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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1305919
審判番号 不服2014-679  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-15 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2007-543930「エレクトロルミネッセンス材料及びデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月15日国際公開、WO2006/061594、平成20年 7月 3日国内公表、特表2008-522966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年12月6日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月16日、同年11月29日及び平成25年8月14日に手続補正がなされ、平成25年9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成26年1月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年1月15日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成26年1月15日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成26年1月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、本件補正前の請求項1に、

「(i) 第1の電極と、
(ii) 下記構造式で示されるジアミノジアントラセンを含む正孔輸送材料の層と、
【化1】


ここで、式中のAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)は、同一または異なる置換もしくは非置換の単環または多環芳香族基、またはAr_(1)及びAr_(2)、もしくはAr_(3)及びAr_(4)は窒素原子と共に形成される複素環であり、
前記置換もしくは非置換の単環または多環芳香族は、フェニル基、ビスフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基から選択され、Ar_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基は、水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、カルバゾールから選択され、
(iii) 下記構造式で示されるエレクトロルミネッセンス材料の層と、
【化2】


ここで、Ar_(11)は、硼素と配位結合を形成する環窒素原子を有し、窒素原子は隣同士にならないという条件の下で一つまたは複数の別の環窒素原子を有する置換および非置換単環または多環式へテロアリール基から選択される基を表し、X及びZは炭素原子および窒素原子から選択され、Yは炭素原子であるかまたはX及びZが窒素でない場合には窒素原子とすることもできるものであり、置換基は、存在する場合には、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはチオフェニル基から選択され、
Ar_(12)は、単環及び多環式アリール基、並びにヘテロアリール基、から選択されるものを表しており、これらの基は、置換及び非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはチオフェニル基から選択された、一つまたは複数の基で置換することができ、
R_(1)は、水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、及びハロ基から選択され、R_(3)はアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ハロ基、並びに、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表し、
(iv) 第2の電極と
を備えることを特徴とする、エレクトロルミネッセンスデバイス。」とあったものを、

「(i) 第1の電極と、
(ii) 下記構造式で示されるジアミノジアントラセンを含む正孔輸送材料の層と、
【化1】


ここで、式中のAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)は、同一または異なる置換もしくは非置換の単環または多環芳香族基、またはAr_(1)及びAr_(2)、もしくはAr_(3)及びAr_(4)は窒素原子と共に形成される複素環であり、
前記置換もしくは非置換の単環または多環芳香族は、フェニル基、ビスフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基から選択され、Ar_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基は、水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、カルバゾールから選択され、
(iii) 下記構造式で示されるエレクトロルミネッセンス材料の層と、
【化2】


ここで、Ar_(11)は、硼素と配位結合を形成する環窒素原子を有し、窒素原子は隣同士にならないという条件の下で一つまたは複数の別の環窒素原子を有する置換および非置換単環または多環式へテロアリール基から選択される基を表し、X及びZは炭素原子および窒素原子から選択され、Yは炭素原子であるかまたはX及びZが窒素でない場合には窒素原子とすることもできるものであり、置換基は、存在する場合には、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはチオフェニル基から選択され、
Ar_(12)は、単環及び多環式アリール基、並びにヘテロアリール基、から選択されるものを表しており、これらの基は、置換及び非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはチオフェニル基から選択された、一つまたは複数の基で置換することができ、
R_(1)は、水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基から選択され、R_(3)は置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表し、
(iv) 第2の電極と
を備えることを特徴とする、エレクトロルミネッセンスデバイス。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次のアないしウの補正からなるものである。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、カルバゾールから選択されるAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基」において、選択肢の一部を削除し、「水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、カルバゾールから選択されるAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基」と限定する補正。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、及びハロ基から選択されるR_(1)」において、選択肢の一部を削除し、「水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基から選択されるR_(1)」と限定する補正。
ウ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ハロ基、並びに、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表すR_(3)」において、選択肢の一部を削除し、「置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表すR_(3)」と限定する補正。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る上記1(2)のアないしウの補正は、いずれも選択肢の一部を削除するものであり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定し、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献10として引用された、本願の優先権主張の日前(以下「優先日前」という。)に頒布された刊行物である特開平11-40357号公報(以下「引用例1」という。)には、「有機エレクトロルミネッセンス素子」(発明の名称)に関して、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光特性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】有機エレクトロルミネッセンス素子(以下エレクトロルミネッセンスをELと略記することがある)は、電界を印加することより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(C.W. Tang, S.A. Vanslyke, アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters),51巻、913頁、1987年等)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。Tangらは、トリス(8-ヒドロキシキノリノールアルミニウム)を発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じ込めること等が挙げられる。この例のように有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、または正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等が良く知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。
【0003】正孔輸送性材料としてはスターバースト分子である4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミンやN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等のトリフェニルアミン誘導体や芳香族ジアミン誘導体が良く知られている(例えば、特開平8-20771号公報、特開平8-40995号公報、特開平8-40997号公報、特開平8-543397号公報、特開平8-87122号公報等)。
【0004】電子輸送性材料としてはオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が良く知られている。
【0005】また、発光材料としてはトリス(8-キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られており、それらからは青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている(例えば、特開平8-239655号公報、特開平7-138561号公報、特開平3-200289号公報等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】最近では高輝度、長寿命の有機EL素子が開示あるいは報告されているが未だ必ずしも充分なものとはいえない。したがって、高性能を示す材料開発が強く求められている。本発明の目的は、高輝度の有機EL素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のビアンスリル化合物を発光材料として用いて作製した有機EL素子は従来よりも高輝度発光することを見いだした。また、前記材料は高いキャリヤ輸送性を有することがわかり、前記材料を正孔輸送材料、または電子輸送材料として作製した有機EL素子、及び前記材料と他の正孔輸送材料あるいは電子輸送材料との混合薄膜を用いて作製した有機EL素子は従来よりも高輝度発光を示すことを見いだし本発明に至った。また、前記ビアンスリル化合物の中でも、ジアリールアミノ基を置換基に有するものを発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料として用いて作製した有機EL素子は、特に高い輝度の発光が得られることを見いだし、本発明に至った。またジアリールアミノ基を置換基に有するビアンスリル化合物の中でも、アリール基がスチリル基を置換基として有するものを発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料として用いて作製した有機EL素子は、特に高い輝度の発光が得られることを見いだし、本発明に至った。」

イ 「【0009】1 陰極と陽極間に発光層を含む一層または複数層の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層の少なくとも一層が下記一般式(1)で示される材料を単独若しくは混合物として含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0010】
【化3】


(式中、R^(1) ?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコシキカルボニル基、カルボキシル基を表す。またR^(1) ?R^(18)は、それらのうちの2つで環を形成していても良い。)
2 陰極と陽極間に発光層を含む一層または複数層の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層の少なくとも一層が下記一般式(2)で示される材料を単独もしくは混合物として含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0011】
【化4】


(式中、R^(1) ?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコシキカルボニル基、カルボキシル基を表す。またR^(1) ?R^(18)は、それらのうちの2つで環を形成しても良い。ただし、R^(1) ?R^(18)のうち少なくとも一つは-NAr^(1) Ar^(2) (Ar^(1) ,Ar^(2) はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の炭素数6?20のアリール基を表す。)で表されるジアリールアミノ基である。)
3 陰極と陽極間に発光層を含む一層または複数層の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機薄膜層の少なくとも一層が一般式(2)で示される化合物のうち、少なくとも一つの-NAr1 Ar2 基中のAr1 ,Ar2 基の少なくとも一つがスチリル基を置換基として持つ材料を単独もしくは混合物として含むことを特徴とする上記2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0012】4 前記有機薄膜層として、少なくとも正孔輸送層を有し、この層が一般式(1)で表される化合物を単独もしくは混合物として含むことを特徴とする上記1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0013】5 前記有機薄膜層として、少なくとも正孔輸送層を有し、この層が一般式(2)で表される化合物を単独もしくは混合物として含むことを特徴とする上記2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0014】6 前記有機薄膜層として、少なくとも正孔輸送層を有し、この層が一般式(2)で表される化合物のうち、少なくとも一つの-NAr1 Ar2 基中のAr1,Ar2 基の少なくとも一つがスチリル基を置換基として持つ材料を単独もしくは混合物として含むことを特徴とする上記3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」

ウ 「【0033】以下に本発明の化合物例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化5】


【0035】
【化6】


【0036】
【化7】


【0037】
【化8】


【0038】
【化9】


本発明における有機EL素子の素子構造は、電極間に有機層を1層あるいは2層以上積層した構造であり、その例として図1?図4に示すように1(当審注:実際の表記は、○の中に1)陽極、発光層、陰極、2(当審注:実際の表記は、○の中に2)陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極、3(当審注:実際の表記は、○の中に3)陽極、正孔輸送層、発光層、陰極、あるいは4(当審注:実際の表記は、○の中に4)陽極、発光層、電子輸送層、陰極等の構造が挙げられる。本発明における化合物は上記のどの有機層に用いられてもよく、他の正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料にドープさせることも可能である。
【0039】本発明に用いられる正孔輸送材料は特に限定されず、通常正孔輸送剤として使用されている化合物であれば何を使用してもよい。例えば、下記のビス(ジ(p-トリル)アミノフェニル)-1,1-シクロヘキサン[01]、N,N‘-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1‘-ビフェニル-4,4’-ジアミン[02]、N,N‘-ジフェニル-N-N-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル)-4,4‘-ジアミン[03]等のトリフェニルジアミン類や、スターバースト型分子([04]?[06]等)等が挙げられる。
【0040】
【化10】


本発明に用いられる電子輸送材料は特に限定されず、通常電子輸送剤として使用されている化合物であれば何を使用してもよい。例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール[07]、ビス{2-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール}-m-フェニレン[08]、等のオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体([09]、[10]等)、キノリノール系の金属錯体([11]?[14]等)が挙げられる。
【0041】
【化11】


有機薄膜EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層または発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また陰極としては、電子輸送層または発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、アルミニウム-リチウム合金、アルミニウム-スカンジウム-リチウム合金、マグネシウム-銀合金等が使用できる。」

エ 「【0057】実施例7
実施例7に用いた素子の断面構造を図2に示す。素子は陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極により構成されている。ガラス基板上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜し、陽極とした。その上に正孔輸送層として、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン[02]を真空蒸着法にて50nm形成した。次に、発光層として、化合物(3)を真空蒸着法にて40nm形成した。次に電子輸送層として2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール[07]を真空蒸着法にて20nm形成した。次に陰極としてマグネシウム-銀合金を真空蒸着法によって200nm形成して有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、1000cd/m^(2) の発光が得られた。」

オ 「【0068】実施例18
正孔輸送層として化合物(4)を、発光層として[13]を用いる以外は実施例7と同様の操作を行い有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、800cd/m^(2) の発光が得られた。
【0069】実施例19
正孔輸送材料として、化合物(5)を用いる以外は実施例18と同様の操作を行い有機EL素子を作製した。この素子に直流電圧を10V印加したところ、1200cd/m^(2) の発光が得られた。」

カ 上記エ、オにおいて、実施例19は「正孔輸送材料として、化合物(5)を用いる以外は実施例18と同様の操作を行い有機EL素子を作製した」ものであり、実施例18は「正孔輸送層として化合物(4)を、発光層として[13]を用いる以外は実施例7と同様の操作を行い有機EL素子を作製した」ものであるから、実施例19は、正孔輸送材料として、化合物(5)を用い、発光層として[13]を用い、それ以外は実施例7と同様の操作を行い有機EL素子を作製したものであり、化合物(5)、[13]、[07]のそれぞれの化学構造式は上記ウの[0036]、[0040]、[0038]から、以下のとおりである。






キ 上記アないしカから、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「ジアリールアミノ基を置換基に有する特定のビアンスリル化合物が、高いキャリア輸送性を有することから、正孔輸送材料、または電子輸送材料とした、高い輝度の発光を示す有機EL素子であって、
前記有機EL素子は陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極により構成されており、前記化合物は、上記のどの有機層に用いられてもよく、具体的には、ガラス基板上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜して陽極とし、その上に正孔輸送層として、化合物(5)


を真空蒸着法にて50nm形成し、次に、発光層として、[13]


を真空蒸着法にて40nm形成し、次に電子輸送層として2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール[07]


を真空蒸着法にて20nm形成し、次に陰極としてマグネシウム-銀合金を真空蒸着法によって200nm形成して作製した有機EL素子。」(以下「引用発明1」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用文献17として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2004/084325号(以下「引用例2」という。)には、「ELECTROLUMINESCENT BORON COMPLEXES」(エレクトロルミネッセンスホウ素錯体)(以下、英文に続けて、当審の和訳を記載する。)に関して、次の事項が図とともに記載されている。

ア 「We have now invented novel electroluminescent boron complexes.

According to the invention there is provided a boron compound of formula


wherein:
Ar_(1) represents unsubstituted or substituted monocyclic or polycyclic heteroaryl having a ring nitrogen atom for forming a coordination bond to boron as indicated and optionally one or more additional ring nitrogen atoms subject to the proviso that nitrogen atoms do not occur in adjacent positions, X and Z being carbon or nitrogen and Y being carbon or optionally nitrogen if neither of X and Z is nitrogen, said substituents if present being selected from substituted and unsubstituted hydrocarbyl, substituted and unsubstituted hydrocarbyloxy, fluorocarbon, halo, nitrile, amino alkylamino, dialkylamino or thiophenyl;
Ar_(2) represents monocyclic or polycyclic aryl or heteroaryl optionally substituted with one or more substituents selected from substituted and unsubstituted hydrocarbyl, substituted and unsubstituted hydrocarbyloxy, fluorocarbon, halo, nitrile, amino, alkylamino, dialkylamino or thiophenyl;
R_(1) represents hydrogen, substituted or unsubstituted hydrocarbyl, halohydrocarbyl or halo; and
R_(2) and R_(3) each independently represent alkyl, cycloalkyl, cycloalkylalkyl, haloalkyl, halo or monocyclic or polycyclic aryl, heteroaryl, aralkyl or heteroaralkyl optionally substituted with one or more of alkyl, cycloalkyl, cycloalkylalkyl, haloalkyl, aryl, aralkyl, alkoxy, aryloxy, halo, nitrile, amino, alkylamino or dialkylamino.

Ar_(1) typically represents monocyclic or bicyclic heteroaryl in which the ring heteroatoms are nitrogen, e.g. pyridyl, pyrimidyl, pyrazinyl, quinolinyl, iso- quinolinyl, quinoxalinyl, or quinazolinyl which may be unsubstituted or may be substituted with one or more cycloalkyl, cycloalkylalkyl, haloalkyl, aryl, aralkyl, alkoxy, aryloxy, halo, nitrile, amino, alkylamino or dialkylamino groups. Preferred are groups selected from alkyl, halocarbon or halo substituents e.g. methyl, methoxy, trifluoromethyl or fluoro.

Ar_(2) typically represents monocyclic or polycyclic aryl, most usually phenyl or naphthyl, but also fluorenyl and 2-6 polycyclic aryl e.g. anthracenyl, phenanthrenyl, pyrenyl or perylenyl which may be unsubstituted or substituted with e.g. alkyl, cycloalkyl, cycloalkylalkyl, haloalkyl, aryl, aralkyl, alkoxy, aryloxy, halo, nitrile, amino, alkylamino or dialkylamino. Preferred substituents include methyl, methoxy, trifluoromethyl, fluoro and nitrile.

R_(1) most usually represents hydrogen, but it may also represent alkyl, cycloalkyl, cycloalkylalkyl, haloalkyl, and monocyclic or polycyclic aryl, heteroaryl, aralkyl and heteroaralkyl. Preferred non-hydrogen substituents are methyl, trifluoromethyl and fluoro.

R_(2) and R_(3) typically represent phenyl or 4-subsitiuted phenyl wherein the substituent in the 4-position is -G . alkyl e.g. methyl or ethyl, trifluoromethyl, methoxy or fluoro. The groups R_(2) and R_(3) may be derived from e.g. dimethylborinic acid, dimethylborinic anhydride, diethylborinic acid, diethylborinic anhydride, dicyclohexylborinic acid, dicyclohexylborinic anhydride, diphenylborinic acid, diphenylborinic anhydride, , di-p-tolylborinic acid (see US 2002/0161230, Meudt et al, Clariant Corporation), and bis(pentafluorophenyl)borinic acid and its anhydride.

According to an alternative definition of the invention there is provided a boron complex of formula


where
Ph is an unsubstituted or substituted phenyl group where the substituents can be the same or different and are selected from hydrogen, and substituted and unsubstituted hydrocarbyl groups such as substituted and unsubstituted aliphatic groups, substituted and unsubstituted aromatic, heterocyclic and polycyclic ring structures, fluorocarbons such as trifluoryl methyl groups, halogens such as fluorine or thiophenyl groups; and
R, R_(1) and R_(2) can be hydrogen or substituted or unsubstituted hydrocarbyl groups, such as substituted and unsubstituted aromatic, heterocyclic and polycyclic ring structures, fluorine, fluorocarbons such as trifluoryl methyl groups, halogens such as fluorine or thiophenyl groups or nitrile.

Examples of R and/or R_(1) and/or R_(2) and/or R_(3) in Formula (la) include aliphatic, aromatic and heterocyclic alkoxy, aryloxy and carboxy groups, substituted and substituted phenyl, fluorophenyl, biphenyl, phenanthrene, anthracene, naphthyl and fluorene groups alkyl groups such as t-butyl, heterocyclic groups such as carbazole.」(明細書第2頁第14行-第5頁第7行)
(和訳:われわれは、新規なエレクトロルミネッセンスホウ素錯体を発明した。

本発明により、以下の構造式のホウ素化合物が提供される。


ここで、式中の、
Ar_(1)は、非置換もしくは置換の単環または多環のヘテロアリール基であって、矢印で指されているホウ素原子と配位結合を形成するひとつの環員窒素原子と、オプションとして前記のひとつの環員窒素原子に隣接しないことを条件とするひとつもしくは複数の付加環員窒素原子とを、有するヘテロアリール基を示す。また、XおよびZは、炭素原子もしくは窒素原子であり、且つ、Yは、炭素原子、または、XおよびZのいずれも窒素原子ではないときには窒素原子とすることができる。また、前記置換基が存在する場合には、前記置換基は置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン、ハロ、ニトリル、アミノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、もしくはチオフェニル基、から選択することができる。また、
Ar_(2)は、単環もしくは多環アリール基またはヘテロアリール基であって、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、もしくはチオフェニル基、から選択される、ひとつもしくは複数の置換基を任意に持つことができる。
R_(1) は、水素原子、置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、またはハロを示す。また、
R_(2) および R_(3) は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ハロ、あるいは、単環もしくは多環のアリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、またはヘテロアラルキル基であって、任意に、ひとつもしくは複数のアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基で置換することができる。

Ar_(1)は、典型的には、環員ヘテロ原子が窒素原子である単環もしくは二環のヘテロアリール基であって、例えば、非置換の、あるいは、ひとつもしくは複数のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基で置換されている、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサリニル基、もしくはキナゾリニル基である。好ましくは、置換基は、アルキル基、ハロカーボン、もしくはハロ置換基から選択され、例えば、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、もしくはフルオロ基である。

Ar_(2)は、典型的には、単環もしくは多環のアリール基であって、フェニル基もしくはナフチル基が頻用されるが、さらに、例えば、非置換の、あるいは、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基で置換されている、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、もしくはペリレニル基、であるフルオレニル基、および、2-6 多環アリール基も用いられる。好ましい置換基は、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、フルオロ基、およびニトリルを含む。

R_(1)は、通常は水素原子であるが、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ならびに、単環もしくは多環の、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、およびヘテロアラルキル基、も用いることができる。好ましい非水素原子置換基は、メチル基、トリフルオロメチル基、および、フルオロ基である。

R_(2)およびR_(3)は、典型的には、フェニル基、あるいは、例えばメチル基もしくはエチル基である C1- C4 アルキル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、またはフルオロ基によって4位が置換された4位置換フェニル基、である。 R_(2)およびR_(3)の基は、例えばジメチルボリン酸、無水ジメチルボリン酸、ジエチルボリン酸、無水ジエチルボリン酸、ジシクロヘキシルボリン酸、無水ジシクロヘキシルボリン酸、ジフェニルボリン酸、無水ジフェニルボリン酸、ジ-p-トリルボリン酸(米国特許 2002/0161230, Meudt et al, Clariant Corporation を参照のこと)、ならびに、ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸およびその無水物、からの誘導体とすることもできる。

本発明の別の範囲においては、以下の構造式のホウ素錯体が提供される。


ここで、式中の、
Phは、非置換もしくは置換のフェニル基であって、水素原子、ならびに、置換および非置換脂肪族基のような置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換芳香族基、複素環構造および多環構造、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン、フッ素原子のようなハロゲン、あるいはチオフェニル基から選択される、同一もしくは異なった置換基を持つことができる。また、
R 、R_(1)およびR_(2)は、水素原子、あるいは、置換および非置換芳香族基のような置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、複素環構造および多環構造、フルオロ基、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン、フッ素原子のようなハロゲン、またはチオフェニル基、またはニトリル、とすることができる。

構造式(Ia)における、 Rおよび/もしくはR_(1)および/もしくはR_(2)および/もしくはR_(3)の例は、脂肪族基、芳香族および複素環のアルコキシ基およびアリールオキシ基およびカルボキシ基、置換および置換のフェニル基、フルオロフェニル基、ビフェニル基、フェナントレン基、アントラセン基、ナフチル基およびフルオレン基、ならびに、t-ブチル基のようなアルキル基、ならびにカルバゾールのような複素環基、を含む。)

イ 「The invention also provides an electroluminescent device which comprises a first electrode, a layer of an electroluminescent material and a second electrode in which the electroluminescent material is a complex of formula (I) or (la).

The thickness of the layer of the electroluminescent material is preferably from 10- 250 nm, more preferably 20-75 nm.

The first electrode can function as the anode and the second electrode can function as the cathode and preferably there is a layer of a hole transporting material between the anode and the layer of the electroluminescent material.

The hole transporting material can be any of the hole transporting materials currently used in electroluminescent devices.」(明細書第6頁第7-19行)
(和訳:本発明は、第一電極、エレクトロルミネッセンス物質層、および第二電極、を含み、前記エレクトロルミネッセンス物質が構造式(I)もしくは(Ia)の錯体である、エレクトロルミネッセンスデバイスも提供する。

前記エレクトロルミネッセンス物質の層の厚さは、10?250nm であるのが好ましく、20?75nm であるのがさらに好ましい。

前記第一電極はアノードとして機能し、且つ、前記第二電極はカソードとして機能し、好ましくは、正孔伝送物質の層が、前記アノードと前記エレクトロルミネッセンス物質層との間に存在する。

前記正孔伝送物質は、現在エレクトロルミネッセンスデバイスに使用されている任意の正孔伝送物質とすることができる。)

ウ 「The boron complexes of the present invention include blue emitting electroluminescent materials.」(明細書第11頁26-27行)
(和訳:本発明に係るホウ素錯体は、青色発光エレクトロルミネッセンス物質を含む。)

エ 「Blue electroluminescent materials are the most difficult to obtain with satisfactory performance and, in blue monochromatic displays and polychromatic displays, a blue electroluminescent material of the present invention can be used.」(明細書第13頁第14-16行)
(和訳:青色エレクトロルミネッセンス物質は、充分なパフォーマンスを得ることがもっとも困難なものであり、青単色ディスプレイおよび多色ディスプレイにおいて、本発明の青色エレクトロルミネッセンス物質を用いることができる。)

オ「Example 13

A pre-etched ITO (indium tin oxide) coated glass piece (10 x 10cm 2 ) was used. A device was fabricated by sequentially forming layers on the ITO by vacuum evaporation, using a Solciet Machine,ULVAC Ltd. Chigacki, Japan; the active area of each pixel was 3mm by 3mm. The layers comprised:-

ITO (H)/CuPc (25 nm)/α-NPB (110 nm)/Compound A (35 nm)/Al

in which compound A has the formula


CuPc is a copper phthalocyanine buffer layer and α-NPB is as in fig. 7. The coated electrode was stored in a vacuum desiccator over a molecular sieve and phosphorous pentoxide until it was loaded into a vacuum coater (10^(-6) torr) and the aluminium top contact was made. The device was then kept in a vacuum desiccator until the electroluminescence studies were performed.

In these studies, the ITO electrode was always connected to the positive terminal. The current vs. voltage studies were carried out on a computer controlled Keitbly 2400 source meter. The electroluminescent spectrum was measured and the results shown in Fig. 12. Luminescence and current density were measured as a function of voltage and luminescence and current efficiency were measured as a function of current density with the results shown in Fig. 13.」(明細書第17頁第1-23行)
(和訳:プレエッチングITO(錫ドープ酸化インジウム)被覆ガラス片(10 x 10cm^(2))を用いた。デバイスは、前記ITO上で、ULVAC社(茅ヶ崎、日本)製の Solciet を使用した真空蒸着によって連続的に組み上げられ、各ピクセルの活性領域は 3mm x 3mm となった。前記層は、

ITO(H)/CuPc(25nm)/α-NPB(110nm)/化合物A(35nm)/Al

を含み、ここで、化合物Aは以下の構造式を有する。


また、CuPcはフタロシアニン銅のバッファ層であり、α-NPB は図7に示したものである。前記被覆電極は、真空塗装機(10^(-6)torr)内でアルミニウムトップ接触を形成するまでの間は、モレキュラシーブおよび五酸化リンとともに真空デシケータに格納した。エレクトロルミネッセンス研究が完了するまでの間、前記デバイスは真空デシケータ内に保存した。

これらの研究において、前記のITO電極は、つねに陽極と接触している。電流と電圧の相関の研究は、コンピューター制御されたKeithly 2400 source meter 上で行われた。エレクトロルミネッセンススペクトルを測定し、その結果を図12に示した。ルミネッセンスおよび電流密度を電圧の関数として測定し、また、ルミネッセンスおよび電流効率を電流密度の関数として測定して、その結果を図13に示した。)

カ 上記アないしオから、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。
「青色エレクトロルミネッセンス物質として、エレクトロルミネッセンスホウ素錯体を用いたエレクトロルミネッセンスデバイスであって、
第一電極、エレクトロルミネッセンス物質層、および第二電極、を含み、現在エレクトロルミネッセンスデバイスに使用されている任意の正孔伝送物質とすることができる正孔伝送物質の層が、前記アノードと前記エレクトロルミネッセンス物質層との間に存在し、前記エレクトロルミネッセンス物質が構造式(I)


ここで、式中の、
Ar_(1)は、非置換もしくは置換の単環または多環のヘテロアリール基であって、矢印で指されているホウ素原子と配位結合を形成するひとつの環員窒素原子と、オプションとして前記のひとつの環員窒素原子に隣接しないことを条件とするひとつもしくは複数の付加環員窒素原子とを、有するヘテロアリール基を示す。また、XおよびZは、炭素原子もしくは窒素原子であり、且つ、Yは、炭素原子、または、XおよびZのいずれも窒素原子ではないときには窒素原子とすることができる。また、前記置換基が存在する場合には、前記置換基は置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン、ハロ、ニトリル、アミノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、もしくはチオフェニル基、から選択することができる。また、
Ar_(2)は、単環もしくは多環アリール基またはヘテロアリール基であって、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、もしくはチオフェニル基、から選択される、ひとつもしくは複数の置換基を任意に持つことができる。
R_(1) は、水素原子、置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、またはハロを示す。また、
R_(2) および R_(3) は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ハロ、あるいは、単環もしくは多環のアリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、またはヘテロアラルキル基であって、任意に、ひとつもしくは複数のアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基で置換することができる。
もしくは(Ia)


ここで、式中の、
Phは、非置換もしくは置換のフェニル基であって、水素原子、ならびに、置換および非置換脂肪族基のような置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換芳香族基、複素環構造および多環構造、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン、フッ素原子のようなハロゲン、あるいはチオフェニル基から選択される、同一もしくは異なった置換基を持つことができる。また、
R 、R_(1)およびR_(2)は、水素原子、あるいは、置換および非置換芳香族基のような置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、複素環構造および多環構造、フルオロ基、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン、フッ素原子のようなハロゲン、またはチオフェニル基、またはニトリル、とすることができる。
の錯体である、エレクトロルミネッセンスデバイス。」(以下「引用発明2」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「陽極」は、ガラス基板上にITOをスパッタリングによってシート抵抗が20Ω/□になるように製膜しており、電極として機能することは明らかであるので、本願補正発明の「第1の電極」に相当する。

(2)引用発明1の「正孔輸送層」は、化合物(5)


を真空蒸着法にて50nm形成したものであり、化合物(5)は、本願補正発明の「下記構造式で示されるジアミノジアントラセン


ここで、式中のAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)は、同一または異なる置換もしくは非置換の単環または多環芳香族基、またはAr_(1)及びAr_(2)、もしくはAr_(3)及びAr_(4)は窒素原子と共に形成される複素環であり、
前記置換もしくは非置換の単環または多環芳香族は、フェニル基、ビスフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基から選択され、Ar_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基は、水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、カルバゾールから選択され」に該当するので、本願補正発明の「下記構造式で示されるジアミノジアントラセンを含む正孔輸送材料の層


ここで、式中のAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)は、同一または異なる置換もしくは非置換の単環または多環芳香族基、またはAr_(1)及びAr_(2)、もしくはAr_(3)及びAr_(4)は窒素原子と共に形成される複素環であり、
前記置換もしくは非置換の単環または多環芳香族は、フェニル基、ビスフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基から選択され、Ar_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基は、水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、カルバゾールから選択され」に相当する。

(3)引用発明1の「発光層」は、[13]


を真空蒸着法にて40nm形成したものであり、[13]がエレクトロルミネッセンス材料であることは明らかであるので、本願補正発明の「下記構造式で示されるエレクトロルミネッセンス材料の層


ここで、Ar_(11)は、硼素と配位結合を形成する環窒素原子を有し、窒素原子は隣同士にならないという条件の下で一つまたは複数の別の環窒素原子を有する置換および非置換単環または多環式へテロアリール基から選択される基を表し、X及びZは炭素原子および窒素原子から選択され、Yは炭素原子であるかまたはX及びZが窒素でない場合には窒素原子とすることもできるものであり、置換基は、存在する場合には、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはチオフェニル基から選択され、
Ar_(12)は、単環及び多環式アリール基、並びにヘテロアリール基、から選択されるものを表しており、これらの基は、置換及び非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはチオフェニル基から選択された、一つまたは複数の基で置換することができ、
R_(1)は、水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基から選択され、R_(3)は置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表し」と、「エレクトロルミネッセンス材料の層」の点で一致する。

(4)引用発明1の「陰極」は、マグネシウム-銀合金を真空蒸着法によって200nm形成してしており、電極として機能することは明らかであるので、本願補正発明の「第2の電極」に相当する。

(5)引用発明1の「有機EL素子」は、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極により構成されており、本願補正発明の「エレクトロルミネッセンスデバイス」と、「第1の電極と、正孔輸送材料の層と、エレクトロルミネッセンス材料の層と、第2の電極とを備える」点で一致する。

上記(1)ないし(5)から、本願補正発明と引用発明1とは、
「(i) 第1の電極と、
(ii) 下記構造式で示されるジアミノジアントラセンを含む正孔輸送材料の層と、
【化1】


ここで、式中のAr_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)は、同一または異なる置換もしくは非置換の単環または多環芳香族基、またはAr_(1)及びAr_(2)、もしくはAr_(3)及びAr_(4)は窒素原子と共に形成される複素環であり、
前記置換もしくは非置換の単環または多環芳香族は、フェニル基、ビスフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基から選択され、Ar_(1)、Ar_(2)、Ar_(3)、及びAr_(4)の置換基は、水素原子、及び炭素数4以下のアルキル基、芳香族基、カルバゾールから選択され、
(iii) エレクトロルミネッセンス材料の層と、
(iv) 第2の電極と
を備えることを特徴とする、エレクトロルミネッセンスデバイス。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:エレクトロルミネッセンス材料が、本願補正発明では「下記構造式で示される
【化2】


ここで、Ar_(11)は、硼素と配位結合を形成する環窒素原子を有し、窒素原子は隣同士にならないという条件の下で一つまたは複数の別の環窒素原子を有する置換および非置換単環または多環式へテロアリール基から選択される基を表し、X及びZは炭素原子および窒素原子から選択され、Yは炭素原子であるかまたはX及びZが窒素でない場合には窒素原子とすることもできるものであり、置換基は、存在する場合には、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはチオフェニル基から選択され、
Ar_(12)は、単環及び多環式アリール基、並びにヘテロアリール基、から選択されるものを表しており、これらの基は、置換及び非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはチオフェニル基から選択された、一つまたは複数の基で置換することができ、
R_(1)は、水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基から選択され、R_(3)は置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表し」のに対し、引用発明1では、前記構造式で示されるものではない点

相違点2:エレクトロルミネッセンスデバイスが、本願補正発明では「第1の電極と、正孔輸送材料の層と、エレクトロルミネッセンス材料の層と、第2の電極とを備える」のに対し、引用発明1では、第1の電極と、正孔輸送材料の層と、エレクトロルミネッセンス材料の層と、電子輸送層と、第2の電極とを備える点

5 判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
(1)相違点1について
ア 引用発明1は、高輝度の有機EL素子を提供することを目的としており、ジアリールアミノ基を置換基に有し、高いキャリア輸送性を有する特定のビアンスリル化合物を正孔輸送材料として有機EL素子を作製することにより、高い輝度の発光を得ようとするものである。

イ また、引用発明2には、エレクトロルミネッセンスデバイスに使用されている正孔伝送物質の層として任意の正孔伝送物質とすることができることが記載されており、前記アノードと前記エレクトロルミネッセンス物質層との間に存在するエレクトロルミネッセンスデバイスにおいて、青色エレクトロルミネッセンス物質として、構造式(I)


ここで、式中の、
Ar_(1)は、非置換もしくは置換の単環または多環のヘテロアリール基であって、矢印で指されているホウ素原子と配位結合を形成するひとつの環員窒素原子と、オプションとして前記のひとつの環員窒素原子に隣接しないことを条件とするひとつもしくは複数の付加環員窒素原子とを、有するヘテロアリール基を示す。また、XおよびZは、炭素原子もしくは窒素原子であり、且つ、Yは、炭素原子、または、XおよびZのいずれも窒素原子ではないときには窒素原子とすることができる。また、前記置換基が存在する場合には、前記置換基は置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン、ハロ、ニトリル、アミノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、もしくはチオフェニル基、から選択することができる。また、
Ar_(2)は、単環もしくは多環アリール基またはヘテロアリール基であって、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、もしくはチオフェニル基、から選択される、ひとつもしくは複数の置換基を任意に持つことができる。
R_(1) は、水素原子、置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、ハロヒドロカルビル基、またはハロを示す。また、
R_(2) および R_(3) は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、ハロ、あるいは、単環もしくは多環のアリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、またはヘテロアラルキル基であって、任意に、ひとつもしくは複数のアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロ、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基で置換することができる。
もしくは(Ia)


ここで、式中の、
Phは、非置換もしくは置換のフェニル基であって、水素原子、ならびに、置換および非置換脂肪族基のような置換および非置換ヒドロカルビル基、置換および非置換芳香族基、複素環構造および多環構造、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン、フッ素原子のようなハロゲン、あるいはチオフェニル基から選択される、同一もしくは異なった置換基を持つことができる。また、
R 、R_(1)およびR_(2)は、水素原子、あるいは、置換および非置換芳香族基のような置換もしくは非置換ヒドロカルビル基、複素環構造および多環構造、フルオロ基、トリフルオリルメチル基のようなフルオロカーボン、フッ素原子のようなハロゲン、またはチオフェニル基、またはニトリル、とすることができる。
の錯体を用いることが記載されている。

ウ そして、エレクトロルミネッセンス材料を適宜選択することによりエレクトロルミネッセンスデバイスの発光色を制御することは、例示するまでもなく本願優先日前に一般的に行われていたことである。

エ したがって、引用発明1において、エレクトロルミネッセンスデバイスの発光色を青色とするために引用発明2を適用し、エレクトロルミネッセンス材料として、前記構造式(I)もしくは(Ia)の錯体を用いることは当業者が容易に想到し得たことである。

オ 上記エにおける「構造式(I)もしくは(Ia)の錯体」は、本願補正発明の「下記構造式で示されるエレクトロルミネッセンス材料


ここで、Ar_(11)は、硼素と配位結合を形成する環窒素原子を有し、窒素原子は隣同士にならないという条件の下で一つまたは複数の別の環窒素原子を有する置換および非置換単環または多環式へテロアリール基から選択される基を表し、X及びZは炭素原子および窒素原子から選択され、Yは炭素原子であるかまたはX及びZが窒素でない場合には窒素原子とすることもできるものであり、置換基は、存在する場合には、置換および非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはチオフェニル基から選択され、
Ar_(12)は、単環及び多環式アリール基、並びにヘテロアリール基、から選択されるものを表しており、これらの基は、置換及び非置換ヒドロカルビル基、置換及び非置換ヒドロカルビルオキシ基、フルオロカーボン基、ハロ基、ニトリル、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基またはチオフェニル基から選択された、一つまたは複数の基で置換することができ、
R_(1)は、水素原子、または置換もしくは非置換ヒドロカルビル基から選択され、R_(3)は置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、及び置換もしくは非置換ヘテロアラルキル基、のうちから選択される部分を表し」に相当するから、引用発明1において、発光層を下記構造式で示されるエレクトロルミネッセンス材料の層とすることは、上記エからみて、当業者が容易になし得た程度のことである。

なお、正孔輸送材料の層に含まれる正孔輸送材料と、エレクトロルミネッセンス材料の層に含まれるエレクトロルミネッセンス材料として、本願補正発明に記載された構造式で示されるジアミノアントラセンと、構造式(XXVIII)で示されるエレクトロルミネッセンス材料とを組み合わせて用いることができることは、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第03/093394号の明細書第5頁第16行?第6頁第14行、第8頁第5?6行、第13頁第1?12行に記載されているから、引用発明1に引用発明2を適用して、本願補正発明に記載された構造式で示されるジアミノアントラセンと構造式(XXVIII)で示されるエレクトロルミネッセンス材料とを組み合わせて用いることが格別困難であったとも考えられない。

(2)相違点2について
ア 引用例1には、上記第2の〔理由〕3(1)ウの[0038]に記載されているように、有機EL素子の素子構造の例として、陽極、発光層、陰極という構造や、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極という構造、陽極、正孔輸送層、発光層、陰極という構造、陽極、発光層、電子輸送層、陰極という構造等が挙げられている。

イ 上記アより、引用例1には、有機EL素子において正孔輸送層や電子輸送層は必須の構成ではなく、正孔輸送層や電子輸送層の有無は当業者が必要に応じて適宜選択可能であることが示唆されていると認められる。

ウ したがって、引用発明1において、エレクトロルミネッセンスデバイスから電子輸送層を省略し、第1の電極と、正孔輸送材料の層と、エレクトロルミネッセンス材料の層と、第2の電極とを備える構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

(3)また、本願出願人は平成26年1月15日付け審判請求書において、本願補正発明は有機層、特に、正孔輸送層の熱による変形の問題を軽減することができると共に、高い電流効率と高い発光を得ることができるという効果を奏する旨を主張している。

(4)上記主張について検討すると、引用発明1においても、本願補正発明に記載された構造式で示されるジアミノジアントラセンを含む正孔輸送材料の層を備えているので、正孔輸送層の熱による変形の問題を軽減することができるものと認められる。

(5)また、本願の図13a?図14cと、引用例2において、正孔輸送材料のみが本願補正発明と異なる実施例13のエレクトロルミネッセンスデバイスの電気特性を示す図13とを対比すると、明らかに引用例2において、正孔輸送材料のみが本願補正発明と異なる実施例13のエレクトロルミネッセンスデバイスの電気特性の方が本願補正発明の電気特性よりも優れているので、高い電流効率と高い発光を得ることができるという出願人が主張する効果についても、当業者が予測し得ない格別のものとは認められない。

(6)したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明1、引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 まとめ
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

前記「第2」での検討のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、本件補正前の平成25年8月14日に提出された手続補正書により補正された請求項1?8に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1(1)」において、本件補正直前の請求項1として記載したとおりである。

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、上記第2の〔理由〕3(1)及び(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断

本願発明は、上記第2〔理由〕1及び2で検討した本願補正発明から、上記第2〔理由〕1(2)のアないしウの補正を削除したものである。

そうすると、本願発明と、引用発明1とは、上記第2〔理由〕4に記載した相違点1及び相違点2の点で、相違している。

そして、相違点1及び相違点2は、上記第2〔理由〕5に記載したとおり、引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4 結語

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-22 
結審通知日 2015-04-28 
審決日 2015-05-11 
出願番号 特願2007-543930(P2007-543930)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斉藤 貴子藤原 浩子福井 悟  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
本田 博幸
発明の名称 エレクトロルミネッセンス材料及びデバイス  
代理人 大菅 義之  
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