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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1305941
審判番号 不服2014-9202  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-19 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2009-206876「携帯電話機および暗証情報識別方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開、特開2011- 59850〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,
平成21年9月8日を出願日とする出願であって,
平成24年8月3日に審査請求がなされ,
平成25年7月31日付けで拒絶理由通知(同年8月13日発送)がなされ,
同年10月15日付けで意見書が提出されるとともに,
同日付けで手続補正書が提出され,
同年10月30日付けで拒絶理由通知(最後)(同年11月12日発送)がなされたが出願人からの応答はなく,
平成26年3月4日付けで,上記平成25年10月30日付けの拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶査定(平成26年3月18日謄本発送・送達)がなされたものである。

本件審判請求は,上記拒絶査定を不服とし,
平成26年5月19日付けで請求されたものであり,
同日付けで手続補正書が提出され,
同年6月23日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされたものである。


第2 平成26年5月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成26年5月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

平成26年5月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成21年9月8日付けの特許願とともに提出された特許請求の範囲の請求項2,4及び平成25年10月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1,3の記載

「 【請求項1】
暗証情報により入力の受け付けを制限する携帯電話機において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証手段と、
入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出手段と、
この不一致数検出手段が検出した不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較手段と、
この不一致数比較手段による不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数部と、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御手段と、
前記暗証情報の入力が可能な残りの回数が表示される表示部と
を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
請求項1記載の携帯電話機において、
前記暗証情報認証手段は、前記不一致数比較手段による不一致数が1であることを前記入力可能回数減数部が検出すると、入力ミスがあったことを使用者に認識させるメッセージを前記使用者に識別可能に出力する
ことを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
暗証情報により携帯電話機の入力の受け付けを制限する暗証情報識別方法において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証ステップと、
入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出ステップと、
検出された不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較ステップと、
不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数ステップと、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御ステップと、
暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する表示ステップと
を少なくとも備えることを特徴とする暗証情報識別方法。
【請求項4】
請求項3記載の暗証情報識別方法において、
前記不一致数が1であることが検出すると、入力ミスがあったことを使用者に認識させるメッセージを前記使用者に識別可能に出力するステップを備えることを特徴とする暗証情報識別方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を,

「 【請求項1】
暗証情報により入力の受け付けを制限する携帯電話機において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証手段と、
入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出手段と、
この不一致数検出手段が検出した不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較手段と、
この不一致数比較手段による不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数部と、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御手段と、
前記暗証情報の入力が可能な残りの回数が表示される表示部と
を備え、
前記暗証情報認証手段は、前記表示部に前記暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する
ことを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】
請求項1記載の携帯電話機において、
前記暗証情報認証手段は、前記不一致数比較手段による不一致数が1であることを前記入力可能回数減数部が検出すると、入力ミスがあったことを使用者に認識させるメッセージを前記使用者に識別可能に出力する
ことを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】
暗証情報により携帯電話機の入力の受け付けを制限する暗証情報識別方法において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証ステップと、
入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出ステップと、
検出された不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較ステップと、
不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数ステップと、
暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する表示ステップと、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御ステップと
を少なくとも備えることを特徴とする暗証情報識別方法。
【請求項4】
請求項3記載の暗証情報識別方法において、
前記不一致数が1であることが検出すると、入力ミスがあったことを使用者に認識させるメッセージを前記使用者に識別可能に出力するステップを備えることを特徴とする暗証情報識別方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお,下線は,補正事項を示すものとして,出願人が付与したものである。)

に補正することを含むものである。

そして,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。また,特許法第17条の2第4項の規定に適合していることも明らかである。

2.補正の目的要件

次に,本件補正が,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か,すなわち,本件補正が,特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る),誤記の訂正,或いは,明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて,以下に検討する。

(1)補正後の請求項1は,その記載からして,次の補正事項〈A〉を含んでいる。

補正事項〈A〉
「前記暗証情報認証手段は、前記表示部に前記暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する」

補正前の請求項1が,発明特定事項として,「暗証情報認証手段」及び「表示部」を備えている点に着目し,補正事項〈A〉について,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると仮定する。
補正前の請求項1には,「前記暗証情報の入力が可能な残りの回数が表示される表示部」を備えることが記載されており,補正事項〈A〉はその表示部における表示処理の動作主体が「暗証情報認証手段」であることを限定する補正であり,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。

したがって,本件補正後の請求項1についてする補正は,請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって,その補正前の当該補正項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下,「限定的減縮」という。),すなわち,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものである。

(2)次に,補正後の請求項3の補正事項の検討を行う。
補正事項を含む部分について,補正前の請求項3を次のように記載すると,
[補正前](〈a〉?〈d〉は,参考までに当審で付与したものである。)
「〈a〉検出された不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較ステップと、
〈b〉不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数ステップと、
〈c〉前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御ステップと、
〈d〉暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する表示ステップと」
を備えるものであるのに対して,補正後の請求項3では,
[補正後](〈a〉?〈d〉は,参考までに当審で付与したものである。)
「〈a〉検出された不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較ステップと、
〈b〉不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数ステップと、
〈d〉暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する表示ステップと、
〈c〉前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御ステップと」
を備えるものとなっており,請求項3に係る「暗証情報識別方法」において,実施されるステップの順番は異なるものの,それぞれの処理内容は変更が無いものであることから,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではなく,限定的減縮と認められ,特許法第17条の2第5項第2号に掲げられる事項を目的とするものである。

したがって,本件補正は,補正の目的要件を満たすものである。

3.独立特許要件

以上のように,本件補正は限定的減縮を目的とするので,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか),以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,前記「1.補正の内容」において,補正後の請求項1として引用した,次のとおりのものである。(再掲する。)

「暗証情報により入力の受け付けを制限する携帯電話機において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証手段と、
入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出手段と、
この不一致数検出手段が検出した不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較手段と、
この不一致数比較手段による不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数部と、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御手段と、
前記暗証情報の入力が可能な残りの回数が表示される表示部と
を備え、
前記暗証情報認証手段は、前記表示部に前記暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する
ことを特徴とする携帯電話機。」

(2)引用文献等に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(2-1)引用文献1
本願の出願日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年10月30日付けの拒絶理由通知において引用された文献である,特開2008-227831号公報(平成20年9月25日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0013】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る携帯電話端末の構成を表したブロック図である。図1を参照すると、表示部11と、制御部12と、メモリ13と、操作部14と、無線部15とを備えた携帯電話端末の構成が示されている。
【0014】
表示部11は、液晶表示装置等の表示装置によって構成され、操作部14を介したユーザの操作内容に応じて必要な情報等を表示する。
【0015】
メモリ13は、電気的に書き換え可能な不揮発メモリを含んで構成され、後記する暗証番号131、非表示フラグ132、個人情報133及びセキュリティ解除電話番号134等を記憶する。また、メモリ13には、制御部12に後記する動作を行わせるためのコンピュータプログラムが格納されているものとする。
【0016】
暗証番号131は、後記するセキュリティロック(操作ロック)を解除する際に入力する暗証番号である。非表示フラグ132は、個人情報133の表示/非表示を切り替えるためのフラグであり、ここでは、非表示フラグ132が”1”のとき、個人情報の表示が抑止され、非表示フラグ132が”0”のとき、個人情報の表示が許可されるものとする。個人情報133は、電話帳データ、発着信履歴、スケジュールデータ、送受信電子メール、カメラ画像、録音データ、メモデータ等のユーザによって作成されたデータをいうものとする。セキュリティ解除電話番号134は、非表示フラグ132を”0”にクリアする際に必要となる着信電話番号であり、例えば、携帯端末ユーザの自宅電話番号や家族等の携帯電話番号が設定される。」

B 「【0021】
はじめに、携帯電話端末が、動作設定画面等を用いた所定の操作や、キー入力等が行われていない時間が一定時間以上の経過したこと等により、セキュリティロック(操作ロック)状態に遷移する(ステップ2-1)。
【0022】
セキュリティロック(操作ロック)状態において、携帯電話端末の操作部14の操作が行われると、携帯電話端末は、暗証番号入力画面を表示する(ステップ2-2)。
【0023】
暗証番号入力画面への暗証番号の入力が行われると(ステップ2-3)、携帯電話端末の制御部12は、入力された暗証番号と、メモリ13に記憶してある暗号番号131と比較する(ステップ2-4)。
【0024】
前記比較の結果、入力された暗証番号がメモリ13に記憶されている暗証番号131と一致した場合(ステップ2-4のYes)、携帯電話端末は、正当なユーザであるものと判定して、セキュリティロックを解除し待受画面に移行する(ステップ2-5、2-6)。
【0025】
一方、入力された暗証番号がメモリ13に記憶されている暗証番号131と一致しなかった場合(ステップ2-4のNo)、不一致回数のカウントが開始される(ステップ2-7のNo、ステップ2-2へ)。
【0026】
入力された暗証番号と、メモリ13に記憶されている暗証番号131との不一致が所定の回数(連続n回、累積してn回)に達すると(ステップ2-7のYes)、携帯電話端末は、メモリ13の非表示フラグ132を”1”に変更し、入力NG表示を表示し(ステップ2-9)、ステップ2-1に戻る。」

ア 引用文献1の記載事項

ここで,上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「携帯電話端末」及び「暗証番号131は、後記するセキュリティロック(操作ロック)を解除する際に入力する暗証番号である。」との記載等から,引用文献1には,「暗証番号を入力して操作ロックを解除する携帯電話端末」について記載されているといえる。

(イ)上記Bの「暗証番号入力画面への暗証番号の入力が行われると(ステップ2-3)、携帯電話端末の制御部12は、入力された暗証番号と、メモリ13に記憶してある暗号番号131と比較する(ステップ2-4)。」との記載等から,引用文献1には,「携帯電話端末の制御部が」,「暗証番号入力画面への暗証番号の入力が行われると,入力された暗証番号とメモリに記憶してある暗証番号と比較する」ことが記載されているといえる。(上記Bにおいて,「暗号番号131」は「暗証番号131」の誤記と認定した。)

(ウ)上記Bの「入力された暗証番号がメモリ13に記憶されている暗証番号131と一致しなかった場合(ステップ2-4のNo)、不一致回数のカウントが開始される(ステップ2-7のNo、ステップ2-2へ)。」との記載等から,上記制御部は,「入力された暗証番号がメモリに記憶されている暗証番号と一致しなかった場合,不一致回数のカウントを開始」することが記載されているといえる。

(エ)上記Bの「入力された暗証番号がメモリ13に記憶されている暗証番号131と一致しなかった場合(ステップ2-4のNo)、不一致回数のカウントが開始される(ステップ2-7のNo、ステップ2-2へ)。」及び「入力された暗証番号と、メモリ13に記憶されている暗証番号131との不一致が所定の回数(連続n回、累積してn回)に達すると(ステップ2-7のYes)、携帯電話端末は、メモリ13の非表示フラグ132を”1”に変更し、入力NG表示を表示し(ステップ2-9)、ステップ2-1に戻る。」との記載等から,「不一致回数のカウントが開始されると,不一致回数を累積し」ているものであり,「不一致回数が所定の回数に達するまで,入力NG表示をせずに,暗証番号の入力を行えるようにし」ていることが読み取れる。

(オ)上記Bの「入力された暗証番号と、メモリ13に記憶されている暗証番号131との不一致が所定の回数(連続n回、累積してn回)に達すると(ステップ2-7のYes)、携帯電話端末は、メモリ13の非表示フラグ132を”1”に変更し、入力NG表示を表示し(ステップ2-9)、ステップ2-1に戻る。」との記載等から,「不一致回数が所定の回数に達すると,入力NG表示をする」ことが記載されている。

引用発明の認定

以上,上記(ア)?(オ)で検討した事項を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「暗証番号を入力して操作ロックを解除する携帯電話端末において,
携帯電話端末の制御部が,
暗証番号入力画面への暗証番号の入力が行われると,入力された暗証番号とメモリに記憶してある暗証番号と比較し,
入力された暗証番号がメモリに記憶されている暗証番号と一致しなかった場合,不一致回数のカウントを開始し,
不一致回数のカウントが開始されると,不一致回数を累積し,
不一致回数が所定の回数に達するまで,入力NG表示をせずに,暗証番号の入力を行えるようにし,
不一致回数が所定の回数に達すると,入力NG表示をするものである
携帯電話端末。」

(2-2)引用文献2

本願の出願日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年10月30日付けの拒絶理由通知において引用された文献である,特開2005-208765号公報(平成17年8月4日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

C 「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の手段を採用している。すなわち、本発明は、 ディジタル機器を利用する際の個人認証に使用され、入力手段から入力されたパスワードを記憶手段に登録されたパスワードと照合して、認証手段が前記入力パスワードの認証を行うパスワード認証方法を前提とし、前記入力パスワードと登録パスワードとが一致していない場合に、前記入力パスワードと登録パスワードとが類似であるか否かを判定する。この判定の結果が類似でない場合には、前記パスワードの入力を入力回数として計数し、パスワードの再入力を待つ。そして、前記入力回数の計数値が予め設定された入力回数閾値よりも大きい場合に、パスワードの入力を禁止する、あるいは、登録パスワードを無効化等の無効動作を行うようにしている。
【0009】
このようにすれば、入力されたパスワードが登録パスワードと類似である場合、このパスワード入力は、上記無効動作を行うために計数される入力回数に含まれない。したがって、使用者が類似パスワードを入力した場合には、上記無効動作が行われるまでの入力回数は減少しない。
【0010】
また、前記手順に代えて、パスワードの入力回数を計数するとともに、前記入力パスワードと登録パスワードとが一致していない場合に、前記入力パスワードと登録パスワードとが類似であるか否かを判定し、この判定の結果が類似である場合に、前記入力回数閾値を増加させる手順を採用しても同様の効果を得ることができる。
【0011】
なお、入力パスワードと登録パスワードの類似を判定する方法としては、『両パスワードにおいて、予め指定した文字数未満の文字が異なる』、『両パスワードにおいて、予め指定した文字位置の文字が一致する』、『予め類似文字群を設定しておき、両パスワードの対応する全ての文字位置において、それぞれの文字が同一の前記類似文字群に属する』、『両パスワードの対応する全ての文字位置において、それぞれの文字の画数が一致する』、『両パスワードの文字数が同一である』、『入力パスワードが予め設定した類似パスワードに一致する』等の条件を満足する場合に類似であると判定する方法を採用することができる。」

(2-3)引用文献3

本願の出願日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年10月30日付けの拒絶理由通知において引用された文献である,特開昭63-237169号公報(昭和63年10月3日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

D 「次に、第1図により、本実施例の要点である、利用者が暗証番号入力時、無意識に入力誤りを犯した場合の処理について説明する。以下の説明では、利用者が暗証番号入力時、4桁の暗証番号のうち、1桁のみの入力を誤った場合を例に挙げて説明する。
第2図に示す支払取引の処理フローにおいて、カード挿入処理32が終了すると、暗証番号入力処理33に移る。暗証番号入力処理33は、第1図におけるSTARTから処理を開始する。
『暗証番号入力せよ』のガイド画面(41)を表示した後、まず、不一致カウンタの内容をクリアする(43)、次いで、暗証番号入力監視タイマをセットし(44)、利用者の入力操作時間を監視する。
入力されたデータが0?9の場合は(45)、ガイド画面の入力表示エリアに入力済みマーク(*等)を表示する(48)。4桁の入力完了を検出する(50)と、手入力暗証番号と磁気カードから読取った暗証番号の突合せチェックを行う(52)。手入力暗証番号と磁気カードから読取った暗証番号とが一致した場合には(55)、処理62および65により有効性コードを“0”に書換えてから、次の金額入力処理34(第2図参照)に移る。
一方、処理55により暗証番号不一致を検出した場合は、更に、処理57により一致している桁の数をチェックする。一致している桁の数が3でない場合は、不一致カウンタを+1だけ更新し(58)、不一致カウンタが規定値(ここでは、3)以下の場合は(59)、分岐(A)を経由して、ガイド画面42により暗証番号の再入力を誘導する。
また、不一致カウンタが規定値、すなわち、3である場合は有効性コードを+1し(58)、更に,処理61により、有効性コードが規定値(ここでは、2)以下か否かをチェックする。2未満であれば、ガイド画面64を表示して、始めからの入力操作を誘導し、有効性コードが2である場合は、ガイド画面63により、当該カードは使用不可である旨を表示して、取引終了へ誘導する。
処理57において、一致している桁の数が3である場合、すなわち、暗証番号4桁のうち3桁までが正しく入力された場合は、利用者を本人とみなし、不一致カウンタを更新せずに、分岐(A)を経由してガイド画面42により、暗証番号の再入力を誘導する。
上記実施例によれば、磁気カード暗証番号と手入力暗証番号とが不一致の場合、更に、同じ桁位置の数値の突合せチェックを行い、一致した桁の数が規定値以上の場合は、操作者を本人とみなして暗証不一致カウンタの更新を行わないため、利用者本人の入力誤りによって磁気カードが無効にされることが防止できる。」(第3頁上右欄第8行?下右欄第18行)

(2-4)引用文献4

本願の出願日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原審の拒絶の査定の理由である上記平成25年10月30日付けの拒絶理由通知において引用された文献である,特開2006-155382号公報(平成18年6月15日出願公開。以下,「引用文献4」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0059】
もし最初に入力した文字が誤りで、かつエラー回数上限値Fが『5』の場合、図6(d)に示すように、パスワード入力フィールドの下に『エラー1回目 残り4回です』と表示する。パスワード入力フィールドには何も表示されない。
【0060】
もし最初に入力した文字が誤りで、2度目に入力した文字が正しくて、3度目に入力した文字が誤りである場合は、図6(e)に示すように、パスワード入力フィールドの下に『エラー2回目 残り3回です』と表示する。パスワード入力フィールドには“*”が一つだけ表示される。
【0061】
エラー回数カウンタの値Eと予め記憶されているエラー回数の上限値Fとが等しい場合(ステップS128でYESの場合)、ステップS151(図5(a))へ進む。
・・・(中略)・・・
【0064】
図5(a)に示すように、ステップS151では、サーバ装置150は、パスワード照合の試行回数の制限値を超えたことを知らせる回数超過エラー画面構成情報157をクライアント装置100へ送信し、逐次照合が利用された旨を知らせるメールを、ユーザIDに対応して登録されているメールアドレスに送信する(ステップS152)。」

(2-5)参考文献1

本願の出願日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,iモードケータイ,P905i 取扱説明書,あんしん設定,NTTDoCoMoグループ(2008年4月30日発行。以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

F 「PIN1コード・PIN2コード
FOMAカードには、PIN1コード、PIN2コードという2つの暗証番号を設定できます。
これらの暗証番号は、ご契約時は「0000」に設定されていますが、お客様ご自身で番号を変更できます。
(P.119参照)
PIN1コードは、第三者による無断使用を防ぐため、FOMAカードをFOMA端末に差し込むたびに、またはFOMA端末の電源を入れるたびに使用者を確認するために入力する4?8桁の番号(コード)です。
PIN1コードを入力することにより、発着信および端末操作が可能となります。
PIN2コードは、積算通話料金リセット、ユーザ証明書利用時や発行申請を行うときなどに使用する4?8桁の暗証番号です。
・新しくFOMA端末を購入されて、現在ご利用中のFOMAカードを差し替えてお使いになる場合は、以前にお客様が設定されたPIN1コード、PIN2コードをご利用ください。」(第118頁右欄第13行?第31行)

G 「

」(第118頁右欄第32行?第45行)

(3)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

(3-1)引用発明の「携帯電話端末」は,本件補正発明の「携帯電話機」に相当し,本願の段落【0002】には,「携帯電話機では、他人の不正使用を防ぐためのロック機能が付いており、暗証番号などの暗証情報による照合でこのロックを解除している。」と記載されていることから,引用発明の「暗証番号」は,本件補正発明の「暗証情報」に含まれるものである。
また,本願の段落【0003】には,「また、この暗証情報による照合は、他人の成りすましによる認証を防ぐなどの保全ため、数回の入力しか許容されないことが多くなっている。例えば、暗証情報の照合が何回か失敗すると、完全にロックを掛けて暗証情報も受け付けなくなるものがある。従って、暗証情報の入力を設定されている回数を超えて間違えると、完全にロックされてしまい、別の手段でロックを解除することになる。」と記載されていることから,引用発明の「暗証番号を入力して操作ロックを解除する」及び「不一致回数が所定の回数に達すると,入力NG表示をする」ことは,本件補正発明の「暗証情報により入力の受け付けを制限する」ことと同義であると解される。

(3-2)次に,引用発明の「制御部」における「暗証番号入力画面への暗証番号の入力が行われると,入力された暗証番号とメモリに記憶してある暗証番号と比較する」処理は,本件補正発明の「入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較する」に相当することから,引用発明の「制御部」は,本件補正発明の「暗証情報認証手段」の機能を備えているものと認められる。

(3-3)そして,引用発明の「不一致回数のカウント」を加算することは「入力可能回数」を減算することと同義であることから,引用発明の「不一致回数のカウント」は「累積(加算)」するのに対して,本件補正発明の「入力可能回数」は「減算」するという違いがあるものの,両者は,ともに,上記(3-2)で検討した「比較」の結果,暗証情報が一致しない場合に,カウントが開始され,累積するものであり,所定の回数に達すれば,暗証情報を入力不可とする点,すなわち「暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御手段」を備えた点で共通する。

(4)よって,本件補正発明は,下記の一致点で引用発明と一致し,下記の相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「暗証情報により入力の受け付けを制限する携帯電話機において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証手段と、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御手段と
を備えたことを特徴とする携帯電話機。」

<相違点1>
本件補正発明では,「入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出手段と、
この不一致数検出手段が検出した不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較手段」と「この不一致数比較手段による不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数部」とを備えるのに対して,引用発明では,暗証番号が不一致の場合に,不一致回数を累積カウントするものである点。

<相違点2>
本件補正発明では,「前記暗証情報認証手段は、前記表示部に前記暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する」のに対して,引用発明ではその点に言及されていない点。

(5)当審の判断

上記相違点について検討する。

(5-1)相違点1について
引用文献2(上記Cの記載参照)及び引用文献3(上記Dの記載参照)に例示される様に,デジタル機器の利用における認証処理において,入力されたパスワード又は暗証番号が完全に一致していない場合でも,その殆どが一致していれば,入力ミスとして計上せずに,再度パスワード又は暗証番号の入力を許容するようなことは,当業者であれば適宜に採用しうる周知慣用技術である。
したがって,引用発明に対して,引用文献2,3として例示する周知慣用技術を採用することは,当業者であれば容易に想到しえたことに過ぎない。

(5-2)相違点2について
引用文献4(上記Eの記載参照)及び参考文献1(上記F及びGの記載参照)には,パスワードやPINコードの入力時に,エラー回数上限値に至るまでの,入力エラーが可能な残り回数を画面に表示することが記載されており,入力エラーが可能な残り回数を画面に表示することも当業者であれば適宜に採用しうる周知慣用技術であるものと認められる。
ここで,引用文献1,4及び参考文献1は,暗証番号やパスワードによって,利用者の本人認証を行うものであり,これらの技術を適宜組み合わせたりすることは,当業者の通常の創作力の発揮に過ぎず,引用文献1の携帯電話端末に対して,引用文献4又は参考文献1として例示する様な周知慣用技術を採用することも,当業者であれば容易に想到しえたことに過ぎない。

(5-3)小結

上記で検討したごとく,相違点1及び相違点2は,引用発明,引用文献2?4及び参考文献1の記載から,当業者が容易に想到しえたことであり,そして,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び当該技術分野の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2?4に記載の及び参考文献1に記載のごとき周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.結び

以上の理由より,本件補正後の請求項1に係る発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第6項の規定により準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 原審査定について

1.本願発明の認定

平成26年5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年10月15日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「暗証情報により入力の受け付けを制限する携帯電話機において、
入力された入力情報と記憶部に記憶されている暗証情報とを比較することで認証を行う暗証情報認証手段と、
入力された入力情報の文字列と前記記憶部に記憶されている前記暗証情報の文字列との間で、一致していない箇所の数を検出計数する不一致数検出手段と、
この不一致数検出手段が検出した不一致数が1を超えていることを判断する不一致数比較手段と、
この不一致数比較手段による不一致数が1を超えていることの検出により暗証情報の入力可能回数を1つ減らす入力可能回数減数部と、
前記暗証情報の入力可能回数が0になるまで暗証情報の入力を受け付ける入力制御手段と、
前記暗証情報の入力が可能な残りの回数が表示される表示部と
を少なくとも備えることを特徴とする携帯電話機。」

2.引用文献等に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献及びその記載事項及び引用発明は,前記「第2 平成26年5月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献等に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は,前記「第2 平成26年5月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本件補正発明から,「前記暗証情報認証手段は、前記表示部に前記暗証情報の入力が可能な残りの回数を表示する」との限定を削除したものである。

そうすると,請求項1記載の発明の構成要件を全て含み,さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2 平成26年5月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献等に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」?「(5)当審の判断」に記載したとおり,引用発明,引用文献2?4に記載の及び参考文献1に記載のごとき周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当該引用発明及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.結び

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-21 
結審通知日 2015-04-28 
審決日 2015-05-11 
出願番号 特願2009-206876(P2009-206876)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 辻本 泰隆
木村 貴俊
発明の名称 携帯電話機および暗証情報識別方法  
代理人 丸山 隆夫  

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