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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1306056
審判番号 不服2014-10367  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-03 
確定日 2015-10-01 
事件の表示 特願2009-298968「骨移植用縫合具」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日出願公開、特開2011-136092〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成21年12月28日の特許出願であって、平成26年3月3日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成26年6月3日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲及び明細書について補正がなされた。その後、平成27年5月26日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年7月24日に意見書とともに手続補正書が提出され、特許請求の範囲及び明細書についてさらに補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、上記平成27年7月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
生体親和性材料からなる複数本の縫合糸と、
該複数本の縫合糸に設けられ、該縫合糸より高い剛性を有し、かつ、徒手によって、または、自家骨および骨補填材の貫通孔の形状に沿って湾曲可能な可撓性を有する針状の単一の硬質部とを備える骨移植用縫合具。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成27年5月26日付けの拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。

刊行物1:都築 暢之他,「頸椎 Tension-band laminoplasty」,
東日本臨整会誌,東日本臨床整形外科学会,第3巻/第3号,
1991年10月,第654?663ページ
刊行物2:特表2003-505137号公報

1 刊行物1
(1)刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「頸椎 Tension-band laminoplasty」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
(ア)「われわれの術式は頸椎後方支持組織である棘突起・靱帯complexに侵襲を加えることなくすべて温存し,同時にそれをtension-bandとして利用しつつ椎弓を拡大形成する方法で,頸椎Tension-band laminoplasty(またはTension-band式頸椎椎弓拡大形成術とよんでいる(図1-a,b).
椎弓拡大法に関し2術式を試みた.1)拡大範囲の全椎弓を側面拡大する方法(側方拡大法),2)両端部椎弓は側方拡大し,中間部(骨髄が圧迫されている範囲)の椎弓は正中?傍正中拡大する方法(混合拡大法)である(図1-c,d).後者は前者に比し,骨髄除圧を左右ほぼ均等に行うことが可能となる.」(第654ページ右欄下から4行?第655ページ左欄第10行)

(イ)「すなわち,上述の頸椎運動の範囲ではspacerは糸による固定のみで,頸椎前・後屈時のshearing forceに耐え得ることが明らかとなった.」(第656ページ左欄末行?右欄第3行)

(ウ)「B)椎弓拡大法
1) 椎弓側方拡大法(図1-C):拡大範囲の両側椎間間接の内側1/3に外側骨皮質のみを掘削した縦溝を作成,蝶番側は底部の椎弓内板を残す.拡大側は縦溝内部を椎弓-椎間関節移行部の内板に向かってやや斜めに進入し、その底部で内板と黄色靱帯を離断する.・・・(中略)・・・spacerとしては自家腸骨骨片,あるいはceramics(hydroxyapatite)を用いる.後方椎間固定が必要な場合は長spacerを用いる。spacerは糸で周囲骨に縫着する(図4a c).」(第657ページ左欄第2?17行)

(エ)図4及びその説明文





「a.『糸通し小穴』の作り方:椎弓拡大部端から3mm程度の部位に,外板-骨髄腔を通る『糸通し小穴』を穿つ(外板穿孔にはair-drill(★)を,骨髄腔穿孔には1.5mm径キルシュナー鋼線の先端を曲げたもの(☆)を用いる)
b.周囲骨-spacer間の糸の通し方:糸はその先端を外科用アロンアルファで固めたものを用いる(糸先端にアロンアルファを塗って乾かすことを数回くり返すと,糸先端が固くなる)
c.完成図(*モデルは旭光学製hydroxyapatite spacer)」

(オ)上記記載事項(ウ)の「糸」は、「spacer」を「周囲骨に縫着する」ものであるから、「縫合糸」ということができる。

(カ)また、上記記載事項(ウ)の「糸」は、「周囲骨に縫着」し、図4cに示されるように糸締結されて体内に残されるものであるから、生体親和性材料からなるものと認められる。

(キ)上記認定事項(オ)の「縫合糸」は、上記記載事項(エ)にあるように、アロンアルファを塗って乾かして固くした「糸先端」を備え、上記記載事項(ウ)及び図4bcに示されるように、自家腸骨骨片等のspacerを縫合するものであるから、これらをまとめて、「骨移植用縫合具」ということができる。

(2)刊行物1発明
そこで、刊行物1の上記記載事項(ア)ないし(エ)及び上記認定事項(オ)ないし(キ)を図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「刊行物1発明」という。)
「生体親和性材料からなる縫合糸と、
該縫合糸に設けられ、該縫合糸先端に外科用アロンアルファを塗って乾かすことを数回くり返して固くした糸先端とを備える骨移植用縫合具。」

2 刊行物2
(1)刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「縫合システム」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0017】本発明の縫合システムは針の部分で結合された多数の前以て綿撒糸のマットレスを付けた縫合体のデイジー状鎖からなる。図1及び2において、鎖中の針10はそれぞれ、先行技術におけるような1本の糸ではなく、縫合体12、14の2本の糸に取り付けられている。糸12の片方は標準のマットレス付き縫合体中の対の最初のものである。しかし他方は前の隣の対の第2の糸14である。個々の対を一目で識別することができるように、対は交互の色彩、例えば緑もしくは白色をもつ。綿撒糸16は縫合体に縫い通されている。前記のように、プロテーゼの全周が流体密閉状に輪に定着されることを確実にするために、多数の縫合体が必要である。・・・(後略)」


(2)刊行物2事項
刊行物2の上記記載事項(ア)を技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「刊行物2事項」という。)
「針に2本の糸を取り付けた縫合システム」

第4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「縫合糸先端に外科用アロンアルファを塗って乾かすことを数回くり返して固くした糸先端」は、本願発明の「縫合糸より高い剛性を有」する「単一の硬質部」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「生体親和性材料からなる縫合糸と、
該縫合糸に設けられ、縫合糸より高い剛性を有する単一の硬質部とを備える骨移植用縫合具。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。
<相違点1>
本願発明は、複数本の縫合糸と単一の硬質部を備えるのに対し、刊行物1発明は、単一の縫合糸と単一の硬質部を備える点。
<相違点2>
本願発明の単一の硬質部は、徒手によって、または、自家骨および骨補填材の貫通孔の形状に沿って湾曲可能な可撓性を有する針状のものであるのに対し、刊行物1発明の単一の硬質部は、そのような可撓性を有する針状のものであるか明らかでない点。

第5 相違点の検討
1 <相違点1>について
まず、本願発明が「複数本の縫合糸」を有することに対応する明細書の記載としては、「【0022】また、図5に示されるように、複数本(図示する例では2本)の縫合糸2の端部を束ねた状態で接着することにより、複数本の縫合糸2の一端に1つの硬質部3が設けられていてもよい。・・・【0023】また、図5に示されるように、複数本の縫合糸2を備える場合、各縫合糸2の色または直径を互いに異ならせることが好ましい。・・・このようにすることで、貫通孔D,Eに複数本の縫合糸2を通した後に、硬質部3を切除したり縫合糸2を途中位置で切断したりしてそれまで1つにまとめられていた縫合糸2を複数にばらし、各縫合糸2の両端を結ぶ場合に、各縫合糸2を色または太さから容易に識別することができる。」と記載されてはいるが、該記載を参酌しても、「複数本の縫合糸」については、1本の糸を複数本にして全体として強度を持たせること、あるいは、糸の配置の自由度を高めるといった、ごく一般的な技術的意義しか認めることができない。
次に、上記第3の2(2)にて述べたように、刊行物2事項は、「針に2本の糸を取り付けた縫合システム」というものであるところ、このような技術事項は、刊行物2のみならず、米国特許第3762418号公報(Fig1等参照)にも示されるように従来周知の技術事項というべきものである。
そうしてみると、刊行物1発明において、縫合糸に全体として強度あるいは自由度を持たせるという一般的な課題に対処すべく、上記従来周知の技術事項を適用して、単一の硬質部と複数本の縫合糸とからなるように構成して、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。

2 <相違点2>について
刊行物1発明は、単一の硬質部は、自家骨および骨補填材の貫通孔の形状に沿って湾曲可能な可撓性を有する針状のものであるかは明らかでない。しかしながら、一般に骨の貫通孔は必ずしも直線状のものばかりではなく、また、上記第3の1(エ)に示した刊行物1の図4・bには、椎弓外板から骨髄腔を通る屈曲した小孔も記載されていることからして、刊行物1発明も、湾曲した孔にも対応することが求められることは容易に想定し得ることである。そして、その対処としてアロンアルファを塗る区間を多少長くして針状とし湾曲可能な可撓性を付与することは、当業者が通常の創作能力の発揮によりなし得ることである。
よって、刊行物1発明において、単一の硬質部に、自家骨および骨補填材の貫通孔の形状に沿って湾曲可能な可撓性を付与すべく針状として、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

3 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-08-03 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-19 
出願番号 特願2009-298968(P2009-298968)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 毛利 大輔  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 長屋 陽二郎
関谷 一夫
発明の名称 骨移植用縫合具  
代理人 上田 邦生  
代理人 藤田 考晴  
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