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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1306351
審判番号 不服2014-8721  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-12 
確定日 2015-10-07 
事件の表示 特願2013- 49273「接続箱」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-153186〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年4月13日、スイス)を国際出願日とする特願2010-502398号(以下、「原出願」という。)の一部を平成25年3月12日に新たな特許出願としたものであって、平成25年6月11日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日付けで意見書及び補正書が提出され、平成26年1月8日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がされ、同年7月3日付けで、審判請求書に係る手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成25年12月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「少なくとも1つの電子コンポーネント(51)を太陽電池パネル(80)の電気接続部に接続するための接続箱(1)であって、
少なくとも1つの前記電子コンポーネント(51)を含むハウジング(10)と、
前記少なくとも1つの電子コンポーネント(51)を前記電気接続部に接続する為に前記ハウジング上に配設された接続スロット(60)と、
前記接続箱(1)を前記太陽電池パネル(80)のベース表面(82)に取り付けるために、前記ハウジング(10)の前記接続スロット(60)に対して位置付けられた突出型の取り付けキャップ(30)と、
前記接続箱(1)が前記太陽電池パネル(80)に対して装着状態にあるとき、前記太陽電池パネル(80)から一定の距離(A)に位置付けられ、前記ハウジング(10)の対流冷却効果が得られる、前記ハウジング(10)の背壁(19)と、
を備え、
前記装着状態において、前記接続スロット(60)は、開口されており、前記取り付けキャップ(30)は、前記接続箱(1)の全体を前記太陽電池パネル(80)の前記ベース表面(82)から隆起させる、接続箱。」

3.引用刊行物の記載
原査定の拒絶理由に引用された、本願の原出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平11-251614号公報(以下、「引用文献」という。)には、「太陽電池モジュール」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池モジュールの異常過熱防止のためのバイパスダイオードの温度上昇を抑え信頼性を向上する端子箱に関する。」
(2)「【0002】
【従来の技術】一般の太陽電池モジュールは、複数個の太陽電池セルを直列に電気接続し、電気的絶縁、防水などの目的のため、ガラス板などに透明な樹脂で接着すると共に裏面側は耐候性のフィルムにて覆って、その電気出力を取出すために、裏面の耐候性フィルムに設けた口出し穴より出力タブ線をだし、出力ケーブルと接続している。導電性の端子板に出力タブ線と出力ケーブルを電気的に接続することにより、その接続部の接続信頼性確保するとともに、この出力タブ線と出力ケーブルの接続部分は、電気的絶縁、防水などの目的のため端子箱にて覆うと共に、内部に絶縁性の樹脂を充填して封止している。」
(3)「【0006】…本発明は、上記の問題点に鑑み、バイパスダイオードの温度上昇を抑え、信頼性が高い太陽電池モジュールの端子箱を提供するためになされたものである。」
(4)「【0014】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の太陽電池モジュールの裏面に固定された端子箱ふたを取り外した状態の正面図を示す、図2は図1のA部で切断したときの断面図、図3は図1の端子箱にふたをしたときの正面図、。図に於て、複数の太陽電池セル1は、タブ線2により直列接続され、ガラス板3へ、EVA(エチレエン・ビニル・アセテート)などの透明加熱融着接着剤4、4aおよび防湿用フィルム5を積層固着させている。端子箱9は接着剤20にて防湿フィルム5に接着固定され、出力タブ線8は防湿用フィルム5と端子箱9の貫通穴9dを通して端子板10に接続されている。
【0015】端子箱9は底面部9aとその底面部から立ち上がる側面9cから成る矩形の箱体で、合成樹脂にて一体成形されている。箱体の内側の底面部9aには出力タブ線8をとおす貫通穴9dと、バイパスダイオード16を固定するための太陽電池モジュール側が凹部となった凹部9bと、ねじ22を締め付ける為のボス9eとリブ9fが形成されている。…凹部9bは防湿用フィルム5側に空気層ができるように形成されている。…
【0019】端子板10は銅板の薄板で略長方形状のもので10a、10b、10c、の3種類の形状がある。…また、端子板10の端子17接続用穴にはバイパスダイオード16の端子17が通された後はんだ付けされ接続されている。…
【0022】端子箱ふた21はステンレスやアルミなど耐蝕性のある金属や防食処理した鉄板材を成形して造られ略四角の平面板状をして、端子箱9にねじ22にて固定されて端子箱9の内部を覆っている。端子箱ふた21には内側への凸部21aがあり、端子箱ふた21の弾性力を利用してバイパスダイオード16に押し付けて接触させ、熱伝達を良くしてバイパスダイオードの放熱効果を高めている。…
【0024】図4は端子箱9の接着面側から見た正面図で、凹部9bは周縁部19a、19b、19cまで通した溝となっている。凹部9bは端子箱9の内部にあるバイパスダイオード16の位置を中心に端子箱の周縁部19a、19b、19cまで伸びており、4図では3方向に伸びているが、…また、空気が暖められると自然対流で上昇して熱が逃げるので、より冷却効果が得られる。
【0025】このように、端子箱9の太陽電池モジュールの裏面との接合面側に空気層を設けることにより太陽電池モジュールからの伝熱を少なくするとともに、バイパスダイオード16からの発熱の放熱効果を高め、更に、端子箱ふた21を金属製にして放熱効果を高めることにより、端子箱全体の温度上昇を低くできる。このため、使用するバイパスダイオード16の大きさを小さくすることができ、端子箱全体の厚みを薄くでき、しいては、太陽電池モジュールとしての厚さを薄くすることが出来る。」
(5)「【0026】
【発明の効果】本発明によれば、端子箱のふたを金属製としたことにより、ふた表面からの放熱が良く、バイパスダイオードからの発熱による端子箱全体の温度上昇を低くできる。…
【0029】また、端子箱の太陽電池モジュール裏面接合面に部分的に空気層を設けたので、太陽光を受けて発熱する太陽電池セルからの伝熱を抑えられるので、バイパスダイオードの温度上昇を低く抑えられる。特にバイパスダイオードを取り付けている部分に空気層を設けると太陽電池セルからバイパスダイオードへの伝熱を減らすのに効果的である。
【0030】また、端子箱裏面の空気層を端子箱の周縁部までつながるようにしたので、溝内の空気が流動可能になり、外気と流通するようにすることにより、空気層による断熱だけでなく対流の冷却の効果も得られ、バイパスダイオードの温度上昇を押えることができる。」
(6)「【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の太陽電池モジュールの裏面に固定された端子箱の端子箱ふたを取り外した状態の正面図を示す。
【図2】 本発明の太陽電池モジュールの裏面に固定された端子箱の断面図を示す。
【図3】 本発明の太陽電池モジュールの裏面に固定された端子箱の正面図を示す。
【図4】 本発明の太陽電池モジュールの裏面に固定された端子箱の接着面側から見た正面図を示す。」
(7)図1

(8)図2

(9)図3

(10)図4


4.引用文献記載の発明
(1)引用文献記載の発明の認定
引用文献の図2、図4から、貫通穴9dの周囲の部分及び底面部9aの凹部9bが存在しない部分は、太陽電池モジュールの防湿フィルム5と接着剤20で接着されることが看取される。
そうすると、上記「3.」の摘示事項及び図2、4から、引用文献には、
「太陽電池モジュールの異常過熱防止のためのバイパスダイオードの温度上昇を抑え信頼性を向上する端子箱であって、
該太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルが、タブ線2により直列接続され、ガラス板3へ、透明加熱融着接着剤4、4a及び防湿用フィルム5が積層固着されていて、出力タブ線8を備えており、
該端子箱は、合成樹脂にて一体成形された、底面部9aとその底面部から立ち上がる側面9cから成る矩形の箱体であって、端子箱ふた21が端子箱9に固定されて端子箱9の内部を覆っており、
該端子箱9には、バイパスダイオード16が固定され、端子箱9の内側の底面部9aには、太陽電池モジュールの出力タブ線8を通す貫通穴9dと、バイパスダイオード16を固定するための太陽電池モジュール側が凹部となった、防湿用フィルム5側に空気層ができるように形成された凹部9bとが形成されていて、
該端子箱9の貫通穴9dの周囲の部分及び底面部9aの凹部9bが存在しない部分が、接着剤20で太陽電池モジュールの防湿フィルム5に接着されることで、該端子箱9は太陽電池モジュールの防湿フィルム5に接着固定されていて、
該凹部9bは端子箱9の内部にあるバイパスダイオード16の位置を中心に端子箱の周縁部19a、19b、19cまで伸びて端子箱9の周縁部までつながるようにしていて、空気層による断熱だけでなく対流の冷却の効果も得られるものであり、
該太陽電池モジュールの出力タブ線8は、防湿用フィルム5と端子箱9の貫通穴9dを通して、端子箱9の端子板10に接続され、
端子板10の端子17接続用穴にはバイパスダイオード16の端子17が通された後ハンダづけされ接続されている端子箱。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「太陽電池モジュール」、「端子箱ふた21」が固定された「端子箱」、「バイパスダイオード16」、「端子箱ふた21」が固定され「バイパスダイオード16が固定された」「端子箱」、「太陽電池モジュールの出力タブ線8」及び「防湿用フィルム5」は、本願発明の「太陽電池パネル(80)」、「接続箱(1)」、「電子コンポーネント(51)」、「電子コンポーネント(51)を含むハウジング(10)」、「太陽電池パネル(80)の電気接続部」及び「ベース」にそれぞれ相当する。

(b)引用発明の「端子箱9」が、「接着剤20にて防湿フィルム5に接着固定されてい」ることは、本願発明の「前記接続箱(1)を前記太陽電池パネル(80)のベース表面(82)に取り付ける」ことに相当する。

(c)引用発明の「端子箱9」の「出力タブ線8」を通す「貫通穴9d」は、「貫通穴」であるから、開口していることは明らかである。
また、引用発明の「バイパスダイオード16」の「端子17」は、「端子箱9」の「端子板10」の「端子17接続用穴」に通された後に、ハンダづけされていることから、「バイパスダイオード16」は「端子板10」に接続されていて、一方、「太陽電池モジュールの出力タブ線8」も「端子板10」に接続されていることから、「バイパスダイオード16」は「太陽電池モジュールの出力タブ線8」に接続されているといえる。
そうすると、引用発明の「端子箱9」は、本願発明の「電子コンポーネント」に相当する「バイパスダイオード16」を、本願発明の「太陽電池パネル(80)の電気接続部」に相当する「太陽電池モジュールの出力タブ線8」に接続するためのものであるから、引用発明の「バイパスダイオード16」を「太陽電池モジュールの出力タブ線8」に接続する「端子箱9」は、本願発明の「少なくとも1つの電子コンポーネント(51)を太陽電池パネル(80)の電気接続部に接続するための接続箱(1)」に相当する。
そして、「太陽電池モジュールの出力タブ線8」と「端子箱9の端子板10」との接続が、「貫通穴9dを通して」行われていることから、「端子箱9の貫通穴9d」は、「バイパスダイオード16」を「出力タブ線8」に接続するために「端子箱9」上に配設されたものといえることから、引用発明の「貫通穴9d」は、本願発明の「前記少なくとも1つの電子コンポーネント(51)を前記電気接続部に接続する為に前記ハウジング上に配設された接続スロット(60)」であって、「前記装着状態において、前記接続スロット(60)は、開口されて」いる構成に相当する。

(d)引用発明の「端子箱9」の接着面側である「底面部9a」の形状について検討すると、引用発明の「貫通穴9d」の周囲の部分は、太陽電池モジュールの防湿フィルム5と接着剤20で接着され、「凹部9b」は、「防湿フィルム5」側に空気層ができるように形成されているものであるから、「底面部9a」の「貫通穴9d」の周囲の部分は、「凹部9b」と比べて、太陽電池モジュール側に突出しているということができ、また、該「底面部9a」の「凹部9b」が存在しない部分は、「貫通穴9d」に対して位置付けられているということができる。
同様に、引用発明では、「凹部9bは端子箱9の内部にあるバイパスダイオード16の位置を中心に端子箱の周縁部19a、19b、19cまで伸びて」いるものであるから、「底面部9a」の「凹部9b」が存在しない部分は、「凹部9b」よりも太陽電池モジュール側に突出したものということができる。
そして、引用発明では、「貫通穴9dの周囲の部分及び底面部9aの凹部9bが存在しない部分」が、「凹部9b」よりも太陽電池モジュール側に突出することで、空気層の厚さ分、「端子箱9」全体を太陽電池モジュールの「防湿フィルム5」から隆起させた、ということができる。
してみると、引用発明の「端子箱9」の「貫通穴9dの周囲の部分及び底面部9aの凹部9bが存在しない部分」は、本願発明の「前記接続箱(1)を前記太陽電池パネル(80)のベース表面(82)に取り付けるために、前記ハウジング(10)の前記接続スロット(60)に対して位置付けられた突出型の取り付けキャップ(30)」であって、「前記取り付けキャップ(30)は、前記接続箱(1)の全体を前記太陽電池パネル(80)の前記ベース表面(82)から隆起させる」ものに相当する。

(e)引用発明の「端子箱9」は、太陽電池モジュールの防湿フィルム5に接着固定され、「端子箱9」の「内側の底面部9a」の「凹部9b」は、太陽電池モジュールとの間に空気層を形成するものだから、該「凹部9b」は、太陽電池モジュールから一定の距離に位置付けられていることは明らかであって、該「凹部9b」によって空気層が形成され、対流の冷却の効果が得られることから、該「凹部9b」は、本願発明の「前記接続箱(1)が前記太陽電池パネル(80)に対して装着状態にあるとき、前記太陽電池パネル(80)から一定の距離(A)に位置付けられ、前記ハウジング(10)の対流冷却効果が得られる、前記ハウジング(10)の背壁(19)」に相当する。

(2)まとめ
以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも1つの電子コンポーネント(51)を太陽電池パネル(80)の電気接続部に接続するための接続箱(1)であって、
少なくとも1つの前記電子コンポーネント(51)を含むハウジング(10)と、
前記少なくとも1つの電子コンポーネント(51)を前記電気接続部に接続する為に前記ハウジング上に配設された接続スロット(60)と、
前記接続箱(1)を前記太陽電池パネル(80)のベース表面(82)に取り付けるために、前記ハウジング(10)の前記接続スロット(60)に対して位置付けられた突出型の取り付けキャップ(30)と、
前記接続箱(1)が前記太陽電池パネル(80)に対して装着状態にあるとき、前記太陽電池パネル(80)から一定の距離(A)に位置付けられ、前記ハウジング(10)の対流冷却効果が得られる、前記ハウジング(10)の背壁(19)と、
を備え、
前記装着状態において、前記接続スロット(60)は、開口されており、前記取り付けキャップ(30)は、前記接続箱(1)の全体を前記太陽電池パネル(80)の前記ベース表面(82)から隆起させる、接続箱。」で一致し、相違点はない。

したがって、本願発明は、引用発明である。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。

なお、原審において通知された拒絶の理由は、本願発明が引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものであったが、本願発明が引用発明に基いて容易に発明をすることができたか否かを検討する際には、両者を対比して一致点・相違点についての検討がなされ、両者が同一であるか否かについても当然に検討がなされるものであり、請求人もそれを踏まえた上で意見を述べているものと考えられるから、当審において改めて拒絶理由を通知することなく上記のとおり審決した。
 
審理終結日 2015-05-11 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-25 
出願番号 特願2013-49273(P2013-49273)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 川端 修
土屋 知久
発明の名称 接続箱  
代理人 山口 和弘  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 正人  
代理人 城戸 博兒  
代理人 野田 雅一  
代理人 池田 成人  

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