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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1306212
審判番号 不服2014-11274  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-13 
確定日 2015-10-06 
事件の表示 特願2011-551291号「手根管開放又は組織切開用のプローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年8月26日国際公開、WO2010/096800、平成24年 8月16日国内公表、特表2012-518488号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成22年2月23日(パリ条約による優先権主張 2009年2月23日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年4月2日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされ、平成26年2月6日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 平成26年6月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年6月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
目視検査を行いながら体腔内において選択された組織を切開するのに用いられる手術器具用のプローブであって、
手術用ハンドピースに接続されるか接続可能な近位端部と、先端部と、中空部とを備え、
該近位端部は光学システムと切開器具延長システムの通路となるべく開いており、
該先端部は閉鎖されており、
該中空部は該近位端部から該先端部まで延び、平坦な上面と下面を有し、
該平坦な上面は該先端部の近傍において開口が形成され、該光学システムを用いて該開口において組織を目視しながら該切開器具延長システムを動作させて切開用の刃を該開口から突出させまた開口内に後退させ、
該平坦な上面は第1縁部と第2縁部を有し、該第1縁部と第2縁部間の距離が該上面の幅を規定し、
該下面は該平坦な上面の該第1縁部と該第2縁部とに接続され、該光学システムと該切開器具延長システムが該平坦な上面と下面との間の空間を通過できるように寸法や形状が規定され、
該下面は傾斜した複数の側面を有し、該側面の各々は該第1縁部、該第2縁部から延び、該第1縁部及び該第2縁部を通過するそれぞれの鉛直線よりも内方に5度以上傾斜し、該平坦な上面の下側にある該下面のいかなる場所においても、上面の縁部間を結ぶ方向における該下面の幅は上面のいかなる縁部間の幅よりも小さく、
該下面は断面形状が三角形又は台形であることを特徴とするプローブ。」(下線は、補正箇所を示す。)
と補正された。

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、補正前の請求項1ないし請求項8を削除し、補正前の請求項9の「該上面は該先端部の近傍において開口が形成され」を「該平坦な上面は該先端部の近傍において開口が形成され」と、「該側面は該第1縁部、該第2縁部から延び」を「該側面の各々は該第1縁部、該第2縁部から延び」とそれぞれ補正して明りょうな記載に補正するとともに、補正前の請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項である「中空部」の構成要素である「下面」について、「該下面は断面形状が三角形又は台形である」と限定して新たな請求項1とするものであって、これらの補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除、同条同項第3号の明りょうでない記載の釈明及び同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特表平7-503878号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「技術分野
本発明は外科用器具に関する。特に本発明は、連続的な観察のもとで体腔を検査しかつそこに内包された組織を処置するための外科用器具に関する。」(5頁左上欄3行?6行。)

イ 「発明の開示
本発明によれば、体腔内の選択された組織を視覚による観察のもとで処置するための改良された外科用器具が提供される。この外科用器具は、伸長形の消息子内に据付けられた刃手段を備える。切断刃を略鉛直軌道に沿って消息子から外側へ延ばすための手段が設けられる。切断刃は、常に光学装置の視界内に置かれる。また切断刃の先端部は、その上方移動時に末端部方向へは移動しないので、意図しない組織に接触することがない。したがって、本発明に係る外科用器具を使用すれば、消息子の外側での切断刃の動作を多大に制御できる。」(5頁左上欄23行?右上欄7行。)

ウ 「発明の詳細な説明
本発明は、伸長形の管状ハウジングすなわち外被と、ハウジング内部の作業工具(例えば切断刃)と、光学装置を受容する手段とを具備する種類の外科用器具を提供する。この種の外科用器具は、連続する視認観察のもとて体腔内の選択された組織を処置するために使用される。例えば上記の外科用器具は、手の屈筋支帯(flexor retinaculm)を分割して手根トンネルにおける正中神経を減圧する外科手法において特に使用される。もちろん本発明の外科用器具は、体腔内の組織を処置する他の様々な外科手法においても使用できる。」(5頁右下欄20行?6頁左上欄1行。)

エ 「図1は、本発明の一実施例による外科用器具10を切欠き側面図で示す。外科用器具10は、ボルダ20に作用的に連結ないし取着される伸長形の消息子12を備える。ホルダ20は図10にさらに完全に示される。図2は消息子の上面図である。
消息子12は、上面12Aと、略閉鎖された末端部12Bと、消息子の末端部に隣接して上面に設けられた横穴13とを備える。消息子の上面は、横穴の隣接領域で平坦(又は僅かな凹面)であることが好ましい。図示のように、消息子の末端部は、それが接触する偏位可能な組織を横穴及び上面の領域から逸らすように、上面から離れて下方へ傾斜する。末端部は、図示のように僅かに湾曲してもよく、或いは消息子の上面との間に鋭角を形成する略平坦面として傾斜してもよい。」(6頁左上欄2行?13行。)

オ 「消息子のハウジングすなわち外被は管状であり、一般的な光学視認鏡30を消息子の基端部における開口を通して消息子内に摺動式に収容できるようになっている。視認鏡30は、横穴13の近傍まで延びる末端部30Aを備え、視認鏡の末端部と消息子の末端部及び横穴との間に視認空間が形成される。この視認空間は光学装置の視界内に配置される。」(6頁左上欄14行?19行。)

カ 「切断刃14を具備する刃手段は、消息子内の末端部近傍に担持される。切断刃は、引込位置(図1及び図2に示す)と、選定された組織を分割可能な持上げないし延出位置(図4及び図6に示す)との間で移動できる。切断刃は、引込位置にあるときには身体組織に接触しない。したがって消息子の末端部は、切断刃が引込位置にあるときに、体腔に容易かつ安全に挿入できる。消息子内に少なくとも部分的に収容される光学装置を使用することにより、使用者は、切断刃を延ばす前に、消息子を正確に扱うとともに所望位置に正確に位置決めすることができる。例えば図11に示すように、光学装置を周知のビデオモニタに作用的に連結することができる。
切断刃14は、消息子内て摺動可能な作動アームないし作動軸16によって、引込位置と持上げ位置との間で移動される。作動軸16の基端16Aは大形の板又は環を備え、それに対し長手方向力を加えることにより、作動軸を消息子の末端部(刃を持上げる)又は消息子の基端部(刃を引込める)に向けて移動させることができる。
図7及び図8は、作動軸16をそれぞれ側面図及び上面図で示す。
図20は作動軸16の斜視図である(刃14を除去して示す)。
板16Aに加えられて軸を消息子の末端部に向けて移動させる力は、引き金34を絞ったときに消息子ホルダ20のシャトル40の端部41(図10に示す)によって付与される。板16Aの反対側の面に加えられて作動軸16を末端部から離れる方へ移動させる力は、ばね24によって消息子に付与される。このばねは、作動軸を消息子の末端部から離れる方へ押圧して、刃を通常の引込位置に配置する。」(6頁左上欄25行?右上欄21行。)

キ 「図面に示されるもう1つの重要な特徴は、組織内への切断刃の進入位置を示す標示手段を設けたことである。ここに示す実施例では、標示手段は、消息子12の末端部近傍の直立壁部分ないし柱11からなる。好ましくは2つのそのような標示部が設けられ(刃の各側に1つずつ)、それら標示部は、切断刃の持上げ時に切断刃14の先端部が追従する鉛直軌道に平行に配置される。これらの標示部を設けたことは、器具を操作する外科医にとって非常に有益なことである。何故なら外科医は、切断刃が持上げられる前に消息子の末端部を刃の進入に適した位置に位置決めできるからである。それらの標示部は、ビデオモニタに示される画像において容易に視認できる(図11及び図11A参照)。これにより、切断刃の持上げ時に所望しない部位の組織を切断することが防止される。」(6頁左下欄12行?23行。)

ク 「図1に示すように、消息子120基端部はホルダ20に連結される。例えば、消息子12の基端部は環状凹部12Cを備えてもよく、環状凹部内には消息子をホルダ内で保持する可動ボルト26を位置決めできる。ボルト26の位置はノブ27によって鉛直方向に調整できる。すなわち、ノブ27を緩めてボルト26を持上げることにより、消息子をホルダ20から取外すことができる。その代わりにノブ27を締めると、ボルト26は消息子12に対して強固に押し付けられ、消息子が固定位置に固定される。ノブ27を僅かに緩めると、消息子12はホルダ20に対して回転方向に調整できる。」(7頁左上欄8行?16行。)

ケ 「図9は、図21の線9-9に沿って切った管状消息子12の好適な横断面図である。消息子内に形成される伸長形のキャビティは、光学鏡30を摺動可能に受容する上方部分1.2Dを備える。作動軸16は、キャビティの下方部分12Eに摺動可能に受容される。好ましくは作動軸は、横方向へ延びるリブ16C,16Dを備え、それらリブは、消息子120両側壁の溝12F,12Gに受容かつ保持される。このようにして、作動軸は作動時に消息子12に対して回転や撓曲を生じなくなる。
図示のように、消息子のハウジングは好ましくはD形断面を有する。消息子の上面は好ましくは平坦(又は僅かな凹面)である。対向する両側縁は相互に平行であり、下面は湾曲している(例えば凸面)。」(7頁左上欄17行?右上欄1行。)

コ 「図10は、外科用消息子のホルダ20の好適な実施例を示す切欠き側面図である。このホルダは、握持ハンドル部29と上方本体部28とを備える。消息子12の基端部は本体28の前端部の開口に摺動可能に受容され、固定ボルト26がノブ27を回すことによって下方に押圧されて消息子をホルダ内に保持する。ばね26Aは、ノブが緩められたときにボルトを上方へ付勢する。シャトル40は本体28内に配置され、消息子をホルダに挿入したときに消息子内の作動軸上の板16Aに当接される前端部41を備える。シャトル40は、回動可能に取着されたアーム43(ピン43Aの周りで回動する)を介して引き金34に連結される。引き金がハンドル方向へ引かれると、アーム43はシャトルを前方に動かし、それによりシャトルの端部41が作動軸16を消息子の末端部方向へ付勢して切断刃を持上げる。さらに引き金を引くと、切断刃はさらに高く持上げられる。ばね42はシャトル40をその通常の休止位置に付勢する。
一般的な伸長形の光学鏡を、本体28及びシャトル40を通して摺動式に挿入できる。ボールプランジャ組体32は、使用中に光学鏡をホルダ内で保持する。」(7右上頁欄2行?19行。)

サ 「図11は、手の屈筋支帯(flexor retinaculm)128を分割して手根トンネルにおける正中神経を減圧することにより手根トンネル解放を行うための、本発明に係る外科用器具の使用法を示す。手根トンネル解放を行う際の外科用器具の好適な使用法は、手根トンネルの基部及び手首の曲げ皺に位置する短い横切開部124を形成することによって行われる。切開部を長手方向に拡げた後に、感覚神経の損傷を回避するために、切開部124は、末端部で屈筋支帯に至る前腕筋膜を通して延長される。指の屈筋滑膜を切開した後、手根を牽引して手根トンネルの基部開口を露出し、それにより手根トンネルへの通路を形成する。
消息子12をホルダ20に対し回転方向へ調整して外科医にとって快適な作業姿勢に適応させた後、消息子12は切開部124に、望ましくは手根トンネルの長手方向へ屈筋支帯128の端縁部132まで挿入される。」(7頁右上欄20行?左下欄6行。)

シ 「患者の四肢を処置する間に光学装置を使用することにより、手根トンネル内部の解剖学的構造は、ビデオモニタ136のディスプレー134上で明確に視覚化され、構造が規定され、端縁部132が位置決めされる。ビデオカメラ138によってモニタ136に送られる画像は、光源140によって強調することができる。
消息子12の末端部は、消息子の挿入を容易にするために、手根トンネル内部の腿、嚢、及び正中神経を望ましくは穏やかに押しやっている。そこで消息子の横穴は、屈筋支帯128の内側面142に隣接して位置決めされ、望ましくは消息子の上面の形状(好ましくは平坦である)は、押しやられた組織を横穴の周辺領域から排斥する。切断刃が持上がる消息子上の位置を標示する標示部11は、ディスプレー134上で明確に視認でき、屈筋支帯128の端縁部132に対する消息子の正確な配置を容易にする。
消息子の上面に設けた横穴13は、好ましくは切断刃を越えて末端方向へ延び、(所望しない組織が切断刃の持上げ位置に極端に接近して配置されないことを確保するために)標示部11の向う側の視認を可能にしている。図11Aは、横穴13の末端部を切断刃14の向う側にモニタ上で視認できることを示す。
適切な配置において、切断刃14は屈筋支帯128の端縁部132に接触するように延出され、外科医は分割される組織をディスプレー134を介して視認する。望ましくは切断刃の位置は、靭帯を完全に解放するのに充分な位置まで延びる。
延出された切断刃の意図された経路を(横穴を通して)視認する間に、消息子12は引き出され、それにより屈筋皮帯128を分割するとともに手根トンネルを解放する。分割が不充分な場合は、切断刃をさらに持上げつつ上記のステップを繰り返すことができる。」(7頁左下欄7行?右下欄5行。)

ス FIG.1、FIG.2及びFIG.6から、消息子12のハウジングの平坦な上面は、第1縁部と第2縁部を有し、第1縁部と第2縁部間の距離が上面の幅を規定していることが看取される。

セ 上記記載カ及びコ、並びに、FIG.1、FIG.2及びFIG.10から、消息子12は、消息子12の基端部には開口が形成され、消息子12がホルダ20に連結された際は、該開口から、消息子12内の作動軸上の板16Aに当接されるシャトル40の前端部41が挿入されると認められる。

ソ 上記記載オ及びケ、並びに、FIG.1及びFIG.9から、消息子12のハウジングの下面は平坦な上面の第1縁部と第2縁部とに接続され、光学視認鏡30(光学システム)と作動軸16(該切開器具延長システム)が平坦な上面と下面との間の空間を通過できるように寸法や形状が規定されていることが看取される。

上記記載事項及び図示内容等から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「体腔内の選択された組織を視覚による観察のもとで処置するための外科用器具であって、
ホルダ20に連結ないし取着される基端部と、末端部12Bとを備え、外被が管状のハウジングを有する消息子12であり、
基端部は、光学視認鏡30と、消息子12内の作動軸16上の板16Aに当接される、シャトル40の前端部41とが挿入される開口を有し、
末端部12Bは閉鎖されており、
消息子12のハウジングは基端部から末端部12Bまで延び、平坦な上面と下面を有し、
該平坦な上面は末端部12Bに隣接して横穴13を備え、光学視認鏡30を用いて横穴13において組織を目視しながら作動軸16を動作させて切断刃14を横穴13から突出させまた横穴13内に後退させ、
平坦な上面は第1縁部と第2縁部を有し、第1縁部と第2縁部間の距離が該上面の幅を規定し、
下面は平坦な上面の第1縁部と第2縁部とに接続され、光学システムと切開器具延長システムが平坦な上面と下面との間の空間を通過できるように寸法や形状が規定され、下面は、平行な両側面と湾曲した下面とを有したD形断面形状である、外科用器具。」

(2)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、国際公開第2008/098251号(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

タ 「In the past, the performance of a minimally invasive surgical procedure, such as ECTR, has often required the use of a plurality of instruments for performing the procedure. For example, prior art surgical procedures often required the use of one or more dissectors, dilators, obturators, elevators or rasps to separate tissue and create a space for the visualization/cutting cannula, prior to its insertion and advancement in the body. Additionally, the visualization/cutting cannulas used in such prior art procedures, do not have any way to adequately inhibit nerves, tendons and other tissue from invading the surgical space defined by the cannula, as the same is advanced. As a result, these devices have an increased risk of severing unintended tissue

The particular shape of the prior art cannulas can have an impact on the particular procedure being performed. For example, certain prior art cannulas having a uniform cross- section or a taper (i.e., a reducing width) towards the distal end, do not provide the surgeon with tactile feedback indicating when the carpal tunnel has been traversed and the distal edge of the TCL has been reached. Additionally, some prior art cannulas tend to be somewhat narrow relative to the width of the carpal tunnel. This narrowness allows significant displacement of the cannula relative to the center line of the TCL, thus increasing the risk of coming into contact with, or even severing, tissues which the surgeon does not intend to cut. For example, Fig. 15 shows a narrow, prior art cannula that has displaced within the carpal tunnel, such that its knife is potentially endangering the ulnar nerve and/or artery.

Further, cannulas exist having a circular, "D" or "U" shaped cross section, that permit rotation of the cannula around its longitudinal axis. However, when a blade or knife is deployed in connection with such a cannula, any inadvertent rotation of the cannula further increases the risk of severing tissues which the surgeon does not intend to cut. For example, Fig. 16 shows a prior art cannula that has inadvertently rotated such that its knife is potentially endangering the ulnar nerve and/or artery.

Additionally, certain cannulas used for endo-surgical procedures, such as a carpal tunnel release procedure, have been provided with a flat upper surface at the distal end, continuous with the upper surface of the cannula shaft. This flat upper surface does not adequately displace the fat pad that lies beyond the distal edge of the TCL, thus making it difficult for the surgeon to visualize the location where division of the TCL should begin.
(これまで、ECTRなどの低侵襲性手術処置では、処置を遂行するために複数の器具の使用が必要とされていた。例えば、従来技術の手術処置では、可視化/切断カニューレを体内に挿入し前進させる前に、組織を分離させてそのための空間を作るために、1個または複数個の解剖器具,拡張器,閉塞器,持上げ器、またはヤスリを使用する必要があった。さらに、上述のような従来技術処置で使用される可視化/切断カニューレは、前進させる際に、神経、腱および他の組織が、カニューレで画定される手術領域に侵入するのを阻止する手段を持たない。その結果、これらの装置では、意図していない組織まで切断してしまう危険性が高い。
従来技術のカニューレの特定形状は、特定の処置に影響を及ぼし得る。例えば、従来技術のうち、断面が均一、または末端に向かってテーパー(先細り)を有するカニューレでは、執刀医は、いつ手根管を横断し、TCLの遠位端縁に達したかの触覚的フィードバックを得ることが出来ない。さらに、いくつかの従来技術のカニューレは、手根管の幅に比して若干細い傾向がある。この細さに起因して、TCLの中心線に対してカニューレが大きく変位することがあり、そのため、執刀医が意図しない組織に接触または切断する危険性が高い。例えば、図15に示される、従来技術の細いカニューレは、手根管内で変位し、そのナイフが潜在的に尺骨神経および/または動脈を傷つけ得る状態にある。
さらに、横断面が円形、または「D」字状や「U」字状のカニューレは、その長手方向軸線周りに回転し得る。しかし、このようなカニューレに関連してメス(ブレード)またはナイフを設ける場合、カニューレが不慮に回転し得ることで、執刀医が意図しない組織を切ってしまう危険性を更に高めてしまう。例えば、図16に示される従来技術のカニューレは、不慮に回転し、そのナイフが潜在的に尺骨神経および/または動脈を傷つけ得る状態にある。
さらに、例えば手根管開放処置などの体内手術処置に使用される特定のカニューレは、末端部に、カニューレシャフトの上側表面に連続する平坦な上側表面を備える。平坦な上側表面は、TCLの遠位端縁を越えた側にある脂肪パッドを適切に退けることはしないので、執刀医が、TCLの分割を始めるべき位置を視認することは難しい。)」(5頁20行ないし7頁11行。()内は、引用文献4のパテントファミリーである特表2010-517702号公報による訳文。以下、同様。)

チ 「Figs. 43A, 43B and 43C show, respectively, a top, front and cross-sectional view of a second prior art.
(図43Aは、第2従来技術の平面図である。図43Bは、第2従来技術の側面図である。図43Cは、第2従来技術の断面図である。)」(18頁1行ないし2行)

ツ 「Figs. 42-44 show representative top, front and cross- sectional views of certain prior art devices, and illustrate that the cross-sectional dimensions of those devices either do not change over their lengths or taper proximally to distally.
(図42?44につき説明すると、特定の従来技術における装置の、代表的な平面図、側面図、断面図であり、これらの装置の断面寸法はその全長に渡り変化しない、または基端から末端に向かって先細りのテーパーを付けたものであることを示す。)」(58頁26行ないし29行)

FIG.43A、FIG.43B及び上記記載事項タないしツから、引用文献4には、内視鏡下手根管開放手術に用いるカニューレにおいて、カニューレの断面形状が、上面は平坦で、その両端から延びる傾斜した側面を有する略三角形の断面を有し、その略三角形の断面は、その上面は第1の縁部と第2の縁部とで規定されており、上面の縁部に接続される下面は、三角形の斜面を形成する2つの側面から構成され、その側面は上面の第1の縁部と第2の縁部を通過するそれぞれの鉛直線よりも内方に大きく傾斜している構成が記載されていると認められる。

3-2 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構成及び機能からみて、後者における「体腔内の選択された組織を視覚による観察のもとで処置するための外科用器具」は前者の「目視検査を行いながら体腔内において選択された組織を切開するのに用いられる手術器具用のプローブ」に相当する。以下同様に「ホルダ20」は「手術用ハンドピース」に、「ホルダ20に連結ないし取着される消息子12の基端部」は「手術用ハンドピースに接続されるか接続可能な近位端部」に、「末端部12B」は「先端部」に、「外被が管状のハウジング」は「中空部」にそれぞれ相当する。また、後者の「消息子12内の作動軸上の板16Aに当接されるシャトル40の前端部41」は「切断刃14」を持ち上げる機構の一部であるから「切開器具延長システム」を構成する一部材であるとともに、後者の「光学視認鏡30」は前者の「光学システム」に相当するから、後者の「基端部は光学視認鏡30と消息子12内の作動軸上の板16Aに当接されるシャトル40の前端部41とが挿入される開口を有し」は、前者の「近位端部は光学システムと切開器具延長システムの通路となるべく開いており」に相当する。
また、後者の「末端部12Bに隣接した横穴13を備え」は前者の「先端部の近傍において開口が形成され」に相当する。
そうすると、両者は、
「目視検査を行いながら体腔内において選択された組織を切開するのに用いられる手術器具用のプローブであって、
手術用ハンドピースに接続されるか接続可能な近位端部と、先端部と、中空部とを備え、
該近位端部は光学システムと切開器具延長システムの通路となるべく開いており、
該先端部は閉鎖されており、
該中空部は該近位端部から該先端部まで延び、平坦な上面と下面を有し、
該平坦な上面は該先端部の近傍において開口が形成され、該光学システムを用いて該開口において組織を目視しながら該切開器具延長システムを動作させて切開用の刃を該開口から突出させまた開口内に後退させ、
該平坦な上面は第1縁部と第2縁部を有し、該第1縁部と第2縁部間の距離が該上面の幅を規定し、
該下面は該平坦な上面の該第1縁部と該第2縁部とに接続され、該光学システムと該切開器具延長システムが該平坦な上面と下面との間の空間を通過できるように寸法や形状が規定される
ことを特徴とするプローブ。」である点で一致しており、次の点で相違する。

(相違点)
プローブの下面において、前者は、下面は傾斜した複数の側面を有し、該側面の各々は該第1縁部、該第2縁部から延び、該第1縁部及び該第2縁部を通過するそれぞれの鉛直線よりも内方に5度以上傾斜し、該平坦な上面の下側にある該下面のいかなる場所においても、上面の縁部間を結ぶ方向における該下面の幅は上面のいかなる縁部間の幅よりも小さく、該下面は断面形状が三角形又は台形であるのに対し、後者は、下面は平行な両側面と湾曲した下面とを有したD形断面形状である点。

以下、上記相違点について検討する。
引用発明も、消息子を患者の手根管に挿入して処置するものであるから、患者の侵襲を低くするための形状とすることは自明の課題である。また、引用発明も消息子を手根管に挿入した後、切断刃を持ち上げ、消息子を移動して屈筋支帯を切断するのであるから、消息子の上面に切断してはならない組織が配置されないような断面形状とすべきことも自明な課題である。さらに、引用文献1には、上記記載エに「消息子の末端部は、それが接触する偏位可能な組織を横穴及び上面の領域から逸らすように、上面から離れて下方へ傾斜する。末端部は、・・・或いは消息子の上面との間に鋭角を形成する略平坦面として傾斜してもよい。」と記載されているように、先端部ではあるが、消息子の上面に不要な組織が配置されないよう、消息子の上面との間に鋭角を形成する傾斜面を設けることが好ましいことが示唆されている。
一方、引用文献4には、上記3-1(2)で検討したとおり、「内視鏡下手根管開放手術に用いるカニューレにおいて、カニューレの断面形状が、上面は平坦で、その両端から延びる傾斜した側面を有する略三角形の断面を有し、その略三角形の断面は、その上面は第1の縁部と第2の縁部とで規定されており、上面の縁部に接続される下面は、三角形の斜面を形成する2つの側面から構成され、その側面は上面の第1の縁部と第2の縁部を通過するそれぞれの鉛直線よりも内方に大きく傾斜している構成」が記載されている。そして、その側面は上面の第1の縁部と第2の縁部を通過するそれぞれの鉛直線よりも内方に大きく傾斜しており、その傾斜角度が5度以上傾斜していることは、FIG.43A、FIG.43Bから明らかである。また、断面が三角形であるから、斜面で構成される下面は、平坦な上面の下側にある該下面のいかなる場所においても、上面の縁部間を結ぶ方向における該下面の幅は上面のいかなる縁部間の幅よりも小さくなることも明らかである。
以上のことに鑑みれば、引用文献1及び引用文献4に接した当業者であれば、引用発明の構成において、患者の体腔に挿入する際に侵襲の小さい消息子の断面形状で、かつ、その上面に不要な組織が配置されないような断面形状とすべく、引用発明のプローブの断面形状として、上面が平坦でその両端から延びる傾斜した側面を有する略三角形の断面を有する引用文献4に記載された構成を適用して、上記相違点に係る本願補正発明の構成とする程度のことは当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

また、上記相違点に基づく本願補正発明の効果も、引用発明及び引用文献4に記載された構成から当業者が予測し得る程度のことにすぎない。

請求人は、請求書において、引用文献4の図43に記載されるプローブは、平坦な上面に対し、その両縁部からそれぞれ内方に向けて傾斜する側面を有する構成となり、この構成については、本願発明と同一であるが、図43に示すプローブは、平坦な上面の両縁部に接続される下面の断面は、その中央部となる底部に円弧をなす部分を有す。そして、円弧をなす部分は、すり鉢状となる下面の断面において広範囲を占める構成となっており、底部が円弧をなすために、円弧部分から軟組織に作用する力の向きは、同一ではなく、部位によって様々に異なる方向となる。このため、近傍の神経繊維は、プローブの上面に向けて簡単に滑ってしまうことがあり、手術中のリスクとなる。これに対し、本願発明では、傾斜した複数の側面を含む下面の断面形状が三角形または台形で、側面が、直線的に内側に傾斜する場合、各側面から体腔の軟組織に作用する力の向きは、一の側面内であればどの部位からも一方向となり、このため、体腔内で使用しているときのプローブの向きの管理が容易となる。その結果、例えば手根管内に存在する神経繊維などのプローブ近傍の組織が、開口から突出される刃に不意に接近することを防止することができ、また、下面の断面が台形状の場合も、底辺に相当する箇所から軟組織に作用する力の向きも一方向のみなので、断面が三角形状の場合と同様の効果を奏する旨主張している。
しかしながら、本件特許の明細書の段落【0012】には「内方に傾斜するかカーブする側面を持つことにより、プローブが刃の経路に入り込むことなく所定の場所に挿入されたときに、組織をより一層下方に移動させる。そのために安全性が向上し、手術の有効性が増す。」と記載され、段落【0014】には「プローブのその他の利点としては、内方に傾斜するかカーブする側面を持つことにより、手根管内の反力を利用でき、切開しているプローブが手根横靱帯(又はその他の切開される組織)に対して保持されるということである。内方に傾斜するかカーブする側面によって、鉛直方向の反力を生むという利点をもたらす。この反力はプローブを手根横靱帯(又はその他の切開されるべき組織)に対して押し付ける。よって、刃の経路から組織を排除し、手術の安全性と有効性が向上する。」と記載されていることから、本願補正発明は、プローブ側面が内方に傾斜する側面を持つことで、本願補正発明の効果を奏すると認められ、引用文献4に記載されたプローブの断面も内方に傾斜した側面を有しており、そのような効果を奏することは当業者であれば当然予測し得ることである。
また、本願明細書には、【図面の簡単な説明】に「【図1a】本発明の実施の形態による三角形又は台形形状のプローブを示す図。」と記載され、【図1a】に示されるように、プローブの側面の傾斜面と底面とが円弧状のRをもって接続されることが図示されており、プローブ下面を構成する側面同士または側面と底面とが円弧状部分をもって接続されることは排除されておらず、本願補正発明の「下面は断面形状が三角形又は台形である」とは、側面同士または側面と底面とが円弧状部分をもって接続されることを排除するものでなく、またそのような構成も本願補正発明の効果を奏することは、段落【0012】及び【0014】の記載から明らかである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項9に係る発明は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項9(平成24年4月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項9)に記載された、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「目視検査を行いながら体腔内において選択された組織を切開するのに用いられる手術器具用のプローブであって、
手術用ハンドピースに接続されるか接続可能な近位端部と、先端部と、中空部とを備え、
該近位端部は光学システムと切開器具延長システムの通路となるべく開いており、
該先端部は閉鎖されており、
該中空部は該近位端部から該先端部まで延び、平坦な上面と下面を有し、
該上面は該先端部の近傍において開口が形成され、該光学システムを用いて該開口において組織を目視しながら該切開器具延長システムを動作させて切開用の刃を該開口から突出させまた開口内に後退させ、
該平坦な上面は第1縁部と第2縁部を有し、該第1縁部と第2縁部間の距離が該上面の幅を規定し、
該下面は該平坦な上面の該第1縁部と該第2縁部とに接続され、該光学システムと該切開器具延長システムが該平坦な上面と下面との間の空間を通過できるように寸法や形状が規定され、
該下面は傾斜した複数の側面を有し、該側面は該第1縁部、該第2縁部から延び、該第1縁部及び該第2縁部を通過するそれぞれの鉛直線よりも内方に5度以上傾斜し、該平坦な上面の下側にある該下面のいかなる場所においても、上面の縁部間を結ぶ方向における該下面の幅は上面のいかなる縁部間の幅よりも小さいことを特徴とするプローブ。」

第4 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び引用文献4の記載事項及び引用発明は、上記第2 3-1に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である「中空部」の構成要素である「下面」について、「該下面は断面形状が三角形又は台形である」との限定事項を省いて拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項をさらに限定したものに相当する本願補正発明が上記したとおり、引用発明及び引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-13 
結審通知日 2015-05-14 
審決日 2015-05-26 
出願番号 特願2011-551291(P2011-551291)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 立人  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 山口 直
関谷 一夫
発明の名称 手根管開放又は組織切開用のプローブ  
代理人 北澤 一浩  

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