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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1306062
審判番号 不服2014-15029  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-31 
確定日 2015-10-01 
事件の表示 特願2012-281987号「空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 2日出願公開、特開2013- 79802号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成20年2月14日に出願した特願2008-33176号の一部を平成23年9月28日に新たな特許出願とした特願2011-212402号の、さらにその一部を平成24年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成25年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年11月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成26年4月25日付けで拒絶査定がされた。これに対して、同年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2. 本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年11月28日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「配管により接続された圧縮機、冷媒流路切換弁、室外熱交換器、減圧装置と、前記減圧装置および室外ファンを制御する室外側制御装置が配置された室外機と、
冷媒回路を構成するように前記室外機と接続配管を介して接続される室内熱交換器と、前記室外側制御装置と室内外連絡ケーブルを介して接続される室内側制御装置と、前記室内側制御装置により制御される室内ファンが配置された室内機と、
前記室内側制御装置に操作信号を送信する外部操作装置と、
前記室内機が部屋の壁面に設置される壁掛けタイプである場合に前記室内機の下部に位置するように設けられ、当該空気調和装置の製造業者が経年劣化を考慮して設定した当該空気調和装置の標準使用期間を表記する表記部と、を備え、
冷媒としてR32もしくは炭化水素系冷媒を用いる空気調和装置。」

3. 引用例
(1) 引用例1
原査定の拒絶理由に引用され、本願のもとの出願の出願日前に頒布された刊行物である特開平5-33993号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。

(1a)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は冷暖房機能を主体とする空気調和装置に関するものである。」

(1b)「【0005】
この発明は、メンテナンス時期の報知並びに装置の経時劣化傾向を報知できる構成の簡素な報知手段を持つ空気調和装置を提供することを目的とする。」

(1c)「【0010】
【作用】請求項1の発明にかかる空気調和装置においては、空気調和装置の累積使用時間の表示により、メンテナンスの時期の経過的報知とともに、装置の経時的劣化傾向の認知を使用者に促しうる。」

(1d) 引用例1に記載された発明の認定
上記記載事項(1a)?(1c)を総合すると、引用例1には、
「装置の経時的劣化傾向の認知を使用者に促しうる表示をする表示部を備えた空気調和装置。」の発明(以下「引用発明」という)が記載されているといえる。

(2) 引用例2
原査定の拒絶理由に引用され、本願のもとの出願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「電気用品の技術上の基準を定める省令第2項の規定に基づく基準 新旧対照表(案),経済産業省商務情報政策局製品安全課,2008年2月10日,[online],[平成25年9月17日検索],インターネット<URL:http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595108014>」(以下「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。

(2a)
「J2000(H20)
経年劣化による注意喚起表示に対する要求事項

扇風機、換気扇、電気冷房機、電気洗濯機(乾燥機能を有するものを除く。)及び電気脱水機(電気洗濯機と一体になっているものに限る。)、テレビジョン受信機(ブラウン管のものに限る。)にあっては、機器本体の見やすい箇所に、明瞭に判読でき、かつ容易に消えない方法で、次に掲げる事項を表示すること。ただし、産業用のものにあっては、この限りではない。

a)製造年
b)設計上の標準使用期間(標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障なく使用することができる標準的な期間として、設計上設定された期間をいう。)
c)『設計上の標準使用期間を超えて使用すると、経年劣化による発火・けが等の事故に至るおそれがある。』旨」

4. 本願発明と引用発明との対比

(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「装置の経時的劣化」とは、本願発明の「経年劣化」に相当することは明らかである。
引用発明の「装置の経時的劣化傾向の認知を使用者に促しうる表示」は、「経時的劣化傾向の認知を使用者に促しうる」ことから「経時的劣化」に関する表示であることは明らかであり、引用発明の「装置の経時的劣化傾向の認知を使用者に促しうる表示をする表示部」と、本願発明の「空気調和装置の製造業者が経年劣化を考慮して設定した空気調和装置の標準使用期間を表記する表記部」とは、「経年劣化に関する表示部」である点で共通する。

(2) 一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「経年劣化に関する表示部を備えた空気調和装置。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

(3) 相違点
ア.相違点1
空気調和装置について、本願発明では、配管により接続された圧縮機、冷媒流路切換弁、室外熱交換器、減圧装置と、前記減圧装置および室外ファンを制御する室外側制御装置が配置された室外機と、冷媒回路を構成するように前記室外機と接続配管を介して接続される室内熱交換器と、室外側制御装置と室内外連絡ケーブルを介して接続される室内側制御装置と、室内側制御装置により制御される室内ファンが配置された室内機と、室内側制御装置に操作信号を送信する外部操作装置と、を備え、室内機が部屋の壁面に設置される壁掛けタイプである場合であるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

イ.相違点2
経年劣化に関する表示部について、本願発明では、室内機の下部に位置するように設けられ、空気調和装置の製造業者が経年劣化を考慮して設定した空気調和装置の標準使用期間を表記するのに対し、引用発明では、装置の経時的劣化傾向の認知を使用者に促しうる表示をする点。

ウ.相違点3
空気調和装置について、本願発明では、冷媒としてR32もしくは炭化水素系冷媒を用いるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。


5. 当審の判断
(1) 上記の各相違点について検討する。

ア.相違点1について
空気調和装置において、「配管により接続された圧縮機、冷媒流路切換弁、室外熱交換器、減圧装置と、前記減圧装置および室外ファンを制御する室外側制御装置が配置された室外機と、冷媒回路を構成するように前記室外機と接続配管を介して接続される室内熱交換器と、室外側制御装置と室内外連絡ケーブルを介して接続される室内側制御装置と、室内側制御装置により制御される室内ファンが配置された室内機と、室内側制御装置に操作信号を送信する外部操作装置と、を備え、室内機が部屋の壁面に設置される壁掛けタイプである」構成は、広く普及している空気調和装置の周知の構成である。
よって、引用発明において、上記周知の構成を採用し、上記相違点1の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

イ.相違点2について
引用例2は、本願のもとの出願の出願日(平成20年2月14日)前の平成19年11月21日に公布された「消費生活用製品安全法の一部を改正する法律」によって改正された「消費生活用製品安全法」の第32条の3及び4において、特定製造事業者等は、特定保守製品に「設計標準使用期間」(標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間として設計上設定される期間)を表示しなければならないことが定められ、該法律に基づいて、「電気用品の技術上の基準に定める省令第二項の規定に基づく基準」を改正するための、平成20年2月10日に公示された意見募集の際に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである。

そして、引用例2には、電気冷房機(本願発明の「空気調和装置」に相当する。)にあっては、機器本体の見やすい箇所に、設計上の標準使用期間を表示することが記載されており、引用例2記載の「設計上の標準使用期間」は、本願の発明の詳細な説明【0043】、【0108】、【0109】の記載からみて、本願発明の「空気調和装置の製造業者が経年劣化を考慮して設定した空気調和装置の標準使用期間」に相当する。

引用発明は、経時劣化傾向を報知することを目的としているので(上記記載事項(1b)を参照。)、引用発明において、装置の経時劣化傾向に関する情報を使用者に伝達すべく、引用例2記載の空気調和装置の設計上の標準使用期間を、空気調和機の本体の見やすい箇所に表記する表記部を設けようとすることは、当業者において容易に想到し得ることである。
また、その際に、上記相違点1で周知の構成であるとした空気調和機は、室内機と室外機とから構成されることから、空気調和装置の本体とは、室内機と室外機の2通りが考えられるものの、室内機の方が使用者の目にとまりやすいことは明らかであり、そして、室内機が部屋の壁面に設置される壁掛けタイプでは通常は使用者より上方に位置するので、室内機の下部は「見やすい箇所」であり、また、室内機の下部に注意を促すための表示を設けることは周知技術(例えば、特開2000-213772号公報の【0002】、【0026】、【図2】を参照。)であることから、引用発明において、空気調和装置の設計上の標準使用期間を、表記する表記部を空気調和機の本体に設ける際に、室内機の下部に設けることに困難性はない。

よって、引用発明に上記引用例2記載の事項を適用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

なお、審判請求書の3(2)において「太陽光や雨風の影響を受けるという視点で考えると、室外機が最も経年劣化し易いことは明らかであります。また、経年劣化の影響は今日明日に生じるものではなく数年以上の単位で生じるものであるから、頻繁にチェックすべきものではありません。したがって、わざわざ使用者の目にとまりやすい部分に表記すべき必要性もなく、そうであれば室外機に表記することになります。」と、室外機に表記する旨主張しているが、引用例2において注意喚起の対象は使用者であることは明らかであり、また、引用例2に「見やすい箇所」と記載されていることから、上記引用例2に記載の事項を適用する以上、使用者の目にとまりやすい部分に表記すべき必要性はあるものであり、上記主張には根拠が無いと言わざるを得ず、採用できない。

ウ.相違点3について
空気調和装置において、「冷媒としてR32もしくは炭化水素系冷媒を用いる」ことは、空調分野において環境負荷低減のために広く知られていた周知の技術(例えば、特開2002-277117号公報の段落【0001】、【0003】、【0004】、【0020】、【0022】、【0031】、【図7】、特開平10-220824号公報の【0002】、【0003】を参照。)である。
そして、環境負荷低減は、引用発明の空気調和装置においても内在する課題であり、引用発明において環境負荷低減のために、上記周知の技術を適用し、冷媒としてR32もしくは炭化水素系冷媒を用いることは、当業者において容易に想到し得ることである。

よって、引用発明に上記周知の技術を適用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

(2) 本願発明の奏する作用効果
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術から当業者が予測し得る程度のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-29 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-18 
出願番号 特願2012-281987(P2012-281987)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 森本 康正
佐々木 正章
発明の名称 空気調和装置  
代理人 松井 重明  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 村上 加奈子  

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