量ステップ移動させてウエハ上の露光領域を移動させ、原版の回路パターンをウエハ上に縮小投影し露光する露光装置であって、
光源からの光が原版を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハに縮小して投影する縮小光学系を含む、固定物体としての鏡筒52と、
鏡筒52の下端部に固定された板部材に固定されたウエハ用スケールと、
ウエハチャック55の上面に固定されたウエハ用ヘッドユニットと、
鏡筒52の下端部に固定され、ウエハ用スケールを固定する板部材と、
を備え、
ウエハ用ヘッドユニットは、多数の要素ヘッドを長手方向に並列に接合したもので、少なくとも2つの要素ヘッドが常に1次元回折格子が形成されたウエハ用スケールに対向しており、各要素ヘッドは、半導体レーザと、半導体レーザの活性層により発生した可干渉性光束を回折格子上の1点に偏向させる2つのミラーと、回折格子からの回折光を受光する検出手段とを有し、検出手段では回折格子の移動状態に応じた干渉縞の明暗の数(パルス)が検出され、
ウエハ用ヘッドユニットでウエハチャックの移動量が検出される、露光装置」
(以下、「引用発明」という。)

2 引用例2
(1)記載事項
当審拒絶理由で引用された特開平8-178694号公報(以下、「引用例2」という。)には、特に変位センサ用のスケール(発明の名称)に関し、次の事項(a)が図面とともに記載されている。なお、下線は強調のため当審が引いた。

(a)
「【0015】本発明が実施された光学スケールの第3実施例の説明図を図6に示す。図4、5同様に側面図、上面図、正面図で示してある。図中、101は目盛り部、205が止めネジ、302aはベース基板、103は接着材、302bは取付部、302cは応力回避溝である。目盛り部101は積層構造でベース基板302a上に積載された構造である。目盛り部101は石英ウエハ等を半導体露光装置で精密に作製する。また、石英は線膨張係数が小さい素材をなので温度変化に対するピッチ変化を最小に抑えられる。ベース基板302aは石英ガラスと線膨張係数が近い値のスーパーインバを使用しており、充分な剛性を持ち、上面、下面が平行に研削仕上げされており、接着剤103は伸縮性、すなわち接着した両者の熱膨張差に対する緩衝機能に優れたものを採用することで目盛り部が歪まず保たれる構成となる。」

(2)引用例2記載の発明
前記記載(a)より、引用例2には、「光学スケールにおいて、目盛り部を線膨張係数が小さいスーパーインバ上に積載する」という発明(以下、「引用例2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。


第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明における「ウエハ」は、本願発明における「基板」に相当する。また、引用発明における「ウエハチャック55」は、「上面に」基板である「ウエハを保持する」から、本願発明における「基板が載置されるステージ」に相当する。さらに、引用発明における「ウエハチャック55をX方向及びY方向に移動させるXステージ及びYステージ」は、本願発明における基板を移動する「ステージ装置」に相当する。

2 引用発明における「光源からの光が原版を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハに縮小して投影する縮小光学系」は、本願発明における「投影光学系」に相当する。

3 前記1及び2の相当関係を踏まえると、引用発明における「上面にウエハを保持するウエハチャック55をX方向及びY方向に移動させるXステージ及びYステージを一定量ステップ移動させてウエハ上の露光領域を移動させ、原版の回路パターンをウエハ上に縮小投影し露光する露光装置」は、本願発明における「基板が載置されるステージを有するステージ装置により前記基板を投影光学系の下に移動し、前記基板に露光光を照射して前記基板に所定のパターンを形成する露光装置」に相当する。

4 引用発明において、「固定物体としての鏡筒52」は、「光源からの光が原版を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハに縮小して投影する縮小光学系を含む」ところ、投影光学系である「光源からの光が原版を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハに縮小して投影する縮小光学系」は、「固定物体としての鏡筒52」内で宙に浮いているわけではないから、「固定物体としての鏡筒52」に支持されているといえる。そうすると、引用発明における「光源からの光が原版を通過することにより得られる回路パターンの光学像をウエハに縮小して投影する縮小光学系を含む、固定物体としての鏡筒52」は、本願発明における「前記投影光学系を支持する所定部材」に相当する。

5 引用発明において、「ウエハ用スケール」は、「鏡筒52の下端部に固定された板部材」を介して「鏡筒52」に設けられているといえるから、引用発明における「鏡筒52の下端部に固定された板部材に固定されたウエハ用スケール」は、本願発明における「前記所定部材に設けられたスケール」に相当する。

6 引用発明において、「ウエハ用ヘッドユニット」は、ステージである「ウエハチャック55の上面に固定され」ており、「多数」、すなわち複数の「要素ヘッド」を有する。また、「要素ヘッド」は、半導体レーザの活性層により発生した可干渉性光束」を「ウエハ用スケール」の「回折格子上の1点」に照射し、「回折格子からの回折光を受光する検出手段」で回折格子の移動状態に応じた干渉縞の明暗の数(パルス)が検出されるものであるから、ウエハ用スケールに検出のための光を照射して回折格子の移動状態に関する情報を検出するものであるといえる。「回折格子の移動状態」は、要素ヘッドに対する相対的なものであり、また、引用発明においては、「回折格子が形成されたウエハ用スケール」は、固定物体としての鏡筒52に設けられているから、「回折格子の移動状態」は、「多数の要素ヘッド」を有する「ウエハ用ヘッドユニット」が固定されたステージである「ウエハチャック55」の移動状態のことであるといえる。そして、移動により位置が変化するから、「ウエハチャック55」の移動状態は、「ウエハチャック55」の位置に関する情報であるといえる。そうすると、引用発明の「ウエハチャック55の上面に固定されたウエハ用ヘッドユニットと、‥‥‥ウエハ用ヘッドユニットは、多数の要素ヘッドを長手方向に並列に接合したもので、少なくとも2つの要素ヘッドが常に1次元回折格子が形成されたウエハ用スケールに対向しており、各要素ヘッドは、半導体レーザと、半導体レーザの活性層により発生した可干渉性光束を回折格子上の1点に偏向させる2つのミラーと、回折格子からの回折光を受光する検出手段とを有し、検出手段では回折格子の移動状態に応じた干渉縞の明暗の数(パルス)が検出され」との事項における「多数」、すなわち複数の「要素ヘッド」を有する「ウエハ用ヘッドユニット」は、本願発明における「前記ステージに設けられ、前記スケールに検出光を照射して前記ステージの位置に関する情報を検出する複数の検出器」に相当する。

7 引用発明における「板部材」は、「ウエハ用スケールを固定」し、支持するものであるといえるから、引用発明における「鏡筒52の下端部に固定され、ウエハ用スケールを固定する板部材」も、本願発明における「前記所定部材に設けられた前記スケールを支持するとともに、線膨張率が前記ステージよりも小さい支持部材」も、共に、「前記所定部材に設けられた前記スケールを支持する支持部材」である点で共通する。

8 「移動量」は変位に関する情報であるといえ、また、引用発明において、「多数」、すなわち複数の「要素ヘッド」を有する「ウエハ用ヘッドユニット」で「移動量」を検出するためには、「要素ヘッド」の「検出手段」の検出結果から移動量を求める装置が必要であるから、引用発明における「ウエハ用ヘッドユニットでウエハチャックの移動量が検出される」ことも、本願発明における「前記複数の検出器の検出結果から、前記ステージの変位情報を求める制御装置」を備えることも、共に、「前記複数の検出器の検出結果から、前記ステージの変位情報を求める装置」を備える点で共通する。

9 以上の関係を整理すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「基板が載置されるステージを有するステージ装置により前記基板を投影光学系の下に移動し、前記基板に露光光を照射して前記基板に所定のパターンを形成する露光装置であって、
前記投影光学系を支持する所定部材と、
前記所定部材に設けられたスケールと、
前記ステージに設けられ、前記スケールに検出光を照射して前記ステージの位置に関する情報を検出する複数の検出器と、
前記所定部材に設けられた前記スケールを支持する支持部材と、
前記複数の検出器の検出結果から、前記ステージの変位情報を求める装置と、
を備える露光装置。」

(相違点1)
本願発明では、支持部材が、「線膨張率が前記ステージよりも小さい支持部材」であるのに対し、引用発明では、板部材の線膨張率がウエハチャックよりも小さいのかが明らかでない点。

(相違点2)
本願発明では、ステージの変位情報を求めるのが「制御装置」であるのに対し、引用発明では、ウエハチャックの移動量を検出する装置が制御装置であるのかが明らかでない点。


第5 当審の判断
前記相違点について、検討する。

1 相違点1について
(1)引用例2記載の発明
引用例2には、「光学スケールにおいて、目盛り部を線膨張係数が小さいスーパーインバ上に積載する」という発明が記載されている(前記「第3 引用例」「2 引用例2」「(2)引用例2記載の発明」参照。)。
(2)精密な機器においては、温度変化による影響を小さくするため、線膨張率(係数)が小さい素材を用いることは、広く一般に行われていることである。そして、引用発明に引用例2記載の発明を適用し、ウエハ用スケールを支持・固定する板部材を線膨張率が小さいスーパーインバのようなものとすることは、引用発明の露光装置も精密な機器であるといえるし、また、引用発明及び引用例2記載の発明がいずれも変位を検出するための光学スケールに関する点で共通するから、当業者であれば容易になし得ることである。また、ウエハ用スケールを支持・固定する板部材の線膨張率とステージであるウエハチャックの線膨張率の関係は、等しい値でなければいずれかが大きいの2通りしかないし、ウエハ用スケールを支持・固定する板部材とステージであるウエハチャックの変位は相対的であるから、ウエハ用スケールを支持・固定する板部材の線膨張率をステージであるウエハチャックの線膨張率よりも小さくするようにすることは、加工や製作のしやすさ等を考慮した上で当業者が適宜なすべき事項であって、当業者であれば容易になし得ることである。

2 相違点2について
引用発明の露光装置がウエハチャックの移動量を検出するのは、露光時にウエハチャックの移動を一定量に制御するためでもあると認められるから、引用発明において、ウエハチャックの移動を制御する装置をウエハチャックの移動量を検出する装置に設けるようにして、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

3 本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用例2記載の発明から当業者が予測可能なものであって、格別なものではない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-24 
結審通知日 2015-07-28 
審決日 2015-08-10 
出願番号 特願2009-523655(P2009-523655)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01B)
P 1 8・ 121- WZ (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 健一北川 創  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
関根 洋之
発明の名称 計測方法、ステージ装置、及び露光装置  
代理人 加藤 真司  
代理人 大野 聖二  
代理人 鈴木 守  
代理人 小林 英了  
代理人 大谷 寛  

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