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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1306352
審判番号 不服2014-9507  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-22 
確定日 2015-10-07 
事件の表示 特願2009-229271「タッチパネル装置、ユーザーインターフェース装置、および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月14日出願公開、特開2011- 76514〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成21年10月1日の出願であって、平成25年6月3日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して同年7月11日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年2月19日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年2月26日に請求人に送達された。
これに対して、同年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

なお、平成26年5月22日付けの手続補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を請求項1としたものであるから、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。

よって、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年5月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
ほぼ透明のベースシートに形成された透明電極を備え、検知対象であるタッチ体がタッチしたタッチ位置に応じた検知信号を出力する検知領域と、前記ベースシートの前記検知領域の周辺に前記透明電極に接続するように形成された導電パターンを備えた配線領域とを有するタッチパネルを有するタッチパネル装置において、
前記タッチパネルの前記ベースシートは、可撓性を持ち、
前記タッチパネルの前記配線領域は、前記タッチパネルの検知信号をディスプレイ上のXY座標を表す座標信号に投影変換するタッチパネル制御回路への電気的配線をなすべく、外方に向かってタッチパネル制御回路に到達する長さに延びた配線部を有し、
前記タッチパネルのおもて面に接合して該タッチパネルの平面性を保持するフレームをさらに有し、前記フレームは、前記タッチパネルに対応した面積を持つ板状を呈し、該タッチパネルの前記検知領域に対応したほぼ透明の領域を有し、
前記タッチパネル制御回路が形成された回路基板をさらに有し、
前記タッチパネルの前記透明電極は、前記配線部を介して前記回路基板に形成された前記タッチパネル制御回路に接続されることを特徴とするタッチパネル装置。」


2.引用発明
原査定の拒絶の理由である平成25年6月3日付けの拒絶理由通知において引用された特開2007-018226号公報(以下、「引用例」という。)には、関連する図面とともに、以下の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の目的は、上述の問題を生じない、接続信頼性が高く、製造が容易な、多配線のタッチパネル適用可能なタッチパネルセンサーを提供することである。」

「【0017】
以下において、静電容量方式のタッチパネルセンサーを例にとって説明するが、本発明のタッチパネルセンサーは、これに限定されず、抵抗膜方式など、他の適切な方式のタッチパネルセンサーに適用可能であることは理解されたい。
図1は、本発明の静電容量方式のタッチパネルセンサーの1態様の上面図である。タッチパネルセンサー10は透明なフレキシブル基板1、前記透明なフレキシブル基板上に形成された透明導電膜2、金属もしくは金属合金からなる配線3、及び、前記透明導電膜2と前記配線3とを接続するための導電性インクもしくはペーストからなる電極4を含む。タッチパネルセンサー10は、ユーザの指や導電性バーなどの測定対象物がタッチセンサー10のアクティブ領域Aにある透明導電膜2に接触したときにその箇所を検出するようになっている。タッチパネルセンサー10は、この接触箇所を特定するX-Y座標における(X,Y)を示す信号を提供する。この信号は配線3を通って配線端部において接続さた、アナログデータをディジタルデータに変換するための適切なコントローラ(図示せず)に送られる。
【0018】
タッチパネルセンサー10は透明なフレキシブル基板1を含む。ここで、用語「透明」とは、タッチパネルセンサーが下方の装置(通常、ディスプレー装置)上に配置されたときに、該装置を視認することができる程度に光透過性であることを意味し、したがって、「半透明」の材料を含むことが意図される。図1に示すように、基板1は、一般に、長方形の形状であり、片側の末端から延在するテール部分5を有する。基板1は、長方形以外の形態、たとえば、円形、正方形、三角形、多角形であってもよい。基板1は、公知の透明な絶縁性フィルムであってよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられ、コスト及び透明性の観点から、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
また、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリイミドポリエーテルイミド、三酢酸セルロースなどを用いることもできる。
【0019】
基板1は好ましくは10?3000μmの厚さである。10μmより薄い場合には、取り扱い性が悪くなることがあり、3000μmより厚い場合には、可とう性が低く、ディスプレー装置に装着しにくくなることがあるからである。また、透明なフレキシブル基板1の上には、ハードコート処理や反射防止処理が施されてもよい。
【0020】
図1に示すように、透明なフレキシブル基板1上のアクティブ領域Aにおいては、透明導電膜2が形成されている。導電膜2はアクティブ領域Aの全体にわたって形成されていても、あるいは、図1に示すように、帯状に複数の導電膜2が平行に形成されていてもよい。導電膜2はある程度の電気抵抗を有する導電膜であり、そのために、指などの測定対象物がタッチパネルセンサー10に接触したときに、各測定点で生じる電流値によって、タッチパネルセンサー10上の位置を特定することができる。例えば、導電膜2が長方形のアクティブ領域Aの全体にわたって形成されている場合には、長方形の4つの頂点を各測定点として電流値を測定した場合に、指の接点からの各頂点までの抵抗値を算出することができ、結果として、抵抗値から距離を特定することができる。また、複数の帯状に並んだ導電膜2(導電膜x1、x2、…、xn、…)が形成されている場合には、xn番目の導電膜を特定することで、X-座標の位置を特定し、導電膜(xn)の両端での電流値でY-座標の位置を特定することができる。
【0021】
導電膜2に適する材料としては、透明導電性酸化物、好ましくは、インジウムスズオキシド(ITO)を挙げることができる。また、他の材料としては、インジウムオキシド、ケイ素インジウムオキシド、アルミニウム亜鉛オキシド、インジウム亜鉛オキシド、アンチモンスズオキシド、スズオキシドなどが挙げられる。導電膜2の形成及びタッチパネルに必要な解像度などを考慮すると、そのシート抵抗値は、通常、300?5000Ω/□である。抵抗値が低すぎると、解像度を上げにくくなり、高すぎると、導電膜の形成が困難になるからである。
【0022】
導電膜2の厚さは、タッチパネルセンサー10を曲げたときに、過度の応力を回避し、光透過率を改良するために、できるかぎり薄くすることが望ましい。一方、導電膜2の厚さは、膜の連続性又はその材料特性を損なうほど薄くしてはならない。このため、導電膜2の厚さは、通常、0.01μm?0.1μmである。導電膜2は、一般に、スパッタリングによって基板1上に形成することができる。」

「【0025】
配線3は好ましくは1?100μmの厚さを有する。配線3の厚さが1μmより薄い場合には、コントローラなどの外部装置との接続に用いるZIFタイプコネクタでの接続の際に、配線3が削り取られて、接続不良を起こすおそれがあり、一方、100μmを超えると、フレキシブル基板1を曲げたときに、配線3にかかる応力が高くなり、断線する可能性が高まるからである。配線3には、酸化防止処理、ニッケル・金メッキ、スズメッキなどによる表面処理などを施してもよい。配線3は基板の片側から延在するテール部分5の端部において、タッチパネルを制御するコントローラのコネクタと接続される。」

「【0029】
本発明のタッチパネルセンサーは、さらに、追加の構成部品を含むことができる。図2は、本発明のタッチパネルセンサーの第二の態様の断面図を示している。操作者側を上とし、タッチパネルセンサーを配置する液晶表示装置などの装置側を下にして図示されている。タッチパネルセンサー10’は、図1に示すとおりのタッチパネルセンサー10の上に、配線3の部分に対する電磁波などのノイズを遮断するためのフロントガード6を含むことができる。さらに、配線3及びフロントガード6を絶縁保護するための絶縁保護層7を備え、透明導電膜(図示せず)を保護するための保護層8を備え、さらに、保護層8を接着するための透明接着剤層9を備えることができる。絶縁保護層7としては、公知の絶縁性樹脂を用いることができ、たとえば、日本アチソン株式会社製PF-455(商品名)などで市販されている絶縁性樹脂が挙げられる。また、図示されるとおり、タッチパネルセンサー10’は液晶表示装置などの装置の前面に配置されて使用されるが、液晶表示装置などの装置から発生するノイズがセンサーに影響を及ぼすことがあるため、リアガードと呼ばれるガード層(図示せず)をセンサーの裏面側に備えることもできる。」


そして、引用例の上記記載を、関連図面と技術常識に照らせば、以下のことがいえる。

(1)引用例の図1には、アクティブ領域Aの周辺に透明導電膜2に接続するように形成された配線3を備える領域が図示されている。よって、引用例の「タッチパネルセンサー10」は、「アクティブ領域Aの周辺に透明導電膜2に接続するように形成された配線3を備えた配線領域を有する」ものである。

(2)引用例の上記段落【0013】には、「タッチパネルセンサー」が「タッチパネル」に適用可能であることが記載されている。よって、引用例には、「タッチパネルセンサー」を有する「タッチパネル」が記載されている。

(3)引用例の上記段落【0017】には、図1への参照とともに「タッチパネルセンサー10は透明なフレキシブル基板1・・・(中略)・・・を含む。」と記載され、
上記段落【0019】には、「基板1は好ましくは10?3000μmの厚さである。10μmより薄い場合には、取り扱い性が悪くなることがあり、3000μmより厚い場合には、可とう性が低く、ディスプレー装置に装着しにくくなることがあるからである。」と記載されている。
よって、引用例の「タッチパネルセンサー10のフレキシブル基板1」は、「可とう性」を持つものであることは明らかである。

(4)引用例の上記段落【0018】には、「タッチパネルセンサーが下方の装置(通常、ディスプレー装置)上に配置されたときに、該装置を視認することができる程度に光透過性であることを意味し」と記載され、
上記段落【0017】には、「タッチパネルセンサー10は、ユーザの指や導電性バーなどの測定対象物がタッチセンサー10のアクティブ領域Aにある透明導電膜2に接触したときにその箇所を検出するようになっている。タッチパネルセンサー10は、この接触箇所を特定するX-Y座標における(X,Y)を示す信号を提供する。この信号は配線3を通って配線端部において接続さた、アナログデータをディジタルデータに変換するための適切なコントローラ(図示せず)に送られる。」と記載され、
上記段落【0025】には、「配線3は基板の片側から延在するテール部分5の端部において、タッチパネルを制御するコントローラのコネクタと接続される。」と記載されている。
よって、引用例の「タッチパネルセンサー10」の「配線3」は、「タッチパネルセンサー10の検出信号をディスプレー装置上のX-Y座標を示すディジタルデータに変換するタッチパネル制御コントローラへの電気的配線」をなすものである。

(5)引用例の上記段落【0017】には、「タッチパネルセンサー10は、この接触箇所を特定するX-Y座標における(X,Y)を示す信号を提供する。この信号は配線3を通って配線端部において接続さた、アナログデータをディジタルデータに変換するための適切なコントローラ(図示せず)に送られる。」と記載され、
上記段落【0018】には、「基板1は、一般に、長方形の形状であり、片側の末端から延在するテール部分5を有する。」と記載され、
図1には、外方に向かって延びたテール部5が図示されている。
よって、引用例の「タッチパネルセンサー10」の「配線3」は、「外方に向かってコントローラ(つまり、タッチパネル制御コントローラ)に到達する長さに延びたテール部5を有する」ものである。

以上を踏まえると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「透明なフレキシブル基板1上のアクティブ領域Aに形成された透明導電膜2を備え、前記アクティブ領域Aは、測定対象物であるユーザの指や導電性バーが接触した接触箇所に応じた信号を出力するものであり、前記フレキシブル基板1の前記アクティブ領域Aの周辺に前記透明導電膜2に接続するように形成された配線3を備えた配線領域とを有するタッチパネルセンサー10を有するタッチパネルにおいて、
前記タッチパネルセンサー10の前記フレキシブル基板1は、可とう性を持ち、
前記タッチパネルセンサー10の前記配線領域は、前記タッチパネルセンサー10の検出信号をディスプレー装置上のX-Y座標を示すディジタルデータに変換するタッチパネル制御コントローラへの電気的配線をなすべく、外方に向かってタッチパネル制御コントローラに到達する長さに延びたテール部5を有し、
前記タッチパネルの前記透明導電膜2は、前記テール部5を介して前記タッチパネル制御コントローラに接続されるタッチパネル。」


3.対比
本願発明と、引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)引用発明の「透明なフレキシブル基板1」、「透明導電膜2」、「測定対象物であるユーザの指や導電性バー」、「接触箇所に応じた信号」、「アクティブ領域A」、「配線3」、「タッチパネルセンサー10」は、
それぞれ、本願発明の「ほぼ透明のベースシート」、「透明電極」、「検知対象であるタッチ体」、「タッチ位置に応じた検知信号」、「検知領域」、「導電パターン」、「タッチパネル」に相当する。
したがって、引用発明の「タッチパネル」は、本願発明の「タッチパネル装置」と、「ほぼ透明のベースシートに形成された透明電極を備え、検知対象であるタッチ体がタッチしたタッチ位置に応じた検知信号を出力する検知領域と、前記ベースシートの前記検知領域の周辺に前記透明電極に接続するように形成された導電パターンを備えた配線領域とを有するタッチパネルを有するタッチパネル装置」である点で共通する。

(2)引用発明の「前記タッチパネルセンサー10の前記フレキシブル基板1は、可とう性を持ち」という構成は、本願発明の「前記タッチパネルの前記ベースシートは、可撓性を持ち」という構成に相当する。

(3)引用発明の「ディスプレー装置」、「X-Y座標」、「ディジタルデータ」、「変換」、「タッチパネル制御コントローラ」、「テール部5」は、
それぞれ、本願発明の「ディスプレイ」、「XY座標」、「座標信号」、「投影変換」、「タッチパネル制御回路」、「配線部」に相当し、
それを踏まえると、引用発明の「配線領域」と本願発明の「配線領域」は、「タッチパネルの検知信号をディスプレイ上のXY座標を表す座標信号に投影変換するタッチパネル制御回路への電気的配線をなすべく、外方に向かってタッチパネル制御回路に到達する長さに延びた配線部を有」する点で共通する。

(4)引用発明の「前記タッチパネルの前記透明導電膜2は、前記テール部5を介して前記タッチパネル制御コントローラに接続される」という構成は、本願発明の「前記タッチパネルの前記透明電極は、前記配線部を介して前記タッチパネル制御回路に接続される」という構成に相当する。

よって、本願発明と引用発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ほぼ透明のベースシートに形成された透明電極を備え、検知対象であるタッチ体がタッチしたタッチ位置に応じた検知信号を出力する検知領域と、前記ベースシートの前記検知領域の周辺に前記透明電極に接続するように形成された導電パターンを備えた配線領域とを有するタッチパネルを有するタッチパネル装置において、
前記タッチパネルの前記ベースシートは、可撓性を持ち、
前記タッチパネルの前記配線領域は、前記タッチパネルの検知信号をディスプレイ上のXY座標を表す座標信号に投影変換するタッチパネル制御回路への電気的配線をなすべく、外方に向かってタッチパネル制御回路に到達する長さに延びた配線部を有し、
前記タッチパネルの前記透明電極は、前記配線部を介して前記タッチパネル制御回路に接続されるタッチパネル装置。」である点。

(相違点1)
本願発明は、「前記タッチパネルのおもて面に接合して該タッチパネルの平面性を保持するフレームをさらに有し、前記フレームは、前記タッチパネルに対応した面積を持つ板状を呈し、該タッチパネルの前記検知領域に対応したほぼ透明の領域を有し」という構成を有しているのに対し、引用発明は、それに相当する構成を有していない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記タッチパネル制御回路が形成された回路基板をさらに有し」、透明電極が「前記回路基板に形成された前記タッチパネル制御回路に接続される」という構成を有しているのに対し、引用発明は、それに相当する構成を有していない点。


4.判断

(1)(相違点1)について
以下の事情を総合すると、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

ア.引用例の上記段落【0029】及び図2には、タッチパネルセンサー10の上に保護層8、7を設けることが記載されている。

イ.一方、「タッチパネルの表面に接合して当該タッチパネルの平面性を保持するフレームであって、タッチパネルに対応した面積を持つ板状であり、タッチパネルの検知領域に対応したほぼ透明の領域を有するフレーム」を設けることは、周知の技術である。この点は、平成26年2月19日付けの拒絶査定において引用された特開2009-170155号公報(平成21年7月30日出願公開。図3及び段落【0030】-【0031】、並びに、段落【0051】に記載された保護用のアクリル板に置き換えられる筐体押さえ20参照)、特開2004-213114号公報(段落【0005】及び図3、段落【0018】参照)、国際公開第2008/066157号(段落【0055】-【0068】及び図2-3、段落【0081】及び図4参照)などから明らかである。

ウ.そして、引用発明において、保護層としてこの周知の「タッチパネルの表面に接合して当該タッチパネルの平面性を保持するフレーム」を設ける構成を採用できない理由はない。

エ.出願人側は、平成26年5月22付けの審判請求書において、
「従前は必要であった配線ケーブルを不要として部品数削減を実現する一方で、可撓性のベースシートを配線部と共用している検知領域は、従前に比べて可撓性を持たざるを得ず、ユーザのタッチ操作を受ける領域の剛性や強度としては不利であるという実情にあります。
これに対し、本願発明は、単に、検知領域(タッチパネル)のための補強部材を設けたのではなく、タッチパネル装置内部の防塵、防水や検知領域の傷や破損を防止するために必要な透明保護カバーや保護パネル類と兼用に、検知領域の補強部材として、タッチパネルの平面性を保持するフレームを有しています(c)。つまり、この点においても、部品数削減に有効であり、上述タッチパネル一体の配線部による部品数削減と相乗した効果を、本願発明は奏するのであります。」と述べている。
しかし、“タッチパネル装置内部の防塵、防水や検知領域の傷や破損を防止する”とともに“検知領域の補強部材として、タッチパネルの平面性を保持する”効果は、上記周知の技術である「タッチパネルの表面に接合して当該タッチパネルの平面性を保持するフレーム」を設けることの自明の効果である。

オ.以上のことは、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味する。


(2)(相違点2)について
以下の事情を総合すると、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことというべきである。

ア.タッチパネルにおいて、タッチパネル制御コントローラ(タッチパネル制御回路)を回路基板上に形成することは、通常に用いられている構成である。この点は、例えば上記の拒絶理由通知において引用された特開2004-213610号公報(特に段落【0025】-【0028】及び図7-9、段落【0046】-【0050】及び図12-14参照)にも回路基板を備えたタッチパネルが示されていることなどから、明らかである。

イ.また、引用発明において、上記の通常に用いられている回路基板上にタッチパネル制御コントローラ(タッチパネル制御回路)を形成する構成を採用し、透明導電膜2が、当該回路基板に形成されたタッチパネル制御コントローラ(タッチパネル制御回路)に接続される構成とすることができない理由はない。

ウ.してみれば、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことである。


(3)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が容易に想到し得た構成のものが奏するであろうと当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-28 
結審通知日 2015-05-12 
審決日 2015-05-26 
出願番号 特願2009-229271(P2009-229271)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高瀬 勤涌井 智則  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 桜井 茂行
山田 正文
発明の名称 タッチパネル装置、ユーザーインターフェース装置、および電子機器  
代理人 丸山 隆夫  

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