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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1306213
審判番号 不服2014-16610  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-08-21 
確定日 2015-10-06 
事件の表示 特願2011-220007号「電気牽引」拒絶査定不服審判事件〔平成24年3月22日出願公開、特開2012-56571号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年11月13日(パリ条約による優先権主張 2006年2月21日 米国、2006年3月14日 米国、2006年11月10日 米国)を国際出願日とする特願2008-556310号の一部を、平成23年10月4日に新たな特許出願としたものであって、平成24年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月24日に意見書及び補正書が提出され、平成25年9月6日付けで再度拒絶理由が通知され、平成26年3月7日に意見書及び補正書が提出されたが、平成26年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年8月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで特許請求の範囲を補正する補正書が提出されたものである。

第2 本件補正
平成26年8月21日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正前の(平成26年3月7日付けの手続補正書により補正された)請求項1ないし23において、本件補正前の請求項20を本件補正後の請求項1とし、本件補正前の請求項21を本件補正後の請求項2とし、本件補正前の請求項22を本件補正後の請求項3とし、本件補正前の請求項1ないし19及び請求項23を削除したものに相当する。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当し、さらに、本件補正は新規事項を追加するものではないから適法になされたものである。

第3 本件発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
動力取出ポートを有する変速機の入力部に結合されたクラッチを含む駆動系に結合された内燃機関“ICE”を有する車両用の電気牽引システムであって、
モータと、
前記車両を動かすために、前記モータの回転を前記動力取出ポートを通して前記変速機入力部に伝達するための伝達装置と、
前記ICEが停止している少なくとも特定の期間中、前記車両を動かすための動力を供給するように前記モータに電気的に結合された電源装置と、
前記車両の前記ICEによる動き又は前記モータによる動きを選択的に可能にするように構成された制御部と、
を備え、
前記電源装置は蓄電池を備え、前記ICEの稼働中には、前記変速機、前記動力取出ポート、及び前記伝達装置を介して該モータを発電機として駆動させることにより前記蓄電池の充電が可能に構成され、
該電気牽引システムはさらに、モータ制御装置を備え、前記電源装置が、前記モータ制御装置を介して前記モータに電気的に結合され、
前記車両が、前記車両のブレーキサブシステム用のタンクに空気を供給するための、前記ICEによって駆動される空気圧縮機を含み、また前記電気牽引システムが、
前記ICEが停止している少なくとも特定の時間中、前記タンクに空気を供給するための補助空気圧縮機と、
前記補助空気圧縮機を駆動するための補助空気モータと、
空気圧が低いのに応じて前記補助空気モータに電源を投入するための、前記タンクに結合された空気圧スイッチと、
を備える
ことを特徴とする電気牽引システム。」

第4 刊行物
1.刊行物1
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-309003号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。

(1)刊行物1の記載
1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】内燃機関と、この内燃機関の主回転軸に直結された第一の多相交流電動発電機と、蓄電池と、この蓄電池とこの第一の多相交流電動発電機とを電気的に接続し双方向に電気エネルギを変換伝達する第一のインバータと、前記主回転軸を変速機に連結する第一のクラッチとを備えたハイブリッド自動車において、
前記変速機に機械的に結合された動力連結歯車(PTO)と、この動力連結歯車に連結された第二のクラッチと、この第二のクラッチを介してその回転軸が連結された第二の多相交流電動発電機と、この第二の多相交流電動発電機と前記蓄電池とを電気的に接続し双方向に電気エネルギ変換伝達する第二のインバータとを備えたことを特徴とするハイブリッド自動車。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

1b)「【0061】まず、第一モード(電気自動車のモード)による動作について説明する。図3は本発明第一実施例における第一モードによる動作の流れを示すフローチャート、図4は本発明第一実施例における第一モード設定時の動力伝達経路を説明する図である。
【0062】加速制動操作レバー8が操作され市内走行モードが設定されると、第一の制御回路41は電流検出器16および電圧検出器17の出力を取込み、蓄電池5の現在の充電量を検出し、充電量が上限所定量を越えているか否かを判定する。上限所定量を越えていなければ第二モード(充電型電気自動車モード)を選択しその制御を行う。
【0063】充電量が上限所定値を越えていれば、電気自動車としての走行が可能な状態にあるので、第一モードを選択し第一のクラッチ21を断状態、第二のクラッチ22を接状態にし、内燃機関20の駆動を停止する。次いで、第一の回転センサ31の出力を取込み、内燃機関20が停止したか否かを確認し、停止状態にあれば第一のインバータ11をオフ状態にし、第二の制御回路42に制御信号を送出する。
【0064】第二の制御回路42は、この制御信号にしたがって第二のインバータ12を制御し、第二の多相交流電動発電機2を電動機として駆動する。続いて、第二の回転センサ32の出力を取込み、第二の多相交流電動発電機2の駆動を確認し、駆動状態にあれば第二のクラッチ22を接状態にする。
【0065】これにより、図4に示すように、蓄電池5の直流電気エネルギが第二のインバータ12で交流電気エネルギに変換され、第二の多相交流電動発電機2が電動機として駆動し、その駆動力が第二のクラッチ22、動力連結歯車7、変速機6およびディファレンシャル・ギヤ18を介して車輪19に伝達され、車両は電気動力のみで駆動される。この第一モードの動作では内燃機関20は動作状態にないので排気ガスの放出は全く行われない。」(段落【0061】ないし【0065】)

1c)「【0071】図7は本発明第一実施例における第三モードによる動作の流れを示すフローチャート、図8は本発明第一実施例における第三モード設定時の動力伝達経路を説明する図である。
【0072】第一の制御回路41は、電流検出器16および電圧検出器17の出力を取込み、蓄電池5の充電量が下限所定量を下回ったか否かを判定する。下回っているときには、モード設定スイッチ9が市内走行モードまたは高速モードのいずれに操作されていても、第三モード(エンジンモード)を選択する。下回っていなければ状況に応じて他のモードを選択する。
【0073】この第三モードでは、第一の制御回路41は、まず第一のインバータ11から蓄電池5の電気エネルギを取込み、第一の多相交流電動発電機1を電動機として始動速度で回転させ内燃機関20を起動する。続いて第一の回転センサ31の検出出力を取込み、内燃機関20の起動の確認を行い、起動状態にあれば、第一のインバータ11および第二のインバータ12を制御して第一の多相交流電動発電機1および第二の多相交流電動発電機2をオフ状態にする。次いで、第二のクラッチ22を断状態にするとともに、第一のクラッチ21を接状態にする。
【0074】これにより、図8に示すように、内燃機関20の駆動力が第一のクラッチ21、動力連結歯車7、変速機6およびディファレンシャル・ギヤ18を経由して車輪19に伝達され、通常の自動車と同様の走行が行われる。」(段落【0071】ないし【0074】)

1d)「【0082】図11は本発明第一実施例における第五モードによる動作の流れを示すフローチャート、図12は本発明第一実施例における第五モード設定時の充電経路を説明する図である。
【0083】第二の制御回路42は、モード設定スイッチ9が市内走行モードに操作された状態で、第一の制御回路41から加速制動操作レバー8が制動モードに設定された制御情報を入力すると第五モード(回生モード)を選択する。
【0084】この第五モードでは、第一の制御回路41が第一のクラッチ21を断にした後に、内燃機関20を停止状態にし、第一の多相交流電動発電機1をオフ状態にする。次いで、第二の制御回路42が第二の多相交流電動発電機2を発電機として駆動し、第二のクラッチ22を接状態にして、第二の回転センサ32の出力を取込み、第二の多相交流電動発電機2の駆動を確認し、図12に示すように、第二の多相交流電動発電機2に発生した交流電気エネルギを第二のインバータ12で直流電気エネルギに変換し蓄電池5に充電する。」(段落【0082】ないし【0084】)

(2)上記(1)及び図面から分かること
上記(1)並びに図1、図4、図8及び図12の記載から、以下の事項が分かる。

1e)図1の記載からみて、内燃機関20が、変速機6の入力部に結合された第一のクラッチ21を介してデファレンシャルギア18及び車輪19に結合されていることが分かる。

1f)上記(1)1b)の記載「【0065】・・第二の多相交流電動発電機2が電動機として駆動し、その駆動力が第二のクラッチ22、動力連結歯車(PTO)7、変速機6およびディファレンシャル・ギヤ18を介して車輪19に伝達され、車両は電気動力のみで駆動される。・・」から、車両を駆動するために、第二の多相交流電動発電機2が電動機として駆動され、その駆動力を変速機6に伝達するための動力連結歯車(PTO)7が設けられていることが分かる。

1g)上記(1)1b)の記載及び(1)1c)の記載からみて、第一の制御回路41が、内燃機関20による車両の駆動と、第二の多相交流電動発電機2による車両の駆動をそれぞれ選択することが分かる。

1h)上記(1)1d)の記載、及び図12の記載からみて、変速機6、動力連結歯車(PTO)7を介して第二の多相交流電動発電機を発電機として駆動させることにより、蓄電池5に充電することが分かる。

1i)上記(1)1a)の記載「・・第二の多相交流電動発電機と前記蓄電池とを電気的に接続し双方向に電気エネルギ変換伝達する第二のインバータとを備えた・・」からみて、蓄電池5が、第二のインバータを介して第二の多相交流電動発電機に電気的に接続されることが分かる。

1j)上記(1)1a)ないし1c)の記載並びに図4、図8及び図12等の記載から、動力連結歯車(PTO)7は、変速機6の入力部に接続されており、動力を伝達することが分かる。

以上の(1)及び(2)ならびに図4,8,12の図示内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「動力連結歯車(PTO)7を備えた変速機6の入力部に連結された第一のクラッチ21を介してデファレンシャルギア18及び車輪19に連結された内燃機関20を備えた、第一の多相交流電動発電機1及び第二の多相交流電動発電機2による車両用の駆動機構であって、
第二の多相交流電動発電機2と、
車両を駆動するために、第二の多相交流電動発電機2が電動機として駆動され、その駆動力を変速機6の入力部へ伝達するための動力連結歯車7と、
内燃機関20が停止状態にあるときに車両を駆動するように、第二の多相交流電動発電機2に電気的に接続された蓄電池5と、
車両の内燃機関20による駆動と、第二の多相交流電動発電機2による駆動をそれぞれ選択する第一の制御回路41と、を備え、
車両の制動時に、変速機6、動力連結歯車(PTO)7を介して第二の多相交流電動発電機を発電機として駆動することにより蓄電池5に充電するように構成され、
該第一の多相交流電動発電機1及び第二の多相交流電動発電機2による車両用の駆動機構はさらに、第二のインバータ12を備えるものであって、蓄電池5が、第二のインバータ12を介して第二の多相交流電動発電機2に電気的に接続される駆動機構。」

2.刊行物2
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2004-92569号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。

(1)刊行物2の記載
2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、同内燃機関による補機駆動とは別に補機を駆動する電動機と、前記内燃機関及び前記電動機の作動を制御する制御手段とを備えたハイブリッド車両において、
前記電動機の回転数を検出する回転数検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記電動機の作動条件が成立しかつ前記回転数検出手段により前記電動機の回転数が所定値を下回っていることが検出される時は前記内燃機関を作動させるよう構成されていることを特徴としたハイブリッド車両の補機駆動制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

2b)「【0004】こうしたハイブリッド車には、通常車両用エンジンを用いているものがある。その場合、ハイブリッド車両におけるエンジン補機の駆動系は、通常車両用エンジンで採用されている構造、すなわちエンジンのクランク出力でエンジン補機をベルト駆動する方式が採られることになる。ところで、このようなエンジン補機のうち、例えば油圧式パワーステアリングシステムのパワーステアリングポンプや、エアブレーキシステムのエアコンプレッサは、エンジン停止に伴いその作動を停止すると、パワーステアリングやエアブレーキが機能しなくなり、車両の走行に支障を来すことになる。このためエンジン停止時においてもパワーステアリングやエアブレーキを機能させることができるよう、前述のパワーステアリングポンプ、エアコンプレッサとは別物で同一機能を有するパワーステアリングポンプ、エアーコンプレッサを補機駆動用モータで駆動する構成を採用することが検討されている。この場合、補機はエンジンが作動しているときはエンジンにより駆動され、補機駆動用モータが作動しているときは補機駆動用モータで駆動されることになる。」(段落【0004】)

2c)「【0011】図1に示すハイブリッド車両は、2台の駆動用モータ4a、4bを備えており、両駆動用モータ4a、4bの駆動力は、減速機6、ディファレンシャルギヤ7を介して駆動輪8に伝達される。駆動用モータ4a、4bは、インバータ3aとインバータ3bを介して電池5に接続される。インバータ3aは一方の駆動用モータ4aと発電機2と電池5に接続され、駆動用モータ4a及び発電機2の作動状態を調整可能に構成されている。また、インバータ3bは駆動用モータ4bと補機駆動用モータ9とに接続され、駆動用モータ4bと補機駆動用モータ9の作動状態を調整可能に構成されている。発電機2を駆動するエンジン(内燃機関)1には、図示しないエアーコンプレッサ、パワーステアリングポンプ等の補機が接続され、エンジン1の運転時に駆動される。なお、エアーコンプレッサは、エアブレーキやエアサスペンション等に供給するエアー圧を発生させるものである。
【0012】エンジン1により駆動される発電機2から取り出された電力は、インバータ3aを介して電池5を充電、あるいは駆動用モータ4aを駆動し、電池5からの電力がインバータ3bを介して駆動用モータ4bを駆動する。エンジン1の停止時は、電池5に蓄えられていた電力がインバータ3a、3bを介して駆動用モータ4a、4bと電動機を成す補機駆動用モータ9とに供給され、各モータが駆動される。補機駆動用モータ9の駆動によってパワーステアリングポンプ10とエアーコンプレッサ11とが駆動する。パワーステアリングポンプ10とエアーコンプレッサ11は、エンジン1に接続される前述の図示しないパワーステアリングポンプ、エアーコンプレッサとは別物で同一機能を有する。」(段落【0011】及び【0012】)

以上の2a)ないし2c)の記載内容及び図1の図示内容を総合すると、刊行物2には、次の事項(以下、「刊行物2に記載の技術」という。)が記載されている。

「車両のエアブレーキに供給するエアー圧を発生させるための、エンジンのクランク出力で駆動するエアコンプレッサと、エンジン停止時において、前記エンジンのクランク出力で駆動するエアコンプレッサとは別物で同一機能を有する補機駆動用モータで駆動するエアーコンプレッサとを有するハイブリッド車両の補機駆動制御装置。」

第5 対比・判断
本件発明と、引用発明とを対比する。
引用発明における「変速機6」は、その構成からみて、本件発明における「変速機」に相当し、以下同様に、「入力部に連結され」ることは「入力部に結合され」ることに、「第一のクラッチ21」は「クラッチ」に、「第一のクラッチ21を介してデファレンシャルギア18及び車輪19に連結され」ることは「クラッチを含む駆動系に結合され」ることに、それぞれ相当する。
引用発明における「内燃機関20」は、本件発明における「内燃機関」または「ICE」に相当し、引用発明における「内燃機関20を備えた」ことは、本件発明における「内燃機関“ICE”を有する」ことに相当し、引用発明における「第一の多相交流電動発電機1及び第二の多相交流電動発電機2による車両用の駆動機構」は、本件発明における「車両用の電気牽引システム」に相当する。
引用発明における「第二の多相交流電動発電機2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて本件発明における「モータ」に相当し、以下同様に、「車両を駆動する」ことは「車両を動かす」ことに、「動力連結歯車(PTO)7」は「伝達装置」に、「内燃機関20が停止状態にあるとき」は「ICEが停止している少なくとも特定の期間中」に、「車両を駆動する」ことは「車両を動かすための動力を供給する」ことに、「電気的に接続」されることは「電気的に結合」されることに、「蓄電池5」は「蓄電池」にそれぞれ相当するとともに、引用発明の「蓄電池5」は、「内燃機関20が停止状態にあるときに車両を駆動するように、第二の多相交流電動発電機2に電気的に接続された」ものであって、本件発明でいう「電源装置」の機能を有するから、引用発明において、本件発明の「電源装置は蓄電池を備え」たという構成を有することは明らかである。
さらに、引用発明における「車両の内燃機関20による駆動と、第二の多相交流電動発電機2による駆動をそれぞれ選択」することは、本件発明における「車両のICEによる動き又はモータによる動きを選択的に可能にする」ことに相当し、引用発明における「第一の制御回路41」は、その機能及び構成からみて、本件発明における「制御部」に相当し、同様に、「第二のインバータ12」は「モータ制御装置」に相当する。
そして、引用発明における「動力連結歯車(PTO)7」は、PTOが有する機能からみて、動力の出力部として「動力取出ポート」を有することは技術常識からみて明らかである。そうすると、引用発明における「動力連結歯車(PTO)7を備えた変速機6」は、「動力取出ポート」を備えるものであるから、本件発明における「動力取出ポートを有する変速機」に相当する。
同様に、引用発明における「第二の多相交流電動発電機2」は、「動力連結歯車(PTO)7」の「動力取出ポート」を通して「変速機6」に動力を伝達するものと認められる。そうすると、引用発明における「第二の多相交流電動発電機2が電動機として駆動され、その駆動力を変速機6の入力部へ伝達する」ことは、本件発明における「モータの回転を動力取出ポートを通して変速機入力部に伝達する」ことに相当し、引用発明における「変速機6、動力連結歯車(PTO)7を介して第二の多相交流電動発電機を発電機として駆動する」ことは、本件発明における「変速機、動力取出ポート、及び伝達装置を介してモータを発電機として駆動」することに相当する。
そして、引用発明における「車両の制動時に、変速機6、動力連結歯車(PTO)7を介して第二の多相交流電動発電機を発電機として駆動することにより蓄電池5に充電するように構成され」ることと、本件発明における「ICEの稼働中には、変速機、動力取出ポート、及び伝達装置を介して該モータを発電機として駆動させることにより蓄電池の充電が可能に構成され」ることとは、「変速機、動力取出ポート、及び伝達装置を介してモータを発電機として駆動させることにより蓄電池の充電が可能に構成され」るという限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「動力取出ポートを有する変速機の入力部に結合されたクラッチを含む駆動系に結合された内燃機関“ICE”を有する車両用の電気牽引システムであって、
モータと、
前記車両を動かすために、前記モータの回転を前記動力取出ポートを通して前記変速機入力部に伝達するための伝達装置と、
前記ICEが停止している少なくとも特定の期間中、前記車両を動かすための動力を供給するように前記モータに電気的に結合された電源装置と、
前記車両の前記ICEによる動き又は前記モータによる動きを選択的に可能にするように構成された制御部と、
を備え、
前記電源装置は蓄電池を備え、前記変速機、前記動力取出ポート、及び前記伝達装置を介して該モータを発電機として駆動させることにより前記蓄電池の充電が可能に構成され、
該電気牽引システムはさらに、モータ制御装置を備え、前記電源装置が、前記モータ制御装置を介して前記モータに電気的に結合された電気牽引システム。」

[相違点1]
「変速機、動力取出ポート、及び伝達装置を介してモータを発電機として駆動させることにより蓄電池の充電が可能」となる時点が、本件発明においては、「ICEの稼働中」であるのに対して、引用発明においては、「車両の制動時」である点。

[相違点2]
本件発明においては、「車両が、前記車両のブレーキサブシステム用のタンクに空気を供給するための、前記ICEによって駆動される空気圧縮機を含み、また前記電気牽引システムが、前記ICEが停止している少なくとも特定の時間中、前記タンクに空気を供給するための補助空気圧縮機と、前記補助空気圧縮機を駆動するための補助空気モータと、空気圧が低いのに応じて前記補助空気モータに電源を投入するための、前記タンクに結合された空気圧スイッチと、を備える」のに対して、引用発明においては、そのようなものを備えるか不明である点。

上記相違点について判断する。

[相違点1について]
内燃機関(ICE)と、電動機、発電機を兼ねるモータジェネレータを駆動に用いる車両において、内燃機関の動力によってモータジェネレータを駆動して発電を行い、蓄電池の充電を行うことは本件出願前において周知の技術(特開2003-237383号公報、段落【0022】、【0024】の記載参照/特開2000-272361号公報、段落【0054】、【0055】の記載参照。以下、「周知の技術1」という。)であるから、引用発明に上記周知事項1を適用して、蓄電池の蓄電量が低下した場合等において、内燃機関(ICE)の稼働中にモータを発電機として駆動させることにより蓄電池の充電を行うものとし、上記相違点1に係る本件発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物2に記載の技術(上記第4、2.参照)は、「車両のエアブレーキに供給するエアー圧を発生させるための、エンジンのクランク出力で駆動するエアコンプレッサと、エンジン停止時において、前記エンジンのクランク出力で駆動するエアコンプレッサとは別物で同一機能を有する補機駆動用モータで駆動するエアーコンプレッサとを有するハイブリッド車両の補機駆動制御装置。」であるから、刊行物2には、本件発明の用語を用いて表現すると、「車両のブレーキサブシステムに空気を供給するためのICEによって駆動される空気圧縮機」と、「ICEが停止している期間において、補助空気モータで駆動する補助空気圧縮機」が記載されているといえる。さらに、エアブレーキ(ブレーキサブシステム)において、エアタンクを設けること、さらに、エアタンクの空気圧が低下するのに応じて空気圧縮機を駆動するモータに電源を投入するための空気圧スイッチをタンクに設ける点は周知の技術(特開平11-98601号公報、段落【0021】の記載参照/特開2001-204104号公報、段落【0019】の記載参照。以下、「周知の技術2」という。)である。したがって、内燃機関(ICE)と、電動機、発電機を兼ねるモータジェネレータを駆動に用いる車両用の駆動機構に係る引用発明において、刊行物2に記載された事項及び上記周知の技術2を適用することにより、上記相違点2に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本件発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2に記載された事項並びに周知の技術1及び2とから予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

第6 むすび
したがって、本件発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項並びに周知の技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-01 
結審通知日 2015-05-11 
審決日 2015-05-22 
出願番号 特願2011-220007(P2011-220007)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 和人  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 電気牽引  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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