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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1306348 |
審判番号 | 不服2014-5789 |
総通号数 | 191 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-31 |
確定日 | 2015-10-07 |
事件の表示 | 特願2009- 12808「携帯型画像投影装置、画像投影方法及び画像投影プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月 5日出願公開、特開2010-171774〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成21年1月23日の出願であって、平成25年3月12日付けの拒絶理由通知に応答して平成25年5月9日付けで手続補正がなされたが、平成25年12月25日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成26年3月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 第2.平成26年3月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年3月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、請求項1に係る次の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。 (補正前の請求項1) 「投影面に表示しようとする画像である表示画像を投影する画像投影手段と、 前記画像投影手段が投影面に前記表示画像を投影したときに、当該投影面に表れている画像である投影画像を撮影する投影画像撮影手段と、 前記画像投影手段が投影する前記表示画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記投影画像との態様の差分をもとに、投影する画像を補正するための補正情報を生成する補正情報生成手段と、 前記補正情報をもとに投影する画像を変換した変換画像を生成する変換画像生成手段とを備え、 前記補正情報生成手段は、前記画像投影手段が画像を投影する方向により、もしくは投影面の態様により前記投影画像に生じた当該画像との態様の差分をもとに補正情報を生成し、 前記画像投影手段は、前記変換画像を投影面に投影し、 前記投影画像撮影手段は、前記変換画像を撮影し、 前記補正情報生成手段は、前記表示画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記変換画像との差異分をもとに、前記補正情報を生成する ことを特徴とする携帯型画像投影装置。」 とあるのを、 (補正後の請求項1) 「投影面に表示しようとする画像である表示画像を投影する画像投影手段と、 前記画像投影手段が投影面に前記表示画像を投影したときに、当該投影面に表れている画像である投影画像を撮影する投影画像撮影手段と、 前記画像投影手段が投影する前記表示画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記投影画像との態様の差分をもとに、当該表示画像を補正するための補正情報を生成する補正情報生成手段と、 前記補正情報をもとに前記表示画像を変換した変換画像を生成する変換画像生成手段とを備え、 前記補正情報生成手段は、前記画像投影手段が画像を投影する方向により、もしくは投影面の態様により前記投影画像に生じた当該画像との態様の差分をもとに補正情報を生成し、 前記変換画像生成手段は、フレーム周波数と同期させて変換画像を常時生成し、 前記画像投影手段は、フレーム周波数と同期させて前記変換画像を投影面に常時投影し、 前記投影画像撮影手段は、常時投影される前記変換画像を撮影し、 前記補正情報生成手段は、前記表示画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記変換画像との差異分をもとに、前記補正情報を生成する ことを特徴とする携帯型画像投影装置。」 と補正する。 2.補正の適否 この補正は、補正前の請求項1に「前記変換画像生成手段は、フレーム周波数と同期させて変換画像を常時生成し」という構成を追加すると共に、「画像投影手段」の機能を、補正前の「前記変換画像を投影面に投影し」から「フレーム周波数と同期させて前記変換画像を投影面に常時投影し」に変更し、「投影画像撮影手段」の機能を、補正前の「前記変換画像を撮影し」から「常時投影される前記変換画像を撮影し」に変更する補正を含むものである。 これら補正は、補正前の「変換画像生成手段」、「画像投影手段」、「投影画像撮影手段」について、その機能を特定するものといえるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定された特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1.の(補正後の請求項1)に記載した事項により特定される次のとおりのものである。なお、本願補正発明の各構成の符号は便宜的に当審で付したものである。 (本願補正発明) (A)投影面に表示しようとする画像である表示画像を投影する画像投影手段と、 (B)前記画像投影手段が投影面に前記表示画像を投影したときに、当該投影面に表れている画像である投影画像を撮影する投影画像撮影手段と、 (C)前記画像投影手段が投影する前記表示画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記投影画像との態様の差分をもとに、当該表示画像を補正するための補正情報を生成する補正情報生成手段と、 (D)前記補正情報をもとに前記表示画像を変換した変換画像を生成する変換画像生成手段とを備え、 (E)前記補正情報生成手段は、前記画像投影手段が画像を投影する方向により、もしくは投影面の態様により前記投影画像に生じた当該画像との態様の差分をもとに補正情報を生成し、 (F)前記変換画像生成手段は、フレーム周波数と同期させて変換画像を常時生成し、 (G)前記画像投影手段は、フレーム周波数と同期させて前記変換画像を投影面に常時投影し、 (H)前記投影画像撮影手段は、常時投影される前記変換画像を撮影し、 (I)前記補正情報生成手段は、前記表示画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記変換画像との差異分をもとに、前記補正情報を生成する (J)ことを特徴とする携帯型画像投影装置。 (2)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2003-348500号公報には、「投射画像の調整方法、画像投射方法および投射装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、所望の投射面に形成された投射画像の調整を行うための投射画像の調整方法、この投射画像の調整方法を用いて成される画像投射方法およびこの画像投射方法を実施する投射装置に関する。」 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの公報で開示する装置や方法は、いずれもスクリーンに投射された画像が歪みのない画像となるように投射する画像に予め補正を施すものである。従って、投射型プロジェクタを用いて映画等を鑑賞する個人ユーザがスクリーンに対して正面に位置して鑑賞する時は特に問題は生じないが、スクリーンに対して斜め方向から見る場合は画像が歪んだものとなってしまう。そのため、個人ユーザが空間の限られた部屋の中でくつろいで映画等を鑑賞する場合、スクリーンの前面に位置して見なければならないといった不都合が生じる。また、スクリーンの設置場所の少ない空間の限られた家屋内で投射型プロジェクタを用いる場合、家屋の壁面や天井の面、さらには壁面および天井の面に跨がって投射しなければならない。この場合、上記公報のように予め台形歪みの補正を行ったとしても投射された画像は歪んだものしか得られないといった問題がある。このように、現在提案されている投射型プロジェクタは、スクリーン面に対して歪みのない画像を形成するように補正することしかできない。また、投射面が白色でなく着色された投射面や模様が付された投射面の場合、投射画像も投射面の影響を受けるといった問題がある。また、投射面が傾斜していたり凹凸が大きい場合、投射画像にぼけが生じ易い。」 「【0017】 【発明の実施の形態】本発明の投射画像の調整方法を実施する投射画像の調整システムを添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。図1は、投射画像の調整システム10の概略の構成を説明する構成図である。投射画像の調整システム(以降、調整システムという)10は、投射型プロジェクタ(以降、プロジェクタという)12によって所望の投射面に投射されて形成された投射画像が画像鑑賞位置(画像鑑賞者が投射画像を見る位置)からみて歪み等のない画像が形成されるように投射する画像の調整条件を設定するシステムであって、このシステムで設定された調整条件を用いてプロジェクタ12は所望の画像の投射を行う。 【0018】調整システム10は、プロジェクタ12と、カメラ14とを有して構成される。プロジェクタ12は、投射部16と、調整部18と、画像供給部20とを有する。 【0019】投射部16は、調整部18から供給された画像データを用いて画像を担持するビームを射出して所望の投射面に投射する部位であり、図示されない光源、図示されない液晶パネルおよび光学系16aを有する。液晶パネルの替わりに、DMD(Digital Micromirror Device、米国TI社登録商標)等のマイクロミラーアレイを用いた方式のプロジェクタであってもよい。 【0020】調整部18は、調整条件設定モードと投射モードとを備え、この2つのモードが自在に切り替えられて各モードが作動する部位である。調整条件設定モードは、基準画像の画像データを記憶し、この基準画像データを投射部16に供給し、さらに、画像供給部20から供給された画像データを用いて投射する画像の調整条件を設定するモードである。投射モードは、画像供給部20から供給された画像データに調整条件設定モードで設定された調整条件を用いて調整を施して投射部16に供給するモードである。」 「【0023】画像供給部20は、調整条件設定モードにおいて、カメラ14で撮影された撮影画像の送信を受け、調整部18に適合する画像データに変換して調整部18に供給する他、投射モードにおいて、投射するための画像の供給を受け、調整部18に適合する画像データに変換する部位である。 【0024】カメラ14は、所望の面に投影されて形成された投射画像を撮影する撮像デバイスを備え、撮影画像を無線で画像供給部20に送信する送受信部22が設けられたカメラ付き携帯機器である。あるいは、送受信部を備えたデジタルスチルカメラであってもよい。カメラ14は、例えばCCD撮像デバイスまたはMOS型撮像デバイスを用いたカメラが例示される。撮影画像の送信は、無線によって行われ、例えば、Bluetooth の規格に従った送信が行われる。また、無線で送信される替わりに、有線で転送されてもよい。少なくとも画像供給部20に撮影画像を供給することができればよい。以上が調整システム10の構成の説明である。」 「【0025】図3は、このような調整システム10で行われる投射画像の調整方法の流れを示すフローチャートである。調整システム10では、プロジェクタ12において調整条件設定モードが選択されると、調整部18に記憶されている基準画像の画像データが呼び出され、この画像データが原画像データとして投射部16に供給され、投射部16から所望の面に向けて基準画像が投射される(ステップ100)。ここで画像を投射する投射面は、スクリーン等のような平らなスクリーン面に垂直方向に投射する必要はなく、スクリーン面に対して所望の角度に傾斜させて画像を投射させてもよいし、家屋の壁や天井の面、さらには、壁や天井の面に跨がった複数の面に投射させてもよい。また、投射する面は白い面のみならず着色された面であってもよく、模様の付された面であってもよい。プロジェクタ12は基準画像を投射した後、カメラ14に対して、画像鑑賞位置から基準画像の投射画像を撮影するように要求し、画像供給部20が画像の供給を受けるまで待機状態となる。 【0026】このようにして所望の面に投射されて形成された投射画像は画像鑑賞位置からカメラ14で撮影される(ステップ102)。撮影画像は送受信部22を介して、プロジェクタ12の画像供給部20に送信される(ステップ104)。 【0027】画像供給部20に供給された撮影画像は、調整部18に適合した画像データに変換されて調整部18に供給される。調整部18では、供給された撮影画像の画像データが、投射に用いた基準画像の原画像データと比較される(ステップ106)。」 「【0031】このようにして行われる比較では、位置情報の変化分、画像情報の変化分、あるいは、濃度情報の変化分が求められるので、この変化分を用いた比較結果が予め定められた許容範囲内にあるか否かが、各々について、判別される(ステップ108)。 (中略) 判別は、上記基準点の位置情報の変化分、エッジ成分のピーク値やピーク幅等の画像情報の変化分、あるいは、画像濃度の変化分を用いて行われ、許容範囲内にあると判別された場合、投射画像は画像鑑賞位置から見て、歪みがない、鮮鋭度が高い、画像濃度が適切であるものとされ、投射画像の調整のための調整条件は設定されない。一方、許容範囲内にないと判別された場合、歪みの調整条件や画像濃度の調整条件や鮮鋭度の調整条件が設定される(ステップ110)。」 「【0034】次に、設定された調整条件を用いて、歪みの調整および鮮鋭度の調整、あるいは、さらに、画像濃度の調整が基準画像に対して行われる(ステップ112)。 (以下省略) 【0035】調整された基準画像は投射部16に供給されて、先に投射された面に向けて再度投射される(ステップ114)。このようにして投影されて形成された投射画像は、再度、ステップ102に戻り、投射画像の撮影が行われる。こうしてステップ108で比較結果が許容範囲内に入るまで、ステップ102?106およびステップ110?ステップ114が繰り返し行われ最終的に、調整条件が決定される。このようにステップ102?106およびステップ110?ステップ114が繰り返し行われるのは、基準画像に1回の調整を行うことで投射画像が所望の画像に収束するとは限らないからである。 【0036】こうして最終的に決定された調整条件は、調整部18に登録される。なお、調整部18には、こうして登録された調整条件が複数記憶保持される。調整部18は、この登録された複数の調整条件から、画像鑑賞者の選択によって1つが呼び出され、投射する画像に施す調整の際の調整条件として用いられてもよい。 【0037】このようにして調整された調整条件の決定によって、調整条件設定モードは終了する。この後、投射モードに切り替えらる。投射モードでは、画像供給部20から所望の画像データが供給されて、調整部18に適合した画像データに変換され調整部18に供給される。調整部18では、調整条件設定モードで決定された調整条件によって画像データが、各画素毎に、特定の指定領域に対して、または、画像全体に対して調整された後、投射部16に供給される。投射部16では、供給された画像データに基づいて画像が投射され所望の投射面に投射画像が形成される。」 「【0040】さらに、上記例では、調整条件の設定のために用いる画像として、例えば、図2に示すような基準画像を用いたが、本発明においては、これに限定されるわけではなく、エッジ成分の多い画像を用いてもよい。例えば図5(a)に示すようにビルが並ぶ画像を用いて、ビルの輪郭をエッジ成分として検出し、例えば、図5(a)に示すようにエッジ成分が角を成す点Qを基準点の1つとする。点Oを原点とするX-Y座標系における位置座標(X1 ,Y1 )に位置する点Qは、図5(b)に示すように、撮影画像では点Q’のように点O’を原点とするX’-Y’座標系における位置位置座標(X1 ’,Y1 ’)に変化するので、この変化分を用いて、位置座標(X1 ,Y1 )における歪みの調整量を設定するとよい。このような点Q’やビルの輪郭は、図5(a)に示すビルの輪郭との局所的2次元パターンマッチングにより抽出し、点Q' を取り出す。なお、画像の調整条件の設定に用いる画像は、1画像に限らず、複数の画像を用いてもよい。このように、基準画像を用いないので、映画等を鑑賞中に、画像鑑賞者が画像鑑賞位置を変えた場合やプロジェクタ12の位置を変えて投射方向を変えた場合、鑑賞中の映画等の画像を用いて調整条件を設定することができるので、画像の鑑賞を中断することなく投射画像を調整することができる。」 (3)引用発明 a.画像投射装置 刊行物1の段落【0001】,【0005】の記載によれば、刊行物1には、家屋内で投射型プロジェクタを用いる際の、投射された画像の歪みや、投射面の色や模様の影響といった課題を解決する「画像投射装置」の発明が記載されている。 そして、段落【0017】,【0018】,【図1】には、画像投射装置の実施の形態として投射画像の調整システム10が記載されており、調整システム10は、投射部16、調整部18、画像供給部20を有するプロジェクタ12とカメラ14を備えている。 b.投射部 刊行物1の段落【0019】,【0020】の記載によれば、投射部16は、調整部18から供給された画像データを用いて画像を担持するビームを射出して所望の投射面に投射する部位である。 調整部18は、調整条件設定モードと投射モードとを備え、調整条件設定モードは、記憶されている基準画像の画像データを投射部16に供給し、投射する画像の調整条件を設定するモードである。また、投射モードは、画像供給部20から供給された画像データに調整条件設定モードで設定された調整条件を用いて調整を施して投射部16に供給するモードである。なお、段落【0037】の記載によれば、投射モードで画像供給部20から供給される画像データは、所望の画像データである。 以上の記載から、刊行物1の画像投射装置は、「調整条件設定モードにおいて、基準画像の画像データを投射面に投射し、投射モードにおいて、画像供給部から供給された所望の画像データに調整を施した画像データを投射面に投射する投射部」を備えているといえる。 c.カメラ 刊行物1の段落【0023】,【0024】の記載によれば、調整システム10が備えるカメラ14は、調整条件設定モードにおいて、所望の面に投射されて形成された投射画像を撮影し、その撮影画像を画像供給部20を介して調整部18に供給する。 ここで、前記bにおいて検討したように、調整条件設定モードにおいては、投射部は所望の面に基準画像を投射している。また、所望の面に投射されて形成された投射画像は、投射面に投射された投射画像といえる。 よって、刊行物1の画像投射装置は、「調整条件設定モードにおいて、投射部が投射面に基準画像を投射したときに、投射面に投射された投射画像を撮影するカメラ」を備えているといえる。 d.調整部 刊行物1の段落【0025】?【0027】,【0031】,【0034】?【0037】,【図3】の記載によれば、刊行物1の調整システム10は、調整条件設定モードが選択されると、調整部18に記憶されている基準画像が投射部16により所望の面に投射され(ステップ100)、基準画像の投射画像がカメラ14で撮影され(ステップ102)、調整部18で、撮影画像の画像データと、投射に用いた基準画像の原画像データが比較される(ステップ106)。そして、その比較結果を用いて歪みの調整条件や画像濃度の調整条件や鮮鋭度の調整条件が設定され(ステップ110)、調整部18に登録される。 さらに、設定された調整条件により基準画像が調整され(ステップ112)、調整された基準画像は投射部16により再度投射され(ステップ114)、比較結果が許容範囲内に入るまで、調整条件の設定が繰り返される。 なお、調整部が比較を行う際には、スクリーン面に対して所望の角度に傾斜させて画像を投射すること、投射する面は着色された面や模様の付された面であることが想定されている。 この後、投射モードに切り替えられると、調整部18では、画像供給部20から所望の画像データが供給され、調整条件設定モードで決定された調整条件によって画像データが調整された後、投射部16に供給される。 上記のステップ106ないし114の動作から、調整部18は、調整条件設定モードと投射モードとを有し、調整条件設定モードにおいて、投射に用いた基準画像の原画像データと撮影画像の画像データとを比較し、その比較結果により歪みや画像濃度の調整条件を設定する。ここで、投射に用いた基準画像とは投射部が投射する基準画像であり、撮影画像とは、基準画像の投射画像又は調整された基準画像の投射画像をカメラが撮影した画像である。 また、前記bで摘示したように、調整条件は、歪み等のない投射画像が形成されるように、画像供給部から供給された所望の画像データに調整を施すためのものである。 よって、刊行物1の画像投射装置は「調整条件設定モードと投射モードとを有する調整部を備え、調整部は、調整条件設定モードにおいて、投射部が投射する基準画像と、カメラが撮影した基準画像の投射画像又は調整された基準画像の投射画像とを比較し、画像供給部から供給された所望の画像データに歪みや画像濃度の調整を施すための調整条件を設定」するものである。 また、「調整部が比較を行う際には、スクリーン面に対して所望の角度に傾斜させて画像を投射すること、投射する面は着色された面や模様の付された面であることが想定されて」いる。 その後、調整部18では、投射モードにおいて、調整条件によって画像供給部20から供給され所望の画像データが調整され投射部16に供給される。 すなわち、「調整部は、投射モードにおいて、調整条件によって画像供給部から供給される所望の画像データを調整する」機能を有している。 e.まとめ 以上によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。 (引用発明) (a)調整条件設定モードにおいて、基準画像の画像データを投射面に投射し、投射モードにおいて、画像供給部から供給された所望の画像データに調整を施した画像データを投射面に投射する投射部と、 (b)調整条件設定モードにおいて、投射部が投射面に基準画像を投射したときに、投射面に投射された投射画像を撮影するカメラと、 (c)調整条件設定モードと投射モードとを有する調整部とを備え、 調整部は、調整条件設定モードにおいて、投射部が投射する基準画像と、カメラが撮影した基準画像の投射画像又は調整された基準画像の投射画像とを比較し、画像供給部から供給された所望の画像データに歪みや画像濃度の調整を施すための調整条件を設定し、 調整部が比較を行う際には、スクリーン面に対して所望の角度に傾斜させて画像を投射すること、投射する面は着色された面や模様の付された面であることが想定されており、 調整部は、投射モードにおいて、調整条件によって画像供給部から供給される所望の画像データを調整する、 (d)画像投射装置。 (4)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「画像投射装置」、「投射部」、「カメラ」は、それぞれ、本願補正発明の「画像投影装置」、「画像投影手段」、「投影画像撮影手段」に対応し、引用発明の「調整部」は、本願補正発明の「補正情報生成手段」及び「変換画像生成手段」に対応するものと認められるところ、以下に、その詳細な対比検討を行う。 a.本願補正発明の画像投影手段(構成A,G)と、引用発明の投射部(構成a)の対比 引用発明の投射部は、調整条件設定モードにおいて、基準画像の画像データを投射面に投射し、投射モードにおいて、画像供給部から供給された所望の画像データに調整を施した画像データを投射面に投射する。 ここで、引用発明の「投射」という用語は本願補正発明の「投影」と同義の技術用語であるから、引用発明の「投射面」は「投影面」といえ、「画像データを投射面に投射する投射部」は「画像投影手段」といえる。 さらに、引用発明の「画像供給部から供給された所望の画像データに調整を施した画像データ」は、画像投射装置の利用者が投射面に投射して表示しようとする画像であるといえるから、本願補正発明の「表示しようとする画像である表示画像」ということができ、所望の画像データに変換を施したデータであるから、本願補正発明の「変換画像」ということができる。 そうすると、引用発明の投射モードにおける投射部は、本願補正発明の構成Aと「投影面に表示しようとする画像である表示画像を投影する画像投影手段」である点において共通するものである。 ただし、引用発明の投射部は、調整条件設定モードと投影モードの2つのモードを有し、それぞれのモードで異なる画像を投射面に投射するものであるから、常時「表示しようとする画像である表示画像」すなわち「変換画像」を投影するものではない。 よって、引用発明は本願補正発明の構成Gと「画像投影手段は、変換画像を投影面に投影し」というものである点において一致するものの、引用発明は、「画像投影手段は、フレーム周波数と同期させて前記変換画像を投影面に常時投影し」というものではない点で本願補正発明と相違する。 なお、上述したように、引用発明の「投射」という用語は「投影」と同義の技術用語であるから、以降の対比検討においては、引用発明の「投射」を「投影」と置き換えて対比を行う。 b.本願補正発明の投影画像撮影手段(構成B,H)と、引用発明のカメラ(構成b)の対比 引用発明のカメラは、「調整条件設定モードにおいて、投射部が投射面に基準画像を投射したときに、投射面に投射された投射画像を撮影するカメラ」であり、「投射面に投射された投射画像」は「投影面に表れている画像である投影画像」といえるから、本願補正発明の構成Bとは「投影面に表れている画像である投影画像を撮影する投影画像撮影手段」という点において共通するものといえる。 ただし、投影画像撮影手段が投影画像を撮影するのは、本願補正発明では、「前記画像投影手段が投影面に前記表示画像を投影したとき」であるのに対し、引用発明では「調整条件設定モードにおいて、投射部が投射面に基準画像を投射したとき」である点で両者は相違する。 また、前記aにおいて検討したように、引用発明の投射部は、常時表示画像を変換した変換画像を投射するものではないから、引用発明のカメラは、常時投影される変換画像を撮影するというものではない。 よって、引用発明は、本願補正発明の構成Hである「投影画像撮影手段は、常時投影される前記変換画像を撮影し」という構成を有していない点で本願補正発明と相違する。 c.本願補正発明の補正情報生成手段(構成C,E,I)と、引用発明の調整部(構成c)の対比 引用発明の調整部は、調整条件設定モードと投射モードとを有し、調整条件設定モードにおいて、投射部が投射する基準画像と、カメラが撮影した基準画像の投射画像及び調整された基準画像の投射画像とを比較し、画像供給部から供給された所望の画像データに歪みや画像濃度の調整を施すための調整条件を設定するものである。 この調整条件設定モードにおける調整部の、基準画像と投射画像を比較することは、2種類の画像の態様の差分を検出することといえ、画像に歪みや画像濃度の調整を施すための調整条件を設定することは、歪みや濃度の違いを除去し正しい画像に補正するための補正情報を得ることといえる。また、引用発明の調整された基準画像は、調整により変換された変換画像ということができる。 そうすると、本願補正発明の補正情報生成手段の構成C,Iと引用発明の調整部とは、「前記画像投影手段が投影する画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記投影画像との態様の差分をもとに、当該表示画像を補正するための補正情報を生成する補正情報生成手段」であり、「前記補正情報生成手段は、前記画像投影手段が投影する画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記変換画像との差異分をもとに、前記補正情報を生成する」ものである点において共通し、補正情報生成手段が記補正情報を生成するのに用いる「画像投影手段が投影する画像」が、本願補正発明では、「表示画像」であるのに対し、引用発明は、調整条件設定モードにおける「基準画像」である点において相違する。 また、引用発明の「調整部が比較を行う際には、スクリーン面に対して所望の角度に傾斜させて画像を投射すること、投射する面は着色された面や模様の付された面であることが想定されており」ということは、画像の態様の差分をもとに補正情報を生成する際に、画像を投影する方向、及び投影面の態様を考慮していることといえ、本願補正発明の構成Eの「前記補正情報生成手段は、前記画像投影手段が画像を投影する方向により、もしくは投影面の態様により前記投影画像に生じた当該画像との態様の差分をもとに補正情報を生成し」に相当するものといえる。 d.本願補正発明の変換画像生成手段(構成D,F)と、引用発明の調整部(構成c)の対比 引用発明の調整部は、投射モードにおいて、調整条件によって画像供給部から供給される所望の画像データを調整するものである。 そして、前記cにおいて検討したように、引用発明の「画像供給部から供給された所望の画像データ」は「表示画像」であり、「調整補正」は「補正情報」に相当するものであるから、引用発明の調整部の上記機能は、本願補正発明の構成Dの「前記補正情報をもとに前記表示画像を変換した変換画像を生成する変換画像生成手段」に相当するといえる。 ただし、引用発明の調整部は、調整条件設定モードと投影モードの2つのモードを有し、調整条件設定モードにおいては、表示画像を変換した変換画像を生成するものではないから、表示画像を変換した変換画像を常時生成するものではない。 よって、引用発明は本願補正発明の構成Fと「変換画像生成手段は、変換画像を生成し」というものである点において一致するものの、引用発明は、「変換画像生成手段は、フレーム周波数と同期させて変換画像を常時生成し」というものではない点で本願補正発明と相違する。 e.本願補正発明の構成Jと、引用発明の構成dの対比 引用発明の画像投射装置は、前記aないしdにおいて検討したように、投影画像を撮影して表示画像を補正する機能を有する「画像投影装置」である点において本願補正発明と一致する。 ただし、本願補正発明は「携帯型画像投影装置」であるのに対し、引用発明の画像投射装置は、携帯型であるとは特定されていない点において両者は相違する。 (5)一致点・相違点 上記(4)のaないしeの対比結果をまとめると、本願補正発明と引用発明との[一致点]と[相違点]は以下のとおりである。 [一致点] 投影面に表示しようとする画像である表示画像を投影する画像投影手段と、 当該投影面に表れている画像である投影画像を撮影する投影画像撮影手段と、 前記画像投影手段が投影する画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記投影画像との態様の差分をもとに、当該表示画像を補正するための補正情報を生成する補正情報生成手段と、 前記補正情報をもとに前記表示画像を変換した変換画像を生成する変換画像生成手段とを備え、 前記補正情報生成手段は、前記画像投影手段が画像を投影する方向により、もしくは投影面の態様により前記投影画像に生じた当該画像との態様の差分をもとに補正情報を生成し、 前記変換画像生成手段は、変換画像を生成し、 前記画像投影手段は、前記変換画像を投影面に投影し、 前記補正情報生成手段は、画像投影手段が投影する画像と、前記投影画像撮影手段が撮影した前記変換画像との差異分をもとに、前記補正情報を生成する 画像投影装置。 [相違点1] 投影画像撮影手段が投影画像を撮影するのは、本願補正発明では、「前記画像投影手段が投影面に前記表示画像を投影したとき」であるのに対し、引用発明では「調整条件設定モードにおいて、投射部が投射面に基準画像を投射したとき」である点。 [相違点2] 補正情報生成手段が記補正情報を生成するのに用いる「画像投影手段が投影する画像」が、本願補正発明では、「表示画像」であるのに対し、引用発明は、調整条件設定モードにおける「基準画像」である点。 [相違点3] 引用発明は、「画像投影手段は、フレーム周波数と同期させて変換画像を投影面に常時投影し」というものではなく、「変換画像生成手段は、フレーム周波数と同期させて変換画像を常時生成し」というものではなく、さらに、「投影画像撮影手段は、常時投影される変換画像を撮影」するという構成を有していない点。 [相違点4] 本願補正発明は「携帯型画像投影装置」であるのに対し、引用発明の画像投射装置は、携帯型であるとは特定されていない点。 (6)相違点の判断 a.相違点1,2について 相違点1,2は、本願補正発明が、表示しようとする画像である表示画像を投影しているときに補正情報を生成するものであるのに対し、引用発明は、補正情報を生成するための調整条件設定モードを設けており、基準画像を投影しているときに補正情報を生成するものであるという動作の違いにより生ずる相違点である。 刊行物1には、前記第2.2.(2)に摘示したように、段落【0040】に、「上記例では、調整条件の設定のために用いる画像として、例えば、図2に示すような基準画像を用いたが、本発明においては、これに限定されるわけではなく、エッジ成分の多い画像を用いてもよい。」、「なお、画像の調整条件の設定に用いる画像は、1画像に限らず、複数の画像を用いてもよい。このように、基準画像を用いないので、映画等を鑑賞中に、画像鑑賞者が画像鑑賞位置を変えた場合やプロジェクタ12の位置を変えて投射方向を変えた場合、鑑賞中の映画等の画像を用いて調整条件を設定することができるので、画像の鑑賞を中断することなく投射画像を調整することができる。」と記載されるように、基準画像を用いないで、鑑賞中の映画等の画像を用いて調整条件を設定し、画像の鑑賞を中断することなく投射画像を調整することができることが示唆されている。 刊行物1に上記のような示唆が存在することを考慮すると、引用発明において、所望の画像データに調整を施すための調整条件の設定を、調整条件設定モードを設けて基準画像を用いて行うことに代えて、投射モードで所望の画像データを投射している際に、その投射している所望の画像データを用いて調整条件の設定を行うように変更することは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、上記相違点1に係る、「前記画像投影手段が投影面に前記表示画像を投影したとき」に、投影画像撮影手段が投影画像を撮影するものとし、上記相違点2に係る、補正情報生成手段が記補正情報を生成するのに用いる「画像投影手段が投影する画像」を「表示画像」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 b.相違点3について 上記「a.相違点1,2について」で検討したように、引用発明において、調整条件設定モードを設けずに、投射モードで所望の画像データを投射している際に、その投射している所望の画像データを用いて調整条件の設定を行うようにすることが、当業者が容易に想到し得ることであり、その場合には、投射部は、所望の画像データに調整を施した画像データを常時投射し、カメラはその常時投射される調整された所望の画像データを撮影し、調整部は所望の画像データを常時調整して変換画像を生成するものとなることは明かである。 また、刊行物1の段落【0040】に示された鑑賞中の映画等の画像は動画像であることから、その動画像を調整した変換画像の投射及び生成は、動画像のフレーム周期に同期して行われることは当然のことである。 したがって、引用発明において、上記相違点3に係る、画像投影手段を「フレーム周波数と同期させて変換画像を投影面に常時投影」するものとし、変換画像生成手段を「フレーム周波数と同期させて変換画像を常時生成」するものとし、さらに、「投影画像撮影手段は、常時投影される変換画像を撮影」するという構成を付加することは、当業者が容易になし得ることである。 c.相違点4について 画像投射装置において、携帯型の画像投射装置は周知のものであり、引用発明の画像投射装置を携帯型のものとし、上記相違点4に係る「携帯型画像投影装置」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 (7)効果等について 本願補正発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。 (8)まとめ 以上のように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成26年3月31日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、前記第2.1.の(補正前の請求項1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.2.で摘示した本願補正発明に追加された限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2015-04-30 |
結審通知日 | 2015-05-12 |
審決日 | 2015-05-26 |
出願番号 | 特願2009-12808(P2009-12808) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大室 秀明 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
水野 恵雄 清水 正一 |
発明の名称 | 携帯型画像投影装置、画像投影方法及び画像投影プログラム |
代理人 | 丸山 隆夫 |