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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B02C
管理番号 1305958
審判番号 不服2014-15926  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-11 
確定日 2015-09-24 
事件の表示 特願2010-262565「二軸型破砕機及び二軸型破砕機の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日出願公開、特開2012-110845〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年11月25日の出願であって、平成25年9月30日付けで拒絶理由が通知され、平成25年11月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成26年5月13日付けで拒絶査定がされ、平成26年8月11日に拒絶査定不服審判が請求がされると同時に手続補正書が提出され、さらに、当審において平成27年4月21日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成27年6月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年6月26日に提出された手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願時に願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸と、この回転軸を正転して刃体を、破砕物を破砕する破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動モータと、この駆動モータに電力を供給する電力供給装置と、前記回転軸を正転させる正転指令及び回転軸を逆転させる逆転指令を前記駆動モータに出力する制御装置とを備え、
前記電力供給装置は、前記回転軸を逆転させたときの回生電流を充電すると共に前記充電した電力を放電可能な充放電部を有しており、
前記制御装置は、前記回転軸の正転時において前記破砕物が詰まることで前記駆動モータが過負荷になった際には、前記逆転指令を出力することで前記回転軸を正転から逆転に切り替え、その後に、前記回転軸を所定の回転させることで前記破砕物の詰まりが解消された場合は、前記逆転指令の出力を停止することで当該回転軸を慣性力で逆転させることを開始すると共に、当該回転軸が慣性力で逆転してから当該回転軸が止まるまでの間に発生する回生電流を前記充電部に充電する充電指令を出力し、前記回転軸の停止後は、当該充電指令を停止すると共に前記回転軸を再び正転すべく駆動モータに前記正転指令を出力することを特徴とする二軸型破砕機。」

3.引用文献
(1)引用文献の記載
本願の出願前に頒布され、当審において平成27年4月21日付けで通知した拒絶理由で引用した刊行物である特開2002-346420号公報(以下、「引用文献」という。)には、「破砕機及び破砕機等に用いる高変動負荷用回転駆動装置」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はごみ処理施設等で使用する破砕機と、破砕機等に用いる高変動負荷用回転駆動装置に関するものであり、複数軸式破砕機の駆動用モータの作動特性に改良を加えることにより、種類や物性、形態等の夫々異なる多種の被破砕物をより少ないエネルギ消費でもって能率よく処理できるようにした破砕機と、破砕機等に用いる高変動負荷用回転駆動装置に関するものである。」(段落【0001】)

(イ)「【0024】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る破砕機の構成を示すブロック図であり、図2は図1のインバータ駆動装置の部分の単線結線図である。図1に於いて、11は交流電源、12はコンバータ装置、13・14はインバータ駆動装置、15は制御装置、16・17はトルク検出器、18・19は駆動用モータ、20・21は回転軸、22・23は破砕刃、24は制御スイッチ、Aは二軸式の破砕機である。
【0025】前記破砕機Aは公知の二軸式破砕機であり、破砕刃22・23を所定のピッチで固設した回転軸20・21が本体ケーシング(図示省略)内に平行に軸支されており、夫々逆方向に回転する両回転軸20・21の上方へ供給された被破砕物が、破砕刃22・23により内方へ引き込まれて破砕され、破砕物は回転軸20・21の下方より本体ケーシングの外方へ排出されて行く。
【0026】また、両回転軸20・21は、制御回路15を介してインバータ駆動装置13・14により夫々別個に矢印方向へ同速又は異なる速度で回転駆動される構成となっており、トルク検出器16・17からの検出信号を制御回路15を介してインバータ駆動装置13・14へ入力することにより、駆動用モータ18・19の回転数や発生トルクが適宜に調整される。
【0027】前記インバータ駆動装置13・14の入力側はコンバータ装置12を介して交流電源11へ接続されており、後述するように何れか一方又は両方の軸動軸20・23に制動力が掛かるような場合には、駆動用モータを発電機に切換えて、所謂回生制動による電力回収を行なう構成となっている。
【0028】前記駆動用モータ18・19には三相誘導電動機が使用されており、本実施形態に於いては、後述するように、通常負荷時に1800RPM?1200RPMの回転を行なう駆動用モータとして、6極の三相誘導電動機を使用している。また、トルク検出器16・17としては、モータの負荷電流検出器を使用している。
【0029】尚、前記図1の実施形態では二本の回転軸20・21を夫々逆方向へ回転駆動させるようにしているが、破砕刃を有する回転軸を3?5本並行に配設し、その内の少なくとも1本(例えば2本)を逆方向へ回転させるようにしてもよい。
【0030】また、前記図1の実施形態では二本の回転軸20・21を夫々逆方向へ回転駆動させるようにしているが、2?3本の回転軸20・21の他に、これと平行に1?3本の破砕刃を有する固定軸を配設して、前記回転軸の全数を同方向へ回転させるか、若しくは回転軸の一部を逆方向へ回転させるようにしてもよい。
【0031】更に、前記図1の実施形態では二本の回転軸20・21を夫々同速度で逆方向へ回転駆動させるようにしているが、後述するように2?5本の各回転軸の駆動速度に夫々差異を設けることも可能である。
【0032】加えて、前記回転軸と平行に設ける固定軸を設ける場合に於いて、後述するように複数本の平行に設けた回転軸の内の何本かを微速運転状態若しくは停止運転状態に保持し、この微速回転又は停止状態の回転軸を前記固定軸の代用とすることも可能である。
【0033】図2は、駆動用モータ18及びインバータ駆動装置13の部分の単線結線図であり、インバータ駆動装置13には公知の速度(周波数)設定入力端子13a、正転入力13b、逆転入力13c、正転寸動入力13d、逆転寸動13e、非常停止入力13f、リセット入力13g等の各入力端子が備えられている。尚、図2に於いて25・26は遮断器、27はフィルタ、28・29は変流器、30・31は電流計、32はサーマル遮断器である。
【0034】前記駆動用モータ18・19は、破砕機Aの駆動中図3に示す如きトルク特性の下で回転数制御をされる。即ち、破砕機Aの定常負荷状態に於いては、インバータ駆動装置13・14を介する周波数制御により、回転数1200RPM(周波数60Hz)から1800RPM(周波数90Hz)の範囲まで運転され、起動からN_(0) =1200RPMまでの間は、(v/f)を一定に保持する所謂定トルク制御(トルク曲線T)により回転数制御が行なわれる。また、回転数がN_(0) =1200RPM?N_(1) =1800RPMの間(定常負荷に於ける運転運動範囲)に於いては、所謂定出力制御が行なわれ、一定の電圧vが印加されることにより駆動用モータ18・19の発生トルクTは低下する。
【0035】本発明では前述の通り6極の誘導電動機を用いているため、駆動用モータ18・19の100%負荷(又は150%負荷)が従前の4極誘導電動機の約150%負荷(又は約230%負荷)に相当することになる。その結果、重負荷時に回転数を低下させることにより、曲線Ta(若しくは曲線Tb・Tc)に沿って所定時間(t=約2sec)内に、約150%負荷まで上昇させることができる。換言すれば、4極電動機の100%負荷(P点)を基準とすれば、6極電動機を用いることにより、重負荷時の発生トルクを4極発電機の約22%負荷(Q点)まで高めることが可能となる。
【0036】図4は、本発明に係る破砕機Aの運転中に負荷変動が発生した場合の駆動用モータのトルク制御特性を示すものである。定常負荷時(正転領域)に於いては、駆動用モータ18・19は速度N_(0) (約1200RPM)?N_(1) (約1800RPM)の間で運転されている。今、この状態から、被破砕物の噛込み等により負荷が増大すると、トルク検出器16・17の検出信号によりモータの回転速度(電源周波数)が自動的に低下され、これによりトルクTがt_(1) 秒の間にT_(0) までに増大される。そして、トルクTをT_(0) まで増大させても被破砕物を破砕できない場合には、更に駆動用モータ18・19の発生トルクTをピーク値T_(1) まで増大させ、一定時間t_(2) の間発生トルクTをピーク値T_(1 )の状態に保持する。
【0037】そして、この時間t_(2) の間に被破砕物が破砕されれば、駆動用モータ18・19の回転速度Nを自動的に増速し、定常回転速度の範囲(N_(0) ?N_(1) )に戻して、被破砕物の破砕が継続して行なわれる。
【0038】逆に、発生トルクTをピーク値T_(1) とした状態下で、時間t_(2) が経過しても被破砕物の破砕が出来ない場合には、自動的に駆動用モータ18・19への給電を止め、破砕機Aの作動を停止させる。そして、破砕機Aが停止すると、駆動用モータ18・19の両方を夫々逆回転させ、短時間t_(3) の間に駆動用モータの逆方向への発生トルクTをトルク値T_(2)まで増大させることにより、被破砕物の噛込みをほぐす。
【0039】尚、前記1回のほぐし作用で被破砕物の噛込みをほぐすことが出来ない場合、即ち短時間t_(3) が経過しても発生トルクTがトルク値T_(2) の近傍にある場合には、前記と同様に時間t_(3) のほぐし作用を複数回繰り返し行なわれる。また、この時の逆方向への発生トルクT_(2) はの大きさは、T_(2) >T_(1) となるように選定される。これにより、より強力なトルクでもってほぐし作動が行なわれる。更に、ほぐし作動中は被破砕物の供給を停止させることは勿論である。
【0040】前記駆動用モータ18・19を逆回転させるほぐし作動により被破砕物の噛込みが解消された場合には、駆動用モータ18・19を停止させ、その後両者18・19を正方向へ回転させる。
【0041】前記図4に基づく作動説明では、駆動用モータ18・19を同速で夫々逆方向へ回転させるものとしている。しかし、両駆動用モータ18・19の回転数の比率を可変としてもよいことは勿論であり、消費エネルギの少ない高効率破砕を達成するため、被破砕物の物性に応じて前記両駆動用モータ18・19の回転数比率は、適宜に調整される。
【0042】また、何れか一方の駆動用モータの回転数を微速状態に設定し、当該駆動用モータに連結されている破砕刃を所謂固定刃の代用とすることにより、固定刃と回転刃の組合せによる破砕操作を行なうことも可能である。
【0043】更に、前記各駆動用モータ18・19を所定の回転数比率で運転する場合には、両者の回転数の基準を交互に切換えすることにより回転刃22・23の片減りを防ぎ、破砕刃22・23の補修費の削減を図るようにしてもよい。
【0044】加えて、トルク検出器16・17により検出された検出信号から各駆動用モータ18・19の分担負荷を算定し、この算定した負担分担に応じて両モータ18・19の回転数を制御することにより、両駆動用モータ18・19にかかる破砕負荷を容易に均等化することができ、結果として破砕機Aの噛込みによる停止を防止して、効率の良い破砕が行なえる。
【0045】前記各駆動用モータ18・19を所定の回転数比率で回転させる際に、低速回転側の駆動用モータが制動作用を行なう場合には、当該低速回転側の駆動用モータを誘導発電機として作動させ、コンバータ装置12を介して回生電力を電源側へ返還することも可能である。
【0046】また、前記コンバータ装置12を正弦波コンバータ装置とすることにより、破砕機Aを高効率及び高力率下で運転することが可能となるうえ、高周波発生のより少ない装置とすることができる。
【0047】加えて、インバータ駆動方式を採用することにより、破砕機Aの起動時に於ける起動電流の急竣な増加を皆無にすることができ、電源系統に及ぼす悪影響を有効に防止することが出来る。
【0048】尚、前記図2に於いては、駆動用モータ18及びインバータ駆動装置13等から成る回転駆動装置によって破砕機を回転駆動するようにしているが、当該回転駆動装置は、破砕機以外の混錬機や成形機、ディスポーザー等の負荷変動の激しい高変動負荷の回転駆動装置として用いることが出来る。
【0049】
【発明の効果】本発明に於いては、破砕機本体を少なくとも2本の平行に配設した破砕刃付回転軸を夫々単独の駆動用モータにより、インバータ駆動装置を介して夫々逆方向へ回転させると共に、前記各駆動用モータの発生トルクを検出してインバータ駆動装置の制御装置へ入力し、発生トルクが設定値T_(0) を超えると駆動用モータを減速して発生トルクをピーク設定値T_(1) まで上昇させ、設定時間t_(2) 内に発生トルクが前記ピーク設定値T_(1) から減少すると駆動用モータの運転を定常運転状態に戻し、また、ピーク設定値T_(1) の状態が一定時間t_(2) の間だ継続すると各駆動用モータを停止させ、発生トルクT_(2) でもって各駆動用モータを短時間逆方向へ回転駆動させる構成としている。その結果、万一、両回転破砕刃の間に被破砕物の噛込みが発生し出しても、破砕トルクの増大により前記被破砕物の噛込みが自動的に解消されることになり、詰まり事故の発生頻度が大幅に減少することにより効率のよい破砕処理が行なえる。また、万一噛込みが生じても、両回転破砕刃を設定トルクT_(2) でもって短時間の間だ逆方向へ回転させることにより、被破砕物の噛込みが自動的にほぐされることになり、人手に頼よることなく自動的に、破砕機の運転を定常運転へ復帰させることができる。更に、トルク検出器からの検出信号により制御装置及びインバータ駆動装置を介して各駆動用モータの駆動制御を行なうことにより、より少ない破砕エネルギの消費でもって効率の良い被破砕物の破砕処理を行なうことが可能となる。特に、本発明に係る破砕機は、プラスチックシート類の破砕処理に於いて、作業能率や省エネルギ等の点で従前の破砕機には見られない優れた実用的効用を奏するものである。加えて、本発明に係る回転駆動装置は、これを混錬機や成形機等の高変動負荷へ適用した場合には、上記破砕機へ適用した場合と同様に、より少ないエネルギー消費でもって、高変動負荷装置を高能率で回転駆動させることができる。本発明は、上述の通り優れた実用的効用を奏するものである。」(段落【0024】ないし及び【0049】)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)及び(イ)並びに図1ないし図4の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。

(カ)上記(1)(イ)の段落【0025】に、破砕刃22,23が回転軸20,21に所定ピッチで固設される旨が記載されているから、これを上記(1)(ア)及び(イ)並びに図1の記載とあわせてみると、引用文献には、複数枚の破砕刃22,23が設けられた一対の回転軸20,21を有する二軸式破砕機が記載されていることが分かる。

(キ)上記(1)(イ)の段落【0026】には、両回転軸20,21が夫々別個に矢印方向へ回転駆動させる旨、段落【0037】には、被破砕物の破砕が出来ない場合に、駆動用モータ18,19の両方を夫々逆回転させる旨が記載されているから、これを上記(1)(イ)並びに図1及び図4の記載とあわせてみると、引用文献に記載された二軸式破砕機は、回転軸20,21を正転して破砕刃22,23を、被破砕物を破砕する破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動用モータ18,19と、この駆動用モータ18,19に電力を供給する交流電源11、コンバータ装置12及びインバータ駆動装置13,14とを備えるものであることが分かる。

(ク)図2において、制御装置15から、インバータ駆動装置13の正転入力13b及び逆転入力13cの各入力端子へと結線されていることが看取でき、各入力端子に信号が入力されることが分かるから、該正転入力13b及び逆転入力13cの各入力端子に入力される信号をそれぞれ「正転信号」及び「逆転信号」と呼ぶこととすれば、上記(1)(イ)及び図2から、引用文献に記載された二軸式破砕機は、回転軸を正転させる正転信号及び回転軸を逆転させる逆転信号をインバータ駆動装置13,14を介して駆動用モータ18,19に出力する制御装置15を備えるものであることが分かる。

(ケ)上記(1)(イ)並びに図1ないし図4の記載から、引用文献に記載された二軸式破砕機において、制御装置15は、定常負荷時(正転領域)において被破砕物の噛込み等により負荷が増大すると、トルクを増大し、それでも被破砕物の破砕が出来ない場合には、駆動用モータ18,19の両方を夫々逆回転させ、逆回転によるほぐし作動により被破砕物の噛込みが解消された場合には、駆動用モータ18,19を停止させ、その後駆動用モータ18,19を正方向へ回転させるものであることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし図4の記載から、引用文献には、次の発明が記載されているといえる。

「複数枚の破砕刃22,23が設けられた一対の回転軸20,21と、この回転軸20,21を正転して破砕刃22,23を、被破砕物を破砕する破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動用モータ18,19と、この駆動用モータ18,19に電力を供給する交流電源11、コンバータ装置12及びインバータ駆動装置13,14と、回転軸を正転させる正転信号及び回転軸を逆転させる逆転信号をインバータ駆動装置13,14を介して駆動用モータ18,19に出力する制御装置15を備え、
制御装置15は、定常負荷時(正転領域)において被破砕物の噛込み等により負荷が増大すると、トルクを増大し、それでも被破砕物の破砕が出来ない場合には、駆動用モータ18,19の両方を夫々逆回転させ、逆回転によるほぐし作動により被破砕物の噛込みが解消された場合には、駆動用モータ18,19を停止させ、その後駆動用モータ18,19を正方向へ回転させるものである二軸式破砕機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「破砕刃22,23」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「刃体」に相当し、以下同様に、
「回転軸20,21」は「回転軸」に、「被破砕物」は「破砕物」に、「駆動用モータ18,19」は「駆動モータ」に、「交流電源11、コンバータ装置12及びインバータ駆動装置13,14」は「電力供給装置」に、「正転信号」は「正転指令」に、「逆転信号」は「逆転指令」に、「制御装置15」は「制御装置」に、「二軸式破砕機」は「二軸型破砕機」に、「インバータ駆動装置13,14を介して駆動用モータ18,19に出力する」は「駆動モータに出力する」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「定常負荷時(正転領域)」は、その技術的意義からみて、本願発明における「回転軸の正転時」に相当し、同様に「被破砕物の噛込み等により負荷が増大する」ことは「破砕物が詰まることで前記駆動モータが過負荷にな」ることに相当するとともに、引用発明において、駆動用モータ18,19を逆回転させる際には制御装置15から逆転信号が出力されることは明らかである。したがって、引用発明において「定常負荷時(正転領域)において前記被破砕物の噛込み等により負荷が増大すると、トルクを増大し、それでも被破砕物の破砕が出来ない場合には、駆動用モータ18,19の両方を夫々逆回転させ」ることは、本願発明において「回転軸の正転時において破砕物が詰まることで前記駆動モータが過負荷になった際には、逆転指令を出力することで回転軸を正転から逆転に切り替え」ることに相当する。
また、引用発明における「逆回転によるほぐし作動により被破砕物の噛込みが解消された場合」は、その技術的意義からみて、本願発明における「その後に、前記回転軸を所定の回転させることで前記破砕物の詰まりが解消された場合」に相当し、同様に「駆動用モータ18,19を停止させ」ることは「逆転指令の出力を停止すること」に、「その後駆動用モータ18,19を正方向へ回転させる」ことは「回転軸の停止後は」「回転軸を再び正転すべく駆動モータに正転指令を出力すること」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明において「駆動用モータ18,19を停止させ」たときに、慣性力により回転軸20,21が逆転する現象が起きることは明らかであるから、「回転軸を所定の回転させることで破砕物の詰まりが解消された場合は、逆転指令の出力を停止することで回転軸を慣性力で逆転させることを開始し、回転軸の停止後は、回転軸を再び正転すべく駆動モータに正転指令を出力する」という限りにおいて、引用発明において「逆回転によるほぐし作動により被破砕物の噛込みが解消された場合には、駆動用モータ18,19を停止させ、その後駆動用モータ18,19を正方向へ回転させる」ことは、本願発明において「回転軸を所定の回転させることで破砕物の詰まりが解消された場合は、逆転指令の出力を停止することで回転軸を慣性力で逆転させることを開始すると共に、当該回転軸が慣性力で逆転してから当該回転軸が止まるまでの間に発生する回生電流を充電部に充電する充電指令を出力し、回転軸の停止後は、当該充電指令を停止すると共に回転軸を再び正転すべく駆動モータに正転指令を出力すること」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「 複数枚の刃体が設けられた一対の回転軸と、この回転軸を正転して刃体を、破砕物を破砕する破砕方向に回転させると共に逆転して破砕方向とは逆方向に回転させる駆動モータと、この駆動モータに電力を供給する電力供給装置と、回転軸を正転させる正転指令及び回転軸を逆転させる逆転指令を駆動モータに出力する制御装置とを備え、
制御装置は、回転軸の正転時において破砕物が詰まることで駆動モータが過負荷になった際には、逆転指令を出力することで回転軸を正転から逆転に切り替え、その後に、回転軸を所定の回転させることで破砕物の詰まりが解消された場合は、逆転指令の出力を停止することで回転軸を慣性力で逆転させることを開始し、回転軸の停止後は、回転軸を再び正転すべく駆動モータに正転指令を出力する二軸型破砕機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(a)「回転軸を所定の回転させることで破砕物の詰まりが解消された場合は、逆転指令の出力を停止することで回転軸を慣性力で逆転させることを開始し、回転軸の停止後は、回転軸を再び正転すべく駆動モータに正転指令を出力する」ことに関し、本願発明においては、「回転軸を所定の回転させることで破砕物の詰まりが解消された場合は、逆転指令の出力を停止することで回転軸を慣性力で逆転させることを開始すると共に、当該回転軸が慣性力で逆転してから当該回転軸が止まるまでの間に発生する回生電流を充電部に充電する充電指令を出力し、回転軸の停止後は、当該充電指令を停止すると共に回転軸を再び正転すべく駆動モータに正転指令を出力する」のに対し、引用発明においては、「逆回転によるほぐし作動により被破砕物の噛込みが解消された場合には、駆動用モータ18,19を停止させ、その後駆動用モータ18,19を正方向へ回転させる」点(以下、「相違点」という。)。

5.判断
上記相違点について検討する。
本願発明における「交流電源11、コンバータ装置12及びインバータ駆動装置13,14」及び引用発明における「電力供給装置」は、いずれも電動機の電源装置であるといえるところ、「電動機の電源装置において、回生電流を充電すると共に充電した電力を放電可能な充放電部を設け、電動機を駆動する電力の供給を停止した後に、負荷の慣性力で回転しているときに発生する回生電流を充電部に充電すること」は、本願の出願前において既に周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2000-236679号公報の段落【0001】及び【0010】ないし【0015】並びに図1及び2、特開2003-2089号公報の段落【0002】、【0016】及び【0041】並びに図3、特開2007-178639号公報の段落【0055】及び図7等参照。)である。
そして引用発明は、エネルギー消費を減らすことを目的とするものであり(引用文献の段落【0001】等参照。)、回転軸20,23に制動力が掛かるような場合には、駆動用モータを発電機に切換えて、所謂回生制動による電力回収を行うものであり(引用文献の段落【0027】等参照)、本願発明において、回生電流の充電を回転軸を逆転させたときだけに特定した点に格別な作用効果は認められないから、引用発明に上記周知技術を適用し、逆転時の慣性力を利用して回生電流を充電することにより、上記相違点に係る本願の請求項1に係る発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-24 
結審通知日 2015-07-28 
審決日 2015-08-11 
出願番号 特願2010-262565(P2010-262565)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
中村 達之
発明の名称 二軸型破砕機及び二軸型破砕機の制御方法  
代理人 安田 敏雄  

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