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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1306346
審判番号 不服2014-2410  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-07 
確定日 2015-10-07 
事件の表示 特願2010-528029「ミクロ孔質ポリマーを含む有機化学センサー、及び使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 9日国際公開、WO2009/045733、平成22年12月24日国内公表、特表2010-540966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年9月18日(優先権主張 2007年10月5日 米国(US))を国際出願日とする出願であって,平成24年9月25日付けで拒絶理由が通知され,平成25年1月30日に意見書の提出及び手続補正がなされ,同年2月19日付けで拒絶理由が通知され,同年4月22日に意見書の提出がなされ,同年9月27日付けで拒絶査定がなされ,平成26年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり,そして,当審において,平成27年4月22日に面接審理をしたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成25年1月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
有機化学検体を感知するための感知素子であって,
第1電極及び第2電極と,
前記第1及び前記第2電極の少なくとも近位に配置されるミクロ孔質で疎水性の検体応答性誘電体材料であって,固有ミクロ孔質のポリマーであるミクロ孔質で疎水性の検体応答性誘電体材料と,
を含み,
前記固有ミクロ孔質のポリマーが,剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み,前記剛性リンカーは,前記リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように,ねじれ点を有する,感知素子。」

第3 引用刊行物およびその記載事項
(1)本願の優先権主張の日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-281610号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「湿度センサ,アルコ-ルセンサまたはケトンセンサ」について図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与した。)
(1ーア)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,湿度センサ,アルコールセンサまたはケトンセンサに関する。更に詳しくは,製作性および応答性にすぐれた湿度センサ,アルコールセンサまたはケトンセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】湿度センサを検出原理別に大別すると,機械式センサ,乾湿球センサ,電磁式センサ,インピーダンス変化式センサの4つに分けられ,これらの中ではインピーダンス変化式センサが注目されており,これには抵抗変化型と容量変化型の2種類のものがある。
【0003】このインピーダンス変化式センサを感湿材料の面から分類すると,セラミックス系のものと高分子系のものに大別される。セラミックス系のものには,Ti,Sn,Zr,Mg,Cr,Si,Vなどの酸化物が用いられており,従って耐熱性が高く,使用温度範囲も広いが,感湿特性がセラミックスの多孔構造に由来しているために再現性に乏しく,また吸着水分のキャピラリコンデンセーションによる経時変化も避けられないなどの問題点を有する。
【0004】一方,高分子系のものとしては,ポリアクリル酸,ポリスチレンスルホン酸,ポリメチルアミノエチルメタクリレート塩,スチレン-ジビニルベンゼン共重合体のカルボン酸(塩)誘導体などが挙げられ,これらは高分子自体の吸湿性,イオン導電性に由来する感湿特性を示すため再現性が良好であり,また汚染に強く,他のガス種の影響も受け難いなどの利点があるが,耐熱性が低いという問題がある。耐熱性を有する高分子系のものには,ポリイミドを用いたものもあるが,これはポリアミック酸の形で基板上に塗布した後加熱して,縮重合反応させてポリイミドとするものであり,生産性の点で問題がある。
【0005】また,アルコールセンサ,ケトンセンサなどのガスセンサとして,実用化または研究されているセンサ素子は,半導体式のものと接触燃焼式のものに大別される。
【0006】半導体式のセンサ素子は,被検ガスがセンサ素子表面に吸着することで,センサの抵抗値が変化する特性を利用してガスを検知しており,このタイプの素子は,経時的に感度が変化することが最大の問題点となっている。その原因は,素子を400℃程度に加熱して使用しなければならないので,素子の焼結状態や表面状態が熱的に変化するためであるとされている。一方,接触燃焼式のセンサ素子は,白金線の抵抗値変化をガス検知に応用したものである。このため,ガスの選択性が殆んどないという欠点を有している。
【0007】これらのガスセンサの使用に際しては,素子の感度を向上させるために加熱する必要があり,熱エネルギーの一部が素子の外部に放熱されて,熱損失が大きい点も問題である。また,これらのセンサを製作する場合には,素子の絶縁性基板上への製膜,焼成,電極およびヒータの形成など多数の工程を必要としている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,高分子系の感湿材料を用いたインピーダンス変化式の湿度センサであって,製作性および応答性の点ですぐれたものを提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は,各種の有機物質蒸気中,アルコールまたはケトンに対して選択性があり,また素子を加熱する必要がなく,しかも製作性および応答性の点ですぐれたアルコールセンサまたはケトンセンサを提供することにある。」

(1ーイ)
「【0010】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の諸目的は,次のような構成をとる湿度センサ,アルコールセンサまたはケトンセンサによって達成される。
(1)絶縁性基板,1組の電極およびポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]被覆膜を順次積層した湿度センサ,アルコールセンサまたはケトンセンサ
(2)絶縁性基板,下部電極,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜および上部電極を順次積層させた湿度センサ,アルコールセンサまたはケトンセンサ
(3)下部電極を兼ねた導電性基板,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜および上部電極を順次積層させた湿度センサ,アルコールセンサまたはケトンセンサ」

(1ーウ)
「【0019】また,本発明に係るアルコールセンサまたはケトンセンサでは,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜内での物質の拡散の特徴が有効に利用されている。即ち,薄膜として作製したポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]にアルコールガスまたはケトンガスを勢い良く接触させると,アルコールガスまたはケトンガスがポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜内に素早く拡散し,膜内の分子鎖間隙あるいは微多孔質内表面に収着される。接触させるアルコールガスまたはケトンガスの温度は,湿度センサの場合と同様に120℃以下,好ましくは約0?100℃の範囲内であり,一般には室温下である。
【0020】この状態で膜へ外部から電気的な刺激を与えると,アルコールまたはケトンの膜内への収着量に応じて,電気信号の変化としてセンシングが可能となる。電気信号の検出は,直流の体積抵抗,表面抵抗,交流のインピーダンス変化,容量変化など任意の方法によって行うことができる。内部に収着されたアルコールまたはケトンは,数秒程度の比較的短い時間で膜の外部に放出されるため,応答性の点でもすぐれたセンシングが可能となる。
【0021】なお,観測される電気信号の変化は,アルコールのOH基またはケトンのCO基に由来するので,アルコールやケトンの種類については,特に限定されない。」

上記(1ーア)?(1ーウ)の記載を参照すると,上記引用刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「絶縁性基板,下部電極,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜および上部電極を順次積層させたアルコールセンサまたはケトンセンサ。」(以下,「引用発明」という。)

(2)本願の優先権主張の日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許出願公開第2006/0246273号明細書(以下,刊行物2という。)には,「Microporous polymer material」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア)「[0008]・・・ poly(1-trimethylsilyl-1-propyne), also known as PTMSP or poly(TMSP)・・・ .Numerous publications and patents describe the use of PTMSP-based membranes for ・・・ sensors ・・・.The technological potential of PTMSP is clear, however, it has several serious drawbacks including rapid ageing-involving the loss of its high gas permeability-and lack of stability towards oxygen/radiation/UV light/heat or various combinations of these factors.
[0009]An object of the present invention is to obviate or mitigate the aforementioned disadvantages.
[0010]According to a first aspect of the present invention there is provided a microporous material comprising organic macromolecules comprised of first generally planar species connected by rigid linkers having a point of contortion such that two adjacent first planar species connected by the linker are held in non-coplanar orientation, subject to the proviso that the first species are other than porphyrinic macrocycles. 」「当審仮訳:[0008]・・・PTMSPまたはポリ(TMSP)としても知られているポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)・・・。多くの刊行物及び特許は,・・・センサ・・・としてのPTMSP系膜の使用が記載され・・・。PTMSPの技術的な可能性は,明らかであるが,それは,その高いガス透過性の損失および酸素/放射/ UV光/熱またはこれらの要因の様々な組合せに対する安定性の欠如を伴う急速な老朽化を含むいくつかの重大な欠点を有する。
[0009]本発明の目的は上記の欠点を回避または軽減することである。
[0010]本発明の第1の態様によれば,剛性リンカーによって連結される第1のほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み,前記剛性リンカーは,前記リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように,ねじれ点を有するミクロ孔質材料が提供され,その第1の種はポルフィリン大員環以外である。」

(2-イ)「[0043]A eleventh aspect of the present invention provides a molecular sensor comprising a microporous material in accordance with the first or second aspect of the invention. 」「当審仮訳:[0043]本発明の第11の態様は,本発明の第1又は第2の態様によるミクロ孔質材料を含む分子センサーを提供する。」

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「下部電極」と,「上部電極」とは,それぞれ,本願発明の「第1電極」と,「第2電極」に相当する。
引用発明は,「アルコールセンサまたはケトンセンサ」についての発明であるが,アルコールおよびケトンは有機化学検体であるから,引用発明の「アルコールセンサまたはケトンセンサ」は,本願発明の「有機化学検体を感知するための感知素子」に相当する。

イ 引用発明の「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜」は,ポリマーであり,上記摘記事項(1-ウ)より「アルコールガスまたはケトンガスが」「膜内に素早く拡散し,膜内の分子鎖間隙あるいは微多孔質内表面に収着されるアルコールまたはケトンの膜内への収着量に応じて,」「容量変化など」「電気信号の変化としてセンシングが可能となる」ものである。「微多孔質」は,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜固有のものといえるから,本願発明の「固有ミクロ孔質」といえ,容量変化という電気信号が変化することから,引用発明の「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜」は,本願発明の「固有ミクロ孔質のポリマーである」「検体応答性誘電体材料」に相当する。
また,引用発明は「下部電極,ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜および上部電極を順次積層させ」ているので,引用発明の「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜」は,本願発明の「前記第1及び前記第2電極の少なくとも近位に配置されるミクロ孔質」「であって,固有ミクロ孔質のポリマーであるミクロ孔質」の「検体応答性誘電体材料」に相当する。
そうすると,引用発明の「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜と,
本願発明の「前記第1及び前記第2電極の少なくとも近位に配置されるミクロ孔質で疎水性の検体応答性誘電体材料であって,固有ミクロ孔質のポリマーであるミクロ孔質で疎水性の検体応答性誘電体材料」であって「前記固有ミクロ孔質のポリマーが,剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み,前記剛性リンカーは,前記リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように,ねじれ点を有する」ものとは,
「前記第1及び前記第2電極の少なくとも近位に配置されるミクロ孔質の検体応答性誘電体材料であって,固有ミクロ孔質のポリマーであるミクロ孔質の検体応答性誘電体材料」である点で共通する。

してみれば,本願発明と引用発明とは,
「有機化学検体を感知するための感知素子であって,
第1電極及び第2電極と,
前記第1及び前記第2電極の少なくとも近位に配置されるミクロ孔質の検体応答性誘電体材料であって,固有ミクロ孔質のポリマーであるミクロ孔質の検体応答性誘電体材料と,
を含む,感知素子。」で一致し,次の点で相違している。

(相違点)
固有ミクロ孔質のポリマーであるミクロ孔質の検体応答性誘電体材料について,本願発明が,「疎水性」であり,
「剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み,前記剛性リンカーは,前記リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように,ねじれ点を有する」ものであるのに対して,引用発明が「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]膜」である点。

(1)相違点についての検討
刊行物2の摘記事項である(2-ア)には,本願発明の「剛性リンカーによって連結されるほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み,前記剛性リンカーは,前記リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように,ねじれ点を有する固有ミクロ孔質のポリマー」に相当する「剛性リンカーによって連結される第1のほぼ平面的な種からなる有機高分子を含み,前記剛性リンカーは,前記リンカーによって連結される2つの近接する平面的な種が非同一平面上の配向に維持されるように,ねじれ点を有するミクロ孔質材料」が記載されている。
そして,刊行物2記載の上記ミクロ孔質材料は,本願発明における固有ミクロ孔質のポリマーであることから,本願発明と同様に疎水性を有するものであるといえる。
さらに,引用発明に用いられている「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン」が「PTMSP」として知られていることが記載され,多くの刊行物及び特許は,センサのPTMSP系膜の使用について記載されていることが記載され,また,PTMSPの技術的な可能性は,明らかであるが,熱に対する安定性の欠如を伴う急速な老朽化を含む重大な欠点を有すると「PTMSP」の「耐熱性」に関する課題があることも記載されている。そしてその課題を上記「ミクロ孔質材料」を用いることによって解決する点まで記載されている。
その上,刊行物1の摘記事項である(1-ア)には「【0004】・・・高分子系のものとしては,・・・耐熱性が低いという問題がある」と,(1ーウ)には「【0019】・・・接触させるアルコールガスまたはケトンガスの温度は,湿度センサの場合と同様に120℃以下,・・・である。」と,引用発明のセンサには「耐熱性」も要求されることが示唆されている。
してみると,引用発明の「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン」に代えて,耐熱性のある刊行物2記載の上記ミクロ孔質材料を適用して,相違点に記載の本願発明の構成とすることは十分に動機付けがあり当業者が容易に想到するものといえる。
また,刊行物2の摘記事項である(2-イ)には,分子センサとして,上記ミクロ孔質材料を使用することが記載されており,分子センサとして誘電率の変化を測定するものは本願の優先権主張の日前に周知のものであるから,刊行物2の「分子センサ」には,誘電率の変化を測定するものも含まれているものである。してみれば,引用発明のセンサは,刊行物1の摘記事項である(1-ウ)のとおり,容量変化,すなわち誘電率の変化を測定するものであるから,引用発明の「ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン」を,刊行物2記載の上記ミクロ孔質材料に代えてみることも,容易といえる。

(2)そして,本願発明の効果も,引用発明及び刊行物2記載の事項から,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものといえない。

なお,請求人は,審判請求書において
「(iv)引用文献1と引用文献2との組み合わせについて
(a)平成25年4月22日付けで提出した意見書においても記載ように,引用文献1の[従来の技術]には,
インピーダンス変化式センサの材料は,2つのタイプに分類され,第1のタイプの材料では感湿特性が材料自体の多孔構造に由来しており,第2の材料では感湿特性が材料自体の吸湿性に由来していることが記載されており(引用文献1段落[0003]?[0004]),
引用文献1においては,第2のタイプのセンサ材料,特にポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン]が用いられていることが記載されており(引用文献1段落[0008]),
引用文献1においては,特に,第1のタイプのセンサ材料は,再現性に乏しく,また吸着水分のキャピラリコンデンセーション(毛管凝縮)による経時変化も避けられないなどの問題点を有することが記載されている(引用文献1段落[0003])。
従って,引用文献1および2を見た当業者は,引用文献2の微孔性材料が,正確に引用文献1の上記第1のタイプの材料に対応することを理解する。即ち,引用文献2の上記材料はセラミック材料よりむしろ有機ポリマー材料であるが,引用文献2の材料は安定な多孔性構造を有し,上記材料の感応性は上記微孔に入る検体から得られる。従って,引用文献2の材料は,引用文献1における問題点のすべてを有すると予測される。即ち,引用文献2の材料がある特定の用途に非常に良好であり,引用文献2に詳細に記載されているように,そのような用途においてポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン]のいくつかの欠点を克服したとしても,引用文献1の記載によって,上記引用文献2の材料がインピーダンス変化式センサの特定用途に有用でないことを明確に示している。即ち,上記引用文献2の材料は,センサの性能が経時変化を生じるキャピラリコンデンセーションを示す,即ち,上記センサが不安定であると予測される。
従って,引用文献1の上記記載は,当業者が,引用文献1のセンサに,引用文献2の材料を使用することに対して,格別の阻害要因となるものである。」(3頁下から6行?4頁20行)と主張している。
しかしながら,刊行物1(上記審判請求書における「引用文献1」)の摘記事項である(1-ア)には,【0002】?【0004】段落に従来の湿度センサについて記載されており,【0005】?【0007】段落に従来のガスセンサについて記載されていることから,請求人の主張する【0003】段落に記載された「第1のタイプの材料」は「多孔構造のもの」であるが,従来の湿度センサに用いる感湿材料である。
そうすると,請求人の主張する「再現性に乏しく,また吸着水分のキャピラリコンデンセーションによる経時変化も避けられないなどの問題点」は湿度センサに用いる場合の「多孔構造」の感湿材料の問題点である
したがって,刊行物2(上記審判請求書における「引用文献2」)の材料は,湿度センサとして用いる場合には請求人の主張する問題点を有するといえるが,ガスセンサとして用いる場合の問題点を有するものではない。
よって,請求人の上記主張は,刊行物2の材料を引用発明のガスセンサに使用することに対する阻害要因とはいえないので,請求人の上記主張は採用できない。

(3)したがって,本願発明は,引用発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。


第5 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-05-01 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2010-528029(P2010-528029)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 祐一田中 洋介  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 信田 昌男
三崎 仁
発明の名称 ミクロ孔質ポリマーを含む有機化学センサー、及び使用方法  
代理人 山田 卓二  
代理人 後藤 裕子  
代理人 西下 正石  
代理人 田中 光雄  

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