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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F03D
管理番号 1306218
審判番号 不服2014-22422  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-16 
確定日 2015-10-06 
事件の表示 特願2013-264533「動力装置・タービン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月18日出願公開,特開2015- 94353〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,平成25年11月13日(受付日:平成25年11月14日)の特許出願であって,平成26年 8月27日付けで拒絶査定(発送日:平成26年 9月 9日)がなされ,この査定を不服として,平成26年10月16日(受付日:平成26年10月17日)に本件審判が請求された。
この出願の請求項1,2に係る発明は,出願当初の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「 【請求項1】
風力と走行した場合の空気抵抗を活用した動力補助装置」

2.刊行物とその記載事項
原査定における拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-97411号公報(以下,「刊行物」という。)には,「車両用風力発電装置」に関し,図面とともに次の事項が記載されている(下線部は,当審により付与した。)。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,車両が走行時に受ける風圧を利用して発電するために使用される車両用の風力発電装置に関するものである。」

・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記のような課題に鑑み,車両が走行する際に発生する風圧を利用して電力を作り,車両に予め搭載されているバッテリー以外からも電力を供給することができる車両用風力発電装置を提供するのを目的とするものである。」

・「【0007】
【実施例】風力発電装置1は,図1乃至図5に示すように,全体が平な長方体状で,中央の隔壁8を介して2本の空気流通路3,3が対向して形成されたダクト本体2と,このダクト本体2全面を覆うカバー4と,空気流通路3,3内に取付けられた大小6個の複数の横置型の回転翼5,6,7及びこれら回転翼5,6,7の回転軸に連結された発電機9,10,11とから大略構成されている。
【0008】空気流通溝3,3は車両の進行方向の正面からの風を取り込むための正面開口部3Aと,途中で分岐して両側面からの風を導入する側面開口部3Bを有し,これら開口部3A及び3Bには防塵や防虫・防鳥のための金網12が張設されている。ダクト本体2内部は,開口部3A及び3Bから流線形状の立ち上が面13A及び13Bが形成された整流板13でもって上下2室に区画されており,その上方の区画室内に,車両走行時の風を受けて回転する大小6個の回転翼5,6,7が取付けられると共に,下方の区画室内にこれら回転翼5,6,7の回転軸と連結された大小6個の発電機9,10,11が取付けられ,これら回転翼5,6,7の回転によって電力を得るように構成されている。
【0009】ここで,ダクト本体2の空気取入口である正面開口は,空気流通溝3,3よりも拡径,すなわち,空気流通溝3,3は空気取入口から空気排出口に向かって漸次狭窄された形状とされている。これにより,開口より流入した風量が圧縮された状態となり回転翼5,6,7に作用する風圧を高めることができる。更に,複数の回転翼5,6,7が空気の流入方向に対して略直列に配置されていることにより風速が高まり発電機を効率良く回転させることができる。また,カバー4にも回転翼5,6,7と対応した位置に略半円錐形のドーム状風洞14,15で覆われた通気口4A及び4Bが設けられ,ダクト本体2の上方からの風も導入できるようにされている。また,ダクト本体2の背面部には,発電機から発生する熱を放熱するための複数の排気窓19と,車両の停車中にダクト内に侵入した雨水を排出するための排水口20が設けられている。
【0010】図6に示すように,車両16の屋根上には,本発明の風力発電装置1が載置されている。風力発電装置1は,その長手方向が車両16の前後方向と平行に配置されている。また,車両16にはバッテリー又はモーター17が搭載されており,これらバッテリー又はモーター17は風力発電装置1に電気的に接続されている。尚,バッテリー17はニッケル水素電池やリチウムイオン電池などからなり,車両16の電気系統に電力を供給するようになっている。
【0011】以上のように構成された本実施例においては,車両16が走行する際に発生する風を空気取入口3A,3B及び4A,4Bからダクト本体2内に導入する。この時,風は図4に示ように空気流通溝3,3を通過するように流れる。この風により回転翼5,6,7が回転し,風力発電装置1の発電機9,10,11が動作して電力を発生させることができる。そして,風力発電装置1は発生させた電力をバッテリー又はモーター17に送る。すなわち,車両16が走行するときに生じる風によって風力発電装置1を動作させ,発生した電力をバッテリー17に蓄積したりモーター17の動力として直接使用することができる。これは車両走行時の風による空気抵抗を車両の流線形状に沿って流すことにより処理していたものを回転翼に連結された発電機の動力源として変換利用し,以って,ガソリン車の補助動力である電動モーターの動力源として発電するものである。尚,風力発電装置1に導入される風の指向性を向上させるために,車両の前部に図5に示すような流動板18を設けると良い。また,回転翼の寸法,枚数は適宜変更可能である。また空気取入口の形状やダクトの形状も車両のデザインや需要者の好みに合わせて適宜変更可能である。」

これらの事項及び図示内容を総合すると,刊行物には,以下の発明(以下,「刊行物に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。
「車両走行時の風による空気抵抗を回転翼に連結された発電機の動力源として変換利用し,ガソリン車の補助動力である電動モーターの動力源として発電する風力発電装置1」

3.発明の対比
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると,後者の「車両走行時の風による空気抵抗」は前者の「走行した場合の空気抵抗」に相当し,以下同様に,「回転翼に連結された発電機の動力源として変換利用」する態様は「活用」した態様に,「ガソリン車の補助動力である電動モーターの動力源として発電する風力発電装置1」は「動力補助装置」にそれぞれ相当する。
そうすると,両者は,
「走行した場合の空気抵抗を活用した動力補助装置」
の点で一致し,以下の点で一応相違する。
<相違点>
走行した場合の空気抵抗とともに,本願発明では,「風力」を活用したものであるのに対して,刊行物に記載された発明では,車両が走行する際に発生する風(風力)を活用するものであるものの,それ以上の特定はなされていない点。

4.相違点についての判断
(a)まず,本願明細書には,本願発明の「風力」「風」及び「空気抵抗」に関して,
(a1)「【課題を解決するための手段】
【0004】エンジンなどに走行した場合に発生した風力を活用して発電をしたり,回転体を回転しやすくするとともに停車中にも風がある場合,発電をして,バッテリーチャージをして燃費を向上させる。
【発明の効果】
【0005】空気抵抗と言うマイナスを活用してプラスに変え発電をする。」
(a2)「【0007】そして,停車中に風がある場合,風力発電ができて,バッテリーチャージをするのでとっても燃費がいいです。」
(a3)「【発明を実施するための形態】・・・
【0009】図1は車のフロントに通風口を取り付けて図5の通風管よりエンジン内に風が入り回転体が回転しやすいように補助する作用があります。
【0010】また通風及び排気管より入った圧力は図7も回転体を回転させて発電するようになっています。
【0011】電気自動車の場合は,図6の通風管より風が入り,図4の回転体の回転を補助する作用と図7の回転体を回転させて発電するようになっています。
・・・
【0014】走行スピードが上がれば上がるほど空気抵抗により動力補助及び発電をします。
・・・
【0016】駐車しても,風が強い場所では発電ができます。最高のエコカーと思っています。」
なる記載が存在する(下線部は当審により付与した。)。
そうすると,本願発明の「風力と走行した場合の空気抵抗を活用した動力補助装置」における「風力・・を活用」とは,上記(a3)の【発明を実施するための形態】に記載されているように,車のフロントに取り付けられた通風口から入った風を発電機の回転のために利用するものを含むものであって,「駐車しても,風が強い場所では発電ができ」るものを一実施形態とするものと解される。
(b)一方,刊行物記載の風力発電装置1は,
「【0007】
【実施例】風力発電装置1は,図1乃至図5に示すように,全体が平な長方体状で,中央の隔壁8を介して2本の空気流通路3,3が対向して形成されたダクト本体2と,このダクト本体2全面を覆うカバー4と,空気流通路3,3内に取付けられた大小6個の複数の横置型の回転翼5,6,7及びこれら回転翼5,6,7の回転軸に連結された発電機9,10,11とから大略構成されている。
【0008】空気流通溝3,3は車両の進行方向の正面からの風を取り込むための正面開口部3Aと,途中で分岐して両側面からの風を導入する側面開口部3Bを有し,これら開口部3A及び3Bには防塵や防虫・防鳥のための金網12が張設されている。
・・・
【0009】 ・・・
また,カバー4にも回転翼5,6,7と対応した位置に略半円錐形のドーム状風洞14,15で覆われた通気口4A及び4Bが設けられ,ダクト本体2の上方からの風も導入できるようにされている。
・・・
【0011】以上のように構成された本実施例においては,車両16が走行する際に発生する風を空気取入口3A,3B及び4A,4Bからダクト本体2内に導入する。この時,風は図4に示ように空気流通溝3,3を通過するように流れる。この風により回転翼5,6,7が回転し,風力発電装置1の発電機9,10,11が動作して電力を発生させることができる。・・・車両走行時の風による空気抵抗を・・・回転翼に連結された発電機の動力源として変換利用し,以って,ガソリン車の補助動力である電動モーターの動力源として発電する」(下線部は当審により付与した。)ものであって,本願の【発明を実施するための形態】に示された実施形態と同様に,車のフロント面に通風口を取り付け,そこから風が入り回転体が回転し発電する構成を含むものであるものの,本願が本願発明の一実施形態として示している 「停車」時や「駐車」時の発電についての言及はなされていない。
(c)しかしながら,刊行物に記載された発明の「車両が走行する際に発生する風」により生じる力も「風力」であることには変わりがない。
また,車のフロント面等に通風口を取り付け,そこから風が入り回転体が回転し発電する構成のものにおいては,十分な風が流入することを前提として,風の発生原因に関わりなく(すなわち,車両走行時の風でも,自然風でも同様に)発電機が回転されることとなることは,当業者であれば普通に認識し得ることであり,刊行物に記載された発明においても「停車」時や「駐車」時に風力で発電することは当業者にとって明らかである。
そうすると,上記相違点における差異は,実質的なものとは認められない。
したがって,本願発明は,刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し,特許を受けることができない。

[予備的判断]
(d)ここで,刊行物に記載された発明が,停車時や駐車時における「風力」により発電(活用)することを明示していないことをもって,上記相違点が実質的なものであるとして,さらに予備的に検討する。
刊行物の段落【0009】には「空気流通溝3,3は空気取入口から空気排出口に向かって漸次狭窄された形状とされている。これにより,開口より流入した風量が圧縮された状態となり回転翼5,6,7に作用する風圧を高めることができる。更に,複数の回転翼5,6,7が空気の流入方向に対して略直列に配置されていることにより風速が高まり発電機を効率良く回転させることができる。」と,開口より流入する風により発電機を効率良く回転させることが望ましいこととして記載されている。
そうすると,刊行物に記載された発明の「風による空気抵抗を回転翼に連結された発電機の動力源」とするにあたり,刊行物に望ましいこととして記載されている,発電機が効率良く回転される構成として,停車時や駐車時における「風が強い」程度でも発電できるものとして,本願発明の相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
なお,走行中及び停車中の風でも発電が可能なことは,本願出願前に周知である(必要があれば,登録実用新案第3166133号公報の請求項2,特開2012-215149号公報の段落【0028】,【0029】,特開2012-177354号公報の段落【0014】を参照のこと。)。
(e)したがって,上記相違点が実質的なものであるとしても,本願発明は,刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するから特許を受けることができず,また,同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-07-27 
結審通知日 2015-08-04 
審決日 2015-08-17 
出願番号 特願2013-264533(P2013-264533)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F03D)
P 1 8・ 113- Z (F03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 所村 陽一小河 了一  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 藤井 昇
松永 謙一
発明の名称 動力装置・タービン  

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