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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1306217
審判番号 不服2014-19172  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-25 
確定日 2015-10-05 
事件の表示 特願2010-178708「漢字検索システム、漢字検索方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日出願公開、特開2012- 38151〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は,平成22年8月9日の出願であって,平成26年1月16日付けで拒絶理由通知がなされ,同年3月20日に手続補正がなされたが,同年6月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成26年9月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明

上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は平成26年3月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「コンピュータを使用して,検索対象となる単漢字または熟語である検索対象漢字を検索する漢字検索システムであって,前記コンピュータにより制御される,
前記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字または既知熟語の位置を示す1以上の漢字位置を同時に指定可能であり,かつ,指定された前記漢字位置の単漢字または熟語,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字または前記既知熟語の読みその他の文字特定情報を入力可能な入力部と,
1回の前記検索対象漢字の検索において,同時に前記漢字位置を1以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する1以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する入力制御手段と,
前記入力部により入力された1以上の前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報のすべてを含む条件を満たす前記検索対象漢字の候補を,データベース部から抽出する漢字検索手段と,
表示部を制御して,前記漢字検索手段によって検索された前記検索対象漢字の候補をすべて表示させる表示制御手段と,
を備えることを特徴とする漢字検索システム。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「コンピュータを使用して,検索対象となる単漢字または熟語である検索対象漢字を検索する漢字検索システムであって,前記コンピュータにより制御される,
前記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字または既知熟語の位置を示す2以上の漢字位置を同時に指定可能であり,かつ,指定された前記漢字位置の単漢字または熟語,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字または前記既知熟語の読みその他の文字特定情報を入力可能な入力部と,
1回の前記検索対象漢字の検索において,前記漢字位置を2以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する2以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する入力制御手段と,
前記入力部により入力されたすべての前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報を含む条件を満たす前記検索対象漢字の候補を,データベース部から抽出する漢字検索手段と,
表示部を制御して,前記漢字検索手段によって検索された前記検索対象漢字の候補をすべて表示させる表示制御手段と,
を備えることを特徴とする漢字検索システム。」
という発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである(下線は,審判請求人が補正箇所を示すために付与したものである。)。

2.新規事項の有無,補正の目的要件について

本件補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において,補正前の「1以上の漢字位置」,「同時に前記漢字位置を1以上指定して」,「1以上の前記文字特定情報」及び「1以上の前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報のすべて」という構成をそれぞれ「2以上の漢字位置」,「前記漢字位置を2以上指定して」,「2以上の前記文字特定情報」及び「すべての前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報」という構成に補正することにより,指定される漢字位置の数とその漢字位置に対応する文字特定情報の数とを「1以上」から「2以上」に限定して,特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項(新規事項)及び特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について

本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明

上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術

A.原審の拒絶理由に引用された特開平10-11431号公報(以下,「引用文献」という。)には,「漢字検索装置および方法」の発明に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 難読漢字を含む漢字単語における可読漢字自体あるいは可読漢字の読みがなと,前記漢字単語の字数と,前記可読漢字の前記漢字単語内の位置と,前記漢字単語の品詞を含む属性識別と,でなる検索情報を入力して,前記漢字単語を探索出力する漢字検索装置にあって,
前記検索情報を入力する入力部と,
前記入力部の前記検索情報を入力処理する入力処理手段と,
読みがなの漢字変換に用いる単漢字辞書と,
漢字単語の探索に用いる漢字単語辞書と,
前記検索情報に基づいて,前記単漢字辞書ならびに漢字単語辞書を用いて,漢字単語を探索する検索エンジン手段と,
前記検索エンジン手段の探索過程および探索結果を出力処理する結果表示処理手段と,
前記結果表示処理手段の出力を表示する表示部と,
を備えることを特徴とする漢字検索装置。」

ロ.「【0002】
【従来の技術】従来,漢字検索装置は,かな漢字変換手段と漢字辞書を備え,読みがなを入力して,読みがなに相当する漢字候補を抽出して可視化出力し,所要の漢字を選択するに用いられる。しかし,漢字が難読のため読みがなが入力できない場合がある。特開平5-12257号公報によれば,一部分しか読みの分からない単語でも漢字辞書からの検索を行う文書作成装置を開示している。この文書作成装置は,予め設定された複数の単語が登録された辞書と,難読文字を意味する特殊文字と可読文字のかなとを入力する入力手段と,入力手段によって入力された特殊文字まじりの読みがな列から特殊文字を除いて一致する単語を検索する検索手段と,この検索手段によって得られた単語を変換候補として表示する表示手段から構成されている。
(・・・中略・・・)
【0006】具体的には,単語「国後半島(くなしりはんとう)」を先頭,末尾それぞれ一文字を手がかりとして検索処理を実行する場合,使用者が「国-島」「くな-とう」と入力したならば検索処理は正しく実行されるが,「くに-しま」「くに-とう」や,また読みと漢字の組み合わせである「国-しま」「くに-島」などの場合でも検索はできない。」

ハ.「【0012】この発明の第1の実施例の構成を示す図1を参照すると,漢字検索装置10は,使用者が検索処理に必要な情報を入力する入力部11と,入力部11から検索情報を受け取る入力処理手段12と,入力処理部12の検索情報を基に,単漢字辞書14および漢字単語辞書15から該当する漢字単語を検索する検索エンジン手段13と,探索の手がかりとなる可読漢字のかな漢字変換に用いる単漢字辞書14と,可読漢字を包含する漢字単語群及び漢字単語それぞれの属性情報を有する漢字単語辞書15と,検索エンジン部13が漢字単語辞書15から抽出した漢字単語を表示部17へ表示させるための結果表示処理手段16と,検索結果を表示する表示部17と,を有する。
【0013】次に第1の実施例の動作について,漢字単語辞書15の一部を例示する図2(a),単漢字辞書14の一部を例示する図2(b),検索情報を例示する図4(a),単語辞書の検索結果を例示する図4(b),該検索結果の表示を例示する図4(c),読みがな入力の検索情報を例示する図5(a),該読みがなのかな漢字変換を例示する図5(b),ならびに流れ図3を参照して,説明する。図3に於いて,入力処理手段12は使用者が入力部11を用いて入力した検索情報を取得し,該検索情報を検索エンジン手段13へ渡す(図3のステップ31)。検索エンジン手段13は,使用者の入力した検索情報より,検索の手がかりとなる可読文字が読みがな,または漢字のいずれで入力されたかを確認し(ステップ32),単漢字辞書14を用いて読みがなの漢字変換を行うか否かを判断する。可読文字が読みがなで入力されている場合(ステップ32の読み),検索エンジン手段13は単漢字辞書14を用いて,読みがなの漢字情報を取得し,単語辞書を検索する可読漢字のかな漢字変換した検索情報を作成する(ステップ33)。次に検索エンジン手段13は,該検索情報を基に漢字単語辞書15の検索を行い(ステップ34),該当しそうな単語を全て抽出する。全単語を抽出後,それぞれの単語に付属する品詞情報を参照し,不要な単語を削除する(ステップ35)。検索エンジン手段13は,選択した漢字単語を検索結果として結果表示処理手段16に渡し,該単語を受けとった結果表示処理手段16は,該単語を検索結果として出力部17へ表示する(ステップ36)。
【0014】上述の動作について,例を用いて説明する。
【0015】例として,使用者が単語「転轍(てんてつ)」について,可読文字を「転」として検索情報を入力し,検索エンジン手段13に変換を実行させるものとする。入力される検索情報は,図4(a)または図5(a)に例示する可読文字の「転」または「てん」,単語合計文字数は「2」,単語内での対象文字位置は「1」,品詞は「名詞」となる。入力処理手段12は,使用者の入力した検索情報を検索エンジン手段13へ渡す。該検索情報を受け取った検索エンジン手段13は,可読文字が読みがな,または漢字のいずれで入力されたかを確認し,単漢字辞書14を用いて,かな漢字変換を行うか否かを判断する(ステップ32)。対象を漢字で入力した場合を図4(a),読みがなで入力した場合を図5(a)となる。可読文字が漢字で入力された場合(ステップ32の漢字),検索エンジン手段13は「合計文字数が2で,1文字目が「転」の単語」について漢字単語辞書15を図4(a)に例示する検索情報により検索を行う。次に検索エンジン手段13は,漢字単語辞書15より抽出した漢字単語(図4(b))について品詞情報を確認し,「名詞」以外の単語については対象外の単語として削除する。残った単語を検索結果(図4(c))として結果表示処理手段16へ渡す。」

上記引用文献の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,上記請求項1に記載された「漢字検索装置」は,請求項1の第1段落に記載されている「検索情報」の内容を次段落の「検索情報」の内容として記述し直すことができる。

したがって,上記引用文献には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「検索情報を入力して,難読漢字を含む漢字単語を探索出力する漢字検索装置にあって,
前記漢字単語における可読漢字自体あるいは可読漢字の読みがなと,前記漢字単語の字数と,前記可読漢字の前記漢字単語内の位置と,前記漢字単語の品詞を含む属性識別と,からなる検索情報を入力する入力部と,
前記入力部の前記検索情報を入力処理する入力処理手段と,
読みがなの漢字変換に用いる単漢字辞書と,
漢字単語の探索に用いる漢字単語辞書と,
前記検索情報に基づいて,前記単漢字辞書ならびに漢字単語辞書を用いて,漢字単語を探索する検索エンジン手段と,
前記検索エンジン手段の探索過程および探索結果を出力処理する結果表示処理手段と,
前記結果表示処理手段の出力を表示する表示部と,
を備える漢字検索装置。」

B.前置報告書で引用された特開平5-12257号公報(以下,「周知例1」という。)には,「文書作成装置」の発明に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

イ.「【請求項1】 予め設定された複数の単語が登録された辞書と,
一部に任意の文字列を意味する特殊文字を含む単語を入力する入力手段と,
上記辞書の中から上記入力手段によって入力された単語の上記特殊文字を除いて一致する単語を検索する検索手段と,
この検索手段によって得られた単語を変換候補として表示する表示手段とを具備したことを特徴とする文書作成装置。
【請求項2】 予め読みに対応する単語が登録された辞書と,
一部に任意の文字列を意味する特殊文字を含む単語の読みを入力する入力手段と,
上記辞書の中から上記入力手段によって入力された読みの上記特殊文字を除いて一致する読みに対応する単語を検索する検索手段と,
この検索手段によって得られた単語を変換候補として表示する表示手段とを具備したことを特徴とする文書作成装置。」

ロ,「【0020】以上の動作を図6乃至図11を参照して具体的に説明する。ここでは,例えば「大菩薩峠」という単語で「菩」と「薩」の読みがわからない場合を想定して説明する。
【0021】(1)ユーザは「大*峠」(または「だい*とうげ」)を入力した後,「大」(または「だ」)にカーソルを合わせて,「地名表示指示」キー11aを押下し,カーソルを移動して,検索したい単語の範囲を指定する(図6参照)。
【0022】(2)かな漢字変換制御部13は,地名辞書14の漢字文字列から「大…」となる単語を検索(または地名辞書14の読み文字列から「だい…」となる単語を検索)し,記憶テーブル15に格納する(図7参照)。
(3)かな漢字変換制御部13は,記憶テーブル15に格納された単語の文字を逆順にソートする(図8参照)。
(4)かな漢字変換制御部13は,記憶テーブル15から「峠…」(または「げうと…」)となる単語を検索し,該当する単語のみを残す(図9参照)。
【0023】(5)かな漢字変換制御部13は,漢字入力の場合,記憶テーブル15の単語を正順に直して表示部16に出力する(図10参照)。また,読み入力の場合,かな漢字変換制御部13は地名辞書14の漢字文字列を検索して,該当する単語を表示部16に出力する。
(6)ユーザは,希望する単語の上にカーソルを合わせ,「選択/実行」キーを押下する。
(7)ワイルドカードを使用した単語が正しい単語に変換される(図11参照)。」

上記周知例1の記載及び引用文献摘記事項ロ.の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,「難読文字を含む単語の検索に際し,先頭,末尾等の二つの可読文字を手がかりとして検索処理を実行する」ことは周知技術である。

C.特開2007-26278号公報(以下,「周知例2」という。)には,「電子辞書,熟語検索方法,および熟語検索プログラム」の発明に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

イ.「【請求項1】
文字を入力するための文字入力手段と,
熟語と該熟語に関連した関連情報を記憶する辞書データ記憶手段と,
前記文字入力手段で入力した文字を含む熟語を前記辞書データ記憶手段から検索する検索手段と,
前記検索手段の検索の結果を表示する表示手段と,を有する電子辞書において,
前記辞書データ記憶手段は,単語と該単語を検索するための検索情報を含むデータを記憶する単語辞書データ記憶手段と,熟語と該熟語に関連する関連情報を含むデータを記憶する熟語辞書データ記憶手段とを有し,
前記検索手段は,前記単語辞書データ記憶手段から単語を検索する単語検索手段と,前記熟語辞書データ記憶手段から熟語を検索する熟語検索手段とを有し,
前記熟語検索手段は前記単語検索手段で検索した単語を含む熟語を検索することを特徴とする電子辞書。
【請求項2】
前記単語検索手段で検索した単語と,該単語が熟語において使用されている位置の位置情報と,を検索の条件として前記熟語検索手段に対して検索の指示をする指示手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電子辞書。」

ロ.「【0023】
制御手段1は,CPUを備えており,ROM4のプログラム記憶手段9に格納された検索プログラム,表示プログラム,入出力制御プログラム等の各種プログラムを実行することで,各部の制御や辞書検索を含む本実施形態における検索および表示制御等の電子辞書の制御を行うようになっている。単語検索手段13は漢字辞書データ7から入力手段で入力された条件を用いて漢字を検索する。熟語検索手段10は単語や単語位置などの検索条件から所望の熟語を国語辞書データ8から検索する。これらの検索手段は本実施の形態ではプログラムを実行することで実現している。」

ハ.「【0032】
図3は本発明の検索処理を表すフローチャートである。本などで読めない熟語を見つけると,その読み方や意味を辞書を用いて調べる必要がある。
【0033】
まず,熟語を構成する単語を漢字字典から検索する。入力手段2から,読み,画数,へん,つくりなどを入力して調べたい単語である熟語の先頭の文字を漢字字典で検索する。「紫陽花」を調べたいときに,「紫」の読みが分かればその読みを,画数が分かればその画数を入力し,他の条件で検索するのであれば他の条件を入力して検索する。検索の結果「紫」が抽出される。このように漢字字典により漢字選択する(S1)。
【0034】
所定の操作として,熟語キー15を操作すると,その「紫」を図5で示す検索データの構成図で示されるような構成で,文字データ一時記憶手段12に記憶する。このとき,最初に登録されたので自動的に単語位置情報は「1」が割り当てられる。この単語位置情報は後ほど再設定ができる。このように漢字情報と単語位置情報を一時保存する(S2)。このように,検索された単語とその単語の熟語構成における位置情報を一時記憶する。
【0035】
次に,検索するための条件である漢字の入力が全て済んでいれば所定の操作として訳キー18を操作する。訳キー18が操作されたか否かを検出し,訳キー18が操作されたことを検出したら次のステップであるS4に移行する。訳キー18が操作されなければ次の漢字を検索して漢字選択するステップS1へ移行する。
【0036】
ここでさらに,「花」という文字を抽出(S1)して文字データ記憶手段12へ記憶(S2)する。このとき,単語位置情報は2番目に記憶したので「2」が「花」に対応して記憶される。検索の順序に対応して自動的に単語位置情報が設定される。
【0037】
訳キー18の操作が検出されるとステップS4へ移行する。熟語を検索するための漢字の選択が終了し,所定の操作をすると次は自動的に設定された単語位置情報を修正する処理を行う。自動的に単語位置情報が設定されることで,入力の手間を省くことができ便利である。また,漢字の入力が終了した直後に単語位置情報を修正する処理に移行するので,単語位置情報の修正を忘れることもなくなる。また,入力の確認をすることもできるし,入力した単語を見ながら単語位置情報を入力することができるので誤りも少なくなる。
【0038】
「花」は調べたい熟語では3番目に現れる文字なので,ここで単語位置情報を2から3へ変更する。例えば,データを表示し,変更したいデータにカーソルを合わせ,新しいデータを入力し,再度記憶することでデータの更新ができる。さらに,2番目に現れる文字は「陽」であるが,陽を抽出するのが面倒な場合は第一の符号キー19を入力して任意の文字であることを示す符号と,その単語位置情報が2であることを入力することで2番目に現れる単語が何であれ検索することになるが代用ができる。このように単語位置情報を再選択する(S4)。再選択つまり再設定可能にすることで,検索しやすい単語を検索してその検索結果で所望の熟語を検索することもできるようになる。
【0039】
このように漢字とその漢字が熟語のどの位置で使われているかの情報を設定して熟語の検索を行うので,つまり,熟語検索手段10に対しての検索の条件を指示する指示手段といえる。
【0040】
次に,入力された検索条件を基に国語辞書データ8から熟語を検索する。検索の条件は1番目に「紫」,2番目は任意の単語,3番目は「花」,という単語が現れる熟語を国語辞書データ8から検索する。
【0041】
図5で示すように,国語辞書データ8の中には「紫」が用いられている熟語の番号が記されたデータと「花」が用いられている熟語の番号が記されたデータがある。この2つのデータに共通する熟語の番号をRAM5に一時記憶する。熟語の番号の抽出が終了すると,抽出した番号を図7で示した熟語の一覧データの見出し番号と一致する熟語を検索する。検索の結果,「紫」と「花」を含む熟語が抽出できる。その中からさらに,「紫」が先頭の単語で「花」が3番目の単語である熟語を検索し,RAM5に一時記憶する(S5)。検索の結果,見出番号212の「紫陽花」が抽出される。
【0042】
ここで,図5で示す単語が含まれる熟語番号の一覧のデータにおいて,単語が何番目に使用されているかを示すデータを付加することで,図7に示した熟語の構成の一覧のデータを用いて単語の順番から熟語を抽出するステップを省くこともできる。例えば付加するデータとして,「紫」の単語が熟語の先頭にある熟語番号のデータ,2番目にある熟語番号のデータ,3番目にある熟語データなどのようにデータを持つことで,「紫」が先頭にある熟語番号のデータと,同様に分割した「花」が三番目にある熟語番号のデータとから,一致する熟語番号を抽出することができる。」

D.特開2006-293676号公報(以下,「周知例3」という。)には,「電子辞書装置,漢字検索プログラム」の発明に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

イ.「【請求項1】
熟語を構成する複数の漢字のそれぞれに対する読みを入力する入力手段と,
前記入力手段により入力された複数の漢字の読みに対して,各漢字の読みに対応する漢字候補を抽出する漢字候補抽出手段と,
前記漢字候補抽出手段により抽出された漢字候補を含む熟語の候補を抽出する熟語候補抽出手段と,
前記熟語候補抽出手段により抽出された熟語の候補から,前記漢字候補抽出手段により抽出された前記各漢字の読みに対応する漢字候補を共通して含む熟語を抽出する熟語抽出手段と,
前記熟語抽出手段により抽出された熟語を出力する熟語出力手段と
を具備したことを特徴とする電子辞書装置。
【請求項2】
前記熟語抽出手段は,前記漢字候補抽出手段により漢字候補が抽出される度に,それまでに前記熟語候補抽出手段により抽出された熟語の候補から,前記漢字候補を含む熟語を抽出することを特徴とする請求項1記載の電子辞書装置。
【請求項3】
前記熟語抽出手段は,前記入力手段により熟語の何れに位置する漢字に対する読みが入力されたかに応じて,前記熟語候補抽出手段により抽出された熟語の候補から該当する位置に漢字候補を含む熟語を抽出することを特徴とする請求項1記載の電子辞書装置。」

ロ.「【請求項7】
コンピュータを,
熟語を構成する複数の漢字のそれぞれに対する読みを入力する入力手段と,
前記入力手段により入力された複数の漢字の読みに対して,各漢字の読みに対応する漢字候補を抽出する漢字候補抽出手段と,
前記漢字候補抽出手段により抽出された漢字候補を含む熟語の候補を抽出する熟語候補抽出手段と,
前記熟語候補抽出手段により抽出された熟語の候補から,前記漢字候補抽出手段により抽出された前記各漢字の読みに対応する漢字候補を共通して含む熟語を抽出する熟語抽出
手段と,
前記熟語抽出手段により抽出された熟語を出力する熟語出力手段として機能させるための漢字検索プログラム。」

ハ.「【0031】
本実施形態では,熟語「玉蜀黍」の説明情報を辞書で検索したい場合に,この熟語の読み「とうもろこし」が分からない場合には,この熟語に含まれる漢字の読みを個別に入力することで,見出し語検索機能により見出し語とする熟語「玉蜀黍」(あるいは熟語の読み)を抽出して電子辞書機能を実行させることができる。」

ニ.「【0034】
(第1実施形態)
次に,第1実施形態における電子辞書装置の動作について,図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。第1実施形態では,電子辞書機能により辞書検索しようとする熟語について読みが分からない場合,別読み検索入力により熟語に含まれる漢字の読みを個別に入力することで,こうした熟語についての検索を可能にする。」

ホ.「【0038】
図6では,熟語「玉蜀黍」の読みが分からないため第1番目の漢字「玉」の読み「たま」と,第2番目の漢字「蜀」の読み「しょく」が入力された状態を示している。」

ヘ.「【0050】
すなわち,図9に示す熟語候補メモリ14cに記憶された読み「たま」に対応する熟語候補(漢字「玉」「球」…を含む熟語)と,読み「しょく」に対応する熟語候補(漢字「食」「蜀」…を含む熟語)において,読み「たま」に対して抽出された漢字「玉」「球」…と読み「しょく」に対して抽出された漢字「食」「蜀」…とを共通して含む熟語候補を抽出する。
【0051】
図9に示す例では,漢字「玉」「蜀」とを共通して含む熟語候補「玉蜀黍」が抽出される。制御部10は,熟語候補メモリ14cから抽出された熟語候補「玉蜀黍」を最終候補として最終候補メモリ14dに記憶させる。図10には,最終候補メモリ14dに記憶された最終候補とする熟語を示している。」

ト.「【0059】
さらに,前述した説明では,漢字位置の前後関係が正しい熟語のみが抽出されるようにしているが,熟語の何れに位置する漢字に対する読みが入力されたかに応じて,熟語の候補から該当する位置に漢字候補を含む熟語を抽出するようにしても良い。
【0060】
例えば,別読み検索入力画面において,熟語に含まれる漢字の読みを入力する場合に,何文字目の読みであるかを区別して入力できるようにしておく。制御部10は,読みに対して抽出された単漢字候補をもとに熟語候補を抽出する場合に,何文字目の読みが入力されたかに応じて,該当する位置に単漢字候補を有する熟語のみを抽出する。」

上記周知例2?3に開示されているように,「複数の単漢字とその漢字が熟語のどの位置で使われているかの情報を設定して熟語を検索する」ことは周知技術である。

(3)対比

以下,補正後の発明と引用発明を対比する。

イ.漢字検索システム全体について

補正後の発明の「単漢字または熟語」は「または」で関連付けられる選択肢であるから,その一方である「熟語」について検討すれば十分である。そして当該「熟語」を含む補正後の発明の「検索対象となる熟語である検索対象漢字」と引用発明の検索対象である「漢字単語」の間に実質的な差異はなく,また補正後の発明の「漢字検索システム」と引用発明の「漢字検索装置」の間にも実質的な差異はない。
したがって,補正後の発明の「コンピュータを使用して,検索対象となる単漢字または熟語である検索対象漢字を検索する漢字検索システムであって,前記コンピュータにより制御される」という構成と,引用発明の「検索情報を入力して,難読漢字を含む漢字単語を探索出力する漢字検索装置にあって」という構成は,いずれも「検索対象となる熟語である検索対象漢字を検索する漢字検索システムであって」という構成である点で共通する。
また,補正後の発明は前記「漢字検索システム」が「コンピュータを使用して,前記コンピュータにより制御される」ものであるのに対し,引用発明が当該補正後の発明にかかる構成を備えているか否か不明である点で相違している。

ロ.入力部について

補正後の発明の「記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字または既知熟語の位置を示す2以上の漢字位置」と,引用発明の「前記可読漢字の前記漢字単語内の位置」は,「記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字の位置を示す漢字位置」の点で一致し,上記漢字位置が,補正後の発明では「2以上」であるのに対し,引用発明では「2以上」であるかどうか不明な点で相違する。なお,補正後の発明の「既知単漢字または既知熟語」は「または」で関連付けられる構成であるから,「既知単漢字」について検討すれば十分である。
また,補正後の発明の「指定された前記漢字位置の単漢字または熟語,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字または前記既知熟語の読みその他の文字特定情報」と,引用発明の「前記漢字単語における可読漢字自体あるいは可読漢字の読みがな」は,「指定された前記漢字位置の単漢字,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字の読みの文字特定情報」の点で一致する。なお,補正後の発明の「単漢字または熟語」「前記既知単漢字または前記既知熟語」は,「または」で関連付けられる構成であるから,それぞれ「単漢字」,「既知単漢字」について検討すれば十分である。

また,引用発明の入力部は,「前記可読漢字の前記漢字単語内の位置」を指定可能であり,「前記漢字単語における可読漢字自体あるいは可読漢字の読みがな」を入力可能である。
したがって,補正後の発明の「前記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字または既知熟語の位置を示す2以上の漢字位置を同時に指定可能であり,かつ,指定された前記漢字位置の単漢字または熟語,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字または前記既知熟語の読みその他の文字特定情報を入力可能な入力部」と,引用発明の「前記漢字単語における可読漢字自体あるいは可読漢字の読みがなと,前記漢字単語の字数と,前記可読漢字の前記漢字単語内の位置と,前記漢字単語の品詞を含む属性識別と,からなる検索情報を入力する入力部」は,「前記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字の位置を示す漢字位置を指定可能であり,かつ,指定された前記漢字位置の単漢字,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字の読みの文字特定情報を入力可能な入力部」の点で共通する。
また補正後の発明は,漢字位置を「2以上」,「同時」に指定可能であるのに対し,引用発明は漢字位置を指定可能であるものの,「2以上」,「同時」に指定可能かどうか不明な点で相違する。

ハ.入力制御手段について

補正後の発明は,「1回の前記検索対象漢字の検索において,同時に前記漢字位置を1以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する1以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する入力制御手段」を備えるのに対し,引用発明は,上記入力制御手段を備えていない。

ニ.漢字検索手段について

引用発明の「読みがなの漢字変換に用いる単漢字辞書」や「漢字単語の探索に用いる漢字単語辞書」はデータベースであるから,補正後の発明の「前記入力部により入力されたすべての前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報を含む条件を満たす前記検索対象漢字の候補を,データベース部から抽出する漢字検索手段」と,引用発明の「読みがなの漢字変換に用いる単漢字辞書と,漢字単語の探索に用いる漢字単語辞書と,前記検索情報に基づいて,前記単漢字辞書ならびに漢字単語辞書を用いて,漢字単語を探索する検索エンジン手段」は,いずれも「前記入力部により入力された前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報を含む条件を満たす前記検索対象漢字の候補を,データベース部から抽出する漢字検索手段」である点で共通する。
また,補正後の発明の「すべての前記漢字位置」は,2以上の漢字位置の「すべて」と解されるから,引用発明は「すべて」にかかる構成を備えていない点で相違する。

ホ.表示制御手段について

引用発明の「前記検索エンジン手段の探索過程および探索結果を出力処理する結果表示処理手段」において,出力処理とは「前記結果表示処理手段の出力を表示する表示部」を制御して表示させる処理と解される。
また,探索結果を出力処理することは,検索対象漢字の候補をすべて表示させることにほかならない。
したがって,補正後の発明の「表示部を制御して,前記漢字検索手段によって検索された前記検索対象漢字の候補をすべて表示させる表示制御手段」と,引用発明の「前記検索エンジン手段の探索過程および探索結果を出力処理する結果表示処理手段」の間に実質的な差異はない。

したがって,補正後の発明と引用発明は,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「検索対象となる熟語である検索対象漢字を検索する漢字検索システムであって,
前記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字の位置を示す漢字位置を指定可能であり,かつ,指定された前記漢字位置の単漢字,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字の読みの文字特定情報を入力可能な入力部と,
前記入力部により入力された前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報を含む条件を満たす前記検索対象漢字の候補を,データベース部から抽出する漢字検索手段と,
表示部を制御して,前記漢字検索手段によって検索された前記検索対象漢字の候補をすべて表示させる表示制御手段と,
を備える漢字検索システム。」

(相違点1)
漢字検索システムの全体構成に関し,補正後の発明は「漢字検索システム」が「コンピュータを使用して」,「前記コンピュータにより制御される」ものであるのに対し,引用発明が当該補正後の発明にかかる構成を備えているか否か不明である点。

(相違点2)
入力部の構成に関し,補正後の発明が「2以上の漢字位置を同時に指定可能」であるのに対し,引用発明は漢字位置を指定可能であるものの,「2以上」を「同時」に指定可能かどうかは不明である点。

(相違点3)
補正後の発明は「1回の前記検索対象漢字の検索において,前記漢字位置を2以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する2以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する入力制御手段」を備えるの対し,引用発明は,上記入力制御手段を備えていない点。

(相違点4)
漢字検索手段に関し,補正後の発明は,指定された2以上の漢字位置に対して「すべての前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報」を検索の条件とするのに対し,引用発明は,指定された漢字位置(可読漢字の漢字単語内の位置)が2以上であるかどうか不明であり,したがって,検索の条件は2以上の漢字位置の「すべて」ではない点。

(4)相違点の検討・判断

(相違点1)について
まず,上記相違点1について検討するに,入力部から入力された読み等に基づいて,漢字単語辞書を検索し,漢字単語の候補を表示するようなコンピュータは周知である。
したがって,引用発明の漢字検索装置を,周知技術であるコンピュータを用いて実現し,「コンピュータ(CPU)を使用して,前記コンピュータ(CPU)により制御される」ように構成する程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

(相違点2)(相違点4)について
引用文献には,「発明が解決しようとする課題」として,次の事項が記載されている(下線は,当審において付与した。)。

「【0006】具体的には,単語「国後半島(くなしりはんとう)」を先頭,末尾それぞれ一文字を手がかりとして検索処理を実行する場合,使用者が「国-島」「くな-とう」と入力したならば検索処理は正しく実行されるが,「くに-しま」「くに-とう」や,また読みと漢字の組み合わせである「国-しま」「くに-島」などの場合でも検索はできない。
【0007】この発明の目的は,使用者によって入力される探索対象の漢字や探索する漢字単語のうちの可読漢字の読みがな,文字数,漢字単語内での可読漢字の位置,及び品詞情報を受け取り,単漢字辞書を用いて変換した可読漢字を合わせて,漢字単語辞書の探索を行うことにより,該当する漢字単語を抽出する。」

「【0010】使用者が,入力手段を用いて漢字単語探索に必要な情報である可読漢字の読みがな,合計文字数,単語内での可読漢字位置,品詞情報を入力することにより,検索エンジン部がこれらの情報を基に,単漢字辞書,及び漢字単語辞書の探索を行い,条件に合致した漢字単語を抽出し,抽出された漢字単語を探索結果として結果表示部が出力手段へ表示する。これにより一部分しか読みの分からない漢字単語の変換候補が表示され,より的確な漢字単語の抽出が実現し,更に,漢字単語の入力が容易になる。」

上記記載によれば,引用発明は,「国後半島(くなしりはんとう)」を検索する場合に,従来技術では「くに-しま」「くに-とう」(正しい読みがなではない場合)や,「国-しま」「くに-島」(読みと漢字を組合せる場合)の入力では検索することができなかったという課題を解決しようとするものであり,したがって,漢字単語内の2つの位置に対応する,2つの可読漢字の単漢字または読みの入力を意図したものである。
上記段落10に記載された「一部分しか読みの分からない漢字単語」は,「国後半島」の例のように可読文字が2つある場合も含み,「一部分」とは,1文字に限定されないものである。
さらに,上記周知例1に開示されているように,「難読文字を含む単語の検索に際し,先頭,末尾等の二つの可読文字を手がかりとして検索処理を実行する」ことは周知技術であり,また周知例2?3に開示されているように,「複数の単漢字とその漢字が熟語のどの位置で使われているかの情報を設定して熟語を検索する」ことも周知技術である。
したがって,引用発明において,難読文字を含む単語の検索に際し,周知技術のように複数の可読文字及びその位置を利用して検索処理を実行することは普通に想到されることであり,その場合に,補正後の発明のような「2以上の漢字位置を同時に指定可能」であり(相違点2),「すべての前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報」を検索の条件とする(相違点4)ように構成することは当業者であれば適宜なし得ることである。

(相違点3)について
本願明細書には,入力制御手段と入力部とについて,次の事項が記載されている。

「【0047】
・・・(中略)・・・また,文字入力部25は,CPU21からの命令に従って入力情報(例えば,ユーザによって操作された操作情報,入力された文字情報等)を入力して,RAM23に記憶する。」

「【0051】
漢字検索システム10の文字入力制御部11は,文字入力部25(タッチ入力部25a,手書き入力部25b,操作部25c等)を制御して,検索対象となる単漢字または熟語である検索対象漢字の中の既知単漢字や既知熟語に対応する入力文字を,漢字位置を指定して入力させ,入力させた入力文字及び漢字位置を一時記憶部18に記憶する。」

上記記載によれば,「入力部」は,タッチ入力部,手書き入力部,操作部などの入力機器を含み,また,「入力制御手段」は,これらの入力機器を制御するものであって,CPU21を含むものである。
しかしながら,電子辞書装置,携帯電話,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム装置,家庭用ゲーム機,スタンドアローン型のコンピュータ等の装置が,タッチ入力部,手書き入力部,操作部などの入力機器と,これらの入力機器を制御するCPUを備えることは,周知である。
したがって,前記「(相違点1)について」において検討したとおり,引用発明をコンピュータで構成し,その際,引用発明の入力部を,タッチ入力部,手書き入力部,操作部などの入力部と,これらの入力部を制御するCPUすなわち入力制御手段とで構成することは格別困難ではない。
そして,前記「(相違点2)(相違点4)について」に記載したように,入力部が「2以上の漢字位置を同時に指定可能」である場合,入力制御手段であるCPUは,「1回の前記検索対象漢字の検索において,前記漢字位置を2以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する2以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する」ことになるのは普通に想到されることである。

そして,補正後の発明の奏する作用効果も,引用発明及び周知例1?3に記載された周知技術から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
以上のとおりであるから,補正後の発明は,引用発明及び周知例1?3に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結論

以上のとおり,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合していない。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明

引用発明は,上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比

そこで,本願発明と引用発明を対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものであり,指定される漢字位置の数については相違がない。したがって,本願発明と引用発明との一致点,相違点は次のとおりである。

(一致点)
「検索対象となる単漢字または熟語である検索対象漢字を検索する漢字検索システムであって,
前記検索対象漢字を構成する1個以上の単漢字からなる漢字列の中に存在する既知単漢字の位置を示す1以上の漢字位置を同時に指定可能であり,かつ,指定された前記漢字位置の単漢字,指定された前記漢字位置から始まる前記既知単漢字の読みの文字特定情報を入力可能な入力部と,
前記入力部により入力された1以上の前記漢字位置とそれに対応する前記文字特定情報のすべてを含む条件を満たす前記検索対象漢字の候補を,データベース部から抽出する漢字検索手段と,
表示部を制御して,前記漢字検索手段によって検索された前記検索対象漢字の候補をすべて表示させる表示制御手段と,
を備えることを特徴とする漢字検索システム。」

(相違点1)
漢字検索システムの全体構成に関し,本願発明は「漢字検索システム」が「コンピュータを使用して」,「前記コンピュータにより制御される」ものであるのに対し,引用発明が本願発明にかかる構成を備えているか否か不明である点。

(相違点2)
本願発明は「1回の前記検索対象漢字の検索において,同時に前記漢字位置を1以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する1以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する入力制御手段」を備えるのに対し,引用発明は,上記入力制御手段を備えていない点。

4.判断

(相違点1)について
前記第2,3.,(4)の「(相違点1)について」において検討したとおり,引用発明の漢字検索装置を,周知技術であるコンピュータを用いて実現し,「コンピュータ(CPU)を使用して,前記コンピュータ(CPU)により制御される」ように構成する程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

(相違点2)について
前記第2,3.,(4)の「(相違点3)について」において検討したとおり,コンピュータが,タッチ入力部,手書き入力部,操作部などの入力機器と,これらの入力機器を制御するCPUを備えることは周知であるから,引用発明をコンピュータで構成し,その際,引用発明の入力部を,タッチ入力部,手書き入力部,操作部などの入力部と,これらの入力部を制御するCPUすなわち入力制御手段とで構成することは格別困難ではない。
その場合,入力部は,1回の検索対象漢字(漢字単語)の検索において,同時に漢字位置(可読漢字の漢字単語内の位置)を1指定して,指定された位置に対応する1の文字特定情報(可読漢字自体あるいは可読漢字の読みがな)を入力することになるから,入力制御手段が,「1回の前記検索対象漢字の検索において,同時に前記漢字位置を1以上指定して,該指定された前記漢字位置に対応する1以上の前記文字特定情報の入力を可能とするよう前記入力部を制御する」ことは,普通に想到されることである。

そして,本願発明の奏する作用効果も,引用発明及び周知技術から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。

第4 上申書の補正案について

審判請求人は平成26年11月21日付けで上申書を提出し,以下の内容を補正したい旨の申し出をしている。
(補正案)
「前記データベース部は,辞書として登録されている複数の漢字列の並び順を,各漢字の位置を基準にして漢字文字コードの順番に整列した複数の熟語検索用のデータ部を有し,
前記漢字検索手段は,複数の前記熟語検索用のデータ部の中から,入力された前記漢字位置を基準にして整列されている前記熟語検索用のデータ部を用いて,前記検索対象漢字の候補を抽出する」
構成を補正後の発明の構成の末尾に追加して補正後の発明を更に限定する。
しかしながら,上記補正にかかる技術手段も周知例2の摘記事項ハ.の段落42に開示されているように周知技術であり,本件出願は上記補正案のように補正しても,なお独立して特許を得ることができないものである。
したがって,上記補正案を採用することはできない。
 
審理終結日 2015-07-27 
結審通知日 2015-07-30 
審決日 2015-08-18 
出願番号 特願2010-178708(P2010-178708)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本郷 彰  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 石川 正二
手島 聖治
発明の名称 漢字検索システム、漢字検索方法及びプログラム  
代理人 松下 亮  

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