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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1305923 |
審判番号 | 不服2014-4701 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-11 |
確定日 | 2015-09-24 |
事件の表示 | 特願2011-507665「肺の生理学的パラメータを査定するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月5日国際公開、WO2009/135070、平成23年8月11日国内公表、特表2011-523363〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成21年4月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成21年3月13日、平成20年5月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年6月21日付けで拒絶理由が通知され、同年10月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年3月11日に拒絶査定不服審判が請求がされたものである。 2 本願発明 この出願の請求項1に係る発明は、平成25年10月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「患者の体外側の近位端および患者の体内側の遠位端を含み、気管支鏡内に嵌合するようになされているカテーテルと、 前記カテーテルの前記遠位端に配設され、肺の1つまたは複数の生理学的パラメータを検出することが可能な少なくとも1つのセンサと、 を備えており、 前記センサは、第1のサーミスタと、第2のサーミスタと、ヒータと、を備えた空気流量センサを更に備え、前記第1のサーミスタが前記ヒータの近位側に取り付けられ、前記第2のサーミスタが前記ヒータの遠位側に取り付けられる、肺の生理学的パラメータを査定するための装置。」 3 刊行物の記載事項 本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2005-514081号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (1)「【0040】 以上に一般的に記載されたように、EPD装置102は、肺診断システム100内に含まれる要素に依存する多様な機能、およびこのシステム100が行うように構成された機能を行う。肺診断システム100を含む可能な要素の説明的実施形態は、以下に示される。 【0041】 (I.アクセスカテーテル) 多数の実施形態において、肺カテーテル120は、アクセスカテーテル10を含む。代表的アクセスカテーテル10が、図4に図解されており、かつカテーテル本体12を含む。このカテーテル本体12は、遠位端14、近位端16、その遠位端付近にある膨張式閉塞バルーン18、およびそこを通る少なくとも1つの管腔を有する。通常、このカテーテルは、少なくとも2つの管腔を有し、かつカテーテル10は、中央管腔20と、内部本体部材24およびこの内部本体部材の周りに同軸上に配置された外部本体部材26によって規定される環状管腔22との両方を含む。この環状管腔22は、近位ハブ31のポート30に開口し、かつこの環状管腔22は、バルーン18の膨張を提供する。この中央管腔20は、ハブ31のポート36に開口し、かつこの環状管腔22は、ガイドワイヤを介した任意の導入、吸引、第2カテーテル(例えば、密封カテーテル、測定カテーテル等)の導入を含む、複数の機能を提供する。」 (2)「【0043】 アクセスカテーテル10の寸法および材料は、肺気管支を通り、必要に応じてガイドワイヤを越え、かつ/または第1気管チューブ構造を通り、かつ/または気管支鏡の作業チャネル内部で、気管内導入および管腔内前進を可能にするように選択される。適当な材料は、特に内部管状部材24に関して、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、PTFE、PEEK等を含む。閉塞バルーンを含む外側部材は、ポリウレタン、低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、ラテックス等のような、弾性材料から作られ得る。必要に応じて、膨張式バルーンに近接した外側管状部材26の部分は、それらが、バルーンの加圧で拡張しないように、厚くされかつ/または強化され得る。アクセスカテーテル10の代表的寸法は、その用途によって決まる。多目的アクセスカテーテル10は、多数の手順のために適切に大きさを決められた中央管腔20、主要管腔32、第1管腔42または類似するこのような管腔のような、作業管腔を有するべきである。カテーテル10が、機能的残気量テストまたは圧力対容量曲線の生成のような手順に使用されるのであれば、約45?80cmのカテーテル10の長さを想定すると、この作業管腔は内径約1.5?3.5mmであるべきである。しかしながら他の状況において、この作業管腔は、より小さくても良い。」 (3)「【0047】 さらに、アクセスカテーテル10は、肺機能に関する多様な変数を測定するために、1つまたはそれ以上のセンサを含み得る。このようなセンサは、代表的にはカテーテル10の遠位端14付近に位置付けられるが、しかしながらそれらは、カテーテル本体12の長さに沿ったいかなる位置でも位置付けられ得る。個別のセンサタイプは、以下に記載される各タイプの測定に関係して記載される。 【0048】 (I.肺力学ユニット) いくつかの実施形態において、肺診断システム100の測定構成要素104は、図8に示されるように肺力学ユニット200を含む。明確にするために、肺力学ユニット200は、別個の取り付け可能なユニットとして図解されるが、しかしながらこのユニット200は、EPD装置102の内部にあり得ることが認識され得る。肺力学ユニット200は、肺LNGの区画154の肺力学に関する多数の変数を測定するために使用される。 【0049】 例えば、肺力学ユニット200は、肺区画154の圧力データおよび容量データを生成する機構202を含み得る。このようなデータの生成は、肺区画154をゆっくり膨張させ、かつ送出容量およびリアルタイム圧力を測定することによって、達成される。膨張プロセスは、圧力読み取りに関するいかなるシステム抵抗の影響も最小限に抑えるために、ゆっくり行われる。膨張媒体は、EPD装置102に取り外し可能に取り付けられたアクセスカテーテル10を通して、区画154に送出される。この場合に、カテーテル10の遠位端14は、測定されるべき区画154に通じる肺通路に挿入され、かつバルーン18が、この通路を閉塞するために膨張される。このようにして、あらゆる膨張媒体は、区画154に送出され、かつ肺の他の領域に流出し得ない。 【0050】 圧力は、圧力センサ204によって測定され、かつ容量は流れセンサ206による測定から導かれる。上記のように、センサ204、206は、カテーテル10の遠位端14付近、またはEPD装置102および/もしくは肺力学ユニット200内を含む他の位置に、配置され得る。多数の異なるタイプの圧力センサ204が図9A?9Dに示される。図9Aを参照すると、圧力センサ204の1つの実施形態は、閉塞バルーン18に対して遠位にある、アクセスカテーテル10の遠位端14に配置された、第2カフ210を含む。図9Bに示される別の実施形態は、遠位端14の壁に埋め込まれたホイートストーンブリッジ、マイクロベロー圧力変換器、または光ファイバ212を含む。図9Cの圧力センサ204の実施形態は、送信要素214および受信要素216を有する超音波または光ファイバ圧力変換器を含む。また図9Dに示される実施形態は、カテーテル10内のチャネル219から突き出ているベローまたはホイートストーンブリッジ218を含む。」 以上の記載事項(1)?(3)から、刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。 「遠位端14、近位端16を有するアクセスカテーテル10は、気管支鏡の作業チャネル内部で、気管内導入および管腔内前進を可能にするようにされ、肺機能に関する多様な変数を測定するために、1つまたはそれ以上のセンサが、その遠位端付近に位置付けられ、 EPD装置102に取り外し可能に取り付けられたアクセスカテーテル10の遠位端14は、測定されるべき区画154に通じる肺通路に挿入され、アクセスカテーテル10の遠位端14付近に肺区画154の容量データを生成するために送出容量を測定する流れセンサ206が配置される、肺診断システム100。」(以下、「引用発明」という。) 4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「アクセスカテーテル10」は、「EPD装置102に取り外し可能に取り付けられ」るのであるから、その「近位端16」が患者の体外側になることは明らかである。 したがって、引用発明の「近位端16」および「測定されるべき区画154に通じる肺通路に挿入され」る「遠位端14」を含み、「気管支鏡の作業チャネル内部で、気管内導入および管腔内前進を可能にするようにされ」ている「アクセスカテーテル10」は、本願発明の「患者の体外側の近位端および患者の体内側の遠位端を含み、気管支鏡内に嵌合するようになされているカテーテル」に相当する。 (2)引用発明の「その遠位端付近に位置付けられ、」「肺機能に関する多様な変数を測定する」「1つまたはそれ以上のセンサ」が、本願発明の「前記カテーテルの前記遠位端に配設され、肺の1つまたは複数の生理学的パラメータを検出することが可能な少なくとも1つのセンサ」に相当する。 (3)引用発明の「流れセンサ206」は「肺区画154の容量データを生成するために送出容量を測定する」ものであるから、本願発明の「空気流量センサ」に相当するといえる。 したがって、引用発明の「アクセスカテーテル10」「の遠位端付近に位置付けられ、」「肺機能に関する多様な変数を測定する」「1つまたはそれ以上のセンサ」を備え、「アクセスカテーテル10の遠位端14付近に」「配置される」「流れセンサ206」を備えることと、本願発明の「前記センサは、第1のサーミスタと、第2のサーミスタと、ヒータと、を備えた空気流量センサを更に備え、前記第1のサーミスタが前記ヒータの近位側に取り付けられ、前記第2のサーミスタが前記ヒータの遠位側に取り付けられる」こととは、「前記センサは、空気流量センサを更に備え」る点で共通する。 (4)引用発明の「肺機能に関する多様な変数を測定する」「肺診断システム100」は、本願発明の「肺の生理学的パラメータを査定するための装置」に相当する。 してみると、本願発明と引用発明とは 「患者の体外側の近位端および患者の体内側の遠位端を含み、気管支鏡内に嵌合するようになされているカテーテルと、 前記カテーテルの前記遠位端に配設され、肺の1つまたは複数の生理学的パラメータを検出することが可能な少なくとも1つのセンサと、 を備えており、 前記センサは、空気流量センサを更に備える、肺の生理学的パラメータを査定するための装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 空気流量センサが、本願発明では「第1のサーミスタと、第2のサーミスタと、ヒータと、を備え」、「前記第1のサーミスタが前記ヒータの近位側に取り付けられ、前記第2のサーミスタが前記ヒータの遠位側に取り付けられる」ものであるのに対し、引用発明ではその具体的構成が明らかでない点。 5 判断 (相違点について) 第1のサーミスタと、第2のサーミスタと、ヒータと、を備え、前記第1のサーミスタが前記ヒータの上流側に取り付けられ、前記第2のサーミスタが前記ヒータの下流側に取り付けられる流量センサは、例えば、本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-18304号公報(「【0023】流量センサ手段24は…例えばミクロスィッチからミクロブリッジの商標名で市販されている質量空気流量集積回路チップセンサのような少なくとも1つの小型の熱ブリッジ型直線質量流量センサ74よりなる…。ブリッジ型流量センサは好ましくはヒータ要素76と、サーミスタのような第1および第2ブリッジ型感温要素78、80とを備えており…ヒータ要素の上流にある第1感温要素78は空気流により冷却され、ヒータ要素の下流にある第2感温要素80は空気流により移送されるヒータ要素76からの熱により加熱される。温度変化は両要素に実質的に均等に影響し、かくして、これらの要素のブリッジ構成は感温ブリッジ要素間の温度差に本質的に感度が良い。かくして、感温要素78、80のブリッジ構成は質量空気流量に線状に比例する温度補償出力DCアナログ信号を供給する。」)に記載されているように周知技術であり、空気流量センサとして一般的に用いられるものである。 なお、この周知技術の周知性について、必要であれば、特開平3-134519号公報(第1図のヒータ2、第1のサーミスタ3、第2のサーミスタ4に関する記載参照。)、特開平5-93639号公報(上流側の温度検出部11、ヒータ部9、下流側温度検出部12に関する記載参照。)、特開平4-109120号公報(第1図の熱源2、温度感知素子4、5に関する記載参照。)、特開2004-93180号公報(図5のヒータ素子Rh、温度検出素子Ru、Rdに関する記載参照。)を参照されたい。 そして、サーミスタ及びヒータを備えたセンサを人体内の細管内に位置付けることが、例えば、特公平4-34408号公報(第7欄第31行?第8欄18行)に記載されているように一般によく知られていることに鑑みれば、引用発明の速度センサとして、上記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成の如くすることは、当業者が容易になし得たというべきである。 (効果について) 本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。 6 むすび したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-15 |
結審通知日 | 2015-04-20 |
審決日 | 2015-05-07 |
出願番号 | 特願2011-507665(P2011-507665) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 湯本 照基 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 藤田 年彦 |
発明の名称 | 肺の生理学的パラメータを査定するための装置 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 渡邊 隆 |